(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】内視鏡システム及び内視鏡用光学アダプタ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20221117BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20221117BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B23/26 C
A61B1/00 731
(21)【出願番号】P 2019045765
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 進
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-269909(JP,A)
【文献】特開平09-010170(JP,A)
【文献】特開平06-222263(JP,A)
【文献】特開平11-249014(JP,A)
【文献】特開平04-275514(JP,A)
【文献】特開2012-047909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0199371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 23/24 - 23/26
G02B 25/00 - 25/04
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能なアダプタと本体光学系を有する内視鏡システムにおいて、
前記アダプタは
、物体側から順に、合成焦点距離が全体として負となる第1群の光学系
、合成焦点距離が全体として正となる第2群の光学系
、及び、絞りを有し、
前記本体光学系は、前記物体から前記アダプタを経由した光束を撮像素子に結像させる結像レンズを有し、
前記第1群の光学系は、アッベ数が35以上であるレンズを有し、
前記第2群の光学系は、アッベ数が45以下であるレンズを有
し、
前記第1群の光学系は、前記物体側から順に、メニスカスレンズと、前記物体側が平面となる平凹レンズと、像側が平面となる凹平レンズと、を含み、
前記第2群の光学系は、前記物体側が平面となる平凸レンズを含み、
前記凹平レンズは前記第1群の光学系の最も前記像側に配置され、
前記平凸レンズは前記第2群の光学系の最も前記物体側に配置され、
前記凹平レンズの前記平面と前記平凸レンズの前記平面とは接合されている、内視鏡システム。
【請求項2】
前記
メニスカスレンズは、前記物体側に凸となる向きで配置され
る、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第1群の光学系の前記物体側に向かって先端のレンズは、
前記メニスカスレンズであり、
前記メニスカスレンズの基端側の曲率半径に対する前記メニスカスレンズの前記先端側の曲率半径の比率は、3以上である、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記第1群の光学系
は、複数の負のレンズを含み、前記複数の
負のレンズ
それぞれのパワーの絶対値において、最小パワーに対する最大パワーの比率は、3以下である、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1群の光学系の前記物体側に向かって先端のレンズは、
前記メニスカスレンズであり、
前記メニスカスレンズ
の基端側の曲率半径と前記メニスカスレンズ
の光軸に沿った厚さとの和は、前記メニスカスレンズ
の前記先端側の曲率半径よりも小さい、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記第1群の光学系及び前記第2群の光学系及び前記絞りは、アフォーカル光学系を構成する、請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記第1群の光学系のレンズ枚数は、前記第2群の光学系のレンズ枚数よりも1枚多い、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記第1群の光学系の前記物体側の画角は、200度から220度の範囲にある、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
内視鏡の挿入部の先端部に着脱可能な内視鏡用光学アダプタであって、物体側から順に、
合成焦点距離が全体として負となる第1群の光学系と、
合成焦点距離が全体として正となる第2群の光学系と、
絞りと、
を有し、
前記第1群の光学系は、アッベ数が35以上であるレンズを有し、
前記第2群の光学系は、アッベ数が45以下であるレンズを有し、
前記第1群の光学系は、前記物体側から順に、メニスカスレンズと、前記物体側が平面となる平凹レンズと、像側が平面となる凹平レンズと、を含み、
前記第2群の光学系は、前記物体側が平面となる平凸レンズを含み、
前記凹平レンズは前記第1群の光学系の最も前記像側に配置され、
前記平凸レンズは前記第2群の光学系の最も前記物体側に配置され、
前記凹平レンズの前記平面と前記平凸レンズの前記平面とは接合されている、内視鏡用光学アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム及び内視鏡用光学アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業分野及び医療分野において内視鏡が用いられている。内視鏡は、細長の挿入部を有し、挿入部が被検体の内部に挿入される。挿入部の先端部には、観察窓が設けられており、観察窓を通して入射した観察部位の画像は、内視鏡画像として表示装置に表示される。
【0003】
挿入部の先端部の基端には湾曲部が設けられる場合もあるが、内視鏡の挿入部は、狭い空間内に配置されるため、内視鏡システムの画角は、より広角であるものが好ましい場合がある。
【0004】
日本国特開2016-151629号公報には、広角な対物光学系を有する内視鏡が提案されている。また、日本国特開平01-269909号公報には、内視鏡に取り付けられる光学アダプタにより対物光学系の画角を広角とする内視鏡が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-151629号公報
【文献】特開平01-269909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光学アダプタにより対物光学系の画角を広角とする内視鏡の場合、挿入部の先端部と光学アダプタの接続部分はアフォーカル光学系で構成される。従来の広角用の光学アダプタを用いた内視鏡の場合、色収差の補正用の複数のレンズが必要となるので、対物光学系の全体のレンズ枚数は多くなり、かつ光学アダプタも結果として太径となる。レンズ枚数が多くなると、光学アダプタを含む先端部の硬質部長が長く、かつ光学アダプタの外径が大きくなると、挿入部の被検体内への挿入性などが悪化する。
【0007】
そこで、本発明は、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡システム及び内視鏡用光学アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の内視鏡システムは、着脱可能なアダプタと本体光学系を有する内視鏡システムにおいて、前記アダプタは、物体側から順に、合成焦点距離が全体として負となる第1群の光学系、合成焦点距離が全体として正となる第2群の光学系、及び、絞りを有し、前記本体光学系は、前記物体から前記アダプタを経由した光束を撮像素子に結像させる結像レンズを有し、前記第1群の光学系は、アッベ数が35以上であるレンズを有し、前記第2群の光学系は、アッベ数が45以下であるレンズを有し、前記第1群の光学系は、前記物体側から順に、メニスカスレンズと、前記物体側が平面となる平凹レンズと、像側が平面となる凹平レンズと、を含み、前記第2群の光学系は、前記物体側が平面となる平凸レンズを含み、前記凹平レンズは前記第1群の光学系の最も前記像側に配置され、前記平凸レンズは前記第2群の光学系の最も前記物体側に配置され、前記凹平レンズの前記平面と前記平凸レンズの前記平面とは接合されている。
【0009】
