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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】水冷エンジン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/24 20060101AFI20221117BHJP
   F01P 5/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F04D29/24 C
F01P5/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116558
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001590
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽
(72)【発明者】
【氏名】秋朝 智也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 博紀
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 綾子
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-040210(JP,A)
【文献】特開2016-114004(JP,A)
【文献】特開2013-060829(JP,A)
【文献】実開平04-047197(JP,U)
【文献】特開2003-120586(JP,A)
【文献】特開2016-200104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/24
F01P 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ポンプ(1)と、燃焼室(2)周りの冷却水ジャケット(3)を備え、水ポンプ(1)と冷却水ジャケット(3)の相互間でエンジン冷却水(4)が循環するように構成され、
水ポンプ(1)は、ポンプハウジング(5)と、ポンプハウジング(5)内に挿入された回転軸(6)と、ポンプハウジング(5)内で回転軸(6)に取り付けられたインペラ(7)を備え、
インペラ(7)は、回転軸(6)に直交する姿勢で取り付けられたベースプレート(8)と、ベースプレート(8)に設けられた羽根(9)を備え、インペラ(7)がクランク軸(10)で駆動され、エンジン冷却水(4)が羽根(9)でインペラ(7)の遠心方向に圧送されるように構成され、
羽根(9)は、羽根(9)の肉厚方向にエンジン冷却水(4)を通過させる絞り孔(9a)を備え、
羽根(9)は、ベースプレート(8)のプレート外周縁に沿ってその周方向に所定間隔を保持して複数設けられ、各羽根(9)はプレート外周縁から回転軸(6)の軸長方向に沿う向きに折り曲げられ、隣り合う羽根(9)(9)間のプレート外周縁部に回転軸(6)側に窪む凹部(11)が設けられ、
ポンプハウジング(5)は、フロントハウジング(5a)と、このフロントハウジング(5a)を後側から覆うリアハウジング(5b)を備え、フロントハウジング(5a)は、軸受けボス(5c)を備え、軸受けボス(5c)に軸受け(27)が収容され、軸受け(27)に軸受けされた回転軸(6)が軸受けボス(5c)を貫通し、
フロントハウジング(5a)の表面と軸受けボス(5c)の周面の隅角部(5h)に沿って隆起する放熱フィン(5g)を備え、放熱フィン(5g)は、軸受けボス(5c)の周面からフロントハウジング(5a)の表面に沿って、放射状に複数形成されている、ことを特徴とする水冷エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載された水冷エンジンにおいて、
インペラ(7)の表面に撥水皮膜が形成されている、ことを特徴とする水冷エンジン。
【請求項3】
請求項1に記載された水冷エンジンにおいて、
インペラ(7)の表面が低摩擦面とされ、低摩擦面がガラスコートまたは金属の鏡面仕上げ面で形成されている、ことを特徴とする水冷エンジン。
【請求項4】
請求項1に記載された水冷エンジンにおいて、
