(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ホスファチジルイノシトール含有生理活性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20221117BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20221117BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221117BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20221117BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20221117BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221117BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20221117BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20221117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221117BHJP
A61K 31/683 20060101ALI20221117BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20221117BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20221117BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221117BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20221117BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20221117BHJP
C12P 19/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q19/02
A61Q19/00
A61Q17/00
A61P17/18
A61P17/00
A61P39/00
A61P39/06
A61P43/00 121
A61K31/683
A61K31/685
A61K31/661
A61K31/704
A61K31/23
C12N9/16 D
C12P19/00
(21)【出願番号】P 2018242080
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000231497
【氏名又は名称】日本精化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】仁木 洋子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 香凜
(72)【発明者】
【氏名】小寺 啓貴
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸浩
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/010892(WO,A1)
【文献】特開2004-231544(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028220(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/110205(WO,A1)
【文献】特開2008-260743(JP,A)
【文献】特開2015-027260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 17/00
A61P 17/18
A61P 39/00
A61P 39/06
A61P 43/00
A61K 31/683
A61K 31/685
A61K 31/661
A61K 31/704
A61K 31/23
C12N 9/16
C12P 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)~(3)の工程を
順に行う方法にて製造されるホスファチジルイノシトール(PI)を40~75重量%含む組成物を含有する美白剤。
(1):
PI又はPCを基質とした際のPLB活性をそれぞれ測定し、PCに対するPIの活性比率を求めたとき、その活性比率が10%以下である、Candida cylindracea由来のホスホリパーゼBを
大豆由来のレシチンに作用させる工程
(2):PIを
ヘキサン又はヘキサン-エチルアルコール混合液で抽出する工程
(3):
アセトン又はエチルアルコールを用いてPIを沈殿回収する工程
【請求項2】
組成物がホスファチジルイノシトール以外にステリルグルコシドを3~10重量%、ホスファチジルエタノールアミンを2~8重量% 、ホスファチジル酸を0.1~2重量%、トリグリセライドを1~5重量%含むことを特徴とする請求項
1に記載の剤
