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特許7178237施工管理装置及び施工管理装置を用いた施工の検証方法並びに施工管理装置を用いた照会システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】施工管理装置及び施工管理装置を用いた施工の検証方法並びに施工管理装置を用いた照会システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20221117BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E02D13/06
E02D7/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018208831
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020076220
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 英樹
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191396(JP,A)
【文献】特開2018-010542(JP,A)
【文献】特開2004-250956(JP,A)
【文献】特開2005-307607(JP,A)
【文献】特開2008-255765(JP,A)
【文献】特開2002-042196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/06
E02D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に作業装置を備えた建設機械に実装され、前記作業装置に設けられた検出手段からの信号に基づいて施工するための施工管理プログラムを実行する制御装置と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイと、前記施工管理プログラムの実行結果に基づいて施工に関する情報を入力するための入力手段とを備えた施工管理装置において、前記制御装置は、可搬型記録媒体が着脱可能な媒体着脱部と、前記施工管理プログラムの実行により作成された施工データを前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するデータ処理部と、該データ処理部による前記施工データの転送に伴って記録されることにより前記施工データのバックアップを得る記憶装置とを有し、前記データ処理部は、利用者の求めに応じて前記施工データを前記記憶装置から読み出すとともに、前記施工データの複製を前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するように構成され
前記記憶装置は、前記検出手段からの信号の時間的変化を示すログデータを記録し、前記データ処理部は、利用者の求めに応じて前記ログデータを前記記憶装置から読み出すとともに、前記ログデータの複製を前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するように構成され、
前記検出手段と前記制御装置との間にネットワークを用いた通信手段が設けられ、該通信手段は、前記ネットワークの母線をなす上位通信線と、該上位通信線に接続された中継装置と、該中継装置と前記検出手段との間を接続するデバイス通信線とを備え、前記中継装置は、前記検出手段の状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視し、警報すべき状態であるときはその状態に対応した監視出力を出力するデバイス監視部を備え、前記ログデータは、前記監視出力の原因となる前記検出手段を特定可能なデバイス識別子と前記警報すべき状態の発生時刻とを関連付けて前記記憶装置に記録される
ことを特徴とする施工管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記利用者を識別するためにあらかじめ設定されたIDと前記入力手段により入力されたIDとを照合して前記記憶装置に記録された前記施工データあるいは前記ログデータへのアクセスを可能にするか否かを判定する判定部を有していることを特徴とする請求項記載の施工管理装置。
【請求項3】
前記中継装置と前記検出手段との間をIO-Link(登録商標)で通信することを特徴とする請求項1又は2記載の施工管理装置。
【請求項4】
前記建設機械は、前記ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能に設けられたオーガとを備えた杭打機であり、前記施工データ及び前記ログデータは、少なくとも前記オーガに設けられた前記検出手段の信号に基づいて生成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の施工管理装置。
【請求項5】
前記建設機械は、前記ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたブームと、該ブームに回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバと、前記ベースマシンの前部に設けられたフロントフレームに支持されて前記ケリーバを回転駆動するケリードライブとを備えたアースドリルであり、前記施工データ及び前記ログデータは、少なくとも前記ケリードライブに設けられた前記検出手段の信号に基づいて生成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の施工管理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の施工管理装置を用いた施工の検証方法であって、前記施工データに基づいて施工状況に関する知見を得る段階と、前記ログデータを事後的
