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特許7178272マイクロ波照射装置用の連通部材、マイクロ波照射装置、およびマイクロ波照射方法
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  • 特許-マイクロ波照射装置用の連通部材、マイクロ波照射装置、およびマイクロ波照射方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】マイクロ波照射装置用の連通部材、マイクロ波照射装置、およびマイクロ波照射方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/76 20060101AFI20221117BHJP
   H05B 6/64 20060101ALI20221117BHJP
   A23N 12/04 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H05B6/76 G
H05B6/64 J
A23N12/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019004838
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020113490
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】黒川 俊司
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英和
(72)【発明者】
【氏名】大澤 沙祈子
(72)【発明者】
【氏名】峰久 浩二
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254929(JP,A)
【文献】実開昭54-044467(JP,U)
【文献】実開昭53-044339(JP,U)
【文献】特開2006-147553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/76
H05B 6/64
A23N 12/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波照射装置の加熱容器と連通する位置に配置される、マイクロ波照射装置用の連通部材であって、
マイクロ波の通過を遮断可能な口径および長さの複数の筒状通路と、
底部と壁部とを有する凹部と、を備え、
前記底部と前記筒状通路の一方の端部とが連通している、マイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項2】
前記連通部材は、前記加熱容器の排気口に配置され、前記加熱容器で揮発した揮発成分を通過させるとともに、前記加熱容器に放射されたマイクロ波を遮断する機能を有する、請求項1に記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項3】
前記複数の筒状通路は、1つの柱状部材の内部に穿設して形成されている、請求項1または2に記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項4】
前記柱状部材の形状が円柱状である、請求項3に記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項5】
前記連通部材は、複数の筒部を有し、
前記複数の筒部はそれぞれ内部に筒状通路を有する、請求項1または2に記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項6】
前記複数の筒状通路は、断面形状が円形である、請求項1ないし5のいずれかに記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項7】
前記マイクロ波照射装置に着脱自在である、請求項1ないしのいずれかに記載のマイクロ波照射装置用の連通部材。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載の連通部材が、前記加熱容器と連通する位置に配置された、マイクロ波照射装置。
【請求項9】
前記連通部材が、前記加熱容器の排気口に設置され、前記加熱容器で揮発した揮発成分を通過させるとともに、前記加熱容器に放射されたマイクロ波を遮断する、請求項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項10】