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の製法で得られるホスファチジルイノシトールを高濃度で含む組成物を含有する美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レシチンは動物又は植物から得られるグリセロリン脂質の総称であり、天然の乳化剤として食品、化粧品、医薬品などに幅広く使用されている。レシチンの構成成分は、リン酸基に結合した極性基の構造により分類され、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)などが主要な成分であることが知られている。近年においては、これら各々の機能・効能に着目した研究がなされており、この中でPIは細胞内外の情報伝達機能に深く関わっていることが知られ、また、PI摂取による血中のトリグリセリド濃度減少やHDLコレステロール増加といった生理作用が報告されている。また、肌のヒアルロン酸増量(特許文献1)やNrf2活性増強(特許文献2)といった生理作用も報告されている。PIを有効成分として各種用途に使用するにあたっては、PIを高濃度に含む組成物を得ることが重要であり、その手法として古くからレシチンを溶剤分別(例えば特許文献3)やカラム精製によって分画する方法が用いられているが、製造の煩雑さやコスト面で課題があった。
【0003】
一方で最近、PIには実質的に作用せずPI以外のリン脂質に特異的に作用する基質特異性を有するホスホリパーゼBを用いてPIを効率的に製造する方法(特許文献4、5)が開発されている。この製法によればPIを高濃度に含む組成物を工業的かつ安価に入手することが可能である。本製法で得られるPIを高濃度に含む組成物については、特許文献4に食料、医薬品又は化粧品へ利用できる旨が記載されているものの、その機能については必ずしも十分に研究されておらず、現在のところその利用は食品用途に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/110205号
【文献】特開2011-168541号
【文献】特開昭60-246305号
【文献】国際公開第2007/010892号
【文献】特開2015-27260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、特許文献4や5の製法で得られるホスファチジルイノシトールを高濃度に含む組成物について、新たな機能を見出し、食品以外の新たな用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下の(1)~(3)の工程を含む方法にて製造されるホスファチジルイノシトールを高濃度に含む組成物に、様々な生理活性作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
(1):PIに実質的に作用しない基質特異性を有するホスホリパーゼBをレシチンに作用させる工程
(2):PIを有機溶媒で抽出する工程
(3):親水性溶剤を用いてPIを沈殿回収する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明のホスファチジルイノシトールを高濃度に含む組成物は、美白作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、細胞内活性酸素消去作用、刺激緩和作用等の優れた生理活性作用を有するとともに、その効果はホスファチジルイノシトールを単独で使用するよりも優れている。したがって、本発明の組成物は美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤として好ましく利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、以下の(1)~(3)の工程を含む方法にて製造されるホスファチジルイノシトール(PI)を高濃度に含む組成物を含有する美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤に関するものである。
(1):PIに実質的に作用しない基質特異性を有するホスホリパーゼBをレシチンに作用させる工程
(2):PIを有機溶媒で抽出する工程
(3):親水性溶剤を用いてPIを沈殿回収する工程
【0009】
本発明のホスファチジルイノシトール(PI)を高濃度に含む組成物(以下高濃度PI組成物という)は、前述した(1)~(3)の工程を含む方法にて製造されるものであるが、その詳細について以下に述べる。
【0010】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(1)に使用されるレシチンとしては、大豆、菜種、ヒマワリ、サフラワー、落花生、綿実、トウモロコシ、米、大麦などの植物や卵黄から得られる天然レシチン及びこれらの水素添加物が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明では、植物由来のレシチンを使用することが好ましく、大豆又はヒマワリ由来のレシチンがより好ましく、大豆由来のレシチンが最も好ましい。
【0011】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(1)に使用される基質特異性を有するホスホリパーゼBについて説明する。ホスホリパーゼB(PLB)とは、グリセロリン脂質中のグリセロール基のα位及びβ位にエステル結合した脂肪酸に作用して加水分解する活性を有する酵素の総称である。本発明で使用されるPLBは、PIには実質的に作用せず、PI以外のPC、PE、PS、PA等のリン脂質に特異的に作用する基質特異性を有するものである。このようなホスホリパーゼBとしては、特許文献4に記載されているCandida cylindraceaや、特許文献5に記載されているPenicillium camanbertti、Penicillium Roqueforti、Rhizupus orysae等の微生物由来の酵素を使用することができる。これらのうちCandida cylindracea由来の酵素が最も好ましい。