に参照して前記施工状況に関する知見について考察する段階とを含むことを特徴とする施工の検証方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の施工管理装置と、前記ログデータを記録した前記可搬型記録媒体が着脱可能な媒体着脱部を有するユーザー端末と、前記ログデータが格納されるとともに、前記ユーザー端末から問い合わせて前記検出手段の保守に関する情報を照会可能なデータベースとを備えて構成されていることを特徴とする照会システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理装置及び施工管理装置を用いた施工の検証方法並びに施工管理装置を用いた照会システムに関し、詳しくは、杭打機や地盤改良機などの各種建設機械に実装されている施工管理装置及び施工管理装置を用いた施工の検証方法並びに施工管理装置を用いた照会システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管杭の埋設や地盤改良などが行われる施工現場では、大型の杭打機やアースドリルなどの建設機械が用いられており、これらの建設機械には、各種工法を制御するための施工管理プログラムを記憶した施工管理装置を搭載している。この施工管理装置は、鋼管杭や中空ロッドなどの施工部材を地中に圧入する場合に、運転室内に設けた制御装置(コントロールボックス)によって施工管理プログラムを実行させて、リーダやオーガなどの各種部品に設けた複数のセンサ、例えば、エンコーダを使用した深度センサ、オーガのトルクを圧力又は電流で検出するトルクセンサ、オーガの回転パルスを検出する回転センサなどから各データを得るとともに、各データから、深度、速度、トルク、回転数などを求めてディスプレイに表示させ、メモリに記録しながら施工を行っている。これにより、オペレータは、各測定部位の動作状態を把握したり、動作状態に基づいてタッチパネルの操作により施工に関する各種情報を入力したりすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-213937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コンプライアンス意識の向上により、施工データの記録、保管が一般的になってきており、メモリカードなどの可搬型記録媒体に記録された施工データは、管理事務所に持ち込まれて、コンピュータによるデータ管理がなされている。しかし、メモリカードは小型・軽量で取り扱いが容易であるが、一方で、記録不具合やメモリカード自体を紛失するなどに起因して、施工データが失われるおそれがある。このため、今までの利便性を損なうことなく、施工状況に関するエビデンスのニーズに対してどのように応えるべきかが、課題となっている。
【0005】
そこで本発明は、構成を複雑にすることなく、施工データの保全を図り、もって施工の信頼性を向上させることができる施工管理装置及び施工管理装置を用いた施工の検証方法並びに施工管理装置を用いた照会システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の施工管理装置は、ベースマシンの前部に作業装置を備えた建設機械に実装され、前記作業装置に設けられた検出手段からの信号に基づいて施
工するための施工管理プログラムを実行する制御装置と、前記施工管理プログラムの実行結果を表示するディスプレイと、前記施工管理プログラムの実行結果に基づいて施工に関する情報を入力するための入力手段とを備えた施工管理装置において、前記制御装置は、可搬型記録媒体が着脱可能な媒体着脱部と、前記施工管理プログラムの実行により作成された施工データを前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するデータ処理部と、該データ処理部による前記施工データの転送に伴って記録されることにより前記施工データのバックアップを得る記憶装置とを有し、前記データ処理部は、利用者の求めに応じて前記施工データを前記記憶装置から読み出すとともに、前記施工データの複製を前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するように構成され、前記記憶装置は、前記検出手段からの信号の時間的変化を示すログデータを記録し、前記データ処理部は、利用者の求めに応じて前記ログデータを前記記憶装置から読み出すとともに、前記ログデータの複製を前記媒体着脱部に装着した前記可搬型記録媒体に転送するように構成され、前記検出手段と前記制御装置との間にネットワークを用いた通信手段が設けられ、該通信手段は、前記ネットワークの母線をなす上位通信線と、該上位通信線に接続された中継装置と、該中継装置と前記検出手段との間を接続するデバイス通信線とを備え、前記中継装置は、前記検出手段の状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視し、警報すべき状態であるときはその状態に対応した監視出力を出力するデバイス監視部を備え、前記ログデータは、前記監視出力の原因となる前記検出手段を特定可能なデバイス識別子と前記警報すべき状態の発生時刻とを関連付けて前記記憶装置に記録されることを特徴としている。ここで、「ログデータ」には、オペレータの操作履歴を含む。
【0007】
た、前記制御装置は、前記利用者を識別するためにあらかじめ設定されたIDと前記入力手段により入力されたIDとを照合して前記記憶装置に記録された前記施工データあるいは前記ログデータへのアクセスを可能にするか否かを判定する判定部を有していることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記中継装置と前記検出手段との間をIO-Link(登録商標)で通信することを特徴としている。
【0009】
また、前記建設機械は、前記ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能に設けられたオーガとを備えた杭打機であり、前記施工データ及び前記ログデータは、少なくとも前記オーガに設けられた前記検出手段の信号に基づいて生成されることを特徴としている。さらに、前記建設機械は、前記ベースマシンの前部に起伏可能に設けられたブームと、該ブームに回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバと、前記ベースマシンの前部に設けられたフロントフレームに支持されて前記ケリーバを回転駆動するケリードライブとを備えたアースドリルであり、前記施工データ及び前記ログデータは、少なくとも前記ケリードライブに設けられた前記検出手段の信号に基づいて生成されることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の施工管理装置を用いた施工の検証方法は、前記施工データに基づいて施工状況に関する知見を得る段階と、前記ログデータを事後的に参照して前記施工状況に関する知見について考察する段階とを含むことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の施工管理装置を用いた照会システムは、前記施工管理装置と、前記ログデータを記録した前記可搬型記録媒体が着脱可能な媒体着脱部を有するユーザー端末と、前記ログデータが格納されるとともに、前記ユーザー端末から問い合わせて前記検出手段の保守に関する情報を照会可能なデータベースとを備えて構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御装置のデータ処理部が施工データを可搬型記録媒体に転送するとともに、併せて該施工データを記憶装置に記録してバックアップを得るように構成されているので、簡単な構成で施工データの利用が妨げられる事態を回避することができる。