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特許7178322放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/12 20060101AFI20221117BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20221117BHJP
   G21C 19/46 20060101ALI20221117BHJP
   G21F 9/04 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G21F9/12 501J
G21F9/06 G
G21F9/06 581F
G21F9/12 501B
G21C19/46 600
G21F9/04 D
G21F9/06 521A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019092320
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020187030
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤口 覚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194434(JP,A)
【文献】特開2015-064334(JP,A)
【文献】特開2016-045108(JP,A)
【文献】特開2014-066647(JP,A)
【文献】米国特許第05626765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/12
G21F 9/06
G21C 19/46
G21F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液の処理方法であって、
前記α核種を含む前記放射性廃液にpH調整剤を注入し、
前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液にα核種吸着材を供給し、
前記α核種吸着材がフェライトであり、
磁化率測定装置によって、前記放射性廃液に供給された前記フェライトを検出し、
前記α核種吸着材によって前記α核種を吸着することにより、前記放射性廃液から前記α核種を除去する
ことを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【請求項2】
α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液の処理方法であって、
核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、硝酸及び前記α核種を含む前記放射性廃液から、前記α核種を除去する場合に、
pH調整剤である中和剤を前記放射性廃液に注入して前記放射性廃液を中和させ、
その後に、前記α核種を含む前記放射性廃液にpH調整剤である還元剤を注入し、
前記α核種及び前記pH調整剤を含む前記放射性廃液にα核種吸着材を供給し、
前記α核種吸着材によって前記α核種を吸着することにより、前記放射性廃液から前記α核種を除去する
ことを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【請求項3】
α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、
前記放射性廃液供給管に接続され、pH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、
前記放射性廃液供給管に接続され、前記α核種を含む前記放射性廃液からα核種を除去するα核種除去装置と、
前記α核種除去装置に、前記α核種を吸着するα核種吸着材を注入する、吸着材注入装置と、
を備え、
前記pH調整剤注入装置が、中和液注入装置及び還元剤注入装置を含んでおり、
核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生して、硝酸及び前記α核種を含み前記放射性廃液供給管内を流れる前記放射性廃液に、アルカリ性の中和剤を含む中和液を注入する前記中和液注入装置が、還元剤を注入する前記還元剤注入装置と前記放射性廃液供給管の接続点よりも上流側で、前記放射性廃液供給管に接続され、
第1pH計が、前記還元剤注入装置及び前記放射性廃液供給管の接続点と前記中和液注入装置と前記放射性廃液供給管の接続点との間で、前記放射性廃液供給管に取り付けられている
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。
【請求項4】
第2pH計が、前記還元剤注入装置及び前記放射性廃液供給管の接続点と前記α核種除去装置との間で、前記放射性廃液供給管に取り付けられ、
磁化率測定装置が前記α核種除去装置に設けられている請求項3に記載の放射性廃液処理システム。
【請求項5】
α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、
前記放射性廃液供給管に接続され、pH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、
前記放射性廃液供給管に接続され、前記α核種を含む前記放射性廃液からα核種を除去するα核種除去装置と、
前記α核種除去装置に、前記α核種を吸着するα核種吸着材を注入する、吸着材注入装置と、
を備え、
前記放射性廃液への前記pH調整剤の注入が、所望のα核種濃度になった際に行われる
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。
【請求項6】
α核種濃度の測定が、pH調整剤注入装置よりも上流側の配管にとりつけられたサンプリング弁で採取した前記放射性廃液の分析によって行われる請求項5に記載の放射性廃液処理システム。
【請求項7】
α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、
前記放射性廃液供給管に接続され、pH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、
前記放射性廃液供給管に接続され、前記α核種を含む前記放射性廃液からα核種を除去するα核種除去装置と、
前記α核種除去装置に、前記α核種を吸着するα核種吸着材を注入する、吸着材注入装置と、
前記α核種吸着材を含む放射性廃液から、前記α核種吸着材を分離する吸着材分離装置と、
を備えた
ことを特徴とする放射性廃液処理システム。
【請求項8】
前記吸着材分離装置は、μmオーダーの孔径を有する膜を用いたクロスフロー方式により前記α核種吸着材の分離を行う請求項7に記載の放射性廃液処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムに関し、特に、原子力プラントから発生した廃樹脂の洗浄で発生した放射性廃液、及び核燃料再処理で発生した放射性廃液の処理に適用するのに好適な放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの原子炉冷却材浄化系、燃料プール冷却材浄化系等から発生するセルロース系のろ過助材、イオン交換樹脂等を含むフィルタスラッジその他の放射性有機廃棄物は、貯蔵タンクに長期間貯蔵保管されている。これらの放射性有機廃棄物は、原子力プラントの運転に伴って定常的に発生する。
【0003】
放射性有機廃棄物の保管スペースを確保するためには、現在貯蔵中の放射性有機廃棄物の体積を効率的に減らす減容処理技術が必要となる。
イオン交換樹脂は、スチレン・ジビニルベンゼンを基材としており、化学的に安定であるため、長期間安全に貯蔵することが可能である。しかしながら、その安定性のために分解処理が難しく、イオン交換樹脂を減容する場合には、通常、高温での熱分解処理が必要となる。
【0004】
熱分解処理、及び熱分解処理以外の方法で、放射性有機廃棄物を減容する方法が知られており、それらの減容方法の一部が、下記の特許文献1に記載されている。
この特許文献1には、放射性有機廃棄物を減容するだけでなく、さらに、放射性有機廃棄物に含まれる放射性物質の濃度を低減することができる減容方法が記載されている。
特許文献1に記載された減容方法では、具体的には、有機酸水溶液によって、放射性有機廃棄物に含まれているクラッド(コバルト60等の放射性核種、酸化鉄等を含む)をコバルト60等の放射性核種と共に溶解し、有機酸塩水溶液によって、放射性有機廃棄物、例えば、廃樹脂であるイオン交換樹脂に吸着されている放射性核種(コバルト60、セシウム137等)をイオン交換樹脂から溶離させる。そして、クラッド(酸化鉄等)の溶解に用いられた有機酸水溶液に含まれる有機酸と、及び放射性核種を溶離する際に用いられた有機酸塩水溶液に含まれる有機酸塩を、それぞれオゾン等により分解する。さらに、有機酸及び有機酸塩の分解後に残留する、放射性核種を含む廃液を、乾燥粉体化し、得られた放射性核種を含む粉体を固形化剤(セメント等)により固化処理する。
【0005】
また、下記の特許文献2に、核燃料の再処理方法が記載されている。
この特許文献2に記載された核燃料の再処理方法は、フッ化処理工程及び溶媒抽出工程を含んでいる。フッ化処理工程では、原子炉から取り出された使用済燃料集合体に含まれる核燃料物質にフッ素を接触させ、核燃料物質に含まれるウランを、フッ素と反応させて揮発性のUF6に変換させる。核燃料物質に含まれるウランの一部もしくは大部分をUF6として揮発除去した後、残ったウラン、及びプルトニウムを、溶媒抽出工程において回収する。溶媒抽出工程は、硝酸を含む溶解液によって残留する核燃料物質を溶解する溶解工程、トリブチルリン酸(TBP)を含む抽出液を溶解された核燃料物質を含む溶解液に接触させ、溶解液に含まれるウラン及びプルトニウムを抽出液側に移行させる共除染工程、及び抽出されたウラン及びプルトニウムを含む抽出液を硝酸濃度が低い硝酸水溶液と接触させ、抽出液に含まれるウラン及びプルトニウムを硝酸水溶液側に移行させる逆抽出工程を含んでいる。
【0006】
原子力プラントの原子炉の炉心には、多数の燃料集合体が装荷されている。各燃料集合体は、被覆管内に核燃料物質を充填した複数の燃料棒を有する。炉心には、冷却材、具体的には冷却水が供給され、この冷却水は燃料集合体内の燃料棒内の核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱される。原子炉内を流れる冷却水の一部は、原子炉冷却材浄化系に設けられる浄化装置に供給され、冷却水に含まれる放射性核種が浄化装置によって除去される。
沸騰水型原子力プラントにおいては、原子炉内の冷却水を供給する原子炉冷却材浄化系の浄化系配管に設けられた浄化装置で、冷却水の浄化が行われる(特許文献3を参照)。その浄化装置の内部には、冷却水を浄化するイオン交換樹脂が存在する。
加圧水型原子力プラントにおいても、原子炉内の冷却水を浄化する原子炉冷却材浄化系が設けられ、この原子炉冷却材浄化系には、イオン交換樹脂が内部に存在する浄化装置が設けられる。
【0007】
また、下記の特許文献4に、放射性物質を含む液に吸着材を接触させることにより、放射性物質を吸着材に吸着させて、さらに吸着材を含む液をクロスフローろ過して、放射性物質を吸着した吸着材と吸着処理後の液を分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-64334号公報
【文献】特開2002-257980号公報
【文献】特開2018-48831号公報
【文献】特開2014-66647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
もし、炉心に装荷されている燃料集合体に含まれる燃料棒の被覆管が、万が一、破損した場合には、燃料棒内の核燃料物質、すなわち、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ネプツニウム(Np)及びキュリウム(Cm)等のα核種であるアクチノイドが冷却水中に漏洩する。それらのα核種を含む冷却水が原子炉冷却材浄化系の浄化装置に導かれ、それぞれのα核種がその浄化装置内のイオン交換樹脂によって除去される。α核種の半減期は、超半減期である。
【0010】
特許文献1に記載された方法では、α核種を吸着している、廃樹脂であるイオン交換樹脂に、有機酸水溶液及び有機酸塩水溶液を順次接触させて、イオン交換樹脂に含まれているクラッドを溶解し、イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種を溶離させる。
この特許文献1に記載された方法では、イオン交換樹脂によって除去されたα核種も、溶離されて有機酸水溶液及び有機酸塩水溶液のそれぞれの中に移行する。
【0011】
ここで、α核種を含む有機酸水溶液に含まれる有機酸及びα核種を含む有機酸塩水溶液に含まれる有機酸塩を分解して除去し、その後、α核種が残留する水溶液を濃縮すると、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物が多量に発生する。超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量は、低減することが望ましい。
【0012】
また、特許文献4に記載された方法では、放射性物質を含む液に吸着材を接触させている。
しかしながら、特許文献4に記載された方法の場合、放射性物質を含む液の水質によっては、吸着材で放射性物質を吸着しても、十分に吸着しきれずに、吸着材を分離した後の液に放射性物質がある程度残ることがある。
【0013】
本発明の目的は、放射性有機廃棄物に含まれる放射性物質を低減でき、かつ、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる、放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムを提供することにある。
【0014】
また、本発明の上記の目的及びその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の放射性廃液の処理方法は、α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液の処理方法である。
そして、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入し、α核種及びpH調整剤を含む放射性廃液にα核種吸着材を供給し、α核種吸着材によってα核種を吸着することにより、放射性廃液からα核種を除去する。
第1の本発明の放射性廃液の処理方法は、さらに、α核種吸着材がフェライトであり、磁化率測定装置によって、放射性廃液に供給されたフェライトを検出する。
第2の本発明の放射性廃液の処理方法は、さらに、核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、硝酸及びα核種を含む放射性廃液から、α核種を除去する場合に、pH調整剤である中和剤を放射性廃液に注入して放射性廃液を中和させ、 その後に、α核種を含む前記放射性廃液にpH調整剤である還元剤を注入する。
【0016】
本発明の放射性廃液処理システムは、α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、放射性廃液供給管に接続され、pH調整剤を注入するpH調整剤注入装置と、放射性廃液供給管に接続され、α核種を含む放射性廃液からα核種を除去するα核種除去装置と、α核種除去装置に、α核種を吸着するα核種吸着材を注入する、吸着材注入装置とを備えた構成である。
第1の本発明の放射性廃液処理システムは、さらに、pH調整剤注入装置が、中和液注入装置及び還元剤注入装置を含んでおり、核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生して、硝酸及びα核種を含み放射性廃液供給管内を流れる放射性廃液に、アルカリ性の中和剤を含む中和液を注入する中和液注入装置が、還元剤を注入する還元剤注入装置と放射性廃液供給管の接続点よりも上流側で、放射性廃液供給管に接続され、 第1pH計が、還元剤注入装置及び放射性廃液供給管の接続点と中和液注入装置と放射性廃液供給管の接続点との間で、放射性廃液供給管に取り付けられている構成である。
第2の本発明の放射性廃液処理システムは、さらに、放射性廃液へのpH調整剤の注入が、所望のα核種濃度になった際に行われる構成である。
第3の本発明の放射性廃液処理システムは、さらに、α核種吸着材を含む放射性廃液から、α核種吸着材を分離する吸着材分離装置を備えた構成である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入するため、放射性廃液のpHを調節することができ、放射性廃液のpHを、α核種吸着材の吸着性能を十分に発揮できるpHの範囲内にできる。
これにより、放射性廃液を処理した放射性廃棄物に含まれる放射性物質を低減でき、かつ、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、α核種吸着材を放射性廃液に注入するので、α核種吸着材の粒子を細かくして、α核種吸着材の比表面積を増加させることが可能になり、また、α核種吸着材が放射性廃液に浸漬される時間を制御することが可能になる。
したがって、α核種吸着材のα核種除去性能を向上することができる。
【0019】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1の放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
図2】実施例1の放射性廃液の処理方法を実行する放射性廃液処理システムの一例の構成図である。
図3図2の廃液分解装置の詳細構成図である。
図4図2のα核種除去装置の詳細構成図である。
