(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】刈払機の回転力伝達装置および刈払機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/90 20060101AFI20221117BHJP
A01D 34/76 20060101ALI20221117BHJP
F16D 3/12 20060101ALI20221117BHJP
F16D 3/52 20060101ALI20221117BHJP
F16D 43/14 20060101ALI20221117BHJP
F16D 43/18 20060101ALI20221117BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A01D34/90 D
A01D34/90 Z
A01D34/76 A
F16D3/12 G
F16D3/52
F16D43/14
F16D43/18
F16F15/134
(21)【出願番号】P 2018239942
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】三菱重工メイキエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】霜上 純
(72)【発明者】
【氏名】上野山 和之
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017175(JP,A)
【文献】特開2017-180820(JP,A)
【文献】国際公開第2011/048697(WO,A1)
【文献】特開昭61-205423(JP,A)
【文献】特開2009-261340(JP,A)
【文献】特開2007-061029(JP,A)
【文献】実公昭46-004822(JP,Y1)
【文献】米国特許第04733471(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-34/90
F16D 3/12
F16D 3/52
F16D 41/00-47/06
F16D 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力発生装置が発生させた回転力をコイルばねを介して刈刃に伝達するように構成された刈払機の回転力伝達装置であって、
前記コイルばねの一方の側座に当接可能に構成された第1の側座当接部を含む第1の軸部材と、
前記コイルばねの他方の側座に当接可能に構成された第2の側座当接部を含む第2の軸部材と、
前記第1の軸部材と前記第2の軸部材との間に配置されるとともに、前記コイルばねの線材の両先端面を介して、前記第1の軸部材と前記第2の軸部材との間で回転力を伝達するように構成された前記コイルばねと、
前記第1の側座当接部および前記第2の側座当接部に前記コイルばねを挟持させて前記コイルばねを軸方向に、且つあるいは捩じり方向に圧縮状態で保持するように構成された圧縮状態保持装置と、を備え
、
前記圧縮状態保持装置は、前記第2の軸部材に連結されて前記第2の軸部材の前記第1の軸部材から離れる方向への移動を制限するように構成された移動制限部材を含み、
前記圧縮状態保持装置は、前記第1の軸部材を軸線が延在する方向に沿って前記第2の軸部材に向かって付勢するように構成された付勢部材をさらに含み、
前記移動制限部材は、前記付勢部材の反力を受けるように構成され、
前記第1の軸部材は、前記軸線が延在する方向に沿って延在する筒状部をさらに含み、
前記第2の軸部材は、前記筒状部に挿入可能に構成された挿入軸部をさらに含み、
前記移動制限部材は、前記軸線が延在する方向における前記第1の軸部材に対して前記第2の軸部材とは反対側に位置し、且つ、前記軸線が延在する方向に交差する方向に沿って延在する反力受部と、前記挿入軸部に連結するように構成された連結部と、を含み、
前記付勢部材は、前記軸線が延在する方向における前記移動制限部材の前記反力受部と前記第1の軸部材との間に配置された
刈払機の回転力伝達装置。
【請求項2】
前記反力受部は、前記軸線が延在する方向に直交する方向における外形寸法が前記挿入軸部よりも大きくなるように構成された
請求項
1に記載の刈払機の回転力伝達装置。
【請求項3】
前記移動制限部材は、前記反力受部よりも前記第1の軸部材側に設けられて前記第1の軸部材に一端部が当接するように構成されるとともに、前記反力受部よりも小径に形成された小径部をさらに含み、
前記付勢部材は、前記反力受部よりも小さい外形寸法を有するとともに、前記小径部の外周に配置された
請求項
1又は
2に記載の刈払機の回転力伝達装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記軸線が延在する方向における一端が前記反力受部に当接し、且つ、前記軸線が延在する方向における他端が前記第1の軸部材の端面に当接するように構成された
請求項
1乃至
3の何れか1項に記載の刈払機の回転力伝達装置。
【請求項5】
前記刈払機の回転力伝達装置は、クラッチドラムのドラムをさらに備え、
前記第1の軸部材は、前記ドラムの前記軸線が延在する方向に交差する方向に沿って延在する壁面部に形成された開口に固定されるように構成されたドラム固定部をさらに含み、
前記付勢部材は、前記軸線が延在する方向における一端が前記反力受部に当接し、且つ、前記軸線が延在する方向における他端が前記壁面部に当接するように構成された
請求項
1乃至
4の何れか1項に記載の刈払機の回転力伝達装置。
【請求項6】
回転力を発生させるように構成された回転力発生装置と、
前記回転力発生装置が発生させた前記回転力がコイルばねを介して伝達されるように構成された刈刃と、
請求項1乃至
5の何れか1項に記載の回転力伝達装置と、を備える刈払機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転力発生装置が発生させた回転力を伝動軸部材を介して刈刃に伝達するように構成された刈払機の回転力伝達装置、および刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機には、例えば2サイクルエンジンなどの原動機を、クラッチや伝動軸部材を介して刈刃に連結して、原動機により発生した駆動力を、クラッチや伝動軸部材を介して刈刃に伝達して刈刃を回転させるように構成されたものがある。上記伝動軸部材は、細長い棒状に形成されるとともに、操作杆内に収納されている。刈払機の操作者は、操作杆に取り付けられたハンドルを操作することで、雑草などの刈払いを行うようになっている。一般的に、刈払機の原動機には、振動の大きい内燃機関が使用されるため、原動機の大きな振動が伝動軸部材や操作杆を介して、そのままハンドルに伝達されていた。ハンドルに伝達された振動は、刈払機の操作性の低下や操作者の疲労の増大を招く虞がある。
【0003】
刈払機には、原動機の振動の他にも振動が発生することが知られている。原動機の始動後に、4,000rpm程度でクラッチの接続が行われるが、クラッチの接続時における衝撃により振動が発生する。また、クラッチの接続後に常用回転数である8,000rpm程度まで回転数を上昇させるが、その上昇途中に原動機の回転ムラによって生じるトルク変動により、伝動軸部材に振幅の大きな振動が発生する。また、刈払機の使用中に灌木などに刈刃が接触して、刈刃が瞬間的に停止または極端な減速状態となった直後に、瞬時に刈刃の回転が復帰して、伝動軸部材が過回転することによっても振動が発生する。これらの振動は、伝達軸のねじれにより生じるねじれ振動や伝達軸の撓みにより生じる撓み振動として表れる。
【0004】