本発明の一態様の内視鏡用光学アダプタは、内視鏡の挿入部の先端部に着脱可能な内視鏡用光学アダプタであって、物体側から順に、合成焦点距離が全体として負となる第1群の光学系と、合成焦点距離が全体として正となる第2群の光学系と、絞りと、を有し、前記第1群の光学系は、アッベ数が35以上であるレンズを有し、前記第2群の光学系は、アッベ数が45以下であるレンズを有し、前記第1群の光学系は、前記物体側から順に、メニスカスレンズと、前記物体側が平面となる平凹レンズと、像側が平面となる凹平レンズと、を含み、前記第2群の光学系は、前記物体側が平面となる平凸レンズを含み、前記凹平レンズは前記第1群の光学系の最も前記像側に配置され、前記平凸レンズは前記第2群の光学系の最も前記物体側に配置され、前記凹平レンズの前記平面と前記平凸レンズの前記平面とは接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡システム及び内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に関わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に関わる、挿入部の長手軸方向に沿った、光学アダプタが装着された挿入部の先端部の断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に関わる、挿入部の長手軸方向に沿った、光学アダプタが装着された挿入部の先端部の断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に関わる、物体側から見た光学アダプタの正面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に関わる、発光素子を有する光学アダプタの光軸に沿った断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図15】本発明の第2の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図16】本発明の第3の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図17】本発明の第3の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図20】本発明の第3の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図21】本発明の第4の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図22】本発明の第4の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図23】本発明の第4の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図24】本発明の第4の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図25】本発明の第4の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図26】本発明の第5の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図27】本発明の第5の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図28】本発明の第5の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図29】本発明の第5の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図30】本発明の第5の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図31】本発明の第6の実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
【
図32】本発明の第6の実施の形態に関わる対物光学系のレンズデータを示す表である。
【
図33】本発明の第6の実施の形態に関わる対物光学系の諸数値データを示す表である。
【
図34】本発明の第6の実施の形態に関わる対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
【
図35】本発明の第6の実施の形態に関わる対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【
図36】従来の光学アダプタを用いた対物光学系の軸上の色収差の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
(内視鏡装置の構成)
図1は、本実施の形態に関わる内視鏡装置の構成を示す構成図である。
図1に示すように、内視鏡装置1は、ビデオプロセッサ等の機能を備えた装置本体2と、装置本体2に接続される内視鏡3とを有して構成される内視鏡システムである。装置本体2は、例えば液晶パネル(LCD)等の表示部4を有し、表示部4には、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される。この表示部4には、タッチパネルが設けられていてもよい。
【0013】
内視鏡3は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部としての挿入部5と、挿入部5の基端に設けられた操作部6と、操作部6から延出したユニバーサルコード7とを有して構成されている。内視鏡3は、ユニバーサルコード7を介して装置本体2と着脱可能になっている。
【0014】
挿入部5は、先端側から順に、先端部11と、湾曲部12と、長尺な可撓部13とを有して構成されている。湾曲部12は、先端部11の基端に連設され、例えば上下左右方向に湾曲自在に構成されている。可撓部13は、湾曲部12に基端に連設され、可撓性を有する。挿入部5内には、照明光を導光するライトガイド40(
図3)が挿通されている。装置本体2は、光源を内蔵し、光源の光は、ライトガイド40の基端面に照明光を当てられ、照明光は、ライトガイド40の先端面まで導光される。
【0015】
挿入部5の先端部11には、例えばCMOSイメージセンサ等の撮像素子23(
図2)が内蔵されている。撮像素子23は、挿入部5の先端部11に設けられた観察窓(図示せず)に入射した入射光を受光する。
【0016】
先端部11には、矢印で示すように、光学アダプタ31が着脱自在に装着可能となっている。広角用の光学アダプタ31を先端部11に装着することによって、内視鏡3は広角内視鏡として使用可能となる。
【0017】
操作部6には、湾曲部12を上下左右方向に湾曲させる湾曲ジョイスティック6aが設けられている。ユーザは、湾曲ジョイスティック6aを傾倒操作することで、湾曲部12を所望の方向に湾曲させることができる。また、操作部6には、湾曲ジョイスティック6aの他に、内視鏡機能を指示するボタン類、例えば、フリーズボタン、湾曲ロックボタン、記録指示ボタン等の各種操作ボタンが設けられている。
【0018】
なお、表示部4にタッチパネルが設けられている構成の場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、内視鏡装置1の種々の操作を指示してもよい。
【0019】
装置本体2の表示部4には、先端部11内に設けられた撮像ユニットの撮像素子23(
図2)によって撮像された被検体の内視鏡画像が表示される。また、装置本体2の内部には、画像処理や各種制御を行う制御部(図示せず)、処理画像をメモリ(図示せず)に記録する記録装置、等々の各種回路が設けられている。
(光学アダプタの構成)
図2及び
図3は、挿入部の長手軸方向に沿った、光学アダプタが装着された挿入部の先端部の断面図である。
図3は、
図2の断面に直交する断面を示す。
図4は、物体側から見た光学アダプタの正面図である。
【0020】
図2、
図3及び
図4に示すように、挿入部5の先端部11は、ステンレスなどの金属製の先端硬性部材21を有する。撮像ユニット22が、円筒状の先端硬性部材21内に内蔵されている。撮像ユニット22は、複数のレンズを含む光学系DOS(二点鎖線で示す)と、撮像素子23を有する。撮像ユニット22は、先端硬性部材21内に形成された嵌合孔に嵌合し、接着剤24により固定されている。先端硬性部材21は、基端側外周面に、雄螺子が形成された螺子部21aを有する。
【0021】
撮像ユニット22は、光学系DOSを固定する円筒状の枠部材22aと、枠部材22aと撮像素子23を固定する円筒状の枠部材22b、22cと、撮像素子23から延出する各種信号線が挿通されたケーブル22dを有する。ここでは、撮像ユニット22は、1つのユニットとして形成されており、先端硬性部材21の基端から先端硬性部材21内に形成された嵌合孔に挿入されて固定される。撮像ユニット22の光学系DOSは、物体から光学アダプタ31を経由した光束を撮像素子23に結像させる結像レンズを有する。
【0022】
光学アダプタ31は、挿入部5の先端部11に着脱可能に装着される。よって、内視鏡装置1は、着脱可能な光学アダプタ31と、本体光学系である光学系DOSを有する内視鏡システムである。そのため、光学アダプタ31は、本体部材32と、筒状部材33と、先端カバー34と、取り付けリング35と、複数のレンズを含む光学系AOS(二点鎖線で示す)と、枠部材36を有している。円筒状の本体部材32は、ステンレスなどの金属製の硬性部材である。先端カバー34が、本体部材32の先端面を保護するように、螺子、接着剤などにより本体部材32に固定されている。先端カバー34は、光学系AOSに光を入射させるための開口を有している。先端カバー34は、先端側に突出した2つの突起部34aを縁部に有している。各突起部34aは、被検体内の部材がぶつかって光学系AOSの表面に傷などが付くのを防止するために設けられている。枠部材36は、光学系AOSを固定する円筒状の部材である。光学系AOSは、枠部材36内に設けられている。