前記加熱容器は複数の排気口を有し、前記複数の排気口のそれぞれに前記連通部材を配置する、請求項に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項11】
マイクロ波の通過を遮断可能な口径および長さの複数の筒状通路と、底部と壁部とを有する凹部と、を備え、前記底部と前記筒状通路の一方の端部とが連通している、マイクロ波照射装置用の連通部材を、マイクロ波照射装置の加熱容器と連通する位置に配置する、マイクロ波照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波の漏洩を防止するためのマイクロ波照射装置用の連通部材、それを用いたマイクロ波照射装置およびマイクロ波照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を収容した容器内にマイクロ波を照射することで、対象物を加熱し、対象物から揮発成分を抽出するマイクロ波照射装置が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のマイクロ波照射装置では、被照射物の揮発成分を抽出するために、マイクロ波が照射される加熱釜と、揮発成分を冷却する冷却管と、加熱釜と冷却管とを結ぶ配管とを有する構成を有し、加熱釜で蒸発させた揮発成分が配管を通過して冷却管まで移動し、冷却管で冷却され凝縮液として回収される。しかしながら、このようなマイクロ波照射装置においては、加熱釜で揮発した揮発成分を冷却管で冷却するために、加熱釜、配管および冷却管が連通する構成を有しており、加熱釜に照射されたマイクロ波が配管や冷却管まで到達し、場合によっては、マイクロ波照射装置の外部にマイクロ波が漏洩するおそれもあった。
【0005】
マイクロ波の漏洩を防止するために、加熱釜の開口や配管の口径をマイクロ波が通過できない大きさとすることが考えられるが、このような場合、揮発成分が配管を通過する量を制限することとなり、抽出速度や乾燥速度が低下してしまうという問題があった。また、マイクロ波の漏洩を防止するために、マイクロ波が通過できない径の孔を有するパンチングメタルを採用することも知られているが、揮発成分を抽出するためのマイクロ波照射装置では、揮発成分を含む水蒸気がパンチングメタルを通過して加熱釜の外側に移動した後、配管などで冷却されて水滴に変わり、パンチングメタル上に落ちて溜まってしまい、それが汚れや焦げ付きの原因となってしまう場合もあった。
【0006】
本発明は、揮発成分を適切に通過させることができるとともに、マイクロ波の漏洩を適切に防止することができるマイクロ波照射装置用の連通部材、マイクロ波照射装置およびマイクロ波照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマイクロ波照射装置用の連通部材は、マイクロ波照射装置の加熱容器と連通する位置に配置される、マイクロ波照射装置用の連通部材であって、マイクロ波の通過を遮断可能な口径および長さの複数の筒状通路と、底部と壁部とを有する凹部と、を備え、前記底部と前記筒状通路の一方の端部とが連通している
上記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記連通部材は、前記加熱容器の排気口に配置され、前記加熱容器で揮発した揮発成分を通過させるとともに、前記加熱容器に放射されたマイクロ波を遮断する機能を有するように構成することができる。
上記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記複数の筒状通路は、1つの柱状部材の内部に穿設して形成されるように構成することができる。
上記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記柱状部材の形状が円柱形であるように構成することができる。
上記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記連通部材は複数の筒部を有し、前記複数の筒部はそれぞれ内部に筒状通路を有するように構成することができる。
上記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記複数の筒状通路は、断面形状が円形であるように構成することができる
記マイクロ波照射装置用の連通部材において、前記マイクロ波照射装置に着脱自在であるように構成することができる。
【0008】
本発明に係るマイクロ波照射装置は、上記連通部材が、前記加熱容器と連通する位置に配置される。
上記マイクロ波照射装置において、前記連通部材が、前記加熱容器の排気口に設置されるように構成することができる。