また、記憶装置が検出手段からの信号の時間的変化をログデータとして記録するので、たとえ施工状況に疑義が生じた場合であっても、施工データとログデータとを照合すれば、原因の迅速かつ正確な究明が可能となり、施工の信頼性を向上させることができる。さらには、利用者を識別するために、例えば、管理者IDを設定しておけば、第三者による不正なアクセスを防止して、情報セキュリティの強化を図ることができる。また、ログデータをデータベースに格納するので、検出手段の保守に関する情報を容易に取得可能となり、施工管理装置の維持・管理も確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1形態例を示す施工管理装置を備えた杭打機の側面図である。
図2】施工管理装置の構成全体を示すブロック図である。
図3】同じく施工データのバックアップを取得する処理を説明する図である。
図4】本発明の第2形態例を示す施工管理装置を備えたアースドリルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図3は、本発明の第1形態例における施工管理装置を備えた杭打機の作業時の状態を示している。この杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ用の起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するフロントブラケット17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、油圧配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室20がそれぞれ設けられている。
【0015】
リーダ15は、前記フロントブラケット17に設けられたベースマシン幅方向の支軸21に回動可能に取り付けられた下部リーダ22と、該下部リーダ22の上部に連結される中間リーダ23と、該中間リーダ23の上部に連結される上部リーダ24とに分割形成され、さらに、中間リーダ23は、中間第1部材23aと中間第2部材23bとに分割形成され、上部リーダ24は、上部第1部材24aと上部第2部材24bとに分割形成されている。これらの各リーダ部材は、それぞれボルト・ナットを使用したフランジ部材によって着脱可能に連結されている。
【0016】
起伏シリンダ16のシリンダロッド16aの先端部と中間リーダ23とは、中間第2部材23bの後面に設けられたシリンダブラケット23cに接続ピンを介して回動可能に連結されている。また、上部リーダ24の上端部にはトップシーブブロック25が、下部リーダ22の下端部に設けられた駆動スプロケット用カバー26には下部ガイド27がそれぞれ装着されており、リーダ15の前面には作業装置の一つであるオーガ28が昇降可能に装着されるとともに、該オーガ28を昇降させるためのチェーン式の昇降装置29が設けられている。
【0017】
オーガ28は、リーダ15の両側に設けられた一対のガイドパイプ30をオーガ28の後部側に設けた左右一対の上部ガイドギブ31及び下部ガイドギブ32で把持した状態でリーダ15に沿って昇降するもので、オーガ28の上下には、下部リーダ22の下端部に設けられた駆動スプロケット33と、前記上部リーダ24の上端部に設けられた従動スプロケット34との間に架け渡された昇降チェーン35の両端がそれぞれ取り付けられている。チェーン式の昇降装置29は、駆動スプロケット33をオーガ昇降用油圧モータによって駆動し、該駆動スプロケット33と従動スプロケット34とに掛け回された昇降チェーン35を上下方向に移動させることにより、リーダ15に沿ってオーガ28を昇降させるもので、上部リーダ24の上端部には、従動スプロケット34から昇降チェーン35が外れることを防止するためのチェーンカバー36が取り付けられている。
【0018】
また、オーガ28は、ドライブロッド37を回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通し、ドライブロッド37の角軸部をオーガ28の下側に設けられたチャック装置38に係合させてドライブロッド37の軸方向の移動を規制した状態で、出力機構39をオーガ駆動用油圧モータで駆動させることによってドライブロッド37を回転させる。
【0019】
この杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材に鋼管杭が使用される。鋼管杭は、ドライブロッド37の下端に設けられたキャップロッド40を介して連結され、ドライブロッド37を回転させながらオーガ28を降下させることによって地中に圧入される。また、杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、施工部材に中空ロッドが使用される。中空ロッドは、上端がオーガ28の上方でスイベル(図示せず)と連結されるとともに下端が撹拌ロッド(図示せず)と連結される。この中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて撹拌ロッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
【0020】
また、杭打機11は、リーダ15をベースマシン上方に倒伏させて、輸送姿勢とすることができるが、輸送トラックなどの荷台寸法や積載質量の制限により、リーダ15を分解したり、オーガ28を取り外したりする必要がある場合や、建屋内などの高さ制限のある場所で杭打ち作業を行うために、リーダ15を標準の長尺仕様(図1)から短尺仕様に組み換えて使用する場合がある。このとき、リーダ15及びオーガ28の取り外しについては周知の方法が用いられる。
【0021】
次に、杭打機11に適用した本発明の施工管理装置を図1乃至図3を参照しながら説明する。図2は施工管理装置の構成全体を示したブロック図である。この施工管理装置41は、大きく分けて、ベースマシン14、リーダ15及びオーガ28にそれぞれ設けられ杭打機11の作業状態を監視する複数の検出手段42と、運転室19内に設けられ各検出手段42からの検出信号やオペレータによって入力された情報に基づいて、既製杭工法、場所打ち杭工法又は地盤改良工法の施工のための施工管理プログラムを実行する制御装置43と、オペレータが施工管理プログラムの処理結果を確認したり、データ入力などを行うタッチパネル式のディスプレイ44とから構成されている。