刈払機には、コイルばねを介して駆動力(回転力)を伝達するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、原動機側伝動軸部分と刈刃側伝動軸部分との間にコイルばねが配置されて、原動機側伝動軸部分の回転をコイルばねを介して刈刃側伝動軸部分に伝達するように構成された刈払機が開示されている。
【0005】
より詳細には、特許文献1に記載された刈払機は、原動機側伝動軸部材および刈刃側伝動軸部材の夫々が、コイルばねの線材の先端面を受け止める先端面当接部を有している。原動機側伝動軸部材が回転すると、原動機側伝動軸部材の先端面当接部がコイルばねの線材の一方の先端面に接触し、コイルばねを原動機側伝動軸部材の回転に連動して回転させる。コイルばねが回転すると、コイルばねの線材の他方の先端面が刈刃側伝動軸部材の先端面当接部に接触し、刈刃側伝動軸部材をコイルばねの回転に連動して回転させる。回転を伝達させるコイルばねがねじれたり撓んだりすることで、上述したねじれ振動や撓み振動を吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された刈払機は、原動機側伝動軸部材、刈刃側伝動軸部材およびコイルばねの夫々は、他の部材を拘束するようには構成されていない。つまり、コイルばねは、自然長となっており、原動機側伝動軸部材と刈刃側伝動軸部材との間で軸方向に移動が可能になっていた。また、原動機側伝動軸部材が回転していないときは、原動機側伝動軸部材および刈刃側伝動軸部材の夫々の先端面当接部と、コイルばねの線材の先端面との間にクリアランスが設けられている。このため、コイルばねによる回転伝達の開始時には、原動機側伝動軸部材および刈刃側伝動軸部材の夫々の先端面当接部とコイルばねの線材の先端面とが接触する際に大きな異音(接触音)が生じていた。刈払機は、一日の間に複数回起動動作が行われることがあり、起動毎に大きな異音を発生させていると、作業者に不快感を与える虞がある。
【0008】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、コイルばねによる回転伝達の開始時におけるコイルばねの他部品との接触により生じる異音を抑制することができる刈払機の回転力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置は、
回転力発生装置が発生させた回転力をコイルばねを介して刈刃に伝達するように構成された刈払機の回転力伝達装置であって、
上記コイルばねの一方の側座に当接可能に構成された第1の側座当接部を含む第1の軸部材と、
上記コイルばねの他方の側座に当接可能に構成された第2の側座当接部を含む第2の軸部材と、
上記第1の軸部材と上記第2の軸部材との間に配置されるとともに、上記コイルばねの線材の両先端面を介して、上記第1の軸部材と上記第2の軸部材との間で回転力を伝達するように構成された上記コイルばねと、
上記第1の側座当接部および上記第2の側座当接部に上記コイルばねを挟持させて上記コイルばねを軸方向に、且つあるいは捩じり方向に圧縮状態で保持するように構成された圧縮状態保持装置と、を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、刈払機の回転力伝達装置は、第1の側座当接部と第2の側座当接部との間にコイルばねを挟持させて、コイルばねを軸方向に、且つあるいは捩じり方向に圧縮状態で保持するように構成された圧縮状態保持装置を備える。このため、刈払機の回転力伝達装置は、圧縮状態保持装置により、コイルばねの一方の側座を第1の側座当接部に当接させ、且つ、コイルばねの他方の側座を第2の側座当接部に当接させている。上記の構成によれば、当接する部材間に摩擦抵抗を生じさせた状態で、コイルばねの線材の先端面を第1の先端面当接部や第2の先端面当接部に接触させることができる。当接する部材間に摩擦抵抗を生じさせた状態では、上記摩擦抵抗を生じさせていない場合に比べて、第1の軸部材、第2の軸部材およびコイルばねが他の部材に拘束されて、これらの部材の振動が抑制されるため、コイルばねの線材の先端面が第1の先端面当接部や第2の先端面当接部に接触する際に生じる(接触音)を抑制することができる。
【0011】
また、上記(1)の構成によれば、刈払機の回転力伝達装置は、コイルばねによる回転伝達の開始時に、コイルばねを第1の軸部材や第2の軸部材に当接させた状態で、コイルばねを滑動させることができるので、コイルばねによる回転伝達の開始時に生じる振動を抑制することができる。
また、上記(1)の構成によれば、刈払機の回転力伝達装置は、第1の軸部材、第2の軸部材およびコイルばねが他の部材に拘束されているので、第1の軸部材や第2の軸部材が他方の軸部材に対して撓む(傾く)のを抑制することができる。第1の軸部材や第2の軸部材が他方の軸部材に対して撓むのを抑制することで、回転力伝達装置の撓み振動を抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の刈払機の回転力伝達装置であって、上記圧縮状態保持装置は、上記第2の軸部材に連結されて上記第2の軸部材の上記第1の軸部材から離れる方向への移動を制限するように構成された移動制限部材を含む。
【0013】
上記(2)の構成によれば、刈払機の回転力伝達装置は、第2の軸部材に連結された移動制限部材により、第2の軸部材の第1の軸部材から離れる方向への移動を制限することで、コイルばねの圧縮状態を保持することができる。よって、上記の構成によれば、刈払機の回転力伝達装置は、簡単な構成で、コイルばねによる回転伝達の開始時に生じる異音を抑制することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の刈払機の回転力伝達装置であって、上記圧縮状態保持装置は、上記第1の軸部材を軸線が延在する方向に沿って上記第2の軸部材に向かって付勢するように構成された付勢部材をさらに含み、上記移動制限部材は、上記付勢部材の反力を受けるように構成された。
【0015】
上記(3)の構成によれば、付勢部材は、移動制限部材が付勢部材の反力を受けるので、第1の軸部材を軸線が延在する方向に沿って第2の軸部材に向かって付勢することができる。コイルばねは、付勢部材の付勢力により圧縮されるので、適切な圧縮状態を維持することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の刈払機の回転力伝達装置であって、上記第1の軸部材は、上記軸線が延在する方向に沿って延在する筒状部をさらに含み、上記第2の軸部材は、上記筒状部に挿入可能に構成された挿入軸部をさらに含み、上記移動制限部材は、上記軸線が延在する方向における上記第1の軸部材に対して上記第2の軸部材とは反対側に位置し、且つ、上記軸線が延在する方向に交差する方向に沿って延在する反力受部と、上記挿入軸部に連結するように構成された連結部と、を含み、上記付勢部材は、上記軸線が延在する方向における上記移動制限部材の上記反力受部と前記第1の軸部材との間に配置された。
【0017】
上記(4)の構成によれば、第1の軸部材、第2の軸部材およびコイルばねは、移動制限部材および付勢部材により、他の部材に拘束されているので、第2の軸部材が第1の軸部材に対して撓む(傾く)のを抑制することができる。また、刈払機の回転力伝達装置は、付勢部材が第1の軸部材および第2の軸部材の軸線方向に沿った移動や、他の軸部材に対する撓みを吸収するので、回転力伝達装置に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の刈払機の回転力伝達装置であって、上記反力受部は、上記軸線が延在する方向に直交する方向における外形寸法が上記挿入軸部よりも大きくなるように構成された。
