(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】配管溶接治具及び管束モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20221117BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20221117BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20221117BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B23K37/04 J
F28F9/26
F28D7/16 D
F28F1/00 E
(21)【出願番号】P 2018241711
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大貫 善啓
(72)【発明者】
【氏名】長 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】本城 幹洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英二
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-65927(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/077635(JP,A1)
【文献】米国特許第4325171(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/04
F28F 9/26
F28D 7/16
F28F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1水平面内でU字状に並んだ第1列U字管要素が載置される複数箇所の第1載置部と、
平面視において前記第1列U字管要素に対し入れ子状となるように第2水平面内でU字状に並んだ第2列U字管要素が載置される複数箇所の第2載置部と、
前記第1列U字管要素が溶接されて成る第1列U字管及び前記第2列U字管要素が溶接されて成る第2列U字管が同一平面内に位置するように、前記第1列U字管及び前記第2列U字管のうち少なくとも一方を上昇又は降下させるリフトとを有し、
前記第1水平面と前記第2水平面とが所定寸法だけ離間している、
配管溶接治具。
【請求項2】
ベースと前記ベースから上方へ突出した柱とからなる櫛歯形状を呈する支持ブロックを含み、前記ベース上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記柱上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられている、
請求項1に記載の配管溶接治具。
【請求項3】
上下に平行に並ぶ上桟部及び下桟部と、それらを上下に繋ぐ柱部とからなるC字形状を呈する支持ブロックを含み、前記下桟部上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記上桟部上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられている、
請求項1に記載の配管溶接治具。
【請求項4】
ベースと、前記ベースに挿通されて当該ベースに対して鉛直方向に進退移動可能な柱と、前記柱を昇降させる前記リフトとを含み、前記ベース上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記柱上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられていている、
請求項1に記載の配管溶接治具。
【請求項5】
第1水平面内で第1列U字管要素をU字状に並べること、
平面視において前記第1列U字管要素に対し入れ子状となるように、前記第1水平面と所定寸法だけ離間した第2水平面内で第2列U字管要素をU字状に並べること、
前記第1列U字管要素同士を溶接して第1列U字管を形成すること、
前記第2列U字管要素同士を溶接して第2列U字管を形成すること、及び、
前記第1列U字管及び前記第2列U字管が同一平面内に位置するように、前記第1列U字管及び前記第2列U字管のうち少なくとも一方を上昇又は降下させること、を含む、