【0022】
また、各検出手段42と制御装置43との間には、ネットワークを用いた通信手段が設けられている。この通信手段は、上位ネットワークの母線をなし産業用イーサネット(登録商標、以下同じ)として周知の通信方式、例えば、PROFINET(登録商標、以下同じ)による通信方式とする通信を行うための上位通信線45と、該上位通信線45に接続された複数の中継装置である第1中継装置46、第2中継装置47、第3中継装置48及びスイッチングハブ49と、各中継装置46~48と検出手段42との間を後述するIO-Linkによる通信で接続するためのデバイス通信線50とから構成されている。
【0023】
制御装置43は、データ処理部43aや判定部43bなど各種演算処理を行うCPUを中心に構成されており、施工管理プログラムを記憶したFRASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAMなどを備えるとともに、一端がスイッチングハブ49の上位通信ポート49aに接続されたスイッチ上位通信線45aの他端が接続されるハブ側インターフェース43cを備えている。CPUの演算処理によって施工管理プログラムを実行すると施工データが作成され、スイッチングハブ49の上位通信ポート49bに接続されたディスプレイ44に表示される。また、制御装置43は、プリンタ51や可搬型記録媒体の一つであるUSBメモリ52などによって各種データを印字、記録するための通信機が接続される媒体着脱部としてUSBインターフェース43d,43eも備えている。
【0024】
データ処理部43aは、施工管理プログラムの実行により作成された施工データをUSBインターフェース43eに装着したUSBメモリ52に逐次転送する。ここで、制御装置43は、データ処理部43aによる施工データの転送に伴い、内部記憶装置43fに施工データが記録されることにより施工データのバックアップを取得する。また、内部記憶装置43fは、施工データの記録と併せて検出手段42からの信号の時間的変化を示すログデータも記録している。これにより、データ処理部43aは、利用者として、例えば、現場管理者の求めに応じて施工データあるいはログデータを内部記憶装置43fから読み出すとともに、施工データの複製をUSBメモリ52に転送する。さらに、判定部43bは、利用者を識別するためにあらかじめ設定されたIDが記憶されており、この設定IDとタッチパネルの押圧操作により入力されたIDとを照合して内部記憶装置43fに記録された施工データあるいはログデータへのアクセスを可能にするか否かを判定する。
【0025】
各中継装置46~48は、制御装置43を含む上位ネットワークと検出手段42との間でデータの中継が可能な複数の通信ポートを備えた箱形状のハブであり、第1中継装置46はリーダ15の中間部に、具体的には上部第1部材24aの下部側面に、第2中継装置47はオーガ28の側面に、第3中継装置48は上部旋回体13の機器室20内に取付座(図示せず)を介してそれぞれ螺着されている。そして、スイッチングハブ49及び第1中継装置46の各上位通信ポート49c,46aに第1上位通信線45bが、第1中継装置46及び第2中継装置47の各上位通信ポート46b,47aに第2上位通信線45cが、スイッチングハブ49及び第3中継装置48の各上位通信ポート49d,48aに第3上位通信線45dが、スイッチングハブ49と制御装置43との間にスイッチ上位通信線45aがそれぞれ接続されることによって上位ネットワークが構成され、各中継装置46~48は制御装置43のスレーブとして動作する。
【0026】
また、各中継装置46~48は、対応する各上位通信線45a,45b,45c,45dとの接続を行った状態で、検出手段42の状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視し、警報すべき状態であるときはその状態に対応した監視出力を出力するデバイス監視部46c,47b,48bをそれぞれ備えている。警報すべき状態とは、検出手段42の故障や、デバイス通信線50の断線、短絡、通信ポートに対する離脱及び接続間違いなどによって施工管理プログラムを正常に実行することができず、検出手段42の機能や通信の回復を必要とする状態である。例えば、デバイス通信線50が断線した場合には、対応する中継装置46~48のデバイス監視部46c,47b,48bから断線状態である信号が制御装置43を経由してディスプレイ44に出力される。この出力結果に基づいて、オペレータはディスプレイ44に表示されたメッセージによって故障個所や故障原因を特定する。このとき、前記ログデータは、監視出力の原因となる故障した検出手段42を特定可能なデバイス識別子(識別情報)と警報すべき状態の発生時刻とを関連付けて内部記憶装置43fに記録される。
【0027】
検出手段42は、制御装置43の制御対象となるデバイスである。検出手段42としては、出力系のデバイス及び入力系のデバイスを適用できる。入力系のデバイスとしては、近接センサや操作スイッチなどが挙げられ、出力系のデバイスとしては、アクチュエータやモータなどが挙げられる。また、アクチュエータやモータなどの駆動電流を制御するための変換手段53などもデバイスとすることができる。検出手段42及び変換手段53は、測定部位であるリーダ15、オーガ28及びベースマシン14に取り付けられているため、これらの近傍に配置した各中継装置46~48の対応するデバイス通信ポートにデバイス通信線50を介してそれぞれ接続され、IO-Linkによる通信が行われる。
【0028】
IO-Linkは、IEC61131-9において「Single-drop digital communication interface for small sensors and actuators」(SDCI)という名称で規格化された比較的に新しいセンサ・インターフェース(デバイス通信プロトコル)である。小型のセンサ(本発明の検出手段42)などをケーブル(本発明のデバイス通信線50)1本で接続でき、これらの情報をハブ機能をなすIO-Linkマスタ(本発明の各中継装置46~48)を経由してプログラマブルコントローラ(本発明の制御装置43)に集約できる。また、同一ケーブルで電源が供給できるので、省配線化を図ることもできる。
【0029】
