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特許7178273加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
G01B11/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019005587
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020112522
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小川 環
(72)【発明者】
【氏名】冨室 俊和
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018093(JP,A)
【文献】特開平10-138099(JP,A)
【文献】特開平11-099450(JP,A)
【文献】特開平07-237093(JP,A)
【文献】特開2017-124485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ直交座標系におけるZ軸周りに回転するツールと被加工物との相対的な位置関係をXYZ方向たる三次元方向で変化させながら、前記ツールにより前記被加工物を加工する加工装置において、
可視光を出射するとともに、Z軸周りに回転する前記ツールのZ軸方向への移動に追随して移動することなく予め設定されたZ軸方向位置において固定的に配設され、かつ、前記ツールのXY平面方向への移動に追随して移動可能に配設され、かつ、前記ツールのZ軸周りの回転軸と出射する可視光とが交差する位置関係に配設された光源と、
前記光源から出射された可視光を検出可能であり、かつ、予め設定された位置に固定的に配設された光検出手段と、
前記光源のXY平面方向への移動に伴い、前記光検出手段が前記光源から出射された可視光を検出したときの前記光源のXY平面方向における位置と、前記光検手段が配設されたXY平面方向における位置と、前記光源が配設されたZ軸方向位置とに基づいて、前記光源から出射された可視光のZ軸に対する傾きたる出射角度を取得する出射角度取得手段と、
前記出射角度取得手段が前記出射角度を取得したときの前記光源のXY平面方向における位置において、前記ツールをZ軸方向へ移動させたときの前記光検出手段が検出する可視光の検出結果に基づいて、前記ツールのツール長を取得するツール長取得手段と
を有することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、さらに、
前記出射角度取得手段により取得された出射角度と、前記ツール長取得手段により取得されたツール長と、前記被加工物のZ軸方向の高さ位置とに基づいて、前記被加工物上において前記光源から出射された可視光が照射された照射位置と前記ツールの先端部との位置関係を取得し、前記被加工物上における前記照射位置への前記ツールの移動を制御する制御手段と
を有することを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の加工装置において、
前記制御手段は、前記ツール長取得手段により取得されたツール長と、前記被加工物のZ軸方向の高さ位置とに基づいて、前記ツールにより前記被加工物を加工する加工深さを制御する
ことを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の加工装置において、
前記出射角度取得手段は、原点位置に対する座標値から、前記光源のXY平面方向における位置と、前記光検手段が配設されたXY平面方向における位置とを取得する
ことを特徴とする加工装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の加工装置において、
前記光源は、レーザー光源であり、
前記光検出手段は、フォトダイオードである
ことを特徴とする加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加工装置において、
前記レーザー光源は、レーザーポインターである
ことを特徴とする加工装置。
【請求項7】
XYZ直交座標系におけるZ軸周りに回転するツールと被加工物との相対的な位置関係をXYZ方向たる三次元方向で変化させながら、前記ツールにより前記被加工物を加工する加工装置におけるツール長の取得方法において、
前記被加工物を加工する際の加工箇所を照射する可視光を出射する光源から出射された可視光が、前記ツールのZ軸周りの回転軸と交差するようにして、
前記光源から出射された可視光を検出する光検出手段における、前記ツールをZ軸方向へ移動させたときの検出結果に基づいて、前記ツールのツール長を取得する
ことを特徴とする加工装置におけるツール長の取得方法。
【請求項8】
請求項7に記載の加工装置におけるツール長の取得方法において、
前記光源は、レーザー光源であり、
前記光検出手段は、フォトダイオードである
