(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】水/界面活性剤混合物中における化学反応のための触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 31/02 20060101AFI20221117BHJP
C07C 231/02 20060101ALI20221117BHJP
C07C 233/73 20060101ALI20221117BHJP
C07C 233/75 20060101ALI20221117BHJP
C07C 233/22 20060101ALI20221117BHJP
C07C 233/65 20060101ALI20221117BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20221117BHJP
C07C 69/773 20060101ALI20221117BHJP
C07D 295/192 20060101ALI20221117BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
B01J31/02 102Z
C07C231/02
C07C233/73
C07C233/75
C07C233/22
C07C233/65
C07C67/08
C07C69/773
C07D295/192
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019500472
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2017054139
(87)【国際公開番号】W WO2018011696
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/089854
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ガロー,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ギュオ,ペンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ジァンクアン
(72)【発明者】
【氏名】パルマンティエ,ミシェル
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/075442(WO,A1)
【文献】特開2016-098194(JP,A)
【文献】Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2007年,VOL:270,PAGE(S):1-43,http://dx.doi.org/10.1016/j.molcata.2007.01.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07D 295/192
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含むアミド化反応を行うための反応混合物であって、前記触媒は、
以下の特徴の1つ以上を有する1,3,5-トリアジン誘導体であるカップリング試薬:
(i)トリメチルアミノ基またはN-メチル-N-モルホリノ基である、トリアジン環の2位に結合した4級アミンを含む;
(ii)トリアジン環の4位および/または6位は、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシおよび/またはプロポキシで置換されている;
(iii)可溶化基が、4級アミンおよび/またはトリアジン環の4位および/または6位に結合している;
ここで、前記カップリング試薬は1種以上の可溶化基を含む;
であり、
前記
1種以上の可溶化基は、C
5~50アルキル基
からなり、次に示す特徴:
(i)前記アルキル基は直鎖状である;
(ii)前記アルキル基は8~15個の炭素原子を含む;
(iii)メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシ、任意選択的にメチル、エチルおよび/またはプロピルのうちの1個または2個で置換されたアミノから選択される1種以上の基で置換されている;
(iv)12-メトキシドデシルまたはドデシルである;
の1つ以上を有する;または
2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基
からなり、次に示す特徴:
(i)前記ポリ(アルキレングリコール)基は、ポリ(エチレングリコール)基またはポリ(プロピレングリコール)基である;
(ii)前記ポリ(アルキレングリコール)基は、3~8個の繰り返し単位を有する;
(iii)メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシ、任意選択的にメチル、エチルおよび/またはプロピルのうちの1個または2個で置換されたアミノから選択される1種以上の基で置換されている;
(iv)末端酸素がメチルまたはエチルで任意選択的に置換されている、4~6個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)基である;
の1つ以上を有する;
ここで、前記界面活性剤は、(DL-α-)トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエタニルユビキノールセバケート(PQS)、ポリエチレングリコール(PEG)およびb-シトステロールメトキシエチレングリコールコハク酸エステル(Nok)からなる群から選択される、
反応混合物。
【請求項2】
前記可溶化基は、前記カップリング試薬または配位子の残部に、エーテル結合、アミン結合、エステル結合またはアミド結合を介して結合している、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項3】
前記カップリング試薬または配位子は、1個または2個の可溶化基を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項4】
前記界面活性剤/水混合物中の前記界面活性剤の濃度は0.5~5%(w/w)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項5】
前記反応混合物は、1種の反応体または2種の反応体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項6】
有機溶媒をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項7】
前記反応混合物は均一な混合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項8】
前記反応混合物はコロイド懸濁液である、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項9】
化学反応を実施する方法であって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の反応混合物を準備するステップと、