図5】放射性廃液に含まれるα核種の除去方法に対応した、放射性廃液内のα核種の残留率を示す説明図である。
図6】吸着材のサイズと、吸着材1g当たりのα核種の吸着量の関係を示す図である。
図7】実施例2の放射性廃液の処理方法を実行する放射性廃液処理システムの一例の構成図である。
図8】実施例3の放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
図9】実施例3に用いられるα核種除去装置の詳細構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態及び実施例について、文章もしくは図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態や実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
上述した、放射性有機廃棄物に含まれる放射性物質を低減でき、かつ、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる、放射性廃液の処理方法を提供する目的は、下記の(A1)の放射性廃液の処理方法によって達成できる。
(A1)α核種を含む放射性廃液を処理する方法である。
対象とするα核種を含む放射性廃液としては、例えば、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂からα核種を含む放射性核種の脱離によって発生した、α核種を含む放射性廃液、及び核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、α核種を含む放射性廃液、が挙げられる。また、これらの放射性廃液に限定されず、α核種を含む放射性廃液であれば、他の起源により生成した放射性廃液にも適用することが可能である。
そして、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入し、α核種及びpH調整剤を含む放射性廃液にα核種吸着材を供給し、α核種吸着材によってα核種を吸着することにより放射性廃液からα核種を除去する。
【0023】
また、上記の(A1)の放射性廃液の処理方法において、さらに好ましい方法を、以下に説明する。
【0024】
(A2)好ましくは、上記の(A1)において、α核種吸着材によってα核種を吸着する前に、pH調整剤の注入により、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内のpHに調節することが望ましい。
【0025】
(A3)好ましくは、上記の(A2)において、α核種を含む放射性廃液のpHを、4以上11以下の範囲内の4以上7以下の範囲内のpHに調節するとき、pH調整剤である酸を含む酸溶液を注入し、放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するとき、放射性廃液にpH調整剤である還元剤を含む還元剤溶液を注入することが望ましい。
【0026】
(A4)好ましくは、上記の(A3)において、上記の酸溶液として分解できない酸(例えば、希硝酸)を含む酸溶液を用いることが望ましい。
【0027】
(A5)好ましくは、上記の(A3)において、上記の酸溶液として分解可能な酸(例えば、シュウ酸)を含む酸溶液を用い、分解可能な酸及びα核種を含む放射性廃液のα核種が除去され、α核種が除去された後に、その放射性廃液に含まれる分解可能な酸を分解することが望ましい。
【0028】
(A6)好ましくは、上記の(A1)において、α核種を吸着している使用済のα核種吸着材を、固化容器内で固化することが望ましい。
【0029】
(A7)好ましくは、上記の(A1)において、核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、硝酸及びα核種を含む放射性廃液を処理するとき、pH調整剤である還元剤を放射性廃液に注入する前において、他のpH調整剤である中和剤の放射性廃液への注入により放射性廃液のpHを増加させて、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の4以上7以下の範囲内のpHにすることが望ましい。
【0030】
(A8)好ましくは、上記の(A7)において、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHにするとき、中和剤の注入により放射性廃液のpHを7にし、その後、還元剤を、α核種及び中和剤を含む放射性廃液に注入することが望ましい。
【0031】
(A9)好ましくは、上記の(A1)において、さらに、α核種吸着材によって放射性廃液からα核種を除去した後に、α核種を吸着したα核種吸着材を、放射性廃液から分離する。
【0032】
上述した、放射性有機廃棄物に含まれる放射性物質を低減でき、かつ、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる、放射性廃液処理システムを提供する目的は、下記の(B1)の放射性廃液処理システムによって達成できる。
(B1)α核種を含む放射性廃液を処理する放射性廃液処理システムである。
対象とするα核種を含む放射性廃液としては、例えば、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂からα核種を含む放射性核種の脱離によって発生した、α核種を含む放射性廃液、及び核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生した、α核種を含む放射性廃液、が挙げられる。また、これらの放射性廃液に限定されず、α核種を含む放射性廃液であれば、他の起源により生成した放射性廃液にも適用することが可能である。
そして、α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管と、その放射性廃液供給管に接続されたpH調整剤注入装置及びα核種除去装置と、吸着材注入装置を備えた放射性廃液処理システムによって達成できる。
pH調整剤注入装置は、pH調整剤を注入する。
α核種除去装置は、α核種を含む放射性廃液からα核種を除去する。
吸着材注入装置は、α核種除去装置に、α核種を吸着するα核種吸着材を注入する。
【0033】
また、上記の(B1)の放射性廃液処理システムにおいて、さらに好ましい構成を、以下に説明する。
【0034】
(B2)好ましくは、上記の(B1)において、pH調整剤注入装置が、中和液注入装置及び還元剤注入装置を含んでおり、核燃料再処理においてウラン及びプルトニウムの回収によって発生して、硝酸及びα核種を含み放射性廃液供給管内を流れる放射性廃液に、アルカリ性の中和剤を含む中和液を注入する中和液注入装置が、還元剤を注入する還元剤注入装置と放射性廃液供給管の接続点よりも上流側で放射性廃液供給管に接続され、第1pH計が、還元剤注入装置及び放射性廃液供給管の接続点と中和液注入装置と放射性廃液供給管の接続点との間で、放射性廃液供給管に取り付けられていることが望ましい。
【0035】
(B3)好ましくは、上記の(B2)において、第2pH計が、還元剤注入装置及び放射性廃液供給管の接続点とα核種除去装置との間で、放射性廃液供給管に取り付けられ、また、磁化率測定装置がα核種除去装置に設けられていることが望ましい。
【0036】
(B4)好ましくは、上記の(B1)において、放射性廃液へのpH調整剤の注入が、所望のα核種濃度になった際に行われることが望ましい。
【0037】
(B5)好ましくは、上記の(B4)において、さらに、α核種濃度の測定が、pH調整剤注入装置よりも上流側の配管にとりつけられたサンプリング弁で採取した放射性廃液の分析によって行われることが望ましい。
【0038】
(B6)好ましくは、上記の(B1)において、α核種吸着材を含む放射性廃液からα核種吸着材を分離する吸着材分離装置を備えていることが望ましい。
【0039】
(B7)好ましくは、上記の(B6)において、吸着材分離装置は、μmオーダーの孔径を有する膜を用いたクロスフロー方式によりα核種吸着材の分離を行う構成であることが望ましい。
【0040】
上述した放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムにおいて、α核種吸着材としては、例えば、フェライト(Fe34)や活性炭を使用することができる。
なお、α核種吸着材は、上記のフェライトや活性炭には限定されず、α核種を吸着することができる吸着材であれば、α核種吸着材として使用することができる。
【0041】
α核種吸着材、特に上記のフェライトは、α核種を吸着する性能(吸着性能)が、放射性廃液のpHによって変化する。そのため、放射性廃液を特定のpHの範囲内にすれば、吸着性能を十分に発揮できる。
そして、上述した放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムによれば、α核種を含む放射性廃液にpH調整剤を注入するため、放射性廃液のpHを調節することができ、放射性廃液のpHを、α核種吸着材の吸着性能を十分に発揮できるpHの範囲内にできる。
これにより、放射性廃液に含まれる超半減期のα核種がα核種吸着材によって除去されやすくなり、α核種を除去した後の放射性廃液に含まれるα核種が著しく低減されるため、α核種を吸着した使用済α核種吸着材の量が少なくなる。その結果、α核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる。
【0042】
さらに、上述した放射性廃液の処理方法及び放射性廃液処理システムによれば、放射性廃液に注入したα核種吸着材によってα核種を吸着して、α核種を含む放射性廃液からα核種を除去する。
α核種吸着材を放射性廃液に注入するので、α核種吸着材の粒子を細かくして、α核種吸着材の比表面積を増加させることが可能になり、また、α核種吸着材が放射性廃液に浸漬される時間を制御することが可能になる。これにより、所望のα核種吸着量となる時間までα核種吸着材を放射性廃液に浸漬させるように、制御することができる。
したがって、α核種吸着材のα核種除去性能を向上して、α核種を含む放射性廃棄物の発生量をさらに低減することができる。
そして、α核種吸着材を吸収塔に充填して、吸収塔にα核種吸着材の層を形成した構成と比較しても、α核種除去性能を向上して、α核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減することが可能になる。
【実施例
【0043】
以下、本発明に係る実施例を説明する。
【0044】
(実施例1)
実施例1の放射性廃液の処理方法を、図1図6を参照して説明する。
実施例1は、沸騰水型原子力プラントで発生する放射性有機廃棄物の処理に適用される、放射性廃液の処理方法である。
【0045】
まず、図1を参照して、本実施例の放射性廃液の処理方法の概要を説明する。図1は、実施例1の放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0046】
原子力プラント、例えば、運転を経験している沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器内の炉心に装荷された燃料集合体、または燃料貯蔵プールに保管された使用済燃料集合体に含まれる燃料棒の被覆管が、万が一、破損した場合には、燃料棒内の核燃料物質(α核種であるウラン、プルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等を含む)が、原子炉圧力容器内の冷却水中、または燃料貯蔵プール内の冷却水中に漏洩する。そして、原子炉圧力容器内の冷却水中に漏洩したα核種は、原子炉冷却材浄化系の浄化装置内のイオン交換樹脂によって除去される。また、燃料貯蔵プール内の冷却水中に漏洩したα核種は、燃料プール冷却材浄化系の浄化装置内のイオン交換樹脂によって除去される。
【0047】
沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系及び燃料プール冷却材浄化系等から発生する、セルロース系のろ過助材、イオン交換樹脂等を含むフィルタスラッジ(放射性有機廃棄物)は、高線量樹脂貯蔵タンクに長期間に亘って貯蔵される。その高線量樹脂貯蔵タンク内に貯蔵されている放射性有機廃棄物は、所定の貯蔵期間が経過した後、高線量樹脂貯蔵タンクから取り出される。
【0048】
高線量樹脂貯蔵タンクから取り出された、陽イオン交換樹脂を含む放射性有機廃棄物に対して、図1に示す第一洗浄工程(クラッド溶解工程)S1が実施される。
この第一洗浄工程S1では、還元性のある有機酸の水溶液(例えば、シュウ酸水溶液)が放射性有機廃棄物に接触され、その水溶液に含まれる有機酸によって、放射性有機廃棄物に含まれる鉄酸化物などのクラッドが溶解される。クラッドに含まれているコバルト60等の放射性核種は、クラッドの溶解によって有機酸水溶液中に移行する。
第一洗浄工程S1において有機酸を用いる理由は、有機酸の主たる構成元素が炭素、水素、酸素及び窒素であるため、第一洗浄工程S1において発生する洗浄廃液である有機酸水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(後述の廃液分解工程S4)をしたときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じないからである。有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸を用いることが望ましい。
【0049】
第一洗浄工程S1において発生する、クラッドの溶解成分を含む、洗浄廃液である有機酸水溶液(クラッド溶解液)に対して、廃液分解工程S4が実施される。
この廃液分解工程(有機酸及び有機酸塩のいずれかの分解工程)S4では、過酸化水素またはオゾン等の酸化剤が有機酸水溶液中に曝気され、その酸化剤の酸化作用により有機酸が分解される。
【0050】
第一洗浄工程S1が施されて、クラッドが溶解された放射性有機廃棄物に対して、第二洗浄工程(放射性核種溶離工程)S2が実施される。
この第二洗浄工程S2では、有機酸塩水溶液が、クラッドが溶解された放射性有機廃棄物に接触され、その水溶液に含まれる有機酸塩によって、放射性有機廃棄物に吸着されたα核種等の放射性核種が溶離される。
第二洗浄工程S2で使用される有機酸塩は、水溶液中で解離し、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩であることが望ましい。すなわち、有機酸塩は、その主たる構成元素が炭素、水素、酸素及び窒素であって、第二洗浄工程S2の終了後において洗浄廃液である有機酸塩水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(廃液分解工程S4)をしたときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じないものであることが望ましい。有機酸塩としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩を用いることが望ましい。なお、有機酸塩として、ギ酸ヒドラジンを用いてもよい。
アンモニウム塩は、酸化処理により、窒素ガス及び水に分解されるため、バリウム塩及びセシウム塩に比べて、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩は、水溶液中で解離して、NH4+、Ba2+またはCsになる。NH4+、Ba2+またはCsは、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンである。
【0051】
第二洗浄工程S2において発生する、溶離されたα核種等の放射性核種を含む、洗浄廃液である有機酸塩水溶液に対して、廃液分解工程S4が実施される。廃液分解工程(有機酸及び有機酸塩のいずれかの分解工程)S4では、オゾンまたは過酸化水素等の酸化剤が有機酸塩水溶液中に曝気され、その酸化剤により有機酸塩が分解される。
【0052】
廃液分解工程S4で有機酸または有機酸塩が分解されて残った、放射性核種を含む残留水溶液(放射性廃液)に、pH調整剤が注入される(pH調整剤注入工程S5)。
ここで、pH調整剤としては、還元剤、例えばヒドラジンを使用することができる。
pH調整剤注入工程S5により、その残留水溶液、すなわち、放射性廃液は、pHが4~11(4以上11以下)の範囲内の、例えば、6に調節される。そして、pH調整剤である還元剤(例えば、ヒドラジン)を含む還元性の放射性廃液内で、前述したそれぞれのα核種(ウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム等)の価数が「3」になる。
【0053】
pH調整剤注入工程S5でpH調整剤が注入された、放射性核種を含む残留水溶液(放射性廃液)に対して、α核種の除去工程S6が行われる。
α核種の除去工程S6では、価数が「3」に制御されたα核種を含む放射性廃液に、α核種吸着材であるフェライト(Fe34)が供給され、このフェライトによって価数が「3」に制御されたα核種が吸着されて放射性廃液から除去される。
【0054】
ここで、α核種の除去に関する実験を行った結果を、図5を用いて説明する。図5は、放射性廃液に含まれるα核種の除去方法(A,B,C)と、それぞれの除去方法を行った後の放射性廃液内のα核種の残留率との関係を示している。
図5に示す「A」は、陽イオン交換樹脂に吸着されたα核種、例えば、アメリシウムを有機酸塩水溶液であるシュウ酸アンモニア水溶液により溶離させ、シュウ酸アンモニア水溶液に含まれるシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、溶離したアメリシウム(濃度はppbオーダー)を除去しないで(未処理の状態で)アメリシウムを含む水をそのまま排出した場合である。このため、「A」では、排出される水のウラン残留率(α核種の残留率)は100%である。