ことを特徴とする加工装置におけるツール長の取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の加工装置におけるツール長の取得方法において、
前記レーザー光源は、レーザーポインターである
ことを特徴とする加工装置におけるツール長の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法に関する。さらに詳細には、本発明は、加工箇所を視覚的に明示するためのレーザーポインターなどのような可視光を出射する光源を搭載した加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、加工装置として、エンドミルやカッターなどのように被加工物を切削加工したり切断加工したりするための被加工物加工用のツールを搭載した加工装置が種々知られている。
【0003】
こうした加工装置では、ツールと被加工物との相対的な位置関係を三次元方向(XYZ直交座標系においてはXYZ方向)で変化することのできる可変機構を備えており、この可変機構によりツールと被加工物との相対的な位置関係を三次元方向で変化させながらツールにより被加工物を加工して、所望の形状の成果物を得るようにしている。
【0004】
ここで、上記したような加工装置においては、ツールにより被加工物を加工する際の加工箇所を可視光の照射による光点により視覚的に明示するため、所謂、レーザーポインターと称される機器のような可視光を出射する光源を備えたものが知られている。
【0005】
また、上記したような従来の加工装置においては、高精度な加工精度を得るために、加工装置に搭載された状態でのツールの長さ(本明細書および本特許請求の範囲において、「加工装置に搭載された状態でのツールの長さ」を「ツール長」と適宜に称する。)を光を用いて測定する機能を備え、測定したツール長を用いて加工処理する技術も知られている。
【0006】
ところで、従来、加工箇所を視覚的に明示するためのレーザーポインターなどの可視光を出射する光源を備えるとともに、光を用いてツール長を測定する機能を備えた加工装置においては、光源として、加工箇所を視覚的に明示するためのレーザーポインターなどの可視光を出射する光源とツール長を測定のための光を出射する光源との2つの光源を搭載する必要があり、製造コスト高を招来するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工箇所を視覚的に明示する機能とツール長を測定する機能とを実現する光源を搭載するに際して、光源の搭載に伴う製造コスト高を抑制するようにした加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法は、可視光を出射する単一の光源により、加工箇所を視覚的に明示する機能とツール長を測定する機能とを実現するようにしたものである。
【0009】
従って、本発明による加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法によれば、加工箇所を視覚的に明示する機能とツール長を測定する機能とを実現する際に、従来は2つ必要であった光源の数を半減することができるので、光源の搭載に伴う製造コスト高を抑制することができる。
【0010】
即ち、本発明による加工装置は、XYZ直交座標系におけるZ軸周りに回転するツールと被加工物との相対的な位置関係をXYZ方向たる三次元方向で変化させながら、上記ツールにより上記被加工物を加工する加工装置において、可視光を出射するとともに、Z軸周りに回転する上記ツールのZ軸方向への移動に追随して移動することなく予め設定されたZ軸方向位置において固定的に配設され、かつ、上記ツールのXY平面方向への移動に追随して移動可能に配設され、かつ、上記ツールのZ軸周りの回転軸と出射する可視光とが交差する位置関係に配設された光源と、上記光源から出射された可視光を検出可能であり、かつ、予め設定された位置に固定的に配設された光検出手段と、上記光源のXY平面方向への移動に伴い、上記光検出手段が上記光源から出射された可視光を検出したときの上記光源のXY平面方向における位置と、上記光検手段が配設されたXY平面方向における位置と、上記光源が配設されたZ軸方向位置とに基づいて、上記光源から出射された可視光のZ軸に対する傾きたる出射角度を取得する出射角度取得手段と、上記出射角度取得手段が上記出射角度を取得したときの上記光源のXY平面方向における位置において、上記ツールをZ軸方向へ移動させたときの上記光検出手段が検出する可視光の検出結果に基づいて、上記ツールのツール長を取得するツール長取得手段とを有するようにしたものである。