【0012】
本発明においてPIに実質的に作用しない基質特異性を有するとは、PI又はPCを基質とした際のPLB活性をそれぞれ測定し、PCに対するPIの活性比率(相対活性)を求めたとき、その活性比率が10%以下、好ましくは5%以下であることを意味する。一方、PCに対するPI以外のリン脂質(PE、PS、PA)の活性比率(相対活性)は、20~150%、好ましくは30%~100%と、PIに比較して十分に高いことを意味する。なお、PLB活性測定の詳細は特許文献4に記載されている。
【0013】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(1)におけるホスホリパーゼB(PLB)をレシチンに作用させる条件としては、特許文献4や5に記載されてた条件で行えばよい。具体的には、PLBをレシチン1kgあたり1000~100000000単位、より好ましくは2000~5000000単位の範囲で使用する。レシチンは予めホモジナイザー等を使用して水に均一に分散した水分散液に調製するとよい。水分散液中のレシチン濃度は、PLBが作用しうる濃度であれば特に制限はないが、1~20重量%、好ましくは5~10重量%、特に好ましくは6~8重量%の範囲にするとよい。レシチンとPLBを作用させる際のpHは、pH3~10の範囲であり、PLBの活性が最大になるpH5.5~6.5付近に調整することがより好ましい。この際、pHを一定に保つために緩衝液を使用することが好ましく、pH5.5~6.5の範囲で緩衝能を有する緩衝液であればその種類は特に限定されない。また、緩衝液を使用する代わりに反応中にアルカリ溶液を適宜添加して反応液のpHを好ましい範囲にコントロールすることもできる。作用させる温度はPLBが失活しない範囲で行えばよく、上限としては60℃以下、より好ましくは45℃以下であり、下限としては10℃以上、より好ましくは30℃以上である。反応時間は上記の酵素反応条件によって異なり、通常1~150時間であるが、基質の残存量を定量的に把握して反応を止めればよい。反応終了後、熱処理、pH処理などによりPLBを失活させても何ら問題はない。
【0014】
上記の方法で工程(1)を実施することにより、レシチン中のPI以外のPC、PE、PS、PA等のリン脂質は選択的に加水分解され、遊離脂肪酸と、グリセロホスフォリルコリン(GPC)、グリセロホスフォリルエタノールアミン(GPE)、グリセロホスフォリルセリン(GPS)、グリセロリン酸(GPA)などの脱アシル化リン脂質となり、一方、PIは加水分解されずにそのまま残存させることができる。
【0015】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(2)に使用される有機溶媒としては、クロロホルム、メチレンクロライド、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、及び、これらとイソプロピルアルコール、エチルアルコールなどとの混合液等を使用できるが、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、及び、これらとエチルアルコールとの混合液が好ましく、ヘキサン又はヘキサン-エチルアルコール混合液がより好ましい。
【0016】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(2)においてPIを抽出するとは、工程(1)の反応液に前述した有機溶媒を加えて混合した後に静置し、有機溶媒相と水相に分液させて、有機溶媒相に工程(1)で残存したPIを抽出することを意味する。この際、無機塩及び/またはキレート剤の存在下で行うとより好ましい。なおこの工程では、工程(1)の加水分解生成物である遊離脂肪酸も有機溶媒に可溶であるため有機溶媒相に抽出される。もう一方の加水分解生成物であるGPC、GPE、GPS、GPAなどは水に可溶であるため水相に残存することとなり、これらの成分はこの工程において除去される。
【0017】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(3)に使用される親水性溶剤としては、アセトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、及び、これらと水との混合液等が使用できるが、アセトン、エチルアルコール、及び、これらと水との混合液等がより好ましく使用できる。
【0018】
本発明の高濃度PI組成物の製造工程(3)においてPIを沈殿回収するとは、詳細には、まず初めに工程(2)で得られたPIが抽出された有機溶媒溶液、又は、該溶液から有機溶媒を回収して得られる濃縮物に、前述した親水性溶剤を添加する操作を行う。PIはこのような親水性溶剤に不溶であるため、このような操作によりPIを沈殿析出させることができる。析出したPIは、濾過又は遠心分離等の方法により親水性溶剤と分離し、さらに乾燥させることで目的の高濃度PI組成物を粉末として回収することができる。なおこの工程では、遊離脂肪酸は親水性溶媒に可溶であるため、遊離脂肪酸はこの工程において除去される。
【0019】
以上のようにして得られる本発明の高濃度PI組成物は、PIを40~75重量%、より好ましくは45~70重量%含むものとして得ることができる。このような製造方法は、溶剤分別やカラム精製等の従来の高濃度PI組成物を得る手法に比較して、効率性が高く、スケールアップも容易であるため、工業的かつ安価に高濃度PI組成物を得る方法として最適である。本発明で使用される高濃度PI組成物としては、前述した製法で製造したものが使用できるほか、大豆レシチン由来の高濃度PI組成物としてソイブレインPI50(ユニテックフーズ製)が市販されており、本発明ではこのような市販品も好ましく使用することができる。
