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特許7178333ラクトバチルス・パラカゼイを含む老化遅延組成物、老化遅延組成物の製造方法、および老化遅延組成物の製造におけるラクトバチルス・パラカゼイの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・パラカゼイを含む老化遅延組成物、老化遅延組成物の製造方法、および老化遅延組成物の製造におけるラクトバチルス・パラカゼイの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20221117BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20221117BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221117BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221117BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221117BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221117BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61K35/747
A23K10/16
A23L33/135
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/50
A61P3/00
A61P21/00
A61P25/00
C12N1/20 E
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019148829
(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公開番号】P2020026437
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】107128655
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【微生物の受託番号】CGMCC  14566
(73)【特許権者】
【識別番号】517344446
【氏名又は名称】葡萄王生技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】陳 勁初
(72)【発明者】
【氏名】陳 炎錬
(72)【発明者】
【氏名】林 詩偉
(72)【発明者】
【氏名】陳 彦博
(72)【発明者】
【氏名】王 啓憲
(72)【発明者】
【氏名】侯 毓欣
(72)【発明者】
【氏名】石 仰慈
(72)【発明者】
【氏名】林 静▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 雅君
(72)【発明者】
【氏名】江 佳琳
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】森井 隆信
【審判官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508541(JP,A)
【文献】Nutrients,2018年7月12日,Vol.10,No.894,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む老化遅延組成物であって、前記ラクトバチルス・パラカゼイは、中国普通微生物菌種保蔵管理センター(China General Microbiological Culture Collection Center)に寄託番号14566で寄託されているラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)である老化遅延組成物。
【請求項2】
前記老化遅延組成物が、賦形剤、防腐剤、希釈剤、充填剤、吸収増強剤、甘味料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1に記載の老化遅延組成物。
【請求項3】
前記老化遅延組成物が、薬物、飼料、飲料、栄養補助食品、乳製品または健康食品である、請求項1に記載の老化遅延組成物。
【請求項4】
前記老化遅延組成物が、粉末、錠剤、顆粒、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレーまたは坐剤形態をとる、請求項1に記載の老化遅延組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の老化遅延組成物の製造方法であって、前記方法は、
固体培地に請求項1に記載のラクトバチルス・パラカゼイをストリーキングして、単一コロニーを生成するステップ(a)と、
液体培養用の液体培地にステップ(a)で培養した前記ラクトバチルス・パラカゼイの単一コロニーを接種するステップ(b)と、を含む方法。