(b)前記化学反応を進行させるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記化学反応の生成物を単離するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物は、前記化学反応全体を通して均一な混合物である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物は前記化学反応全体を通してコロイド懸濁液である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤/水反応媒体を使用する化学反応の改良に関する。反応成分の溶解性を、可溶化基により変性された触媒化合物によって増大させる。それによって、化学反応の収率および選択性が大幅に向上する。したがって本発明は、それぞれに変性された触媒化合物と界面活性剤/水混合物とを含む化学反応混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能性を有する無害な汎用性のある溶媒の探索は、ここ数十年に亘り世界中の多くの化学者グループが注力している分野である。このことは、何年も前に公知の塩素系溶媒がオゾン層を破壊すると警告されたことに加えて、DMF、DMAC、NMP等の一般に使用されている極性非プロトン性溶媒の生殖毒性が明らかになったことから、一層重要性を増した。この特殊な問題に取り組むために、世界中の多くのグループがある程度一般的な様々な手法を採用して新規溶媒を開発し、それによって、例えば、バイオベースのシレン(cyrene)やエーテル類(CPME、より優れたMeTHF等)等の溶媒が見出された。また、化学物質製造業者によって、問題のある溶媒の他の無害な誘導体が直接開発され、イオン液体、または圧縮ガスを利用したより高性能な(sophisticated)系、または相間移動触媒反応、切り替え可能な(switchable)溶媒およびフルオラス系が見出された。限定的な(punctual)成功談も聞かれ、それが時には多大な利益をもたらすことも実証されたが、その一般性は後回しになっている。残念なことに、この成功は、必要とされているような考え方の劇的な変化をもたらすには至っていない。例えば、期日が厳しい実験では、最も確立されている望ましくないDMFやNMP等に依存することが続いている。このことは、標的化合物の物性がいつも決まって限られた溶解性しか示さない製薬産業において一層重要性および関連性が増している。
【0003】
望ましくない極性非プロトン性溶媒を代替する一つの手法がLipshutz教授(Professor Lipshutz)により開発され、優しい設計(benign-by-design)を界面活性化学に応用した最新の事例が公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、生産性を向上させると共に望ましくない副生成物を低減するために、界面活性剤/溶媒系における化学反応を改良することが当該技術分野において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、界面活性剤/水混合物を反応媒体として用いた反応混合物において、触媒化合物に結合させた可溶化基が反応相手の可溶化を大幅に促すことを見出したことに基づいている。このことは、反応の生産性のみならず選択性にも多大な影響を与えた。とりわけ、中程度の長さのアルキル基およびポリ(エチレングリコール)基を、カップリング試薬または金属触媒と錯体形成している配位子に結合させた場合に、非常に有望な結果が得られる。
【0006】
第1の態様において、本発明は、1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、触媒は、(a)1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬;または(b)1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオン;であり、可溶化基は、C5~50アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物を提供する。
【0007】
第2の態様において、本発明は、化学反応を実施する方法であって、
(a)本発明の第1の態様に従う反応混合物を準備するステップと、
(b)化学反応を進行させるステップと、
を含む、方法を提供する。
【0008】
第3の態様において、本発明は、化学反応の収率を向上させ、および/または化学反応において生成する副生成物の量を低減する方法であって、この化学反応は、界面活性剤/水混合物中で実施され、
(a)1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;可溶化基は、C5~50アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物を準備するステップと;
(b)化学反応を進行させるステップと;
を含む、方法を提供する。
【0009】
上述の態様は組み合わせることができる。本発明の他の目的、特徴、利点および態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかになるであろう。しかしながら、以下の説明、特許請求の範囲および本出願の好ましい実施形態を示す具体例は例示のみを目的として示されていることを理解すべきである。以下を読むことによって、開示する発明の趣旨および範囲内での様々な変形および修正が当業者にすぐに明らかになるであろう。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、第1の態様において、1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、触媒は、(a)1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬;または(b)1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであって;可溶化基は、C5~50アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物を提供する。
【0011】
本発明の技術は、界面活性剤/水混合物を含む媒体中で実施することができるあらゆる化学反応に適している。特にこれは、例えば、少なくとも部分的に疎水性である化合物を使用する有機化学に用いることができる。好適な化学反応の例として、クロスカップリング反応(鈴木クロスカップリング、鈴木・宮浦クロスカップリング、薗頭クロスカップリング、ヘック(Heck)クロスカップリング、バックワルド・ハートウィッグ(Buchwald-Hartwig)クロスカップリング、根岸クロスカップリング、スティレ(Stille)クロスカップリング、宮浦ホウ素化、檜山クロスカップリング、Chan-Maクロスカップリング、オレフィンメタセシス等);銅触媒によるクロスカップリング、ニッケル触媒によるクロスカップリング、求核置換(芳香族求核置換(SNAr)等);求電子ハロゲン化、芳香族および複素芳香族ハロゲン化;生体触媒による変換(biocatalytic transformation);アミド化;酸化;還元(ニトロ基、オキシム基、アジド基、ニトリル基およびアミド基の還元等);ニトリルおよびイミンの加水分解;水素化;および脱ベンジル化;からなる群から選択される化学反応が挙げられる。特定の実施形態において、化学反応はアミド化である。これらの実施形態において、触媒は、好ましくはカップリング試薬である。反応混合物中に存在する反応体および触媒は特定の化学反応に適したものである。特に、反応体および触媒は、対象の化学反応を実施することができるように具体的に選択される。
【0012】
界面活性剤/水混合物中の界面活性剤は任意の界面活性剤とすることができる。特に、界面活性剤は、化学反応と干渉すべきではない。特定の実施形態において、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。一般に、界面活性剤は両親媒性であり、親水性部分および疎水性部分を含む。具体的な実施形態において、界面活性剤は、界面活性剤/水混合物中でミセルを形成することができる。
【0013】