管束モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一平面内で入れ子状に並べられた複数列のU字管からなる管束モジュールの製造方法及びそれに用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状の胴の内部に複数のU字管からなる管束を備えたシェルアンドチューブ型の熱交換器が知られている。特許文献1,2には、この種の熱交換器が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された熱交換器は、外筒と、外筒内を管内流体室と管外流体室とに仕切る管板と、管外流体室内に配置されて両端部が管板に固定された複数のU字管とを備える。
【0004】
また、特許文献2に開示された熱交換器は、円筒形状を成す管群外筒を内部に備える胴部と、管群外筒の下部に設けられた管板と、管群外筒内において両端部が管板と接続された逆U字形を成す複数の伝熱管とを備えた、蒸気発生器である。
【0005】
上記のような熱交換器の製造の過程において、U字管は、同一平面内で入れ子状に並べられた複数列のU字管からなる管束モジュールの態様で取り扱われることがある。各U字管は、短U字形状を成すベンド管部と、ベンド管部の両端から平行に延びる直管部とから構成される。上記のような管束モジュールは、先ず、ベンド管と直管とが突合せ溶接されることによりU字管が作成され、次いで、複数のU字管が入れ子状に並べられ、隣接するU字管同士がスペーサで結合されることによって、製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-141983号公報
【文献】特表2012-102934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
U字管は、重量が大きく、長尺物である上に、ねじれやひずみなどの変形が生じ易い。従って、U字管をクレーンを使って移動させる場合には、U字管が変形しないようにバランス良く吊り下げたり、吊り下げられたU字管と周囲との干渉を避けたりするために細心の注意が必要となる。そのため、管束モジュールの製造工程において、クレーンによるU字管の移動工程を削減することができれば、作業の効率化を図ることができる。
【0008】
クレーンによるU字管の移動工程を削減するためには、U字管の構成要素(即ち、ベンド管及び直管)を予め管束モジュールの状態に並べて、それらを突き合わせて溶接していけばよい。ベンド管や直管は、U字管と比べて取扱いが容易である。しかし、一般に、管束モジュールにおけるU字管同士の間は狭隘であり、その狭隘な間隙に自動周溶接装置の溶接トーチが進入できない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業効率の改善された管束モジュールの製造方法及びそれに用いる配管溶接治具を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る配管溶接治具は、第1水平面内でU字状に並んだ第1列U字管要素が載置される複数箇所の第1載置部と、平面視において前記第1列U字管要素に対し入れ子状となるように第2水平面内でU字状に並んだ第2列U字管要素が載置される複数箇所の第2載置部と、前記第1列U字管要素が溶接されて成る第1列U字管及び前記第2列U字管要素が溶接されて成る第2列U字管が同一平面内に位置するように、前記第1列U字管及び前記第2列U字管のうち少なくとも一方を上昇又は降下させるリフトとを有し、
前記第1水平面と前記第2水平面とが所定寸法だけ離間していることを特徴としている。
なお、上記の所定寸法は、自動周溶接装置の溶接トーチが進入できる寸法以上であってよい。
【0011】
上記構成の配管溶接治具によれば、第1載置部に載置された第1列U字管要素と第2載置部に載置された第2列U字管要素とが鉛直方向に離間する。この鉛直方向の間隙を溶接作業空間として利用して、第1列U字管要素同士の溶接と、第2列U字管要素同士の溶接とを行うことができる。このようにして、溶接作業のための空間が確保され、また、自動周溶接装置の使用が可能となるので、第1列U字管要素と第2列U字管要素とが同一平面内に並ぶ場合と比較して、作業の難度が低減する。そして、第1列U字管又は第2列U字管を上昇又は降下させることによって、同一平面内において入れ子状に並んだ第1列U字管及び第2列U字管を含む管束モジュールを製造することができる。このように、第1列U字管と第2列U字管とを同一平面内に並べる作業が、リフトによる第1列U字管又は第2列U字管の昇降で済むので、クレーンを用いてU字管を吊り上げる場合と比較して、作業時間が短縮され作業の難度が低くなるので、総じて作業効率を高めることができる。
【0012】