【請求項6】
前記方法が、
ステップ(b)で培養した液体培養物を遠心分離して、細菌ペレットを取得するステップ(c)と、
ステップ(c)で取得した細菌ペレットを凍結乾燥するステップ(d)とを更に含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、30~50℃で、0~1vvmの窒素または二酸化炭素中で行われ、10~100rpmで回転し、および/または16~24時間インキュベートされる、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)での凍結乾燥の温度が-196から-40℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
老化遅延組成物の製造におけるラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の使用であって、前記ラクトバチルス・パラカゼイは、中国普通微生物菌種保蔵管理センター(China General Microbiological Culture Collection Center)に寄託番号14566で寄託されているラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)である、ラクトバチルス・パラカゼイの使用。
【請求項10】
記ラクトバチルス・パラカゼイが投与されていない対象と比較して、前記ラクトバチルス・パラカゼイが投与された対象はCisd2遺伝子発現の増加を示す、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
記ラクトバチルス・パラカゼイを投与されていない対象と比較して、前記ラクトバチルス・パラカゼイが投与された対象はミトコンドリア損傷の減少および遅延を示す、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
記ラクトバチルス・パラカゼイを投与されていない対象と比較して、前記ラクトバチルス・パラカゼイが投与された対象は、神経変性、サルコペニアまたはその組み合わせの老化状態の遅延を示す、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化遅延のためのラクトバチルス・パラカゼイの活性物質、それを含む組成物、およびその使用に関する。より具体的には、本発明は、活性物質を含む組成物、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)GKS6の活性物質の製造方法、および被験者に投与した場合のGKS6の適用によるCisd2遺伝子発現の増加、ミトコンドリア損傷の減少、神経変性及びサルコペニアなどの老化状態の遅延に関する。
【背景技術】
【0002】
長寿遺伝子
科学者は長寿の謎を解明することを長い間望んでいた。環境ストレスへのより良い調整はより長い寿命をもたらすと仮定されているため、科学者は環境ストレスに関連する寿命に影響を与える遺伝子のグループの検索を開始した(例えば、猛暑のような極端な天候や食料と水の不足による極端な飢餓など)。これらの遺伝子は、それらが属する個人の年齢に関係なく、個人を強化して直面する危機を通じて生き残るのを助けるように、自然な形で個人を保護し、活動を回復させることができる。そのため、「長寿遺伝子」とも呼ばれるこのような遺伝子は、長期にわたって活動し続ける限り、個人の健康状態を改善し、寿命を大幅に延長するのに役立つ。
【0003】
別の科学者グループは、100歳以上の人の遺伝子検査を実施することを選択した。彼らは、100歳以上の人の特定の遺伝子の発現レベルは、平均寿命の人の遺伝子の発現レベルと比較すると、かなり強いことを発見した。したがって、これらの遺伝子が寿命を決定する役割を果たす可能性があると仮定された。
【0004】
Cisd2遺伝子
Cisd2遺伝子は、進化の過程で高度に保存された遺伝子であり、下等無脊椎動物、脊椎動物および高等哺乳類を含む様々な種に見出すことができる。この点で、Cisd2遺伝子は重要な生物学的機能の制御に重要な役割を果たすと思われる。Cisd2遺伝子のタンパク質はミトコンドリアの外膜に発現し、ミトコンドリアにCisd2遺伝子がないと、通常、ミトコンドリアの損傷が引き起こされ、ミトコンドリアの構造と機能が損なわれ、老化につながる。Cisd2遺伝子ノックアウトマウスの研究では、それらは対照群よりも著しく小さいだけでなく、平均寿命が対照群の平均寿命のわずか半分であることが示されている。さらに、Cisd2-ノックアウトマウスは、3週目(ヒトの10~12年に相当)に神経変性とサルコペニア、約4週目(ヒトの約15年に相当)に大幅な体重減少、約8週目(ヒトの約18~20年に相当)に白くて濁った斑点のある眼球突出、骨粗鬆症、約12~48週目(ヒトの約30~45年に相当)に脊柱後彎、失明、皮膚のゆるみを示し始める。さらに、加齢が進むと正常マウスのCisd2遺伝子の発現が減少することが観察されており、若い年齢のマウスと比較したとき、発現は約14か月目(ヒトの約60年に相当)で60%に低下し、約28か月目(ヒトの約90年に相当)で30%に低下する。上記の過去の研究と観察によれば、Cisd2は通常の平均余命を維持するために不可欠であり、加齢に大きく関連していることが確認されている。