インペラ(7)の表面に低摩擦皮膜(33)が形成され、低摩擦皮膜(33)は、固体潤滑剤を含む樹脂、フッ素樹脂、ダイヤモンドライクカーボン、二硫化モリブデン、グラファイト、リン酸マンガン塩、クロムから選択される素材の皮膜のいずれかで形成されている、ことを特徴とする水冷エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷エンジンに関し、詳しくは、エンジン低回転時の馬力ロスを少なくできると共に、低回転高負荷時に高出力が得られる水冷エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水ポンプと、燃焼室周りの冷却水ジャケットを備え、水ポンプと冷却水ジャケットの相互間でエンジン冷却水が循環するように構成され、水ポンプは、ポンプハウジングと、ポンプハウジング内に挿入された回転軸と、ポンプハウジング内で回転軸に取り付けられたインペラを備えた水冷エンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-40219号公報(第1図~第3図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点1》エンジン低回転時の馬力ロスが多くなるおそれがある。
特許文献1のエンジンでは、インペラの羽根が回転軸と平行な起立姿勢でベースプレートに固定されている。このエンジンでは、エンジン低回転時に、起立姿勢の羽根にエンジン冷却水の大きな圧送抵抗がかかり、馬力ロスが多くなるおそれがある。
【0005】
《問題点2》低回転高負荷時に高出力が得られないおそれがある。
特許文献1のエンジンでは、ピストンの遅い昇降速度で、燃焼室からの放熱時間が長くなる低回転高負荷時に、冷却水ジャケットに圧送された多くの冷却水で圧送され、燃焼室からの放熱が過剰になり、不安定な燃焼で、高出力が得られないおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、エンジン低回転時の馬力ロスを少なくできると共に、低回転高負荷時に高出力が得られる水冷エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図2に例示するように、水ポンプ(1)と、燃焼室(2)周りの冷却水ジャケット(3)を備え、水ポンプ(1)と冷却水ジャケット(3)の相互間でエンジン冷却水(4)が循環するように構成され、
水ポンプ(1)は、ポンプハウジング(5)と、ポンプハウジング(5)内に挿入された回転軸(6)と、ポンプハウジング(5)内で回転軸(6)に取り付けられたインペラ(7)を備え、
図1(B)(C)に例示するように、羽根(9)は、羽根(9)の肉厚方向にエンジン冷却水(4)を通過させる絞り孔(9a)を備え、
図1(A)(B)に例示するように、羽根(9)は、ベースプレート(8)のプレート外周縁に沿ってその周方向に所定間隔を保持して複数設けられ、各羽根(9)はプレート外周縁から回転軸(6)の軸長方向に沿う向きに折り曲げられ、隣り合う羽根(9)(9)間のプレート外周縁部に回転軸(6)側に窪む凹部(11)が設けられ、
図2に例示するように、ポンプハウジング(5)は、フロントハウジング(5a)と、このフロントハウジング(5a)を後側から覆うリアハウジング(5b)を備え、フロントハウジング(5a)は、軸受けボス(5c)を備え、軸受けボス(5c)に軸受け(27)が収容され、軸受け(27)に回転軸(6)が軸受けされ、
図4(A)(B)に例示するように、フロントハウジング(5a)の表面と軸受けボス(5c)の周面の隅角部(5h)に沿って隆起する放熱フィン(5g)を備え、放熱フィン(5g)は、軸受けボス(5c)の周面からフロントハウジング(5a)の表面に沿って、放射状に複数形成されている、ことを特徴とする水冷エンジン。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果1》エンジン低回転時の馬力ロスを少なくできる。
このエンジンでは、エンジン低回転時には、図1(B)(C)に例示するエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)を低速で通過し、通過した水流に乱流が生じ難いため、水流が絞り孔(9a)をすり抜け易く、羽根(9)の圧送抵抗が小さくなり、馬力ロスを少なくできる。
【0009】