【0019】
上記(5)の構成によれば、反力受部は、第2の軸部材に連結されているので、第2の軸部材が第1の軸部材に対して傾くと、第2の軸部材に連動して傾く。ここで、反力受部の上記外形寸法が大きいと、その分だけ反力受部が傾いた際の外周側部分の軸線が延在する方向への移動量が増えるので、付勢部材の付勢力を迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、反力受部は、軸線が延在する方向に直交する方向における外形寸法が挿入軸部よりも大きいので、上記外形寸法が挿入軸部と同じ寸法である場合に比べて、付勢部材の付勢力を迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の刈払機の回転力伝達装置であって、前記移動制限部材は、前記反力受部よりも前記第1の軸部材側に設けられて前記第1の軸部材に一端部が当接するように構成されるとともに、前記反力受部よりも小径に形成された小径部をさらに含み、前記付勢部材は、前記反力受部よりも小さい外形寸法を有するとともに、前記小径部の外周に配置された。
【0021】
上記(6)の構成によれば、移動制限部材は、小径部の一端部が第1の軸部材に当接した状態で第2の軸部材に連結しているので、付勢部材が摩耗や損傷した際の、反力受部と第2の軸部材とを連結する連結力の低下を防止することができる。また、移動制限部材は、上記小径部の一端部が第1の軸部材に当接しているので、反力受部と第1の軸部材の反力受部側の端部との間の間隔の変動を防止することができ、ひいては小径部の外周に配置された付勢部材に安定した付勢力を発揮させることができる。また、移動制限部材は、第2の軸部材に連結されており、且つ、上記小径部の一端部が第1の軸部材に当接しているので、第2の軸部材が第1の軸部材に対して傾くのを上記一端部が妨げるので、第2の軸部材が第1の軸部材に対して傾くのを効果的に抑制することができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)~(6)の何れかに記載の刈払機の回転力伝達装置であって、前記付勢部材は、前記軸線が延在する方向における一端が前記反力受部に当接し、且つ、前記軸線が延在する方向における他端が前記第1の軸部材の端面に当接するように構成された。
【0023】
上記(7)の構成によれば、付勢部材は、軸線が延在する方向における一端が反力受部に当接し、且つ、軸線が延在する方向における他端が第1の軸部材に当接しているので、第1の軸部材や第2の軸部材が軸線方向に沿った移動や撓みを生じさせた際に、付勢部材による付勢力を第1の軸部材や第2の軸部材に対して迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0024】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)~(7)の何れかに記載の刈払機の回転力伝達装置であって、前記刈払機の回転力伝達装置は、クラッチドラムのドラムをさらに備え、前記第1の軸部材は、前記ドラムの前記軸線が延在する方向に交差する方向に沿って延在する壁面部に形成された開口に固定されるように構成されたドラム固定部をさらに含み、前記付勢部材は、前記軸線が延在する方向における一端が前記反力受部に当接し、且つ、前記軸線が延在する方向における他端が前記壁面部に当接するように構成された。
【0025】
上記(8)の構成によれば、第1の軸部材は、上記ドラムの壁面部に形成された開口にドラム固定部が固定されている。つまり、第1の軸部材はドラムと一体的に設けられている。付勢部材は、軸線が延在する方向における一端が反力受部に当接し、且つ、軸線が延在する方向における他端がドラムの壁面部に当接しているので、第1の軸部材や第2の軸部材が軸線方向に沿った移動や撓みを生じさせた際に、付勢部材による付勢力を第1の軸部材や第2の軸部材に対して迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0026】
(9)本発明の少なくとも一実施形態にかかる刈払機は、回転力を発生させるように構成された回転力発生装置と、上記回転力発生装置が発生させた上記回転力がコイルばねを介して伝達されるように構成された刈刃と、上記(1)~(8)の何れかに記載の回転力伝達装置を備える。
上記の構成によれば、回転力伝達装置により、コイルばねによる回転伝達の開始時におけるコイルばねの他部品との接触により生じる異音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、コイルばねによる回転伝達の開始時におけるコイルばねの他部品との接触により生じる異音を抑制することができる刈払機の回転力伝達装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる刈払機の構成を概略的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる刈払機における遠心クラッチケーシングおよび回転力伝達装置を拡大して示す概略部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
【
図4】駆動側軸部材の一部を示す概略斜視図である。
【
図5】従動側軸部材の一部を示す概略斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
【
図9】
図3のA-A線矢視に相当する概略断面図であって、駆動側軸部材の貫通孔と従動側軸部材の挿入軸部との間に設けられる回転力伝達機構部の構成を概略的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態にかかる刈払機の構成を概略的に示す概略断面図である。
本発明の幾つかの実施形態にかかる刈払機1は、
図1に示されるように、回転力を発生させるように構成された回転力発生装置11と、伝動軸部材12と、刈刃21を含む刈刃ユニット2と、回転力伝達装置3と、伝動軸部材12を回転自在に支持するように構成された操作桿4と、を備える。詳細は後述するが、刈払機1は、回転力発生装置11が発生させた回転力を、回転力伝達装置3および伝動軸部材12を介して刈刃21(刈刃ユニット2)に伝達するように構成されている。
【0031】
回転力発生装置11(原動機)は、刈刃21を回転させるための回転力(駆動力)を発生させるように構成されている。回転力発生装置11としては、2ストロークエンジンや4ストロークエンジンのような内燃機関、あるいは電動モーターなどが挙げられる。
【0032】
操作桿4は、
図1に示されるように、軸線LAが延在する方向に沿って延在している長尺筒状の操作桿本体41と、操作桿本体41の内周壁(内部)に取り付けられた少なくとも一つの軸受42と、含む。
【0033】
軸受42は、
図1に示されるように、操作桿本体41と同じ方向、すなわち、軸線LAが延在する方向、に沿って延在している長尺棒状の伝動軸部材12を回転自在に支持している。軸受42としては、伝動軸部材12を支持する含油軸受と、上記含油軸受の外周に取り付けられる弾性ゴムと、を含むものが挙げられる。
【0034】
操作桿本体41は、
図1に示されるように、刈刃ユニット2側(図中左側)に位置する先端部411が、伝動軸部材12の先端部121に連結された傘歯車22を回転自在に支持している。先端部411には、傘歯車22を収容する刈刃ユニット2の刈刃ケーシング20が取り付けられている。
また、操作桿本体41は、
図1に示されるように、基端側(図中右側)に位置する基端部412に、遠心クラッチケーシング5が取り付けられている。図示される実施形態では、操作桿本体41は、後述する