【0005】
ラクトバチルス種
ラクトバチルス種は一般的な環境条件に存在し、炭水化物を乳酸に発酵させることができ、それにより、発酵食品の製造によく使用される。1900年代初頭、ラクトバチルス属は消化の改善や腸の健康など、複数の健康上の利点をもたらすことが発見された。したがって、消化機能と排便を促進するため、ラクトバチルス属を消費することが勧められている。さらに、乳酸菌が炭水化物(ラクトース、グルコース、スクロース、フルクトースなど)を溶解し、乳酸と酢酸を生成し、それが腸内酸性化を促進して悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内細菌叢を健康的なバランスに保つことを可能にすることがさらに発見された。
【0006】
ラクトバチルス種の細菌は、種が異なっていても、又は同じ種であって株が異なっていても、人体に明確な特性と影響を与える可能性がある。例えば、Lactobacillus paracaseiは人間の健康に有益であることが分かっている。特に、L.plantarum PH04は血中コレステロールを下げ、L.plantarum 299Vは、IL-10欠損マウスの大腸炎の症状を軽減させ、L.plantarum 10hk2は、インターロイキン-1β(IL-1β)、IL-6、TNF-αなどの炎症誘発性メディエーターのレベルを増加させ、さらに、抗炎症性メディエーターIL-10のレベルを増加させ、炎症に対抗し、L.plantarum K21は、血中コレステロールとトリグリセリドを低下させ、さらに、炎症に対抗する。
【0007】
ビフィドバクテリウム
ビフィドバクテリウムは、グラム陽性、非運動性、桿状で分岐状のこともある嫌気性細菌の属である。それらは、人間や動物の胃腸管、膣、口に遍在する。1899年、健康な乳児の糞から最初に分離され、後に、特定のビフィドバクテリウム株が食品、医薬品、飼料に添加されるプロバイオティクスとして使用できることが発見された。
【0008】
しかし、乳酸菌の寿命への影響は、関連する研究で言及されたことがない。また、乳酸菌がCisd2遺伝子発現を介して生理学的条件を変更することにより、どのように個人の寿命を決定するかを実証しようとする実験はなかった。
【発明の概要】
【0009】
ラクトバチルス・パラカゼイを含む老化遅延組成物であって、ラクトバチルス・パラカゼイは、中国普通微生物菌種保蔵管理センターに寄託されている(No.14566)。
本発明の別の目的は、有効量のラクトバチルス・パラカゼイの活性物質を含む老化遅延組成物を提供することであり、ラクトバチルス・パラカゼイは、中国普通微生物菌種保蔵管理センターに寄託されている(No.14566)。
【0010】
好ましくは、活性物質は以下の方法により調製される。
(a)ビフィズス菌株を固体培地にストリーキングして、単一コロニーを生成し、
(b)ステップ(a)で培養した乳酸菌の単一コロニーを液体培養用の液体培地に接種する。
【0011】
好ましくは、この方法はさらに、
(c)ステップ(b)で培養された乳酸菌コロニーを含む液体培養物を遠心分離して、細菌ペレットを取得するステップと、
(d)ステップ(c)で取得した細菌ペレットを凍結乾燥するステップとを含む。
【0012】
好ましくは、ステップ(b)は、30~50℃で、0~1vvmの窒素または二酸化炭素中で、10~100rpmで振盪し、および/または16~24時間インキュベートする。
【0013】
好ましくは、ステップ(d)での凍結乾燥の温度は、-196~-40℃である。
好ましくは、組成物は、賦形剤、防腐剤、希釈剤、充填剤、吸収増強剤、甘味料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む。
【0014】
好ましくは、組成物は、薬物、飼料、飲料、栄養補助食品、乳製品または健康食品である。
好ましくは、組成物は、粉末、錠剤、顆粒、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレーまたは坐剤の形態をとる。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、老化遅延のための乳酸菌の組成物を製造する方法を提供することである。
好ましくは、老化遅延のための方法に関して、活性物質を投与されていない対象と比較して、活性物質を投与された対象は、Cisd2遺伝子発現の増加を示す。
【0016】
好ましくは、老化遅延のための方法に関して、活性物質を投与されていない対象と比較して、活性物質を投与された対象は、ミトコンドリア損傷の減少および遅延を示す。
好ましくは、老化遅延のための方法に関して、活性物質を投与されていない対象と比較して、活性物質を投与された対象は、神経変性、サルコペニアまたはそれらの組み合わせの老化状態の遅延を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】異なるタイプの乳酸菌(番号AからJ)活性物質を異なる用量で処理した後のHEK293細胞におけるCisd2遺伝子プロモーター制御蛍光強度の相対的発現レベルを示す。