前記配管溶接治具は、ベースと前記ベースから上方へ突出した柱とからなる櫛歯形状を呈する支持ブロックを含み、前記ベース上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記柱上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられていてよい。
【0013】
或いは、前記配管溶接治具は、上下に平行に並ぶ上桟部及び下桟部と、それらを上下に繋ぐ柱部とからなるC字形状を呈する支持ブロックを含み、前記下桟部上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記上桟部上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられていてよい。
【0014】
或いは、前記配管溶接治具は、ベースと、前記ベースに挿通されて当該ベースに対して鉛直方向に進退移動可能な柱と、前記柱を昇降させる前記リフトとを含み、前記ベース上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち一方が設けられ、前記柱上に前記第1載置部及び前記第2載置部のうち他方が設けられていてよい。
【0015】
以上のように、配管溶接治具を単純な構成で実現することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る管束モジュールの製造方法は、
第1水平面内で第1列U字管要素をU字状に並べること、
平面視において前記第1列U字管要素に対し入れ子状となるように、前記第1水平面と所定寸法だけ離間した第2水平面内で第2列U字管要素をU字状に並べること、
前記第1列U字管要素同士を溶接して第1列U字管を形成すること、
前記第2列U字管要素同士を溶接して第2列U字管を形成すること、
前記第1列U字管及び前記第2列U字管が同一平面内に位置するように、前記第1列U字管及び前記第2列U字管のうち少なくとも一方を上昇又は降下させること、及び、
前記第1列U字管と前記第2列U字管との間をスペーサを介して結合すること、を含む。
なお、上記の所定寸法は、自動周溶接装置の溶接トーチが進入できる寸法以上であってよい。
【0017】
上記管束モジュールの製造方法では、第1水平面内で並べられた第1列U字管要素と、第2水平面内で並べられた第2列U字管要素とが鉛直方向に離間する。この鉛直方向の間隙を溶接作業空間として利用して、第1列U字管要素同士の溶接と、第2列U字管要素同士の溶接とを行うことができる。このようにして、溶接作業のための空間が確保され、また、自動周溶接装置の使用が可能となるので、第1列U字管要素と第2列U字管要素とが同一平面内に並ぶ場合と比較して、作業の難度が低減する。そして、第1列U字管又は第2列U字管を第2水平面内へ上昇又は降下させることによって、同一平面内において入れ子状に並んだ第1列U字管及び第2列U字管を含む管束モジュールを製造することができる。この第1列U字管と第2列U字管とを並べる作業では、第1列U字管又は第2列U字管を昇降させるだけなので、クレーンを用いるまでもない。よって、クレーンを用いてU字管を吊り上げて移動させる場合と比較して、作業時間が短縮され作業の難度が低くなるので、総じて作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業効率の改善された管束モジュールの製造方法及びそれに用いる配管溶接治具を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る管束モジュールの全体的な構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、配管溶接治具の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、管束モジュールの製造方法の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、複数のU字管が同一平面内で並んだ様子を示す支持ブロックの側面図である。
【
図6】
図6は、変形例1に係る配管溶接治具の支持ブロックの側面図である。
【
図7】
図7は、2種の支持ブロックを用いた管束モジュールの製造過程を説明する図である。
【
図8】
図8は、2種の支持ブロックを用いた管束モジュールの製造過程を説明する図である。
【
図9】
図9は、2種の支持ブロックを用いた管束モジュールの製造過程を説明する図である。
【
図10】
図10は、2種の支持ブロックを用いた管束モジュールの製造過程を説明する図である。
【
図11】
図11は、2種の支持ブロックを用いた管束モジュールの製造過程を説明する図である。
【
図12】