図5に示す「B」は、溶離したウランを含むシュウ酸アンモニア水溶液のシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、この分解で生成されるアメリシウムを含む水にフェライト(Fe34)を供給した場合である。フェライトを供給する前におけるその水のアメリシウム濃度に対する、そのフェライトを供給した後の水のアメリシウム濃度の割合が、アメリシウム残留率、すなわち、α核種の残留率である。フェライトを供給する前の水のアメリシウム濃度は、「A」における水のアメリシウム濃度と同じである。「B」では、ウラン残留率(α核種の残留率)は、25%となり、「A」の1/4になる。
図5に示す「C」は、溶離したアメリシウムを含むシュウ酸アンモニア水溶液のシュウ酸アンモニアをオゾンで分解し、この分解で生成されるアメリシウムを含む水に還元剤であるヒドラジンを注入してその水のpHを4~11の範囲内の8に調節し、pHが8であるアメリシウムを含む水にフェライト(Fe34)を供給した場合である。「C」における、フェライトを供給する前の水のアメリシウム濃度も、「A」における水のアメリシウム濃度と同じである。「C」では、アメリシウム残留率(α核種の残留率)は、約6.7%となり、「A」の約1/15になる。
したがって、有機酸塩分解後のα核種を含む水にpH調整剤を注入してその水のpHを4~11の範囲に調節し、pHが調節された、α核種を含む水にフェライトを供給することによって、その水に含まれるα核種を著しく除去できることが分かった。
【0055】
α核種の除去工程S6では、α核種吸着材を注入するよりも前に放射性廃液に注入されたpH調整剤、例えば、還元剤は、放射性廃液に含まれた状態で排出される。
【0056】
α核種の除去工程S6の次の吸着材分離工程S7では、放射性廃液から吸着材を分離する。
その後、その放射性廃液に注入されたpH調整剤が還元剤であるかを判定する(pH調整剤判定工程S8)。pH調整剤が還元剤であるとき、その判定が「YES」となり、α核種除去装置から排出された、還元剤を含む放射性廃液は、触媒(例えば、貴金属)を有する分解装置に供給され、その還元剤は、分解装置内で、その触媒と分解装置に供給される酸化剤(例えば、過酸化水素)の作用によって分解される(還元剤の分解工程S9)。なお、pH調整剤として酸(例えば、希硝酸水溶液)を放射性廃液に注入した場合には、上記の判定が「No」となり、還元剤の分解工程S9が実施されない。
【0057】
減容工程S10では、還元剤を含まない放射性廃液(注入された酸を含む放射性廃液を含む)に対し、濃縮処理または乾燥粉体化処理が施される。
容器充填または固化工程S11では、濃縮処理により発生した濃縮廃液、または乾燥粉体化処理によって発生した放射性廃棄物の粉体が、容器内に充填されて保管され、またはセメント等の固形剤により容器内で固化される。
【0058】
次に、実施例1のステップS1~S11の各工程を含む放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理システムの構造の一例を、図2を参照して説明する。図2は、実施例1の放射性廃液の処理方法を実行する放射性廃液処理システムの一例の構成図である。
【0059】
図2に示す放射性廃液処理システム1は、放射性有機廃棄物を処理する化学洗浄部10、及び化学洗浄部10から排出される洗浄廃液(放射性廃液)を処理する廃液処理部19を備えている。
【0060】
化学洗浄部10では、図1に示した各工程のうち、クラッドを溶解する第一洗浄工程S1、及び放射性核種を放射性有機廃棄物から溶離させる第二洗浄工程S2が行われる。
化学洗浄部10は、第一受入タンク3、化学反応槽(洗浄槽)4、洗浄液供給タンク6、有機酸槽7、有機酸塩槽8及び移送水槽9を有する。また、化学洗浄部10の前段に、高線量樹脂貯蔵タンク2が設けられ、化学洗浄部10の図中下方に、第二受入タンク11及び焼却設備(またはセメント固化設備)12が設けられている。
移送ポンプ22を設けた有機廃棄物供給管23が、高線量樹脂貯蔵タンク2及び第一受入タンク3を接続する。
化学反応槽4は、移送ポンプ24を設けた有機廃棄物移送管25によって、第一受入タンク3に接続されている。この化学反応槽4の周囲に加熱装置5が配置されている。
洗浄液供給タンク6は、移送ポンプ32を設けた洗浄液供給管33によって、化学反応槽4に接続されている。
化学反応槽4の底部に接続され、移送ポンプ34及び弁35が設けられた戻り配管36が、洗浄液供給タンク6に接続されている。
有機酸水溶液、例えば、シュウ酸水溶液が充填された有機酸槽7に接続されて弁26が設けられた配管29が、洗浄液供給タンク6に接続されている。有機酸槽7に充填されたシュウ酸水溶液は飽和水溶液であり、そのシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度は、例えば、0.8mol/Lである。
有機酸塩水溶液、例えば、ギ酸ヒドラジン水溶液が充填された有機酸塩槽8に接続されて弁27が設けられた配管30が、弁26よりも下流で配管29に接続されている。
移送水となる水が充填された移送水槽9に接続されて弁28が設けられた配管31が、弁27よりも下流で配管30に接続されている。
弁37が設けられて化学反応槽4の底部に接続された配管38が、第二受入タンク11に接続されている。
第二受入タンク11に接続された配管が、焼却設備(またはセメント固化設備)12に接続されている。
【0061】
また、廃液処理部19は、廃液分解装置13、α核種除去装置14、pH調整剤注入装置112、吸着材注入装置121、吸着材分離装置131、分解装置107、酸化剤供給装置108及び処理水回収タンク18を有する。
移送ポンプ34と弁35の間で戻り配管36に接続され、弁39が設けられた廃液供給管40が、廃液分解装置13に接続されている。
移送ポンプ43及び弁44が設けられた配管45が、廃液分解装置13、α核種除去装置14に接続されている。前述した「α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管」は、この配管45等の配管に相当する。
配管46が、α核種除去装置14、吸着材分離装置131、分解装置107、処理水回収タンク18に接続されている。
pH調整剤注入装置112は、廃液分解装置13とα核種除去装置14の間で、配管45に接続されている。
吸着材注入装置121は、α核種除去装置14に接続されている。
吸着材分離装置131では、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によって、放射性廃液をろ過して、放射性廃液からα核種を吸着したα核種吸着材を分離する。
また、吸着材分離装置131には、化学洗浄部10の戻り配管36の移送ポンプ34と弁35の間に接続された配管55が、接続されている。そして、吸着材分離装置131においてろ過して吸着材が分離されたろ過水は、配管55を通じて戻り配管36に戻る。これにより、ろ過水を循環水として循環させることができる。なお、戻り配管36と配管55との接続部よりも各配管36,55の上流側(化学反応槽4側と吸着材分離装置131側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管55からのろ過水とを切り替えられるようにする。
分解装置107は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。
酸化剤供給装置108は、薬液タンク109及び供給配管110を有する。薬液タンク109は、弁111を有する供給配管110によって、分解装置107に接続されている。この薬液タンク109内には、酸化剤である過酸化水素が充填される。なお、酸化剤として、過酸化水素の代わりに、オゾン、または酸素を溶解した水を用いてもよい。
【0062】
さらに、廃液処理部19の後段には、乾燥粉体化装置20、固化設備21が設けられている。
移送ポンプ47を設けた配管48が、処理水回収タンク18と乾燥粉体化装置20を接続する。
乾燥粉体化装置20に接続された配管49が、固化設備21に接続されている。
なお、乾燥粉体化装置20の代わりに、放射性廃液の濃縮装置を用いてもよい。
【0063】
ここで、図2の廃液処理部19のうち、廃液分解装置13の詳細構成図を図3に示し、α核種除去装置14の詳細構成図を図4に示す。なお、図3及び図4では、廃液分解装置13やα核種除去装置14に対して接続された配管、廃液分解装置13やα核種除去装置14の付近に設けられた部品(槽、装置等)も併せて示している。
【0064】
図3に示すように、廃液分解装置13は、洗浄廃液処理槽で構成され、その洗浄廃液処理槽内の底部にオゾン噴射管81が設置されている。このオゾン噴射管81には、多数の噴射孔が形成されている。オゾン噴射管81は、オゾン供給管82によりオゾン供給装置80に接続されている。
図2に示した化学洗浄部10からの配管40が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続されている。また、図2に示したα核種除去装置14及び吸着材分離装置131に接続された配管45が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に挿入されて洗浄廃液処理槽に取り付けられている。さらに、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽には、ガス排気管83が接続されている。
オゾン供給装置80からオゾン供給管82を通じてオゾンを供給することにより、オゾン噴射管81の噴射孔から廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内の放射性廃液にオゾンが噴射される。これにより、放射性廃液中のシュウ酸、ギ酸、及びヒドラジン等が、噴射されたオゾンにより分解される。発生したガスは、ガス排気管83により排出する。処理後の水は、配管45を通じて、α核種除去装置14に送られる。
【0065】
図4に示すように、α核種除去装置14に接続された配管45に、pH調整剤注入装置112が接続されている。
α核種除去装置14は、配管45を通して廃液分解装置13から送られる放射性廃液を収容する、廃液処理槽によって構成されている。
pH調整剤注入装置112は、還元剤注入装置17及び酸注入装置113を有する。
還元剤注入装置17は、還元剤槽17A、及び弁41が設けられた注入配管42を有する。還元剤槽17Aには、還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液が充填される。
注入配管42は、還元剤槽17Aに接続され、さらに、廃液分解装置13と弁44(それぞれ図2を参照)の間で配管45に接続されている。
酸注入装置113は、酸槽114、及び弁115が設けられた注入配管116を有する。酸槽114には、酸水溶液、例えば、希硝酸水溶液が充填される。
注入配管116は、酸槽114に接続され、弁41の下流で注入配管42に接続されている。
また、還元剤注入装置17に接続された注入配管42及び配管45の接続点とα核種除去装置14の間の配管45の部分で、配管45にpH計49が取り付けられている。
【0066】
図4に示すように、吸着材注入装置121には、弁122が設けられた注入配管123の一端が接続されている。吸着材注入装置121には、α核種吸着材、例えば、フェライト(Fe34)の粒子が充填される。
注入配管123の他端は、α核種除去装置14に接続されている。
吸着材注入装置121から注入配管123を通して、α核種除去装置14の廃液処理槽内の放射性廃液に、吸着材を注入することができる。
また、α核種除去装置14のケーシングの外面下流部に、磁化率測定装置49Bが設置されている。
【0067】
α核種除去装置14では、吸着材注入装置121から注入配管123を通して、粒経μmオーダーに微粉化された吸着材が注入される。これにより、数百μmオーダーの粒状の吸着材と比較して吸着材の比表面積が増加する。
【0068】
ここで、放射性廃液内のα核種の除去率に及ぼす吸着材の比表面積の影響を、図6を参照して説明する。図6は、吸着材のサイズと、吸着材1g当たりのα核種の吸着量の関係を示している。
図6では、吸着材のサイズとして、粒状(粒径>100μm)と、微粉状(粒径<1μm)とを、比較している。
図6に示すように、吸着材を微粉状とした場合には、吸着材を粒状とした場合と比較して、吸着材1g当りのα核種吸着量が100倍以上に向上する。
【0069】
また、α核種除去装置14へ吸着材を注入することにより、吸着材が充填された吸着塔へ通水する方式と異なり、吸着材が放射性廃液に浸漬される時間を制御することが可能となる。これにより、所望のα核種吸着量となる時間まで、α核種吸着材を放射性廃液に浸漬させるように、制御することができる。そして、所望のα核種吸着量となる所望の時間まで吸着材を浸漬させた後に、α核種除去装置14から吸着材分離装置131への通水が可能となる。したがって、α核種を含む放射性廃棄物を低減できる。
【0070】
次に、図2に示した放射性廃液処理システム1を用いた、本実施例の放射性廃液の処理方法を、詳細に説明する。
沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系及び燃料プール冷却浄化系等から排出されて、高線量樹脂貯蔵タンク2に所定の長期間貯蔵された、放射性有機廃棄物は、セルロース系のろ過助材、イオン交換樹脂、等を含む。この、高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵された放射性有機廃棄物は、例えば、移送水供給管によって、移送水槽から水を高線量樹脂貯蔵タンク2に供給することにより、移送し易いスラリーの状態になる。
高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵されている放射性有機廃棄物には、原子炉冷却材浄化系及び燃料プール冷却浄化系等で冷却水から除去されたクラッドが含まれており、クラッドにはコバルト60等の放射性核種が含まれている。また、高線量樹脂貯蔵タンク2に貯蔵されたイオン交換樹脂には、コバルト60、セシウム137、炭素14、塩素36等のα核種以外の放射性核種のイオンが吸着されている。さらに、そのイオン交換樹脂には、前述したように、α核種(ウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム等)が吸着されている。
【0071】
移送ポンプ22を駆動することにより、放射性有機廃棄物を(例えば、濃度約10wt%で)含むスラリーが、所定量、高線量樹脂貯蔵タンク2から有機廃棄物供給管23を通して、化学反応槽4に移送される。化学反応槽4内で、放射性有機廃棄物スラリーの水位が所定レベルに達したとき、移送ポンプ22が停止され、そのスラリーの化学反応槽4への供給が停止される。
その後、移送ポンプ34が駆動され、化学反応槽4内のスラリーに含まれる水が、放射性廃液(以下、「第三放射性廃液」とする)として、戻り配管36と配管40を通して、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に導かれる。このとき、弁35は閉じており、弁39は開いている。洗浄廃液処理槽に導かれた第三放射性廃液は、移送ポンプ43の駆動により、配管45を通してα核種除去装置14に導かれる。化学反応槽4内で、放射性有機廃棄物スラリーに含まれる水分はα核種を含んでいないので、洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液は、α核種を含んでおらず、α核種以外の放射性核種を含んでいる。
第三放射性廃液が、α核種除去装置14内を通過し、配管46に排出されて処理水回収タンク18に導かれる。その第三放射性廃液がα核種除去装置14に供給された際、α核種除去装置14内のフェライト(Fe34)粒子は、α核種、及びα核種以外の放射性核種を吸着しない。なお、第三放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分は、フェライトのフィルタ効果によって除去される。第三放射性廃液がα核種を含んでいないため、pH調整剤注入工程S5におけるpH調整剤注入装置112から配管45へのpH調整剤水溶液(ヒドラジン水溶液または希硝酸水溶液)の注入が行われず、還元剤の分解工程S9における還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解も行われない。
【0072】
洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液のα核種除去装置14への移送が終了したとき、移送ポンプ43が停止される。処理水回収タンク18内の第三放射性廃液は、所定量、移送ポンプ47を駆動することにより、配管48を通して乾燥粉体化装置20に供給される。α核種以外の放射性核種を含む第三放射性廃液は、乾燥粉体化装置20で紛体化される(減容工程S10)。
その後、乾燥粉体化装置20で生成された紛体は、固化設備21(または充填設備)に移送される。固化設備21では、その粉体が固化容器内に充填され、その固化容器内に固化材(例えば、セメント)が注入される。固化容器内の紛体は、固化材によって固化される(容器充填または固化工程S11)。固化された粉体が内部に存在し、密封された固化容器は、保管場所において保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。また、充填設備を用いる場合には、容器内に粉体を充填し、粉体を充填した容器を密封した後、その容器が保管場所に保管される。
【0073】
放射性有機廃棄物スラリーの水分が排出されて放射性有機廃棄物が残留している化学反応槽4には、移送ポンプ32の駆動により、72g/L程度のシュウ酸水溶液(シュウ酸濃度が0.8mol/L)が、洗浄液供給タンク6から洗浄液供給管33を通して供給される。洗浄液供給タンク6への、シュウ酸濃度0.8mol/Lのシュウ酸水溶液の供給は、弁26を開くことによって、配管29を通して有機酸槽7から行われる。このとき、弁27及び弁28は全閉になっている。シュウ酸水溶液の替りにクエン酸水溶液を用いてもよい。これらの有機酸は、還元性を有する。