図2に示されるように、基端部412の外周に密着して嵌合するように構成された筒状のゴム材料からなる被覆部材17、および、被覆部材17の外周に密着して嵌合するとともに、遠心クラッチケーシング5の操作桿取付部514の内周面に密着して嵌合するように構成された筒状の金属材料からなるスリーブ18を介して、遠心クラッチケーシング5に組み付けられている。
【0035】
遠心クラッチケーシング5は、後述する遠心クラッチドラム52(
図2参照)を収容している。基端部412は、遠心クラッチケーシング5などを介して回転力発生装置11に取り付けられている。
【0036】
刈刃ユニット2は、
図1に示されるように、上述した刈刃ケーシング20と、上述した傘歯車22と、刈刃ケーシング20内に回転自在に支持されるように構成された刈刃支持軸23と、刈刃支持軸23の基端側(図中上側)の部分に固着された傘歯車24と、刈刃支持軸23の先端部に固着された上述した刈刃21と、を備える。傘歯車24は、伝動軸部材12に連結された傘歯車22と噛合している。回転力発生装置11が発生させた回転力は、回転力伝達装置3および伝動軸部材12を介して、傘歯車22に伝達される。傘歯車22に伝達された回転力は、傘歯車24および刈刃支持軸23を介して刈刃21に伝達され、刈刃21を回転させる。
【0037】
回転力伝達装置3は、
図1に示されるように、伝動軸部材12の基端部122に取り付けられている。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態にかかる刈払機における遠心クラッチケーシングおよび回転力伝達装置を拡大して示す概略部分拡大断面図である。以下、軸線LAが延在する方向における回転力発生装置11が位置する側(
図2中左側)を基端側とし、刈刃21が位置する側(
図2中右側)を先端側とする。
【0039】
刈払機1は、回転力発生装置11が発生させた回転力を、
図2に示されるような、遠心クラッチドラム52の回転機構部54およびドラム53、回転力伝達装置3の駆動側軸部材6、コイルばね8および従動側軸部材7、並びに伝動軸部材12をこの順番に介して、刈刃21(刈刃ユニット2)に伝達させるように構成されている。以下、詳細に説明する。
【0040】
図2に示されるように、遠心クラッチケーシング5は、回転力発生装置11にねじなどの締結装置により固定されるように構成されたハウジング51を含む。
ハウジング51は、
図2に示されるように、遠心クラッチを構成する遠心クラッチドラム52のドラム53が回転可能に収容されている。遠心クラッチドラム52は、ドラム53と、回転機構部54と、を含む。
【0041】
図示される実施形態では、ハウジング51は、
図2に示されるように、回転力発生装置11に固定されるように構成された装置固定部511と、ドラム53の少なくとも一部を収容するように構成されたドラム収容部512と、ベアリング13を収容するように構成されたベアリング収容部513と、操作桿本体41の基端部412に取り付けられるように構成された操作桿取付部514と、を含む。
【0042】
図2に示される実施形態では、ハウジング51は、基端側(図中左側)から順に、装置固定部511、ドラム収容部512、ベアリング収容部513、操作桿取付部514の順に設けられるとともに、装置固定部511、ドラム収容部512、ベアリング収容部513および操作桿取付部514が一体的に形成されている。ドラム収容部512、ベアリング収容部513および操作桿取付部514の夫々は、同心状に形成されるとともに、少なくとも一部が軸線LAに延在する方向に沿って延在している。装置固定部511は、ドラム収容部512の外面の基端側に位置する端部から突出して軸線LAに交差(直交)する方向に沿って延在している。
【0043】
ドラム53は、
図2に示されるように、基端側(図中左側)に向かって開口する有底筒状に形成されている。つまり、ドラム53は、
図2に示されるように、軸線LAに沿って延在する周壁部531と、周壁部531の内面534の先端側の縁部から突出して軸線LAが延在する方向に交差(直交)する方向に沿って延在する壁面部532と、を含む。
ドラム53は、
図2に示されるように、周壁部531および壁面部532により画定される内部空間533に、遠心クラッチドラム52の回転機構部54を収容するように構成されている。
【0044】
回転機構部54は、
図2に示されるように、回転力発生装置11に連結され、所定の回転速度を超えると、遠心力によりドラム53の周壁部531の内面534に押し付けられて、内面534との間に摩擦抵抗を生じさせる。回転機構部54は、上記摩擦抵抗を利用して、回転力発生装置11から伝達された回転力をドラム53に伝達する。
【0045】
ドラム53は、
図2に示されるように、壁面部532の中央に形成された開口535に、駆動側軸部材6のドラム固定部61が挿入された状態で、固定されるように構成されている。或る実施形態では、ドラム固定部61は、溶接またはカシメ、圧着などにより開口535に固定されている。
【0046】
駆動側軸部材6は、
図2に示されるように、上述したベアリング13に回転自在に支持されている。
図示される実施形態では、駆動側軸部材6は、
図2に示されるように、基端側(図中左側)の端面621が、壁面部532の外面536に当接する基端部62と、基端部62の端面621から突出するとともに、基端部62よりも外形寸法が小さい筒状に形成された上述したドラム固定部61と、基端部62の先端側(図中右側)の端面622から突出するとともに、基端部62よりも外形寸法が小さい筒状に形成された被覆部63と、を含む。ドラム固定部61および被覆部63は、駆動側軸部材6の軸線LBが延在する方向に沿って延在している。
【0047】
図示される実施形態では、駆動側軸部材6は、
図2に示されるように、被覆部63の外周面631に環状溝632が形成されている。環状溝632には止め環14が嵌着されている。被覆部63の、軸線LBが延在する方向における基端部62と環状溝632との間の部分は、ベアリング13に挿入されて、ベアリング13に支持される被支持部63Aである。ベアリング13の内周部分は、基端部62の端面622と止め環14との間に挟まれているので、軸線LAが延在する方向への移動が制限されている。
【0048】
図示される実施形態では、ベアリング13は、
図2に示されるように、金属材料からなり、ハウジング51のベアリング収容部513に嵌入している。ベアリング収容部513の内周面515には、基端側に環状溝55が形成されている。環状溝55には止め環15が嵌着されている。
また、ベアリング収容部513は、
図2に示されるように、環状溝55よりも先端側に内周面515から突出して、基端側を向いた係止面516を有している。ベアリング13の外周部分は、ベアリング収容部513の係止面516と止め環15との間に挟まれているので、軸線LAが延在する方向への移動が制限されている。
【0049】
他の実施形態では、ベアリング13は、樹脂材料からなり、上述したベアリング収容部513と同時成形されている。この場合には、ベアリング13は、ベアリング収容部513に対して軸線LAが延在する方向への移動が制限されるので、上述した環状溝55や止め環15は不要である。
【0050】
ベアリング13に回転自在に支持された駆動側軸部材6は、ドラム53から回転力が伝達されて、駆動側軸部材6の軸線LBを中心として回転する。軸線LBは、軸線LAと同軸上に配設されている。
【0051】
図3は、本発明の第1の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
図4は、駆動側軸部材の一部を示す概略斜視図である。