IO-Linkを利用することにより、オン/オフ信号(1ビット)以外の情報、例えば、32バイト(256ビット)の数値データを取得することができるので、デバイスのID、リビジョン、シリアルNoといった識別情報や、検出余裕度や内部温度などの診断情報を取得することができる。したがって、IO-Linkマスタの制御部(本発明のデバイス監視部46c,47b,48b)でこれらの情報を取り扱うことができるようになり、不具合原因の究明に役立つほか、製品寿命の診断、経年劣化に応じたしきい値の変更などが可能になる。そこで、以下では、各中継装置46~48にIO-Linkで接続される検出手段42及び変換手段53の構成とその機能について具体的に説明する。
【0030】
リーダ15に設けられた第1中継装置46は、複数のデバイス通信ポート46d,46eを備えており、オーガ28の昇降による深度を測定する深度センサ54が深度センサ通信線50aを介してデバイス通信ポート46dに接続されている。深度センサ54は、従動スプロケット34の回転角度をエンコーダで検出するものである。検出された信号は第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、回転角度及びスプロケット径に基づいて深度及び昇降速度が算出される。
【0031】
また、リーダ15の前後左右の傾斜角度を測定する傾斜センサ55が傾斜センサ通信線50bを介してデバイス通信ポート46eに接続されている。傾斜センサ55は、周知の振り子式又はフロート式の傾斜センサをリーダ15の側面に設けたものである。傾斜センサ55によって検出された信号はリーダ傾斜角度として第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達される。
【0032】
オーガ28に設けられた第2中継装置47は、複数のデバイス通信ポート47c,47d,47eを備えており、施工部材の回転数を測定する回転センサ56が回転センサ通信線50cを介してデバイス通信ポート47cに接続されている。回転センサ56は、出力機構39の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントするものである。回転センサ56によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、累計カウントに基づいて積算回転数及び回転速度が算出される。
【0033】
また、施工部材のトルクを測定するトルクセンサ57がトルクセンサ通信線50dを介してデバイス通信ポート47dに接続されている。トルクセンサ57は、オーガ駆動用油圧モータの油圧回路の供給側と電磁比例弁58の油圧回路の二次側とにそれぞれ圧力センサを設け、各圧力センサによってオーガ駆動用油圧モータの作動圧力及び制御圧力を検出するものである。トルクセンサ57によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、圧力及びオーガ駆動用油圧モータの容量に基づいて施工トルクが算出される。さらに、電磁比例弁58の駆動電流を制御する変換器59が変換器通信線50eを介してデバイス通信ポート47eに接続されている。これにより、オーガ駆動用油圧モータの制御圧力が調節される。
【0034】
ベースマシン14に設けられた第3中継装置48は、複数のデバイス通信ポート48c,48d,48e,48fを備えており、オーガ28の昇降による施工部材の圧入、引抜きに要する力を測定する昇降力センサ60が昇降力センサ通信線50fを介してデバイス通信ポート48cに接続されている。昇降力センサ60は、オーガ昇降用油圧モータの油圧回路の上昇側と下降側とにそれぞれ圧力センサを設け、各圧力センサによってオーガ昇降用油圧モータの作動圧力を検出するものである。昇降力センサ60によって検出された信号は第3中継装置48及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、圧力に基づいて昇降力(圧入・引抜)が算出される。
【0035】
また、地盤改良を行う場合にセメントミルクの注入量を測定する流量センサ61が流量センサ通信線50gを介してデバイス通信ポート48dに接続されている。流量センサ61は、バッチャープラント(図示せず)から供給されるセメントミルクの流量を測定するものである。流量センサ61によって検出された信号は瞬間的な流量(瞬時流量)及び通過流量(積算流量)として第3中継装置48及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達される。さらに、電磁比例弁62の駆動電流を制御する変換器63が変換器通信線50hを介してデバイス通信ポート48eに接続されている。これにより、オーガ昇降用油圧モータへの作動油供給量が調節される。
【0036】
また、運転室19内には、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログハブ64が設けられており、アナログハブ64の出力ポート64aに一端が接続されたアナログハブ通信線50iの他端が第3中継装置48のデバイス通信ポート48fに接続されている。アナログハブ64は、複数の入力ポート64b,64cを備えており、オーガ28の昇降速度やトルクの大きさなどを切り替える切替スイッチ65がスイッチ通信線50jを介して入力ポート64bに接続され、ダイヤルの回転状態によって調整を行う調整ダイヤル66がダイヤル通信線50kを介して入力ポート64cに接続されている。そして、オペレータの操作によって第3中継装置48に伝送された切替スイッチ65及び調整ダイヤル66の信号は、スイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、設定状態に基づいてオーガ昇降用油圧モータやオーガ駆動用油圧モータなどが駆動される。
【0037】
このように形成された施工管理装置41を備えた杭打機11は、輸送に適した質量と長さ寸法にするためにオーガ28をリーダ15から取り外すとともに、リーダ15を分割して、例えば、上部リーダ24を中間リーダ23から分離して、別々に輸送する場合がある。このとき、第2中継装置47は、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aから取り外した状態で、つまり第1中継装置46と第2中継装置47とのネットワーク接続を解除した状態で、リーダ15からオーガ28と一体で取り外され、オーガ28と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。また、第1中継装置46は、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aから取り外した状態で、つまりスイッチングハブ49と第1中継装置46とのネットワーク接続を解除した状態で、中間第2部材23bと上部第1部材24aとの連結を解くことにより、中間リーダ23から上部リーダ24と一体で取り外され、上部リーダ24と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。