【0074】
加熱装置5によって、化学反応槽4内のシュウ酸水溶液が加熱される。シュウ酸水溶液の加熱温度は、100℃未満とする。化学反応槽4内に供給されたシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸は、化学反応槽4内の放射性有機廃棄物に付着したクラッドを溶解する(第一洗浄工程S1)。このクラッドの溶解によって、クラッドに含まれた放射性核種、例えば、コバルト60は、シュウ酸水溶液中に移行する。
化学反応槽4内でのシュウ酸水溶液によるクラッドの溶解によって生じた、シュウ酸水溶液に含まれるクラッド成分を、化学反応槽4で沈殿させる。クラッド溶解成分の沈殿によって生じた、化学反応槽4内の上澄み液であるシュウ酸水溶液のみを、移送ポンプ34の駆動により、戻り配管36を通して洗浄液供給タンク6に回収する。このとき、弁39は閉じており、弁35は開いている。洗浄液供給タンク6に回収されたシュウ酸水溶液は、化学反応槽4に供給され、化学反応槽4内でクラッドの溶解に再使用される。
第一洗浄工程S1では、放射性有機廃棄物の一部であるイオン交換樹脂が有機酸であるシュウ酸に浸漬されるため、イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種の一部が、イオン交換樹脂から脱離される。具体的には、シュウ酸が解離して生じる水素イオン及びシュウ酸イオンが、それぞれ陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種とイオン交換されるため、一部の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種)がイオン交換樹脂から脱離される。
【0075】
化学反応槽4内でのクラッドの溶解が終了した後、弁35が閉じられ、弁39が開けられる。化学反応槽4内の、クラッドの溶解に供用され、クラッドに含まれていた放射性核種(例えば、コバルト60等)、及びシュウ酸が解離して生じる前述の水素イオン及びシュウ酸イオンとのイオン交換により、放射性有機廃棄物の一部であるそれぞれ陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂から脱離された一部の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれ)を含むシュウ酸水溶液(以下、「第一放射性廃液」とする)は、移送ポンプ34の駆動により、配管36及び配管40を通して、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に移送される。廃液分解装置13は、図3に示したように、オゾン供給装置80、オゾン噴射管81、オゾン供給管82及びガス排気管83を有する。
【0076】
廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのシュウ酸水溶液の移送が終了した後、廃液分解工程S4が実施される。廃液分解工程S4では、オゾンが、オゾン供給装置80からオゾン供給管82を通して、所定時間、洗浄廃液処理槽内のオゾン噴射管81に供給され、オゾン噴射管81に形成された多数の噴射孔から、洗浄廃液処理槽内のシュウ酸水溶液中に噴射される。シュウ酸水溶液に含まれる有機成分であるシュウ酸が、噴射されたオゾンにより分解される。シュウ酸は、オゾンと反応して、炭酸ガスと水に分解される。洗浄廃液処理槽内に噴射されたオゾンの残り、及び炭酸ガスが、洗浄廃液処理槽に接続されたガス排気管83を通してオフガス処理装置(図示せず)に供給され、ガス排気管83に排出されたガスに含まれる放射性ガスが、オフガス処理装置で取り除かれる。
【0077】
廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内での、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解(廃液分解工程S4)が終了した後、洗浄廃液処理槽へのオゾンの供給が停止されて移送ポンプ43が駆動され、シュウ酸分解後において洗浄廃液処理槽内に残留する、脱離されたα核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれを含む水溶液、すなわち、第一放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。このとき、弁44は開いている。
【0078】
上述した廃液分解工程S4の後に、pH調整剤注入工程S5を行うために、配管45に、pH調整剤注入装置112からpH調整剤が注入される。
本実施例において、配管45に注入されるpH調整剤としては、還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミド及びカルボヒドラジド等のヒドラジン誘導体及びヒドロキシルアミンのいずれかが用いられる。
酸としては、例えば、希硝酸及びシュウ酸のいずれかが用いられる。
【0079】
本実施例では、α核種を含む第一放射性廃液のpHを、4以上11以下の範囲内の4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第一放射性廃液に酸(例えば、希硝酸)が注入される。なお、pHを4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときに、第一放射性廃液に注入される酸としては、分解できない酸(例えば、希硝酸)及び分解可能な酸(例えば、シュウ酸)がある。
また、本実施例では、第一放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第一放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)が注入される。
【0080】
本実施例では、α核種除去装置14に供給される、α核種を含む第一放射性廃液のpHを、例えば、設定pHである「8」にする。
この場合、pH調整剤注入装置112において、弁41を開いて、還元剤注入装置17の還元剤槽17Aに充填された還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。注入されたヒドラジン水溶液は、配管45内で第一放射性廃液と混合される。
注入されたヒドラジンを含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。ヒドラジンの注入により、第一放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節される。α核種除去装置14に流入する第一放射性廃液のpHは、pH計49Aで測定される。pH計49Aの測定値に基づいて弁41の開度を制御し、第一放射性廃液のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。このとき、弁115は閉じている。α核種除去装置14に流入する前、具体的には、ヒドラジン水溶液の注入前において、第一放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第一放射性廃液が還元剤であるヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第一放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第一放射性廃液に含まれる、価数が「3~5」である各α核種(ウラン、プルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等)の価数が「3」に調節される。
【0081】
価数が「3」になった各α核種を含む第一放射性廃液に、吸着材としてフェライトを供給する。弁122を開いて、吸着材注入装置121から注入配管123を通して、フェライトをα核種除去装置14に供給する。第一放射性廃液に含まれる、価数が「3」に調節された各α核種は、還元剤(例えば、ヒドラジン)の存在下で、フェライトの粒子に効率良く吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第一放射性廃液に含まれる固形分は、フェライトによって除去される。α核種除去装置14に設けられた磁化率測定装置49Bは、α核種除去装置14内にフェライトが存在しているかを検出する。
【0082】
α核種除去装置14内でα核種が吸着されたフェライトは、使用済みフェライトとして、第一放射性廃液と共に、α核種除去装置14から排出されて、配管46を通して吸着材分離装置131に供給される。
吸着材分離装置131において、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によりろ過して、第一放射性廃液から、α核種が吸着されたフェライトを分離する(吸着材分離工程S7)。
α核種が吸着されたフェライトが分離された第一放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46に排出される。
吸着材分離装置131において、膜によってろ過されたろ液は、配管55を通して戻り配管36に供給される。
【0083】
この場合、pH調整剤注入工程S5で、還元剤であるヒドラジンが注入されているので、pH調整剤判定工程S8における「pH調整剤が還元剤であるか」の判定が「YES」になり、α核種除去装置14のフェライトによりα核種、コロイド性の物質及び固形分が除去された、ヒドラジンを含む第一放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46を通して分解装置107に導かれる。
第一放射性廃液に含まれるヒドラジン(還元剤)は、分解装置107内で分解される。すなわち、弁111を開いて、薬液タンク109内の過酸化水素を、供給配管110を通して分解装置107に供給する。分解装置107内で、活性炭触媒及び過酸化水素の作用により、第一放射性廃液に含まれるヒドラジンが窒素及び水に分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第一放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
【0084】
なお、第一放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合には、pH調整剤注入工程S5において、酸水溶液(例えば、希硝酸水溶液)がpH調整剤注入装置112から第一放射性廃液に注入される。pH調整剤注入装置112からの希硝酸水溶液の注入は、弁115を開いて、酸注入装置113の酸槽114に充填された酸水溶液、例えば、希硝酸水溶液を、注入配管116及び注入配管42を通して、配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。このとき、弁41は閉じている。注入された希硝酸水溶液は、配管45内で第一放射性廃液と混合される。注入された希硝酸を含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、第一放射性廃液のpHに基づいて弁115の開度を制御し、第一放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、6になるように、酸槽114から配管45への希硝酸水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前、具体的には、希硝酸水溶液の注入前において、第一放射性廃液のpHは、例えば、8になっている。希硝酸水溶液の注入によりpH6に調節された第一放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内に注入されたフェライトに吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
【0085】
pH調整剤注入工程S5において、希硝酸水溶液が第一放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「No」になり、α核種除去装置14から排出された、希硝酸を含む第一放射性廃液は、分解装置107に導かれるが、この場合には弁111が閉じられている状態で保持するため、薬液タンク109内の過酸化水素が分解装置107に供給されず、希硝酸を含む第一放射性廃液は、そのまま、分解装置107から排出され、処理水回収タンク18に導かれる。
上記した第一放射性溶液へのpH調整剤である希硝酸の注入は、後述の実施例2においても適用できる。
【0086】
第一放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合に、酸水溶液として、上記の希硝酸水溶液の代わりに、シュウ酸水溶液を用いることができる。このとき、シュウ酸水溶液が、酸注入装置113の酸槽114から注入配管116及び注入配管42を通して配管45に注入される(pH調整剤注入工程S5)。pHが6でシュウ酸を含む第一放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内に注入されたフェライトによって吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
ただし、シュウ酸水溶液が第一放射性廃液に注入された場合には、シュウ酸が還元剤であるため、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になる。α核種除去装置14から排出された、シュウ酸を含む第一放射性廃液が分解装置107に供給され、弁111が開いて、薬液タンク109内の過酸化水素が分解装置107に供給される。第一放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)は、分解装置107内で活性炭触媒及び注入された過酸化水素の作用によって、二酸化炭素及び水に分解される。第一放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)の分解によって、第一放射性廃液の量を低減できる。そのような第一放射性溶液に含まれるシュウ酸の分解は、後述の実施例2においてシュウ酸が第一放射性廃液に注入される場合にも適用できる。
【0087】
前述した処理水回収タンク18内の第一放射性廃液(ヒドラジンやシュウ酸が分解された第一放射性廃液、もしくは、希硝酸を含む第一放射性廃液)は、乾燥粉体化装置20に供給されて紛体化される(減容工程S10)。乾燥粉体化装置20で生成された、α核種を含まない紛体は、固化設備21に移送されて固化容器内に充填され、その固化容器内に固化材が注入されて固化される(容器充填または固化工程S11)。この固化容器は、密封された後、保管場所に保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
ここで、第一放射性廃液に希硝酸を注入した場合には、この第一放射性廃液の粉体化により生成された粉体は硝酸成分を含んでおり、この粉体を固化容器内で溶融したガラスにより固化して生成されたガラス固化体も、硝酸成分を含んでいる。
これに対して、第一放射性廃液にpH調整剤であるシュウ酸を注入した場合には、前述のように、シュウ酸(pH調整剤)が分解されるため、生成されたガラス固化体はシュウ酸を含んでいない。
【0088】
上述したように第一放射性廃液の処理が行われ、固化設備21で固化が実行された状態では、まだ化学反応槽4内に、クラッドが溶解された、陽イオン交換樹脂を含む放射性有機廃棄物が、残留している。引き続き、この陽イオン交換樹脂を含む放射性有機廃棄物の処理を行う。
移送ポンプ32の駆動によって、40~400g/L程度のギ酸ヒドラジン水溶液が、洗浄液供給タンク6から洗浄液供給管33を通して、放射性有機廃棄物が残留する化学反応槽4内に連続的に供給される。ギ酸ヒドラジン水溶液のギ酸ヒドラジンの濃度は、溶液1L当たりの溶質(ギ酸ヒドラジン)の質量である。化学反応槽4に供給されるギ酸ヒドラジン水溶液は、pH7程度の中性液である。洗浄液供給タンク6へのギ酸ヒドラジン水溶液の供給は、弁27を開くことによって、配管30及び配管29を通して有機酸塩槽8から行われる。弁26及び弁28は閉じている。
放射性有機廃棄物は、化学反応槽4内でギ酸ヒドラジン水溶液と接触する。化学反応槽4内では、この接触によって、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着された、α核種であるウラン、プルトニウム、アメリシウム、ネプツニウム及びキュリウム、及びα核種以外の放射性核種であるコバルト60、セシウム137、炭素14、塩素36のそれぞれのイオンが、ギ酸ヒドラジン水溶液中に溶離する(第二洗浄工程S2)。
化学反応槽4内からギ酸ヒドラジン水溶液のみを回収し、回収されたギ酸ヒドラジン水溶液は、戻り配管36を通して洗浄液供給タンク6に移送される。このとき、弁35は開いており、弁39は閉じている。洗浄液供給タンク6に移送されたギ酸ヒドラジン水溶液は、再び、化学反応槽4に供給され、陽イオン交換樹脂に吸着された各放射性核種の溶離に使用される。ギ酸ヒドラジン水溶液の代わりに、シュウ酸、酢酸及びクエン酸のいずれかのヒドラジン塩の水溶液を用いてもよい。これらの有機酸塩は、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩である。
【0089】
放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂にシュウ酸水溶液を接触させた場合では、陽イオン交換樹脂に吸着されているコバルト60に対する除染性能(除染係数)がDF4程度である。