【0020】
本発明の高濃度PI組成物はPIを高濃度で含むものであるが、PI以外の成分も含有するものである。具体的には、本願発明者らは組成物中の各成分をカラムクロマトグラフィーの手法により分離し、各種分析機器を用いて解析したところ、ステリルグルコシドを3~10重量%、ホスファチジルエタノールアミンを2~8重量%、ホスファチジル酸を0.1~2重量%、トリグリセライドを1~5重量%程度含み、かつ、それ以外に未同定の成分を15~35重量%程度含むことを確認した。したがって本発明の高濃度PI組成物は、その組成物を構成するすべての成分を明らかにすることが困難であり、その製造方法により組成物が特定されるべきものである。
【0021】
本発明の高濃度PI組成物は、美白作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、細胞内活性酸素消去作用、刺激緩和作用等の優れた生理活性作用を有するものである。したがってこれらの作用に基づき、美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤として利用することができる。また、このような生理活性作用はPI単独よりも本発明の組成物の方が優れており、これは本発明の組成物に含まれるPI以外の各成分(未同定成分を含む)の影響によるものと推測される。本発明の高濃度PI組成物の美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤への配合量としては、特に制限はなく、0.01~99重量%好ましくは、0.1~90重量%程度配合するとよい。
【0022】
本発明の高濃度PI組成物を含有する美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤の生体への投与方法としては、経口投与、注射による投与、経皮投与等が挙げられる。投与量としては、本発明の効果が得られる量であればよく、特に制限はなく、製剤の剤型、適用部位、年齢、性別などに応じて適宜調整するとよい。本発明の高濃度PI組成物は、そのまま用いてもよいが、一般的な基剤、例えば、水、ゲル、多価アルコール、ワセリン、パラフィン、植物油、シリコーン油等に溶解、分散又は混合して使用するとよい。また、必要に応じて各種添加剤を併用することができる。使用できる添加剤としては、所望の剤型を得るために通常用いられるものであれば特に制限はなく、賦形剤、着色剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、保湿剤、pH調整剤等の公知のものを適宜選択して使用すればよい。或いは、所望の効果を発揮させる有効成分として、医薬品や化粧品の一成分として配合して投与してもよい。医薬品の場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤等の経口剤;外皮用剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤、口腔剤、坐剤等の外用剤;点滴剤、注射剤等の非経口剤に配合することできる。化粧品の場合は、化粧水、ローション、ジェル、乳液、美容液、クリーム、パック、洗顔料、ボディ洗浄料等の皮膚化粧料;ファンデーション、口紅、リップグロス、マスカラ等のメイクアップ化粧料;シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアミスト、ヘアワックス、セットローション、カラーローション、ヘアマニキュア、育毛剤等の毛髪化粧料に配合することができる。
【0023】
本発明の高濃度PI組成物を含有する美白剤、コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、細胞内活性酸素消去剤、刺激緩和剤には、さらに同様の生理活性を有する成分や、シワ改善や血行促進等の効能を有する成分を併用することができる。このような成分を併用することで、本発明の効果を相乗的に発揮させることが可能である。
【0024】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうる美白剤としては、具体的には、β-アルブチン、α-アルブチン等のヒドロキノン配糖体及びそのエステル類;アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸リン酸エステル塩;アスコルビン酸モノステアリン酸エステル、アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル等のアスコルビン酸脂肪酸エステル類;3-O-エチルアスコルビン酸、2-O-エチルアスコルビン酸、セチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ヘキシルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸エーテル類;アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸グルコシドおよびその脂肪酸エステル類;アスコルビン酸硫酸エステル、リン酸トコフェリルアスコルビル等のアスコルビン酸誘導体;トラネキサム酸、トラネキサム酸セチル、トラネキサム酸アミド等のトラネキサム酸誘導体;フロロタンニン、クルクミン、アントシアニン、プロアントシアニン、カテキン、エラグ酸、リンゴポリフェノール等のポリフェノール類;ニコチン酸アミド、コウジ酸、エラグ酸、4-メトキシサリチル酸、リノール酸、フェルラ酸、プラセンタエキス、グルタチオン、オリザノール、ブチルレゾルシノール、グラブリジン、レスベラトール、リポ酸、グルコシルセラミド、エルゴチオネイン、フィトール、ヒノキチオール、システイン、ゲンチシン酸、メバロン酸、没食子酸、オルチニン、グルコシルルチン;並びに、カミツレ、カンゾウ、ユキノシタ、クワ、トウキ、ワレモコウ、シャクヤク、オウゴン、オトギリソウ、イタドリ、チャ、シソ、モモ葉、ユキミソウ、ササユリ葉、アロエ、セイヨノコギリソウ、フジバカマ、カッコン、アルニカ、ウワウルシ、ウスバサイシン、エイジツ、アスパラガス、キキョウ、ワイルドタイム、マロエニ、スイカズラ、ヨモギ、ヤマモモ、キイチゴ、スターフルーツ葉、アーティチョーク葉、アンズ種子、ライチ種子、ブロッコリースプラウト、キナ、コンフリー、キョウニン、クチナシ、クララ、トウヒ、バクモンドウ、シモツケ、アセロラ、チョウジ、イノバラ、ヨクイニン、セイヨウシナノキ、ゴマ、センブリ、ジオウ、セイヨウハッカ、ゲンチアナ、ゴレンシ、サイシン、ショウガ、アルテア、ロート、ローズマリー、ブドウ種子、バイビスカス、ツキミソウ種子、キウイ種子等の美白作用を有する植物抽出物が例示できる。
【0025】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうるコラーゲン産生促進剤としては、具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸リン酸エステル塩;アスコルビン酸モノステアリン酸エステル、アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル等のアスコルビン酸脂肪酸エステル類;3-O-エチルアスコルビン酸、2-O-エチルアスコルビン酸、セチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ヘキシルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸エーテル類;アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸グルコシドおよびその脂肪酸エステル類;アスコルビン酸硫酸エステル、リン酸トコフェリルアスコルビル等のアスコルビン酸誘導体;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、水素添加レチノール等のビタミンA類;ニコチン酸アミド、グルタチオン、システイン、クロセチン、セリシン、ゲラニオール、グリセリングルコシド、ラクトフェリン、プロアントシアニン、パントテン酸、パンテノール、大豆サポニン、レベラストール、イソフラボン、コエンザイムQ10、コンドロイチン硫酸、アセチルグルコサミン、グリセロフォスファチジルコリン、加水分解ヒアルロン酸、コラーゲンペプチド、コンキオリン加水分解物、アデノシン5'一リン酸、プロリン、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、アラニン;並びに、ハイビスイカス、カンゾウ葉、ローマカミツレ、アマチャ、サンザシ、ホウセンカ、ハス葉、カッコン、ハナビラタケ、クロレラ、クマザサ、ゴボウ、クジン、サイシン、ビワ葉、シソ、エンドウ、クワ葉、タイム、トウヒ、オドリコソウ、ツユクサ、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、ワレモコウ、クララ、カキ、シャクヤク、シソ、チンピ、ゼニアオイ、ショウキョウ、カミツレ、イチゴ種子、センブリ、ダイズ、コムギ、ニンジン、ハチムギ、ボタンボウフウ、カルダモン、ローズマリー、セージ等のコラーゲン産生促進作用を有する植物抽出物が例示できる。
【0026】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうるヒアルロン酸産生促進剤としては、具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸リン酸エステル塩;アスコルビン酸モノステアリン酸エステル、アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル等のアスコルビン酸脂肪酸エステル類;3-O-エチルアスコルビン酸、2-O-エチルアスコルビン酸、セチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ヘキシルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸エーテル類;アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸グルコシドおよびその脂肪酸エステル類;アスコルビン酸硫酸エステル、リン酸トコフェリルアスコルビル等のアスコルビン酸誘導体;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、水素添加レチノール等のビタミンA類;ニコチン酸アミド、カロテン、トコフェロール、トコトリエノール、コンドロイチン硫酸、アセチルグルコサミン、グリセロフォスファチジルコリン、グリセリングルコシド、加水分解ヒアルロン酸、コラーゲンペプチド、シトステロール、カルノシン、クレアチン、フィチン酸、N-メチルセリン、3-メチルシクロペンタデカノン、サポニン、ゲニステイン、ダイゼイン、フィトール;並びに、マジョラム、セイヨウハッカ、アップルミント、シソ、エゴマ、レモン、モウコグワ、ロウソ、パンノキ、コウゾ、カジノキ、イチジク、アオサ、ウスベニアオイ、ツユキソウ、オウバク、ドクダミ、セイヨウノコギリソウ、アーモンド、サンザシ、アマニ、クチナシ、イラクサ、イチゴ種子、スターフルーツ、パッションフルーツ、ウミブドウ、サフラン、ツバキ、カボチャ、ヘチマ、アスパラガス、アマチャズル、クララ、ケイヒ、シャクヤク、カキ、タンジン、ツボクサ、プーアル、マイタケ、ジュンサイ、トクサ、カリン、カミツレ等のヒアルロン酸産生促進作用を有する植物抽出物が例示できる。