上記マイクロ波照射装置用において、前記加熱容器は複数の排気口を有し、前記複数の排気口のそれぞれに前記連通部材を配置するように構成することができる。
【0009】
本発明に係るマイクロ波照射方法は、マイクロ波の通過を遮断可能な口径および長さの複数の筒状通路と、底部と壁部とを有する凹部と、を備え、前記底部と前記筒状通路の一方の端部とが連通している、マイクロ波照射装置用の連通部材を、マイクロ波照射装置の加熱容器と連通する位置に配置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、揮発成分を適切に通過させることができるとともに、マイクロ波の漏洩を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るマイクロ波照射装置の構成図である。
図2】第1実施形態に係る連通部材の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る連通部材を説明するための図である。
図4】第2実施形態に係る連通部材の斜視図である。
図5】第2実施形態に係る連通部材を説明するための図である。
図6】第3実施形態に係る連通部材の斜視図である。
図7】第3実施形態に係る連通部材を説明するための図である。
図8】他の実施形態に係るマイクロ波照射装置の概要構成図である。
図9】他の実施形態に係るマイクロ波照射装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るマイクロ波照射装置の実施形態について説明する。本実施形態に係るマイクロ波照射装置は、蒸留機能、抽出機能、乾燥機能、ブランチング機能を備えている。これらの各機能はそれぞれを単独で実施するだけでなく、同時に或いは連続して実施することも可能である。例えば、蒸留をしながら乾燥物を得ること、ブランチングをした後、そのまま乾燥を行うことができる。
【0013】
《第一実施形態》
図1は、第1実施形態に係るマイクロ波照射装置1の構成図である。マイクロ波照射装置1は、照射部Aと蒸留部Bとから構成される。照射部Aは、被反応物が収納される加熱容器10と、撹拌羽根21を回動させる駆動装置22と、加熱容器10にマイクロ波を供給するマイクロ波発振器31と、加熱容器10とマイクロ波発振器31とを接続する導波管32とを備えている。蒸留部Bは、コンデンサ41と、チラー42と、ジャケット付きの分液容器43と、蒸留水容器44と、低温トラップ45と、真空ポンプ46とを備えている。なお、照射部A(加熱容器10)と蒸留部B(コンデンサ41)とは配管15により連通しており、配管15と照射部Aとの間には、連通部材11が配置されている。
【0014】
<照射部A>
加熱容器10は、本体10aと蓋部10bとから構成される。加熱容器10の本体10aおよび蓋部10bは、それぞれフランジ部を有しており、対向する両フランジ部を狭圧することにより固定される。加熱容器10は、例えば、数リットル~数百リットルの容量(最低容量は撹拌羽根の中央固定ノブが隠れる液量、最大容量は攪拌時の液面上昇を加味すれば、釜容量の2/3となる)であり、複数の加熱容器10を連結して使用する場合もある。乾燥時、蒸留時、抽出時およびブランチング時には、気化効率を高めるために加熱容器10内を減圧することが好ましい。加熱容器10は、例えば0.1kPa~大気圧、好ましくは2kPa~大気圧で、さらに好ましくは10kPa~20kPaの減圧下で用いられ、内部温度は例えば最大150℃である。加熱容器10の本体には、排水バルブ13が設けられた配管および駆動装置22が接続される。駆動装置22は、例えばモータであり、接続軸23を介して撹拌羽根21を回動させる。
【0015】
また、加熱容器10の蓋部10bには、導波管32、大気開放バルブ14が設けられた配管およびコンデンサ41と連通する配管15が接続される。大気開放バルブ14は、圧力逃し弁(ベント)として機能するものであるが、必須の構成では無い。導波管32が接続される加熱容器10の蓋部10bの開口部には、マイクロ波を吸収しないマイクロ波透過性材からなる照射窓(図示せず)を設けることが好ましい。この照射窓は、例えば、石英、セラミックス、テフロン(登録商標)などにより構成することができる。導波管32の接続位置は図示する空間照射の態様に限定されず、液中照射するものでもよい。また、導波管32は、複数本設けてもよく、空間照射と液中照射を組み合わせてもよい。導波管32の蓋部とは逆側の端部は、マイクロ波発振器31と接続されている。マイクロ波発振器31の出力は、例えば、0.1kW~3.0kW/Lである。