図12は、変形例2に係る配管溶接治具のリフトを含む支持ブロックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
〔管束モジュール1の全体的な構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る管束モジュール1の全体的な構成を示す平面図である。
図1に示す管束モジュール1は、同一平面内で入れ子状に並べられた複数列のU字管3からなる。隣接するU字管3同士の間にはスペーサ4が設けられ、このスペーサ4が隣接するU字管3の双方と結合されることによって、複数列のU字管3が一体化されたパネル状となっている。このような管束モジュール1が層状に重ねられたものが管束であり、管束はシェルアンドチューブ型の熱交換器の構成要素として利用される。
【0022】
U字管3は、短U字形状を呈するベンド管31と、ベンド管31の両端部に接合された直管32,32とから成る。2本の直管32,32は平行に延びる。ここでは、ベンド管31と2本の直管32,32とを合わせて「U字管要素30」と称する。ベンド管31の端部と直管32の端部とは突き合わされた状態で周溶接(配管溶接)されている。
【0023】
〔管束モジュール1の製造方法〕
上記構成の管束モジュール1の製造方法を説明する。先ず、管束モジュール1の製造工程で使用する配管溶接治具5について説明する。
【0024】
図2は、配管溶接治具5の構成を示す平面図である。
図2に示すように、配管溶接治具5は、U字管要素30(及びU字管3)を支持する複数の支持ブロック50と、少なくとも1つのリフト51とを含む。
図2に示す例では、直管32の長手方向に沿って並ぶ4つの支持ブロック50が設けられ、そのうちの2つの支持ブロック50a,50bで直管32が支持され、残りの2つの支持ブロック50c,50dでベンド管31が支持されている。但し、支持ブロック50の数はこれに限定されない。各支持ブロック50は実質的に同一の構成を有するので、そのうち一つの支持ブロック50についてその構造を詳細に説明する。
【0025】
図3は、支持ブロック50の側面図である。
図3に示す支持ブロック50は、ベース55と、ベース55から上方へ突出した複数の柱56とから成る。複数の柱56は一列に並んでおり、支持ブロック50は全体として櫛歯形状を呈する。
【0026】
図3に例示する支持ブロック50は、4列のU字管3を支持するものであり、4本の柱56を有する。但し、柱56の数は、管束モジュール1に含まれるU字管3の数に応じて適宜変更される。各柱56上には、上載置部53が形成されている。全ての上載置部53(より詳細には、全ての上載置部53に載置された管要素)は、同一の水平面L2内に位置する。
【0027】
支持ブロック50上には、複数の下載置部54が形成されている。下載置部54は、隣接する柱56の間に設けられている。また、下載置部54は、複数の柱56のうち最も外側に位置する柱56の外側に設けられている。全ての下載置部54(より詳細には、全ての下載置部54に載置された管要素)は、同一の水平面L1内に位置する。上載置部53と下載置部54とは、溶接作業空間を形成するために十分な所定寸法ΔLだけ鉛直方向に離れている。なお、上記の所定寸法ΔLは、管要素同士を自動周溶接装置を用いて接合する場合には、自動周溶接装置の溶接トーチが進入できる寸法以上であってよい。また、上記の所定寸法ΔLは、管要素同士を配管工が手動で接合する場合には、配管工が溶接トーチを操作できる寸法以上であってよい。
【0028】
支持ブロック50の
図3の紙面上右半分では、管束モジュール1におけるU字管3のピッチと実質的に同じ間隔で、下載置部54と上載置部53とが交互に並んでいる。同様に、支持ブロック50の
図3の紙面上左半分では、管束モジュール1におけるU字管3のピッチと実質的に同じ間隔で、上載置部53と下載置部54とが交互に並んでいる。
【0029】
図3に示すように、上載置部53に、管要素(ベンド管31、直管32)の横断面下部が嵌る凹部が形成されていてよい。このように、上載置部53に形成された凹部に管要素の一部が嵌ることによって、管要素が水平方向へずれないように上載置部53に保持される。同様に、下載置部54に、管の横断面下部が嵌る凹部が形成されていてよい。このように、下載置部54に形成された凹部に管の一部が嵌ることによって、管要素が水平方向へずれないように下載置部54に保持される。
【0030】
リフト51は、
図2に示す例では、直管32を支持する2つの支持ブロック50a,50bの間に配置されている。但し、リフト51の配置はこれに限定されない。リフト51は、管束モジュール1を構成する複数のU字管3を下方より支持できる昇降板511と、昇降板511を昇降駆動する駆動装置512とを備える。駆動装置512は、例えば、油圧ジャッキ、油圧シリンダなどの公知の昇降手段であってよい。本実施形態に係るリフト51はU字管3を昇降させるものであるが、リフト51は支持ブロック50を昇降させるものであってもよい。