【0011】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、さらに、上記出射角度取得手段により取得された出射角度と、上記ツール長取得手段により取得されたツール長と、上記被加工物のZ軸方向の高さ位置とに基づいて、上記被加工物上において上記光源から出射された可視光が照射された照射位置と上記ツールの先端部との位置関係を取得し、上記被加工物上における上記照射位置への上記ツールの移動を制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0012】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、上記制御手段は、上記ツール長取得手段により取得されたツール長と、上記被加工物のZ軸方向の高さ位置とに基づいて、上記ツールにより上記被加工物を加工する加工深さを制御するようにしたものである。
【0013】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、上記出射角度取得手段は、原点位置に対する座標値から、上記光源のXY平面方向における位置と、上記光検手段が配設されたXY平面方向における位置とを取得するようにしたものである。
【0014】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、上記光源は、レーザー光源であり、上記光検出手段は、フォトダイオードであるようにしたものである。
【0015】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、上記レーザー光源は、レーザーポインターであるようにしたものである。
【0016】
また、本発明による加工装置におけるツール長の取得方法は、XYZ直交座標系におけるZ軸周りに回転するツールと被加工物との相対的な位置関係をXYZ方向たる三次元方向で変化させながら、上記ツールにより上記被加工物を加工する加工装置におけるツール長の取得方法において、上記被加工物を加工する際の加工箇所を照射する可視光を出射する光源から出射された可視光が、上記ツールのZ軸周りの回転軸と交差するようにして、上記光源から出射された可視光を検出する光検出手段における、上記ツールをZ軸方向へ移動させたときの検出結果に基づいて、上記ツールのツール長を取得するようにしたものである。
【0017】
また、本発明による加工装置におけるツール長の取得方法は、上記した本発明による加工装置におけるツール長の取得方法において、上記光源は、レーザー光源であり、上記光検出手段は、フォトダイオードであるようにしたものである。
【0018】
また、本発明による加工装置におけるツール長の取得方法は、上記した本発明による加工装置におけるツール長の取得方法において、上記レーザー光源は、レーザーポインターであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明したように構成されているので、加工箇所を視覚的に明示する機能とツール長を測定する機能とを実現する光源を搭載するに際して、光源の搭載に伴う製造コスト高を抑制することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態の一例による加工装置の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図2図2は、図1に示す加工装置のフロントカバー部材を開けた状態における構成を模式的に示すA矢視概略構成説明図である。
図3図3は、図1ならびに図2に示す加工装置に搭載された可視光源たるレーザーポンターなど各構成部材の配置を示す模式的な説明図である。
図4図4は、本発明の実施に関連するマイクロコンピューターの機能的構成をあらわすブロック構成説明図である。
図5図5は、本発明の実施に関連してマイクロコンピューターが実行するメインルーチンの処理ルーチンを示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施に関連してマイクロコンピューターが実行するメインルーチンの処理ルーチンのサブルーチンであるツール長測定モード処理ルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、可視光であるレーザーポインターから出射される光(可視レーザー光)の出射角度を取得する手法の説明図である。
図8図8は、ツールのツール長を取得する手法の説明図である。
図9図9は、レーザーポインターから出射されるワーク上の光点の位置とツール先端部との位置関係を取得する手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による加工装置および加工装置におけるツール長の取得方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0022】
ここで、図1には、本発明の実施の形態の一例による加工装置の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0023】
また、図2には、図1に示す加工装置のフロントカバー部材を開けた状態における構成を模式的に示すA矢視概略構成説明図があらわされている。
【0024】
