(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】インクジェット記録用水系インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20221117BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221117BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2019529717
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2018025909
(87)【国際公開番号】W WO2019013173
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017134978
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】光吉 要
(72)【発明者】
【氏名】江川 剛
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116927(JP,A)
【文献】特開2005-120265(JP,A)
【文献】特開2015-013990(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196578(WO,A1)
【文献】特開2012-136645(JP,A)
【文献】特開2009-108116(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181797(WO,A1)
【文献】特開平10-120956(JP,A)
【文献】特開2016-145312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含み、
架橋ポリマー粒子が、ポリマーで顔料を分散した後に架橋剤で架橋してなるものであり、
架橋ポリマー粒子を構成するポリマーがビニル系ポリマーであり、
架橋前のビニル系ポリマーの酸価が150mgKOH/g以上であり、
架橋ポリマーの架橋率が10モル%以上90モル%以下であり、
架橋ポリマーの酸価が40mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であり、
架橋剤が分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、
インダンスロン骨格を有する顔料がC.I.ピグメントブルー60であり、
有機溶媒の含有量が
40質量%以上65質量%以下である、
インクジェット記録用水系インク。
【請求項2】
ビニル系ポリマーが、アクリル酸及び/又はメタクリル酸由来の構成単位を含むアクリル系ポリマーである、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項3】
有機溶媒が、沸点が90℃以上245℃以下である多価アルコールを含む、請求項1
又は2に記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項4】
多価アルコールが、炭素数2以上6以下の炭化水素に2以上の水酸基を有する化合物、及びこれらの水酸基が縮合した化合物から選ばれる1種以上である、請求項
3に記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項5】
32℃の粘度が2.0mPa・s以上12mPa・s以下である、請求項1~
4のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項6】
顔料を含有する架橋ポリマー粒子に対する顔料の質量比〔顔料/顔料を含有する架橋ポリマー粒子〕が、100/300以上100/25以下である、請求項1~
5のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項7】
顔料を含有する架橋ポリマー粒子の水系インク中の含有量が、1質量%以上20質量%以下である、請求項1~
6のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクを製造する方法であって、
顔料を含有する架橋ポリマー粒子が、顔料水分散体として下記の工程I及び工程IIを有す
る、インクジェット記録用水系インク
の製造方法。
工程I:架橋前のポリマーの溶液、顔料、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料を含有するポリマー粒子の水分散液を得る工程
工程II:工程Iで得られた水分散液と架橋剤を混合し、架橋処理して顔料水分散体を得る工程
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の水系インクを、インクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水系インク、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
【0003】
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、着色剤として顔料を用いるインクジェット記録用インクが広く用いられており、顔料としては、プロセスカラーであるイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの顔料が用いられている。これらプロセスカラーの顔料を用いたインクにおいては、インクの保存安定性をより高めるために、顔料を分散させるためのポリマー分散剤を架橋する等の手法が用いられてきた。
例えば、特開2008-156465号(特許文献1)には、架橋ポリマーを用いるインクとして、C.I.ピグメントイエロー74と極性基を有する顔料誘導体とを含有する架橋ポリマー粒子を含むインクジェット記録用水系インクであって、該架橋ポリマー粒子が、分子中に2以上の反応性官能基を有する化合物でポリマーを架橋して得られるものであるインクジェット記録用水系インクが開示されている。
【0004】
さらに近年、色の再現領域を拡大するために、特別色としてレッド・グリーン・ブルー・オレンジ・バイオレット等の顔料が用いられるようになってきた。
例えば、特開2005-15813号(特許文献2)には、C.I.ピグメントブルー60、22、64又は21の少なくとも一つを含んでなるシアンインク組成物を含むインクジェット記録用インクセットが開示されている。
また、特開2003-94792号(特許文献3)には、記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアンの顔料インクを用いて記録するインクジェット記録方法において、該記録媒体が、特定の光沢度、表面粗さ、浸透速度を有し、顔料インクの少なくとも一つが特定のゼータ電位の顔料粒子を含有するインクジェット記録方法が開示されており、その実施例では、C.I.ピグメントブルー60をアクリル-スチレン系樹脂で分散したインクセットが用いられている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含み、架橋ポリマーの架橋率が10モル%以上90モル%以下であり、有機溶媒の含有量が30質量%以上65質量%以下である、インクジェット記録用水系インク、及びインクジェット記録方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明者らは、溶剤量が多い系において、各色インクを作製して評価した結果、C.I.ピグメントブルー60等のインダンスロン骨格を有する顔料とポリマー分散剤を用いると、溶剤量が多い系ではインク保存時に増粘や、凝集が生じる傾向があることが判明した。
しかしながら、特許文献1では、C.I.ピグメントブルー60等の特別色の顔料は使用されておらず、特別色の顔料使用による問題点の認識がない。
特許文献2及び3では、用いるポリマーは架橋されておらず、また、インクによる耐光性や画質等の画像の評価はされているが、インクの保存安定性等については検討されていない。このように、従来、溶剤量が多い系での特別色のインクジェット記録用インクの保存安定性について具体的な検討はなされていなかった。
本発明は、インダンスロン骨格を有する顔料を含み、溶剤量が多い系においても、増粘や凝集を抑制できるインクジェット記録用インク、及びインクジェット記録方法に関する。
【0007】
本発明者らは、インダンスロン骨格を有する顔料を含み、溶剤量が多い水系インクにおいて、顔料を含有する架橋ポリマー粒子を用いることにより、前記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]に関する。
[1]インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含み、架橋ポリマーの架橋率が10モル%以上90モル%以下であり、有機溶媒の含有量が30質量%以上65質量%以下である、インクジェット記録用水系インク。
[2]前記[1]に記載の水系インクを、インクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
