(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】伝動装置を備えるゲート駆動設備
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20221117BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20221117BHJP
F16H 1/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E02B7/20 109
F16H1/16 Z
F16H1/10
(21)【出願番号】P 2019032729
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 斉昭
(72)【発明者】
【氏名】迎 俊平
(72)【発明者】
【氏名】北島 主計
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-224417(JP,A)
【文献】特開2015-194247(JP,A)
【文献】特開平11-172659(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079189(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
E02B 8/02-8/04
F16H 1/10
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動ハンドル、及び、該手動ハンドルから入力部に与えられた回転力を出力部に伝える伝動装置を有し、該出力部の回転駆動によって、外部のゲートを開くゲート駆動設備において、
前記伝動装置は、歯部を有し、前記手動ハンドルと一体的に回転駆動する回転部材と、前記回転部材の歯部に噛合する外周歯を具備し、内周歯が形成された内外歯部材と、前記内周歯に外歯が噛合し、前記回転部材及び前記内外歯部材経由で与えられた前記入力部からの前記回転力を、中心位置を固定した状態で回転して、前記出力部に動力伝達機構経由で伝える外歯車部材とを備え、
前記外歯車部材は、前記外歯が外周全体に形成された領域の外径が前記内外歯部材の内周全体に前記内周歯が形成された領域の内径より小さく、前記外歯の一部と前記内周歯の一部が噛み合
い、
前記回転部材は、該回転部材と同心上に配され、前記入力部である一端部に前記手動ハンドルが連結された軸材に固定され、前記外歯車部材の前記外歯が形成された領域の中心から前記軸材の一端部までの距離は、前記内外歯部材の前記内周歯が形成された領域の中心から前記軸材の一端部までの距離より短いことを特徴とするゲート駆動設備。
【請求項2】
請求項
1記載のゲート駆動設備において、前記回転部材はウォームであることを特徴とするゲート駆動設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力を伝える伝動装置を有しゲートを開閉するゲート駆動設備に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ及びモータの回転力が伝えられる出力部を有するゲート駆動設備は、出力部に装着されたスプロケット等を回転駆動することによってゲートを開閉させる。ゲート駆動設備には、停電等でモータが作動できないときでもゲートの開閉ができるように手動ハンドルを具備するものがあり、その具体例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のゲート駆動設備(水門扉開閉装置)は、モータ(電動機)の駆動力が遊星歯車機構(遊星歯車減速機)を介して出力部(出力軸の一端部)に伝えられ、出力部に装着されたラックピニオンギアが回転駆動することによって、ゲート(水門扉)に連結されたラックをゲートと共に昇降させる。このゲート駆動設備では、手動ハンドルと一体的に回転するウォームが、遊星歯車機構に動力を伝えるウォームホイールと噛み合っており、手動ハンドルの回転力がウォーム、ウォームホイール及び遊星歯車機構を経由してラックピニオンギアに与えられる。モータ作動時の遊星歯車機構の内歯車は、ウォーム及びウォームホイールのセルフロックによって、回転が防止されている。
【0004】
