(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】脈波センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A61B5/02 310M
(21)【出願番号】P 2018182160
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】野邉 彩子
(72)【発明者】
【氏名】須田 正之
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119981(JP,A)
【文献】実開昭59-111107(JP,U)
【文献】特開2017-121276(JP,A)
【文献】特開2015-025769(JP,A)
【文献】特開2013-234853(JP,A)
【文献】特開2007-301232(JP,A)
【文献】特開平11-299745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に押し当てられる平面視で非真円形の開口部、及び内部にセンサ室を有するアタッチメント部と、
前記アタッチメント部が前記生体表面に押し当てられた際に、生体の脈動に対応して変化する前記センサ室の内圧変化に応じて変位する圧力センサと、
前記圧力センサの変位に基づいて脈波を検出する脈波検出部と、を備え、
前記アタッチメント部の前記開口部は、測定対象血管が延在する第1方向に向かい合う第1壁面及び第2壁面によって少なくとも形成され、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記センサ室内に投影される前記測定対象血管の投影面積が、該投影面積が最大となる第1位置から、前記第1方向に交差する第2方向に向けて、少なくとも前記測定対象血管の血管幅分移動した第2位置までの範囲内において、前記第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されていることを特徴とする脈波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の脈波センサにおいて、
前記第1壁面と前記第2壁面との間の前記第1方向に沿った間隔は、少なくとも前記第1位置から前記第2位置までの範囲内において、前記第1位置での最大間隔の80%以上の間隔を維持するように形成されている、脈波センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の脈波センサにおいて、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記第2方向に沿って延びる平坦面とされている、脈波センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の脈波センサにおいて、
前記第1方向と前記第2方向とは互いに直交し合う関係とされ、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記第1方向に対して直交する方向に沿って延びている、脈波センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の脈波センサにおいて、
前記第1壁面は、前記第2方向に沿って延びる平坦面とされている、脈波センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の脈波センサにおいて、
前記第1壁面は、第1曲率半径で前記第1方向に湾曲した円弧状の曲面とされ、
前記第2壁面は、第2曲率半径で前記第1方向に湾曲すると共に、前記第1壁面に連設された円弧状の曲面とされ、
前記第1壁面の曲率中心と前記第2壁面の曲率中心とは、前記第1方向に互いに離れて配置されている、脈波センサ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の脈波センサにおいて、
前記アタッチメント部は、
アタッチメント本体と、
前記アタッチメント本体よりも前記生体表面側に配置されると共に、前記生体表面側に開口した弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記生体表面に対する前記アタッチメント部の押し当て時に弾性変形可能とされ、
前記弾性体の開口部が、平面視で非真円形とされ、前記アタッチメント部の開口部として機能する
、脈波センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の脈波センサにおいて、
前記弾性体は、前記生体表面の弾性よりも低い弾性の弾性材料で形成されている、脈波センサ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の脈波センサにおいて、
前記アタッチメント部には、前記生体表面に対する前記アタッチメント部の相対位置を示す指標部が形成されている、脈波センサ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の脈波センサにおいて、
前記アタッチメント部を前記生体に対して取り外し可能に固定する固定部材を備えている、脈波センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の脈波センサにおいて、
前記固定部材及び前記アタッチメント部のうちの少なくともいずれか一方には、前記生体表面に対して前記アタッチメント部の相対位置を位置決めする位置決め部が形成されている、脈波センサ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の脈波センサにおいて、
前記圧力センサは、
前記センサ室内に連通する連通孔が形成された基板と、
前記連通孔を覆うように前記基板に片持ち状態で接続され、前記連通孔を通じた前記センサ室内の内圧変化に応じて撓み変形するカンチレバーと、を備え、
前記カンチレバーは、前記基板の平面視で、所定のギャップをあけた状態で前記連通孔の内側に配置されることで、前記連通孔を部分的に覆うように形成され、
前記脈波検出部は、前記カンチレバーの撓み変形に応じて抵抗値が変化する変位検出抵抗を含む抵抗値変化検出回路を有し、前記変位検出抵抗の抵抗値変化に対応した前記抵抗値変化検出回路からの出力信号に基づいて前記脈波を検出する、脈波センサ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の脈波センサにおいて、
前記センサ室は、血管幅が2mm~4mmの範囲内の動脈に起因する前記生体表面の変動に対応して内圧が変化する、脈波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、心臓の拍動に伴って伝わる血管(動脈)の圧力波を脈波として測定する脈波センサが知られている。
この種の脈波センサは、脈波の測定方法に応じていくつかのタイプに大別されるが、例えばトノメトリ法を利用した脈波センサが知られている。
トノメトリ法は、動脈に偏平部分ができる程度に該動脈を平坦に圧迫した状態で、動脈の内圧変化を測定する方法である。従って、トノメトリ法によれば、例えば血管壁の硬さや張力等の影響を受け難い状態で測定を行うことができ、動脈の内圧変化を精度良く測定することが可能とされている。しかしながら、トノメトリ法では動脈を圧迫した状態で測定する必要があるので、長時間の測定には不向きである。
【0003】
そこで、長時間継続的に脈波を測定することが可能な脈波センサとして、例えば下記特許文献1に示されるように、血管を圧迫せずに、血管の脈動に起因した皮膚の変動(上下動)を測定することで、脈波を測定する脈波センサが知られている。
【0004】
この脈波センサは、圧力センサ及びシール部材を主に備えている。圧力センサは、円形の薄膜状に形成されたダイヤフラム部と、ダイヤフラム部を支持する支持基板と、ダイヤフラム部に設けられたピエゾ抵抗と、を備えている。支持基板には、被測定部位である皮膚側に開口した円形(真円形)の開口部が形成されている。ダイヤフラム部は、開口部を塞ぐように支持基板に支持されている。シール部材は、弾性変形可能な環状に形成され、支持基板と皮膚との間に位置するように支持基板に取り付けられている。
【0005】
この脈波センサによれば、シール部材を皮膚に押し当てることで、開口部の内部空間、すなわち皮膚とダイヤフラム部との間に形成された空間を密閉室にすることが可能とされている。そして、血管の脈動に起因した皮膚の変動に対応してダイヤフラム部が変位する。これにより、ダイヤフラム部の応力変化をピエゾ抵抗の抵抗変化として検出することができ、この抵抗変化をモニタすることで脈波の測定が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の脈波センサでは、密閉室を形成するための支持基板の開口部の形状が真円形であるので、血管の走行方向に対して交差する方向に脈波センサが動いた(位置ずれした)場合には、脈波の測定結果の信頼性が低下し易かった。
【0008】
詳細に説明する。
上記従来の脈波センサでは、血管の脈動に起因した皮膚の変動に対応してダイヤフラム部を変位させる必要がある。そのため、脈波の測定精度は、開口部の内側に位置して密閉室内に露出している皮膚の変動に左右され易い。
【0009】
このような状況のもと、例えば開口部を横切る仮想面上に血管を投影した場合において、真円形の開口部の中央部を血管が通るように脈波センサを固定すると、開口部の直径が最大となる部分を血管が通過した状態となる。ところが、この状態から血管の走行方向に対して交差する方向に脈波センサが動いてしまうと、開口部の直径が最大となる部分から血管の位置がずれてしまうので、開口部内に投影される血管の投影面積が大きく減少し易い。つまり、密閉室内に露出している皮膚のうち、血管の直上に位置する部分の割合が大きく減少し易い。
そのため、密閉室内に露出している皮膚を、血管の脈動に起因して反応良く変動させ難くなってしまい、ダイヤフラム部を適切に変位させることが難しくなってしまう。その結果、例えば測定する脈波の絶対値の減少や脈波の反転等が生じる可能性があり、測定精度の低下を招く、或いは測定自体を行うことができない等の不都合が生じ易かった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、測定精度が向上した脈波センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る脈波センサは、生体表面に押し当てられる平面視で非真円形の開口部、及び内部にセンサ室を有するアタッチメント部と、前記アタッチメント部が前記生体表面に押し当てられた際に、生体の脈動に対応して変化する前記センサ室の内圧変化に応じて変位する圧力センサと、前記圧力センサの変位に基づいて脈波を検出する脈波検出部と、を備え、前記アタッチメント部の前記開口部は、測定対象血管が延在する第1方向に向かい合う第1壁面及び第2壁面によって少なくとも形成され、前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記センサ室内に投影される前記測定対象血管の投影面積が、該投影面積が最大となる第1位置から、前記第1方向に交差する第2方向に向けて、少なくとも前記測定対象血管の血管幅分移動した第2位置までの範囲内において、前記第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る脈波センサによれば、アタッチメント部を生体表面に対して押し当てることで、生体の脈動に対応してセンサ室の内圧を変化させることができると共に、センサ室の内圧変化に応じて圧力センサを変位させることができる。従って、脈波検出部により、圧力センサの変位に基づいて脈波の検出を行うことができる。