【0016】
また、本実施形態にマイクロ波照射装置1は、加熱容器10と連通する位置であって、加熱容器10と配管15との間に、連通部材11を有している。ここで、図2は、第1実施形態に係る連通部材11の斜視図である。図2に示すように、連通部材11は、円柱部111と、凹部113と、平坦部116とを有する。加熱容器10と配管15との間に連通部材11を配置する場合、平坦部116が加熱容器10側に配置され、加熱容器10の排気口を覆い、凹部113が配管15側に配置され、配管15と当接するように、連通部材11が配置される。なお、加熱容器10および配管15と連通部材11との間は、マイクロ波が漏洩しないように接続が行われる。
【0017】
なお、本実施形態に係る連通部材11は、加熱容器10または配管15と同じ素材で製造することができ、円柱部111、凹部113および平坦部116を一体で製造してもよいし、円柱部111、凹部113および平坦部116をそれぞれ製造した後にこれら部材を接合させてもよい。
【0018】
本実施形態に係る連通部材11の内部には、複数の筒状通路112が穿設されている。複数の筒状通路112は、連通部材11の一端から他端までを連通する筒状の孔であり、具体的には、平坦部116の平坦面117から、平坦部116および円柱部111の内部を通過して、凹部113の底部114まで連通する。本実施形態では、図2に示すように、4つの筒状通路112を有する連通部材11を例示しているが、筒状通路112の数は複数であれば特に限定されず、2~3としてもよいし、5以上としもよい。本実施形態では、連通部材11は、3本以上の筒状通路112を有し、各筒状通路112が等間隔で配置されるが、この構成に限定されず、各筒状通路112を間隔が不均一となるように配置する構成としてもよい。
【0019】
また、筒状通路112の口径および長さは、筒状通路112でマイクロ波を遮蔽できる範囲で設計される。たとえば、マイクロ波の波長が2.45GHzであり、筒状通路112の長さが80ミリメートルである場合、筒状通路112の直径を33ミリメートル以下とすることができる。また、筒状通路112の口径(断面積)は、凹部113側で揮発成分を含む水蒸気が冷却され生成された液滴を、筒状通路112を通して、平坦部116側へと排出させるために、一定の大きさ以上(たとえば直径5ミリメール以上、より好ましくは直径9ミリメートル以上)とすることが好ましい。
【0020】
そこで、連通部材11の剛性を考慮した上(連通部材11が簡単に損傷、変形しないように連通部材11の肉厚を加味した上)で、筒状通路112は、マイクロ波を遮断することができ、かつ、配管15側から液滴を通過させることができる口径の範囲において、連通部材11全体として筒状通路112の口径の合計が最大となるように、筒状通路112の口径および本数を設計することが好ましい。
【0021】
連通部材11は、凹部113を有する。凹部113は、図2に示すように、円柱部111の一端と接する底部114と、湾曲した壁部115とを有する。連通部材11は、このような凹部113を有することで、加熱容器10で蒸発した揮発成分(水蒸気を含む)が筒状通路112を通過して配管15側まで移動した後に、冷却され液滴となった場合でも、図3に示すように、凹部113(特に、湾曲した壁部115)で液滴を回収し、筒状通路112を通過させて、加熱容器10内に戻すことができる。これにより、連通部材11の配管15側に液滴が溜まってしまい、汚れや焦げ付きの原因となってしまうことを有効に防止することができる。
【0022】
また、本実施形態に係るマイクロ波照射装置1では、連通部材11は、マイクロ波照射装置1に自在に着脱することができる。たとえば、凹部113の壁部115と配管15とを連結具(不図示)を用いて接合し、平坦部116と加熱容器10とを連結具(不図示)を用いて接合することで、連通部材11をマイクロ波照射装置1に自在に取り付けることができる。同様に、凹部113の壁部115と配管15との連結具を取り外し、平坦部116と加熱容器10との連結具を取り外すことで、連通部材11をマイクロ波照射装置1から自在に取り外すこともできる。
【0023】
<蒸留部B>
蒸留部Bは、精油成分の抽出、エキス分を含む水の回収に用いられる。例えば、柑橘類の残渣から水分や精油を気化させるとともに、気化した水分や精油を冷却し、凝縮液として抽出するために用いられる。柑橘類には、ゆず、だいだい、みかん、伊予柑、スダチが含まれる。柑橘類から精油成分を抽出する工程で得られる水には香り成分、水溶性低沸点成分などが含まれており、これをエキス分を含む水として利用する。同様にエキス分を含む水を、野菜類、根菜類、果物類、樹木の葉、例えば、アスパラガス、ブロッコリー、ボイセンベリー、金時にんじん、トマト、ネギ、アロエ、ジャガイモ、サツマイモ、ジネンジョ、ピーマン、パセリ、ほうれん草、ショウガ、笹の葉、桑の葉、柿の葉、枇杷の葉、イチゴおよび桃などからも得ることができる。ただし、これらからは精油成分が得られないので、乾燥物とエキス分を含む水が主生成物となる。