【0027】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうる細胞内活性酸素消去剤としては、具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩及びアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸リン酸エステル塩;アスコルビン酸モノステアリン酸エステル、アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル等のアスコルビン酸脂肪酸エステル類;3-O-エチルアスコルビン酸、2-O-エチルアスコルビン酸、セチルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、ヘキシルグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸エーテル類;アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸グルコシドおよびその脂肪酸エステル類;アスコルビン酸硫酸エステル、リン酸トコフェリルアスコルビル等のアスコルビン酸誘導体;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、水素添加レチノール等のビタミンA類;トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類;カロテン、リコピン、アスタキサンチン、ルテイン等のカロテノイド類;フロロタンニン、クルクミン、アントシアニン、プロアントシアニン、カテキン、エラグ酸、リンゴポリフェノール等のポリフェノール類;コエンザイムQ10、リポ酸、ラクトフェリン、セサミン、リグナン、クロロゲン酸、ルチン;並びに、オウゴン、ローズマリー、ビワ、ホップ、ノバラ、ルイボス、ハマメリス、タイム、ゲンチアナ、ボタン、コンキオリン、ワレモコウ、キクカ、キャロット、サルビア、レンギョウ、ソウハクヒ、ペパーミント、カキョク、レモン、オリーブ葉、オトギリソウ、ブドウ葉、アシタバ、アセンヤク、イチョウ、イラクサ、カワラヨモギ、ゼニアオイ、ウーロン茶、エイジツ、ヒキオコシ、ヨモギ、カミツレ、カンゾウ、キンギンカ、クララ、ゲンノショウコ、紅茶、コンフリー、サボンソウ、セージ、サンザシ、シナノキ、シャクヤク、ドクダミ、シラカバ、セイヨウキズタ、セイヨウネズ、ツボクサ、チャ、チョウジ、チンピ、テンチャ、トウキンセンカ、セイヨウニワトコ、ゴレンシ、サイシン、ニンドウ、セイヨウハッカ、メリッサ、モモ葉、ヤグルマギク、ユキノシタ、ユズ、クワ等の細胞内活性酸素消去作用を有する植物抽出物が例示できる。
【0028】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうる刺激緩和剤としては、具体的には、マンノシルエリスリトールリピッド、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、N-アシル-L-グルタミン酸、トレハロースモノ脂肪酸エステル、脂肪酸アミドアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド、フェニルエチルグルコシド、ラウリルグルコシド、フェルラ酸グルコシド、サリシン、セドロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;並びに、ベニフウキ、メキシカーナ、ペパーミント、アセニヤク、オリーブ等の刺激緩和作用を有する植物抽出物が例示できる。
【0029】
本発明の高濃度PI組成物と併用しうるシワ改善剤としては、具体的には、三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸Na、レチノール、ニコチン酸アミド、トラネキサム酸、3-O-エチルアスコルビン酸等が例示できる。血行促進剤としては、カプサイシン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、トコフェロール、酢酸トコフェロール、オリザノール、dl-カンフル、ニンジンエキス、イチョウ葉エキス、トウキエキス、シラカバエキス、ケイヒエキス、ボタンエキス、サフランエキス、コムギ胚芽エキス、ショウガ根茎エキス、トウガラシエキス、カロットエキス、セージエキス、ヨモギエキス、アシタバエキス等が例示できる。
【実施例】
【0030】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0031】
本発明の高濃度PI組成物について、美白作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、細胞内活性酸素消去作用、刺激緩和作用を下記の試験にて確認した。本試験において、本発明の高濃度PI組成物としてユニテック社のソイブレインPI50を使用した。また、本品からカラムクロマトグラフィーの手法によりPIのみを単離したもの(以下高純度PIという)を比較として使用した。なお、本品に含まれる各成分の組成は、カラムクロマトグラフィー手法による分離と、HPLC、NMR、IR等の分析機器を用いた解析により、表1の組成であることを確認した。