【0008】
本発明によれば、インダンスロン骨格を有する顔料を含み、溶剤量が多い系においても、増粘や凝集を抑制できるインクジェット記録用インク、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【0009】
[インクジェット記録用水系インク]
本発明のインクジェット記録用水系インクは、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含み、架橋ポリマーの架橋率が10モル%以上90モル%以下であり、有機溶媒の含有量が30質量%以上65質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録用水系インクは、インダンスロン骨格を有する顔料とポリマー分散剤を用いてインク保存時に、特異的に生じる増粘や、凝集を抑制できるという効果を有する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
ポリマー分散剤の顔料への吸着性は、顔料種によって溶媒との親和性(溶解度パラメータ:sp値)、比表面積等が異なるため、同じポリマーであっても顔料への吸着性に差が生じる。C.I.ピグメントブルー60に代表されるインダンスロン骨格を有する顔料は他の顔料に比べて水中におけるポリマーの吸着性が劣っている。これは、インダンスロン骨格を有する顔料は、汎用の顔料に比べて、ポリマーとの親和性が低い又はポリマーが吸着できる表面の面積が小さい傾向にあるため、ポリマー分散剤が該顔料に吸着しにくいためであると考えられる。
インダンスロン骨格を有する顔料は、水中では、顔料に吸着しているポリマー分散剤の斥力により、かろうじて分散しているが、インク中に溶剤を加えると疎水性のポリマー分散剤は溶媒に溶解しやすくなるため、顔料表面からのポリマーの脱離が進行し、分散安定化状態を保てなくなり、増粘や凝集が起こると考えられる。
ここで、顔料に吸着したポリマー分散剤同士を10モル%以上の架橋率で架橋したポリマーを用いることにより、溶剤を多量に加えた場合にも顔料表面からのポリマーの脱離が抑制できるため、増粘や凝集を抑制できると考えられる。
ここで、「ポリマー分散剤」とは架橋前のポリマーをいい、「架橋ポリマー」とはポリマー分散剤を架橋したポリマーをいい、「顔料を含有する架橋ポリマー粒子」とは、顔料表面に吸着したポリマー分散剤を架橋剤で架橋してなる顔料と架橋ポリマーを含む粒子をいう。
【0011】
<インクジェット記録用水系インク>
本発明のインクジェット記録用水系インク(以下、単に「水系インク」ともいう)は、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子(以下、「顔料含有架橋ポリマー粒子」ともいう)、有機溶媒及び水を含有する。
本発明の水系インクの製造方法に特に制限はないが、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子の水分散体、水、有機溶媒、及び必要に応じて界面活性剤等を公知の方法により混合し、有機溶媒の含有量を30質量%以上65質量%以下に調整する方法が好ましい。
なお、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
【0012】
<インダンスロン骨格を有する顔料>
本発明の水系インクは、着色剤として、インダンスロン骨格を有する顔料(以下、単に「顔料」ともいう)を用いる。
インダンスロンはα-、β-、γ-及びδ-の4種の形態で存在し、その形態により、緑色~赤色の色調を有する青色の着色を与える。これらの中でも、α形態は最も安定であり、α型インダンスロン顔料は、美しい赤味の青色顔料として、銅フタロシアニン顔料では要求性能が満たせないような、高耐候性の赤味青色の色調を得るために有用である。
本発明に用いられるインダンスロン骨格を有する顔料としては、下記式(1)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0013】
【化1】
(式中、Clは、化合物構造中のいずれかの水素原子と置換した塩素原子を示し、xは、塩素原子の置換数であり、0~3の整数を示す。)
【0014】
前記式(1)で表される化合物としては、C.I.ピグメントブルー60(前記式(1)中のxが0)、C.I.ピグメントブルー22(前記式(1)中のxが1)、C.I.ピグメントブルー64(前記式(1)中のxが2)、C.I.ピグメントブルー21(前記式(1)中のxが3)等から選ばれる1種以上が好ましく、C.I.ピグメントブルー60がより好ましい。
本発明においては、インダンスロン骨格を有する顔料と共に、必要に応じて、他の有機顔料、体質顔料を併用することもできる。
インダンスロン骨格を有する顔料は、水系インク中に、顔料を含有する架橋ポリマー粒子として含有される。
【0015】
<顔料を含有する架橋ポリマー粒子>
インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子(顔料含有架橋ポリマー粒子)を構成するポリマー分散剤は、架橋剤で架橋され架橋ポリマーとされる。
架橋ポリマー粒子を構成するポリマーは、好ましくは水不溶性ポリマーである。
ここで、水不溶性ポリマーの「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。ポリマーがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
【0016】
顔料含有架橋ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに顔料が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、ポリマーの粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。これらの中では、ポリマーに顔料が内包された粒子形態が好ましい。
顔料含有架橋ポリマー粒子を構成する架橋前のポリマー分散剤としては、ポリエステル及びポリウレタン等の縮合系樹脂、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、水系インクの増粘や凝集を抑制し、保存安定性を向上させる観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。ビニル系ポリマーとしては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸由来の構成単位を含むアクリル系ポリマーが挙げられ、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。架橋前のポリマーは、水溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーのいずれも用いることができる。
【0017】
架橋前のポリマー分散剤がビニル系ポリマーである場合、(a)イオン性モノマー由来の構成単位、(b)疎水性モノマー由来の構成単位、及び(c)親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、これらの構成単位のうち、2種以上を含有することがより好ましく、3種を含有することが更に好ましい。例えば、(a)イオン性モノマー及び(b)疎水性モノマーの組み合わせ、(a)イオン性モノマー、(b)疎水性モノマー、及び(c)親水性ノニオン性モノマーの組み合わせが挙げられる。
ビニル系ポリマーは、高親水性ポリマーであることが好ましい。高親水性ポリマーとは、ポリマーの酸価が150mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以上のポリマーを意味する。
ビニル系ポリマーは、例えば、(a)イオン性モノマー、(b)疎水性モノマー、及び(c)親水性ノニオン性モノマーを含むモノマー混合物を公知の方法により付加重合して得ることができる。
【0018】
(a)イオン性モノマー
(a)イオン性モノマーは、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。(a)イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、カルボキシ基を有するカルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等がより好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
カチオン性モノマーとしては、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド等が挙げられる。
なお、(a)イオン性モノマーには、酸やアミン等の中性ではイオンではないモノマーであっても、酸性やアルカリ性の条件でイオンとなるモノマーを含む。
【0019】
(b)疎水性モノマー
(b)疎水性モノマーは、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~22、好ましくは炭素数6~18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0020】
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6~22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、及びスチレン系マクロモノマーがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2-メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有し、数平均分子量が好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上で、好ましくは100,000以下、より好ましくは10,000以下の化合物である。重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
【0021】
(c)親水性ノニオン性モノマー
(c)親水性ノニオン性モノマーは、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させ、増粘や凝集を抑制する観点から、ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。
(c)親水性ノニオン性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2~30)等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうる(c)親水性ノニオン性モノマーの具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM-20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE-90、同200、同350、PME-100、同200、同400等、PP-500、同800、同1000等、AP-150、同400、同550等、50PEP-300、50POEP-800B、43PAPE-600B等が挙げられる。
上記(a)イオン性モノマー、(b)疎水性モノマー、及び(c)親水性ノニオン性モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に用いられるポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲において、前記モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位を含有していてもよい。
【0022】
(モノマー混合物中又はポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
ポリマー分散剤製造時における、前記各成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はポリマー分散剤中における各成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
なお、ポリマー分散剤の構成単位の含有量は、架橋ポリマー粒子を構成するポリマーの構成単位の含有量となる。
(a)イオン性モノマーの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
(b)疎水性モノマーの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(c)親水性ノニオン性モノマーを含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0023】
また、(b)成分としてマクロモノマーを含有する場合、マクロモノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
さらに、マクロモノマーを含む(b)疎水性モノマーに対する(a)イオン性モノマーの質量比〔(a)イオン性モノマー/(b)疎水性モノマー〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.50以下である。
【0024】
(ポリマー分散剤の製造)
前記ポリマー分散剤は、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる有機溶媒に制限はないが、炭素数1~3の脂肪族アルコール、炭素数3~8のケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンがより好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2-メルカプトエタノールがより好ましい。
【0025】
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は50℃以上90℃以下が好ましく、重合時間は1時間以上20時間以下であることが好ましい。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
ポリマー分散剤は、後述する顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶剤を除去せずに、そのままポリマー溶液として用いることが好ましい。
ポリマー溶液の固形分濃度は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
架橋前のポリマー(ポリマー分散剤)の重量平均分子量は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは11,000以上、より更に好ましくは12,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは50,000以下である。
なお、重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
ビニル系ポリマーの市販品としては、例えば、「アロンAC-10SL」(東亜合成株式会社製)等のポリアクリル酸、「ジョンクリル67」、「ジョンクリル611」、「ジョンクリル678」、「ジョンクリル680」、「ジョンクリル690」、「ジョンクリル819」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン-アクリル樹脂等が挙げられる。
【0026】
<顔料含有架橋ポリマー粒子の製造>
本発明のインクジェット記録用水系インクは、顔料を含有する架橋ポリマー粒子(顔料含有架橋ポリマー粒子)を含有する。
顔料を含有する架橋ポリマー粒子は、顔料水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:架橋前のポリマーの溶液、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料を含有するポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の水分散液(以下、「顔料水分散液」ともいう)を得る工程
工程II:工程Iで得られた水分散液と架橋剤を混合し、架橋処理して顔料水分散体を得る工程
【0027】
(工程I)
工程Iでは、まず、架橋前のポリマーの溶液、顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を混合し、水中油型の分散液を得る方法が好ましい。架橋前のポリマーの溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
架橋前のポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
【0028】
(中和)
本発明において、架橋前のポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて架橋前のポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。また、架橋前のポリマーが中和により水溶性の状態となるポリマーの場合、顔料含有ポリマー粒子の水分散液を得る観点から、中和剤の量を調整して、架橋前のポリマーが水不溶性の状態で工程Iを行うことが好ましい。
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0029】
中和剤は、水系インクの吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムとアンモニアを併用することがより好ましい。また、ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
ポリマーのアニオン性基の中和度は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量をポリマーのアニオン性基のモル量で除したものである。
【0030】
(顔料混合物中の各成分の含有量)
工程Iにおける顔料混合物中の顔料の含有量は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点、顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