【0023】
筒状部材33は、本体部材32を覆うように、ネジ33aにより本体部材32に固定されている。筒状部材33は、基端部に内向フランジ33bを有している。枠部材36は、筒状部材33内に接着剤などにより固定されている。
【0024】
筒状部材33は、先端側内周面に雌螺子部が形成され、先端カバー34の基端側外周面には雄螺子部が形成されている。筒状部材33の雌螺子部と先端カバー34の雄螺子部を螺合することによって、先端カバー34は、筒状部材33に固定される。
【0025】
取り付けリング35は、筒状部材であり、外径は、筒状部材33の内径よりも小さい。取り付けリング35は、先端部に外向フランジ35aを有し、基端部の内周面に、雌螺子が形成された螺子部35bを有する。外向フランジ35aは、筒状部材33の内向フランジ33bに係合可能となっている。
【0026】
取り付けリング35を回動させると、螺子部21aと螺子部35bの螺合により、取り付けリング35は、先端硬性部材21の中心軸方向に沿って先端硬性部材21に対して移動する。取り付けリング35を第1の方向に回動させると、取り付けリング35は、先端硬性部材21の基端方向に移動する。取り付けリング35を第1の方向とは反対の方向に回動させると、取り付けリング35は、先端硬性部材21の先端方向に移動する。
【0027】
取り付けリング35が基端方向に移動すると、外向フランジ35aが内向フランジ33bを基端方向に移動させるように牽引するので、光学アダプタ31は、挿入部5の先端部11に対して固定される。取り付けリング35を先端方向に移動させ、螺子部21aと螺子部35bの螺合を解除すると、ユーザは、光学アダプタ31を、挿入部5の先端部11から取り外すことができる。
【0028】
光学アダプタ31は、2つの照明窓34bを有している。各照明窓34bには、カバーガラス38が配設され、その後ろ側には、照明レンズ39が設けられている。各照明レンズ39の後ろには、光ファイバ束からなるライトガイド39aの先端面が配置される。2つのライトガイド39aの基端面は、光学アダプタ31が先端部11に装着されたときに、先端部11内に挿通されたライトガイド40の先端面と対向する位置に配置されている。
【0029】
2つの照明窓34bは、広い範囲を照明できるように、対物光学系の光軸C0に直交する面に対して所定の角度θ、ここでは30度だけ傾いた先端カバー34の傾斜面34cに配置されている。
【0030】
対物光学系は、光学系DOSとAOSにより構成される広角光学系である。一般には、広角光学系は、140度以上の画角を有するが、ここでは、光学系DOSとAOSにより構成される対物光学系は、180度を超える220度の画角を有している。
【0031】
なお、上述した照明は、ライトガイドにより同行された照明光が、照明窓34bから出射するが、照明は、発光素子を用いてもよい。
図5は、発光素子を有する光学アダプタの光軸C0に沿った断面図である。
【0032】
その場合、照明光学系を構成する2つの四角柱プリズム41が、2つのカバーガラス38の後ろ側に配設される。発光素子42は、各四角柱プリズム41の後ろ側に配設される。発光素子42は、例えば発光ダイオード(LED)である。各発光素子42から延出する信号線(図示せず)は、光学アダプタ31の基端部に設けられた接点ピン43に接続されている。
【0033】
挿入部5内には、装置本体2からの駆動電流を供給する信号線(図示せず)が挿通される。光学アダプタ31が先端部11に取り付けられると、2つの接点ピン43は、先端部11に設けられた2つの接点(図示せず)と接触し、挿入部5内に挿通された信号線と電気的に導通する。
(光学系の構成)
次に、対物光学系の構成について説明する。
【0034】
図6は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。
図6において、二点鎖線BLは、光学アダプタ31の光学系AOSと先端部11の光学系DOSの境界を示す。先端部11の光学系DOSは、先端側から順に、カバーガラス51、レンズ52,53、保護ガラス54、及びカバーガラス55を有している。
【0035】
カバーガラス51は、平行平板である。レンズ52は、メニスカスレンズである。レンズ53は、両凸レンズである。保護ガラス54も平行平板である。カバーガラス55は、撮像素子23の受光面23a側に固定されている。
【0036】
光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側すなわち物体側から順に、レンズL1からL6とカバーガラス61を有している。レンズL1、L2、L3は、凹レンズ群G1であり、レンズL4、L5、L6は、凸レンズ群G2である。
【0037】
レンズL1は、メニスカスレンズである。レンズL2は、平凹レンズである。レンズL3は、凹平レンズである。レンズL4は、平凸レンズである。レンズL5は、凸平レンズである。レンズL6は、平凸レンズである。レンズL5とL6の間に絞りAPが配置される。すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L1)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L3)と、を有する。
光学アダプタ31のカバーガラス61から出射する光は、平行光であり、先端部の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL1からL6及び絞りAPは、略アフォーカル光学系を構成する。
【0038】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学(凹レンズ群)系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系(凸レンズ群)をさらに有する。
対物光学系の第1群の光学系(凹レンズ群)の物体側の画角は、広角であり、140度以上であるが、超広角の範囲は、200度から220度の範囲に設定される。
ここでは、対物光学系の画角を220度にするために、
図6に示すように、対物光学系の光軸に沿ったレンズL1の縁部の接線TLは、対物光学系の光軸に直交する面PPに対して20度以上の角度θを有しなければならない。レンズL1の外径をφとし、レンズL1の先端側の球面の曲率半径をRとしたとき、次の式(1)を満たす。
【0039】
(φ/2tanθ) ≧ R ・・・(1)
凹レンズ群G1の画角が設定されたときは、上記の曲率半径Rと外径φは、上記の式(1)により決定される。よって、式(1)に基づいて、細径な光学アダプタ31の光学系AOSを設計することができる。
第1群の光学系の前記物体側の画角は、220度である。
【0040】
図6では、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び100度の光線IL3が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、5.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、6枚レンズ構成であり、3枚の凹レンズと3枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、5枚であり、凹レンズが3枚で、凸レンズが2枚である。
【0041】
主光線の角度は、主光線を対物光学系の像側から追跡したときに、凸レンズ作用により絞りAPよりも物体側へ進むにつれて小さくなった後に、凹レンズ作用により急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0042】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図7は、
図6の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図7は、各レンズなどの曲率半径(mm)、厚さ(mm)、材質、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、視半径(semi-diameter)、パワー(surface power)を示している。
図7において、光学アダプタ31のレンズL1,L2,L3,L4,L5,L6,カバーガラス61は、L01,L02,L03,L04,L05、L06
、L07というように示されている。先端部11のカバーガラス51,レンズ51,52,53,保護ガラス54,カバーガラス55は、L01(main body),L02(main body),L03(main body),L04(main body),L05(main body)、L06(main body)というように表記されている。
図8は、