特に、アタッチメント部の開口部が平面視で非真円形に形成されているので、例えば脈波の測定中に、測定対象血管が延在する方向に対して交差する方向に脈波センサ自体が位置ずれしてしまったとしても、従来のような真円形に開口部が形成される場合に比べて、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が減少することを抑制することができる。従って、アタッチメント部の開口部を通じてセンサ室内に露出する生体表面のうち、測定対象血管の直上に位置する部分の割合が減少することを抑制することができる。そのため、例えば体動等により脈波センサが位置ずれしたとしても、生体の脈動に対応してセンサ室の内圧を反応良く変化させることができる。その結果、測定精度を向上することができる。
【0014】
さらに、アタッチメント部の開口部が、測定対象血管が延在する第1方向(走行方向)に向かい合う第1壁面及び第2壁面によって少なくとも形成されている。第1壁面及び第2壁面は、第1方向に交差する第2方向(交差方向)において、第1位置から少なくとも第2位置までの範囲内において、測定対象血管の最大投影面積の80%以上の投影面積を常に維持するように形成されている。
【0015】
従って、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が最大となる第1位置でアタッチメント部を生体表面に対して押し当てることで、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしたとしても、最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室内に投影させることができる。つまり、体動等によって脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしたとしても、そのことによってセンサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が20%以上減少することを防止することができる。
【0016】
アタッチメント部の開口部が従来のような真円形に形成されている場合には、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が最大となる位置でアタッチメント部を生体表面に対して押し当てた後に、脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしてしまうと、第1方向に沿った開口長さの減少率が大きい。そのため、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が、最大投影面積の略70%程度となってしまい、投影面積の減少率が大きくなってしまう。従って、この場合には、脈波の波形が変化する等してS/N比が低下(悪化)してしまい、測定に影響を与え易い。
【0017】
これに対して、本発明に係る脈波センサによれば、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしたとしても、上述のように最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室内に投影させることができるので、従来のような真円形に開口部が形成される場合に比べて、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が減少することを効果的に抑制することができる。従って、S/N比が低下することを抑制でき、精度良く脈波を測定することができる。
【0018】
(2)前記第1壁面と前記第2壁面との間の前記第1方向に沿った間隔は、少なくとも前記第1位置から前記第2位置までの範囲内において、前記第1位置での最大間隔の80%以上の間隔を維持するように形成されても良い。
【0019】
この場合には、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしたとしても、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積を、最大投影面積の80%以上、適切に確保することができる。
【0020】
(3)前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記第2方向に沿って延びる平坦面とされても良い。
【0021】
この場合には、第1壁面及び第2壁面を平坦面としているので、アタッチメント部の開口部の形状を単純化し易い。例えば、アタッチメント部の開口部を、平面視で四角形状(正方形、長方形等)や平行四辺形等とすることが可能である。
【0022】
(4)前記第1方向と前記第2方向とは互いに直交し合う関係とされ、前記第1壁面及び前記第2壁面は、前記第1方向に対して直交する方向に沿って延びても良い。
【0023】
この場合には、人体の手首に脈波センサを装着した場合、手首を周回する方向が、橈骨動脈等の測定対象血管が延在する第1方向に対して直交する方向になり易い。そのため、手首を周回する方向に脈波センサが位置ずれしたとしても、脈波を安定して測定することが可能となり、手首に装着する脈波センサとして好適に利用することができる。
【0024】
(5)前記第1壁面は、前記第2方向に沿って延びる平坦面とされても良い。
【0025】
この場合には、第1壁面が平坦面となるようにアタッチメント部の開口部を形成できるので、開口部の形状を単純化し易い。例えば、アタッチメント部の開口部を、平面視で半円形とすることができ、単純化し易い。
【0026】
(6)前記第1壁面は、第1曲率半径で前記第1方向に湾曲した円弧状の曲面とされ、前記第2壁面は、第2曲率半径で前記第1方向に湾曲すると共に、前記第1壁面に連設された円弧状の曲面とされ、前記第1壁面の曲率中心と前記第2壁面の曲率中心とは、前記第1方向に互いに離れて配置されても良い。
【0027】
この場合には、曲率中心が第1方向に互いに離れた円弧状の第1壁面及び第2壁面を利用して、アタッチメント部の開口部を形成できるので、開口部の形状を例えば平面視で楕円形或いは三日月形に形成することができる。
特に、第1壁面の曲率中心と第2壁面の曲率中心とが第1方向に離れているので、第1曲率半径及び第2曲率半径のうちの少なくとも一方の曲率半径を、例えば開口部を真円形で形成する場合の曲率半径よりも、大きな曲率半径とすることが可能である。従って、体動等によって脈波センサが第2方向に血管幅分だけ位置ずれしたとしても、開口部が真円形に形成される場合に比べて、センサ室内に投影される測定対象血管の投影面積が減少することを抑制することができる。
【0028】
(7)前記アタッチメント部は、アタッチメント本体と、前記アタッチメント本体よりも前記生体表面側に配置されると共に、前記生体表面側に開口した弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記生体表面に対する前記アタッチメント部の押し当て時に弾性変形可能とされ、前記弾性体の開口部が、平面視で非真円形とされ、前記アタッチメント部の開口部として機能しても良い。
【0029】
この場合には、弾性体を介してアタッチメント部を生体表面に対して押し当てることができるので、生体表面の表面形状に対応して弾性体を弾性変形させることができる。そのため、生体表面に対して弾性体を密着させることができ、センサ室内を密閉状態に維持し易い。従って、生体の変動に対応してセンサ室の内圧をより反応良く変化させることができ、脈波をさらに精度良く測定することができる。
【0030】
さらに、生体表面に対して接触する弾性体の開口部がアタッチメント部の開口部として機能するので、先に述べた作用効果を適切に奏功することができる。さらに、アタッチメント本体に対して弾性体を付け替えることも可能であるので、例えば生体表面等に応じて、開口部の形状が異なる弾性体を複数用意し、状況に応じて弾性体を付け替えるといった使い方を行うことも可能である。
【0031】
(8)前記弾性体は、前記生体表面の弾性よりも低い弾性の弾性材料で形成されても良い。
【0032】
この場合には、大きな押し当て力を必要とせずに、弾性体を弾性変形させながら生体表面に対して弾性体を密着させることができる。
【0033】
(9)前記アタッチメント部には、前記生体表面に対する前記アタッチメント部の相対位置を示す指標部が形成されても良い。
【0034】
この場合には、指標部を利用して、生体表面に対するアタッチメント部の相対位置を確認できるので、生体表面に対して常に位置合わせしながらアタッチメント部を押し当てることができる。
【0035】
(10)前記アタッチメント部を前記生体に対して取り外し可能に固定する固定部材を備えても良い。
【0036】
この場合には、例えばバンド等の固定部材を利用して、脈波センサを例えば手首等に対して安定且つ強固に装着することができる。
【0037】
(11)前記固定部材及び前記アタッチメント部のうちの少なくともいずれか一方には、前記生体表面に対して前記アタッチメント部の相対位置を位置決めする位置決め部が形成されても良い。
【0038】
この場合には、位置決め部を使用して、生体表面に対してアタッチメント部の相対位置を位置決めできるので、例えば測定対象血管に対してアタッチメント部の開口部が所望する方向に向くように脈波センサを生体に固定することが可能である。
【0039】
(12)前記圧力センサは、前記センサ室内に連通する連通孔が形成された基板と、前記連通孔を覆うように前記基板に片持ち状態で接続され、前記連通孔を通じた前記センサ室内の内圧変化に応じて撓み変形するカンチレバーと、を備え、前記カンチレバーは、前記基板の平面視で、所定のギャップをあけた状態で前記連通孔の内側に配置されることで、前記連通孔を部分的に覆うように形成され、前記脈波検出部は、前記カンチレバーの撓み変形に応じて抵抗値が変化する変位検出抵抗を含む抵抗値変化検出回路を有し、前記変位検出抵抗の抵抗値変化に対応した前記抵抗値変化検出回路からの出力信号に基づいて前記脈波を検出しても良い。
【0040】
この場合には、生体の脈動に対応してセンサ室の内圧が変化すると、これに対応してカンチレバーが撓み変形する。これにより、カンチレバーの撓み量(変位量)に対応して変位検出抵抗の抵抗値が変化するので、抵抗値変化検出回路から出力される出力信号が変化する。従って、カンチレバーの撓み量に基づいた出力信号の変化をモニタすることで、センサ室の内圧変化を検出することができ、結果的に脈波の検出を行うことができる。
特に、基板に片持ち状態で接続されたカンチレバーを利用するので、センサ室の内圧変化が微小であったとしても、内圧変化にカンチレバーを反応良く追従させて撓み変形させることができるので、脈波を感度良く測定することができる。
【0041】
(13)前記センサ室は、血管幅が2mm~4mmの範囲内の動脈に起因する前記生体表面の変動に対応して内圧が変化しても良い。