特定の実施形態において、界面活性剤の親水性部分は、ポリアルキレングリコール部分、とりわけポリエチレングリコール部分またはポリプロピレングリコール部分を含む。ポリアルキレン部分、とりわけポリエチレングリコール部分は、約100~約10,000g/molの範囲、とりわけ約300~約3,000g/molの範囲、特に約400~約2,000g/molの範囲の平均分子量を有することができる。ポリアルキレングリコール部分を含む界面活性剤の特定の例としては、トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(tocopherol polyethylene glycol succinate)(TPGS)、特に、DL-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS-750-M、TPGS-1000、TPGS-1500、TPGS-400、TPGS-1100-M、TPGS-2000、TPGS-860-オレイン酸エステル、TPGS-PEG-PPG-PEG-1100、TPGS-PPG-PEG-70-ブチル等)、およびDL-α-トコフェロールポリプロピレングリコールコハク酸エステル(TPPG-1000、TPPG-1000-ブチル等);Triton X-100;ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij界面活性剤、特に、Brij 30、Brij 35、Brij 52、Brij 56、Brij 58、Brij 72、Brij 76、Brij 78、Brij 92、Brij 96、Brij 98等)、Cremophor A6、Cremophor A25およびThesit;ポリエチレングリコールエステル(ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール(15)(Solutol HS 15)等);ポリソルベートまたはTweenとしても知られるポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、ポリソルベート120等);PEGコハク酸コレステリル(PEG1000コハク酸ホレステリル(holesteryl)等);(デオキシ)コール酸PEG(コール酸PEG1000、デオキシコール酸PEG1000等);クロマノールポリエチレングリコールコハク酸エステル(Chrom-400、Chrom-1000等);b-シトステロールメトキシエチレングリコールコハク酸エステル(Nok);および他のPEG誘導体(C4-azo-PEG等)が挙げられる。特定の実施形態において、界面活性剤はDL-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル、特にTPGS-750-Mである。
【0014】
さらに、他の界面活性剤、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB);相間移動界面活性剤(PTS)(デオキシコール酸ナトリウム等);ポリオキシエタニルユビキノールセバケート(polyoxyethanyl ubiquinol sebacate)(PQS)および修飾PQS;ならびにオクタン酸および他の長鎖アルキル酸、特にC6~C20アルキル鎖酸等も使用することができる。
【0015】
界面活性剤/水混合物中の界面活性剤の濃度は、特に、0.1~10%(w/w)の範囲にある。特定の実施形態において、界面活性剤/水混合物中の界面活性剤の濃度は、0.5~5%(w/w)の範囲、とりわけ0.8~4%(w/w)の範囲、1~3%(w/w)の範囲または1.5~2.5%(w/w)の範囲にあり、例えば約2%(w/w)である。具体的な実施形態において、界面活性剤/水混合物中の界面活性剤の濃度はその臨界ミセル濃度を超える。
【0016】
反応混合物中の触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンである。好適な触媒および配位子は当該技術分野において知られており、当業者が容易に選択することができる。カップリング試薬または配位子と錯体形成している金属イオンは、反応体を所望の生成物にする化学反応を触媒するのに適しているものであれば、特定の化合物に限定されない。したがって触媒の選択は、反応混合物中で実施される化学反応の種類に依存する。
【0017】
触媒がカップリング試薬である実施形態において、これは特に、アミド形成用カップリング試薬である。特にこれは、(i)活性エステルを経由してカップリングさせるためのカップリング試薬、例えば、カルボジイミド(特に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドおよび1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)、ホスホニウム塩(特に、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスファートおよび(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-トリス(ピロリジン)-ホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、グアニジニウム塩およびウロニウム塩(特に、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート、N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イル-メチレン]-N-メチルメタン-アミニウムヘキサフルオロホスファートN-オキシド、N-[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)(ジメチルアミノ)メチレン]-N-メチルメタンアミニウムテトラフルオロボラートN-オキシド、2-(2-オキソ-1(2H)-ピリジル-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラートおよびO-[(シアノ(エトキシカルボニル)-メチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)ならびにトリアジン化合物(特に、塩化シアヌル、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンおよび4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド);ならびに(ii)ホウ素化合物(boron species)を経由してカップリングさせるためのカップリング試薬、例えば、ホウ酸および3-ニトロフェニルボロン酸からなる群から選択することができる。
【0018】
特定の実施形態において、カップリング試薬は1,3,5-トリアジン誘導体である。1,3,5-トリアジン誘導体は、特にトリアジン環の2位に結合していてもよい4級アミンを含むことができる。4級アミンは、トリアジン環に結合したトリメチルアミノ基等のトリアルキルアミノ基またはN-メチル-N-モルホリノ基等のN-アルキル-N-モルホリノ基により形成することができる。さらに、1,3,5-トリアジン誘導体は、特に、トリアジン環の4位および/または6位を、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシおよび/またはプロポキシで置換することができる。特定の実施形態において、1種以上の可溶化基は、4級アミンならびに/またはトリアジン環の4位および/もしくは6位に結合している。
【0019】
具体的な実施形態において、カップリング試薬は、一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1は、-N
+(R
3)
3であり;
R
2は、それぞれ独立に、C1~5アルコキシ、C1~5アルキル、ヒドロキシ、任意選択的に1個もしくは2個のC1~5アルキルで置換されたアミノまたは-N
+(R
3)
3であり(ここで、C1~5アルキル基またはC1~5アルコキシ基は、ヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または、1個もしくは2個の炭素原子は任意選択的に酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっている);
R
3は、それぞれ独立に、ヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または1個もしくは2個の炭素原子は、任意選択的に酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっている、C1~5アルキルであり、2個のR
3基は、任意選択的に、それらが結合している窒素原子と一緒になってC4~7複素環を形成していてもよく、1個または2個の炭素原子は、任意選択的に、酸素、硫黄または窒素に置き換わっており;
R
2および/またはR
3の少なくとも1個は可溶化基に置き換わっている)を有する。
【0020】
特定の実施形態において、R1は-N+(R3)3であり、R3は全てメチルである。この実施形態において、好ましくは、R3基のうちの1個は可溶化基に置き換わっており、特に、R2は両方共メトキシである。他の実施形態において、R1は-N+(R3)3であり、R3のうちの1個はメチルであり、他の2個のR3は、窒素と一緒になってモルホリン環を形成している。この実施形態において、好ましくは、R2基の少なくとも1個、特に両方が可溶化基に置き換わっている。この実施形態において、可溶化基に置き換わっていないR2基は、特に、メトキシまたはN-メチルモルホリン-4-イルである。