また、モータに加えて手動ハンドルを有するゲート駆動設備では、手動ハンドルの回転によるゲートの開閉時間を短縮するために、しばしば増速機構が採用される。特許文献1のゲート駆動設備にこのような増速機構を設ける場合、径の異なる複数の歯車を有する従来の増速機構を手動ハンドルとウォームの間に配置することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図4に示すように、手動ハンドル100とウォーム101の間に径の異なる複数の歯車102、103が噛み合った増速機構104を設ける場合、増速機構104を設けない場合に比べて、手動ハンドル100からウォーム101までの間隔を長くする必要がある。この点、ゲート駆動設備を設置する現場によっては、手動ハンドルを操作する人のために確保できるスペースに制限があり、手動ハンドルからウォームまでの間隔を所定以上長くすることができない。
【0007】
また、ウォームを経由せずに出力部に回転力を伝えるゲート駆動設備やゲート駆動設備以外の設備においても、設計上の都合等で径の異なる複数の歯車が噛み合った増速機構を採用できないことや、そのような増速機構の採用が好ましくないことがある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、回転力の伝達経路上に径の異なる複数の歯車が噛み合った従来の増速機構とは別の増速機構が設けられた伝動装置を有するゲート駆動設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係るゲート駆動設備は、手動ハンドル、及び、該手動ハンドルから入力部に与えられた回転力を出力部に伝える伝動装置を有し、該出力部の回転駆動によって、外部のゲートを開くゲート駆動設備において、前記伝動装置は、歯部を有し、前記手動ハンドルと一体的に(共に)回転駆動する回転部材と、前記回転部材の歯部に噛合する外周歯を具備し、内周歯が形成された内外歯部材と、前記内周歯に外歯が噛合し、前記回転部材及び前記内外歯部材経由で与えられた前記入力部からの前記回転力を、中心位置を固定した状態で回転して、前記出力部に動力伝達機構経由で伝える外歯車部材とを備え、前記外歯車部材は、前記外歯が外周全体に形成された領域の外径が前記内外歯部材の内周全体に前記内周歯が形成された領域の内径より小さく、前記外歯の一部と前記内周歯の一部が噛み合い、前記回転部材は、該回転部材と同心上に配され、前記入力部である一端部に前記手動ハンドルが連結された軸材に固定され、前記外歯車部材の前記外歯が形成された領域の中心から前記軸材の一端部までの距離は、前記内外歯部材の前記内周歯が形成された領域の中心から前記軸材の一端部までの距離より短い。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゲート駆動設備は、入力部と一体的に回転駆動する回転部材と、回転部材の歯部に噛合する外周歯を具備し、内周歯が形成された内外歯部材と、内外歯部材の内周歯に外歯が噛合し、回転部材及び内外歯部材経由で与えられた手動ハンドル(又は入力部)からの回転力を、中心位置を固定した状態で回転して、出力部に伝える外歯車部材とを備え、外歯車部材の外歯が外周全体に形成された領域の外径が内外歯部材の内周全体に内周歯が形成された領域の内径より小さく、外歯車部材の外歯の一部と内外歯部材の内周歯の一部が噛み合っているので、内外歯部材及び外歯車部材によって増速機構が構成されている(即ち、径の異なる複数の歯車が噛み合った従来の増速機構とは相違する増速機構が設けられている)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るゲート駆動設備の説明図である。
【
図2】同ゲート駆動設備の伝動装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るゲート駆動設備10は、手動ハンドル11、及び、手動ハンドル11から入力部に与えられた回転力を出力部に伝え
る伝動装置16を有して、出力部の回転駆動によって、外部のゲートGを開く設備である。以下、詳細に説明する。
【0013】
ゲート駆動設備10は、
図1、
図2、
図3に示すように、基礎部13に載置された支持ベース14に固定された筺体15と、大半が筺体15内に収められた伝動装置16と、伝動装置16に回転力を与えるモータ17を備えている。なお、
図1、
図3においてはモータ17の記載を省略している。
手動ハンドル11は、