架橋前のポリマー(ポリマー分散剤)の顔料混合物中の含有量は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点及び生産性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは、65質量%以下である。
【0031】
架橋前のポリマーに対する顔料の顔料混合物中の質量比〔顔料/架橋前のポリマー〕は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0032】
(顔料混合物の分散処理)
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の水分散液を得る。水分散液を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程Iの予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
【0033】
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
工程Iで得られた水分散液は、顔料を含有するポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。
【0034】
(工程II)
工程IIは、工程Iで得られた水分散液と架橋剤を混合し、架橋処理して顔料水分散体を得る工程である。工程IIを行うことで、顔料を含有するポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)が、顔料を含有する架橋ポリマー粒子(顔料含有架橋ポリマー粒子)となる。
【0035】
(架橋剤)
ここで、架橋剤は、架橋前のポリマー分散剤がカルボキシ基等のアニオン性基を有するアニオン性ポリマーである場合において、該アニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2~6有する化合物がより好ましい。
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、及び分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
架橋剤は、ポリマー分散剤を効率よく表面架橋する観点から、25℃のイオン交換水100gに対する溶解量が、好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは30g以下のものである。
【0036】
架橋剤の具体例としては、次の(i)~(iii)が挙げられる。
(i)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物:例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル及び水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル。
(ii)分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物:例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2~3個のオキサゾリン基が結合した化合物、より具体的には、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビスオキサゾリン、1,3-ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物。
(iii)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物:例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー。
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン-2,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート;それらのウレタン変性体等の変性体が挙げられる。
上記の架橋剤の中では、(i)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
【0037】
架橋ポリマーの架橋率は、下記計算式(1)から求められる架橋ポリマーの架橋率(モル%)において、10モル%以上90モル%以下であり、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下である。架橋剤の使用量は、上記架橋率の範囲になるように用いればよい。
架橋率(モル%)=[架橋剤の反応性基のモル数/ポリマー分散剤が有する架橋剤と反応し得る反応性基のモル数]×100 (1)
計算式(1)において、「架橋剤の反応性基のモル数」とは、使用する架橋剤のモル数に架橋剤1分子中の反応性基の数を乗じたものである。「ポリマー分散剤が有する架橋剤と反応し得る反応性基のモル数」は、ポリマー分散剤の酸価から求めることができる。架橋率0%はポリマー分散剤が架橋されていない状態、架橋率100%はポリマーが有する架橋剤と反応し得る反応性基の全てが架橋に用いられている状態である。
架橋反応時の条件は、好ましくは60~95℃で0.5~7時間である。
【0038】
得られる架橋ポリマーの酸価は、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中における分散安定性の観点から、好ましくは40mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上、より更に好ましくは70mgKOH/g以上、より更に好ましくは80mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、更に好ましくは145mgKOH/g以下、より更に好ましくは120mgKOH/g以下である。
架橋ポリマーの酸価は、実施例に記載の方法により測定することができ、また構成するモノマーの質量比から算出することもできる。
【0039】
得られた顔料水分散体の固形分濃度(不揮発成分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体中の顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは90nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは120nm以下である。
なお、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、水系インク中の顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、顔料水分散体中の平均粒径と同じであり、好ましい平均粒径の態様は、顔料水分散体中の平均粒径の好ましい態様と同じである。
【0040】
<有機溶媒>
本発明の水系インクは、インクジェット記録時の吐出安定性を向上させる観点から、有機溶媒を含有する。有機溶媒の沸点は、上記と同様の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは140℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは235℃以下である。
かかる有機溶媒としては、多価アルコール等が好ましく挙げられる。
【0041】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、例えば炭素数2以上6以下の炭化水素に2以上の水酸基を有する化合物、及びこれらの水酸基が縮合した化合物が好ましい。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等の1,2-アルカンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
これらの中では、水系インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール等の炭素数2以上6以下のアルカンジオール、及び分子量500以上1000以下のポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)等の炭素数3以上4以下の1,2-アルカンジオール、及び前記ポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレングリコールが更に好ましい。
【0042】
(その他の有機溶媒)
有機溶媒は、前記の多価アルコール以外に、水系インクに通常配合されるその他のアルコール、該アルコールのアルキルエーテル、グリコールエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(沸点251℃)や2-ピロリドン(沸点245℃)等の含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等を含有することができる。