この図1ならびに図2に示す本発明の実施の形態の一例による加工装置10は、底板12(後述する筐体26の底板である。)上に固定された基準面となるテーブル14上に載置された被加工物(ワーク)16に対して、マイクロコンピュータ18の加工動作モード処理部18c(後述する。)の制御により、パーソナルコンピューターなどのホストコンピューター(図示せず。)から出力された加工範囲明示用の信号に応じて、レーザーポインター32(後述する。)により、ワーク16上に光(可視光)として可視レーザー光を照射することで加工範囲を示す動作や、パーソナルコンピューターなどのホストコンピューター(図示せず。)から出力された加工データの信号に応じて、スピンドル20に取り付けられたツール22により、ツール22の加工機能(切削機能や切断機能である。)に応じてワーク16を加工する。
【0025】
こうした加工装置10は、前面に開閉自在なフロントカバー部材24を備えた筐体26のワークエリア26a内に、上記したテーブル14を含む各種の機構よりなる本体部28を配設している。
【0026】
また、加工装置10における筐体26の一方の端部には、操作パネル30が設けられている。
【0027】
本体部28は、ツール22を取り付けるスピンドル20を上下方向(図1ならびに図2において矢印Zで示すXYZ直交座標系におけるZ軸方向たる上下方向である。)に移動可能に配設するとともに、レーザーポインター32をXYZ直交座標系において固定的に配設したヘッドユニット34を、第1の方向である主走査方向(図1ならびに図2において矢印Xで示すXYZ直交座標系におけるX軸方向たる左右方向である。)に移動させる際のガイドとなるガイドレール36を備えている。
【0028】
ヘッドユニット34は、主走査方向に延長するガイドレール36に沿って、モーター(図示せず。)の駆動によってワイヤー(図示せず。)を介して移動される。
【0029】
レーザーポインター32は、加工装置10に搭載された可視光を出射する唯一の光源であって、ツール22によりワーク16を加工する際の加工箇所を可視光(可視レーザー光)の照射による光点により視覚的に明示するレーザー光源である。
【0030】
即ち、加工装置10は、可視光を出射する単一の光源として、ワーク16を加工する際の加工箇所を光点により視覚的に明示する可視レーザー光を出射するレーザーポインター32を備えており、本実施の形態においては、レーザーポインター32はスピンドル20の左方側に配置されている。
【0031】
ガイドレール36は、筐体26の左方側の側壁部26Lと右方側の境界壁部26Rとに対し、主走査方向と直交する第2の方向である副走査方向(図1において矢印Yで示すXYZ直交座標系におけるY軸方向たる前後方向である。)に移動自在に配設されており、ガイドレール36はモーター(図示せず。)の駆動により副走査方向に移動される。
【0032】
加工装置10においては、基準面となるテーブル14上に、レーザーポインター32から出射された可視光(可視レーザー光)を検出するためのフォトダイオードなどの光検出器38が配設されている。本実施の形態においては、光検出器38は、テーブル14の右端部に配置されている。
【0033】
本体部28においては、ヘッドユニット34が主走査方向(X軸方向)に移動し、かつ、ガイドレール36が副走査方向(Y軸方向)に移動し、かつ、ツール22を取り付けたスピンドル20が上下方向(Z軸方向)に移動する機構により、ツール22とワーク16との相対的な位置関係を三次元方向(XYZ方向)で変化することのできる可変機構が構築されている。
【0034】
また、この可変機構においては、ツール22を取り付けたスピンドル20が上下方向(X軸方向)に移動することにより、ツール22が上下方向(X軸方向)に移動して、Z軸方向位置に固定的に配設されたレーザーポインター32から出射された可視レーザー光Lとツール22との位置関係が上下方向(Z軸方向)で変化する(図3ならびに図8を参照する。)。
【0035】
さらに、この可変機構においては、ヘッドユニット34が主走査方向(X軸方向)に移動し、ガイドレール36が副走査方向(Y軸方向)に移動することにより、レーザーポインター32から出射された可視光(可視レーザー光)Lと光検出器38との位置関係が基準面と平行な2次元方向であるXY平面方向で変化する(図3ならびに図7を参照する。)。
【0036】
操作パネル30には、操作状態を表示する表示部30aの他に、動作モードとしてツール長測定モードを選択して開始するためのツール長測定モード選択操作子30bや、動作モードとしてレーザーポインター32によるワーク16に対する加工範囲を示す動作や、ツール22によるワーク16に対する加工動作を行う加工動作モードを選択して開始するための加工動作モード選択操作子30cを含む、各種の動作の指示を行うための操作子などが設けられている。
【0037】
こうした加工装置10には、ツール長測定モード選択操作子30bや加工動作モード選択操作子30cなどの各種の操作子による指示に応じた動作を行なうために、加工装置10の全体の動作を制御するマイクロコンピューター18が搭載されている。