【0021】
特定の実施形態において、電荷を持つカップリング試薬は、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の対イオンをさらに含む。
【0022】
特定の実施形態において、触媒は、トリアジン化合物等のアミドカップリング試薬である。この実施形態において、反応混合物は、特にアミド化反応に使用されるものである。この実施形態において、反応混合物は、好ましくは、反応体としてのカルボン酸およびアミンを含む。他の実施形態において、トリアジン化合物は、選択的還元またはクロスカップリング反応におけるカップリング試薬として、有機金属化合物と一緒に使用される。
【0023】
触媒が、配位子と錯体形成している金属イオンである実施形態において、金属イオンは、銅イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、金イオン、マンガンイオン、鉄イオンおよびコバルトイオンからなる群から選択することができる。配位子は金属イオンと錯体形成させるのに適した任意の配位子とすることができる。これは、ビフェニル化合物;カルベン化合物(N-複素環式カルベン等、特に、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン);ビ-N-複素芳香族化合物(ビピリジン化合物等)からなる群から選択することができる。
【0024】
具体的な実施形態において、配位子は、一般式(II):
【化2】
(式中
R
1、R
2およびR
3は、互いに独立に、水素であるか、またはヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/もしくは、1個もしくは2個の炭素原子は任意選択的に酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっている、C1~5アルキルであり;
R
0は、HまたはC1~5アルキル(特にメチル)またはCH
2-Ar(式中、Arは、1、2、3、4または5個のR
4で任意選択的に置換されたフェニルまたはベンジルである)であり、ここで、C1~5アルキル基は、ヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または、1個もしくは2個の炭素原子は、任意選択的に、酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっており;
R
4は、それぞれ互いに独立に、C1~5アルコキシ、C1~5アルキル、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(プロピレングリコール)、ヒドロキシまたは1個もしくは2個のC1~5アルキルで任意選択的に置換されたアミノであり、ここでC1~5アルキル基またはC1~5アルコキシ基は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1、2もしくは3個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または、1個もしくは2個の炭素原子は、任意選択的に、酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっており、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)は、末端酸素がメチル、エチルまたはプロピルで任意選択的に置換されており;
R
0、R
1、R
2およびR
4の少なくとも1種、好ましくはR
1およびR
2の少なくとも1種、特にR
1およびR
2は両方共、可溶化基に置き換わっている)で表されるビフェニル化合物である。
【0025】
特定の実施形態において、Arは、イソプロピル基やトリフルオロメチル基等の電子-または電子吸引性基で置換されたフェニルである。例えば、Arは、2,4,6-トリス-イソプロピルフェニルまたは3,5-ビス-トリフルオロメチルフェニルとすることができる。さらに、R3は好ましくは3級ブチルである。R1およびR2は、可溶化基に置き換わっていない場合、好ましくはメチルである。
【0026】
他の実施形態において、配位子は、一般式(III):
【化3】
(式中、
Arは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4または5個のR
1で任意選択的に置換されたフェニルであり;
R
1は、それぞれ互いに独立に、C1~5アルコキシ、C1~5アルキル、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(プロピレングリコール)、ヒドロキシまたは1個もしくは2個のC1~5アルキルで任意選択的に置換されたアミノであり、ここでC1~5アルキル基またはC1~5アルコキシ基は、ヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または、1個もしくは2個の炭素原子は、任意選択的に、酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっており、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)は、末端酸素がメチル、エチルまたはプロピルで任意選択的に置換されており;
R
1基の少なくとも1個、好ましくは各Ar基の1個のR
1は可溶化基に置き換わっている)で表される、N-複素環式カルベン化合物である。
【0027】
具体的な実施形態において、Arはそれぞれ、3個のR1で2位、4位および6位が置換されたフェニルであり、R1はそれぞれメチルであり、R1の少なくとも1個、特に各Arの1個のR1は可溶化基に置き換わっている。
【0028】
他の実施形態において、配位子は、一般式(IV):
【化4】
(式中、
R
1は、それぞれ互いに独立に、C1~5アルコキシ、C1~5アルキル、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)、2、3もしくは4個の繰り返し単位を有するポリ(プロピレングリコール)、ヒドロキシまたは1個もしくは2個のC1~5アルキルで任意選択的に置換されたアミノであり、ここでC1~5アルキル基またはC1~5アルコキシ基は、ヒドロキシ、アミノ、メトキシおよびエトキシから選択される1個もしくは2個の基で任意選択的に置換されており、ならびに/または、1個または2個の炭素原子は、任意選択的に酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっており、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)は、末端酸素がメチル、エチルまたはプロピルで任意選択的に置換されており;
R
1基の少なくとも1個、好ましくはR
1基は両方共可溶化基に置き換わっている)で表される、ビピリジン化合物である。
【0029】
具体的な実施形態において、R1の一方はメトキシであり、他方は可溶化基に置き換わっているか、またはR1は両方共可溶化基に置き換わっている。
【0030】
反応混合物中の触媒の濃度は、所望の化学反応を触媒することができるように選択される。触媒が配位子と錯体形成している金属イオンである実施形態において、好適な触媒濃度は、例えば、1種以上の反応体のモル量に対し0.1~25mol%、とりわけ1~20mol%、3~15mol%または5~10mol%である。触媒がカップリング試薬である実施形態において、触媒は化学量論量で存在する。特に、カップリング試薬の濃度は、1種以上の反応体のモル量に対し、75~250mol%、とりわけ90~200mol%、100~150mol%または110~130mol%である。
【0031】
カップリング試薬または配位子は1個以上の可溶化基を含む。すなわち、カップリング試薬または配位子は、1個、2個、3個、4個、5個またはそれを超える可溶化基を含む。一実施形態において、カップリング試薬または配位子は1個の可溶化基を含む。他の好ましい実施形態において、カップリング試薬または配位子は2個の可溶化基を含む。カップリング試薬または配位子が1個を超える可溶化基を含む実施形態において、可溶化基は異なっていても同一であってもよく、特に同一である。可溶化基はそれぞれ、C5~50アルキル基を含むかまたは2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む。可溶化基は、カップリング試薬または配位子の残部に、共有結合を介して、またはエーテル基、エステル基、アミン基、アミド基、チオエーテル基、チオエステル基、チオアミド基等の官能基を介して結合している。