グリコールエーテルの具体例としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられるが、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
より具体的には、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、及びジエチレングリコールブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ジエチレングリコールメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル及びジエチレングリコールイソブチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
また、1,6-ヘキサンジオール(沸点250℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、ポリプロピレングリコール(沸点250℃以上)、グリセリン(沸点290℃)等を沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<インクジェット記録用水系インクの製造>
本発明のインクジェット記録用水系インクは、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含有すればよく、その製造方法に特に制限はないが、インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子の水分散体、水、及び有機溶媒を公知の方法により混合し、有機溶媒の含有量を30質量%以上65質量%以下に調整する方法が好ましい。
【0044】
(水系インク中の各成分の含有量)
顔料の水系インク中の含有量は、水系インクの印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、顔料の水系インク中の含有量は、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、水系インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以下である。
ポリマーの水系インク中の含有量は、水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0045】
顔料含有架橋ポリマー粒子に対する顔料の質量比〔顔料/顔料含有架橋ポリマー粒子〕は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは100/300以上、より好ましくは100/200以上、更に好ましくは100/150以上であり、そして、好ましくは100/25以下、より好ましくは100/50以下、更に好ましくは100/70以下である。
顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク中の含有量は、水系インクの印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、水系インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
水系インク中の有機溶媒の含有量は、30質量%以上65質量%以下であり、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
水の水系インク中の含有量は、本発明の効果を発揮させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0046】
(その他の成分)
本発明の水系インクには、上記成分の他に、通常用いられる保湿剤、湿潤剤、濡れ・浸透剤、界面活性剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。例えば、ポリエーテル変性シリコーン、アセチレングリコール、及びアセチレングリコールのアルキレンオキシ(エチレンオキシ、プロピレンオキシ等)付加物等の有機溶剤等を添加することができる。
【0047】
濡れ・浸透剤、界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、特にポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン-1,2-ジイルオキシ基;PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ;KF-353、KF-355A、KF-642等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005、株式会社NUC製のFZ-2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-348等が挙げられる。
本発明においては、シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤を併用することができる。それらの中では、水系インクの適用性の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0048】
(水系インクの物性)
水系インクの32℃の粘度は、水系インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは4.5mPa・s以上、より更に好ましくは、5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは8.0mPa・s以下、より更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
なお、32℃における水系インクの粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
水系インクのpHは、水系インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、7.0以上が好ましく、8.0以上がより好ましく、8.5以上が更に好ましい。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは11.0以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、9.5以下が更に好ましい。
【0049】
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の水系インクを、公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像を記録する方法である。
インクジェット記録装置としては、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等があるが、ピエゾ式のインクジェット記録装置がより好ましい。
用いることができる記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙及びフィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられ、フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のインクジェット記録用水系インク、及びインクジェット記録方法を開示する。
<1> インダンスロン骨格を有する顔料を含有する架橋ポリマー粒子、有機溶媒及び水を含み、架橋ポリマーの架橋率が10モル%以上90モル%以下であり、有機溶媒の含有量が30質量%以上65質量%以下である、インクジェット記録用水系インク。
【0051】
<2> インダンスロン骨格を有する顔料が、下記式(1)で表される化合物である、前記<1>に記載のインクジェット記録用水系インク。
【化2】
(式中、Clは、化合物構造中のいずれかの水素原子と置換した塩素原子を示し、xは、塩素原子の置換数であり、0~3の整数を示す。)
<3> インダンスロン骨格を有する顔料が、好ましくはC.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー21から選ばれる1種以上であり、より好ましくはC.I.ピグメントブルー60である、前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<4> インダンスロン骨格を有する顔料が、水系インク中に、顔料を含有する架橋ポリマー粒子として含有される、前記<1>~<3>のいずれかに記載の水系インク。
<5> 架橋ポリマー粒子が、ポリマーで顔料を分散した後に架橋剤で架橋してなるものである、前記<1>~<4>のいずれかに記載の水系インク。
【0052】
<6> 架橋ポリマー粒子を構成するポリマーがビニル系ポリマーである、前記<1>~<5>のいずれかに記載の水系インク。
<7> ビニル系ポリマーが、好ましくは(a)イオン性モノマー由来の構成単位、(b)疎水性モノマー由来の構成単位、及び(c)親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位から選ばれる1種以上、より好ましくは2種以上、更に好ましくは3種を含有する、前記<1>~<6>のいずれかに記載の水系インク。