【0038】
図3には、図1ならびに図2に示す加工装置10に搭載されたレーザー光源たるレーザーポインター32など各構成部材の配置を示す模式的な説明図があらわされている。この図3を参照しながら、上記した各構成部材の配置関係について詳細に説明する。
【0039】
まず、レーザーポインター32と光検出器38とは、ツール長測定モード処理(後述する。)によりレーザーポインター32から出射された可視レーザー光Lの出射角度(Z軸方向における傾き)αを演算により取得することができるように、レーザーポインター32がヘッドユニット34における予め設定された設計値に示す位置に固定され、光検出器38が基準面たるテーブル14上の予め設定された設計値に示す位置に固定されている。
【0040】
また、レーザーポインター32とツール22とは、ツール長測定モード処理(後述する。)によりツール22の先端部(Z軸方向における下端部)22aの位置を検知するために、レーザーポインター32から出射された可視レーザー光Lがワークエリア26aにおけるワーク16の上方側においてツール22の回転軸(ツール回転軸)Bと交差する位置関係となるように、予め設定された設計値に示す位置に固定されている。
【0041】
換言すれば、予め設定された原点位置を基準として、レーザーポインター32のレーザー光出射位置(発光点)32aとツール回転軸Bとの距離L1(X軸方向における長さ)が予め設定された設計値に示す一定値となるように、レーザーポインター32とツール22を取り付けるスピンドル20とは、ヘッドユニット34における予め設定された設計値に示す位置に固定されている。従って、距離L1は既知の距離(設計値)である。
【0042】
ここで、レーザーポインター32はヘッドユニット34に固定されているので、レーザーポインター32は、上下方向(Z軸方向)に移動するスピンドル20に取り付けられたツール22の移動には追従せず、ツール22のXY平面方向への移動にのみ追従する。
【0043】
さらに、光検出器38は、光検出部38aとレーザーポインター32の発光点32aとのXY平面における距離L2が、予め設定された原点位置を基準として、予め設定された設計値に示す一定値となるように、基準面たるテーブル14上における予め設定された設計値に示す位置に固定されている。また、光検出部38aと基準面たるテーブル14との間のZ軸方向の距離L7は、光検出器38のテーブル14との接地面から光検出部38aまでの距離と同じであるため、予め設定された設計値である。従って、距離L2ならびに距離L7は既知の距離(設計値)である。
【0044】
また、上記したことから、光検出器38の光検出部38aとレーザーポインター32の発光点32aとの間のZ軸方向の距離L3と、レーザーポインター32の発光点32aとツール22の上端部(Z軸方向における上端部であり、スピンドル20の下端部との境界位置である。)22bとの間の距離L4とは、予め設定された原点位置を基準として、上記したレーザーポインター32とスピンドル20とが固定された位置に応じて予め設定されている設計値である。従って、距離L3ならびに距離L4は既知の距離(設計値)である。
【0045】
次に、図4には、本発明の実施に関連するマイクロコンピューター18の機能的構成をあらわすブロック構成説明図があらわされている。
【0046】
マイクロコンピューター18は、本発明の実施に関連する機能的構成として、動作モード監視判定部18aと、ツール長測定モード処理部18bと、加工動作モード処理部18cとを有して構築されている。
【0047】
動作モード監視判定部18aは、ツール長測定モード選択操作子30bと加工動作モード選択操作子30cとのいずれが操作されたかを監視して、動作モードとしてツール長測定モードと加工動作モードとのいずれが選択されたかを判定する。
【0048】
ツール長測定モード処理部18bは、出射角度取得部18b-1とツール長取得部18b-2とを有して構築されており、図6に示すフローチャートを参照しながら後述するツール長測定モード処理ルーチンにより、出射角度取得部18b-1の制御により出射角度αを取得し、ツール長取得部18b-2の制御によりツール長β(図3を参照する。)を取得する処理を行うように、加工装置10全体の動作を制御する。
【0049】
加工動作モード処理部18cは、レーザーポインター32から可視レーザー光を照射してワーク16に対する加工範囲を示す動作や、上記処理にて取得した出射角度αとワーク16の上下方向の高さたるZ軸方向の距離(ワーク高さ)L5(測定値)により、ツール回転軸Bとワーク16上にレーザーポインター32より光が照射される光点C(ワーク16上のレーザーポインター32の照射点)との距離γを取得する処理を行い、ツール22によりワーク16に対するレーザーポインター32より光が照射される光点C上で加工動作を行うように、加工装置10全体の動作を制御する。
【0050】
以上の構成において、図5に示すフローチャートを参照しながら、本発明の実施に関連する加工装置10の動作について説明する。