【0032】
具体的な実施形態において、可溶化基はC5~50アルキル基を含む。アルキル基は直鎖状または分岐状または環状であってもよく、特に直鎖状である。アルキル基は5~50個の炭素原子、特に5~25個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、7~18個の炭素原子、8~15個の炭素原子または10~14個の炭素原子、特に約12個の炭素原子を含む。可溶化基のアルキル基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシ、ならびにメチル、エチルおよび/もしくはプロピルのうちの1種もしくは2種で任意選択的に置換されたアミノから、特にメトキシ、エトキシもしくはヒドロキシから選択される1種以上の基で置換されていてもよく、ならびに/または、1個以上の炭素原子、特に1、2、3もしくは4個の炭素原子は、酸素、硫黄もしくは窒素に置き換わっていてもよい。特定の実施形態において、可溶化基は、カップリング試薬または配位子の残部にエーテル基を介して結合しており、その末端がメトキシ基で任意選択的に置換された、直鎖C8~40アルキルである。可溶化基の好適な例としては、12-メトキシ-n-ドデシルオキシおよびn-ドデシルオキシが挙げられる。
【0033】
他の実施形態において、可溶化基は2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む。ポリ(アルキレングリコール)は、特に、ポリ(エチレングリコーレ(etylene glycole))、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(ブチレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコーレ(etylene glycole))である。ポリ(アルキレングリコール)基は、2~15個の繰り返し単位、特に2~12個の繰り返し単位、3~10個の繰り返し単位、3~8個の繰り返し単位または4~6個の繰り返し単位、とりわけ約5個の繰り返し単位を有することができる。ポリ(アルキレングリコール)基は、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシならびにメチル、エチルおよび/またはプロピルの1個または2個で任意選択的に置換されたアミノから、特に、メチル、エチルまたはプロピルから選択される1種以上の基で置換されていてもよい。特定の実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)基は、末端酸素が、特にメチルまたはエチルで置換されている。他の実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)基は、各繰り返し単位に同一の置換基、特にメチル基またはエチル基を含む。可溶化基の好適な例としては、4~6個の繰り返し単位および任意選択的に末端酸素にメチル基を有するポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0034】
反応混合物中の1種以上の反応体は、化学反応を実施するのに適した任意の反応体とすることができる。反応体は、特に、反応混合物中で実施される化学反応の種類に依存する。特定の実施形態において、反応混合物は、1種の反応体、2種の反応体または3種の反応体を含む。具体的な実施形態において、反応体の少なくとも1種は水と混和しないか、またはごく一部が水と混和する。特に、ごく一部が水と混和する反応体は、室温で20g/L以下の濃度、とりわけ10g/L以下または5g/L以下の濃度においてのみ水と混和する。例示的な反応体としては、ボロン酸、ボロン酸エステル、オルガノシラン、ハロゲン化物、酸および/または対応する活性エステル、アミン、アルコールならびにアルケンが挙げられる。反応混合物がアミド化反応の実施に用いられる実施形態において、反応混合物は、特に、カルボン酸である1種の反応体と、アミン、特に1級アミンである1種の反応体とを含む。
【0035】
反応体は、化学反応の実施に適した任意の濃度で使用することができる。特に、反応体は高濃度で使用される。例えば、反応混合物中の反応体の少なくとも1種、特に全ての反応体の濃度は、少なくとも0.1M、特に少なくとも0.5M、少なくとも1.0M、少なくとも1.1M、少なくとも1.2M、少なくとも1.3M、少なくとも1.5M、少なくとも1.7Mまたは少なくとも2.0Mである。反応混合物がさらに有機溶媒を含む特定の実施形態において、反応混合物中の1種以上の反応体の濃度は、界面活性剤/水混合物中における溶解性または混和性の飽和濃度を超える。特にこれは、上記飽和濃度を少なくとも約5%、特に少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%または少なくとも約50%上回る。これらの実施形態において、反応体は反応混合物中の有機溶媒により溶解または混和する。当業者は好適な反応体およびそれらの濃度を選択することができる。
【0036】
特定の実施形態において、反応混合物はさらに塩基を含むことができる。反応混合物中におけるさらなる塩基の存在の有無は、特に、反応混合物中で実施すべき化学反応の種類に依存する。塩基は有機塩基であっても無機塩基であってもよい。特に、塩基は少なくともある程度水溶性であるかまたは少なくともある程度水混和性である。例示的な塩基としては、トリエチルアミン(TEA)等のトリアルキルアミン、N-メチルモルホリン(NMM)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、K3PO4、NaHCO3およびNa2CO3が挙げられる。反応混合物中の塩基の濃度は、特に、反応体のうちの1種の0.5~10モル当量の範囲、とりわけ、反応体のうちの1種の0.9~6モル当量の範囲、1.0~5モル当量の範囲、1.2~4モル当量の範囲または1.5~3.5モル当量の範囲にある。反応混合物が、塩基を必要としない化学反応を実施するためのものである場合、反応混合物は塩基を含む必要はない。
【0037】
具体的な実施形態において、反応混合物はさらに有機溶媒を含む。反応混合物中の有機溶媒は任意の有機溶媒とすることができる。好ましくは、これは、化学反応を乱したり阻害したりするべきではなく、特に、反応混合物の均一性を増加させるべきである。特定の実施形態において、有機溶媒は水混和性であるかまたはある程度水混和性である。有機溶媒は、とりわけ、非プロトン性有機溶媒である。有機溶媒の好適な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)およびその誘導体(メチルテトラヒドロフラン等)、ピリジン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、特に平均分子量が約100g/mol~約2000g/molであるPEG(PEG200、PEG600、PEG1000、PEG2000等)、それらの誘導体(モノ-またはジアルキルPEG等、特に、モノ-またはジメチルPEG、モノ-またはジエチルPEGおよびモノ-またはジプロピルPEG)が挙げられる。他の例としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、トルエンおよびアルコール(C1~10脂肪族アルコール等、特に2-ブチルアルコール)が挙げられる。特定の実施形態において、有機溶媒は塩基ではなく、および/または化学反応の際に塩基として作用しない。
【0038】
具体的な実施形態においては、反応混合物の粘度を増大させる有機溶媒が使用される。例えば、有機溶媒を含む反応混合物の粘度は、少なくとも1.25cSt、とりわけ少なくとも1.5cSt、少なくとも1.75cStまたは少なくとも2.0cStである。反応混合物の粘度を増大させる好適な有機溶媒としては、PEG(PEG200、PEG600、PEG1000(平均分子量がそれぞれ200g/mol、600g/molおよび1000g/molのPEG)等)が挙げられる。
【0039】