<8> 架橋ポリマー粒子を構成するポリマー中における(a)イオン性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である、前記<1>~<7>のいずれかに記載の水系インク。
<9> 架橋ポリマー粒子を構成するポリマー中における(b)疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、前記<1>~<8>のいずれかに記載の水系インク。
<10> 架橋ポリマー粒子を構成するポリマー中における(c)親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、前記<1>~<9>のいずれかに記載の水系インク。
【0053】
<11> (b)成分としてマクロモノマーを含有する場合、マクロモノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、前記<7>~<10>のいずれかに記載の水系インク。
<12> 架橋ポリマー粒子を構成する架橋前のポリマーの重量平均分子量が、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは11,000以上、より更に好ましくは12,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは50,000以下である、前記<1>~<11>のいずれかに記載の水系インク。
【0054】
<13> 顔料を含有する架橋ポリマー粒子が、顔料水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により製造される、前記<1>~<12>のいずれかに記載の水系インク。
工程I:架橋前のポリマーの溶液、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料を含有するポリマー粒子の水分散液を得る工程
工程II:工程Iで得られた水分散液と架橋剤を混合し、架橋処理して顔料水分散体を得る工程
<14> 架橋剤が、好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、及び分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物から選ばれる1種以上、より好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物である、前記<5>~<13>のいずれかに記載の水系インク。
<15> 架橋ポリマーの架橋率が、下記計算式(1)から求められる架橋率(モル%)において、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下である、前記<1>~<14>のいずれかに記載の水系インク。
架橋率(モル%)=[架橋剤の反応性基のモル数/ポリマーが有する架橋剤と反応し得る反応性基のモル数]×100 (1)
計算式(1)において、「架橋剤の反応性基のモル数」とは、使用する架橋剤のモル数に架橋剤1分子中の反応性基の数を乗じたものである。
<16> 架橋ポリマーの酸価が、好ましくは40mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上、より更に好ましくは70mgKOH/g以上、より更に好ましくは80mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、更に好ましくは145mgKOH/g以下、より更に好ましくは120mgKOH/g以下である、前記<1>~<15>のいずれかに記載の水系インク。
【0055】
<17> 架橋ポリマー粒子の平均粒径が、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは90nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは120nm以下である、前記<1>~<16>のいずれかに記載の水系インク。
<18> 有機溶媒の沸点が、好ましくは90℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは140℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは235℃以下である、前記<1>~<17>のいずれかに記載の水系インク。
<19> 有機溶媒が、好ましくは多価アルコール、より好ましくは炭素数2以上6以下の炭化水素に2以上の水酸基を有する化合物及びこれらの水酸基が縮合した化合物である、前記<1>~<18>のいずれかに記載の水系インク。
<20> 多価アルコールが、好ましくはプロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール等の炭素数2以上6以下のアルカンジオール、及び分子量500以上1000以下のポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはプロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数3以上4以下の1,2-アルカンジオール、及び前記ポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはプロピレングリコールである、前記<19>に記載の水系インク。
【0056】
<21> 顔料の水系インク中の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは7.0質量%以下である、前記<1>~<20>のいずれかに記載の水系インク。
<22> ポリマーの水系インク中の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である、前記<1>~<21>のいずれかに記載の水系インク。
<23> 顔料を含有する架橋ポリマー粒子に対する顔料の質量比〔顔料/顔料を含有する架橋ポリマー粒子〕が、好ましくは100/300以上、より好ましくは100/200以上、更に好ましくは100/150以上であり、そして、好ましくは100/25以下、より好ましくは100/50以下、更に好ましくは100/70以下である、前記<1>~<22>のいずれかに記載の水系インク。
<24> 顔料を含有する架橋ポリマー粒子の水系インク中の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である、前記<1>~<23>のいずれかに記載の水系インク。
<25> 水系インク中の有機溶媒の含有量が、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である、前記<1>~<24>のいずれかに記載の水系インク。
<26> 水の水系インク中の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、前記<1>~<25>のいずれかに記載の水系インク。
<27> 水系インクの32℃の粘度が、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは4.5mPa・s以上、より更に好ましくは、5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは8.0mPa・s以下、より更に好ましくは7.0mPa・s以下である、前記<1>~<26>のいずれかに記載の水系インク。
<28> 前記<1>~<27>のいずれかに記載の水系インクを、インクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
【実施例】
【0057】
以下の製造例、実施例、比較例、及び参考例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0058】
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
【0059】
(2)顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELSZ-1000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10-3質量%(固形分濃度換算)で行い、得られたキュムラント平均粒径を顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径とした。
【0060】
(3)架橋ポリマーの酸価の測定
架橋前のポリマー2g又は架橋後の顔料水分散体2gを、50gのイオン交換水で希釈し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を3ml添加した。そこへ0.1Nの塩酸を徐々に滴下し、pHの変曲点を2か所測定した。2点間の0.1Nの塩酸の滴下量の差から計算される酸のモル数が、ポリマー中のカルボン酸のモル数に相当し、このモル数を酸価(mgKOH/g)に換算した。
【0061】