《効果2》低回転高負荷時に高出力が得られる。
このエンジンでは、低回転高負荷時には、図1(B)に例示するエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)をすり抜け易く、図2に例示する冷却水ジャケット(3)へのエンジン冷却水(4)の圧送量が少なくなるため、遅いピストン(14)の昇降速度で、燃焼室(2)からの放熱時間が長くなる低回転高負荷時でも、燃焼室(2)からの放熱量が減少し、安定な燃焼で、高出力が得られる。
【0010】
《効果3》エンジン高回転時には適正な冷却性能が得られる。
このエンジンでは、発熱量が増加するエンジン高回転時には、図1(B)(C)に例示するエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)を高速で通過し、通過した水流に乱流が生じ易いため、水流が絞り孔(9a)をすり抜け難く、図2に例示する冷却水ジャケット(3)へのエンジン冷却水(4)の圧送量が増え、適正なエンジン冷却性能が得られる。
《効果4》ポンプ騒音が低下する。
このエンジンでは、図4(A)に例示するフロントハウジング(5a)の剛性が複数の放熱フィン(5g)で高まり、振動が低減され、ポンプ騒音が低下する。
《効果5》漏れたエンジン冷却水(4)による水ポンプ(1)周辺部の集中的な汚染を避けることができる。
このエンジンでは、図2図4(A)に例示する軸受けボス(5c)から漏れたエンジン冷却水(4)が図4(A)に例示する複数の放熱フィン(5g)の案内で、放射状に分散され、漏れたエンジン冷却水(4)による水ポンプ(1)周辺部の集中的な汚染を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る水冷エンジンに用いるインペラを説明する図で、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)のB-B線断面、図1(C)は図1(B)のC方向矢視図である。
図2】本発明の実施形態に係る水冷エンジンの要部の側面の立断面図である。
図3図2の水冷エンジンの側面の立断面図である。
図4図2の水冷エンジンに用いるポンプハウジングとインペラを説明する図で、図4(A)はフロントハウジングの正面図、図4(B)は図4(A)のB-B線断面図、図4(C)はインペラの表面の低摩擦皮膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図4は本発明の実施形態に係る水冷エンジンを説明する図で、この実施形態では、水冷の立形直列多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0013】
図3に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(17)と、シリンダブロック(17)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(18)と、シリンダヘッド(18)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(19)と、シリンダブロック(17)のクランクケース(20)内に架設されたクランク軸(10)と、クランク軸(10)の架設方向を前後方向とし、その一方を前として、シリンダブロック(17)の前部に組み付けられた水ポンプ(1)と、水ポンプ(1)の前部に組み付けられたエンジン冷却ファン(21)と、エンジン冷却ファン(21)の前方に配置されたラジエータ(22)と、シリンダブロック(17)の後部に配置されたフライホイール(23)と、シリンダブロック(17)の下部に組み付けられたオイルパン(24)を備えている。
【0014】
このエンジンは、水冷装置を備えている。
図3に示すように、水冷装置は、水ポンプ(1)と、水ポンプ(1)のエンジン冷却水(4)が圧送される冷却水ジャケット(3)と、冷却水ジャケット(3)のエンジン冷却水(4)を導出するサーモスタット収容管(25)と、サーモスタット収容管(25)に収容されたサーモスタット(26)と、ラジエータ(22)を備えている。サーモスタット(26)は、冷却水ジャケット(3)のエンジン冷却水(4)の水温が低い場合には、冷却水ジャケット(3)内のエンジン冷却水(4)を水ポンプ(1)に戻し、水温が高い場合には、冷却水ジャケット(3)内のエンジン冷却水(4)をラジエータ(22)に導出する。