具体的な実施形態において、反応混合物は、それぞれ反応体または生成物の質量当たり、有機溶媒を0.1~50体積当量と、界面活性剤/水混合物を1~50体積当量とを含む。有機溶媒の量および界面活性剤/水混合物の量は、理論上の生成物の量あるいは化学反応の反応体の量に関し定められる。この量が理論上の生成物に基づき定められる場合、1体積当量は、化学反応において転化率100%の場合に得られる理論上の生成物の総重量に等しい。理論上の生成物の重量は、理論密度1g/mLを用いて体積に変換される。したがって、例えば、転化率100%の生成物が1.5kgであることに基づき計算すると、1体積は1.5Lに相当する。この量が反応体に基づき定められる場合、1体積当量は反応体の総重量に等しい。反応体の重量は理論密度1g/mLを用いて体積に変換される。したがって、例えば1.5kgの反応体を反応混合物に使用した場合、1体積は1.5Lに相当する。
【0040】
特定の実施形態において、反応混合物中の有機溶媒の量は、少なくとも0.2体積当量、特に少なくとも0.4体積当量、少なくとも0.6体積当量、少なくとも0.8体積当量、少なくとも1.0体積当量、少なくとも1.5体積当量または少なくとも2.0体積当量である。他の実施形態において、反応混合物中の有機溶媒の量は、最大で40体積当量、特に、最大で30体積当量、最大で25体積当量、最大で20体積当量、最大で15体積当量、最大で12体積当量または最大で10体積当量である。具体的な実施形態において、反応混合物中の有機溶媒の量は、0.4~25体積当量の範囲、特に、0.8~15体積当量の範囲にある。特定の実施形態において、反応混合物中の有機溶媒の量は、1%~70%の範囲、特に2%~65%の範囲、3%~60%の範囲、4%~55%の範囲または5%~50%の範囲にある。
【0041】
特定の実施形態において、反応混合物中の界面活性剤/水混合物の量は、少なくとも1.5体積当量、特に、少なくとも2.0体積当量、少なくとも2.5体積当量、少なくとも3.0体積当量、少なくとも3.5体積当量、少なくとも4.0体積当量または少なくとも5.0体積当量である。他の実施形態において、反応混合物中の界面活性剤/水混合物の量は、最大で45体積当量、特に、最大で40体積当量、最大で35体積当量、最大で30体積当量、最大で25体積当量、最大で22体積当量または最大で20体積当量である。具体的な実施形態において、反応混合物中の界面活性剤/水混合物の量は、1.5~25体積当量の範囲、特に2.0~20体積当量の範囲にある。特定の実施形態において、反応混合物中の界面活性剤/水混合物の量は、30%~98%の範囲、特に、35%~95%の範囲、40%~92%の範囲、45%~90%の範囲または50%~85%の範囲にある。
【0042】
有機溶媒および界面活性剤/水混合物の総量は、特に、特定の実施形態において、30体積を超えないようにすることができ、特に、25体積当量以下、20体積当量以下または15体積当量以下でさえある。具体的な実施形態において、反応混合物中の有機溶媒の体積は、界面活性剤/水混合物の体積の約1%~約200%の範囲、特に、約2%~約150%の範囲、約3%~約120%の範囲、約4%~約110%の範囲または約5%~約100%の範囲にある。
【0043】
一実施形態において、反応混合物は工業規模で用いるためのものである。これは例えば、体積を少なくとも1L、特に少なくとも10L、少なくとも100Lまたは少なくとも1000Lとすることができる。他の実施形態において、反応混合物は微小規模で用いるためのものである。これは例えば、体積を10mL以下、特に1mL以下、100μL以下、10μL以下または1μL以下とすることができる。
【0044】
反応混合物は、化学反応を実施するための連続方式(charge)または回分方式用混合物である。特定の実施形態において、反応混合物は、反応生成物を一切含まないかまたは任意の反応生成物の残存量のみを含む。他の実施形態においては、化学反応の生成物を多量に含むこともできる。他の実施形態において、反応混合物は、化学反応の実施に必要な全ての反応体を含むわけではない。特に反応混合物は、1種のみの反応体を含む。例えば、この実施形態においては、1種の反応体を反応混合物にゆっくりと添加することができ、これは化学反応によって直接消費される。特定の実施形態において、反応混合物は均一な混合物であり、特にコロイド懸濁液である。特に反応混合物は、反応体や生成物等の成分の集合体または油状分離物(oiled out component)を含まない。
【0045】
第2の態様において、本発明は、化学反応を実施する方法であって、
(a)本明細書に記載する反応混合物を準備するステップと、
(b)化学反応を進行させるステップと、
を含む方法を提供する。
【0046】
反応混合物は、とりわけ、1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含み、触媒は、(a)1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬;または(b)1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;可溶化基は、C5~50アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む。この反応混合物は、特に、本明細書に記載する特徴、実施形態および実施例(これらの組合せを含む)のいずれかを表すことができる。
【0047】
化学反応は、界面活性剤/水混合物を含む媒体中で実施することができる任意の化学反応とすることができる。特に、有機化学合成反応は、例えば、少なくとも一部が疎水性である化合物を用いて実施することができる。例示的な化学反応としては、クロスカップリング反応(鈴木クロスカップリング、鈴木・宮浦クロスカップリング、薗頭クロスカップリング、ヘッククロスカップリング、バックワルド・ハートウィッグクロスカップリング、根岸クロスカップリング、スティレクロスカップリング、宮浦ホウ素化、檜山クロスカップリング、オレフィンメタセシス等);銅触媒によるクロスカップリング、ニッケル触媒によるクロスカップリング、求核置換(SN2)(芳香族求核置換(SNAr)等);アミド化;酸化;還元(ニトロ基、オキシム基、アジド基、ニトリル基およびアミド基の還元等);水素化;および脱ベンジル化からなる群から選択される化学反応を挙げることができる。特定の実施形態において、化学反応はアミド化反応である。反応混合物中に存在する反応体および触媒は、具体的な化学反応に適したものである。特に、反応体および触媒は、化学反応が望ましい形で進行するように具体的に選択される。
【0048】
特定の実施形態において、化学反応は、ステップ(b)において、化学反応の実施に適した反応条件下で進行する。特に、反応条件としては、90℃以下の温度、とりわけ、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下または30℃以下の温度を含む。例えば、化学反応は、ほぼ室温で進行させることができる。具体的な実施形態において、反応混合物は、化学反応の間中ずっと撹拌され、特に掻き混ぜ(stirred)られる。
【0049】
一部の化学反応においては、反応混合物の様々な成分を添加する順序および速度が重要となる。一部の実施形態においては、反応体の1種以上は、反応混合物の他の成分(他の反応体、触媒、塩基等)を任意選択的に含む界面活性剤/水混合物にゆっくりと添加される。これは特に、水溶性の低い反応体に適用される。このことに関するゆっくりと添加するとは、例えば、少なくとも5分間、特に、少なくとも7分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間または少なくとも60分間に亘って反応体を添加することを指す。水溶性が低いとは、特に、室温下での水溶性が20g/L以下、特に10g/L以下または5g/L以下であることを指す。これらの実施形態においては、反応体を添加する前に有機溶媒を界面活性剤/水混合物に添加することができるか、あるいは有機溶媒を反応体と一緒に添加することができる。例えば、反応体を有機溶媒と混合するかまたは有機溶媒中に溶解した後、界面活性剤/水混合物に添加することができる。
【0050】