(4)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプレピレン製容器(φ:40mm、高さ:30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
【0062】
(5)インクの粘度
E型粘度計「TV-25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、32℃にて粘度を測定した。
【0063】
製造例1~2(水不溶性ポリマーa及びbの製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1又は2の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、溶媒、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、表1又は2の「滴下モノマー溶液1」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液1を得、滴下ロート1中に入れて、窒素ガス置換を行った。
また、表1又は2の「滴下モノマー溶液2」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート2中に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間攪拌した。次いで重合開始剤2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:V-65)0.6部をメチルエチルケトン27.0部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃1時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に5回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、メチルエチルケトンを加えて水不溶性ポリマーaの溶液(固形分濃度は40.8%)を得た。
得られた水不溶性ポリマーa(表1)の重量平均分子量は52,700であり、水不溶性ポリマーb(表2)の重量平均分子量は170,000であった。
【0064】
なお、表1及び表2に示すモノマーの詳細は下記のとおりである。
・スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製「AS-6(S)」、(有効分濃度50質量%、数平均分子量6000)
・TM-40G:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、新中村化学工業株式会社製、NKエステルTM-40G(エチレンオキシド平均付加モル数:4、末端:メトキシ基)
・PP-800:ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、日油株式会社製、ブレンマーPP-800(プロピレンオキシド平均付加モル数:12、末端:ヒドロキシ基)
・43PAPE-600B:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、日油株式会社製、商品名:ブレンマー43PAPE-600B(エチレンオキシド平均付加モル数:6、プロピレンオキシド平均付加モル数:6、末端:フェニル基)
【0065】
【0066】
【0067】
実施例1(水系インク1の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60(PB60、BASF社製)を165質量部と、ポリマー分散剤としてBASF社製のジョンクリル67(J67、固形分濃度15%、NaOH中和度58モル%、重量平均分子量12500、酸価213mgKOH/g)の水溶液を固形分として55質量部混合し、ジルコニアビースを用いて分散処理することで、溶液全体の固形分濃度が22%である顔料分散液Aを得た。
(工程II)
得られた顔料分散液A 20,000部に対して、8N KOH水溶液7部、架橋剤としてナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-321L(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)215部、イオン交換水628部を加え、撹拌しながら70℃で3時間加熱した。加熱後、室温まで冷却した後、フィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体Bを得た。この顔料水分散体Bの固形分濃度は22質量%(顔料:15.7%、ポリマー:6.3%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は114nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体B 254部、プロピレングリコール460部、ポリエーテル変性シリコーン(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG005、濡れ剤)0.5部、イオン交換水285部を撹拌混合した。得られた混合液を前記「ミニザルトシリンジフィルター」で濾過し、32℃粘度が5.8mPa・s、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径が109nmの水系インク1を得た。結果を表3に示す。
【0068】
実施例2(水系インク2の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60を150質量部と、ポリマー分散剤としてBASF社製、ジョンクリル690(J690、アンモニア100%中和品、重量平均分子量16500、酸価240mgKOH/g)の水溶液を固形分として45質量部混合し、ジルコニアビースを用いて分散処理することで、溶液全体の固形分濃度が19.5%である顔料水分散液Cを得た。
(工程II)
得られた顔料水分散液C 20,000部に対して、架橋剤として前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製)219部、イオン交換水1,897部を加え、撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体Dを得た。この顔料水分散体Dの固形分濃度は19質量%(顔料:13.6%、ポリマー:5.4%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は119nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体D 144部、プロピレングリコール210部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.3部、イオン交換水145部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク2を得た。
【0069】
実施例3(水系インク3の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
実施例2(1)で得られた顔料水分散液C 9,000部に対して、前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製)160部、イオン交換水1,153部を加え撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体Eを得た。この顔料水分散体Eの固形分濃度は19質量%(顔料:13.6%、ポリマー:5.4%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は112nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体E 149部、プロピレングリコール235部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.3部、イオン交換水116部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク3を得た。
【0070】
実施例4(水系インク4の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60を150質量部と、ポリマー分散剤としてBASF社製、ジョンクリル67(J67、アンモニア100%中和品、重量平均分子量12500、酸価213mgKOH/g)の水溶液を固形分として45質量部混合し、ジルコニアビースを用いて分散処理することで、溶液全体の固形分濃度が19.5%である顔料水分散液Fを得た。
(工程II)