【0051】
ここで、図5には、本発明の実施に関連してマイクロコンピューターが実行するメインルーチンの処理ルーチンを示すフローチャートがあらわされている。
【0052】
加工装置10に電源が投入されると、図5のフローチャートに示す処理ルーチンが起動し、ステップS502の処理において、動作モード監視判定部18aの制御により、ツール長測定モード選択操作子30bと加工動作モード選択操作子30cとのいずれが操作されたかを監視して、動作モードとしてツール長測定モードと加工動作モードとのいずれが選択されたかを判定する。
【0053】
ステップS502の処理において、動作モードとしてツール長測定モードが選択されたと判定された場合には、ステップS504の処理へ進み、ツール長測定モード処理部18bの制御によりツール長測定モード処理を行い、このステップS504のツール長測定モード処理を終了すると、メインルーチンの動作を終了する。
【0054】
ここで、図6には、本発明の実施に関連してマイクロコンピューターが実行するメインルーチンの処理ルーチンのサブルーチンであるツール長測定モード処理ルーチンを示すフローチャートがあらわされている。
【0055】
また、図7には、レーザーポインター32から出射される可視レーザー光Lの出射角度αを取得する手法の説明図があらわされている。
【0056】
さらに、図8には、ツール22のツール長βを取得する手法の説明図があらわされている。
【0057】
さらにまた、図9には、ワーク16上にレーザーポンター32から光が照射された光点Cとツール回転軸BとのXY平面方向における距離(XY距離)である距離γおよびツール22の先端部22aとワーク16の上面とのZ軸方向における距離(Z距離)である距離δを取得する手法の説明図があらわされている。
【0058】
このツール長測定モード処理ルーチンにおいては、出射角度取得部18b-1の制御により、ヘッドユニット34をXY平面上で移動させて、光検出器38の光検出部38aで検出できる光の強度が最も大きくなる箇所(検出位置)におけるレーザーポインター32の発光点32aの位置(座標値)と、光検出器38における光検出部38aの位置(座標値)と、距離L3とを用いて、レーザーポインター32から出射された可視レーザー光の出射角度αを演算により取得する。
【0059】
また、ツール長測定モード処理ルーチンにおいては、ツール長取得部18b-2の制御により、上記した検出位置におけるツール22のZ軸方向の移動に伴う光検出器38の光検出部38aで検出できる光の光量の変化を検出できる距離L8と距離L1、距離L4および出射角度αとを用いて、ツール22のツール長βを演算により取得する。
【0060】
なお、ワーク16の上下方向の高さたるZ軸方向の距離L5は、作業者がノギスなどを用いて実測して測定したり、基準面であるテーブル14上にワーク16をセットした後に、従来の加工装置に搭載されているワーク16の上下方向の高さたるZ軸方向の距離L5を測定する公知の技術などを用いて測定した測定値であって、既知の距離である。
【0061】
このツール長測定モード処理ルーチンにおいては、距離L1と距離L3、距離L5、距離L7および出射角度αとを用いて、ワーク16上にレーザーポインター32から光が照射された光点Cとツール回転軸BとのXY距離である距離γを演算により取得する。
【0062】
なお、ツール22の先端部22aワーク16の上面までの距離δは、距離L3と距離L4、距離L5、距離L7およびツール長βとを用いて演算により取得する。
【0063】
また、ツール22の移動にともなう位置(座標値)の取得にあたっては、従来の加工装置に搭載されている公知の技術により、基準面たるテーブル14のXY平面上における原点位置を設定しておき(例えば、原点位置としてXYZ直交座標系における座標値(0,0,0)を設定する。)、当該原点位置を基準として位置(座標値)を取得するようにすればよい。
【0064】
ここで、上記において説明したように、レーザーポインター32は、上下方向(Z軸方向)に移動するスピンドル20に取り付けられたツール22の上下方向(Z軸方向)への移動には追従せず、ツール22のXY平面方向への移動にのみ追従するので、ツール22が原点位置に存在するとき、レーザーポインター32の発光点32aと光検出器38の光検出部38aとのXYZ空間位置は一意に決まっている。
【0065】
また、上記において説明したように、レーザーポインター32から出射されたレーザー光はツール回転軸Bと交差する位置関係となるように設定されており、レーザーポインター32の発光点32aとツール回転軸Bとの距離L1は一意に決まっている。
【0066】
上記した前提において、ツール長測定モード処理ルーチンでは、まず、ステップS602の処理として、出射角度取得部18b-1の制御により、レーザーポインター32から出射されたレーザー光の出射角度αを取得する。
【0067】