【0042】
この場合には、血管幅が2mm~4mmの範囲内の動脈とされている橈骨動脈を測定対象血管とすることができ、人体の腕部、特に手首に装着する脈波センサとして好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る脈波センサによれば、測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る脈波センサの第1実施形態を示す図であって、手首に装着している状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す矢印A-A線に沿った断面図である。
【
図4】
図3に示す圧力センサ周辺の詳細を示す縦断面図である(
図5に示すB-B線に沿った縦断面図に相当)。
【
図6】
図3に示す脈波検出部における検出回路の構成図である。
【
図10】
図3に示す脈波センサの変形例を示す縦断面図である。
【
図11】
図3に示すアタッチメント部の変形例を示す図であって、
図3に示す矢印C-C線に沿った断面図に相当する。
【
図12】
図3に示す弾性体の変形例を示す平面図である。
【
図13】
図3に示す弾性体の別の変形例を示す平面図である。
【
図14】
図3に示す弾性体の別の変形例を示す平面図である。
【
図15】本発明に係る脈波センサの第2実施形態を示す図であって、弾性体の平面図である。
【
図16】本発明に係る脈波センサの第3実施形態を示す図であって、弾性体の平面図である。
【
図17】本発明に係る脈波センサの第4実施形態を示す図であって、弾性体の平面図である。
【
図18】本発明に係る脈波センサの第5実施形態を示す図であって、弾性体の平面図である。
【
図19】本発明に係る脈波センサの第6実施形態を示す図であって、弾性体の平面図である。
【
図21】本発明に係る脈波センサの第7実施形態を示す図であって、手首に装着している状態を示す図である。
【
図24】本発明に係る脈波センサの第8実施形態を示す図であって、弾性体を手首表面に押し当てている場合における断面図である。
【
図25】第8実施形態の変形例を示す図であって、脈波センサを手首に装着している状態を示す図である。
【
図26】開口部の形状の違いに基づく確認試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る脈波センサの第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の脈波センサ1は、使用者の手首(本発明に係る生体)Sに装着されて使用され、心臓の拍動に伴って伝わる橈骨動脈(本発明に係る測定対象血管)Rの圧力波を脈波として測定するセンサとされている。具体的には、脈波センサ1は主に手首Sの裏側(手の平側)に装着される。
【0046】
従って本実施形態では、測定対象血管として橈骨動脈Rを利用する場合について説明する。従って、橈骨動脈Rの脈動が本発明に係る生体の脈動に相当する。
なお、橈骨動脈Rは人体の腕部の長さ方向に沿って延びる動脈であり、血管幅RHは一般的に2mm~4mmの範囲内とされている。本実施形態では、橈骨動脈Rが延びる方向を走行方向(本発明に係る第1方向)M1といい、手首Sの裏側の平面視で走行方向M1に対して直交するように交差する方向を交差方向(本発明に係る第2方向)M2という。
【0047】
脈波センサ1は、手首Sに装着されるセンサ筐体2と、センサ筐体2を手首Sに対して取り外し可能に固定する固定ベルト(本発明に係る固定部材)3と、を備えている。
なお、本実施形態では、手首表面S1(本発明に係る生体表面)からセンサ筐体2に向かう方向を上方といい、その反対方向を下方という。
【0048】
さらに脈波センサ1は、手首表面S1に対して対向配置された状態で、センサ筐体2を介して手首Sに固定されるセンサ基板10と、センサ基板10に対して一体に組み合わされると共に、手首表面S1に対して押し当て可能とされ、且つ手首表面S1側に開口して、内部にセンサ室11を有する筒状のアタッチメント部12と、センサ基板10に支持されると共に、センサ室11の内圧変化に応じて変位する圧力センサ13と、圧力センサ13の変位に基づいて脈波を検出する脈波検出部14と、を備えている。
【0049】
なお、
図1では、脈波センサ1を簡略化して図示していると共に、橈骨動脈Rとアタッチメント部12との位置関係を理解し易いように図示している。
【0050】
センサ筐体2は、本体ケース20と、該本体ケース20に対して図示しない締結部材等を介して一体的に組み合された裏蓋21と、を備え、内部に各種の構成部品を収容可能な図示しない収容空間が形成されている。
【0051】
固定ベルト3は、手首Sを巻回するように延びた第1固定ベルト25及び第2固定ベルト26を備えている。
第1固定ベルト25及び第2固定ベルト26は、センサ筐体2を間に挟むようにセンサ筐体2の両側に配置され、基端部が例えば裏蓋21に対して回動可能にそれぞれ連結されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、第1固定ベルト25及び第2固定ベルト26の基端部は本体ケース20に対して連結されていても構わない。
【0052】
図2に示すように、第1固定ベルト25の先端部側には、該第1固定ベルト25を厚さ方向に貫通する図示しない複数の固定孔が形成されている。これら複数の固定孔は、第1固定ベルト25の延在方向に沿って、一定の間隔をあけて形成されている。第2固定ベルト26の先端部側には、第1固定ベルト25が挿通される尾錠枠27a、及び固定孔内に挿通される図示しないつき棒を有する尾錠27が取り付けられている。
【0053】
このように固定ベルト3が構成されているので、第1固定ベルト25及び第2固定ベルト26を手首Sに巻回し、つき棒を固定孔内に挿通することで、第1固定ベルト25及び第2固定ベルト26を連結することが可能となる。これにより、センサ筐体2が手首Sの裏側に位置するように、脈波センサ1を手首Sに対して安定且つ強固に装着することが可能となる。なお、第2固定ベルト26には、環状の遊革28が第2固定ベルト26に沿って移動可能に挿通されている。
【0054】
図3に示すように、センサ基板10は、例えば回路基板とされ、裏蓋21に対して一体的に組み合されている。
なお、センサ基板10の平面視で、互いに直交する2方向のうちの一方の方向を前後方向L1といい、他方向を左右方向L2という。センサ基板10は、前後方向L1に沿った長さが左右方向L2に沿った長さよりも長い平面視長方形状に形成されている。ただし、センサ基板10の形状はこの場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0055】
本実施形態では、橈骨動脈Rの走行方向M1にセンサ基板10の左右方向L2が一致し、且つ交差方向M2にセンサ基板10の前後方向L1が一致するように、固定ベルト3によって脈波センサ1が手首Sに装着される。
【0056】
センサ基板10には、該センサ基板10を厚み方向に貫通する貫通孔32が形成されている。さらに、センサ基板10上には、後述するSOI基板60が配置されていると共に、脈波の測定に必要とされる各種の電子部品が実装されている。
【0057】
センサ筐体2内の収容空間には、例えば演算処理部であるCPU30、メモリ、表示部31及び電源部が少なくとも収容されている。なお、メモリ及び電源部は、図示を省略している。
【0058】
CPU30は、脈波センサ1の作動を総合的に制御する機能を有しており、例えばセンサ基板10上に実装されている。
メモリには、CPU30に各種の演算処理を実行させるためのプログラム或いはテーブルが予め格納されている。メモリは、例えばセンサ基板10上に実装されている。
表示部31は、脈波検出部14によって検出された脈波を少なくとも表示可能とされ、例えば本体ケース20の上面に露出するように配置されている。ただし、表示部31に、その他の各種の情報、例えば時刻、日付或いは曜日等に関する情報を表示させても構わない。
電源部は、例えばボタン電池等の交換可能な一次電池、或いは充放電可能な二次電池等とされている。
さらに、本体ケース20には、図示しない入力ボタン等の入力部が設けられ、入力部による入力操作によって、例えば脈波センサ1の電源のオンオフ操作やCPU30を介した各構成部品の制御操作を行うことが可能とされている。
【0059】
アタッチメント部12は、センサ基板10から下方に向けて(手首表面S1)に向けて突出するように形成されている。
アタッチメント部12は、センサ基板10側に配置され、下方に向けて開口したアタッチメント本体40と、アタッチメント本体40よりも下方に配置されると共に、手首表面S1側に開口した弾性体41と、を備え、全体として中心軸線Oを中心とした筒状に形成されている。そして、アタッチメント部12の内側に位置する内部空間がセンサ室11とされている。従って、アタッチメント本体40の内側及び弾性体41の内側は、いずれもセンサ室11の一部として機能する。
なお、アタッチメント部12の中心軸線O方向から見た平面視で中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0060】
アタッチメント本体40は、例えば所定の剛性を有する硬質材料によって形成され、センサ基板10に対して上端部が一体的に連結されている。本実施形態のアタッチメント本体40は、上下方向の全長に亘って外径が一定とされた円筒状に形成されている。従って、アタッチメント本体40の外形は、平面視円形状に形成されている。
なお、アタッチメント本体40の開口部の形状は、弾性体41の開口部42の形状と同形状とされている。ただし、この場合に限定されるものではなく、アタッチメント本体40の開口部の形状は、弾性体41の開口部42の形状と異なる形状であっても構わない。
【0061】
弾性体41は、アタッチメント本体40の下端部に対して、一体的に固定或いは離脱可能に固定され、手首表面S1に対するアタッチメント部12の押し当て時に弾性変形可能とされている。
なお、弾性体41をアタッチメント本体40の下端部に対して一体的に固定する場合、その固定方法としては、特定の方法に限定されるものではないが、例えば接着や溶着等によって固定しても構わない。さらには、二色成形或いはインサート成形等によって、アタッチメント本体40と弾性体41とを一体的に固定しても構わない。
【0062】
弾性体41は、手首表面S1の弾性よりも低い弾性の弾性材料、例えば合成ゴム、シリコン、高分子ゲル等によって形成されている。より具体的には、弾性体41は、JIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)で準拠されるデュロメータタイプEの硬度70以下程度の硬さを満足する弾性とされている。
このように形成された弾性体41は、厚み方向(上下方向)に潰れるように弾性変形可能とされているうえ、アタッチメント本体40の下端部との接続部分を基点として径方向に湾曲するように弾性変形可能とされている。
【0063】
弾性体41は、該弾性体41を介してアタッチメント部12を手首表面S1に対して押し当てたときに、手首表面S1の表面形状(凹凸等)に対応して弾性変形することで、手首表面S1に対して密着可能とされている。そして、手首表面S1に対する弾性体41の密着によって、センサ室11を密閉状態にすることが可能とされている。これにより、センサ室11は、橈骨動脈Rの脈動に起因する手首表面S1の変動(上下動)に対応して内圧が変化する。