図6の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図8は、メニスカスレンズの曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図7に示すように、第1群の光学系(凹レンズ群G1)は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
【0043】
図9は、
図6の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図9は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図9において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0044】
ズレ量は、最大で5μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対して良好に補正されている。
図10は、
図6の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0045】
そして、
図8に示すように、第1群の光学系の物体側に向かって先端の第1のレンズL1は、メニスカスレンズであり、そのメニスカスレンズの基端側の曲率半径R2に対するメニスカスレンズの先端側の曲率半径R1の比率は、3.69であり、3以上である。
【0046】
さらに、
図8に示すように、レンズL1の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL1の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL1の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL1の基端側の曲率半径R2とレンズL1の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL1の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、8.51>(2.30+0.88)である。
【0047】
また、凹レンズ群G1の3つのレンズL1、L2、L3の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L1、L2、L3)/min(L1、L2、L3))は3以下であり、ここでは、1.34である。
【0048】
従って、本実施の形態の対物光学系によれば、次のような作用と効果が生じる。
1)凸レンズ群G2が凹レンズ群G1の像側にあるので、光学アダプタ31内のマージナル光線の光束径を小さくすることができる。
2)光学アダプタ31内の絞りAPが対物光学系の物体側に近くなることで、対物光学系の画角を維持しながら、先端部11の外径を小さくすることができる。
3)
図7に示すように、絞りAPよりも像側の凸レンズであるレンズL6には分散が小さい(アッベ数νdが大きい)ガラスを用い、絞りAPよりも前方の凸レンズである2つレンズL4、L5には分散が非常に大きなガラスを用いて、倍率の色収差を補正している。
【0049】
上述したように、第1群の光学系のレンズL1、L2、L3のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、55.5、58.6である。第2群の光学系のレンズL4、L5のアッベ数は、45以下であり、具体的には、それぞれ18.9、18.9である。
【0050】
特に、
図8に示すように、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL1、L2、L3のアッベ数は、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL4、L5のアッベ数よりも20以上大きく、ここではアッベ数の差は、32.7である。
【0051】
なお、軸上の色収差は、分散が小さいガラスからなる凸レンズであるレンズL6を用いることにより補正している。すなわち、絞りAPよりも後方(像側)のレンズL6のアッベ数は、第2群の光学系のアッベ数よりも大きい。
4)また、先端のレンズL1には、屈折率(nd)が大きく、分散が中程度で、傷が付き難い硬いガラスを用いている。このため、レンズL1は、パワーが大きいので、色収差は、発生してしまうが、アッベ数が小さいレンズL4、L5により補正される。
5)さらに、凹面が対向するレンズL2とL3は、球面収差と、倍率などの色収差の発生を抑えるために、屈折率及び分散が中程度のガラスを用いて、球面収差、倍率などの色収差の発生を抑えている。全体として、単色の収差(球面収差)と色収差の補正がされる。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の光学アダプタ31は、6枚のレンズを有しているが、第2の実施の形態の光学アダプタ31は、第1の実施の形態よりレンズ枚数を減らして、5枚のレンズを有している。
【0053】
本実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成は、対物光学系以外、第1の実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成と同じであるので、同じ構成要素については、同じ符合を用いて説明は省略し、対物光学系の構成についてのみ説明する。
【0054】
図11は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側から順に、レンズL11からL15とカバーガラス61を有している。レンズL11、L12、L13は、凹レンズ群G1であり、レンズL14、L15は、凸レンズ群G2である。凹レンズ群G1の画角は、220度である。
【0055】
レンズL11は、メニスカスレンズである。レンズL12は、平凹レンズである。レンズL13は、凹平レンズである。レンズL14は、平凸レンズである。レンズL15は、凸平レンズである。レンズL14とレンズL15の間に絞りAPが配置される。すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L11)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L23)と、を有する。
光学アダプタ31から出射する光は、平行光であり、先端部11の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL11からL15及び絞りAPは、アフォーカル光学系を構成する。
【0056】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系をさらに有する。
図11では、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び100度の光線IL3が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、6.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、5枚レンズ構成であり、3枚の凹レンズと2枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、4枚であり、凹レンズが3枚で、凸レンズが1枚である。
【0057】
主光線の角度は、対物光学系の像側から主光線を追跡したときに、絞りAPよりも前方すなわち物体側へ向かうにつれて小さくなってから、急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0058】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図12は、
図11の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図12は、
図7の表と同じ形式で同じ項目についての表である。また、
図12におけるL01,L02等の表記も、
図7の場合と同様の表記である。
図13は、
図11の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図13は、メニスカスレンズの曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図13は、
図8と同じ形式の表である。
図12に示すように、第1群の光学系は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
そして、第1群の光学系の物体側に向かって先端の第1のレンズL11は、メニスカスレンズであり、そのメニスカスレンズの基端側の曲率半径R2に対するメニスカスレンズの先端側の曲率半径R1の比率は、3.69であり、3以上である。
【0059】
図14は、
図11の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図14は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示すグラフである。