図2】HEK293細胞を異なる乳酸菌(番号A、B、C、D、HおよびI)活性物質で異なる用量でそれぞれ処理した後の内因性Cisd2メッセンジャRNA(mRNA)の発現レベルのゲル画像を示す。
図3図2のCisd2メッセンジャRNA(mRNA)の発現レベルの統計結果を示す。
図4】動物実験の手順を示している。
図5】前腕の握力試験中に雄マウスによって示された握力を示す。
図6】単一試行受動的回避試験中に雌マウスにより示される潜伏時間を示す。
図7】単一試行受動的回避試験中に雄マウスにより示された潜伏時間を示す。
図8】能動的シャトル回避試験中に雌マウスにより示された回避応答の数を示す。
図9】能動的シャトル回避試験中に雄マウスにより示された回避応答の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
乳酸菌の供給源
本発明で使用される乳酸菌には、ラクトバチルス・パラカゼイおよびビフィドバクテリウムが含まれる。好ましい実施形態では、本発明の乳酸菌は、台湾の財団法人食品工業発展研究所(Taiwan Food Industry Research and Development Institute)の生物資源収集研究センター(Bioresource Collection and Research Center)から購入される。好ましい実施形態では、以下の実験で使用される乳酸菌には、AからJの番号が付けられている。各番号の細菌の株および寄託番号は、以下の表1に示されている。細菌AからHの収集、分離、精製のプロセス、および遺伝子分析とアッセイの結果は、台湾特許出願第106137773号および第106136134号に記載されている。
【0019】
【表1】
乳酸菌の培養
上記の10個の乳酸菌(A~J)を固体培地にストリークして単一コロニーを生成した。好ましい実施形態では、固体培地はMRS寒天である。完全に成長したら、乳酸菌の単一コロニーを液体培養用の液体培地を含むフラスコに接種する。好ましい実施形態では、乳酸菌は、液体培地で35~50℃、窒素または二酸化炭素0~1vvmで培養され、10~100rpmで回転される。好ましい実施形態では、細菌は16から24時間、より好ましくは18時間培養される。好ましい実施形態では、液体培地はMRS液体培地である。好ましい実施形態では、液体培地の成分を以下の表2に示す。
【0020】
【表2】
凍結乾燥粉末の調製
乳酸菌の各株が液体培養で完全に成長すると、乳酸菌を遠心分離して細菌ペレットを得る。好ましい実施形態では、乳酸菌を含む液体培地は、1000~15000rpmで遠心分離される。得られた細菌ペレットを保護剤(6-30%脱脂粉乳)と混合し、低温で保存するために凍結乾燥する。好ましい実施形態では、凍結温度は-196~-40℃に設定される。好ましい実施形態では、混合物は16~72時間凍結乾燥される。好ましい実施形態では、凍結乾燥混合物は、-30~0℃で保存される。乳酸菌の凍結乾燥粉末は、以下の細胞実験の原料として、すなわち本願が請求する乳酸菌活性物質の実施形態の一つとして使用するために保存されている。本願によって特許請求される乳酸菌活性物質の実施形態は、上記の液体培地中で単一の細菌コロニーを培養することから得られるペレットも含む。
【0021】
Cisd2ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
Cisd2遺伝子プロモーター、cisd2遺伝子およびルシフェラーゼレポーター遺伝子を融合するヒト胎児腎細胞(HEK293)プラットフォーム(台湾、陽明大学)は、乳酸菌活性物質がCisd2遺伝子発現に影響を与えるかどうかを調べるために実施される。ルシフェラーゼレポーター遺伝子(2x10細胞/mL)を運ぶHEK293細胞を6ウェルプレートに接種し、37℃のインキュベーターで5%COにて1日インキュベートする。次に、上記の乳酸菌(A-J)の保存凍結乾燥粉末を、担体として機能する0.1%DMSOに溶解する。得られた混合物から以下の表3に示すさまざまな濃度を調製し、それぞれHEK293液体培地に加える。対照群では、0.1%DMSOのキャリアのみがHEK293液体培地に添加され、実験群は異なる乳酸菌活性物質とともにインキュベートされる。両方のグループを、37℃、5%COのインキュベーターで24時間インキュベートする。HEK293細胞のルシフェラーゼ活性を測定および定量する。上記の実験を3回実行する。結果を図1に示す。
【0022】
【表3】
内因性Cisd2発現レベル