【0038】
取り外された第1上位通信線45b及び第2上位通信線45cは、収納ケースに入れて持ち運ぶことができるが、例えば、第1上位通信線45bであれば、スイッチングハブ49側を取り外さずに、輪状に束ねた状態で、結束バンドなどを用いて上部旋回体13に固定して輸送することもできる。
【0039】
現場でリーダ15やオーガ28などの各種部品を組み立てた後に、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aに接続するとともに、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aに接続することにより、輸送時に一旦接続を解除したネットワークが復元され、施工管理装置41の電源を起動することができる状態になる。
【0040】
施工管理装置41の電源を起動すると、制御装置43では施工管理プログラムが実行され、ディスプレイ44にログイン画面が表示される。ここで、作業者IDによりシステムにログインするとともに、メニュー画面から目的に応じて施工条件を設定することにより施工データが取得可能になる。また、各中継装置46~48は、制御装置43に対して検出手段42からの信号の伝達を開始して、ネットワーク接続や検出手段42などの状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視するデバイス監視モードになる。
【0041】
上述のように、リーダ15やオーガ28の分解、組立時にデバイス通信線50の配線作業が省略されるので、デバイス通信線50の配線作業に起因するトラブルの防止が図られている一方で、リーダ15の分解、組立時の振動によって検出手段42が、例えば、深度センサ54が故障する場合もある。このような場合には、第1中継装置46のデバイス監視部46cから深度センサ54が故障状態である信号が出力され、この出力結果に基づいて、制御装置43は、ディスプレイ44に深度センサ54が故障状態であるメッセージを表示させる。これにより、故障した深度センサ54は、取り外されて新品と交換されるとともに、別途に不具合原因の究明が行われる。また、デバイス監視部46cからの信号は、深度センサ54を特定可能なシリアルNoやリビジョン、エラー内容、故障の発生時刻を相互に関連付けたログデータとして扱われる。
【0042】
次に、制御装置43における施工データ及びログデータを記録するための処理について、図3を参照しながら具体的に説明する。まず、例えば、既製杭工法の施工に伴い、検出手段42からの信号は、図3(A)に示すように、入出力部43gを経由して制御装置43に取り込まれる。そして、CPUの演算処理で施工管理プログラムを実行することにより施工データが作成され、所定の形式でディスプレイ44に表示される。これにより、杭の施工位置や施工深度などといった施工状況やオペレータの操作履歴、つまり施工に関する情報の入力履歴に関する知見が客観的に得られる。一方、データ処理部43aでは、施工データを所定のフォーマットでUSBメモリ52に転送する。ここで、制御装置43は、データ処理部43aによる施工データの転送に伴い、内部記憶装置43fに施工データが記録されることにより施工データのバックアップを取得する。また、施工データのバックアップは、図3(B)に示すように、内部記憶装置43fに代えて、外付け記録媒体である外部記憶装置43hに記録することができる。この場合、外部記憶装置43hとデータ処理部43aとが通信接続される。さらに、内部記憶装置43f又は外部記憶装置43hには、データ処理部43aによる施工データの記録と併せてログデータが記録される。施工データを記録したUSBメモリ52は、現場作業者によって管理事務所に持ち込まれるとともに、コンピュータなどのユーザー端末(図示せず)にデータが移動され、施工データの保存・管理が行える状態になる。
【0043】
ところで、施工時あるいは施工後に、施工データに疑問が生じた場合や施工の実体に不具合が生じた場合には、施工の検証を行う必要がある。そこで、施工状況について、例えば、ある杭の施工位置において施工深度に疑義が生じた場合、現場管理者は、施工管理装置41の電源を起動させ、ディスプレイ44に表示されたログイン画面から、管理者IDによりシステムにログインする。管理者IDとは、内部記憶装置43f又は外部記憶装置43hに記録したデータに対してアクセス権限や編集権限が与えられた者を識別するために設定された識別情報であり、これらの権限を有しない前記作業者IDと区別されている。判定部43bでは、管理者IDと入力されたIDとを照合して一致していると判定すると、ディスプレイ44に管理者用のメニュー画面を表示させる。
【0044】
次いで、USBインターフェース43eにデータ記録のされていない空のUSBメモリ52が装着されていることを確認した後、タッチパネルの押圧操作によって施工データ及びログデータの複製をUSBメモリ52に転送する。これにより、現場管理者は、施工データ及びログデータを記録したUSBメモリ52を管理事務所に持ち込んで、ユーザー端末に備わるUSBインターフェースを介してデータ移動させることにより、施工状況の検証が行えるようになる。また、ログデータについては、その性質上、杭打機11の動作やデバイスに関するさまざまな情報を保持していることから、ネットワーク上のデータベース(図示せず)に格納されて情報の登録・更新が行われる。これにより、ユーザー端末から問い合わせて、目的に応じた形式で各種情報を照会可能なシステムが構成される。このようなシステムの一例として、検出手段42の保守(修理、交換など)に関する情報を照会可能な照会システムが挙げられる。
【0045】
管理事務所では、疑問が生じている施工データと検証用に準備した施工データとを対比させて、施工データの同一性を確認する。これらのデータが同一である場合、更にログデータを参照しながら、既に得ている施工状況に関する知見について考察する。具体的には、ログデータから施工時間帯における深度センサ54の信号の変化を読み取り、グラフで示される波形が正常であるか否かなどを確認する。ここで、深度センサ54による測定値が実体と比較して誤差があると判明した場合、その誤差が生じる原因を究明することとなる。そして、詳細な検証を行った結果、深度センサ54を新品と交換する場合には、例えば、ユーザー端末から照会システムにログインして、照会画面で代替部品のシリアルNoやリビジョンを把握するとともに、納期確認など部品の手配に必要な準備がなされる。
【0046】