化学反応を実施する方法は、化学反応の生成物を単離するさらなるステップも含むことができる。特に、このステップは、化学反応が完結した後に実施される。生成物は、特に、反応混合物の1種以上の成分、その中でも特に、反応混合物の実質的に全ての他の成分から分離される。例えば、生成物は、1種以上の残存している反応体、副生成物、触媒、塩基、有機溶媒および/または界面活性剤/水混合物から分離される。生成物の単離は、例えば、溶媒の蒸発、凝集または晶析および濾過、相分離、クロマトグラフィーによる分離等を含む、当該技術分野において知られている技法により達成することができる。
【0051】
特定の実施形態において、反応混合物は、化学反応全体を通して均一な混合物であり、特にコロイド懸濁液である。特にこの点に関する「化学反応全体を通して」とは、最終反応混合物の確立から化学反応の完結または停止までを意味する。
【0052】
本発明は、界面活性剤/水混合物中における反応体および生成物の溶解性を向上し、安定かつ均一な反応混合物を提供する。それにより、化学反応の収率は向上し、化学反応により得られる望ましくない副生成物の量は低下する。このことを考慮し、本発明は、他の態様において、界面活性剤/水混合物中で実施される化学反応の収率を向上させる方法であって、
(a)1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;可溶化基は、C5~50アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物を準備するステップと;
(b)化学反応を進行させるステップと;
を含む、方法を提供する。
【0053】
他の態様において、本発明は、界面活性剤/水混合物中における化学反応の副生成物の量を低減する方法であって、
(a)1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;可溶化基は、C5~50アルキル基を含むかまたは2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物を準備するステップと;
(b)化学反応を進行させるステップと;
を含む、方法を提供する。
【0054】
化学反応を実施する方法および反応混合物に関する本明細書に記載する実施形態、特徴および実施例(これらの組合せを含む)は、ステップ(a)においてそれぞれ準備する界面活性剤/水混合物および反応混合物中で実施される化学反応において収率を向上させる方法および生成する副生成物の量を低減する方法にも同様に適用される。
【0055】
反応混合物は、ステップ(a)において異なる成分を互いに任意の好適な順序で添加することにより準備することができる。例えば、ステップ(a)において反応混合物を準備することは、界面活性剤/水混合物を準備することと、上記界面活性剤/水混合物に触媒および1種以上の反応体を添加することとを含むことができる。
【0056】
本発明はまた、界面活性剤/水混合物中で実施される化学反応において収率を向上させ、および/または生成される副生成物の量を低減するための、
(a)1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬;または
(b)1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオン;
である触媒の使用であって、
可溶化基は、C5~50アルキル基を含むかまたは2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、使用を提供する。
【0057】
本明細書において使用される「含む(comprise)」という表現は、字義通りの意味に加えて、「~から基本的になる(consist essentially of)」および「~からなる(consist of)」という表現も包含し、具体的にこれらの表現を意味する。したがって、「含む」という表現は、具体的に列挙した構成要素を「含む」主題が、他の構成要素も包含することができ、および/または他の構成要素を事実上確実に包含する実施形態のみならず、具体的に列挙した構成要素を「含む」主題が、他の構成要素を含まない実施形態も指す。同様に、「有する(have)」という表現は、「含む(comprise)」という表現として理解されることに加えて、「~から基本的になる(consist essentially of)」および「~からなる(consist of)」という表現も包含し、具体的にこれらを意味すると理解すべきである。
【0058】
本明細書に記載する数値範囲は、その範囲を規定する数値を包含する。本明細書に提示する見出しは、本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではなく、明細書全体を参照することにより理解することができる。一実施形態によれば、本明細書において、方法の場合は特定のステップを含むものとして、または組成物の場合は特定の成分を含むものとして記載する主題は、各ステップまたは各成分からなる主題を指す。本明細書に記載する特定の態様および実施形態を選択および組み合わせることも好ましく、特定の実施形態の各組合せによって生じる特定の主題も同様に本開示に属する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】TPGS-750-M(2wt%)を含む水中において、カップリング試薬としてトリアジン6c(A)または6h(B)を使用した場合の、4-ブロモ安息香酸の3-メチルフェノール(0.5eq)および3-エチルアニリン(0.5eq)による化学選択的転化を示すものである。(A)においては、全転化率(三角形)およびアミドへの転化率(菱形)およびエステルへの転化率(丸)を示す。(B)においては、エステルへの転化は認められず、したがってアミドへの転化率は全転化率に等しい。
【発明を実施するための形態】
【0060】
実施例
TPGS-750-M(水中2%、10eqV)中にカルボン酸(1eq)、NaHCO3(1eq)およびアミン(1.1eq)を含む混合物に、トリアジン(1.1eq)を水混和性共溶媒(1eqV)に溶解した溶液を加えた。25℃で掻き混ぜながら反応が完結するまで反応を進行させた(通常2~5時間)。完結後、生成物を、さらに水を添加することにより析出させるか、または酢酸イソプロピルで抽出し、シリカゲルのショートカラムで濾過することにより所望のアミド生成物を得た。
【0061】
次に示す難易度の高いモデル的変換について、様々な誘導体化されたトリアジン(6b~6h)を、基準となるトリアジン(6a)と比較した。
【化5】
【0062】
次に示すトリアジン誘導体を評価し、次に示す転化率を得た。
【化6】
【0063】
収率の直接的な指標として転化率を監視した(競合的な副反応が起こらないものとする)。それにより、試薬を媒体に合わせることがその結果に大きく影響することが実証された。
【0064】
次いで、様々なアミンおよびカルボン酸を用いたアミド化を、それぞれカップリング試薬6cまたは6hを使用して実施した。転化率を次に示す。
【化7】
【0065】
ここで本発明者らは、反応に参加しない側鎖が最も重大な影響を与え、常に、同程度に良好な、またはより高い選択性および収率を示すことを実証した。
【0066】
それ以外のさらに優れた特徴は、結果として得られる選択性である。次に示す非常に難しい反応において、トリアジン6cまたは6hをそれぞれカップリング試薬として使用し、アミドおよびエステルの生成を監視した。
【化8】
【0067】
結果を
図1に示す。ここから分かるように、トリアジン6h(
図1B)を使用した場合はほぼ完璧な選択性が認められた。他の条件を用いて達成することはほぼ不可能であることから、これは一層注目に値する。トリアジン6cを用いた場合も同様に、生成したエステルはごく少量であった(
図1A)。
以下の態様を包含し得る。
[1] 1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物であって、前記触媒は、
(a)1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬;または
(b)1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオン;であり、前記可溶化基は、C
5~50
アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、反応混合物。
[2] 前記可溶化基はC
5~50
アルキル基を含み、次に示す特徴:
(i)前記アルキル基は直鎖状である;