これに対して、陽イオン交換樹脂にギ酸ヒドラジン水溶液を接触させた場合では、除染性能がDF20以上となり、シュウ酸水溶液を接触させた場合よりも、除染性能が向上した。
シュウ酸水溶液のみを用いてDF20以上の除染性能を得るためには、繰り返し、シュウ酸を添加する必要がある。
これに対して、ギ酸ヒドラジン水溶液を用いた場合には、その繰り返しが不要となり、使用する洗浄剤の量、すなわち、シュウ酸の量を低減することができる。
ここで、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(除染後の計数率)で算出される数値である。なお、ギ酸ヒドラジンによる除染(イオン溶離)は、シュウ酸による除染(クラッド溶解)の後に行う。よって、有機酸水溶液によるクラッドの溶解のみを実施する場合には、有機酸塩水溶液を用いたイオンの溶離は行わないため、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(クラッド溶解のみの計数率)で計算される値となる。一方、イオンの溶離も行う場合には、除染係数DFは、(除染前の計数率)/(クラッド溶解及びイオン溶離の後の計数率)で計算される値となる。
【0090】
化学反応槽4内での放射性核種の溶離(第二洗浄工程S2)が終了した後、弁35を閉じて弁39を開き、移送ポンプ34を駆動する。化学反応槽4内の、溶離されたα核種及びα核種以外の放射性核種を含むギ酸ヒドラジン水溶液(以下、「第二放射性廃液」とする)が、配管36及び配管40を通して、前述した廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に移送される。
【0091】
その廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのギ酸ヒドラジン水溶液の移送が終了した後、廃液分解工程S4が実施される。この廃液分解工程S4では、オゾン供給装置80からのオゾンが、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内のギ酸ヒドラジン水溶液中に噴射される。ギ酸ヒドラジン水溶液に含まれるギ酸及びヒドラジンが、噴射されたオゾンにより分解される。ギ酸は窒素ガスと水に、また、ヒドラジンは炭酸ガスと水に分解される。洗浄廃液処理槽内に噴射されたオゾンの残り、炭酸ガス及び窒素ガスが、洗浄廃液処理槽に接続されたガス排気管83を通してオフガス処理装置(図示せず)に供給される。
【0092】
第二洗浄工程S2の後に実施された、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内でのギ酸及びヒドラジンの分解(廃液分解工程S4)が終了した後、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのオゾンの供給が停止されて移送ポンプ43が駆動され、ギ酸及びヒドラジンの分解後において廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に残留する、α核種及びα核種以外の放射性核種を含む水溶液、すなわち、第二放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。このとき、弁44は開いている。
【0093】
本実施例では、α核種を含む第二放射性廃液のpHを、4以上11以下の範囲内の4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第二放射性廃液に酸(例えば、希硝酸)が注入される。なお、pHを4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときに、第二放射性廃液に注入される酸としては、分解できない酸(例えば、希硝酸)及び分解可能な酸(例えば、シュウ酸)がある。
また、本実施例では、第二放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第二放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)が注入される。
【0094】
本実施例では、α核種除去装置14に供給される、α核種を含む第二放射性廃液のpHを、例えば、設定pHである「8」にする。
α核種を含む第二放射性廃液がα核種除去装置14に供給されるので、弁41を開いて、還元剤注入装置17の還元剤槽17Aに充填された還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。注入されたヒドラジン水溶液は、配管45内で第二放射性廃液と混合される。
注入されたヒドラジンを含む第二放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。ヒドラジンの注入により、第二放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節される。α核種除去装置14に流入する第二放射性廃液のpHも、pH計49Aで測定される。pH計49Aの測定値に基づいて弁41の開度を制御し、第二放射性廃液のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前において、第二放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第二放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第二放射性廃液のpHが8に調節されるため、第二放射性廃液に含まれる、価数が「3~5」である各α核種の価数が「3」に調節される。
【0095】
第二放射性廃液に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、還元剤の存在下において、α核種除去装置14において、フェライトの粒子に効率良く吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第二放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。磁化率測定装置49Bの出力に基づいて、α核種除去装置14内におけるフェライトの存在を確認できる。
【0096】
α核種除去装置14内でα核種が吸着されたフェライトは、使用済みフェライトとして、第二放射性廃液と共に、α核種除去装置14から排出されて、配管46を通して吸着材分離装置131に供給される。
吸着材分離装置131において、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式によりろ過して、第二放射性廃液から、α核種が吸着されたフェライトを分離する(吸着材分離工程S7)。
α核種が吸着されたフェライトが分離された第二放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46に排出される。
吸着材分離装置131において、膜によってろ過されたろ液は、配管55を通して戻り配管36に供給される。
【0097】
pH調整剤注入工程S5で、還元剤であるヒドラジンが注入されているので、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になり、α核種除去装置14のフェライトによりα核種、コロイド性の物質及び固形分が除去された、ヒドラジンを含む第二放射性廃液は、吸着材分離装置131から、配管46を通して分解装置107に導かれる。
第二放射性廃液に含まれるヒドラジンは、第一放射性廃液に含まれるヒドラジンと同様に、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第二放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
【0098】
なお、第二放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合には、第一放射性廃液と同様に、pH調整剤注入工程S5において、酸である希硝酸水溶液がpH調整剤注入装置112から第二放射性廃液に注入される。注入された希硝酸を含む第二放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。希硝酸水溶液の注入によりpH6に調節された第二放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内に注入されたフェライトに吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
【0099】
pH調整剤注入工程S5において、希硝酸水溶液が第二放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「No」になり、α核種除去装置14から排出された、希硝酸を含む第二放射性廃液は、薬液タンク109から過酸化水素が供給されず、分解装置107を、そのまま通過して、処理水回収タンク18に導かれる。
上記した第二放射性溶液へのpH調整剤である希硝酸の注入は、後述の実施例2においても適用できる。
【0100】
第二放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合に、酸水溶液としてシュウ酸水溶液を用いたときにも、第一放射性廃液にシュウ酸水溶液を用いたときと同様に、シュウ酸水溶液が、酸注入装置113の酸槽114から配管45に注入される(pH調整剤注入工程S5)。pHが6でシュウ酸を含む第二放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内に注入されたフェライトによって吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
ただし、シュウ酸水溶液が第二放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になり、α核種除去装置14から排出された、シュウ酸を含む第二放射性廃液が分解装置107に供給され、弁111が開いて、薬液タンク109内の過酸化水素が分解装置107に供給される。第二放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)は、分解装置107内で活性炭触媒及び注入された過酸化水素の作用によって、二酸化炭素及び水に分解される。第二放射性廃液に含まれるシュウ酸(pH調整剤)の分解によって、第二放射性廃液の量を低減できる。そのような第二放射性溶液に含まれるシュウ酸の分解は、後述の実施例2においてシュウ酸が第二放射性廃液に注入される場合にも適用できる。
【0101】
前述の第一放射性廃液と同様に、処理水回収タンク18内の第二放射性廃液(ヒドラジンやシュウ酸が分解された第二放射性廃液、もしくは、希硝酸を含む第二放射性廃液)は、乾燥粉体化装置20で紛体化される(減容工程S10)。乾燥粉体化装置20で生成された、α核種を含まない紛体は、固化設備21で、固化容器内に充填され、固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
ここで、第二放射性廃液に希硝酸を注入した場合には、この第二放射性廃液の粉体化により生成された粉体は硝酸成分を含んでおり、この粉体を固化容器内で溶融したガラスにより固化して生成されたガラス固化体も、硝酸成分を含んでいる。
これに対して、第二放射性廃液にpH調整剤であるシュウ酸を注入した場合には、前述のように、シュウ酸(pH調整剤)が分解されるため、生成されたガラス固化体はシュウ酸を含んでいない。
【0102】
ギ酸ヒドラジン水溶液を用いた放射性核種の溶離工程(第二洗浄工程S2)が終了したとき、化学反応槽4内には、クラッド及びα核種を含む放射性核種が除去された放射性有機廃棄物が残留している。この状態で、移送ポンプ32が駆動され、洗浄液供給タンク6内の移送水が洗浄液供給管33を通して化学反応槽4に供給される。洗浄液供給タンク6への移送水の供給は、弁28を開くことによって、配管31,30及び29を通して移送水槽9から行われる。弁26及び弁27は閉じている。
移送水の供給によって、化学反応槽4内の放射性有機廃棄物は、スラリー状になる。放射性有機廃棄物スラリーは、放射性有機廃棄物を約10wt%含んでいる。
弁37を開くことによって、化学反応槽4内の放射性有機廃棄物スラリーが、配管38を通して第二受入タンク11に導かれる。
第二受入タンク11から取り出された放射性有機廃棄物は、所定量、焼却設備12に移送され、焼却設備12で焼却される。焼却により生成された灰は、固化容器内でセメント等の固化剤により固化される。この固化体は、超半減期のα核種を含んでいないため、低レベル放射性廃棄物になる。
【0103】
本実施例によれば、第一洗浄工程S1において、シュウ酸水溶液を用いて、放射性有機廃棄物に混在している酸化鉄成分を溶解させることができる。
さらに、本実施例によれば、第二洗浄工程S2において、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着された、α核種のイオンを含む放射性核種イオンを、ギ酸ヒドラジン水溶液の陽イオン交換樹脂への接触によって陽イオン交換樹脂から脱離させることにより、放射性有機廃棄物に含まれる放射性核種の濃度を低減することができ、高線量の放射性廃棄物の量を低減することができる。特に、シュウ酸水溶液によっても陽イオン交換樹脂から脱離されずに陽イオン交換樹脂に吸着されて残っているα核種のイオンを含む放射性核種のイオンを、ギ酸ヒドラジン水溶液を放射性有機廃棄物に接触させることにより、効率良く、陽イオン交換樹脂から脱離させることができる。
【0104】
本実施例によれば、α核種を含む放射性廃液に還元剤、例えば、ヒドラジンを注入して放射性廃液のpHを調節するため、放射性廃液に含まれる超半減期のα核種が、α核種除去装置14に注入したフェライト(α核種吸着材)によって除去されやすくなる。このため、放射性廃液に含まれるα核種がα核種除去装置14において除去され、α核種除去装置14から流出する放射性廃液に含まれる超半減期のα核種が著しく低減される。この結果、α核種除去装置14から流出する放射性廃液の放射線線量が著しく低減され、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物(例えば、固化体)の発生量を低減できる。
特に、還元剤の注入により、α核種を含む放射性廃液のpHが4~11の範囲に調節されることによって、α核種除去装置14はα核種を効率良く除去することができる。
【0105】
本実施例では、α核種除去装置14内のフェライトが、使用済のフェライト(使用済のα核種吸着材)として、吸着材分離装置131で分離される。分離されたフェライトは、固化容器(以下、「第1固化容器」と呼ぶ)内に収納される。その後、例えば、溶融したガラスが、α核種を吸着している所定量の使用済フェライトが収納された第1固化容器内に充填される。溶融したガラスが固化した後、所定量の使用済フェライトが収納された第1固化容器が密封される。
【0106】
なお、化学洗浄部10から廃液処理部19に放射性廃液を移送するタイミングは、戻り配管36にサンプリング弁をつけておき、サンプリング弁で採取した放射性廃液を定期的に分析することで、測定されるα核種濃度が所望の濃度になった際に移送させても良い。
この場合、所望のα核種濃度になった際に、化学洗浄部10から廃液処理部19に放射性廃液が移送され、廃液処理部19において、pH調整剤注入装置112によって放射性廃液へのpH調整剤の注入が行われる。また、吸着材注入装置121によって、放射性廃液へのα核種吸着材の注入が行われる。
上述のように、α核種濃度が所望の濃度になった際に、廃液処理部19に放射性廃液を移送することにより、α核種吸着材の吸着性能を十分に発揮させることができる。
α核種濃度を測定するためのサンプリング弁は、pH調整剤注入装置112よりも上流側の配管にとりつければ良く、上記の戻り配管36に限らず、配管40や、配管45のpH調整剤注入装置112の注入配管42との合流点よりも上流側の部分に、とりつけても良い。
【0107】
高線量樹脂貯蔵タンク2内に貯蔵されている放射性有機廃棄物にα核種が吸着された陽イオン交換樹脂が含まれているときに、前述した特許文献1(特開2015-64334号公報)に記載された放射性有機廃棄物の処理方法を実施すると、放射性有機廃棄物に含まれているクラッドを溶解した有機酸水溶液、陽イオン交換樹脂からα核種を脱離させた有機酸塩水溶液のそれぞれには、α核種が含まれている。
α核種を含む有機酸水溶液の有機酸をオゾン等で分解して生成された第一放射性廃液、及びα核種を含む有機酸塩水溶液の有機酸塩をオゾン等で分解して生成された第二放射性廃液のそれぞれは、粉体化されて別々の固化容器(以下、「第2固化容器」と呼ぶ)内に充填され、その後、例えば、溶融されたガラスが各第2固化容器内に充填される。第一放射性廃液の、α核種を含む粉体を固化する溶融ガラスが第2固化容器内で固化された後に、この第2固化容器が密封される。第二放射性廃液の、α核種を含む粉体を固化する溶融ガラスが第2固化容器内で固化された後に、この第2固化容器が密封される。
【0108】
ここで、本実施例の処理方法と、特許文献1に記載された処理方法を、比較する。
これらの処理方法において、第一洗浄工程S1及び第二洗浄工程S2の実施の対象となる放射性有機廃棄物の量が同じであり、溶解されるクラッドの量及び脱離されるα核種の量が同じであり、発生する第一放射性廃液の量及び第二放射性廃液の量が同じであるとする。このとき、本実施例で発生する、α核種を吸着したフェライトを第1固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数は、特許文献1に記載された処理方法で発生した、第一放射性廃液の、α核種を含む粉体を第2固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数と、第二放射性廃液の、α核種を含む粉体を第2固化容器内でガラス固化することにより生成されたガラス固化体の個数の合計よりも少なくなる。すなわち、本実施例で発生する、α核種を含むガラス固化体(α核種を含む放射性廃棄物)は、特許文献1に記載された処理方法で発生する、α核種を含むガラス固化体(α核種を含む放射性廃棄物)よりも低減できる。