内因性Cisd2遺伝子の活性を測定して、Cisd2発現レベルに対する乳酸菌活性物質の効果をさらに決定する。まず、正常なHEK293細胞(2x10細胞/mL)を6ウェルプレートに接種し、インキュベーター内で37℃、5%COで1日インキュベートする。次に、A、B、C、D、HおよびIと番号付けされた乳酸菌の凍結乾燥粉末を0.1%DMSO担体に溶解し、以下の表4に示すように様々な濃度の混合物に調製する。次に、各混合物をHEK293細胞培養に加える。対照群では、0.1%DMSOのキャリアのみがHEK293細胞培養に加えられ、実験群は乳酸菌活性物質とともにインキュベートされる。両方のグループをインキュベーターで24時間インキュベートする。次いで、細胞を氷上で回収し、それら細胞から市販のGene JET RNA精製キット(Thermo)を使用してmRNAを抽出する。mRNA抽出物を適切な濃度に調整し、Revert Aid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo)を使用してcDNAに戻す。最後に、PCRを使用して内因性Cisd2遺伝子発現レベルを測定する。結果のゲル画像を図2に示し、図2の結果を統計的に分析して図3に示す。
【0023】
【表4】
Cisd2実験データを分析するための統計的方法
データは、平均±標準偏差(SD)として表される。対照群と試験群の活動の違いは、倍率変化として記述されている。グループ間の統計的差異はp値で表される。*p<0.05は統計的に有意であると定義され、**p<0.01は統計的に高度に有意であると定義される。
【0024】
Cisd2実験の結果
Cisd2ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイの結果を図1に示す。A~Jの番号が付けられた乳酸菌の10株のうち、細菌A、C、HおよびIの活性物質で処理したHEK293細胞は、対照群より高い蛍光強度を示す。これらの結果は、細菌A、C、H、およびIの活性物質がCisd2遺伝子の発現レベルを増加させる可能性があることを示唆している。細菌Aの結果に関して、HEK293細胞を12.5μg/mlまたは25μg/mlの濃度で刺激した場合、ルシフェラーゼ発現レベルは対照群のレベルよりも高くなる。これらの結果は、細菌Aの活性物質がCisd2遺伝子発現レベルを増加させる可能性があることを示している。細菌Cに関しては、結果は細菌Aの結果と似ており、ルシフェラーゼの発現レベルは、0.25μg/mlまたは0.5μg/mlのいずれかの濃度でHEK293細胞を刺激すると、対照群のレベルよりも高くなる。繰り返すが、このような結果は、細菌Cの活性物質がCisd2遺伝子の発現レベルを増加させる可能性があることを示している。一方、1.5μg/mlの細菌Hは、対照群と比較して1.14倍のルシフェラーゼ発現レベルを示す。同様に、そのような結果は、細菌Hの活性物質がCisd2遺伝子発現レベルを大幅に(p<0.05)増加させる可能性があることを示している。細菌Iについては、HEK293細胞を2.5μg/mlまたは5μg/mlの濃度で刺激すると、ルシフェラーゼの発現レベルが対照群のレベルより高くなり、細菌Iの活性物質がCisd2遺伝子の発現レベルを増加させる可能性があることを示す。
【0025】
内因性Cisd2遺伝子発現レベルの測定結果を図2および図3に示す。細菌AおよびCは、対照群と比較して高いcisd2mRNA発現レベルを示さず、細菌Cは対照群と比較して低いmRNA発現レベルさえ示した。一方、細菌HおよびIは、対照群と比較して高いmRNA発現レベルを示す。細菌H(1.5μg/mlおよび5μg/ml)、および細菌I(2.5μg/ml)は両方とも、対照群と比較して統計的有意性を示し、細菌HおよびIはCisd2遺伝子のmRNA発現レベルを有意に上昇させる。具体的には、細菌Hは、対照群と比較して、1.5μg/mlで1.15倍のmRNA発現レベル(p<0.05)、5μg/mlで1.37倍の発現レベル(p<0.01)をもたらした。mRNA発現レベルは、乳酸菌活性物質の濃度が増加すると増加し、濃度と効果の関係を示す。さらに、2.5μg/mlの細菌Iは、対照群と比較した場合、1.21倍の発現レベル(p<0.05)をもたらした。
【0026】
上記の結果は、特定の乳酸菌(好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイおよびビフィドバクテリウム)の活性物質がCisd2遺伝子発現レベルを増加させたことを証明しており、それにより寿命を延長できる可能性があり、ひいては乳酸菌の新規医薬用途を提供できる可能性がある。上記を考慮して、乳酸菌活性物質を含む組成物は、新規な用途のために製造される。さらに、組成物の有効量は、所望の効果を達成するために対象に投与されるよう決定される。
【0027】
以下の実験では、細菌A(GKS6)を使用して、老化の遅延に対するその効果を決定する。細菌I(GKK2)と細菌H(GKM3)は、それぞれ他の出願で特許請求することとする。
【0028】
実験動物における加齢評価
本発明における動物実験の一般的な手順を図4に示す。この実験で使用するために選択された動物は、AKR/J兄弟交配の選択的繁殖のプログラムを通じて京都大学(日本)によって開発された老化促進マウス(SAM)である。この実験で使用したSAMP8マウスは、脳のニューロン損失、脳萎縮、リポフスチン沈着、脳幹の網状形成における海綿状奇形およびアミロイド蛋白沈着を特徴とする。他の特徴としては、他の臓器の急速な老化と寿命の短縮が挙げられ、これにより、それらは老化と生殖機能の遅延に関連する研究にとって理想的な実験動物モデルになる。これらのマウスは、温度25±2°C、相対湿度65±5%の無塵自動部屋の30(W)x20(D)x10(H)cm透明プラスチックケージに収容された。ライトサイクルは自動タイマーによって制御され、07:00から19:00に暗い期間が設定され、19:00から07:00に明るい期間が設定された。