【0031】
続いて、上記構成の配管溶接治具5を用いた管束モジュール1の製造工程を、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
先ず、管束モジュール1に含まれる全てのU字管要素30が配管溶接治具5にセットされる(ステップS1)。ここで、支持ブロック50a,50bの上載置部53と下載置部54とに直管32が載置され、支持ブロック50c,50dの上載置部53と下載置部54とにベンド管31が載置される。ベンド管31の両端部は、それぞれ直管32と突き合わされている。なお、ベンド管31を支持する支持ブロック50a,50bと直管32を支持する支持ブロック50c,50dとのうち一方の上載置部53及び下載置部54に凹部が設けられてよい。突合せ接合されるベンド管31と直管32とのうち一方を凹部によって拘束することによって、後述する溶接(仮溶接)時の細かな位置調整が可能となる。
【0033】
図2及び
図3に示す例では、管束モジュール1を構成する外側から1列目と3列目のU字管要素30(30a,30c)が下載置部54に載置され、外側から2列目と4列目のU字管要素30(30b,30d)が上載置部53に載置された状態となっている。つまり、各列を成すU字管要素30は同一平面内にU字状に並び、且つ、隣接する列のU字管要素30が上下に互い違いとなっている。
【0034】
次に、各列のU字管要素30において、突き合わされたベンド管31の端部と直管32の端部とが周溶接される(ステップS2)。これにより、各列のU字管3(3a,3b,3c,3d)が形成される。なお、1~4列目のベンド管31を一度に配管溶接治具5にセットするのではなく、或る列のベンド管31を配管溶接治具5にセットし、その列のベンド管31と直管32とを接合してから、次の列のベンド管31を配管溶接治具5にセットしてもよい。つまり、ステップS1とステップS2とを繰り返すことにより、管束モジュール1を形成する全てのU字管3が形成されてもよい。
【0035】
続いて、下方に位置するU字管3と上方に位置するU字管3との高さレベルが揃えられる(ステップS3)。具体的には、
図5に示すように、下載置部54に載置されたU字管3(3a,3c)が、リフト51によって上載置部53に載置されたU字管3(3b,3d)の高さレベルまで上昇させられる。これにより、管束モジュール1を形成する全てのU字管3の同一平面内に位置する。ここで、下載置部54に載置されたU字管3(3a,3c)のみが上昇するが、上載置部53に載置されたU字管3(3b,3d)も上昇してもよい。
【0036】
続いて、隣接するU字管3同士がスペーサ4で結合される(ステップS4)。ここで、隣接するU字管3の間に金属製のスペーサ4が配置され、隣接するU字管3の双方とスペーサ4とが溶接される。以上の工程により、管束モジュール1が製造される。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態に係る配管溶接治具5は、第1水平面内でU字状に並んだ第1列U字管要素が載置される複数箇所の第1載置部と、平面視において第1列U字管要素に対し入れ子状となるように第2水平面内でU字状に並んだ第2列U字管要素が載置される複数箇所の第2載置部と、第1列U字管要素同士が溶接されて成る第1列U字管及び第2列U字管要素同士が溶接されて成る第2列U字管とが同一平面内に位置するように、第1列U字管及び第2列U字管のうち一方を上昇させるリフト51とを有し、第1水平面と第2水平面とが所定寸法ΔLだけ離間していることを特徴としている。
【0038】
また、上記構成の配管溶接治具5を用いた本実施形態に係る管束モジュール1の製造方法は、第1水平面内で第1列U字管要素をU字状に並べること、平面視において第1列U字管要素に対し入れ子状となるように、第1水平面と所定寸法ΔLだけ離間した第2水平面内で第2列U字管要素をU字状に並べること、第1列U字管要素士を溶接して第1列U字管を形成すること、第2列U字管要素同士を溶接して第2列U字管を形成すること、及び、第1列U字管と第2列U字管とが同一平面内に位置するように、第1列U字管及び第2列U字管のうち少なくとも一方を上昇又は降下させることを含む。
【0039】