【0109】
本実施例によれば、クラッドを溶解した有機酸水溶液に含まれる有機酸(例えば、シュウ酸)、及びα核種を溶離した有機酸塩水溶液に含まれる有機酸塩(例えば、ギ酸ヒドラジン)が、オゾン等を用いた酸化処理により分解されるため、α核種を含む放射性廃液の量が低減され、α核種除去後の放射性廃液の濃縮または粉体化によって、発生する放射性廃棄物の量が低減される。
【0110】
本実施例によれば、有機酸水溶液による、放射性有機廃棄物に含まれるクラッドの溶解(第一洗浄工程S1)、及び有機酸塩水溶液による、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着されたα核種の脱離(第二洗浄工程S2)を、一つの洗浄槽(例えば、化学反応槽4)内で順番に実施するので、放射性廃液処理システムをよりコンパクト化できる。さらに、本実施例は、後述の実施例2のように、第1洗浄槽50から第2洗浄槽51への放射性有機廃棄物を移送することが不要になるため、放射性有機廃棄物の処理に要する時間を短縮することができる。
【0111】
(実施例2)
本発明の好適な他の実施例として、実施例2の放射性廃液の処理方法を説明する。
実施例2も、沸騰水型原子力プラントで発生する放射性有機廃棄物の処理に適用される、放射性廃液の処理方法である。
本実施例の放射性廃液の処理方法でも、実施例1で実施されていた、図1に示したS1~S11の各工程が実施される。
【0112】
実施例2の放射線廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理システムの構造の一例を、図7を参照して説明する。図7は、実施例1の放射性廃液の処理方法を実行する放射性廃液処理システムの一例の構成図である。
【0113】
図7に示す放射性廃液処理システム1Aは、放射性有機廃棄物を処理する化学洗浄部10A、及び化学洗浄部10Aから排出される洗浄廃液(放射性廃液)を処理する廃液処理部19Aを備える。
【0114】
本実施例の化学洗浄部10Aでも、図1に示した各工程のうち、クラッドを溶解する第一洗浄工程S1、及び放射性核種を放射性有機廃棄物から溶離させる第二洗浄工程S2が行われる。
化学洗浄部10Aは、第1洗浄槽50、第2洗浄槽51、有機酸槽52、移送水槽54A、有機酸塩槽53及び移送水槽54Bを有する。また、化学洗浄部10Aの前段に、移送水槽56及び高線量樹脂貯蔵タンク2が設けられ、化学洗浄部10Aの図中右方に、第二受入タンク11及び焼却設備(またはセメント固化設備)12が設けられている。
高線量樹脂貯蔵タンク2が、移送水供給管57によって、移送水槽56に連絡される。
第1洗浄槽50が、移送ポンプ22を設けた有機廃棄物供給管23によって、高線量樹脂貯蔵タンク2に連絡される。
撹拌翼58の回転軸にモータ59を取り付けて構成される撹拌装置が、第1洗浄槽50に設置される。
有機酸槽52の底部に接続された有機酸供給管60及び移送水槽54Aの底部に接続された移送水供給管61が切換え弁62に接続される。有機酸槽52にはシュウ酸水溶液が充填されており、移送水槽54Aには移送水となる水が充填されている。切換え弁62に接続された液体供給管64が第1洗浄槽50に接続され、移送ポンプ63が液体供給管64に設けられる。
撹拌翼67の回転軸にモータ68を取り付けて構成される撹拌装置が、第2洗浄槽51に設置される。
移送ポンプ65を設けた有機廃棄物移送管66が、第1洗浄槽50及び第2洗浄槽51に接続される。
有機酸塩槽53の底部に接続された有機酸塩供給管69及び移送水槽54Bの底部に接続された移送水供給管70が切換え弁71に接続される。有機酸塩槽53にはギ酸アンモニウム水溶液が充填されており、移送水槽54Bには移送水となる水が充填されている。切換え弁71に接続された液体供給管73が第2洗浄槽51に接続され、移送ポンプ72が液体供給管73に設けられる。
有機廃棄物移送管75が第2洗浄槽51に挿入され、この有機廃棄物移送管75の一端部が第2洗浄槽51の底部近くまで達している。移送ポンプ74が有機廃棄物移送管75に設けられる。有機廃棄物移送管75が、第二受入タンク11に接続される。
第二受入タンク11に接続された配管が、焼却設備(またはセメント固化設備)12に接続される。
【0115】
また、廃液処理部19Aは、廃液分解装置13、α核種除去装置14、pH調整剤注入装置112、吸着材注入装置121、吸着材分離装置131、分解装置107、酸化剤供給装置108及び処理水回収タンク18を有する。
廃液分解装置13は洗浄廃液処理槽で構成され、洗浄廃液処理槽内に配置されたオゾン噴射管81を有する。多数の噴射孔が形成されたオゾン噴射管81が、洗浄廃液処理槽内でその底部に設置されている。オゾン噴射管81は、オゾン供給管82によりオゾン供給装置80に接続される。第1洗浄槽50内に挿入されて第1洗浄槽50に取り付けられた廃液移送管77が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。廃液移送管77には、移送ポンプ76が設けられる。第2洗浄槽51内に挿入されて第2洗浄槽51に取り付けられた廃液移送管79が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。移送ポンプ78が廃液移送管79に設けられる。ガス排気管83が廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に接続される。移送ポンプ43が設けられた配管45が、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に挿入されて、洗浄廃液処理槽に取り付けられる。配管45は、α核種除去装置14にも接続される。前述した「α核種を含む放射性廃液を導く放射性廃液供給管」は、この配管45等の配管に相当する。
【0116】
なお、図7においては図示を省略しているが、図2の配管55と同様に、吸着材分離装置131で吸着材を分離したろ液を化学洗浄部10Aに戻す配管が、設けられる。この配管は、吸着材分離装置131と、化学洗浄部10Aの、例えば、洗浄槽50,51に流入する液体供給管64,73に、もしくは直接洗浄槽50,51に、接続される。
【0117】
本実施例において、α核種除去装置14及びpH調整剤注入装置112とその付近の部品の構成は、図4に示した実施例1の構成と同様である。
pH調整剤注入装置112が、移送ポンプ43とα核種除去装置14の間で配管45に接続される。本実施例で用いられるpH調整剤注入装置112は、実施例1で用いられるpH調整剤注入装置112と同じ構成を有する。
配管46が、α核種除去装置14と処理水回収タンク18の間(吸着材分離装置131、分解装置107を含む)を接続する。
【0118】
さらに、廃液処理部19Aの後段には、乾燥粉体化装置20、固化設備21が設けられている。
移送ポンプ47を設けた配管48が、処理水回収タンク18と乾燥粉体化装置20を接続する。
乾燥粉体化装置20に接続された配管49が、固化設備21に接続されている。
【0119】
次に、図7に示した放射性廃液処理システム1Aを用いた、本実施例の放射性廃液の処理方法を、詳細に説明する。なお、本実施例において、実施例1の放射性廃液処理システム1を用いた処理方法と同様の工程(例えば、吸着材分離装置131による吸着材分離工程S7)については、説明を省略する。
実施例1と同様に、沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系、燃料プール冷却浄化系等から発生する放射性有機廃棄物は、高線量樹脂貯蔵タンク2に長期間貯蔵保管されている。貯蔵保管されている放射性有機廃棄物には、クラッドが含まれており、さらに、前述のα核種、及びα核種以外の放射性核種が吸着されている。
高線量樹脂貯蔵タンク2内に長期間貯蔵された放射性有機廃棄物を、高線量樹脂貯蔵タンク2の外部に移送する際には、移送水槽56内の水が移送水供給管57を通して高線量樹脂貯蔵タンク2内に供給される。この水の供給によって、高線量樹脂貯蔵タンク2内の放射性有機廃棄物を、移送し易いスラリーの状態にする。
【0120】
移送ポンプ22を駆動することによって、高線量樹脂貯蔵タンク2内の放射性有機廃棄物スラリーが、有機廃棄物供給管23を通して、第1洗浄槽50に供給される。第1洗浄槽50内で、放射性有機廃棄物スラリーの水位が所定レベルに達したとき、移送ポンプ22が停止され、そのスラリーの第1洗浄槽50への供給が停止される。
その後、移送ポンプ76が駆動され、第1洗浄槽50内のスラリーに含まれる水が、放射性廃液(以下、実施例1と同様に、「第三放射性廃液」とする)として、廃液移送管77を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に排出される。廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に導かれた第三放射性廃液は、実施例1における第三放射性廃液と同様に、α核種除去装置14に導かれる。第1洗浄槽50内の、放射性有機廃棄物スラリーに含まれる水分はα核種を含まないので、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液は、α核種を含んでおらず、α核種以外の放射性核種を含んでいる。
第三放射性廃液が、α核種除去装置14を通過し、処理水回収タンク18に導かれる。その第三放射性廃液がα核種除去装置14を通過する間、α核種除去装置14内のフェライト(Fe34)粒子は、α核種、及びα核種以外の放射性核種を吸着しない。第三放射性廃液がα核種を含んでいないため、pH調整剤注入装置112から配管45へのpH調整剤水溶液の注入が行われず、分解装置107における還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解も行われない。第三放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分は、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
【0121】
廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内の第三放射性廃液の、α核種除去装置14への移送が終了したとき、移送ポンプ43が停止される。
処理水回収タンク18内のα核種を含んでいない第三放射性廃液は、乾燥粉体化装置20で紛体化され、生成された紛体は固化設備21に移送されて固化容器内で固化される。この固化容器は、密封後に、保管場所で保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
【0122】
その後、第一洗浄工程S1が実施される。第一洗浄工程S1では、主に、第1洗浄槽50に有機酸水溶液、例えばシュウ酸水溶液を注入することにより、放射性有機廃棄物と共に第1洗浄槽50に移送された鉄酸化物などのクラッドが溶解される。本実施例で実施される第一洗浄工程S1の詳細な内容を、以下に説明する。
【0123】
切換え弁62を操作して有機酸供給管60と液体供給管64を連通させ、移送ポンプ63を駆動する。有機酸槽52内のシュウ酸水溶液(シュウ酸濃度:約0.8mol/L)が、有機酸供給管60及び液体供給管64を通して、第1洗浄槽50に供給される。このとき、移送水供給管61と液体供給管64が連通していないので、移送水槽54A内の水は第1洗浄槽50に供給されない。第1洗浄槽50内におけるシュウ酸水溶液の液位が設定液位に達したとき、移送ポンプ63が停止され、第1洗浄槽50へのシュウ酸水溶液の供給が停止される。第1洗浄槽50内へのシュウ酸水溶液の供給量は、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物量に対して10倍とする。
【0124】
第1洗浄槽50の外面に設けられた加熱装置(図示せず)により、第1洗浄槽50内のシュウ酸水溶液は、例えば、60℃になるように加熱される。このシュウ酸水溶液の温度は、加熱装置による加熱量を調節して60℃に保持される。温度が60℃に保持された状態で、モータ59を駆動して撹拌翼58を回転させ、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物及びシュウ酸水溶液を撹拌する。放射性有機廃棄物は、第1洗浄槽50内で撹拌されながら、シュウ酸水溶液に例えば6時間浸漬される。第1洗浄槽50内において、放射性有機廃棄物に混在しているクラッドがシュウ酸によって溶解される。クラッドに含まれているコバルト60等の放射性核種は、クラッドの溶解により、シュウ酸水溶液中に移行する。クラッドの鉄成分が溶解すると鉄(II)イオンが生成され、この鉄(II)イオンがシュウ酸と反応してシュウ酸鉄が生成され、シュウ酸鉄が沈殿する恐れがある。シュウ酸鉄の生成を抑制するため、必要であれば、鉄(II)イオンを鉄(III)イオンに変える酸化剤(例えば、過酸化水素)を、第1洗浄槽50内に少量添加する。
実施例1と同様に、第一洗浄工程S1では、放射性有機廃棄物の一部であるイオン交換樹脂がシュウ酸に浸漬されるため、シュウ酸が解離して生じる水素イオン及びシュウ酸イオンが、それぞれ、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種とイオン交換されるため、一部の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種)がイオン交換樹脂から脱離される。
【0125】
第1洗浄槽50内での放射性有機廃棄物のシュウ酸水溶液への浸漬時間である6時間が経過したとき、第一洗浄工程S1が終了する。加熱装置による第1洗浄槽50の加熱及びモータ59をそれぞれ停止し、移送ポンプ76が駆動され、第1洗浄槽50内の放射性核種(α核種、及びα核種以外の放射性核種)を含むシュウ酸水溶液(以下、実施例1と同様に「第一放射性廃液」とする)が、洗浄廃液として、廃液移送管77を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に供給される。第1洗浄槽50内のシュウ酸水溶液の洗浄廃液処理槽への移送が終了したとき、移送ポンプ76が停止される。
【0126】
廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのシュウ酸水溶液の移送が終了した後、廃液分解工程S4が実施される。廃液分解工程S4では、オゾンが、オゾン供給装置80からオゾン供給管82を通して、所定時間、オゾン噴射管81に供給され、オゾン噴射管81の多数の噴射孔から、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内のシュウ酸水溶液中に噴射される。シュウ酸水溶液に含まれる有機成分であるシュウ酸が、噴射されたオゾンにより炭酸ガスと水に分解される。洗浄廃液処理槽内に噴射されたオゾンの残り、及び炭酸ガスが、ガス排気管83を通してオフガス処理装置(図示せず)に供給され、ガス排気管83に排出されたガスに含まれる放射性ガスがオフガス処理装置で取り除かれる。
オゾンの供給が停止された後、移送ポンプ43が駆動され、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に存在する、陽イオン交換樹脂から脱離されたα核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれを含む廃液、すなわち、第一放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。
【0127】
上述した廃液分解工程S4の後に、pH調整剤注入工程S5を行うために、配管45に、pH調整剤注入装置112からpH調整剤が注入される。
本実施例においても、配管45に注入されるpH調整剤としては、還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
還元剤及び酸としては、実施例1において挙げられた、各種の還元剤及び酸のいずれかが用いられる。
【0128】
本実施例では、実施例1と同様に、調節するpHに対応するpH調整剤が注入される。即ち、α核種を含む第一放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第一放射性廃液に酸(例えば、希硝酸)が注入される。一方、α核種を含む第一放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、pH調整剤として、第一放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)が注入される。
【0129】
本実施例では、α核種除去装置14に供給される、α核種を含む第一放射性廃液のpHを、例えば、設定pHである「8」にする。