【0029】
この実験は、「老化遅延および健康促進機能の健康食品の規制および評価方法」に従って設計された。3ヶ月齢のオスおよびメスのSAM-P8マウスを実験動物として使用した。マウスを最初に対照群と試験群に分割して乳酸菌A処理し、次に各群を雌群と雄群に分け、グループあたりのマウスが10個体の合計4群とした(合計40マウス)。対照群のマウスにはddHOのサンプルを経管栄養で与えたが、試験群のマウスには乳酸菌A(GKS6)の凍結乾燥粉末をddHOで溶解し、それぞれ所望の用量で調製されたサンプルを経管栄養で与えた。各グループおよび各グループで使用される用量を以下の表5に示す。
【0030】
【表5】
実験は13週間にわたって行われ、その間、各グループは1日1回それぞれのサンプルを経管栄養で与えられた。各グループの食物と水の摂取量は、実験中に記録された。12週目に、マウスを加齢スコアによって評価し、単一試行受動的回避試験を実施した。13週目に、マウスに能動的シャトル回避試験を実施した。試験後、マウスはCO窒息に供され、断頭により屠殺された(屠殺前8時間絶食)。断頭されたマウスの血液と臓器を分析のために収集した。
【0031】
老化スコア
グレーディングスコアシステムは、SAMマウスの脆弱レベルを測定するために、1981年に武田および他の学者によって考案された。この実験で使用したマウスの加齢レベルを測定するために、毛の光沢、毛の粗さ、脱毛、皮膚潰瘍、眼周囲病変、脊椎弯曲の6つの測定項目を選択した。マウスの加齢レベルを0~4のスケールで等級付けした。各項目について得られたスコアを合計して、最終スコアを得た。より高いスコアのマウスはより高い加齢レベルを示す。
【0032】
前腕の握力試験
加齢は、筋肉の廃用性萎縮を加速させる変性した生理学的機能または複数の慢性疾患を引き起こす可能性がある。通常、人々は30歳以降には1年あたり1~2%の筋肉を失い、60歳以降は1年あたり15%程度劇的に減少する。筋肉バイオマスの損失は、障害、転倒、機能低下、寝たきり、さらには死のような負の健康イベントにつながるリスク要因である。
【0033】
加齢により誘発される骨格筋の喪失は、「骨格筋の老化」または「老人の骨格消耗」とも呼ばれるサルコペニアを発症する可能性がある。サルコペニアは、(1)低筋量(2)低筋力(3)低い身体パフォーマンスという3つの主要な症状を示す。2010年、欧州連合老年医学協会(EUGMS)は、加齢誘発性サルコペニアの診断基準および定義を開発および公開した。65歳以上の歩行速度が1m/秒未満で、握力が低く、筋肉量が臨界値よりも小さいと、サルコペニアと診断される。国立台湾大学病院の内科および家庭医学部門から収集されたデータは、サルコペニアの有病率が年齢増加とともに中年男性では18%から64%に、中年女性では9%から41%に増加したことを示した。臨床的には、サルコペニアと筋力低下の悪化は、その後の健康状態の悪化を防ぐための効果的な介入と診断を実施することで遅らせることができる。
【0034】
マウス実験では、握力メーター(GSM、カタログ番号47200)を使用してSAMP8マウスの前腕握力を測定し、筋力を判定した。この方法は動物を尾でつかみ、前足でプルバーを握らせることによって実行された。動物は、その後、握り解放するまで、尾で水平に引き戻された。この時点で加えられた力は、GSMを使用して3回連続して記録され、記録された最高値が選択され、統計的に分析された。
【0035】
単一試行受動的回避試験
マウスの学習および記憶に対する乳酸菌の効果は、古典的な条件付けおよび動物の暗さ嗜好によって測定された。この実験には、中央のゲートによって明るい部屋と暗い部屋に分けられた特別な箱が使用された。部屋は互いに接続されるように設計され、電源に接続された平行金属棒アレイがボックスの底に配置された。試験の開始時に、マウスをゲートが開いた状態で明るい部屋に入れ、探索できるようにした。マウスが暗い部屋に入るとすぐにゲートが閉じられ、その後、マウスは電気ショック(0.5μA、0.5秒)を一度与えられ、学習のために訓練された。トレーニングの終了から24、48、72時間後に、マウスの記憶を明るい部屋内での潜伏時間を記録することで測定した。最大継続時間は180秒に設定されている。明るい部屋内での潜伏時間が長いほど、学習と記憶が優れていることを示す。
【0036】
能動的回避試験
マウスの学習および記憶に対する乳酸菌の効果は、古典的な条件付けおよび光および音刺激からの動物の回避により測定された。この実験には、中央のゲートによって明るい部屋と暗い部屋に分けられた特別な箱が使用された。部屋は互いに接続されるように設計され、電源に接続された平行金属棒アレイがボックスの底に配置された。すべてのマウスに10秒間光と音の刺激(条件刺激、CS)を与え、CSからの回避を示さなかったマウスにはさらに電気ショック(無条件刺激、UCS)を与えた。ただし、CSを回避した個体には、電気ショックは与えられなかった。実験動物に、CS/UCSによる上記の回避試験を、連続4日間、1日4回、各回5度与えた。この試験は、そのような試験条件下で回避を示す時間を測定することにより、マウスの学習と記憶を決定することを目的としている。能動的回避時間が長いほど、学習と記憶が優れていることを示す。