図3に示すように、筺体15に固定された軸受39によって回転自在に支持され、筺体15の内側に配された部位が伝動装置16に備えられた軸材18の一端部(入力部の一例)に連結されている。軸材18は軸心を基準にして回転することができる。
【0014】
伝動装置16は、
図2、
図3に示すように、軸材18に装着(固定)されたウォーム19と、ウォーム19の歯部に噛合する外周歯20の内側に内周歯21が形成された筒状の内外歯部材22と、内外歯部材22の内周歯21に外歯23が噛合した円柱状の外歯車部材24を備えている。
ウォーム19は、軸材18と同心上に配されており、手動ハンドル11が回転駆動する際、軸材18と一体的に回転する。本実施の形態では、ウォーム19が入力部と一体的に(共に)回転する回転部材の一例である。
【0015】
内外歯部材22の軸心及び外歯車部材24の軸心は平行であり、軸受25に支持された内外歯部材22及び軸受26に支持された外歯車部材24は共に軸心を基準に回転することができる。内外歯部材22は軸心方向一側の領域の内周全体に内周歯21が形成され、同領域の外周全体に外周歯20が形成されている。外歯車部材24は、軸心方向他側の領域の外周全体に外歯23が形成され、外歯23の形成領域が内外歯部材22の内側に配され、内外歯部材22から突出している軸心方向一側に、複数の遊星歯車27に噛み合った内歯車部材28が取り付けられている。
【0016】
複数の遊星歯車27は、
図2に示すように、回転軸29に装着された太陽歯車30の周りを公転可能に配置され、複数の遊星歯車27には、ギア31が取り付けられた筒状の遊星キャリア32が連結されている。ギア31には、ギア31より径が大きいギア33が噛み合っており、ギア33と同軸上で回転するギア34に噛み合った、ギア34より径が大きいギア35に、出力軸12が連結されている。
【0017】
モータ17が停止時、人によって手動ハンドル11が回されると、手動ハンドル11の回転力は軸材18の入力部から、軸材18全体、ウォーム19、内外歯部材22、外歯車部材24、内歯車部材28及び複数の遊星歯車27に順に伝えられ、各遊星歯車27が静止している太陽歯車30(モータ17が停止している状態で手動ハンドル11を回している時、太陽歯車30は静止している)の周りを公転し、これによって遊星キャリア32及びギア31が回転する。ギア31の回転により、ギア33、34、35及び出力軸12が回転して、出力軸12に装着されているスプロケット36(
図1、
図3参照)が回転する。
【0018】
本実施の形態では、出力軸12において、スプロケット36が装着されている部分が出力部に該当し、伝動装置16が、主として出力軸12、軸材18、ウォーム19、内外歯部材22、外歯車部材24、軸受25、26、遊星歯車27、内歯車部材28、回転軸29、太陽歯車30、ギア31、33、34、35及び遊星キャリア32によって構成されている。よって、伝動装置16は手動ハンドル11から入力部に与えられた回転力を出力部に伝える装置である。
【0019】
スプロケット36には、
図1に示すように、ゲートGに一端が連結されたチェーン37が掛けられており、スプロケット36の回転によって、ゲートGが上昇し(開き)又は下降する(閉じる)。ゲートGの上昇時、チェーン37はガイドスプロケット37a等に案内されて図示しないチェーン収容部に送られ、ゲートGの下降時、チェーン37はチェーン収容部から送り出される。
【0020】
手動ハンドル11の回転時、外歯車部材24は、
図2、
図3に示すように、軸心(中心)位置を固定した状態で回転して、ウォーム19及び内外歯部材22経由で与えられた入力部からの回転力を、内歯車部材28、複数の遊星歯車27、遊星キャリア32、ギア31、33、34、35を経由して出力軸12(出力軸12の出力部)に伝える。本実施の形態では、主として内歯車部材28、複数の遊星歯車27、遊星キャリア32、ギア31、33、34、35によって、回転力を外歯車部材24から出力部に伝える動力伝達機構38が構成されている。
【0021】
また、外歯車部材24は、外歯23が形成された領域(本実施の形態では外歯車部材24の軸心方向他側の領域)の外径が、内外歯部材22の内周歯21が形成された領域(本実施の形態では内外歯部材22の軸心方向一側の領域)の内径より小さく(外歯23の歯数が内周歯21の歯数より少なく)、外歯車部材24は内外歯部材22に比べて速く回転する。従って、本実施の形態では、伝動装置16の入力部から出力部までの回転力の伝達経路上に、外歯車部材24及び内外歯部材22による増速機構が設けられている。
【0022】