このため、pH調整剤注入装置112において、弁41を開いて、還元剤槽17A内の還元剤水溶液、例えば、ヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(pH調整剤注入工程S5)。第一放射性廃液のpHが、ヒドラジンの注入により、4~11の範囲内の、例えば、8に調節され、そのヒドラジンを含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、α核種除去装置14に流入する第一放射性廃液のpHに基づいて弁41の開度を制御し、第一放射性廃液のpH、すなわち、pH計49Aで測定されたpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前において、第一放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第一放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第一放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第一放射性廃液に含まれる、価数が「3~5」である各α核種の価数が「3」に調節される。第一放射性廃液に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、α核種除去装置14において、フェライト粒子に吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第一放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
【0130】
pH調整剤注入工程S5で、還元剤であるヒドラジンが注入されているので、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になり、α核種除去装置14内に注入されたフェライトでα核種、コロイド性の物質及び固形分が除去された第一放射性廃液が、配管46に排出されて分解装置107に導かれる。この第一放射性廃液に含まれるヒドラジンが、実施例1における第一放射性廃液に含まれるヒドラジンと同様に、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第一放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
【0131】
なお、第一放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合には、実施例1における第一放射性廃液と同様に、pH調整剤注入工程S5において、酸である希硝酸水溶液がpH調整剤注入装置112から第一放射性廃液に注入される。注入された希硝酸を含む第一放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。希硝酸水溶液の注入によりpHが6に調節された第一放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内に注入されたフェライトに吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
【0132】
pH調整剤注入工程S5において、希硝酸水溶液が第一放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「No」になり、α核種除去装置14から排出された、希硝酸を含む第一放射性廃液は、薬液タンク109から過酸化水素が供給されない分解装置107をそのまま通過して、処理水回収タンク18に導かれる。
【0133】
実施例1と同様に、処理水回収タンク18内の第一放射性廃液(ヒドラジンが分解された第一放射性廃液、もしくは、希硝酸を含む第一放射性廃液)は、乾燥粉体化装置20で紛体化される(減容工程S10)。乾燥粉体化装置20で生成された紛体は、固化設備21で、固化容器内に充填され、固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
【0134】
第1洗浄槽50内のシュウ酸水溶液の、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽への排出が終了した後、切換え弁62を操作して、移送水供給管61と液体供給管64を連通させ、移送ポンプ63を駆動し、移送水槽54A内の水が、移送水として、移送水供給管61及び液体供給管64を通して第1洗浄槽50に供給される。このとき、有機酸供給管60と液体供給管64が連通していないので、有機酸槽52内のシュウ酸水溶液が第1洗浄槽50に供給されない。移送水槽54Aから第1洗浄槽50に所定量の水が供給されて第1洗浄槽50内の水位が設定水位に達したとき、移送ポンプ63を停止し、第1洗浄槽50への水の供給を停止する。
モータ59を駆動して撹拌翼58を回転させ、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物及び水を撹拌し、放射性有機廃棄物をスラリー状態にする。移送ポンプ65を駆動し、第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物のスラリーを、有機廃棄物移送管66を通して第2洗浄槽51に供給する。
第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物スラリーの移送に伴い、第1洗浄槽50内の水量が減少して第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物が困難になった場合には、移送ポンプ63を駆動し、移送水槽54A内の水を第1洗浄槽50内に供給する。
第1洗浄槽50内の放射性有機廃棄物の第2洗浄槽51への移送が完了したとき、移送ポンプ65が停止されて、移送ポンプ78が駆動される。
第2洗浄槽51内の水が、第三放射性廃液として、廃液移送管79を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に排出される。
【0135】
第2洗浄槽51から廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽に排出された第三放射性廃液は、α核種除去装置14を通過し、処理水回収タンク18に導かれる。第2洗浄槽51から排出された第三放射性廃液は、α核種を含んでおらず、α核種以外の放射性核種を含んでいる。このため、pH調整剤注入工程S5におけるpH調整剤注入装置112から配管45へのpH調整剤水溶液(ヒドラジン水溶液または希硝酸水溶液)の注入が行われず、この第三放射性廃液がα核種除去装置14を通過する際に、α核種除去装置14内のフェライトは、α核種、及びα核種以外の放射性核種を吸着することはない。また、還元剤の分解工程S9における還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解も行われない。
処理水回収タンク18内の第三放射性廃液は、乾燥粉体化装置20で紛体化され(減容工程S10)、生成された紛体は固化設備21に移送されて固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。この固化容器は、密封後に、保管場所で保管される。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
【0136】
移送ポンプ78が停止され、第2洗浄槽51から廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽への水の排出が終了したとき、第二洗浄工程S2(有機酸塩処理工程)が実施される。第二洗浄工程S2では、有機酸塩を用いて、イオン交換樹脂(例えば、陽イオン交換樹脂)に吸着されている放射性核種がより効率的に溶離される。
有機酸塩槽53内には、有機酸塩であるギ酸アンモニウムの水溶液が充填されており、このギ酸アンモニウム水溶液のギ酸アンモニウムの濃度は、例えば1.2mol/Lである。ギ酸アンモニウムは、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩である。第二洗浄工程S2では、以下の事項が実施される。
切換え弁71を操作して有機酸塩供給管69と液体供給管73を連通させ、移送ポンプ72を駆動する。有機酸塩槽53内のギ酸アンモニウム水溶液が、有機酸塩供給管69及び液体供給管73を通して第2洗浄槽51に供給される。このとき、移送水供給管70と液体供給管73が連通していないので、移送水槽54B内の水は第2洗浄槽51に供給されない。第2洗浄槽51内におけるギ酸アンモニウム水溶液の液位が設定液位に達したとき、移送ポンプ72が停止され、第2洗浄槽51へのギ酸アンモニウム水溶液の供給が停止される。
【0137】
第2洗浄槽51の外面に設けられた加熱装置(図示せず)により、第2洗浄槽51内のギ酸アンモニウム水溶液は、例えば、60℃になるように加熱される。このギ酸アンモニウム水溶液の温度は、加熱装置による加熱量を調節して60℃に保持される。温度が60℃に保持された状態で、モータ68を駆動して撹拌翼67を回転させ、第2洗浄槽51内の放射性有機廃棄物及びギ酸アンモニウム水溶液を撹拌して混合する。放射性有機廃棄物は、第2洗浄槽51内で撹拌されながら、ギ酸アンモニウム水溶液に、例えば、2時間浸漬される。第2洗浄槽51内において、放射性有機廃棄物である陽イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種のイオンが、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい、ギ酸アンモニウム水溶液中に存在するアンモニウムイオンと置換され、ギ酸アンモニウム水溶液に効率的に脱離される。このため、陽イオン交換樹脂に吸着されている放射性核種の量が著しく減少する。
第2洗浄槽51内での放射性有機廃棄物のギ酸アンモニウム水溶液への浸漬時間である2時間が経過したとき、第二洗浄工程S2が終了する。加熱装置による第2洗浄槽51の加熱及びモータ68をそれぞれ停止した後、移送ポンプ78を駆動し、第2洗浄槽51内の放射性核種を含むギ酸アンモニウム水溶液(以下、「第二放射性廃液」とする)を、洗浄廃液として、廃液移送管79を通して廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に供給する。第2洗浄槽51内のギ酸アンモニウム水溶液の廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽への移送が終了したとき、移送ポンプ78が停止される。
【0138】
廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのギ酸アンモニウム水溶液の移送が終了した後、廃液分解工程S4が実施される。この廃液分解工程S4では、オゾンが、オゾン供給装置80により、所定時間の間、オゾン噴射管81に供給され、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内のギ酸アンモニウム水溶液中に噴射される。ギ酸アンモニウム水溶液に含まれる有機成分であるギ酸アンモニウムが、オゾンにより分解される。ギ酸アンモニウムはオゾンと反応して窒素ガス、炭酸ガス及び水に分解される。これらのガスは、ガス排気管83を通して前述のオフガス処理装置(図示せず)に供給される。
オゾンの供給が停止され、第二洗浄工程S2の後で実施された廃液分解工程S4が終了した後、移送ポンプ43が駆動され、廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽内に存在する、脱離されたα核種、及びα核種以外の放射性核種のそれぞれを含む廃液、すなわち、第二放射性廃液が、配管45を通してα核種除去装置14に供給される。
【0139】
α核種を含む第二放射性廃液がα核種除去装置14に供給されるので、弁41を開いて、還元剤槽17A内のヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して配管45内に注入する(還元剤注入工程S5)。第二放射性廃液のpHが、ヒドラジンの注入により、4~11の範囲内の、例えば、8に調節され、そのヒドラジンを含む第二放射性廃液は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、α核種除去装置14に流入する第二放射性廃液のpHに基づいて弁41の開度を制御し、第二放射性廃液のpHが8の範囲内になるように、還元剤槽17Aから配管45へのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。α核種除去装置14に流入する前において、第二放射性廃液のpHは、例えば、6になっている。
第二放射性廃液がヒドラジンを含み、このヒドラジンにより第二放射性廃液のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、第二放射性廃液に含まれる、価数が「3~5」である各α核種の価数が「3」に調節される。第二放射性廃液に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、α核種除去装置14において、フェライト粒子に吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。第二放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
【0140】
pH調整剤注入工程S5で、還元剤であるヒドラジンが注入されているので、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になり、フェライトでα核種、コロイド性の物質及び固形分が除去された第二放射性廃液が、配管46に排出されて分解装置107に導かれ、この第二放射性廃液に含まれるヒドラジンが、第一放射性廃液に含まれるヒドラジンと同様に、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。
分解装置107から排出された、α核種及びヒドラジンを含んでいない第二放射性廃液は、配管46を通して処理水回収タンク18に導かれる。
【0141】
なお、第二放射性廃液のpHを、例えば、6にする場合には、本実施例における前述の第一放射性廃液と同様に、α核種除去装置14の上流で、酸である希硝酸水溶液がpH調整剤注入装置112から第二放射性廃液に注入される。希硝酸を含みpHが6の第二放射性廃液に含まれるα核種は、α核種除去装置14内のフェライトに吸着されて除去される(α核種除去工程S6)。
【0142】
pH調整剤注入工程S5において、希硝酸水溶液が第二放射性廃液に注入された場合には、pH調整剤判定工程S8の判定が「No」になり、α核種除去装置14から排出された、希硝酸を含む第二放射性廃液は、薬液タンク109から過酸化水素が供給されない分解装置107をそのまま通過して、処理水回収タンク18に導かれる。
【0143】
処理水回収タンク18内の第二放射性廃液(ヒドラジンが分解された第二放射性廃液、もしくは、希硝酸を含む第二放射性廃液)は、乾燥粉体化装置20で紛体化される(減容工程S10)。乾燥粉体化装置20で生成された紛体は、固化設備21で、固化容器内に充填され、固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。保管されるこの固化容器内には、超半減期のα核種が存在していない。
【0144】
第2洗浄槽51から廃液分解装置13の洗浄廃液処理槽へのギ酸アンモニウム水溶液の移送が終了した後、切換え弁71の操作によって移送水供給管70と液体供給管73が連通し、移送ポンプ72の駆動により移送水槽54B内の水が第2洗浄槽51に供給される。所定量の水が第2洗浄槽51に供給された後、移送ポンプ72が停止され、移送水槽54Bから第2洗浄槽51への水の供給が停止される。撹拌翼67が回転され、第2洗浄槽51内で、残留した放射性有機廃棄物と供給された水が撹拌されて放射性有機廃棄物を含むスラリーが生成される。移送ポンプ74が駆動され、第2洗浄槽51内の放射性有機廃棄物を含むスラリーが有機廃棄物移送管75に排出される。有機廃棄物移送管75に排出された放射性有機廃棄物は、実質的にクラッドを含まず、陽イオン交換樹脂に吸着された放射性核種イオンも更に低減されているため、放射性有機廃棄物の放射線量率は著しく低減されている。
【0145】
有機廃棄物移送管75に排出された放射性有機廃棄物は、第二受入タンク11に導かれる。
第二受入タンク11から取り出された放射性有機廃棄物は、所定量、焼却設備12に移送され、焼却設備12で焼却される。焼却により生成された灰は、固化容器内でセメント等の固化剤により固化される。この固化体は、超半減期のα核種を含んでいないため、低レベル放射性廃棄物になる。
【0146】
本実施例の第一洗浄工程S1では、シュウ酸の代わりに、ギ酸、酢酸またはクエン酸を用いてもよく、第二洗浄工程S2では、ギ酸アンモニウムの替りに、シュウ酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩、あるいはギ酸のバリウム塩またはセシウム塩を用いてもよい。これらの有機酸塩は、水素よりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩である。
【0147】
本実施例は、実施例1で生じる各効果のうち、第一洗浄工程S1及び第二洗浄工程S2を一つの洗浄槽内で実施することによって生じる効果を除いた、残りの各効果を得ることができる。
【0148】
(実施例3)
本発明の好適な他の実施例である、核燃料再処理に適用される実施例3の放射性廃液の処理方法を、図8及び図9を参照して説明する。
【0149】
沸騰水型原子力プラント及び加圧水型原子力プラント等の原子力プラントの原子炉から取り出された使用済燃料集合体に含まれている使用済核燃料に対して、核燃料再処理が実施され、その使用済核燃料物質からウラン及びプルトニウムが回収される。回収されたウラン及びプルトニウムは、新たな燃料集合体の製造に使用され、製造されたこの新たな燃料集合体は、原子力プラントの炉心に装荷される。その核燃料再処理では、ウラン及びプルトニウムの回収に伴って、回収されずに残った微量のウラン及びプルトニウム、及びネプツニウム及びキュリウム等のα核種を含む放射性廃液が発生する。この放射性廃液は、硝酸水溶液である。
【0150】
本実施例の放射性廃液の処理方法は、実施例1及び実施例2で述べた、還元剤の注入、及びα核種除去装置によるα核種の除去を、核燃料再処理で発生する放射性廃液の処理に適用したものである。