図5は、従動側軸部材の一部を示す概略斜視図である。
図4では、上述した環状溝632を省略して示している。
図4における矢印Rは、駆動側軸部材6の回転方向を示している。
回転力伝達装置3は、
図2、3に示されるように、上述した駆動側軸部材6と、従動側軸部材7と、コイルばね8と、圧縮状態保持装置9と、を備える。
図2、3に示されるように、回転力伝達装置3は、駆動側軸部材6に伝達された回転力を、コイルばね8を介して従動側軸部材7に伝達するように構成されている。
【0052】
コイルばね8は、
図3に示されるように、線材が複数回螺旋状に巻かれた形状になっている。図示される実施形態では、コイルばね8の先端面81、83は、線材の軸線に交差する方向に切断されたような形状を有する。また、図示される実施形態では、
図3に示されるように、コイルばね8は、線材の軸線に対する横断面形状が矩形状に形成されている。なお、他の実施形態では、コイルばね8は、線材の軸線に対する横断面形状が円形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0053】
従動側軸部材7は、
図2に示されるように、上述した伝動軸部材12の基端部122に相対回転不能に固定されている。伝動軸部材12は、従動側軸部材7の回転に連動して回転するように構成されている。
【0054】
図示される実施形態では、従動側軸部材7は、
図2に示されるように、先端側に位置する筒状部77に、筒状部77の先端面771の中央に開口して、軸線LCが延在する方向に沿って延在する軸孔78が形成されている。上記軸孔78の内周面には雌スプライン781が形成されている。また、伝動軸部材12の基端部122は、
図2に示されるように、外周面に上記雌スプライン781に噛合するように構成された雄スプライン123が形成されている。伝動軸部材12は、先端側から軸孔78に挿入されて、雄スプライン123が雌スプライン743に噛合することで、従動側軸部材7の回転に連動して回転するようになっている。
なお、他の実施形態では、従動側軸部材7は、圧入嵌合や溶接などにより、伝動軸部材12に相対回転不能に構成されていてもよいし、伝動軸部材12と一体的に形成されていてもよい。
【0055】
駆動側軸部材6は、
図3に示されるように、コイルばね8の線材の基端側(図中左側)の先端面81に当接可能に構成された先端面当接部65と、コイルばね8の基端側の側座82に当接可能に構成された側座当接部66と、を含む。
従動側軸部材7は、
図3に示されるように、コイルばね8の線材の先端側(図中右側)の先端面83に当接可能に構成された先端面当接部72と、コイルばね8の基端側の側座84に当接可能に構成された側座当接部73と、を含む。
【0056】
図示される実施形態では、駆動側軸部材6は、
図3に示されるように、基端部62の内周から突出するように構成されたコイルばね当接部64を含む。換言すると、基端部62は、コイルばね当接部64の外周から突出するように構成されている。コイルばね当接部64は、基端部62に一体的に形成されている。
コイルばね当接部64は、
図4に示されるように、先端面当接部65と、側座当接部66と、を含む。先端面当接部65は、コイルばね当接部64の先端側の端部641に設けられて軸線LBの周方向に一周した螺旋状の端面661を含む。側座当接部66は、螺旋状の端面661の一端と他端との間に形成される側方段差面651を含む。
【0057】
図示される実施形態では、従動側軸部材7は、
図3に示されるように、コイルばね当接部71を含む。
コイルばね当接部71は、
図4に示されるように、先端面当接部72と、側座当接部73と、を含む。先端面当接部72は、コイルばね当接部71の基端側の端部711に設けられて軸線LCの周方向に一周した螺旋状の端面731を含む。側座当接部73は、螺旋状の端面731の一端と他端との間に形成される側方段差面721を含む。
図2に示される実施形態では、上述した筒状部77は、コイルばね当接部71の先端側の端面712から同軸上に突出して設けられている。筒状部77は、コイルばね当接部71よりも小径に形成されている。また、上述した被覆部63は、軸線LAが延在する方向におけるコイルばね8の全長および筒状部77の全長を被覆する長さを有する。
【0058】
図3に示されるように、コイルばね8の基端側の側座82は、側座当接部66に当接するようになっている。コイルばね8の先端側の先端面81は、コイルばね8が回転力を伝達するときは、先端面当接部65に当接するようになっている。
また、
図3に示されるように、コイルばね8の先端側の側座84は、側座当接部73に当接するようになっている。コイルばね8の先端側の先端面83は、コイルばね8が回転力を伝達するときは、先端面当接部72に当接するようになっている。
なお、コイルばね8が回転力を伝達していないときは、コイルばね8の先端面81は、先端面当接部65に当接していなくてもよく、また、コイルばね8の先端面83は、先端面当接部72に当接していなくてもよい。
【0059】
図示される実施形態では、駆動側軸部材6は、
図3、4に示されるように、コイルばね当接部64の先端側の端部641から同軸上に突出して設けられた筒状のコイルばね挿入部67(筒状部)と、コイルばね挿入部67の先端面671から軸線LBの延在する方向に沿って延在して、駆動側軸部材6を貫通する貫通孔68と、を含む。コイルばね挿入部67は、
図3に示されるように、コイルばね当接部64よりも小径に形成され、コイルばね8に挿入可能に構成されている。
また、図示される実施形態では、従動側軸部材7は、
図3、5に示されるように、コイルばね当接部71の先端側の端部711から同軸上に突出して設けられた筒状のコイルばね挿入部74と、コイルばね挿入部74の先端面741から同軸上に突出する挿入軸部75と、挿入軸部75の先端面751から同軸上に凹んで形成された開口の内周壁に形成された雌ねじ部76と、を含む。コイルばね挿入部74は、
図3に示されるように、挿入軸部75よりも大径に形成され、且つ、コイルばね当接部71よりも小径に形成され、コイルばね8に挿入可能に構成されている。
【0060】
図3に示されるように、従動側軸部材7は、側座当接部73が、駆動側軸部材6の側座当接部66に対向するように配置されている。コイルばね8は、側座当接部66と側座当接部73との間に配置される。コイルばね8は、基端側の側座82が駆動側軸部材6の側座当接部66に対向し、且つ、先端側の側座84が従動側軸部材7の側座当接部73に対向して配置されている。
【0061】
図3に示されるように、駆動側軸部材6のコイルばね挿入部67は、基端側からコイルばね8に挿入されており、従動側軸部材7のコイルばね挿入部74は、先端側からコイルばね8に挿入されている。従動側軸部材7の軸線LCは、従動側軸部材7の挿入軸部75が駆動側軸部材6の貫通孔68に挿入されることで、軸線LBや軸線LAと同軸上に配設されている。
【0062】
図3に示されるように、コイルばね8は、先端面81および先端面83を介して、駆動側軸部材6と従動側軸部材7との間で回転力を伝達するように構成されている。
コイルばね8は、駆動側軸部材6が伝達された回転力により回転すると、駆動側軸部材6の先端面当接部65に基端側の先端面81が当接される。コイルばね8は、上記先端面81を介して駆動側軸部材6の回転力が伝達されることで、駆動側軸部材6と同方向に回転する。
従動側軸部材7は、駆動側軸部材6に連動してコイルばね8が回転すると、従動側軸部材7の先端面当接部72にコイルばね8の先端側の先端面83が当接される。従動側軸部材7は、上記先端面当接部72を介してコイルばね8の回転力が伝達されることで、コイルばね8と同方向に従動側軸部材7の軸線LCを中心として回転する。