上記配管溶接治具5及びそれを用いた管束モジュール1の製造方法において、例えば、第1列U字管が外側から1列目のU字管3aである場合には、第2列U字管は外側から2列目のU字管3bであり、第1載置部が下載置部54であり、第2載置部が上載置部53であり、第1列U字管をリフト51で上昇させる。また、例えば、第1列U字管が外側から2列目のU字管3bである場合には、第2列U字管は外側から3列目のU字管3cであり、第1載置部が上載置部53であり、第2載置部が下載置部54であり、第2列U字管をリフト51で上昇させる。なお、上記の所定寸法ΔLは、自動周溶接装置の溶接トーチが進入できる寸法以上であってよい。
【0040】
上記の配管溶接治具5及び管束モジュール1の製造方法によれば、第1水平面内で並べられた第1列U字管要素と、第2水平面内で並べられた第2列U字管要素とが鉛直方向に離間する。この鉛直方向の間隙を溶接作業空間として利用して、第1列U字管要素同士の溶接と、第2列U字管要素同士の溶接とを行うことができる。このようにして、溶接作業のための空間が確保され、また、自動周溶接装置の使用が可能となるので、第1列U字管要素と第2列U字管要素とが同一平面内に並べられた場合と比較して、作業の難度が低減する。
【0041】
そして、第1列U字管を上昇させることによって、同一平面内において入れ子状に並んだ第1列U字管及び第2列U字管を含む管束モジュール1を製造することができる。この第1列U字管と第2列U字管とを並べる作業は、第1列U字管及び第2列U字管のうち一方を上昇させるだけなので、クレーンを用いるまでもない。よって、クレーンを用いてU字管3を吊り上げて移動させる場合と比較して、作業時間が短縮され作業の難度が低くなるので、総じて作業効率を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る配管溶接治具5は、ベース55とベース55から上方へ突出した柱56とからなる櫛歯形状を呈する支持ブロック50を含み、ベース55上に第1載置部及び第2載置部のうち一方が設けられ、柱56上に第1載置部と第2載置部のうち他方が設けられている。
【0043】
このように単純な構成で配管溶接治具5を実現することができる。
【0044】
〔変形例1〕
次に、上記実施形態の配管溶接治具5の変形例1を説明する。
図6は、変形例1に係る配管溶接治具5Aの支持ブロック50Aの側面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
変形例に係る配管溶接治具5Aは、上下に平行に並ぶ上桟部57a及び下桟部57bと、それらの間を繋ぐ柱部57cとを含み、全体としてC字形を呈する支持ブロック50Aを備える。下桟部57bには、下載置部54が設けられている。また、上桟部57a上には、上載置部53が設けられている。
図2を参照して、複数の支持ブロック50Aは、支持ブロック50と同様に、直管32の長手方向に並べられており、支持ブロック50A同士の間にリフト51が設けられている。
【0046】
この変形例に係る配管溶接治具5Aを用いても、前述の実施形態と同様の管束モジュールの製造方法(ステップS1~S4)で、管束モジュールを製造することができる。また、この変形例に係る配管溶接治具5Aを用いれば、下載置部54にU字管3の要素を載置する場合に、柱56によってU字管3の要素の移動が妨げられないので、作業が容易となる。
【0047】
また、前述の実施形態に係る配管溶接治具5の支持ブロック50(以下、櫛歯形支持ブロック50)と変形例に係る配管溶接治具5Aの支持ブロック50A(以下、C字形支持ブロック50A)とを組み合わせて用いて、前述の実施形態と同様の管束モジュールの製造方法(ステップS1~S4)に則って、次に説明するように管束モジュールを製造することができる。
【0048】
図7に示すように、櫛歯形支持ブロック50は、上昇位置にあるリフト51に支持されている。複数のレール62が設けられており、このレール62にC字形支持ブロック50Aがスライド可能に支持されている。全ての櫛歯形支持ブロック50及びC字形支持ブロック50Aの上載置部53の高さ位置は同じである。同様に、全ての櫛歯形支持ブロック50及びC字形支持ブロック50Aの下載置部54の高さ位置は同じである。
【0049】
先ず、櫛歯形支持ブロック50に内側から1列目のベンド管31が載置され、C字形支持ブロック50Aに1~4列の直管32が載置される。ベンド管31は2つの櫛歯形支持ブロック50に架け渡されている。直管32は2つのC字形支持ブロック50Aに架け渡されている。
【0050】
図7では、櫛歯形支持ブロック50の上載置部53に内側から1列目のベンド管31が載置され、C字形支持ブロック50Aの上載置部53に内側から1及び3列目の直管32が載置され、C字形支持ブロック50Aの下載置部54に内側から2及び4列目の直管32が載置された様子が示されている。櫛歯形支持ブロック50Aの上載置部53及び下載置部54には凹部が形成されているが、C字形支持ブロック50Aの上載置部53及び下載置部54には凹部が形成されていない。そのため、C字形支持ブロック50Aに載置された直管32は、櫛歯形支持ブロック50Aに載置されたベンド管31の端部の位置に合わせるために、C字形支持ブロック50A上で多少の移動が許容される。