【0015】
図2に示すように、冷却水ジャケット(3)は、シリンダブロック(17)内に設けられたシリンダジャケット(3a)と、シリンダヘッド(18)内に設けられたヘッドジャケット(3b)を備え、水ポンプ(1)から圧送されたエンジン冷却水(4)は、シリンダジャケット(3a)からヘッドジャケット(3b)を介してサーモスタット収容管(25)に流入する。
【0016】
図2に示すように、このエンジンでは、水ポンプ(1)と、燃焼室(2)周りの冷却水ジャケット(3)を備え、水ポンプ(1)と冷却水ジャケット(3)の相互間でエンジン冷却水(4)が循環するように構成されている。
水ポンプ(1)は、ポンプハウジング(5)と、ポンプハウジング(5)内に挿入された回転軸(6)と、ポンプハウジング(5)内で回転軸(6)に取り付けられたインペラ(7)を備えている。
インペラ(7)は、回転軸(6)に直交する姿勢で取り付けられたベースプレート(8)と、ベースプレート(8)に設けられた羽根(9)を備え、インペラ(7)が図3に示すクランク軸(10)で駆動され、図2に示すエンジン冷却水(4)が羽根(9)でインペラ(7)の遠心方向に圧送されるように構成されている。
【0017】
図1(B)に示すように、羽根(9)は、羽根(9)の肉厚方向にエンジン冷却水(4)を通過させる絞り孔(9a)を備えている。
【0018】
このエンジンでは、エンジン低回転時には、図1(B)(C)に示すエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)を低速で通過し、通過した水流に乱流が生じ難いため、水流が絞り孔(9a)をすり抜け易く、羽根(9)の圧送抵抗が小さくなり、馬力ロスを少なくできる。
【0019】
また、このエンジンでは、低回転高負荷時には、図1(B)に示すエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)をすり抜け易く、図2に示す冷却水ジャケット(3)へのエンジン冷却水(4)の圧送量が少なくなるため、遅いピストン(14)の昇降速度で、燃焼室(2)からの放熱時間が長くなる低回転高負荷時でも、燃焼室(2)からの放熱量が減少し、安定な燃焼で、高出力が得られる。
【0020】
また、このエンジンでは、発熱量が増加するエンジン高回転時には、図1(B)(C)に示すエンジン冷却水(4)が絞り孔(9a)を高速で通過し、通過した水流に乱流が生じ易いため、水流が絞り孔(9a)をすり抜け難く、図2に示す冷却水ジャケット(3)へのエンジン冷却水(4)の圧送量が増え、適正なエンジン冷却性能が得られる。
図1(A)(B)に示すように、羽根(9)は、ベースプレート(8)のプレート外周縁に沿って複数設けられ、各羽根(9)はプレート外周縁から回転軸(6)の軸長方向に沿う向きに折り曲げられ、隣り合う羽根(9)(9)間のプレート外周縁部に回転軸(6)側に窪む凹部(11)が設けられている。
【0021】
図1(C)に示すように、絞り孔(9a)は、羽根(9)の中央部に開口されている。
このエンジンでは、このエンジンでは、図1(C)に示す羽根(9)の受ける水圧が、絞り孔(9a)がある羽根(9)の中央部の周りに均等にかかり、羽根(9)がねじれ難く、図2に示す水ポンプ(1)のポンプ効率を高くできる。
【0022】
図2に示すように、ポンプハウジング(5)は、フロントハウジング(5a)と、このフロントハウジング(5a)を後側から覆うリアハウジング(5b)を備え、フロントハウジング(5a)は、軸受けボス(5c)と、ラジエータ(22)からエンジン冷却水(4)を導入する冷却水導入パイプ(5d)と、サーモスタット収容管(25)のエンジン冷却水(4)がラジエータ(22)を迂回して水ポンプ(1)にバイパスする冷却水バイパスパイプ(5e)を備え、リアハウジング(5b)は、冷却水ジャケット(3)にエンジン冷却水(4)を導出する冷却水導出通路(5f)を備えている。
【0023】
フロントハウジング(5a)の軸受けボス(5c)に軸受け(27)が収容され、軸受け(27)で軸受けされた回転軸(6)がポンプハウジング(5)内に挿入され、回転軸(6)の先端部に入力プーリ(28)とエンジン冷却ファン(21)が取り付けられ、リアハウジング(5b)内で回転軸(6)の後端部にインペラ(7)が取り付けられ、回転軸(6)はフロントハウジング(5a)内のメカニカルシール(29)で水密にシールされている。