【0032】
【0033】
<メラニン生成抑制効果>
表2に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、B16F10マウスメラノーマ細胞を72時間培養した。添加培養終了後、回収した細胞に10%ジメチルスルホキシドを含有した2N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、60℃に加温して細胞溶解液とした。得られた細胞溶解液について450nmの吸光度を測定することで色素細胞中のメラニン量を測定した。また細胞溶解液のタンパク質濃度を牛血清由来アルブミン(Thermo scientific社)を標準としてProtein Assay Dye Reagent Concentrate(BIO-RAD社)を用いて定量し、単位タンパク質量当たりのメラニン量を算出した。コントロールとして被験試料が無添加の培地におけるメラニン量を同様に測定した。結果はコントロールのメラニン量を100%とした相対値として表2に示した。
【0034】
【0035】
表2の結果より、本発明の組成物は無添加のみならず高純度PIと比較してもメラニン量が減少しており、優れたメラニン生成抑制作用(美白作用)があることが分かった。
【0036】
<コラーゲン産生促進評価>
表3に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、正常ヒト真皮線維芽細胞を72時間培養した後、培地上清中のI型コラーゲン量をELISA法により定量した。コントロールとして被験試料が無添加の培地におけるI型コラーゲン量を同様に定量した。結果はコントロールのI型コラーゲン量を100%とした相対値として表3に示した。
【0037】
【0038】
表3の結果より、本発明の組成物は無添加と比較してI型コラーゲン量が有意に増加しており、優れたI型コラーゲン産生促進作用があることが分かった。
【0039】
<ヒアルロン酸産生促進評価>
表4に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、正常ヒト表皮細胞を72時間培養した後、培地上清中のヒアルロン酸量をELISA法により定量した。コントロールとして被験試料が無添加の培地におけるヒアルロン酸量を同様に定量した。結果はコントロールのヒアルロン酸量を100%とした相対値として表4に示した。
【0040】
【0041】
表4の結果より、本発明の組成物は無添加のみならず高純度PIと比較してもヒアルロン酸量が増加しており、優れたヒアルロン酸産生促進作用があることが分かった。
【0042】
<細胞内活性酸素消去評価>
表5に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、正常ヒト表皮細胞を24時間培養した後、Hank’s平衡塩溶液(-)(HBSS(-))で洗浄し、活性酸素を検出する蛍光プローブである2’-7’-Dichlorofluorescin(SIGMA社)を20μM濃度で含んだHBSS(-)に45分間暴露して蛍光プローブを細胞に取込ませた。その後、活性酸素として500μMの過酸化水素を含むHBSS(-)に暴露して1時間後の細胞内活性酸素量を蛍光プレートリーダー(EX/EM485/535nm)にて定量した。コントロールとして被験試料が無添加の培地における細胞内活性酸素量を同様に定量した。結果はコントロールの細胞内活性酸素量を100%とした相対値として表5に示した。
【0043】
【0044】
表5の結果より、本発明の複合体は無添加のみならず高純度PIと比較しても細胞内活性酸素量が減少しており、優れた細胞内活性酸素消去作用があることが分かった。
【0045】
<SLS誘発性細胞内活性酸素の抑制評価>
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)10 μg/mLと表6に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、正常ヒト表皮細胞を24時間培養した後、Hank’s平衡塩溶液(-)(HBSS(-))で洗浄し、活性酸素を検出する蛍光プローブである2’-7’-Dichlorofluorescin(SIGMA社)を20μM濃度で含んだHBSS(-)に45分間暴露して蛍光プローブを細胞に取込ませ、細胞内活性酸素量を蛍光プレートリーダー(EX/EM485/535nm)にて定量した。コントロールとして被験試料が無添加(SLSのみ)の培地における細胞内活性酸素量を同様に定量した。結果はコントロールの細胞内活性酸素量を100%とした相対値として表6に示した。
【0046】
【0047】
<SLSによる細胞毒性の抑制評価>
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)25 μg/mLと表7に記載の濃度で各被験試料を添加した培地において、正常ヒト表皮細胞を24時間培養した後、WST-8(同仁化学研究所)による染色及び吸光度(450nm)測定により細胞生存率を算出した。結果はコントロール(SLSおよび被験試料が無添加)の細胞生存率を100%とした相対値として表7に示した。
【0048】
【0049】
SLSの暴露は細胞膜への相互作用を介して細胞内活性酸素の上昇を惹き起こし、荒れ肌の誘発に繋がることが示唆されている。また、SLS暴露による細胞生存率の低下(細胞毒性)は、刺激につながると考えられている。本発明の組成物は、表6の結果よりSLSによる細胞内活性酸素の上昇を抑制し、また、表7の結果よりSLSによる細胞毒性を緩和させており、このことから本発明の組成物は刺激緩和作用を有すると推測された。