より詳細には、ヘッドユニット34をXY平面上で移動させて、図7に示すように、光検出器38の光検出部38aで検出できるレーザーポインター32から出射された可視レーザー光Lの強度が最も大きくなる箇所(検出位置)における、レーザーポインター32の発光点32aの座標値X1と光検出部38aの座標値X2とを取得し、それから座標値X1と座標値X2との間の距離L6を取得する(距離L6=座標値X2-座標値X1)。
【0068】
次に、距離L6と距離L3とを用いて、
出射角度α=tan-1(距離L6/距離L3) ・・・ 式1
により、出射角度αを取得する。
【0069】
ステップS602の処理を終了すると、ステップS604の処理へ進み、ツール長取得部18b-2の制御により、ステップS602の処理で取得した検出位置においてツール22をZ軸方向に移動させ、その移動に伴う光検出部38aで検出できる光の光量の変化を検出することにより、ツール22のツール長βを演算により取得する。
【0070】
より詳細には、図8に示すように、上記した検出位置において、スピンドル20をZ軸方向下方へ移動させると、スピンドル20のZ軸方向下方へ移動に伴いツール22の先端部22aも下方移動へ移動して、ツール22の先端部22aが可視レーザー光Lを遮るようになる。
【0071】
ツール22の先端部22aが可視レーザー光Lを遮ることにより、光検出部38aで検出できる光の光量が変化し、この光量の変化に基づき、ツール22の先端部22aが可視レーザー光Lを遮ったときのZ軸方向における位置座標Z2と移動開始時の位置座標Z1との距離L8を取得する(距離L8=位置座標Z2-位置座標Z1)。
【0072】
次に、距離L1、距離L4、距離L8と出射角度αとを用いて、
ツール長β=(L1/tanα)-(L4+L8) ・・・ 式2
により、ツール22のツール長βを演算により取得する
【0073】
ステップS604の処理を終了すると、このツール長測定モード処理ルーチンを終了して、メインルーチンへリターンする。
【0074】
上記したように、ツール長測定モード処理により、出射角度αとツール長βとが取得されるので、ステップS506の処理において後述するように、出射角度αとワークの高さである距離L5とから、レーザーポインター32により照射されているワーク16上の光点Cの位置とツール22のツール回転軸BとのXY距離である距離γおよびツール22の先端部22aとワーク16の上面との距離δを演算により取得する。
【0075】
より詳細には、図9に示すように、距離L1、距離L3、距離L5、距離L7と出射角度αを用いて、
距離γ=tanα×(L3-(L5+L7))-L1 ・・・ 式3
により、レーザーポインター32により照射されているワーク16上の光点Cとツール22のツール回転軸BとのXY距離である距離γを演算により取得する。
【0076】
距離γにより、どの座標値にレーザーポインター32よりワーク16上の光点Cがあるか取得できるため、レーザーポインター32によりワーク16上に加工範囲を明示することができる。
【0077】
また、距離L3、距離L4、距離L5、距離L7とツール長βを用いて、
距離δ=L3+L7-(L4+L5+β) ・・・ 式4
により、ツール22の先端部22aとワーク16の上面までのZ距離である距離δを演算により取得することができる。
【0078】
距離δにより、ワーク16への加工深さを設定して加工することができる。
【0079】
ステップS502の処理において、動作モードとして加工動作モードが選択されたと判定された場合には、ステップS506の処理へ進み、加工動作モード処理部18cの制御により、レーザーポインター32から可視レーザー光を照射してワーク16に対する加工範囲を示す動作や、ツール22によるワーク16に対する加工を行う加工動作モード処理を行い、このステップS506の加工動作モード処理を終了すると、メインルーチンの動作を終了する。
【0080】
ここで、加工動作モード処理においては、上記した処理によりワーク16の上下方向の高さたるZ軸方向の距離L5が取得され、ツール長測定モード処理ルーチンにより出射角度αおよびツール22のツール長βが取得されるので、ワーク16へのツール22の加工深さを予め設定しておけば、ツール22のZ軸方向へ移動距離をマイクロコンピューター18により自動的に演算して取得することができる。
【0081】
また、レーザーポインター32の発光点32aのXY平面における座標値は上記した設計値から取得される既知の値であり、かつ、ツール長測定モード処理ルーチンによりレーザーポインターの出射角度αが取得されているので、ワーク16上のどこにレーザーポインター32から出射されたレーザー光が照射されているか、即ち、ワーク16上におけるレーザーポインター32から出射されたレーザー光の光点の座標値を、マイクロコンピューター18により自動的に演算して取得することができる。
【0082】
従って、上記のように取得されたレーザー光の光点Cの座標値へツール22の先端部22aを移動すればよく、ツール22によりワーク16を加工する際の加工箇所を、レーザーポインター32からのレーザー光の照射による光点Cにより視覚的に明示することができる。