【0151】
実施例3の放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートを、図8に示す。なお、図8において、図1に示した工程と同様の工程には、同一の符号を付している。
【0152】
本実施例では、まず、図8に示す脱被覆工程S21において、原子炉の炉心から取り出された使用済燃料集合体に含まれる複数本の燃料棒から被覆管が取り除かれる。これによって、被覆管内に存在しているペレット状の核燃料物質85が取り出される。この核燃料物質85には、ウラン、プルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等のα核種が含まれている。
炉心に最初に装荷された燃料集合体に含まれる燃料棒内には、核燃料物質として、ペレット状の二酸化ウランが存在する。原子力プラントの運転によって、その核燃料物質に含まれる核分裂性物質(例えば、ウラン235)の核分裂によって、核燃料物質内に、核分裂生成物であるプルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等のα核種が生成される。
【0153】
脱被覆工程S21の後に実施される核燃料粉末化工S22において、ペレット状の核燃料物質85が、酸化物の粉末に転換されて、粉末化された核燃料物質86となる。その粉末化された核燃料物質86は、フッ化工程S23に送られる。
【0154】
このフッ化工程S23では、フッ素(またはフッ素化合物)を粉末化された核燃料物質86に接触させ、核燃料物質86に含まれるウランの一部を、六フッ化ウラン(UF6)87に転換させて揮発させる。その六フッ化ウラン87は、UF6精製工程S24に送られる。
六フッ化ウラン87は、UF6精製工程S24において、蒸留法または吸着法により精製されて不純物が除去される。六フッ化ウラン87の精製によって、ウラン燃料88が生成される。
【0155】
フッ化工程S23で揮発しなかった残りの核燃料物質89には、揮発しなかったウラン、プルトニウム、ネプツニウム及びキュリウム等のα核種が存在する。残渣である核燃料物質89は、溶解工程S25において、硝酸溶液によって溶解される。
そして、核燃料物質の溶解液(硝酸を含む)90を、共除染工程S26において、リン酸トリブチル(TBP)を含む有機相と接触させる。溶解液90に含まれるウラン及びプルトニウムが、その有機相に移行され、核分裂生成物のうち、プルトニウムを除くネプツニウム及びキュリウム等のα核種はその有機相に移行しない。
【0156】
ウラン及びプルトニウムを含む有機相91に対して、逆抽出工程S27が実施される。この逆抽出工程S27では、薄いシュウ酸水溶液を、ウラン及びプルトニウムを含む有機相91に接触させる。有機相91に含まれるウラン及びプルトニウムが、そのシュウ酸水溶液中に移行する。ウラン及びプルトニウムを含む薄いシュウ酸水溶液92が、精製工程S28に送られる。
【0157】
精製工程S28では、TBPを含む有機相を用いた抽出と、薄い硝酸水溶液を用いた逆抽出が、ウラン及びプルトニウムの精製度が所定の値になるまで繰り返される。
所定の精度になったウラン及びプルトニウムは、脱硝・焙焼還元工程(図示せず)に送られ、ウランとプルトニウム混合酸化物に転換される。この混合酸化物を用いて混合酸化物燃料(MOX燃料)93が生成される。
以上に述べたS21~S28の8つの工程は、核燃料再処理に関する工程である。
【0158】
共除染工程S26で発生した、残留する微量のウラン及びプルトニウム、及びネプツニウム及びキュリウム等のα核種を含む硝酸溶液である放射性廃液94に対して、pH調整剤注入工程S5が実施される。共除染工程S26で発生した、硝酸を含む放射性廃液94のpHは約1(強酸)である。放射性廃液94は溶解液90と比べてウラン及びプルトニウムのそれぞれの濃度が低下しているが、放射性廃液94に含まれている成分は溶解液90に含まれている成分と同じである。
【0159】
実施例3に用いられるα核種除去装置の詳細構成図を、図9に示す。
なお、図9に示す構成以外の構成は、図2に示した実施例1の構成や図7に示した実施例2の構成と、同様の構成とすることができる。
放射性廃液94は、図9に示された、本実施例の放射性廃液の処理方法に用いられる放射性廃液処理システムの配管45Aに供給される。
【0160】
ここで、本実施例に用いられる放射性廃液処理システムの構成について、図9を参照して説明する。
この放射性廃液処理システムは、pH調整剤注入装置112A及び吸着材注入装置121A、α核種除去装置14を有する。
pH調整剤注入装置112Aは、還元剤注入装置17及び中和液注入装置99を有する。還元剤注入装置17は、実施例1で用いられる還元剤注入装置17と同じ構成である。中和液注入装置99は、中和液槽100、及び弁101が設けられた中和液注入配管102を有する。
中和液槽100には、中和剤水溶液、例えば、中和剤である水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液が充填される。中和液注入配管102が中和液槽100に接続される。中和液注入装置99の中和液注入配管102が、還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点よりも上流側で配管45Aに接続される。
なお、本実施例では、pH調整剤として還元剤及び中和剤が用いられる。
【0161】
本実施例では、放射性廃液94に含まれる硝酸を中和させる必要があるため、上述した中和剤は、アルカリ性の物質である。
本実施例において、中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、またはアルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれかの水酸化物を用いる。
【0162】
本実施例で用いられる中和剤は、pH調整剤の一種であり、放射性廃液94のpHを中性である「7」に調節するだけでなく、放射性廃液94のpHを4以上7未満に調節するためにも使用される。中和液槽100に充填される中和剤水溶液は、pH調整剤である中和剤を含む、一種のpH調整剤水溶液である。
pH計49Cが、中和液注入装置99の中和液注入配管102の配管45Aの接続点と還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点の間で、配管45Aに取り付けられる。pH計49Aが、注入配管42と配管45Aの接続点とα核種除去装置14の間で、配管45Aに取り付けられる。配管45Aは、α核種除去装置14に連絡される。
【0163】
本実施例では、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の4~7(4以上7以下)の範囲内のpHに調節するときには、放射性廃液に中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)を注入する。
一方、α核種を含む放射性廃液のpHを4以上11以下の範囲内の7より大きく11以下の範囲内のpHに調節するときには、まず、放射性廃液に中和剤を注入して放射性廃液のpHを7にし、その後、放射性廃液に還元剤(例えば、ヒドラジン)を注入する。
【0164】
本実施例の放射性廃液の処理方法では、pHが約1である放射性廃液94のpHを、4以上11以下の範囲内の、例えば、8に調節することを想定する。
まず、弁101を開いて中和液槽100内の水酸化ナトリウム水溶液を、配管45A内を流れる、硝酸を含む放射性廃液94に注入し、放射性廃液94のpHを4以上7以下の範囲内の「7」に調節する(pH調整剤注入工程S5)。
pH計49Cは、中和液注入装置99の中和液注入配管102の配管45Aの接続点と還元剤注入装置17の注入配管42と配管45Aの接続点の間において配管45A内を流れる、水酸化ナトリウム水溶液が注入された放射性廃液94(水酸化ナトリウムを含みヒドラジンを含んでいない放射性廃液94)のpHを測定する。pH計49Cの測定値がpHの設定値、例えば、「7」になるように、弁101の開度を制御し、配管45A内を流れる放射性廃液94への水酸化ナトリウム水溶液の注入量を調節する。
【0165】
その後、弁41を開いて、還元剤槽17A内のヒドラジン水溶液を、注入配管42を通して、pHが7に調節された放射性廃液94が流れる配管45A内に、注入される(pH調整剤注入工程S5)。
放射性廃液94のpHが、水酸化ナトリウム及びヒドラジンの注入により、4~11の範囲内の、例えば、8に調節され、水酸化ナトリウム及びヒドラジンを含む放射性廃液94は、α核種除去装置14に流入する。pH計49Aで測定された、α核種除去装置14に流入する水酸化ナトリウム及びヒドラジンを含む放射性廃液94のpHに基づいて弁41の開度を制御し、その放射性廃液94のpHが8になるように、還元剤槽17Aから配管45Aへのヒドラジン水溶液の供給量を調節する。
【0166】
pHが約1である放射性廃液94のpHを、ヒドラジンの注入だけで8に調節するためには、多量のヒドラジンが必要となり、放射性廃液94の量が著しく増加し、固化体の発生個数も非常に多くなる。しかしながら、本実施例のように、中和剤である水酸化ナトリウムの注入により放射性廃液94のpHを約1から7に増加させ、その後、ヒドラジンの注入により放射性廃液94のpHを8に増加させた場合には、水酸化ナトリウムの注入量が少なくて済み、ヒドラジンの注入量も著しく低減できる。
前述のように水酸化ナトリウム及びヒドラジンの注入により放射性廃液94のpHを約1から8に増加させた場合は、放射性廃液94のpHをヒドラジンの注入だけで約1から8に増加させた場合に比べて固化体の発生個数が著しく低減できる。
【0167】
放射性廃液94が水酸化ナトリウム及びヒドラジンを含み、水酸化ナトリウム及びヒドラジンにより放射性廃液94のpHが4~11の範囲内の、例えば、8に調節されるため、放射性廃液94に含まれる、価数が「3~5」である各α核種の価数が「3」に調節される。放射性廃液94に含まれる、価数が「3」になった各α核種が、α核種除去装置14において、フェライト粒子に吸着されて除去される(α核種の除去工程S6)。放射性廃液94に含まれるコロイド性の物質及び固形分も、フェライトのフィルタ効果によって除去される。
【0168】
水酸化ナトリウムと共にヒドラジンが放射性廃液94に含まれているため、pH調整剤判定工程S8における「pH調整剤が還元剤であるか」の判定が「YES」になる。本実施例における「pH調整剤が還元剤であるか」の判定は、実質的に、「pH調整剤として還元剤が含まれているか」の判定になる。放射性廃液94にヒドラジンが含まれているため、pH調整剤判定工程S8の判定が「YES」になるのである。
α核種除去装置14から配管46に排出された放射性廃液94に含まれるヒドラジンは、前述の実施例1及び実施例2で述べたように、分解装置107内で分解される(還元剤の分解工程S9)。そして、α核種及びヒドラジンが含まれていない放射性廃液94が、配管46により廃液回収タンク(図示せず)に導かれる。
α核種が除去された放射性廃液94の放射線量率は、著しく低下する。
【0169】
廃液回収タンク内の放射性廃液94は、乾燥粉体化装置で紛体化される(減容工程S10)。
乾燥粉体化装置で生成された紛体は、固化設備で、固化容器内に充填され、固化容器内で固化される(容器充填または固化工程S11)。
【0170】
なお、pHが約1である放射性廃液94のpHを、4以上11以下の範囲内の、例えば、6に調節する場合には、pH計49Cの測定値がpHの設定値である「6」になるように、弁101の開度を制御し、配管45A内を流れる放射性廃液94への水酸化ナトリウム水溶液の注入量を調節する。このとき、pHが6である放射性廃液94には、還元剤注入装置17によるヒドラジン水溶液の注入が行われない。
また、ヒドラジン水溶液が注入されないため、分解装置107内でのヒドラジンの分解(還元剤の分解工程S9)が実施されない。α核種除去装置14から排出された、pHが6で水酸化ナトリウムを含む放射性廃液94は、そのまま、分解装置107を通過し、乾燥粉体化装置で紛体化される(減容工程S10)。
【0171】
本実施例によれば、硝酸及びα核種を含む放射性廃液に、還元剤、例えば、ヒドラジンを注入して放射性廃液のpHを調節するため、放射性廃液に含まれる超半減期のα核種がα核種除去装置14によって除去されやすくなり、α核種除去装置14から流出する放射性廃液に含まれるα核種が著しく低減される。この結果、α核種除去装置14から流出する放射性廃液の放射線線量が著しく低減され、超半減期のα核種を含む放射性廃棄物(例えば、固化体)の発生量を低減できる。
特に、還元剤の注入により、α核種を含む放射性廃液のpHが4~11の範囲内の値に調節されることによって、α核種除去装置14はα核種を効率良く除去することができる。
【0172】
(変形例)
以下、上述した実施例に対する変形例を説明する。
【0173】
実施例1では、α核種吸着材として、フェライトを使用した場合を説明した。
α核種吸着材としては、フェライトの他に、前述した活性炭や、α核種を吸着できるその他の吸着材を使用することができる。
【0174】
実施例1では、吸着材注入装置121から、α核種を吸着するα核種吸着材を、α核種除去装置14に注入していた。
さらに、α核種以外の放射性核種を吸着する、他の吸着材を使用して、他の吸着材をα核種除去装置14に注入することも可能である。このような他の吸着材としては、例えば、イオン交換樹脂、キレート樹脂、活性炭、オキシン添着活性炭、ゼオライト、チタン酸、フェロシアン化物、等が挙げられる。
他の吸着材を使用する場合、他の吸着材をα核種吸着材と同じ吸着材注入装置121から注入する構成、他の吸着材用にα核種吸着材の吸着材注入装置121とは別の注入装置を設けて、別の注入装置から他の吸着材をα核種除去装置14に注入する構成、のいずれの構成とすることも可能である。別の注入装置を設けた場合には、α核種吸着材と他の吸着材とで、注入する時期を異ならせることが可能になる。
他の吸着材を使用する場合も、吸着材分離装置131において、他の吸着材を放射性廃液から分離することが可能である。
【0175】
実施例1の説明では、第三放射性廃液に含まれるコロイド性の物質及び固形分を、フェライトのフィルタ効果で除去していた。すなわち、α核種を含んでいない第三放射性廃液に対しても、α核種吸着材であるフェライトを注入していた。
これに対して、第三放射性廃液にはα核種を含んでいないので、第三放射性廃液にはα核種吸着材を注入しないことも可能である。
なお、第三放射性廃液にはα核種以外の放射性核種を含んでいるため、上述した他の吸着材を使用する場合、第三放射性廃液にも他の吸着材を注入する。そして、例えば上述した別の注入装置を設けた場合には、第三放射性廃液に他の吸着材のみを注入することが可能になる。
【0176】
実施例1では、吸着材分離装置131において、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式を採用する場合を説明していた。
吸着材分離装置131の構成は、孔を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式に限定されず、その他の構成も採用することが可能である。例えば、デッドエンドフィルタ方式を採用することも可能である。
また、例えば、前述した他の吸着材を使用する場合に、クロスフローフィルタ方式の吸着材分離装置を2つ直列に接続した構成にして、一方の吸着材分離装置で他の吸着材を分離し、他方の吸着材分離装置でα核種吸着材を分離することも、可能である。
【0177】
また、吸着材分離装置においてデッドエンドフィルタ方式を採用した場合には、フィルタにより、吸着材(α核種吸着材、他の吸着材)が全て分離される。
これに対して、吸着材分離装置においてクロスフローフィルタ方式を採用した場合には、条件(吸着材の粒径、放射性廃液の流速や水圧、フィルタにおける差圧、等)によって、吸着材がろ過材(膜等)から離れて、ろ過後の濃縮水に流れることがある。例えば、一部の吸着材がろ過材から濃縮水に流れ、ろ過材に残る吸着材と別れることがある。
従って、放射性廃液の処理システム及び処理方法は、上記の各実施例のような吸着材分離装置において吸着材が放射性廃液から分離される構成には限定されず、吸着材を含む放射性廃液が、ろ過により濃縮され、濃縮水にも吸着材が流れる構成も含む。
吸着材が濃縮水に流れる場合には、吸着材を含む濃縮水から、水分を蒸発させて減容及び固化させる。例えば図2の放射性廃液処理システム1において、吸着材分離装置131から、吸着材を含む濃縮水が配管46へ流れる場合には、乾燥粉体化装置20において濃縮水から水分を蒸発させて、固化設備21で固化する。
また、各実施例のように吸着材分離装置131を設けて、ろ液を化学洗浄部10で再利用する構成とする代わりに、吸着材分離装置等のろ過装置は設けないで、吸着材を含む放射性廃液を乾燥して固化させる構成とすることも可能である。
【0178】
なお、本発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0179】
S1…第一洗浄工程、S2…第二洗浄工程、S4…廃液分解工程、S5…pH調整剤注入工程、S6…α核種除去工程、S7…吸着材分離工程、1,1A…放射性廃液処理システム、4…化学反応槽、7,52…有機酸槽、8,53…有機酸塩槽、9,54A,54B…移送水槽、10,10A…化学洗浄部、12…焼却設備、13…廃液分解装置、14…α核種除去装置、17…還元剤注入装置、17A…還元剤槽、19,19A…廃液処理部、20…乾燥粉体化装置、21…固化設備、49A,49C…pH計、49B…磁化率測定装置、50…第1洗浄槽、51…第2洗浄槽、80…オゾン供給装置、81…オゾン噴射管、99…中和液注入装置、100…中和液槽、112,112A…pH調整剤注入装置、121,121A…吸着材注入装置、131…吸着材分離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9