【0051】
次いで、内側から1列目のU字管要素、即ち、内側から1列目のベンド管31と内側から1列目の直管32とが突合せ溶接される。続いて、
図8に示すように、櫛歯形支持ブロック50の下載置部54に、内側から2列目のベンド管31が載置される。そして、内側から2列目のU字管要素、即ち、内側から2列目のベンド管31と内側から2列目の直管32とが突合せ溶接される。ここで、内側から1列目のベンド管31と、内側から2列目のベンド管31とは、櫛歯形支持ブロック50によって鉛直方向に離間されており、この鉛直方向の間隙を溶接作業空間として利用して、内側から2列目のU字管要素同士の溶接を行うことができる。上記と同様にして、内側から3列目のU字管要素同士が溶接され、内側から4列目のU字管要素同士が溶接される。
【0052】
図9に示すように、内側から1列目及び3列目のU字管3は上載置部53に支持され、内側から2列目及び4列目のU字管3は下載置部54に支持されている。ここで、
図10に示すように、1~4列目のU字管3の直管32部分が新たな歯形支持ブロック50で支持されたうえで、C字形支持ブロック50Aがレール62に沿って1~4列目のU字管3と鉛直方向に重複しない位置へ移動させられる。続いて、
図11に示すように、全ての歯形支持ブロック50がリフト51により降下される。全ての歯形支持ブロック50は同期して降下することが望ましい。歯形支持ブロック50の降下に伴ってそれに支持された1~4列目のU字管3が降下し、先ず、2列目及び4列目のU字管3がレール62に支持され、続いて、1列目及び3列目のU字管3がレール62に支持される。これにより、1~4列目のU字管3は、レール62に支持されて、同一平面内に位置する。ここで、1~4列目のU字管3の高さレベルを揃える際に、上載置部53に載置されたU字管3及び下載置部54に載置されたU字管3が共に降下するが、上載置部53に載置されたU字管3のみが降下してもよい。最後に、隣接するU字管3同士がスペーサ4で結合されることにより、4列の管束モジュールが形成される。
【0053】
〔変形例2〕
次に、上記実施形態の配管溶接治具5の変形例2を説明する。
図12は、変形例2に係る配管溶接治具5Bのリフト51Bを含む支持ブロック50Bの側面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
本変形例に係る配管溶接治具5Bは、ベース55と、ベース55に挿通され当該ベース55に対して鉛直方向に進退移動可能な柱56と、柱56を昇降させるリフト51Bとを含む支持ブロック50Bを備える。ベース55には、下載置部54が設けられている。また、柱56上には、上載置部53が設けられている。
図2を参照して、複数の支持ブロック50Bは、支持ブロック50と同様に、直管32の長手方向に並べられている。
図12に例示されたリフト51Bは油圧シリンダであるが、リフト51Bの態様はこれに限定されず公知の昇降手段が採用されてよい。
【0055】
この変形例に係る配管溶接治具5Bを用いれば、配管溶接治具5Bに管要素をセットする工程(ステップS1、
図4参照)で、上載置部53と下載置部54とを管要素を搬送するローラコンベヤ(図示略)の搬送面と同一平面内に配置すれば、上載置部53と下載置部54とへローラコンベヤを用いて管要素を搬送することができる。
【0056】
この配管溶接治具5Bを用いれば、下方に位置するU字管3と上方に位置するU字管3とのレベルを揃える工程(ステップS3、
図4参照)で、リフト51Bで柱56がベース55に対して降下することにより、下載置部54に載置されたU字管と上載置部53に載置されたU字管とを同一平面内に配置することができる。
【0057】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び変形例)を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【符号の説明】
【0058】
1 :管束モジュール
3,3a,3b :U字管
4 :スペーサ
5,5A,5B :配管溶接治具
30,30a,30b :U字管要素
31 :ベンド管
32 :直管
50(50a~50c),50A,50B :支持ブロック
51,51B :リフト
511 :昇降板
512 :駆動装置
53 :上載置部
54 :下載置部
55 :ベース
56 :柱
62 :レール