得られた顔料水分散液F 9,000部に対して、前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製) 86部、イオン交換水664部を加え撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体Gを得た。この顔料水分散体Gの固形分濃度は19質量%(顔料:13.6%、ポリマー:5.4%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は119nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体G 115部、プロピレングリコール184部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.2部、イオン交換水101部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク4を得た。
【0071】
実施例5(水系インク5の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60、前記ジョンクリル67(BASF社製、重量平均分子量12500、酸価213mgKOH/g)、水酸化ナトリウム、及び水からなる顔料ペーストに対して、さらに前記ジョンクリル67水溶液(J67、固形分濃度20%、NaOH中和度40モル%、重量平均分子量12500、酸価213mgKOH/g)を混合し、表3に示す中和度となるよう水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を添加した後、高圧ホモジナイザーにより分散を行うことで、溶液全体の固形分濃度が23.1%、(顔料/ポリマー)の質量比=71.4/28.6である顔料水分散液Hを得た。
(工程II)
得られた顔料水分散液H 2000部に対して、前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製)32部、イオン交換水203部を加え撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子の顔料水分散体Iを得た。この顔料水分散体Iの固形分濃度は22質量%(顔料:14.7%、ポリマー:7.3%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は98nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体I 109部、プロピレングリコール188部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.2部、イオン交換水103部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク5を得た。
【0072】
実施例6~9(水系インク6~9の製造)
実施例5(2)水系インクの製造において、プロピレングリコールの量を168部にし、有機溶媒として表3に示すものを20部追加したこと以外は、実施例5と同様の操作を行って、顔料含有架橋ポリマー粒子の水系インク6~9を得た。結果を表3に示す。
【0073】
実施例10(水系インク10の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60、製造例1で得られた水不溶性ポリマーaの水分散液(固形分濃度15%、NaOH中和度73モル%、重量平均分子量52,700、酸価104mgKOH/g)からなる顔料ペーストに対して、さらに前記水不溶性ポリマーaの水分散液を混合し、高圧ホモジナイザーにより分散を行うことで、溶液全体の固形分濃度が23.7%、(顔料/ポリマー)の質量比=70/30である顔料水分散液Jを得た。
(工程II)
得られた顔料水分散液J 2000部に対して、前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製)10.2部、イオン交換水189.0部を加え撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子の顔料水分散体Kを得た。この顔料水分散体Kの固形分濃度は22質量%(顔料:15.1%、ポリマー:6.9%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は110nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体K 109部、プロピレングリコール180部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.2部、イオン交換水111部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク10を得た。結果を表3に示す。
【0074】
実施例11(水系インク11の製造)
(1)顔料含有架橋ポリマー粒子の水分散体の製造
(工程I)
C.I.ピグメントブルー60、製造例2で得られた水不溶性ポリマーbの水分散液(固形分濃度15%、NaOH中和度73モル%、重量平均分子量170,000、酸価72mgKOH/g)からなる顔料ペーストに対して、さらに前記水不溶性ポリマーbの水分散液を混合し、高圧ホモジナイザーにより分散を行うことで、溶液全体の固形分濃度が22.0%、(顔料/ポリマー)の質量比=70/30である顔料水分散液Lを得た。
(工程II)
得られた顔料水分散液L 2000部に対して、前記デナコールEX-321L(ナガセケムテックス株式会社製)6.5部、イオン交換水122.7部を加え撹拌しながら70℃で3時間加熱した後、実施例1(1)と同様にろ過して粗大粒子を除き、顔料含有架橋ポリマー粒子の顔料水分散体Mを得た。この顔料水分散体Mの固形分濃度は22質量%(顔料:15.2%、ポリマー:6.8%)であり、顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は126nmであった。
(2)水系インクの製造
顔料水分散体M 109部、プロピレングリコール180部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.2部、イオン交換水111部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク11を得た。結果を表3に示す。
【0075】
比較例1(水系インク12の製造)
実施例2(1)の工程Iで得られた顔料水分散液C 137部、プロピレングリコール195部、前記シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製)0.3部、イオン交換水168部を撹拌混合した後、実施例1(2)と同様に濾過して水系インク12を得た。
【0076】
参考例1(水系インク13の製造)
比較例1において、顔料水分散液Cの顔料をインダンスロン骨格を有しないC.I.ピグメントオレンジ34(PO34)に変更し、(2)水系インク製造時のプロピレングリコールの量を200部にし、イオン交換水を153部にしたこと以外は、比較例1と同様の操作を行って、水系インク13を得た。
【0077】
参考例2(水系インク14の製造)
比較例1において、顔料水分散液Cの顔料をインダンスロン骨格を有しないC.I.ピグメントグリーン36(PG36)に変更し、(2)水系インク製造時のプロピレングリコールの量を215部にし、イオン交換水を138部にしたこと以外は、比較例1と同様の操作を行って、水系インク14を得た。
【0078】
参考例3(水系インク15の製造)
比較例1において、顔料水分散液Cの顔料をインダンスロン骨格を有しないC.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)に変更し、(2)水系インク製造時のプロピレングリコールの量を220部にし、イオン交換水を117部にしたこと以外は、比較例1と同様の操作を行って、水系インク15を得た。
【0079】
参考例4
実施例2の顔料水分散液Cを有機溶剤の入っていない水系インクとした。
【0080】
【0081】
実施例1~11、比較例1及び参考例1~4のインク製造後、室温(32℃)で1週間保存し、インクの保存安定性を確認するために粘度及び平均粒径を測定した。
表3から、実施例1~11の水系インク及び参考例4の水系インクと、比較例1の水系インクとを比較すると、比較例1の水系インク(架橋構造を持たないポリマー使用)では大幅な増粘・凝集が生じたことが分かる。
また、得られた水系インクについて、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO SG2010L)を用いて吐出性の評価を行った結果、実施例1~11の水系インクは吐出性が良好であったが、比較例1の水系インクは吐出不能であった。
一方、参考例1~3の水系インク(インダンスロン骨格を有しない顔料を使用)と実施例1~11の水系インクの対比から、有機溶媒を30質量%以上65質量%以下含有する場合、架橋構造を持たないポリマーを使用するとインクの保存安定性を確保できないという現象は、インダンスロン骨格を有する顔料に特有のものであることが分かる。さらに、参考例4の水系インクから、有機溶媒を含まない場合は、インダンスロン骨格を有する顔料のインクでも大幅な増粘・凝集が生じないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のインクジェット記録用水系インクは、インダンスロン骨格を有する顔料を含み、溶剤量が多い系においても、増粘や凝集を抑制できるため、インクジェット記録用として特に有用である。