図14は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図14において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0060】
ズレ量は、最大で15μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対してやや補正されている。
図15は、
図11の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0061】
また、
図13に示すように、メニスカスレンズであるレンズL11の基端側の球面の曲率半径R2に対する、レンズL11の先端側の球面の曲率半径R1の比率は、3以上であり、ここでは、(8.71/2.356)=3.69である。
【0062】
さらに、
図13に示すように、レンズL11の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL11の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL1の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL11の基端側の曲率半径R2とレンズL11の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL11の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、8.71>(2.36+0.90)である。
【0063】
また、凹レンズ群G1の3つのレンズL11、L12、L13の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L11、L12、L13)/min(L11、L12、L13))は3以下であり、ここでは、1.26である。
【0064】
従って、本実施の形態の対物光学系によれば、次のような作用と効果が生じる。
1)凸レンズ群G2は、凹レンズ群G1の像側にあるので、光学アダプタ31内のマージナル光線の光束径を小さくすることができる。
2)光学アダプタ31内の絞りAPが対物光学系の前方に近くなることで、対物光学系の画角を維持しながら、先端部11の外径を小さくすることができる。
3)絞りAPよりも前方の離れた凸レンズであるレンズL14の分散は大きい。
4)凹レンズであるレンズL12、L13の分散は小さい。メニスカスレンズであるレンズL11には、屈折率が高く、硬く、かつ分散が中程度のガラスが用いられている。
【0065】
上述したように、第1群の光学系のレンズL11、L12、L13のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、67.7、67.7である。第2群の光学系のレンズL14のアッベ数は、45以下であり、具体的には、40.8である。
【0066】
5)絞りAPよりも物体側のレンズは、超広角、例えば220度の画角の場合でも、光線高が高くならず、細径化が達成できるパワーを有する。絞りAPは、レンズL14の後方に配置されているが、光線高が小さくなるように、レンズL14の凸面が絞り側に向けて配置している。すなわち、絞りの前方のレンズの凸面は絞りAPに対向する。像側から見て、平行光がなるべく早く細くなって光線高が低くなるようにした。
6)主光線については、絞りAPに近い凸レンズは作用しないので、少し離れたレンズL14の凸面により、主光線の拡がりを一端小さくした後に、向かいあった凹面同士が向かいあったレンズL12とL13により形成される空気凸レンズにより急激に広角化させることにより、光学アダプタ31の細径化を図っている。
【0067】
従って、本実施の形態によれば、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが3枚、凸レンズが2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様に、第1の実施の形態よりレンズ枚数を減らして、光学アダプタ31は、5枚のレンズを有している。
【0069】
本実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成は、対物光学系以外、第1の実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成と同じであるので、同じ構成要素については、同じ符合を用いて説明は省略し、対物光学系の構成についてのみ説明する。
【0070】
図16は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側から順に、レンズL21からL25とカバーガラス61を有している。レンズL21、L22、L23は、凹レンズ群G1であり、レンズL24、L25は、凸レンズ群G2である。凹レンズ群G1の画角は、220度である。
【0071】
レンズL21は、メニスカスレンズである。レンズL22は、平凹レンズである。レンズL23は、凹平レンズである。レンズL24は、平凸レンズである。レンズL25は、平凸レンズである。レンズL25とカバーガラス61の間に絞りAPが配置される。すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L21)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L23)と、を有する。
光学アダプタ31から出射する光は、平行光であり、先端部11の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL21からL25及び絞りAPは、アフォーカル光学系を構成する。
【0072】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学(凹レンズ群)系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系(凸レンズ群)をさらに有する。
図16では、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び100度の光線IL3が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、5.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、5枚レンズ構成であり、3枚の凹レンズと2枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、5枚であり、凹レンズが3枚で、凸レンズが2枚である。
【0073】
主光線の角度は、対物光学系の像側から追跡したときに、絞りAPよりも前方へ小さくなってから、急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0074】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図17は、
図16の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図17は、
図7の表と同じ形式で同じ項目についての表である。また、
図17におけるL01,L02等の表記も、
図7の場合と同様の表記である。
図18は、
図16の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図18は、メニスカスレンズの曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図18は、
図8と同じ形式の表である。
図17に示すように、第1群の光学系(凹レンズ群G1)は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
そして、第1群の光学系の物体側に向かって先端の第1のレンズL21は、メニスカスレンズであり、そのメニスカスレンズの基端側の曲率半径R2に対するメニスカスレンズの先端側の曲率半径R1の比率は、3.69であり、3以上である。
【0075】
図19は、
図16の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図19は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図19は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図9において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0076】
ズレ量は、最大で4μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対して良好に補正されている。
図20は、
図16の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0077】
また、