【0024】
コンデンサ41は、配管15により加熱容器10と連通され、配管16によりジャケット付きの分液容器43に連通されており、分液容器43に所望の凝縮液が流入する。コンデンサ41および分液容器43には、チラー42からの冷媒が循環する配管が接続されている。分液容器43の下部には、蒸留水容器44と連通する配管17が接続されており、エキス分を含む水が蒸留水容器44に流入する。被照射物が柑橘類の場合には、アルコール系精油成分を含むオイリーな蒸留水(例えば、精油成分を0.1~1%含む蒸留水)が蒸留水容器44に流入する。
蒸留水容器44と加熱容器10を配管で連通し、加熱容器10に蒸留水を返送するようにしてもよい。被照射物の焦げを防止するために、保湿用液体を加熱容器10内に配置することが好ましいところ、蒸留水容器44に流入した蒸留水を戻すことで、エキス分を低濃度にすることなく回収することができるという有利な効果が奏されるからである。
分液容器43は、一般的な化学実験に使用される分液漏斗と同様な構造で、油分と水分を分離する。好ましい態様の分液容器43は冷却機能を実現するために二重管構造とする。外側を冷却することにより、揮発しやすい香り成分、低沸点成分のロスを防げるからである。
【0025】
蒸留水容器44は、配管18により真空ポンプ46と連通されている。真空ポンプ46による減圧度は、バルブ52により調節可能である。好ましくは、蒸留水容器44と真空ポンプ46との間に低温トラップ45を設ける。低温トラップ45は、例えば、ガラスまたはSUS等の金属製、液体窒素あるいはドライアイス+アセトンで冷却して捕集する公知の構造のものを用いることができる。低温トラップ45の大きさは流量により決せられ、例えば、高さ20cm~50cm、直径5cm~30cmの円筒形のものを用いる。油分等を抽出するために蒸留水容器44を減圧すると、香り成分、低沸点成分も水相から取り除かれることになるが、低温トラップ45を設けることにより香り成分、低沸点成分を回収することが可能である。低温トラップ45が内部を通過する気体を、例えば10℃以下に冷却することで、香り成分や低沸点成分がトラップの内壁に付着する。
【0026】
低温トラップ45により、精油成分が回収されることは実験で確認済みである。トラップされた香り成分、低沸点成分は、エキス分を含む水で溶解・再分散することで回収される。この際、蒸留水、エタノールなどのアルコール、ヘキサンなどの炭化水素を用いて回収することも可能である。ただし、アルコールや炭化水素を用いて回収すると、溶解度の関係で、水の場合と異なる成分が回収されることに注意が必要である。
【0027】
以上のように、第1実施形態に係るマイクロ波照射装置1は、加熱容器10と連通する位置に配置され、マイクロ波の通過を遮断可能な口径および長さの複数の筒状通路112を有する連通部材11を有することで、加熱容器10に放射されたマイクロ波が配管15を通過して外側に漏洩してしまうことを有効に防止することができる。また、本実施形態に係る連通部材11は、複数の筒状通路112を有することで、単一の筒状通路112を有する場合と比べて、加熱容器10において揮発された揮発成分をコンデンサ41まで通過させる量を多くすることができ、短い時間で、蒸留、抽出、乾燥、ブランチングなどの処理を行うことが可能となる。
【0028】
《第2実施形態》
次に、第2実施形態に係るマイクロ波照射装置1aについて説明する。第2実施形態に係るマイクロ波照射装置1aは、連通部材11aを備えること以外は、第1実施形態に係るマイクロ波照射装置1と同様の構成を有し、同様に動作する。
【0029】
図4は、第2実施形態に係る連通部材11aの斜視図である。第2実施形態に係る連通部材11aは、図4に示すように、平坦部116と、複数の筒部118とを有する。第2実施形態に係る筒部118は、中空構造を有する円筒状の部材であり、筒部118の中空部は平坦部116の内部に穿設された孔と連通し、筒状通路112を形成する。また、第2実施形態に係る連通部材11aでは、複数の筒部118の中空部が平坦部116に穿設された複数の孔とそれぞれ連通しており、これにより、連通部材11aは、複数の筒状通路112を有する。なお、図4に示す例では、7本の筒状通路112を有する構成を例示しているが、筒状通路112の数は複数であれば特に限定されず、2~6本でもよいし、8本以上でもよい。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、筒状通路112の口径および長さは、筒状通路112でマイクロ波を遮蔽できる範囲で設計され、さらに、筒状通路112の口径および本数は、配管15側から液滴を通過させることができる口径の範囲において、連通部材11a全体として筒状通路112の口径の合計が最大となるように設計することが好ましい。