このように、制御装置43のデータ処理部43aが施工データをUSBメモリ52に転送するとともに、併せて該施工データを内部記憶装置43f又は外部記憶装置43hに記録してバックアップを得るように構成されているので、簡単な構成で施工データの利用が妨げられる事態を回避することができる。また、内部記憶装置43f又は外部記憶装置43hが検出手段42からの信号の時間的変化をログデータとして記録するので、たとえ施工状況に疑義が生じた場合であっても、施工データとログデータとを照合すれば、原因の迅速かつ正確な究明が可能となり、施工の信頼性を向上させることができる。さらには、利用者を識別するために、例えば、管理者IDを設定しておけば、第三者による不正なアクセスを防止して、情報セキュリティの強化を図ることができる。また、ログデータをデータベースに格納するので、検出手段42の保守に関する情報を容易に取得可能となり、施工管理装置41の維持・管理も確実なものとすることができる。
【0047】
また、施工管理装置41に検出手段42を含むネットワークの状態監視を行う動作モードであるデバイス監視モードを備えているので、故障個所や故障原因を容易に特定することが可能となる。さらに、IO-Link通信によって検出手段42の識別情報や診断情報に基づいて施工管理装置41の状態監視が行われるので、杭打機11の現場移動のたびにネットワーク接続の解除と復元が繰り返されても、安定した状態で施工を行うことができる。
【0048】
図4は、本発明の第2形態例における施工管理装置を備えたアースドリルの作業時の状態を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
アースドリル71は、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられるとともに、上部ブーム72a、中間ブーム72b及び下部ブーム72cを互いに連結してなるブーム72と、上部ブーム72aの先端部に装着されたポイントシーブ72dから垂下した主巻ロープ73にスイベル74を介して回転可能に吊持されたケリーバ75と、下部ブーム72cに基端部が取り付けられたフロントフレーム76や保持シリンダ77などによって支持された作業装置の一つであるケリードライブ78と、ケリーバ75の下端部に装着された拡底バケット79とを備えている。
【0050】
上部旋回体13の前部上方には、ケリードライブ78や拡底バケット79などを作動させるための複数の油圧配管80がフロントフレーム76に沿って設けられている。また、上部旋回体13の後部にはガントリ81が立設され、起伏ウインチ82からの起伏ロープ83が、ペンダントロープ84を介して上部ブーム72aの先端部に設けられたブラケット72eに連結されている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19や機器室20が、左側部にエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室(図示せず)が設けられている。
【0051】
アースドリル71による杭孔の形成は、起伏ウインチ82で起伏ロープ83を操作してブーム72を所定角度に立ち上げるとともに、ケリードライブ78を所定位置に配置した状態で、ケリードライブ78でケリーバ75を回転させることによって掘削バケットや拡底バケット79を回転させながら地中に押し込んで掘削する工程と、掘削バケットや拡底バケット79を引上げて掘削した土砂を排出する工程とを交互に繰り返すことによって行われる。
【0052】
次に、アースドリル71に適用した本発明の施工管理装置を図2乃至図4を参照しながら説明する。この施工管理装置は、図2のブロック図に示すように、杭打機11の施工管理装置41と共通に構成され、制御装置43では、アースドリル工法を施工するための施工管理プログラムが実行される。また、アースドリル71の形態に対応させるため、各検出手段42や各中継装置46~48の取付位置が杭打機11における取付位置に対して異なっているが、制御装置43による動作原理は同じであり、施工データ及びログデータを記録するための処理についても、図3に示すように、同様の制御で実施可能である。
【0053】
各中継装置46~48について、図4に示すように、第1中継装置46は下部ブーム72cの側面に、具体的にはフロントフレーム76の基端部に、第2中継装置47はケリードライブ78の側面に、第3中継装置48は上部旋回体13の機器室20内に取付座を介してそれぞれ螺着されている。
【0054】
検出手段42の一例として、第2中継装置47には、ケリーバ75の回転数を測定する回転センサ56が回転センサ通信線50cを介してデバイス通信ポート47cに接続されている。回転センサ56は、出力機構85の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントするものである。回転センサ56によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、累計カウントに基づいて積算回転数及び回転速度が算出される。
【0055】
このように形成された施工管理装置41を備えたアースドリル71は、輸送に適した質量と長さ寸法にするために、ケリードライブ78、ケリーバ75及び拡底バケット79をベースマシン14前部に組み立てられた状態から分解するとともに、ブーム72を複数に分割して、別々に輸送する場合がある。このとき、第2中継装置47は、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aから取り外した状態で、つまり第1中継装置46と第2中継装置47とのネットワーク接続を解除した状態で、フロントフレーム76及び保持シリンダ77からケリードライブ78と一体で取り外され、ケリードライブ78と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。また、第1中継装置46は、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aから取り外した状態で、つまりスイッチングハブ49と第1中継装置46とのネットワーク接続を解除した状態で、上部ブーム72a、中間ブーム72b及び下部ブーム72cの互いの連結を解くとともに、上部旋回体13と下部ブーム72cとの連結を解くことにより、上部旋回体13から下部ブーム72cと一体で取り外され、下部ブーム72cと共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。
【0056】