【0037】
動物実験で使用される統計的方法
この研究から収集されたデータは、SPSS統計ソフトウェアを使用して分析された。得られた結果は、平均±SEMとして表され、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)によって分析され、複数のテストグループ間の差異がテストされた。グループのペア間の違いは、ダンカンの複数範囲テストを使用して測定された。p<0.05は、統計的に有意な差を示す。
【0038】
動物実験から得られた結果
各グループの老化スコア試験から得られた結果を以下の表6および7に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
12週目の試験から得られた加齢スコアを考慮して、高用量および低用量の乳酸菌A(GKS6)を与えられた3ヶ月齢の雌および雄のSAMP8マウスは、対照群よりも有意に低いスコアを示した。特に雌マウスでは、より有意な減少が見られた(p<0.05)。高齢化スコアが高いほど(表6および7に示すように)、高齢化のレベルが高いことが示された。これらの結果は、SAMP8マウスに乳酸菌A(GKS6)サンプルを与えると、加齢スコアが低下する可能性があることを示している。したがって、乳酸菌A(GKS6)が老化防止に役立つことは明らかだ。
【0041】
前腕握力試験から雄マウス群で得られた結果を表8に示し、図5に統計的に要約する。
【0042】
【表8】
13週目の試験から得られたグリップ強度値を考慮して、乳酸菌A(GKS6)を与えられた3ヶ月齢の雌および雄の両方のSAMP8マウスは、対照群と比較して有意に高い値(p<0.05)を示した。グリップ強度の値が高いほど、筋肉の強度が高いことを示している。これらの結果は、乳酸菌A(GKS6)サンプルをマウスに与えると、筋力の改善に役立つ可能性があることを示している。したがって、乳酸菌A(GKS6)が加齢によるサルコペニアの緩和に役立つことは明らかだ。
【0043】
単一試行受動的回避試験から雌マウス群で得られた結果を表9に示し、図6に統計的に要約する。一方、雄マウス群での単一試行受動的回避試験の結果を表10に示し、図7に統計的に要約する。
【0044】
【表9】
【0045】
【表10】
13週目の試験から得られた潜伏時間を考慮して、乳酸菌A(GKS6)を与えられた3ヶ月齢の雌および雄の両方のSAMP8マウスは、対照群よりも有意に長い潜伏時間を示した。特にトレーニング後24時間で、対照群のマウスと比較して、試験群のマウスは潜伏時間の最も顕著な上昇(p<0.05)を示した。潜伏時間が長いほど、学習と記憶が強いことを示している。これらの結果は、乳酸菌A(GKS6)サンプルをマウスに与えると、マウスの学習と記憶力を高めるのに役立つ可能性があることを示している。したがって、乳酸菌A(GKS6)が老化防止に役立つことは明らかだ。
【0046】
能動的回避試験から雌マウス群で得られた結果を表11に示し、図8に統計的に要約する。雄マウス群における能動的回避試験の結果を表12に示し、図9に統計的に要約する。
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
14週目の試験から得られた回避応答を考慮して、乳酸菌試料を与えられた3ヶ月齢の雌および雄のSAMP8マウスの両方が、対照群と有意な差を示さなかった。これは、彼らが給餌後1日目にまだ学習段階にあったためである。ただし、2日目から4日目の雌試験群と雄試験群は、対照群と比較してより成功した回避反応を示した。特に二日目では、対照群と比較して、雌試験群は約2倍の回避反応を示した(P<0.05)。より成功した回避応答は、より強力な学習および記憶能力を示すことを考慮すると、これらの結果は、乳酸菌A(GKS6)サンプルをマウスに与えると、マウスの学習と記憶力を高めるのに役立つ可能性があることを示している。したがって、乳酸菌A(GKS6)は、加齢による神経変性によって損なわれている学習と記憶の改善に役立つことは明らかである。
【0049】
要約すると、上記の試験結果から、乳酸菌、特にラクトバチルス・パラカゼイ、好ましくは乳酸菌A(GKS6)が、Cisd2遺伝子(「長寿遺伝子」)の発現を増加させ、さまざまな老化スコア、握力、および学習と記憶を強化することに明らかに有用であると証明できたといえる。したがって、乳酸菌A(GKS6)の活性物質は、老化遅延に役立つ。
【0050】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、前記予防および/または治療効果を生み出すのに十分な量を指す。in vitro細胞培養実験では、上記の有効量はμg/mLで表され、細胞培養で使用される培地の総量に基づいている。動物実験では、上記有効量は「g/60kg体重/日」として表される。さらに、in vitro細胞培養実験から得られた有効量データは、次の式を使用して動物に適した有効量に変換できる。