図18に示すように、メニスカスレンズであるレンズL21の基端側の球面の曲率半径R2に対する、レンズL21の先端側の球面の曲率半径R1の比率は、3以上であり、ここでは、(8.76/2.37)=3.69である。
【0078】
さらに、
図18に示すように、レンズL21の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL21の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL21の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL21の基端側の曲率半径R2とレンズL21の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL21の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、8.76>(2.37+0.91)である。
【0079】
また、凹レンズ群G1の3つのレンズL21、L22、L23の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L21、L22、L23)/min(L21、L22、L23))は3以下であり、ここでは、1.51である。
【0080】
上述したように、第1群の光学系のレンズL21、L22、L23のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、55.5、55.5である。第2群の光学系のレンズL24のアッベ数は、45以下であり、具体的には、18.9である。
【0081】
特に、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL21、L22、L23のアッベ数は、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL24、L25のアッベ数よりも20以上大きく、ここではアッベ数の差は、31.7である。
【0082】
従って、本実施の形態の対物光学系によれば、次のような作用と効果が生じる。
1)凸レンズ群G2は、凹レンズ群G1の像側にあるので、光学アダプタ31内のマージナル光線の光束径を小さくすることができる。
2)レンズL22、L23の屈折率を高くして、球面収差の発生が抑えられている。一方で、分散が大きくなり、倍率の色収差の補正が不足するため、絞りAPの前に凸レンズであるレンズL24、L25が配設されている。レンズL24、L25において、倍率の色収差を補正するために、分散の大きな素材が用いられている。さらに、軸上の色収差が発生する分を、素材を用いて、対物光学系全体の性能を担保している。
【0083】
従って、本実施の形態によれば、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが3枚、凸レンズが2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0084】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、第2の実施の形態と同様に、第1の実施の形態よりレンズ枚数を減らして、光学アダプタ31は、5枚のレンズを有している。
【0085】
本実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成は、対物光学系以外、第1の実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成と同じであるので、同じ構成要素については、同じ符合を用いて説明は省略し、対物光学系の構成についてのみ説明する。
【0086】
図21は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側から順に、レンズL21からL25とカバーガラス61を有している。レンズL31、L32、L33は、凹レンズ群G1であり、レンズL34、L35は、凸レンズ群G2である。凹レンズ群G1の画角は、220度である。
【0087】
レンズL31は、メニスカスレンズである。レンズL32は、平凹レンズである。レンズL33は、凹平レンズである。レンズL34は、平凸レンズである。レンズL35は、両凸レンズである。レンズL35とカバーガラス61の間に絞りAPが配置される。すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L31)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L33)と、を有する。
すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L1)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L3)と、を有する。
光学アダプタ31から出射する光は、平行光であり、先端部の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL31からL35及び絞りAPは、アフォーカル光学系を構成する。
【0088】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学(凹レンズ群)系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系(凸レンズ群)をさらに有する。
図21において、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び100度の光線IL3が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、5.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、5枚レンズ構成であり、3枚の凹レンズと2枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、5枚であり、凹レンズが3枚で、凸レンズが2枚である。
【0089】
主光線の角度は、主光線を対物光学系の像側から追跡したときに、絞りAPよりも物体側へ進むにつれて小さくなってから、急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0090】
なお、本実施の形態では、先端部11内の光学系DOSの構成が、
図16の光学系DOSとは異なっている。光学系DOSでは、先端側から順に、カバーガラス51、平凸レンズ52a、両凸レンズ53a、凹平レンズ54a、保護ガラス54、カバーガラス55が配置されている。
【0091】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図22は、
図21の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図22は、
図7の表と同じ形式で同じ項目についての表である。また、
図22におけるL01,L02等の表記も、
図7の場合と同様の表記である。
図23は、
図21の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図23は、メニスカスレンズの曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図23は、
図8と同じ形式の表である。
図22に示すように、第1群の光学系(凹レンズ群G1)は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
そして、第1群の光学系の物体側に向かって先端の第1のレンズL31は、メニスカスレンズであり、そのメニスカスレンズの基端側の曲率半径R2に対するメニスカスレンズの先端側の曲率半径R1の比率は、3.37であり、3以上である。
【0092】
図24は、
図21の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図24は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図24は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図9において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0093】
ズレ量は、最大で4μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対して良好に補正されている。
図25は、
図21の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0094】
また、
図23に示すように、メニスカスレンズであるレンズL31の基端側の球面の曲率半径R2に対する、メニスカスレンズの先端側の球面の曲率半径R1の比率は、3以上であり、ここでは、(8.00/2.37)=3.38である。
【0095】
さらに、