【0064】
本実施形態の弾性体41は、アタッチメント本体40よりも厚みが薄い筒状に形成され、その外形はアタッチメント本体40と同径の平面視円形状に形成されている。そして、弾性体41の開口部42は、アタッチメント部12としての開口部として機能する。
弾性体41の開口部42の形状については、後に詳細に説明する。
【0065】
図3及び
図4に示すように、圧力センサ13は、センサ室11の内圧変化に応じて撓み変形可能なカンチレバー50を備えている。
カンチレバー50は、センサ基板10の上面に対して重なった状態で接合された半導体基板によって形成されている。本実施形態では、半導体基板として、シリコン支持層61、シリコン酸化膜等の絶縁層62及びシリコン活性層63を、下方からこの順番で熱的に張り合わせたSOI基板(本発明に係る基板)60を例に挙げて説明している。従って、カンチレバー50は、SOI基板60によって形成されている。
【0066】
ただし、カンチレバー50はSOI基板60によって形成される場合に限定されるものではない。なお、シリコン支持層61を一定電位に維持する(例えば、シリコン支持層61をセンサ基板10のグラウンド等に接続)等して、SOI基板60に厚さ方向の電位差の変動が生じることを抑制することが好ましい。
【0067】
図4及び
図5に示すように、SOI基板60は、センサ基板10と同様に、前後方向L1に沿った長さが左右方向L2に沿った長さよりも長い平面視長方形状に形成されている。シリコン支持層61及び絶縁層62には、これらシリコン支持層61及び絶縁層62を厚み方向に貫通すると共に、センサ基板10に形成された貫通孔32に連通する連通孔64が形成されている。
連通孔64は、貫通孔32を通じてセンサ室11内に連通していると共に、後述する第1ギャップ66を通じてカンチレバー50の上方に位置する上部空間65に連通している。これにより、第1ギャップ66、連通孔64及び貫通孔32を通じて、センサ室11内と上部空間65内とは互いに連通している。
【0068】
シリコン活性層63は、絶縁層62の上面に該絶縁層62の全面に亘って形成されている。そのため、シリコン活性層63は連通孔64を上方から覆っている。さらにシリコン活性層63のうち、SOI基板60の平面視で連通孔64の内側に位置する部分には、該シリコン活性層63を厚さ方向に貫通する平面視C形状の第1ギャップ(本発明に係るギャップ)66が形成されている。シリコン活性層63のうち第1ギャップ66の内側に位置する部分が、上記カンチレバー50とされている。従って、カンチレバー50は、SOI基板60の平面視で、第1ギャップ66をあけた状態で連通孔64を部分的に覆っている。なお、第1ギャップ66のギャップ幅は、例えば数百nm~数十μmの微小幅とされている。
【0069】
カンチレバー50は、片持ち状に支持された状態でSOI基板60に形成されている。
具体的にはカンチレバー50は、先端部が自由端とされたレバー本体51と、レバー本体51とシリコン活性層63とを一体的に接続すると共に、レバー本体51を片持ち状態で支持する2つのレバー支持部52とを備え、連通孔64を上方から覆うように配置されている。これにより、カンチレバー50は、レバー本体51の先端部側が自由端とされた片持ち梁構造とされ、レバー支持部52を中心としてセンサ室11の内圧変化に応じて撓み変形する。
なお、本実施形態では、前後方向L1に沿ってレバー支持部52からレバー本体51に向かう方向を前方といい、その反対方向を後方という。
【0070】
カンチレバー50の基端部には、該カンチレバー50を厚さ方向に貫通する第2ギャップ67が形成されている。第2ギャップ67は、カンチレバー50の基端部においてSOI基板60における左右方向L2の中央部に位置するように形成されている。なお、第2ギャップ67のギャップ幅は、第1ギャップ66のギャップ幅と同等とされている。
2つのレバー支持部52は、第2ギャップ67を間に挟んで左右方向L2に並ぶように配置されている。これにより、先に述べたように、カンチレバー50はレバー支持部52を中心として撓み変形し易い構造とされている。
【0071】
第2ギャップ67は、前後方向L1に沿って直線状に延びると共に、左右方向L2に間隔をあけて互いに平行に配置された第1直線ギャップ67a及び第2直線ギャップ67bと、左右方向L2に沿って直線状に延びると共に、第1直線ギャップ67aと第2直線ギャップ67bとを接続する第3直線ギャップ67cと、を備え、全体として平面視C形状に形成されている。
なお、第2直線ギャップ67bは、第1直線ギャップ67aよりも後方に向かって長く形成されており、後述する第2溝部74に接続されている。
【0072】
なお、2つのレバー支持部52の左右方向L2に沿った支持幅は、互いに同等とされている。従って、カンチレバー50が撓み変形した際、一方のレバー支持部52に作用する応力と、他方のレバー支持部52に作用する応力とは同等とされている。
【0073】
シリコン活性層63には、カンチレバー50を含むようにピエゾ抵抗層(圧電抵抗層)70が形成されている。ピエゾ抵抗層70は、平面視で連通孔64よりも一回り大きいサイズとなるように形成されている。これにより、ピエゾ抵抗層70は、少なくともカンチレバー50の全面に亘って形成されている。なお、ピエゾ抵抗層70は、例えばリン等のドーパント(不純物)がイオン注入法や拡散法等の各種の方法によりドーピングされることで形成されている。
【0074】
ピエゾ抵抗層70のうちカンチレバー50が形成された部分、すなわち、レバー本体51及び2つのレバー支持部52が形成された部分は、カンチレバー50の撓み変形に応じて抵抗値が変化する変位検出抵抗71として機能する。
【0075】
シリコン活性層63のうちピエゾ抵抗層70を除いた領域には、例えばピエゾ抵抗層70よりも電気抵抗率が小さい導電性材料(例えばAU等)からなる外部電極72が形成されている。
なお、ピエゾ抵抗層70及び外部電極72の上面に、図示しない絶縁膜を保護膜として被膜することで、外部との電気的な接触を防止することも可能である。
【0076】
シリコン活性層63には、該シリコン活性層63を複数の領域に区画する複数の溝部が形成されている。本実施形態では、第1溝部73及び第2溝部74が、シリコン活性層63の上面から絶縁層62に達する深さで形成されている。
第1溝部73は、シリコン活性層63のうち第1ギャップ66よりも前方側に位置する領域に形成されていると共に、前後方向L1に沿って直線状に延びるように形成されている。第1溝部73は、前端部がSOI基板60の前方側の側面に達し、且つ後端部が第1ギャップ66に連通するように形成されている。これにより、ピエゾ抵抗層70及び外部電極72のうち、第1ギャップ66よりも前方側に位置する部分は、第1溝部73によって左右方向L2に分断されている。
【0077】
第2溝部74は、シリコン活性層63のうち第2ギャップ67よりも後方側に位置する領域に形成されていると共に、前後方向L1に沿って直線状に延びるように形成されている。より具体的には、第2溝部74は、シリコン活性層63のうち第2ギャップ67における第2直線ギャップ67bよりも後方側に位置する領域に形成されている。そして、第2溝部74は、前端部が第2直線ギャップ67bに連通し、且つ後端部がSOI基板60の後方側の側面に達するように形成されている。これにより、ピエゾ抵抗層70及び外部電極72のうち、第2ギャップ67よりも後方側に位置する部分は、第2溝部74によって左右方向L2に分断されている。
【0078】
上述した第1溝部73及び第2溝部74によって、外部電極72は第1外部電極72a及び第2外部電極72bに区画されている。従って、第1外部電極72a及び第2外部電極72bは、後述する変位検出抵抗71を経由する通電経路を除き、直接的な相互の電気的接続は切り離されている。
なお、第2溝部74は、第2直線ギャップ67bに接続される場合に限定されるものではない。例えば、第1直線ギャップ67aを第2直線ギャップ67bよりも後方に向かって長く形成し、第2溝部74と第1直線ギャップ67aとを接続させても構わない。
【0079】
図5に示すように、変位検出抵抗71は、第1外部電極72a及び第2外部電極72bに対してそれぞれ電気接続されている。これにより、第1外部電極72a及び第2外部電極72b間に電圧が印加されると、この電圧印加に起因する電流は、第1外部電極72aから変位検出抵抗71を経由して第2外部電極72bに流れる。
【0080】
脈波検出部14は、
図6に示すように、変位検出抵抗71を含むホイートストンブリッジ回路80を有する検出回路81を備え、変位検出抵抗71の抵抗値変化に対応したホイートストンブリッジ回路(本発明に係る抵抗値変化検出回路)80からの出力信号Vに基づいて脈波を検出する。
【0081】
検出回路81は、ホイートストンブリッジ回路80と、ホイートストンブリッジ回路80に対して所定の基準電圧Vccを印加する基準電圧発生回路82と、差動増幅回路83と、を備えている。
ホイートストンブリッジ回路80は、変位検出抵抗71及び第1固定抵抗84が直列接続された枝辺と、第2固定抵抗85及び第3固定抵抗86が直列接続された枝辺と、が基準電圧発生回路82に対して並列に接続されている。
【0082】
変位検出抵抗71は、第1端が基準電圧Vccの供給線に接続され、第2端がノードN1に接続されている。第1固定抵抗84は、第1端がノードN1に接続され、第2端が電源線GNDに接続されている。第2固定抵抗85は、第1端が基準電圧Vccの供給線に接続され、第2端がノードN2に接続されている。第3固定抵抗86は、第1端がノードN2に接続され、第2端が電源線GNDに接続されている。なお、第1固定抵抗84、第2固定抵抗85及び第3固定抵抗86は、例えばセンサ基板10に実装された外付け抵抗とされている。
【0083】
差動増幅回路83は、例えば計測アンプであって、センサ基板10上に取り付けられている。差動増幅回路83は、ノードN1とノードN2との間の電位差を所定の増幅率で増幅して出力信号Vとして出力する。なお、この電位差は、ピエゾ抵抗層70の抵抗値変化に応じた値、すなわちカンチレバー50の変位に基づいた値となる。差動増幅回路83は、反転入力端子(-端子)がノードN1に接続され、非反転入力端子(+端子)がノードN2に接続されている。
【0084】
なお、第1外部電極72aは変位検出抵抗71の第1端として機能し、基準電圧Vccの供給線が接続される。第2外部電極72bは変位検出抵抗71の第2端及び第1固定抵抗84の第1端として機能し、ノードN1を介して差動増幅回路83の反転入力端子(-端子)が接続される。
【0085】
上述した検出回路81を含む脈波検出部14は、CPU30を構成する一部とされ、センサ基板10に実装されている。
図3及び
図4に示すように、センサ基板10の上面には、SOI基板60を上方から覆うように有頂筒状に形成され、センサ基板10に対して例えば密に接触した蓋部材55が組み合わされている。よって、蓋部材55の内側が上部空間65として機能する。ただし、蓋部材55は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0086】
アタッチメント部12の開口部42の形状について、以下に詳細に説明する。
先に述べたように、本実施形態のアタッチメント部12は、