(ii)前記アルキル基は8~15個の炭素原子、特に10~14個の炭素原子、とりわけ12個の炭素原子を含む;
(iii)メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシ、任意選択的にメチル、エチルおよび/またはプロピルのうちの1個または2個で置換されたアミノから、特にメトキシ、エトキシまたはヒドロキシから選択される1種以上の基で置換されている;
(iv)12-メトキシドデシルまたはドデシルである;
の1つ以上を有する、上記[1]に記載の反応混合物。
[3] 前記可溶化基は2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含み、次に示す特徴:
(i)前記ポリ(アルキレングリコール)基は、ポリ(エチレングリコール)基またはポリ(プロピレングリコール)基、特にポリ(エチレングリコール)基である;
(ii)前記ポリ(アルキレングリコール)基は、3~8個の繰り返し単位、特に4~6個の繰り返し単位を有する;
(iii)メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヒドロキシ、任意選択的にメチル、エチルおよび/またはプロピルのうちの1個または2個で置換されたアミノから、特に、メチル、エチルまたはプロピルから選択される1種以上の基で置換されている;
(iv)末端酸素がメチルまたはエチルで任意選択的に置換されている、4~6個の繰り返し単位を有するポリ(エチレングリコール)基である;
の1つ以上を有する、上記[1]に記載の反応混合物。
[4] 前記可溶化基は、前記カップリング試薬または配位子の残部に、エーテル結合、アミン結合、エステル結合またはアミド結合を介して結合している、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[5] 前記カップリング試薬または配位子は、1個または2個の可溶化基を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[6] 前記触媒は1,3,5-トリアジン誘導体であるカップリング試薬であり、任意選択的に、次に示す特徴:
(i)好ましくは、トリメチルアミノ基またはN-メチル-N-モルホリノ基である、4級アミン、特に、前記トリアジン環の2位に結合した4級アミンを含む;
(ii)前記トリアジン環の4位および/または6位は、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシおよび/またはプロポキシで置換されている;
(iii)前記可溶化基は、前記4級アミンならびに/または前記トリアジン環の4位および/もしくは6位に結合している;
の1つ以上を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[7] 前記触媒は、ビフェニル化合物、N-複素環式カルベン化合物およびビピリジン化合物からなる群から選択される配位子と錯体形成している金属イオンである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[8] 前記触媒の前記金属イオンは、銅イオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、金イオン、マンガンイオン、鉄イオンおよびコバルトイオンからなる群から選択される、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[9] 前記界面活性剤は、親水性部分および疎水性部分を含む非イオン性界面活性剤であり、好ましくは、前記界面活性剤の前記親水性部分はポリエチレングリコール部分を含む、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[10] 前記界面活性剤は、(DL-α-)トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)(TPGS-750-M、TPGS-1000、TPGS-1500等);TritonX-100、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij等)、ポリエチレングリコールエステル(ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール(15)(SolutolHS15)等)、Tween(Tween 20、Tween 80等)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、相間移動界面活性剤(PTS)(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、ポリオキシエタニルユビキノールセバケート(PQS)および修飾PQS、ポリエチレングリコール(PEG)および様々な誘導体(C4-azo-PEG等)、オクタン酸および他の長鎖アルキル酸ならびにb-シトステロールメトキシエチレングリコールコハク酸エステル(Nok)からなる群から選択される、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[11] 前記界面活性剤/水混合物中の前記界面活性剤の濃度は0.5~5%(w/w)である、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[12] 前記反応混合物は、1種の反応体または2種の反応体を含む、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[13] 有機溶媒をさらに含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[14] 前記反応混合物は均一な混合物である、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[15] 前記反応混合物はコロイド懸濁液である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の反応混合物。
[16] 化学反応を実施する方法であって、
(a)上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の反応混合物を準備するステップと、
(b)前記化学反応を進行させるステップと、
を含む方法。
[17] 前記化学反応の生成物を単離するステップをさらに含む、上記[16]に記載の方法。
[18] 前記反応混合物は、前記化学反応全体を通して均一な混合物である、上記[16]または[17]に記載の方法。
[19] 前記反応混合物は前記化学反応全体を通してコロイド懸濁液である、上記[16]~[18]のいずれか一項に記載の方法。
[20] 界面活性剤/水混合物中で実施される化学反応の収率を向上する方法であって、
(a)1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物を準備するステップであって、前記触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;前記可溶化基は、C
5~50
アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、ステップと;
(b)前記化学反応を進行させるステップと;
を含む、方法。
[21] 界面活性剤/水混合物中で実施される化学反応において生成する副生成物の量を低減する方法であって、
(a)1種以上の反応体と、触媒と、界面活性剤/水混合物とを含む反応混合物を準備するステップであって、前記触媒は、1種以上の可溶化基を含むカップリング試薬であるか、または1種以上の可溶化基を含む配位子と錯体形成している金属イオンであり;前記可溶化基は、C
5~50
アルキル基を含むか、または2~20個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレングリコール)基を含む、ステップと;
(b)前記化学反応を進行させるステップと;
を含む、方法。
[22] 前記反応混合物は上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の反応混合物である、上記[20]または[21]に記載の方法。
[23] 上記[16]~[19]のいずれか一項に記載の化学反応を実施する方法を含む、上記[20]または[21]に記載の方法。