【0063】
図3に示されるように、貫通孔68の内周面681と挿入軸部75の外周面752との間には隙間Gが設けられている。隙間Gは、軸線LAと直交する方向における過度の撓み振動を規制することができる。また、コイルばね8は、隙間Gの範囲内で、すなわち、貫通孔68と挿入軸部75が互いに干渉しない範囲内で、ねじれたり撓んだりすることで、ねじれ振動や撓み振動を吸収するようになっている。
図3に示されるように、駆動側軸部材6は、コイルばね8の外周側を覆う被覆部63の内周面633と、コイルばね挿入部67の外周面672との間の隙間が、コイルばね8がねじれたり撓んだりできる程度、コイルばね8の線径よりも大きく形成されている。
【0064】
圧縮状態保持装置9は、
図3に示されるように、駆動側軸部材6の側座当接部66および従動側軸部材7の側座当接部73にコイルばね8を挟持させてコイルばね8を圧縮状態で保持するように構成されている。ここで、圧縮状態とは、コイルばね8が、駆動側軸部材6や従動側軸部材7に対して弾性力(復元力)を発揮できる状態を意味する。圧縮状態保持装置9は、駆動側軸部材6やコイルばね8などが回転していないときも、コイルばね8の先端側の側座84を従動側軸部材7の側座当接部73に密着させ、且つ、コイルばね8の基端側の側座82を駆動側軸部材6の側座当接部66に密着させるようになっている。
【0065】
図示される実施形態では、
図3に示されるように、圧縮状態保持装置9は、従動側軸部材7に連結されて、従動側軸部材7の駆動側軸部材6から離れる方向への移動を制限するように構成された移動制限部材90を含む。
【0066】
図3に示される実施形態では、移動制限部材90は、貫通孔911を有する環状部材91と、環状部材91の貫通孔911を軸部が挿通して、軸部の先端が従動側軸部材7の挿入軸部75に形成された雌ねじ部76に螺合する締結部材92(ボルト)とを含む。駆動側軸部材6は、ドラム固定部61が基端部62から突出することで、ドラム固定部61の内周側に形成された凹部611を含む。環状部材91は、
図3に示されるように、凹部611内に収容され、先端側の面912の外周側部分が凹部611の底面612に係止している。
【0067】
上記の構成によれば、環状部材91の基端側の面913が、挿入軸部75に螺合した締結部材92の頭部に係止されるため、環状部材91の基端側への移動が制限される。従動側軸部材7は、圧縮状態のコイルばね8により駆動側軸部材6から離れるように先端側に向かって押されるが、従動側軸部材7に締結部材92を介して連結された環状部材91が、駆動側軸部材6に係止するため、駆動側軸部材6から離れる方向への移動が制限される。移動制限部材90は、従動側軸部材7の移動を制限することで、コイルばねの圧縮状態を保持している。
【0068】
また、上記の構成によれば、締結部材92を交換したり、締結部材92の加えるトルクを調整したりすることで、締結部材92を従動側軸部材7に締結した後であっても、締結部材92の締付力(軸力)の調整(再調整)が可能である。締結部材92の締付力を調整することで、コイルばね8を振動吸収に適した圧縮状態に調整可能である。
【0069】
或る実施形態では、上述した環状部材91は、平座金を含む。この場合には、安価であり、入手が容易である。
また、或る実施形態では、上述した環状部材91は、スラスト力を受け止めるように構成されたスラスト軸受を含む。この場合には、コイルばね8による回転伝達の開始時に、従動側軸部材7が軸線LAの延在する方向に沿って移動することで生じる叩き振動を抑制することができる。
【0070】
また、
図3に示される実施形態では、コイルばね挿入部67の先端面671と、コイルばね挿入部74の先端面741との間に隙間C1が設けられており、挿入軸部75の先端面751と、環状部材91の先端側の面912との間に隙間C2が設けられている。この場合には、締結部材92の締め付けることにより、駆動側軸部材6やコイルばね8が先端側に押されるため、コイルばね8をさらに圧縮することができる。なお、コイルばね8が所望の圧縮状態になっているときは、上記隙間C1および隙間C2が存在していなくてもよい。
【0071】
幾つかの実施形態にかかる刈払機1の回転力伝達装置3は、例えば
図3に示されるように、上述した側座当接部66を含む駆動側軸部材6と、上述した側座当接部73を含む従動側軸部材7と、上述した駆動側軸部材6と従動側軸部材7との間に配置されるとともに、コイルばね8の線材の両方の先端面81、83を介して、駆動側軸部材6と従動側軸部材7との間で回転力を伝達するように構成されたコイルばね8と、側座当接部66および側座当接部73にコイルばね8を挟持させて、コイルばね8を軸方向に、且つあるいは捩じり方向に圧縮状態で保持するように構成された圧縮状態保持装置9と、を備える。
【0072】
上記の構成によれば、刈払機1の回転力伝達装置3は、側座当接部66と側座当接部73との間にコイルばね8を挟持させて、コイルばね8を軸方向に、且つあるいは捩じり方向に圧縮状態で保持するように構成された圧縮状態保持装置9を備える。このため、刈払機1の回転力伝達装置3は、圧縮状態保持装置9により、一方の側座82を側座当接部66に当接させ、且つ、コイルばね8の他方の側座84を側座当接部73に当接させている。上記の構成によれば、当接する部材(駆動側軸部材6、従動側軸部材7)間に摩擦抵抗を生じさせた状態で、コイルばね8の線材の先端面81、83を先端面当接部65や先端面当接部72に接触させることができる。上記当接する部材間に摩擦抵抗を生じさせた状態では、上記摩擦抵抗を生じさせていない場合に比べて、駆動側軸部材6、従動側軸部材7およびコイルばね8が他の部材に拘束されて、これらの部材の振動が抑制されるため、コイルばねの線材の先端面81、83が先端面当接部65や先端面当接部72に接触する際に生じる(接触音)を抑制することができる。
【0073】
上記の構成によれば、刈払機1の回転力伝達装置3は、コイルばね8による回転伝達の開始時に、コイルばね8を駆動側軸部材6や従動側軸部材7に当接させた状態で、コイルばね8を滑動させるので、コイルばね8による回転伝達の開始時に生じる振動を抑制することができる。
また、上記の構成によれば、刈払機1の回転力伝達装置3は、駆動側軸部材6、従動側軸部材7およびコイルばね8が他の部材に拘束されているので、駆動側軸部材6や従動側軸部材7が他方の軸部材に対して撓む(傾く)のを抑制することができる。駆動側軸部材6や従動側軸部材7が他方の軸部材に対して撓むのを抑制することで、回転力伝達装置3の撓み振動を抑制することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示されるように、上述した圧縮状態保持装置9は、従動側軸部材7に連結されて従動側軸部材7の駆動側軸部材6から離れる方向への移動を制限するように構成された上述した移動制限部材90を含む。この場合には、刈払機1の回転力伝達装置3は、従動側軸部材7に連結された移動制限部材90により、従動側軸部材7の駆動側軸部材6から離れる方向への移動を制限することで、コイルばね8の圧縮状態を保持することができる。よって、上記の構成によれば、刈払機1の回転力伝達装置3は、簡単な構成で、コイルばね8による回転伝達の開始時に生じる異音を抑制することができる。
【0075】
なお、他の幾つかの実施形態では、圧縮状態保持装置9は、駆動側軸部材6に連結されて駆動側軸部材6の従動側軸部材7から離れる方向への移動を制限するように構成された移動制限部材を含んでいてもよい。つまり、駆動側軸部材6を第1の軸部材としてもよく、第2の軸部材としてもよい。後述する幾つかの実施形態でも同様である。
【0076】