軸受け(27)に軸受けされた回転軸(6)が軸受けボス(5c)を貫通している。
【0024】
図1(A)に示すように、インペラ(7)は、ベースプレート(8)と、6枚の羽根(9)を備えている。
ベースプレート(8)は、図1(A)(B)に示す平坦なプレート本体(8a)の中央から直角方向に隆起したプレートボス(8b)を備え、羽根(9)は、図1(B)(C)に示すように、プレート本体(8a)の周縁部を直角方向に折り曲げて起立させ、形成している。
【0025】
図1(A)に示すように、インペラ(7)は、前側から見て矢印(7a)のように時計周り方向に回転し、エンジン冷却水をインペラ(7)の遠心方向に圧送する。図3に示すように、インペラ(7)は、クランク軸(10)からファンベルト(30)を介して駆動される。
【0026】
図1(A)~(C)に示すインペラ(7)を構成するベースプレート(8)と羽根(9)の表面に撥水被膜が形成されている。
このため、撥水皮膜で、インペラ(7)に対するエンジン冷却水(4)の流水抵抗が軽減され、ポンプ効率が高くなる。
また、流水抵抗が軽減されたインペラ(7)は、振動が低減され、ポンプ騒音が低下する。
撥水皮膜としてはフッ素樹脂皮膜を用いることができる。
【0027】
インペラ(7)の表面は低摩擦面とされていてもよい。
この場合も、撥水皮膜と同様、低摩擦面で、インペラ(7)に対するエンジン冷却水(4)の摩擦抵抗が軽減され、ポンプ効率が高くなる。
また、エンジン冷却水(4)の摩擦抵抗が軽減されたインペラ(7)は、振動が低減され、ポンプ騒音が低下する。
【0028】
低摩擦面の具体例としては、ガラスコート、金属の鏡面仕上げ面、図4(C)に示す低摩擦皮膜(33)等がある。
低摩擦皮膜(33)についは、後述する。
【0029】
図4(A)(B)に示すように、水ポンプ(1)のポンプハウジング(5)を構成するフロントハウジング(5a)は、フロントハウジング(5a)の表面と軸受けボス(5c)の周面の隅角部(5h)に沿って隆起する放熱フィン(5g)を備えている。
このため、放熱フィン(5g)による放熱で、図2に示すエンジン冷却水(4)と軸受け(27)の冷却効率を高めることができる。
【0030】
図4(B)に示す放熱フィン(5g)は、軸受けボス(5c)の周面からフロントハウジング(5a)の表面に沿って、図4(A)に示すように放射状に複数形成されている。
このため、図4(A)に示すフロントハウジング(5a)の剛性が複数の放熱フィン(5g)で高まり、振動が低減され、ポンプ騒音が低下する。
また、図2図4(A)に示す軸受けボス(5c)から漏れたエンジン冷却水(4)が図4(A)に示す複数の放熱フィン(5g)の案内で、放射状に分散され、漏れたエンジン冷却水(4)による水ポンプ(1)周辺部の集中的な汚染を避けることができる。
【0031】
図4(C)に示す低摩擦皮膜(33)は、固体潤滑剤を含む樹脂、フッ素樹脂、ダイヤモンドライクカーボン、二硫化モリブデン、グラファイト、リン酸マンガン塩、クロムから選択される素材の皮膜で形成されている。このため、表面処理加工で低摩擦皮膜(33)を簡単に形成することができる。
【0032】
固体潤滑剤には、遷移金属酸化物、グラファイト等の無機固体潤滑剤を挙げることができる。
樹脂には、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
【0033】
図4(C)に示すように、複数の低摩擦皮膜(33)(33)は斑点状に分散して配置され、皮膜間溝(34)は網目状に形成されている。
複数の低摩擦皮膜(33)(33)は、いずれも正六角形状に形成されている。
複数の低摩擦皮膜(33)(33)は、正六角形状に限らず、各種多角形状、円形状であってもよい。
インペラ(7)が 図4(C)の左側の矢印(7a)の方向に回転すると、エンジン冷却水(4)は、皮膜間溝(34)内を矢印(4a)のように流れる。
【符号の説明】
【0034】
(1)…水ポンプ、(2)…燃焼室、(3)…冷却水ジャケット、(4)…エンジン冷却水、(5)…ポンプハウジング、(6)…回転軸、(7)…インペラ、(8)…ベースプレート、(9)…羽根、(9a)…絞り孔、(10)…クランク軸。
図1
図2
図3
図4