【0051】
I.一般的に言えば(Reagan-Shawetal.,2008を参照)、1“μg/mL”(in vitro細胞培養実験から計算された有効量に基づく)は1“mg/kg体重/日”(マウスモデル実験から計算された有効量に基づいて)と同等である。マウスの代謝率は人間の6倍であるという事実を考えると、人間の有効量をさらに計算できる。
【0052】
II.したがって、in vitro細胞培養実験から計算された有効量が500μg/mLの場合、マウスの有効量は500mg/kg体重/日(つまり0.5g/kg体重/日)として決定できる。さらに、ヒトの有効量は、上記のマウスと代謝率のヒトの違いを考慮して、5g/60kg体重/日として決定することができる。
【0053】
III.前の段落で説明したテスト結果を考慮すると、in vitro細胞培養実験に基づく有効量は1.5μg/mLである。したがって、マウスでの有効量は1.5mg/kg体重/日であり、したがって、ヒトでの合理的な有効量は0.015g/60kg体重/日であると想定されている。
【0054】
好ましい実施形態では、組成物に含まれる乳酸菌活性物質の有効量は、10mg/60kg-1g/60kg体重/日である。
組成物は、添加剤をさらに含む。好ましい実施形態では、添加剤は、賦形剤、防腐剤、希釈剤、充填剤、吸収増強剤、甘味料、またはそれらの組み合わせであり得る。賦形剤は、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、スクロースまたはそれらの組み合わせから選択することができる。ベンジルアルコールやパラベンなどの防腐剤は、医薬組成物の貯蔵期間を延ばすことができる。希釈剤は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセロールまたはそれらの組み合わせから選択することができる。充填剤は、ラクトース、高分子量ポリエチレングリコールまたはそれらの組み合わせから選択することができる。吸収増強剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ラウロカプラム、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールまたはそれらの組み合わせから選択することができる。甘味料は、アセスルファムK、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、ネオテームまたはそれらの組み合わせから選択することができる。上記の添加物に加えて、活性物質細菌の薬理効果が影響を受けないのであれば、実際のニーズに応じて他を選択できる。
【0055】
この組成物は、製薬業界でさまざまな製品に開発できる。好ましい実施形態では、組成物は、薬物、飼料、飲料、栄養補助食品、乳製品または健康食品である。
組成物は、対象のニーズを満たすために様々な形態をとることができる。好ましい実施形態では、組成物は、粉末、錠剤、顆粒、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレーまたは坐剤形態であり得る。
【0056】
本発明の組成物は、動物またはヒトに投与することができる。活性物質細菌の効果が影響を受けない限り、それは任意の剤形で作られ、剤形に応じて動物またはヒトに適切な経路を介して投与される。
【0057】
組成物の準備
本発明の乳酸菌活性物質が食用である場合、以下に説明される組成物1の形態は、乳酸菌活性物質の例示であり得る。
【0058】
組成物1:乳酸菌A(GKS6)の凍結乾燥粉末を乳酸菌活性物質として使用し(20重量%)、防腐剤として使用するベンジルアルコール(8重量%)および希釈剤として使用されるグリセロール(7wt%)とよく混合した。得られた混合物を純水(65wt%)に溶解し、将来の使用のために4℃で保存した。「重量%」という表記は、組成物の総重量に対する各成分の重量の割合を指す。
【0059】
本発明の乳酸菌活性物質が医療用途である場合、以下に説明される組成物2の形態は、乳酸菌活性物質の例示であり得る。
組成物2:乳酸菌A(GKS6)の凍結乾燥粉末を乳酸菌活性物質として使用し(20重量%)、防腐剤として使用するベンジルアルコール(8重量%)、希釈剤として使用されるグリセロール(7wt%)、および希釈剤として使用されるスクロース(10wt%)とよく混合した。得られた混合物を純水(55wt%)に溶解し、将来の使用のために4℃で保存した。「重量%」という表記は、組成物の総重量に対する各成分の重量の割合を指す。
【0060】
乳酸菌H(GKM3)の寄託番号:CGMCCNo.14565
乳酸菌I(GKK2)の寄託番号:CGMCCNo.15205
乳酸菌A(GKS6)の寄託番号:CGMCCNo.14566
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9