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示されるように、上述した圧縮状態保持装置9は、上述した移動制限部材90と、駆動側軸部材6を軸線LAが延在する方向に沿って従動側軸部材7に向かって付勢するように構成された付勢部材93と、を含む。
【0077】
図示される実施形態では、付勢部材93は、
図6に示されるように、軸線LAが延在する方向に圧縮させた状態で配置される弾性部材を含む。弾性部材としては、少ない変形量で大きな復元力を発揮可能な円環状の皿ばねやばね座金、円環状の板に波型形状を施し、スラスト荷重を円周で平均して受けることができる波座金などが挙げられる。皿ばね、ばね座金および波座金は、産業用機械などに広く使用されているので、安価であり、且つ、回転力伝達装置における振動吸収に適したばね定数を有するものの入手が容易である。
【0078】
図示される実施形態では、上述した移動制限部材90は、
図6に示されるように、上述した環状部材91と、上述した締結部材92と、を含む。付勢部材93は、環状部材91よりも先端側に配置され、環状部材91とともに凹部611内に収容されている。付勢部材93は、基端側の端部が環状部材91の先端側の面912の外周側部分に当接し、先端側の端部が駆動側軸部材6の凹部611の底面612に当接している。上記の構成によれば、付勢部材93は、移動制限部材90の環状部材91が反力を受けるので、駆動側軸部材6を軸線LA延在する方向に沿って従動側軸部材7に向かって付勢することができる。コイルばね8は、付勢部材93の付勢力により圧縮されるので、適切な圧縮状態を維持することができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示されるように、上述した駆動側軸部材6は、軸線LAが延在する方向に沿って延在し、且つ上述した貫通孔68を有するコイルばね挿入部67(筒状部)を含み、上述した従動側軸部材7は、コイルばね挿入部67の貫通孔68に挿入可能に構成された上述した挿入軸部75を含む。上述した移動制限部材90は、軸線LAが延在する方向における駆動側軸部材6に対して従動側軸部材7とは反対側(基端側)に位置し、且つ、軸線LAが延在する方向に交差(直交)する方向に沿って延在する上述した環状部材91(反力受部)と、挿入軸部75に連結するように構成された締結部材92(連結部)と、を含む。上述した付勢部材93は、軸線LAが延在する方向における環状部材91と駆動側軸部材6との間に配置されている。
【0080】
上記の構成によれば、駆動側軸部材6、従動側軸部材7およびコイルばね8は、移動制限部材90および付勢部材93により、他の部材に拘束されているので、従動側軸部材7が駆動側軸部材6に対して撓む(傾く)のを抑制することができる。また、刈払機1の回転力伝達装置3は、付勢部材93が駆動側軸部材6および従動側軸部材7の軸線方向に沿った移動や、他の軸部材に対する撓みを吸収するので、回転力伝達装置3に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0081】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した環状部材91(反力受部)は、軸線LAが延在する方向に直交する方向における外形寸法D2が、挿入軸部75の外形寸法D1よりも大きくなるように構成された。
図示される実施形態では、外形寸法D2は、外形寸法D1の1.5倍よりも大きい。好ましくは外形寸法D1の2倍よりも大きい。また、外形寸法D2は、ドラム53の周壁部531の内径よりも小さい。図示される実施形態では、外形寸法D2は、ドラム固定部61の内径よりも小さい。
【0082】
上記の構成によれば、環状部材91は、締結部材92を介して従動側軸部材7に連結されているので、従動側軸部材7が駆動側軸部材6に対して傾くと、従動側軸部材7に連動して傾く。ここで、環状部材91の外形寸法D2が大きいと、その分だけ環状部材91が傾いた際の外周側部分の軸線LAが延在する方向への移動量が増えるので、付勢部材93の付勢力を迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、環状部材91は、外形寸法D2が挿入軸部75の外形寸法D1よりも大きいので、外形寸法D2が外形寸法D1と同じ寸法である場合に比べて、付勢部材93の付勢力を迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材93の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置3に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示されるように、上述した付勢部材93は、軸線LAが延在する方向における一端が環状部材91(反力受部)に当接し、且つ、軸線LAが延在する方向における他端が駆動側軸部材6の底面612(第1の軸部材の端面)に当接するように構成された。この場合には、付勢部材93は、軸線LAが延在する方向における一端が環状部材91に当接し、且つ、軸線LAが延在する方向における他端が駆動側軸部材6に当接しているので、駆動側軸部材6や従動側軸部材7が軸線方向に沿った移動や撓みを生じさせた際に、付勢部材93による付勢力を駆動側軸部材6や従動側軸部材7に対して迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材93の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置3に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0084】
図7は、本発明の第3の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態では、上述した移動制限部材90は、
図7に示されるように、環状部材91(反力受部)よりも駆動側軸部材6側(先端側)に設けられて駆動側軸部材6に一端部(先端側の端面942)が当接するように構成されるとともに、環状部材91(反力受部)よりも小径に形成された小径部96をさらに含む。上述した付勢部材93は、環状部材91よりも小さい外形寸法を有するとともに、小径部96の外周に配置された。
【0085】
図示される実施形態では、上述した移動制限部材90は、
図7に示されるように、上述した締結部材92と、段付き部材94と、を含む。
段付き部材94は、
図7に示されるように、上述した環状部材91(大径部)と、環状部材91に一体的に形成された上述した小径部96と、を含む。換言すると、段付き部材94は、先端側に基端側の部分(環状部材91)よりも内周側に凹むように形成された段付き凹部95を有する。段付き凹部95に付勢部材93が環装されている。
【0086】
図7に示される実施形態では、段付き部材94の先端側の端面942は、挿入軸部75の先端面751および凹部611の底面612に当接している。付勢部材93は、基端側の端部が段付き凹部95の段差面951(環状部材91の先端側の面912)に当接し、先端側の端部が駆動側軸部材6の凹部611の底面612に当接している。また、段付き部材94は、上述した締結部材92の軸部が挿通可能な貫通孔941を有し、貫通孔941を挿通する締結部材92を介して、挿入軸部75に連結されている。
【0087】