図3に示すように、アタッチメント本体40及び弾性体41で構成されている。そのため、弾性体41の開口部42が、アタッチメント部12としての開口部に相当する。従って、弾性体41の開口部42について詳細に説明する。
【0087】
図7に示すように、弾性体41の開口部42は平面視で非真円形に形成されている。なお、
図7は弾性体41の平面図であって、手首表面S1の直下に位置する橈骨動脈Rを弾性体41に投影させた状態を示している。
また、加工誤差等の影響によって結果的に非真円形に至ってしまった等の意図しない非真円形は、本発明における非真円形に含まれるものではない。本願発明では、明確な意図をもって、あえて弾性体41の開口部42(すなわちアタッチメント部12の開口部)の形状を非真円形としている。
【0088】
具体的には、弾性体41の開口部42は平面視で走行方向M1(すなわち、センサ基板10における左右方向L2)よりも交差方向M2(センサ基板10における前後方向L1)に長い長方形に形成されている。
より詳細には、弾性体41の開口部42は、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に向かい合う第1壁面90及び第2壁面91と、交差方向M2に向かい合う第3壁面92及び第4壁面93とによって形成されている。
【0089】
第1壁面90及び第2壁面91は、走行方向M1に直交する交差方向M2に沿って延びる平坦面とされ、互いに平行に向かい合っている。第3壁面92及び第4壁面93は、走行方向M1に沿って延びる平坦面とされ、互いに平行に向かい合っている。
【0090】
第1壁面90及び第2壁面91の交差方向M2に沿った壁面長さは、第3壁面92及び第4壁面93の走行方向M1に沿った壁面長さよりも長く形成されている。これにより、弾性体41の開口部42は、先に述べたように平面視で走行方向M1よりも交差方向M2に長い長方形とされている。
なお、第1壁面90及び第2壁面91の壁面長さは、橈骨動脈Rの血管幅RHの3倍以上の長さとされている。ただし、第1壁面90及び第2壁面91の壁面長さは、この場合に限定されるものではなく、例えば3mm~20mmの範囲内であっても構わない。
【0091】
上述した4つの壁面のうち第1壁面90及び第2壁面91は、弾性体41の開口部42を通じてセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積(
図7に示すハッチング部分)が、該投影面積が最大となる第1位置から、交差方向M2に向けて、少なくとも橈骨動脈Rの血管幅RH分移動した第2位置までの範囲内において、第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されている。
【0092】
本実施形態では、アタッチメント部12の中央部分が橈骨動脈Rの直上に位置して、アタッチメント部12の中心軸線Oと橈骨動脈Rとが重なるように、脈波センサ1を手首Sに装着した場合における脈波センサ1の位置が第1位置とされている。この場合、橈骨動脈Rは、平面視で第1壁面90及び第2壁面91における交差方向M2の中央部分を通過する。
そして、脈波センサ1が第1位置に位置している場合、弾性体41の開口部42を通じてセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積は最大投影面積となる。また、第1位置から脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分移動した位置が第2位置とされている。
【0093】
図7では、脈波センサ1が第1位置に位置している場合の橈骨動脈Rを点線で示すと共に、符号R1をさらに付している。また、脈波センサ1が第2位置に位置している場合の橈骨動脈Rを二点鎖線で示すと共に、符号R2をさらに付している。なお、図面を見易くするために、脈波センサ1が第1位置に位置している場合の橈骨動脈R(R1)と、脈波センサ1が第2位置に位置している場合の橈骨動脈R(R2)との間には若干の隙間をあけている。
なお、これらの図示の仕方は、他の図面においても同様である。
【0094】
特に本実施形態では、第1壁面90及び第2壁面91が走行方向M1に対して直交するように交差する交差方向M2に沿って互いに平行に延びる平坦面とされ、その壁面長さが血管幅RHの3倍以上とされている。そのため、第1壁面90と第2壁面91との間の走行方向M1に沿った間隔H1は、交差方向M2において血管幅RHの3倍以上の範囲に亘って同一とされている。つまり、第1壁面90と第2壁面91との間の走行方向M1に沿った間隔H1は、上記第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上の間隔である100%の間隔を維持するように形成されている。
【0095】
従って、弾性体41の開口部42を通じてセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積は、上記第1位置から第2位置までの範囲内において最大投影面積とされている。つまり、本実施形態では、第1壁面90及び第2壁面91は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での橈骨動脈Rの投影面積(最大投影面積)を常に維持する(すなわち100%を維持する)ように形成されている。
【0096】
(脈波センサの作用)
次に、上述のように構成された脈波センサ1を利用して、心臓の拍動に伴って伝わる橈骨動脈Rの脈波を測定する場合について説明する。
【0097】
この場合には、
図3に示すように、弾性体41を介してアタッチメント部12を手首表面S1に対して押し当てることで、手首表面S1に対して弾性体41を密着させながら弾性体41を弾性変形させることができる。また、弾性体41の開口部42が手首表面S1によって閉塞されるので、センサ室11内を密閉状態にすることができる。
【0098】
センサ室11内を密閉にすることができるので、橈骨動脈Rの脈動に起因した手首表面S1の変動(
図3に示す矢印のような上下動)に対応して、センサ室11の内圧を変化させることができると共に、センサ室11の内圧変化に応じて圧力センサ13を変位させることができる。従って、脈波検出部14により、圧力センサ13の変位に基づいて脈波の検出を行うことができる。
【0099】
具体的には、橈骨動脈Rの脈動に起因した手首表面S1の変動に対応してセンサ室11の内圧が変化すると、これに対応してカンチレバー50が
図3に示す矢印の如く上下に撓み変形する。これにより、カンチレバー50の撓み量(変位量)に対応して変位検出抵抗71の抵抗値が変化するので、ホイートストンブリッジ回路80から出力される出力信号Vが変化する。従って、脈波検出部14によって、カンチレバー50の撓み量に基づいた出力信号Vの変化をモニタすることで、センサ室11の内圧変化を検出することができ、結果的に脈波の検出を行うことができる。
【0100】
従って、本実施形態の脈波センサ1によれば、非侵襲的に、しかも橈骨動脈Rを圧迫せずに脈波を検出することができるので、例えばユーザに対して不快感を与えることなく、長時間に亘って脈波の測定を行うことができる。
【0101】
特にカンチレバー50は、レバー本体51を片持ち状態で支持するレバー支持部52を中心に撓み変形する。そのため、変位検出抵抗71のうち主にレバー支持部52に形成された部分は、感度への寄与度(貢献度)が大きい応力検知部位とされ、カンチレバー50の撓み量に正確に対応して抵抗値が変化する。そのため、ホイートストンブリッジ回路80から出力された出力信号Vに基づいて、脈波の検出を精度良く且つ感度良く行うことができる。
【0102】
しかも、SOI基板60におけるシリコン活性層63を利用して半導体プロセス技術によりカンチレバー50を形成できるので、容易に薄型化(例えば数十~数百nm)し易い。従って、センサ室11の内圧変化が微小であったとしても、内圧変化にカンチレバー50を反応良く追従させて撓み変形させることができる。この点においても、脈波の検出を精度良く且つ感度良く行うことができる。
【0103】
さらに、弾性体41を介してアタッチメント部12を手首表面S1に対して押し当てるので、手首表面S1の表面形状に対応して弾性体41を弾性変形させることができる。そのため、手首表面S1に対して弾性体41を確実に密着させることができ、センサ室11内を高い密閉状態に維持し易い。従って、脈波を安定して測定することができる。
さらに、弾性体41が手首表面S1の弾性よりも低い弾性の弾性材料で形成されているので、大きな押し当て力を必要とせずに、弾性体41を弾性変形させながら、手首表面S1に対して弾性体41を密着させることができる。従って、ユーザに対してさらに不快感を与え難い。
【0104】
ところで、脈波の測定精度は、弾性体41の開口部42(アタッチメント部12の開口部)を通じてセンサ室11内に露出する手首表面S1の変動に大きく左右される。従って、例えば体動等によって、手首Sに対して脈波センサ1が位置ずれした場合であっても、手首表面S1のうち橈骨動脈Rの直上に位置する部分がセンサ室11内にできるだけ露出していることが好ましい。
【0105】
この点、本実施形態の脈波センサ1では、
図7及び
図8に示すように、弾性体41の開口部42が平面視で非真円形である長方形に形成されている。そのため、例えば脈波の測定中に、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に対して交差する交差方向M2に、手首表面S1に沿って脈波センサ1自体が動いて位置ずれしてしまったとしても、従来のような真円形に開口部42が形成される場合に比べて、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が減少することを抑制することができる。
【0106】
従って、弾性体41の開口部42を通じてセンサ室11内に露出している手首表面S1のうち、橈骨動脈Rの直上に位置する部分の割合が減少することを抑制することができる。そのため、例えば体動等により脈波センサ1が位置ずれしたとしても、橈骨動脈Rの脈動に起因した手首表面S1の変動に応じて、センサ室11の内圧を引き続き反応良く変化させることができる。その結果、脈波を安定して測定することができ、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の脈波センサ1によれば、長時間に亘って脈波を安定して測定することができ、測定精度が向上した脈波センサ1とすることができる。
【0108】
特に、弾性体41の開口部42を形成する壁面のうち第1壁面90及び第2壁面91は、走行方向M1に沿った間隔H1が、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上である100%を維持するように形成されている。これによって、第1壁面90及び第2壁面91は、交差方向M2において、第1位置から少なくとも第2位置までの範囲内において、橈骨動脈Rの最大投影面積の80%以上の投影面積を常に維持するように形成されている。
従って、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる位置、すなわち第1位置でアタッチメント部12を手首表面S1に対して押し当てることで、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室11内に投影させることができる。