【0030】
図5は、第2実施形態に係る連通部材11aを説明するための図である。図5に示すように、加熱容器10と配管15との間に連通部材11aを配置する場合、連通部材11aは、平坦部116が加熱容器10側に配置され加熱容器10の排気口を覆い、筒部118が配管15側に配置され少なくとも配管15の内側に収容される。たとえば、図5に示すように、平坦部116の外径を配管15の内径と同程度(マイクロ波が漏れない程度の誤差のみ)として連通部材11a全体を配管15内に収容する構成としてもよい。また、図示していないが、平坦部116の外径を配管15の内径よりも大きくし、かつ、複数の筒部118全体の外径を配管15の内径よりも小さくすることで、複数の筒部118全体だけが配管15の内部に収容されるように構成してもよい。さらに、配管15の開口の大きさおよび形状を、複数の筒部118全体の大きさおよび形状に一致させて、配管15と複数の筒部118とを接続する構成としてもよい。
【0031】
このように、第2実施形態に係るマイクロ波照射装置1aは、複数の筒部118を有する連通部材11aを備え、当該複数の筒部118はそれぞれ内部に筒状通路112を有する。このように、第2実施形態に係る連通部材11aでは、第1実施形態と同様に揮発成分を適切に通過させることができるとともに、マイクロ波の漏洩を適切に防止することができるという効果を奏することができるとともに、第1実施形態に係る図3の連通部材11のように円柱部111の内部に筒状通路112を穿設するという加工が不要となるため、比較的簡易に製造することが可能となり、製造コストの削減を図ることができる。
【0032】
一方で、第2実施形態に係る図4の連通部材11aでは、図5に示すように、連通部材11aを通過し配管15側まで移動した揮発成分(水蒸気を含む)が冷却されることで生成した液滴が連通部材11aの配管15側に残ってしまい、汚れや焦げ付きの原因となってしまう場合がある。そこで、このような問題を解決するために、発明者は、第3実施形態に係る連通部材11bを発明した。
【0033】
《第3実施形態》
第3実施形態に係る図7マイクロ波照射装置1bは、連通部材11bを備えること以外は、第2実施形態に係るマイクロ波照射装置1aと同様の構成を有し、同様に動作する。図6は、第3実施形態に係る連通部材11bの斜視図である。第3実施形態に係る連通部材11bは、図6に示すように、凹部113と複数の筒部118とを有する。第3実施形態に係る筒部118では、第2実施形態と同様に内部に中空構造を有し、筒部118の中空部が筒状通路112を形成している。また、筒状通路112の一方の端部は、凹部113の底部114に設けられた孔と連通し、これにより、連通部材11bは、筒部118の加熱容器10側の端部から凹部113の底部114までを連通する複数の筒状通路112を有している。
【0034】
図7は、第3実施形態に係る連通部材11bを説明するための図である。図7に示すように、加熱容器10と配管15との間に連通部材11bを配置する場合、凹部113が加熱容器10側に配置され、凹部113の壁部で加熱容器10の排気口と配管15の開口とを同時に覆い、かつ、筒部118が配管15側に配置され、複数の筒部118全体が加熱容器10の内側に収容される。たとえば、図7に示すように、凹部113の外径を加熱容器10の排気口の内径と一致させ、かつ、凹部113の内径を配管15の内径と一致させることで、加熱容器10と配管15との間に連通部材11bを配置する構成とすることができる。また、凹部113において最も広い部分の外径を配管15の内径とほぼ同じ大きさ(マイクロ波を通過させない誤差内)とすることで、連通部材11bの凹部113(あるいは連通部材11b全体)が配管15内に収容されるように構成してもよい。
【0035】
このように、第3実施形態に係るマイクロ波照射装置1bでは、凹部113を有するため、配管15側まで移動した揮発成分(水蒸気を含む)が冷却されて液滴が生成された場合も、生成された液滴を凹部113(特に湾曲した壁部)で回収し、筒状通路112を通過させて、加熱容器10まで戻すことができるため、液滴が連通部材11aの配管15側に残ってしまい汚れや焦げ付きの原因となってしまうことを有効に防止することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