上記の構成によれば、移動制限部材90は、段付き部材94の先端側の端面942(小径部96の一端部)が駆動側軸部材6に当接した状態で従動側軸部材7に連結しているので、付勢部材93が摩耗や損傷した際の、環状部材91(反力受部)と従動側軸部材7とを連結する連結力の低下を防止することができる。また、移動制限部材90は、段付き部材94の先端側の端面942が駆動側軸部材6に当接しているので、環状部材91(反力受部)と凹部611の底面612(駆動側軸部材6の反力受部側の端部)との間の間隔の変動を防止することができ、ひいては小径部96の外周に配置された付勢部材93に安定した付勢力を発揮させることができる。
また、移動制限部材90は、従動側軸部材7に連結されており、且つ、段付き部材94の先端側の端面942が駆動側軸部材6に当接しているので、従動側軸部材7が駆動側軸部材6に対して傾くのを上記端面942が妨げるので、従動側軸部材7が駆動側軸部材6に対して傾くのを効果的に抑制することができる。
【0088】
図8は、本発明の第4の実施形態にかかる刈払機の回転力伝達装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、上述した付勢部材93は、
図8に示されるように、軸線LAが延在する方向における一端が上述した環状部材91(反力受部)に当接し、且つ、軸線LAが延在する方向における他端が上述した壁面部532に当接するように構成された。この場合には、上述した幾つかの実施形態よりも環状部材91や付勢部材93の外形寸法を大きくすることができる。
【0089】
図示される実施形態では、上述した環状部材91(反力受部)は、
図8に示されるように、軸線LAが延在する方向に直交する方向における外形寸法D3が、挿入軸部75の外形寸法D1よりも大きくなるように構成された。
図8に示される実施形態では、外形寸法D3は、ドラム固定部61の外径よりも大きく、且つ、外形寸法D1の3倍よりも大きい。好ましくは外形寸法D1の5倍よりも大きい。また、外形寸法D3は、ドラム53の周壁部531の内径よりも小さい。
【0090】
上記の構成によれば、駆動側軸部材6は、ドラム53の壁面部532に形成された開口535にドラム固定部61が固定されている。つまり、駆動側軸部材6はドラム53と一体的に設けられている。付勢部材93は、軸線LAが延在する方向における一端が環状部材91(反力受部)に当接し、且つ、軸線LAが延在する方向における他端がドラム53の壁面部532に当接しているので、その外形寸法が大きなものであり、駆動側軸部材6や従動側軸部材7が軸線方向に沿った移動や撓みを生じさせた際に、付勢部材93による付勢力を駆動側軸部材6や従動側軸部材7に対して迅速に発揮させることができる。よって、上記の構成によれば、付勢部材93の付勢力を迅速に発揮させることができるので、回転力伝達装置3に生じる振動を効果的に抑制することができる。
【0091】
図9は、
図3のA-A線矢視に相当する概略断面図であって、駆動側軸部材の貫通孔と従動側軸部材の挿入軸部との間に設けられる回転力伝達機構部の構成を概略的に示す概略断面図である。
図9における矢印Rは、駆動側軸部材6および従動側軸部材7の回転方向を示している。
図9では、駆動側軸部材6の被覆部63やコイルばね8などを省略して示している。
【0092】
幾つかの実施形態では、回転力伝達装置3は、
図9に示されるように、駆動側軸部材6から従動側軸部材7に直接的に回転力を伝達するように構成された回転力伝達機構部31をさらに備える。
図示される実施形態では、回転力伝達機構部31は、
図9に示されるように、歯33と歯溝34とが周方向に交互に配置される第1の噛合部32と、歯36と歯溝37とが周方向に交互に配置されるとともに、第1の噛合部32に噛み合わされるように構成された第2の噛合部35と、を含む。
【0093】
図9に示される実施形態では、第1の噛合部32は、挿入軸部75の外周面752に形成され、第2の噛合部35は、貫通孔68の内周面681に形成されている。なお、他の実施形態では、第1の噛合部32は、コイルばね当接部71の外周面713に形成され、第2の噛合部35は、被覆部63の内周面633に形成されていてもよい。
【0094】
図9に示されるように、第2の噛合部35の歯溝37の溝幅W2は、第1の噛合部32の歯33の歯厚W1よりも長くなるように構成されている。コイルばね8が回転力を伝達していないときは、歯33の回転方向R下流側に位置する壁面331と、歯溝37の回転方向R上流側に位置する壁面371(相手部)との間の間隔は、コイルばね8の先端面81と先端面当接部65との間の間隔と、コイルばね8の先端面83と先端面当接部72との間の間隔を合計した物よりも広くなるように構成されている。
【0095】
コイルばね8は、回転力の伝達を開始した後に、従動側軸部材7の回転が駆動側軸部材6の回転よりも遅れた際に生じるねじり振動を吸収するために広がるようにねじれて、ねじれ振動を吸収する。コイルばね8が所定角度広がるようにねじれると、あるいはコイルばね8が摩滅すると上記壁面311と上記壁面371とが互いに当接し合い、回転力伝達機構部31を介して、駆動側軸部材6から従動側軸部材7に直接的に回転力を伝達するようになっている。
【0096】
上記の構成によれば、回転力伝達機構部31は、圧縮状態保持装置9の軸方向への圧縮力(摩擦力)によりコイルばね8に過大な負荷がかかることや、コイルばね8の叩き摩耗を抑制することができる。
【0097】
幾つかの実施形態にかかる刈払機1は、
図1に示されるように、上述した回転力発生装置11と、上述した刈刃21と、上述した回転力伝達装置3と、を備える。上記の構成によれば、回転力伝達装置3により、コイルばねによる回転伝達の開始時におけるコイルばねの他部品との接触により生じる異音を抑制することができる。
【0098】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0099】
例えば、上述した幾つかの実施形態では、圧縮状態保持装置9は、一つの付勢部材93を含んでいたが、複数の付勢部材93を含んでもよく、これらの複数の付勢部材93は、同種の部材であっても異種の部材であってもよい。
また、上述した幾つかの実施形態で、圧縮状態保持装置9の環状部材91や付勢部材93に表面処理を施したり、グリスなどの潤滑剤を塗って、駆動側軸部材6の底面612などとの接触による環状部材91や付勢部材93の摩耗や損傷を防止してもよい。この場合には、回転力伝達装置3が長期間にわたり安定して振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 刈払機
11 回転力発生装置
12 伝動軸部材
13 ベアリング
14,15 止め環
17 被覆部材
18 スリーブ
2 刈刃ユニット
20 刈刃ケーシング
21 刈刃
22,24 傘歯車
23 刈刃支持軸
3 回転力伝達装置
31 回転力伝達機構部
32,35 噛合部
33,36 歯
34,37 歯溝
4 操作桿
41 操作桿本体
42 軸受
5 遠心クラッチケーシング
51 ハウジング
52 遠心クラッチドラム
53 ドラム
54 回転機構部
55 環状溝
6 駆動側軸部材
61 ドラム固定部
62 基端部
621,622 端面
63 被覆部
63A 被支持部
631 外周面
64,71 コイルばね当接部
65,72 先端面当接部
66,73 側座当接部
67,74 コイルばね挿入部
68 貫通孔
7 従動側軸部材
75 挿入軸部
76 雌ねじ部
77 筒状部
78 軸孔
8 コイルばね
81,83 先端面
82,84 側座
9 圧縮状態保持装置
90 移動制限部材
91 環状部材
92 締結部材
93 付勢部材
121,411 先端部
122,412 基端部
511 装置固定部
512 ドラム収容部
513 ベアリング収容部
514 操作桿取付部
531 周壁部
532 壁面部
533 内部空間
534 内面
535 開口
C1,C2,G 隙間
LA,LB,LC 軸線