【0083】
なお、上記した処理以外の加工データの信号に応じてワーク16を加工する処理などについては、従来より公知の技術を適用してツール22を移動させればよいので、その詳細な説明は省略する。
【0084】
以上において説明したように、本発明による加工装置10によれば、ツール長を測定するために使用する光源の機能と加工箇所を視覚的に確認するために使用する光源の機能とを、可視光を出射する単一の光源であるレーザーポインター32で実現することができるので、従来の技術と比較すると光源の搭載に伴う製造コスト高を大幅に抑制することができる。
【0085】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0086】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形するようにしてもよい。
【0087】
(1)上記した実施の形態においては、可視光を出射する光源としてレーザーポインター32を用いた場合について説明したが、可視光を出射する光源はレーザーポインターと称されるものに限られるものではなく、可視光を出射可能な機器であるならば、設計条件などに応じて適宜の機器による光源を用いるようにしてもよい。また、光源は、レーザー光源に限られるものではないことは勿論であり、設計条件などに応じて、ランプや発光ダイオードなどの各種の光源を適宜に用いることができる。
【0088】
(2)上記した実施の形態においては、レーザーポインター32から出射される可視レーザー光(可視光)の発光色については詳細な説明を省略したが、発光色は赤色でも青色でも設計条件などに応じて適宜の発光色を選択すればよい。レーザーポインター32などの可視光を出射する光源としては、選択した発光色の光を出射可能ものを適宜に選択すればよい。
【0089】
(3)上記した実施の形態においては、ツール22についての詳細な説明は省略したが、ツール22としてはエンドミルやカッターなど種々のツールを交換可能に用いることができる。従って、本発明は、複数のツールを利用可能なオートツールチェンジャー機能を備えた加工装置に対しても適用できるものである。
【0090】
(4)上記した実施の形態においては、ヘッドユニット34が主走査方向(X軸方向)に移動し、ガイドレール36が副走査方向(Y軸方向)に移動し、ツール22を取り付けたスピンドル20が上下方向(Z軸方向)に移動する機構により、ツール22とワーク16との相対的な位置関係を三次元方向で変化することのできる可変機構が構築するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、ヘッドユニット34が主走査方向(X軸方向)に移動し、テーブル14が副走査方向(Y軸方向)に移動し、ツール22を取り付けたスピンドル20が上下方向(Z軸方向)に移動する機構により、ツール22とワーク16との相対的な位置関係を三次元方向で変化することのできる可変機構が構築するようにしてもよい。要するに、ツール22とワーク16との相対的な位置関係を三次元方向で変化することのできる構成であれば、可動部材はどの部材でもよい。
【0091】
(5)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す各種の変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、エンドミルやカッターなどのように被加工物を切削加工したり切断加工したりするための被加工物加工用のツールを搭載した加工装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 加工装置
12 底板
14 テーブル(基準面)
16 被加工物(ワーク)
18 マイクロコンピュータ(制御手段)
18a 動作モード監視判定部
18b ツール長測定モード処理部(出射角度取得手段、出射角度取得手段)
18b-1 出射角度取得部(出射角度取得手段)
18-b2 ツール長取得部(ツール長取得手段)
18c 加工動作モード処理部(制御手段)
20 スピンドル(制御手段)
22 ツール
22a 先端部
22b 上端部
24 フロントカバー部材
26 筐体
26a ワークエリア
26L 側壁部
26R 境界壁部
28 本体部
30 操作パネル
30a 表示部
30b ツール長測定モード選択操作子
30c 加工動作モード選択操作子
32 レーザーポインター(光源)
32a 発光点(光源)
34 ヘッドユニット(制御手段)
36 ガイドレール(制御手段)
38 光検出器(光検出手段)
38a 光検出部(光検出手段)
α 出射角度
β ツール長
γ ワーク上のレーザーポインター照射点(光点C)とツール回転軸との間のXY距離
δ ツールの先端部とワーク上面とのZ距離
L 可視レーザー光(可視光)
B ツール回転軸
C 光点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9