たとえば、上述した実施形態では、マイクロ波照射装置1,1a,1bが連通部材11,11a,11bをそれぞれ1つ備える構成を例示したが、この構成に限定されず、連通部材を2本以上(たとえば3~8本)備える構成としてよい。たとえば、図8または図9に示すように、マイクロ波照射装置が複数の連通部材11,11a,11bを備える構成とすることができる。ここで、図8および図9は、マイクロ波照射装置の他の実施形態を説明するための構成図であり、図1に示すようなマイクロ波照射装置1全体のうち加熱容器10、配管15およびコンデンサ41のみを抽出して記載した概要図である。たとえば、図8に示すように、マイクロ波照射装置1cが、2つのコンデンサ41を有しており、各コンデンサ41と加熱容器10の排気口にそれぞれ連通する2本の配管15を備え、各配管15と加熱容器10との間に連通部材11を1つずつ、すなわちマイクロ波照射装置1c全体として2つの連通部材11を備える構成とすることができる。また、図9に示すように、マイクロ波照射装置1dが、加熱容器10側において2本に分岐する配管15aを備えており、分岐した配管15aと加熱容器10との間に連通部材11を1つずつ、すなわちマイクロ波照射装置1d全体として2つの連通部材11を備える構成とすることもできる。
【0038】
また、上述した実施形態では、筒状通路112の断面形状を円形とする構成を例示したが、筒状通路112の断面形状は円形に限定されず、たとえば三角形、四角形、または多角形とすることができる。筒状通路112を断面形状を円形とした場合は筒状通路112の直径が一定となるためマイクロ波が通過しないように径を設計することが容易となり、また、複数の筒状通路112の断面積の合計が配管15の内径断面積内で最大となるように筒状通路112を設計することが容易となる。一方、筒状通路112の断面形状を円形以外とした場合は、筒状通路112を比較的容易に加工・成形することができる。なお、筒状通路112の断面積は、筒状通路112の断面形状に関係なく、凹部113側で揮発成分を含む水蒸気が冷却され生成された液滴を、筒状通路112を通して平坦部116側へと排出させることができる大きさとすることが好ましく、たとえば、19mm以上、より好ましくは63mm以上とすることができる。
【0039】
さらに、上述した実施形態では、円柱部111または筒部118の(外観の)形状を円柱とする構成を例示したが、この構成に限定されず、円柱部111および筒部118を、たとえば三角柱、四角柱、または多角柱とすることもできる。
【0040】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、連通部材11,11aが平坦面117を有する平坦部116を有する構成を例示したが、この構成に限定されず、平坦部116の代わりに、加熱容器10に合わせた曲面を有する部材を有する構成とすることもできる。
【0041】
さらに、第2実施形態および第3実施形態では、複数の筒部118が互いに接するように束状となる構成を例示したが、この構成に限定されず、複数の筒部118はそれぞれ離れて配置される構成とすることができる。
【0042】
加えて、上述した実施形態では、加熱容器10の排気口に連通部材11を配置する(加熱容器10と配管15との間に連通部材11を配置する)構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば加熱容器10から離れた配管15の中に連通部材11を配置する構成とすることや、配管15とコンデンサ41との間に連通部材11を配置する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1a~1d…マイクロ波照射装置
10…加熱容器
10a…本体
10b…蓋部
11,11a,11b…連通部材
111…円柱部
112…筒状通路
113…凹部
114…底部
115…壁部
116…平坦部
117…平坦面
118…筒部
13…排水バルブ
14…大気開放バルブ
15,15a,16~18…配管
21…撹拌羽根
22…駆動装置
23…接続軸
31…マイクロ波発振器
32…導波管
41…コンデンサ(成分濃縮装置)
42…チラー
43…分液容器
44…蒸留水容器
45…低温トラップ
46…真空ポンプ(減圧装置)
51…蒸留水排出バルブ
52…バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9