図23に示すように、レンズL31の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL31の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL31の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL31の基端側の曲率半径R2とレンズL31の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL31の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、8.00>(2.37+0.83)である。
【0096】
また、凹レンズ群G1の3つのレンズL1、L2、L3の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L31、L32、L33)/min(L31、L32、L33))は3以下であり、ここでは、1.45である。
【0097】
従って、本実施の形態の対物光学系によれば、上述した第3の実施の形態と同様の作用と効果が生じる。
【0098】
特に、本実施の形態では、第1群の光学系のレンズL31、L32、L33のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、50.6、55.5である。第2群の光学系のレンズL34のアッベ数は、45以下であり、具体的には、18.9である。
【0099】
従って、本実施の形態によれば、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが3枚、凸レンズが2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0100】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【0101】
(第5の実施の形態)
第1の実施の形態の光学アダプタ31は、6枚のレンズを有しているが、第5の実施の形態の光学アダプタ31は、第2、第3及び第4の実施の形態よりレンズ枚数を減らして、4枚のレンズを有しており、2枚の凸レンズのうち、一枚の凸レンズは、絞りより前方にある。
【0102】
本実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成は、対物光学系以外、第1の実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成と同じであるので、同じ構成要素については、同じ符合を用いて説明は省略し、対物光学系の構成についてのみ説明する。
【0103】
図26は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側から順に、レンズL41からL44とカバーガラス61を有している。レンズL41、L42は、凹レンズ群G1であり、レンズL43、L44は、凸レンズ群G2である。凹レンズ群G1の画角は、220度である。
【0104】
レンズL41は、メニスカスレンズである。レンズL42は、凹平レンズである。レンズL43は、平凸レンズである。レンズL44は、両凸レンズである。レンズL43と44の間に絞りAPが配置される。すなわち、第1群の光学系は、物体側に凸となる向きで配置されたメニスカスレンズ(L41)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L42)と、を有する。
光学アダプタ31から出射する光は、平行光であり、先端部11の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL41からL44及び絞りAPは、アフォーカル光学系を構成する。
【0105】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学(凹レンズ群)系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系(凸レンズ群)をさらに有する。
図26では、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び100度の光線IL3が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、5.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、4枚レンズ構成であり、2枚の凹レンズと2枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、3枚であり、凹レンズが2枚で、凸レンズが1枚である。
【0106】
主光線の角度は、対物光学系の像側から追跡したときに、絞りAPよりも前方へ小さくなってから、急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0107】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図27は、
図26の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図27は、
図7の表と同じ形式で同じ項目についての表である。また、
図27におけるL01,L02等の表記も、
図7の場合と同様の表記である。
図28は、
図26の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図28は、メニスカスレンズの曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図28は、
図8と同じ形式の表である。
図27に示すように、第1群の光学系(凹レンズ群G1)は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
そして、第1群の光学系の物体側に向かって先端の第1のレンズL41は、メニスカスレンズであり、そのメニスカスレンズの基端側の曲率半径R2に対するメニスカスレンズの先端側の曲率半径R1の比率は、6.67であり、3以上である。
【0108】
図29は、
図26の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図29は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図29は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図9において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0109】
ズレ量は、最大で4μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対して良好に補正されている。
図30は、
図26の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0110】
また、
図28に示すように、メニスカスレンズであるレンズL41の基端側の球面の曲率半径R2に対する、メニスカスレンズの先端側の球面の曲率半径R1の比率は、3以上であり、ここでは、(5.56/0.83)=6.69である。
【0111】
さらに、
図28に示すように、レンズL41の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL41の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL41の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL41の基端側の曲率半径R2とレンズL41の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL41の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、5.56>(0.834+0.48)である。
【0112】
また、凹レンズ群G1の2つのレンズL41、L42の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L41、L42)/min(L41、L42))は3以下であり、ここでは、1.81である。
【0113】
上述したように、第1群の光学系のレンズL41、L42のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、64.1である。第2群の光学系のレンズL43のアッベ数は、45以下であり、具体的には、18.9である。
【0114】
特に、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL41、L42のアッベ数は、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL43のアッベ数よりも20以上大きく、ここではアッベ数の差は、26.8である。
【0115】