そして、
図3に示すように、外歯23の一部(軸材18の軸心に平行な方向において軸材18の入力部に対応する側に位置している部分)と内周歯21の一部(軸材18の軸心に平行な方向において軸材18の入力部に対応する側に位置している部分)が噛み合った外歯車部材24及び内外歯部材22の各軸心は、軸材18及びウォーム19の各軸心に対してねじれの位置にある。外歯車部材24、内外歯部材22、軸材18及びウォーム19は、一の場所(特定の場所)から見て(本実施の形態では、平面視して)、歯車部材24及び内外歯部材22の各軸心と軸材18及びウォーム19の各軸心とが直交している。
【0023】
外歯車部材24の中心から軸材18の一端部(入力部)までの距離が、内外歯部材22の中心から軸材18の一端部(入力部)までの距離より短くなるように、外歯車部材24と内外歯部材22は配置されている。そのため、本実施の形態では、外歯車部材の中心から入力部までの距離が内外歯部材の中心から入力部までの距離と同じ又は長い場合に比べ、外歯車部材24、ゲート駆動設備10の中心及び伝動装置16の中心から手動ハンドル11までの距離が短く、ゲート駆動設備10や伝動装置16のコンパクト化が図られている。
【0024】
また、本実施の形態では、モータ17の回転力(駆動力)が、
図2に示すように、減速機構40及びクラッチ41経由で回転軸29に与えられるように設計されている。手動ハンドル11が静止している際、ウォーム19及び内外歯部材22によるセルフロックによって、内歯車部材28が実質的に静止した状態を維持する。そのため、クラッチ41を繋いだ状態でモータ17の作動により回転軸29及び太陽歯車30が回転すると、複数の遊星歯車27が太陽歯車30を中心に公転し、遊星キャリア32、ギア31、33、34、35、出力軸12及びスプロケット36が回転し、ゲートGが上昇する。
【0025】
ゲートGは、クラッチ41を切った状態にすることで、自重で下降する(閉じる)。本実施の形態では、ギア33の回転に抵抗を与える遠心ブレーキ42によって、ゲートGの下降速度が所定値を超えるのを防止している。
そして、軸材18には、
図3に示すように、軸材18の軸心方向の移動距離を検出する位置検出機43が連結されている。ゲートGとゲートGの案内部材の間に石が入り込む等して上昇中のゲートGに所定以上の負荷がかかり、位置検出機43が軸材18の所定距離以上の移動を検知した際、モータ17の作動は停止される。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、回転部材はウォームである必要はなく、回転部材としてギア等が採用されてもよい。
また、入力部は回転部材が固定された軸材の一端部に限定されず、例えば、入力部が当該軸材の一端部と中央部の間の部分であってもよいし、中央部であってもよい。
そして、筒状の内外歯部材において、内周歯が形成された領域と軸心方向位置が異なる領域の内径は、外歯車部材の外歯が形成された領域の外径より小さくてもよい。内外歯部材は外周歯と内周歯が軸心方向の異なる位置に形成されていてもよい。
【0027】
外歯車部材の中心から入力部までの距離は、内外歯部材の中心から入力部までの距離と同じであってもよいし、長くてもよい。
更に、回転部材が連結された軸材とは別の部材に入力部を設けるようにしてもよい。
また、伝動装置は、ゲート駆動設備以外の設備に採用されてもよく、入力部にモータの回転力が与えられてもよい。入力部にモータの回転力を与えるようにする場合、そのモータは、例えば、回転部材が固定された軸材の一端部(入力部)に連結される。
そして、伝動装置は、回転部材及び内外歯部材経由で外歯車部材に与えられた入力部からの回転力を出力部に直接伝えるように設計されていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10:ゲート駆動設備、11:手動ハンドル、12:出力軸、13:基礎部、14:支持ベース、15:筺体、16:伝動装置、17:モータ、18:軸材、19:ウォーム、20:外周歯、21:内周歯、22:内外歯部材、23:外歯、24:外歯車部材、25、26:軸受、27:遊星歯車、28:内歯車部材、29:回転軸、30:太陽歯車、31:ギア、32:遊星キャリア、33、34、35:ギア、36:スプロケット、37:チェーン、37a:ガイドスプロケット、38:動力伝達機構、39:軸受、40:減速機構、41:クラッチ、42:遠心ブレーキ、43:位置検出機、G:ゲート