つまり、体動等によって脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、そのことによってセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が20%以上減少することを防止することができる。
【0109】
これに対して、アタッチメント部12の開口部42が、例えば
図9に示すように従来のような真円形に形成されている場合には、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる位置でアタッチメント部12を手首表面S1に対して押し当てた後に、脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしてしまうと、走行方向M1に沿った開口長さの減少率が大きい。そのため、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が、最大投影面積の略70%程度となってしまい、投影面積の減少率が大きくなってしまう。従って、この場合には、脈波の波形が変化する等してS/N比が低下(悪化)してしまい、脈波の測定に影響を与え易い。
【0110】
しかしながら本実施形態の脈波センサ1によれば、
図7に示すように、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、上述のように最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室11内に投影させることができるので、従来のような真円形に開口部42が形成される場合に比べて、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が減少することを効果的に抑制することができる。従って、S/N比が低下することを抑制でき、精度良く脈波を測定することができる。
【0111】
しかも本実施形態では、第1壁面90と第2壁面91との間の走行方向M1に沿った間隔H1を、少なくとも第1位置から第2位置までの範囲内において同一にしている(すなわち、第1位置での最大間隔の80%以上である100%を維持するようにしている)ので、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサ1が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積を、最大投影面積のまま維持することができる。従って、上述した作用効果を一層顕著に奏功することができる。
【0112】
さらに、手首Sに脈波センサ1を装着している場合、
図2に示すように、手首Sを周回する方向が、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に対して直交する方向になり易い。そのため、手首Sを周回する方向に脈波センサ1が位置ずれしたとしても、脈波を安定して測定することが可能となり、手首Sに装着する脈波センサ1として好適に利用することができる。
【0113】
(第1実施形態の変形例)
上述した第1実施形態では、アタッチメント部12をアタッチメント本体40と弾性体41とで構成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば硬質材料で形成されたアタッチメント本体40だけでアタッチメント部12を構成しても構わないし、弾性体41だけでアタッチメント部12を構成しても構わない。
【0114】
ただし、第1実施形態のように、アタッチメント部12をアタッチメント本体40と弾性体41とで構成することが好ましい。この場合には、弾性体41を具備しているので、脈波センサ1の装着時に、弾性体41がクッションの役目を果たすので装着感を向上させることができると共に、センサ室11内をより確実に密閉させ易い。さらに、アタッチメント本体40を具備しているので、弾性体41だけでアタッチメント部12を構成する場合よりも、アタッチメント部12としての耐久性等を向上することができる。
このようなことから、アタッチメント部12をアタッチメント本体40と弾性体41とで構成することが好ましい。
【0115】
さらに、上記第1実施形態において、アタッチメント本体40に対して弾性体41を離脱可能に固定することが好ましい。
この場合には、アタッチメント本体40に対して弾性体41を付け替えることが可能であるので、例えば開口部42の形状が異なる弾性体41を複数用意し、状況に応じて弾性体41を付け替えるといった使い方を行うこともできる。
【0116】
また、上記第1実施形態では、アタッチメント本体40を、上下方向の全長に亘って外径が同一の円筒状に形成したが、この場合に限定されるものではなく、アタッチメント本体40の形状は適宜変更して構わない。例えば、
図10に示すように、弾性体41側からセンサ基板10側に向けて漸次縮径するようにアタッチメント本体40を形成しても構わない。なお、この場合とは逆に、弾性体41側からセンサ基板10側に向けて漸次拡径するようにアタッチメント本体40を形成しても構わない。
【0117】
さらに、アタッチメント本体40の開口部の形状は、弾性体41の開口部42の形状と同じ形状である必要はなく、異なる形状としても構わない。例えば、
図11に示すように、弾性体41の開口部42を平面視で長方形に形成したうえで、アタッチメント本体40の開口部を平面視で円形に形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。なお、
図11は、
図3に示す矢印C-C線に沿った横断面図に相当する。
【0118】
さらに、弾性体41の外形は、平面視円形状である必要はなく、適宜変更して構わない。例えば、
図12に示すように、弾性体41の外形を開口部42の形状に対応して、平面視で長方形に形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。それに加えて、弾性体41の外形を開口部42の形状と同形状にした場合には、弾性体41の肉厚を全体に亘って均一にすることができる。そのため、弾性体41の全体に亘って均等に弾性変形させ易くなり、好ましい。
なお、弾性体41の肉厚としては、少なくとも1mm以上の肉厚が確保されていることが好ましい。
【0119】
さらに、上記第1実施形態において、弾性体41の開口部42を形成する4つの壁面のうち第3壁面92及び第4壁面93を、走行方向M1に沿って延びる平坦面としたが、この場合に限定されるものではない。
例えば、
図13に示すように、第3壁面92及び第4壁面93が平面視で径方向の外側に向かって凸に膨らむ円弧状の曲面とされた弾性体41としても構わない。なお、弾性体41のうち、第3壁面92及び第4壁面93よりも径方向の外側に位置する部分の肉厚は、少なくとも1mm以上の肉厚が確保されている。このように構成された弾性体41であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0120】
ただし、第3壁面92及び第4壁面93は曲面に限定されるものではなく、例えば平面視で径方向の外側に向かってV字状に膨らむ形状であっても構わないし、第1壁面90から第2壁面91に向かうにしたがって径方向の外側或いは内側に向けて傾斜する傾斜面等であっても構わない。これらの場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0121】
さらに、上記第1実施形態では、弾性体41の開口部42の形状を、平面視で走行方向M1よりも交差方向M2に長い長方形に形成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば
図14に示すように、開口部42の形状が平面視で正方形に形成された弾性体41としても構わない。
この場合の弾性体41では、第1壁面90及び第2壁面91の交差方向M2に沿った壁面長さは、第3壁面92及び第4壁面93の走行方向M1に沿った壁面長さと同一とされ、橈骨動脈Rの血管幅RHの略3倍とされている。このように構成された弾性体41であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0122】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0123】
第1実施形態では、第1壁面90及び第2壁面91が平坦面とされていたが、本実施形態では第1壁面及び第2壁面が波状に湾曲した湾曲面とされている。
【0124】
図15に示すように、本実施形態の脈波センサ100は、開口部42が平面視で波形に形成された弾性体41を具備している。
詳細には、弾性体41の開口部42は、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に向かい合う第1壁面101及び第2壁面102と、交差方向M2に向かい合う第3壁面92及び第4壁面93とによって形成されている。
【0125】
第1壁面101及び第2壁面102は、走行方向M1に凹凸を有するように波状に湾曲した湾曲面とされている。特に、第1壁面101と第2壁面102とは、互いに凹凸が同期し合った湾曲面とされている。従って、本実施形態の場合であっても、第1壁面101及び第2壁面102は、互いに平行に向かい合っている。
第3壁面92及び第4壁面93は、第1実施形態と同様に、走行方向M1に沿って延びる平坦面とされている。
【0126】
なお、第1壁面101及び第2壁面102の交差方向M2への壁面長さは、第3壁面92及び第4壁面93の走行方向M1に沿った壁面長さよりも長く、第1実施形態と同様に、橈骨動脈Rの血管幅RHの3倍以上の長さとされている。
【0127】
特に、第1壁面101及び第2壁面102は、交差方向M2に互いに平行に向かい合い、且つ壁面長さが血管幅RHの3倍以上とされているので、第1壁面101と第2壁面102との間の走行方向M1に沿った間隔H2は、交差方向M2において血管幅RHの3倍以上の範囲に亘って同一とされている。
従って、本実施形態の場合であっても、第1壁面101と第2壁面102との間の走行方向M1に沿った間隔H2は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上の間隔である100%を維持するように形成されている。
【0128】
そのため、弾性体41の開口部42を通じてセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積は、第1位置から第2位置までの範囲内において最大投影面積とされている。つまり、本実施形態においても、第1壁面101及び第2壁面102は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での橈骨動脈Rの投影面積(最大投影面積)を維持するように形成されている。
【0129】
そのため、本実施形態の弾性体41であっても、第1壁面101及び第2壁面102は、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる第1位置から、交差方向M2に向けて少なくとも橈骨動脈Rの血管幅RH分移動した第2位置までの範囲内において、第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されている。
【0130】