従って、本実施の形態によれば、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが2枚、凸レンズが2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0116】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
(第6の実施の形態)
第1の実施の形態の光学アダプタ31は、6枚のレンズを有しているが、第6の実施の形態の光学アダプタ31は、第5の実施の形態と同様に、第2、第3及び第4の実施の形態よりレンズ枚数を減らして、4枚のレンズを有しており、2枚の凸レンズのうち、一枚の凸レンズは、絞りAPより前方にある。
【0117】
本実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成は、対物光学系以外、第1の実施の形態の内視鏡装置及び光学アダプタの構成と同じであるので、同じ構成要素については、同じ符合を用いて説明は省略し、対物光学系の構成についてのみ説明する。
【0118】
図31は、本実施の形態に関わる対物光学系の構成図である。光学アダプタ31の光学系AOSは、先端側から順に、レンズL51からL54とカバーガラス61を有している。レンズL51、L52は、凹レンズ群G1であり、レンズL53、L54は、凸レンズ群G2である。凹レンズ群G1の画角は、150度である。
【0119】
レンズL51は、平凹レンズである。レンズL52は、凹平レンズである。レンズL53は、平凸レンズである。レンズL54は、両凸レンズである。レンズL53とL54の間に絞りAPが配置される。第1群の光学系は、物体側が平面となる平凹レンズ(L51)と、物体側に凹となる面を有するレンズ(L52)と、を有する。光学アダプタ31から出射する光は、平行光であり、先端部11の光学系DOSに入射する。すなわち、レンズL51からL54及び絞りAPは、アフォーカル光学系を構成する。
【0120】
以上のように、光学アダプタ31は、絞りAPを有すると共に、物体側から順に、合成焦点距離fが全体として負となる第1群の光学(凹レンズ群)系、及び、合成焦点距離fが全体として正となる第2群の光学系(凸レンズ群)をさらに有する。
図31において、対物光学系の光軸に対して、0度の光線IL1、50度の光線IL2、及び75度の光線IL4が示されている。ここでは、対物光学系のF値は、5.0である。光学アダプタ31内の光学系AOSは、4枚レンズ構成であり、2枚の凹レンズと2枚の凸レンズを用いている。絞りAPに対して被写体側すなわち物体側のレンズは、3枚であり、凹レンズが2枚で、凸レンズが1枚である。
【0121】
主光線の角度は、主光線を対物光学系の像側から追跡したときに、絞りAPよりも前方へ小さくなってから、急に角度が大きくなるので、主光線の光線高を下げて、光学アダプタ31の小径化が実現される。
【0122】
本実施の形態の対物レンズの性能について説明する。
図32は、
図31の対物光学系のレンズデータを示す表である。
図32は、
図7の表と同じ形式で同じ項目についての表である。また、
図32におけるL01,L02等の表記も、
図7の場合と同様の表記である。
図33は、
図31の対物光学系の諸数値データを示す表である。
図33は、平凹レンズであるレンズL51の曲率半径R1,R2と肉厚dとしたときの対物光学系の諸数値データを示している。
図33は、
図8と同じ形式の表である。
図32に示すように、第1群の光学系は、アッベ数ν1が35以上である(分散が小さい)レンズを有し、第2群の光学系は、アッベ数ν2が45以下である(分散が大きい)レンズを有する。
【0123】
図34は、
図31の対物光学系の倍率の色収差を示すグラフである。
図34は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図34は、e線(波長が0.546μmの光)に対する像面上のズレ量(倍率の色収差)を示す。
図9において、gは、波長が0.436μmのg線のズレ量を示し、Fは、波長が0.486μmのF線のズレ量を示し、dは、波長が0.588μmのd線のズレ量を示し、Cは、波長が0.656μmのC線のズレ量を示す。
【0124】
ズレ量は、最大で4μmであり、色収差は、画素サイズ(数μm)レベルに対して良好に補正されている。
図35は、
図31の対物光学系の軸上の色収差を示すグラフである。
【0125】
また、
図33に示すように、メニスカスレンズであるレンズL51の基端側の球面の曲率半径R2に対する、レンズL51の先端側の球面の曲率半径R1の比率は、3以上であり、ここでは、(∞/1.39)=∞である。
【0126】
さらに、
図33に示すように、レンズL51の先端側の球面の曲率半径R1は、レンズL51の基端側の球面の曲率半径R2に、レンズL51の光軸上の厚さdを加算した値よりも大きい。言い換えれば、レンズL51の基端側の曲率半径R2とレンズL51の光軸に沿った厚さdとの和は、レンズL51の先端側の曲率半径R1よりも小さい。すなわち、|R1|>(|R2|+d)、ここでは、∞>(1.39+0.52)である。
【0127】
また、凹レンズ群G1の2つのレンズL51、L52の内の最小パワーに対する最大パワーの比率(max(L51、L52)/min(L51、L52))は3以下であり、ここでは、1.04である。
【0128】
上述したように、第1群の光学系のレンズL51、L52のアッベ数は、35以上であり、具体的には、それぞれ40.8、64.1である。第2群の光学系のレンズL53のアッベ数は、45以下であり、具体的には、25.7である。
【0129】
特に、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL51、L52のアッベ数は、絞りAPよりも物体側のレンズである各レンズL53のアッベ数よりも20以上大きく、ここではアッベ数の差は、33.6である。
【0130】
従って、本実施の形態によれば、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが2枚、凸レンズが2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0131】
以上のように、本実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【0132】
以上のように、上述した各実施の形態によれば、光学アダプタを挿入部の先端部に装着したときに、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタのレンズ枚数の増加を抑制できる内視鏡用光学アダプタを提供することができる。
【0133】
内視鏡の光学系の各レンズは小さいため、レンズ枚数が増えると、光学系の製造におけるレンズの加工精度を高める必要があるが。上述した各実施の形態によれば、色収差を良好に補正しつつ、レンズ枚数を少なくできるので、レンズの加工精度の高度性は減少する。
【0134】
図36は、従来の光学アダプタを用いた対物光学系の軸上の色収差の例を示すグラフである。従来の光学アダプタにより対物光学系の画角を広角とする内視鏡の場合、例えば、2枚の凹レンズと1枚の凸レンズからなり、画角が220度でF値が5.5の光学アダプタと比較すると、2枚の凹レンズのアッベ数は、40.8、55.5で、1枚の凸レンズのアッベ数は、58.6であるとき、色収差の補正がされず、内視鏡画像の鮮明度が低い。
【0135】
そのような光学アダプタを用いた場合、この場合の
図36において、g線、F線、d線及びC線のずれ量は、それぞれg(p)、F(p)、d(p)及びC(p)として示している。このような色収差の補正のためには多くのレンズを用いなければならず、結果、アダプタの硬質部長が長くなり、かつアダプタの外径も大きくなってしまう。
【0136】
しかし、上述した各実施の形態によれば、色収差を良好に補正しつつ、光学アダプタ31のレンズ枚数は、凹レンズが3枚又は2枚、凸レンズが3枚又は2枚であり、レンズ枚数を少なくすることができる。
【0137】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 内視鏡装置、2 装置本体、3 内視鏡、4 表示部、5 挿入部、6 操作部、6a 湾曲ジョイスティック、7 ユニバーサルコード、11 先端部、12 湾曲部、13 可撓部、21 先端硬性部材、21a 螺子部、22 撮像ユニット、22a、22b 枠部材、22d ケーブル、23 撮像素子、23a 受光面、24 接着剤、31 光学アダプタ、32 本体部材、33 筒状部材、33a ネジ、33b 内向フランジ、34 先端カバー、34a 突起部、34b 照明窓、34c 傾斜面、35 リング、35a 外向フランジ、35b 螺子部、36 枠部材、38 カバーガラス、39 照明レンズ、39a、40 ライトガイド、41 四角柱プリズム、42 発光素子、43 接点ピン、51 カバーガラス、52、53 レンズ、52a 平凸レンズ、53a 両凸レンズ、54 保護ガラス、54a 凹平レンズ、55 カバーガラス、61 カバーガラス。