現場でブーム72やケリードライブ78などの各種部品を組み立てた後に、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aに接続するとともに、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aに接続することにより、輸送時に一旦接続を解除したネットワークが復元され、施工管理装置41の電源を起動することができる状態になる。
【0057】
施工管理装置41の電源を起動すると、制御装置43では施工管理プログラムが実行され、ディスプレイ44にログイン画面が表示される。ここで、作業者IDによりシステムにログインするとともに、メニュー画面から目的に応じて施工条件を設定することにより施工データが取得可能になる。また、各中継装置46~48は、制御装置43に対して検出手段42からの信号の伝達を開始して、ネットワーク接続や検出手段42などの状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視するデバイス監視モードになる。
【0058】
上述のように、ブーム72やケリードライブ78の分解、組立時にデバイス通信線50の配線作業が省略されるので、デバイス通信線50の配線作業に起因するトラブルの防止が図られている一方で、ケリードライブ78の分解、組立時の振動によって検出手段42が、例えば、回転センサ56が故障する場合もある。このような場合には、第2中継装置47のデバイス監視部47bから回転センサ56が故障状態である信号が出力され、この出力結果に基づいて、制御装置43は、ディスプレイ44に回転センサ56が故障状態であるメッセージを表示させる。これにより、故障した回転センサ56は、取り外されて新品と交換されるとともに、別途に不具合原因の究明が行われる。また、デバイス監視部47bからの信号は、回転センサ56を特定可能なシリアルNoやリビジョン、エラー内容、故障の発生時刻を相互に関連付けたログデータとして扱われる。
【0059】
このように、本発明をアースドリル71に適用することにより、上述の杭打機11に適用した場合と同様の効果が得られる。とりわけ、これらの建設機械に特徴的な、現場移動のたびにネットワーク接続の解除と復元が繰り返されても、安定した状態で施工を行うことができる。
【0060】
なお、本発明は、建設機械の一つとして杭打機及びアースドリルを例に説明したが、これらに限定するものではなく、作業装置を備えた各種建設機械に適用することができる。また、既製杭工法、場所打ち杭工法又は地盤改良工法あるいはアースドリル工法に限らず、各種工法において施工データを取得することができる。さらに、データの受け渡しに用いられる可搬型記録媒体は、USBメモリを例に説明したが、メモリカードなどのデータ保持機能を有する記録媒体であれば適用可能であり、記録されるデータの種類は画像データであってもよい。また、利用者を識別するためのIDは、権限に応じた種々のIDを設定することができる。特に、管理者に付与されるIDを除いて、データの消去を含めた編集権限を与えない運用がなされることで、第三者によるデータのねつ造や改ざんといった不正行為の抑止が図れる。
【0061】
また、施工現場において、機体の動作や各種構成部品の着脱を妨げず、ネットワーク接続を安全に行うことができれば中継装置の数や取付位置は任意である。さらに、施工管理の目的に応じてさまざまな検出手段を適用することができ、例えば、杭打機では、オーガ駆動用モータの駆動源に電気モータを適用する場合には、電流センサが用いられ、この電流センサで検出した電流に基づいて施工トルクが算出される。また、ネットワークに産業用イーサネットとしてPROFINETを採用したが、これに限るものではなく、例えば、EtherCAT(登録商標)などが採用できる。さらに、CAN通信などと組み合わせてネットワークを構成することもできる。
【符号の説明】
【0062】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、16a…シリンダロッド、17…フロントブラケット、18…配管支持部材、19…運転室、20…機器室、21…支軸、22…下部リーダ、23…中間リーダ、23a…中間第1部材、23b…中間第2部材、23c…シリンダブラケット、24…上部リーダ、24a…上部第1部材、24b…上部第2部材、25…トップシーブブロック、26…駆動スプロケット用カバー、27…下部ガイド、28…オーガ、29…昇降装置、30…ガイドパイプ、31…上部ガイドギブ、32…下部ガイドギブ、33…駆動スプロケット、34…従動スプロケット、35…昇降チェーン、36…チェーンカバー、37…ドライブロッド、38…チャック装置、39…出力機構、40…キャップロッド、41…施工管理装置、42…検出手段、43…制御装置、43a…データ処理部、43b…判定部、43c…ハブ側インターフェース、43d,43e…USBインターフェース、43f…内部記憶装置、43g…入出力部、43h…外部記憶装置、44…ディスプレイ、45…上位通信線、45a…スイッチ上位通信線、45b…第1上位通信線、45c…第2上位通信線、45d…第3上位通信線、45e…第4上位通信線、46…第1中継装置、46a,46b…上位通信ポート、46c…デバイス監視部、46d,46e…デバイス通信ポート、47…第2中継装置、47a…上位通信ポート、47b…デバイス監視部、47c,47d,47e…デバイス通信ポート、48…第3中継装置、48a…上位通信ポート、48b…デバイス監視部、48c,48d,48e,48f…デバイス通信ポート、49…スイッチングハブ、49a,49b,49c,49d…上位通信ポート、50…デバイス通信線、50a…深度センサ通信線、50b…傾斜センサ通信線、50c…回転センサ通信線、50d…トルクセンサ通信線、50e…変換器通信線、50f…昇降力センサ通信線、50g…流量センサ通信線、50h…変換器通信線、50i…アナログハブ通信線、50j…スイッチ通信線、50k…ダイヤル通信線、51…プリンタ、52…USBメモリ、53…変換手段、54…深度センサ、55…傾斜センサ、56…回転センサ、57…トルクセンサ、58…電磁比例弁、59…変換器、60…昇降力センサ、61…流量センサ、62…電磁比例弁、63…変換器、64…アナログハブ、64a…出力ポート、64b,64c…入力ポート、65…切替スイッチ、66…調整ダイヤル、71…アースドリル、72…ブーム、72a…上部ブーム、72b…中間ブーム、72c…下部ブーム、72d…ポイントシーブ、72e…ブラケット、73…主巻ロープ、74…スイベル、75…ケリーバ、76…フロントフレーム、77…保持シリンダ、78…ケリードライブ、79…拡底バケット、80…油圧配管、81…ガントリ、82…起伏ウインチ、83…起伏ロープ、84…ペンダントロープ、85…出力機構
図1
図2
図3
図4