従って、上述のように形成された弾性体41を具備する本実施形態の脈波センサ100であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
つまり、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサ100が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室11内に投影させることができ、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が減少することを効果的に抑制することができる。従って、脈波を安定して測定することができ、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0131】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0132】
第1実施形態では、第1壁面90、第2壁面91、第3壁面92及び第4壁面93の4つの壁面を利用して、開口部42が平面視で長方形に形成された弾性体41を例に挙げて説明したが、本実施形態では第1壁面及び第2壁面によって開口部42が形成され、開口部42の形状が平面視で半円状に形成された弾性体41を具備している。
【0133】
図16に示すように、本実施形態の脈波センサ110は、開口部42が平面視で半円状に形成された弾性体41を具備している。詳細には、弾性体41の開口部42は、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に向かい合う第1壁面111及び第2壁面112によって形成されている。
【0134】
第1壁面111は、第1実施形態と同様に交差方向M2に沿って延びる平坦面とされ、その壁面長さは橈骨動脈Rの血管幅RHの3倍以上の長さとされている。
第2壁面112は、所定の曲率半径で走行方向M1に湾曲した円弧状の曲面とされ、第1壁面111に対して一体に連設されている。これにより、弾性体41の開口部42は、平面視で半円状に形成されている。
【0135】
特に、第1壁面111は中心軸線Oを通過するのではなく、中心軸線Oからずれた位置、すなわち、中心軸線Oを挟んで第2壁面112とは走行方向M1の反対側に位置するように配置されている。
そのため、第2壁面112の曲率中心Pを、中心軸線Oよりも第1壁面111側に寄った位置に配置することができ、第2壁面112の曲率半径を、例えば開口部42を真円形で形成する場合の曲率半径よりも大きな曲率半径とすることができる。
【0136】
これらのことから、半円状の開口部42は、開口部42を真円形で形成する場合に比べて、走行方向M1に沿った開口長さの減少率が少なくとも第1位置から第2位置までの範囲内において小さい。
従って、本実施形態の弾性体41であっても、第1壁面111と第2壁面112との間の走行方向M1に沿った間隔は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上の間隔を維持するように形成されている。そのため、第1壁面111及び第2壁面112は、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる第1位置から、交差方向M2に向けて少なくとも橈骨動脈Rの血管幅RH分移動した第2位置までの範囲内において、第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されている。
【0137】
従って、上述のように形成された弾性体41を具備する本実施形態の脈波センサ110であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
つまり、脈波の測定中に、体動等によって脈波センサ110が交差方向M2に血管幅RH分だけ位置ずれしたとしても、最大投影面積の80%以上の投影面積をセンサ室11内に投影させることができ、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が減少することを効果的に抑制することができる。従って、脈波を安定して測定することができ、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0138】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0139】
第3実施形態では、第1壁面111が平坦面とされていることで、開口部42が平面視で半円状に形成された弾性体41を例に挙げて説明したが、本実施形態では第1壁面及び第2壁面のいずれもが曲面とされていることで、開口部42の形状が平面視で楕円形に形成された弾性体41を具備している。
【0140】
図17に示すように、本実施形態の脈波センサ120は、開口部42が平面視で楕円形に形成された弾性体41を具備している。詳細には、弾性体41の開口部42は、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に向かい合う第1壁面121及び第2壁面122によって形成されている。
【0141】
第1壁面121は、第1曲率半径で走行方向M1に湾曲した円弧状の曲面とされている。第2壁面122は、第2曲率半径で走行方向M1に湾曲した円弧状の曲面とされ、第1壁面121に対して一体に連設されている。特に、第1壁面121の曲率半径と第2壁面122の曲率半径とは、互いに同一の曲率半径とされている。さらに、第1壁面121と第2壁面122とは、互いに反対の方向に凸となるように湾曲している。
これらのことにより、弾性体41の開口部42は、平面視で楕円形に形成されている。なお、開口部42の交差方向M2の長軸長さは、橈骨動脈Rの血管幅RHの3倍以上の長さとされている。
【0142】
さらに、第1壁面121の曲率中心P1と第2壁面122の曲率中心P2とは、走行方向M1に互いに離れて配置されている。従って、第1壁面121の第1曲率半径及び第2壁面122の第2曲率半径を、例えば開口部42を真円形で形成する場合の曲率半径よりも大きな曲率半径とすることができる。
【0143】
そのため、楕円形の開口部42は、開口部42を真円形で形成する場合に比べて、走行方向M1に沿った開口長さの減少率が少なくとも第1位置から第2位置までの範囲内において小さい。
従って、本実施形態の弾性体41であっても、第1壁面121と第2壁面122との間の走行方向M1に沿った間隔は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上の間隔を維持するように形成されている。そのため、第1壁面121及び第2壁面122は、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる第1位置から、交差方向M2に向けて少なくとも橈骨動脈Rの血管幅RH分移動した第2位置までの範囲内において、第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されている。
【0144】
従って、上述のように形成された弾性体41を具備する本実施形態の脈波センサ120であっても、第3実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0145】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第4実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0146】
第4実施形態では、第1壁面121と第2壁面122とが互いに反対の方向に凸となるように湾曲することで、開口部42が平面視で楕円形に形成された弾性体41を例に挙げて説明したが、本実施形態では第1壁面と第2壁面とが同じ方向に凸となるように湾曲することで、開口部42の形状が平面視で三日月形に形成された弾性体41を具備している。
【0147】
図18に示すように、本実施形態の脈波センサ130は、開口部42が平面視で三日月形に形成された弾性体41を具備している。詳細には、弾性体41の開口部42は、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に向かい合う第1壁面131及び第2壁面132によって形成されている。
【0148】
第1壁面131は、第1曲率半径で走行方向M1に湾曲した円弧状の曲面とされている。第2壁面132は、第2曲率半径で走行方向M1に湾曲した円弧状の曲面とされ、第1壁面131に対して一体に連設されている。特に、第1壁面131及び第2壁面132は、同じ方向に凸となるように湾曲している。これらのことにより、弾性体41の開口部42は、平面視で三日月形に形成されている。
なお、開口部42の交差方向M2への長さは、橈骨動脈Rの血管幅RHの3倍以上の長さとされている。さらに、第1曲率半径と第2曲率半径とは、同一の曲率半径でも構わないし、異なる曲率半径でも構わない。
【0149】
さらに、第1壁面131の曲率中心P1と第2壁面132の曲率中心P2とは、走行方向M1に互いに離れて配置されている。従って、第1壁面131の第1曲率半径及び第2壁面132の第2曲率半径を、例えば開口部42を真円形で形成する場合の曲率半径よりも大きな曲率半径とすることができる。
【0150】
そのため、三日月形の開口部42は、開口部42を真円形で形成する場合に比べて、走行方向M1に沿った開口長さの減少率が少なくとも第1位置から第2位置までの範囲内において小さい。
従って、本実施形態の弾性体41であっても、第1壁面131と第2壁面132との間の走行方向M1に沿った間隔は、第1位置から第2位置までの範囲内において、第1位置での最大間隔の80%以上の間隔を維持するように形成されている。そのため、第1壁面131及び第2壁面132は、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる第1位置から、交差方向M2に向けて少なくとも橈骨動脈Rの血管幅RH分移動した第2位置までの範囲内において、第1位置での最大投影面積の80%以上の投影面積を維持するように形成されている。
【0151】
従って、上述のように形成された弾性体41を具備する本実施形態の脈波センサ130であっても、第4実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0152】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0153】
第1実施形態では、第1壁面90及び第2壁面91が走行方向M1に対して直交するように交差する交差方向M2に沿って互いに平行に延びる平坦面とされることで、開口部42の形状が走行方向M1よりも交差方向M2に長い長方形に形成された弾性体41を例に挙げて説明したが、本実施形態では、開口部42の形状が平面視で平行四辺形に形成された弾性体41を具備している。
【0154】
図19に示すように、本実施形態の脈波センサ140は、開口部42が平面視で平行四辺形に形成された弾性体41を具備している。
詳細には、第1壁面90及び第2壁面91が、橈骨動脈Rが延在する走行方向M1に対して傾斜するように交差する傾斜方向(本発明に係る第2方向)M3に沿って延びている。これにより、弾性体41の開口部42は、平面視で平行四辺形に形成されている。
【0155】
このように構成された弾性体41を具備する脈波センサ140であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。なお、
図20に示すように、第1壁面90だけを傾斜方向M3に沿って形成することで、開口部42を平面視で台形に形成した弾性体41としても構わない。
【0156】
(第7実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第7実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第7実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0157】
図21~
図23に示すように、本実施形態の脈波センサ150は、生体表面S1に対する(より詳しくは橈骨動脈Rに対する)アタッチメント部12の相対位置を示すノッチ部(本発明に係る指標部)151が形成されたアタッチメント部12を有している。
詳細には、アタッチメント部12を構成する弾性体41の外周面にノッチ部151が形成されている。ノッチ部151は、径方向の内側に向かって平面視半円状に窪んだ切欠部であって、上下に開口するように縦長に形成されている。特に、ノッチ部151は、弾性体41の外周面のうち、第1壁面90及び第2壁面91の径方向外側に位置する部分にそれぞれ位置するように2つ形成されている。そして、2つのノッチ部151は、中心軸線Oを間に挟んで走行方向M1に並ぶように形成されている。
【0158】
(脈波センサの作用)
このように構成された本実施形態の脈波センサ150によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができることに加え、さらに以下の作用効果を奏功することができる。
すなわち、ノッチ部151を利用して、橈骨動脈Rに対するアタッチメント部12の相対位置を確認できるので、手首表面S1に対して常に位置合わせしながらアタッチメント部12を押し当てることができる。そのため、脈波センサ150を毎回同じ装着状態で装着することができ、脈波をより安定して測定することが可能である。
【0159】
しかも、橈骨動脈Rの直上にノッチ部151が位置するように脈波センサ150を装着することで、弾性体41の開口部42の中央部分を橈骨動脈Rが通過するように脈波センサ150を装着できる。従って、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる位置、すなわち第1位置で脈波センサ150を装着することができる。
【0160】
なお、ノッチ部151は、弾性体41に形成する場合に限定されるものではなく、アタッチメント本体40の外周面に形成しても構わない。さらには、指標部の一例としてノッチ部151を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば目印或いはマーク等を指標部として、弾性体41の外周面に印刷、貼着等によって明示しても構わない。
【0161】
(第8実施形態)
次に、本発明に係る脈波センサの第8実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第8実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0162】
図24に示すように、本実施形態の脈波センサ160は、生体表面S1に対して(より詳しくは橈骨動脈Rに対して)アタッチメント部12の相対位置を位置決めする位置決め凹部(本発明に係る位置決め部)161が形成されたアタッチメント部12を有している。なお、
図24では、弾性体41以外の構成品の図示を省略している。
【0163】
詳細には、アタッチメント部12を構成する弾性体41の下面、すなわち手首表面S1との接触面に、上方に向けて半円状に窪んだ位置決め凹部161が形成されている。位置決め凹部161は、橈骨動脈Rに対して略平行に手首Sを走行する腱S2、具体的には長掌筋の腱S2を収容可能な凹部であって、長掌筋の腱S2に沿って走行方向M1に延びるように形成されている。
【0164】
(脈波センサの作用)
このように構成された本実施形態の脈波センサ160によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができることに加え、さらに以下の作用効果を奏功することができる。
すなわち、位置決め凹部161内に長掌筋の腱S2を収容するように脈波センサ160を装着することで、橈骨動脈Rに対するアタッチメント部12の相対位置を位置決めすることができる。従って、脈波センサ160を毎回同じ装着状態で装着することができ、脈波をより安定して測定することが可能である。
【0165】
特に、橈骨動脈Rに対して開口部42が所望する方向に向くように脈波センサ160を装着できるので、例えば弾性体41の開口部42の中央部分を橈骨動脈Rが通過するように脈波センサ160を装着することが可能である。従って、センサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積が最大となる位置、すなわち第1位置で脈波センサ160を装着することができる。
【0166】
なお、位置決め部の一例として、弾性体41に位置決め凹部161を形成した場合を例に挙げて説明したが、固定部材である固定ベルト3に位置決め部を形成しても構わない。
【0167】
例えば、
図25に示すように、固定ベルト3を構成する第2固定ベルト26の遊革28の接触面に、位置決め凹部(本発明に係る位置決め部)162を形成しても構わない。この場合の位置決め凹部162は、手首Sから突出している、尺骨の茎状突起S3を収容可能な凹部であって、茎状突起S3に対応して窪むように形成されている。
従って、この場合であっても、位置決め凹部162内に尺骨の茎状突起S3を収容するように脈波センサ160を装着することで、橈骨動脈Rに対してアタッチメント部12の相対位置を位置決めすることが可能となる。
なお、遊革28を利用する場合に限定されるものではなく、例えば位置決め凹部162が形成された専用の位置決め部材を具備する固定ベルト3としても構わない。
【実施例】
【0168】
次に、弾性体41の開口部42(アタッチメント部12の開口部)の形状によって、開口部42を通じてセンサ室11内に投影される橈骨動脈Rの投影面積がどのように変化するかを確認した確認試験について、以下に説明する。
【0169】
本確認試験では、第1実施形態における弾性体41(長方形の開口部42)を実施例1、第1実施形態の変形例における弾性体41(正方形の開口部42)を実施例2、第2実施形態の変形例における弾性体41(波形の開口部42)を実施例3、第3実施形態の変形例における弾性体41(半円形の開口部42)を実施例4、第4実施形態の変形例における弾性体41(楕円形の開口部42)を実施例5、第5実施形態の変形例における弾性体41(三日月形の開口部42)を実施例6としている。
また、これらの比較例として、
図9に示すように真円形の開口部42を形成した弾性体41を比較例1としている。
【0170】
本確認試験では、脈波センサが第1位置に位置する場合における橈骨動脈R(R1)の投影面積(すなわち最大投影面積)と、脈波センサが第2位置に位置する場合における橈骨動脈R(R2)の投影面積とを算出すると共に、第1位置における投影面積に対する第2位置での投影面積の比率を算出した。その結果を
図26に示す。
【0171】
算出条件として、一般的に2mm~4mmの血管幅RHとされている橈骨動脈Rを想定して、血管幅RHを平均の3mmとした。また、いずれの開口部42も、脈波センサを第1位置に位置した場合における走行方向M1に沿った開口幅を12mmとした。また、血管幅RHが最大4mmであることを考慮して、脈波センサが第1位置から交差方向M2に4mm分移動した位置を第2位置とした。
【0172】
図26に示すように、比較例1の場合には、第2位置における橈骨動脈R(R2)の投影面積は、第1位置での橈骨動脈R(R1)の投影面積の69%であった。これに対して、実施例1~6のいずれの場合であっても、第2位置における橈骨動脈R(R2)の投影面積は、第1位置での橈骨動脈R(R1)の投影面積(最大投影面積)に対して少なくとも80%以上であることが確認できた。
【0173】
これにより、上述した各実施形態で説明した本発明に係る脈波センサが、実際に有効であることを確認でき、従来にはない優れた作用効果を奏功できることを確認することができた。
【0174】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0175】
例えば、上記各実施形態では、人体の腕部を走行する橈骨動脈Rを測定対象血管として、手首に装着する脈波センサを例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、腕部を巻回するように固定ベルトを取り付けることで、腕部に装着する脈波センサとしても構わない。この場合、測定対象血管としては、橈骨動脈に限定されるものではなく、例えば尺骨動脈或いは上腕動脈であって構わない。
さらには、人体の脚部の巻回するように固定ベルトを取り付けることで、脚部に装着する脈波センサとしても構わない。この場合、測定対象血管としては、例えば大腿動脈であって構わない。さらには、本発明に係る脈波センサを、例えば家畜等の飼育動物或いは実験動物等に装着することも可能である。
【0176】
また、上記各実施形態では、圧力センサの一例として、カンチレバーを利用したセンサを例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、センサ室の内圧変化に応じて変位するセンサであれば、その他の構造を採用しても構わない。
例えば、センサ室の内圧変化に応じて変位する薄膜のダイヤフラムを有する圧力センサを採用しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。ただし、カンチレバーを利用する場合には、センサ室の微小な内圧変化であってもカンチレバーを反応良く追従させながら変形させることができるので、脈波をより精度良く、且つ感度良く検出でき、好ましい。
【0177】
また、上記各実施形態では、ホイートストンブリッジ回路を利用して、変位検出抵抗の抵抗値変化を検出したが、この場合に限定されるものではない。変位検出抵抗の抵抗値変化を検出できれば、抵抗値変化検出回路をどのように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0178】
R…橈骨動脈(測定対象血管)
S…手首(生体)
S1…手首表面(生体表面)
M1…走行方向(第1方向)
M2…交差方向(第2方向)
M3…傾斜方向(第2方向)
1、100、110、120、130、140、150、160…脈波センサ
3…固定ベルト(固定部材)
11…センサ室
12…アタッチメント部
13…圧力センサ
14…脈波検出部
40…アタッチメント本体
41…弾性体
42…弾性体の開口部(アタッチメント部の開口部)
50…カンチレバー
60…SOI基板(基板)
64…連通孔
66…第1ギャップ(ギャップ)
71…変位検出抵抗
80…ホイートストンブリッジ回路(抵抗値変化検出回路)
90、101、111、121、131…第1壁面
91、102、112、122、132…第2壁面
151…ノッチ部(指標部)
161、162…位置決め凹部(位置決め部)