(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】超音波結晶粒微細化および脱ガスの手順および強化振動結合を含む金属鋳造のためのシステム
(51)【国際特許分類】
B22D 11/051 20060101AFI20221117BHJP
B22D 11/043 20060101ALI20221117BHJP
B22D 11/045 20060101ALI20221117BHJP
B22D 11/06 20060101ALI20221117BHJP
B22D 11/053 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B22D11/051
B22D11/043
B22D11/045
B22D11/06 330B
B22D11/06 320A
B22D11/053 D
(21)【出願番号】P 2019544833
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018018841
(87)【国際公開番号】W WO2018152540
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518085184
【氏名又は名称】サウスワイヤー・カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギル,ケヴィン,スコット
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,マイケル,カレブ
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクイスト,ヴィクター,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】マンチラジュ,ヴェンカタ,キラン
(72)【発明者】
【氏名】ガフィ,ローランド,アール
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/130510(WO,A1)
【文献】特開昭52-062130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを溶融金属に結合するためのエネルギー結合装置であって、
前記装置は、
前記溶融金属に対して接触する受容体にエネルギーを供給する振動供給源であって、
前記振動供給源はプローブを含み、前記プローブは少なくとも1つの注入ポートを有
し、前記プローブは、動作時において、前記受容体に対して誘導される振動および/またはキャビテーションを発生させ
、前記プローブは、冷却チャネル内に配置され、動作時において、前記プローブの底部と前記受容体との間に冷却媒体を注入するよう構成される、
振動供給源
を含む、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの注入ポートは、前記冷却媒体を、前記プローブを通して通過させるための貫通孔を含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
鋳造装置上に、または前記鋳造装置に溶融金属を供給するタンディッシュ上に、前記振動供給源を取り付ける組立体をさらに含む、請求項1
または2に記載の装置。
【請求項4】
前記溶融金属に対して接触する前記受容体はバンドを含む、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記振動供給源は、前記エネルギーを前記プローブに提供する少なくとも1つの圧電性または磁歪性超音波トランスデューサを含む、請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記振動供給源は、機械的振動の少なくとも1つの供給源を含む、請求項1
乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記プローブに提供される前記エネルギーは400kHzまでの周波数の範囲内である、請求項1
乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの注入ポートは、中央貫通孔および周辺部貫通孔を前記プローブに含む、請求項1
乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記冷却媒体は、水、ガス、液体金属、液体窒素、
およびオイルのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記受容体は、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、ステンレス鋼、セラミック、複合材料、
および金属のうちの少なくとも1つ
以上を含む、請求項1
乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記バンドはステンレス鋼を含む、請求項
4に記載の装置。
【請求項12】
前記プローブはチタンを含む、請求項1
乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記振動供給源は
、前記溶融金属を
収容するように構成されたハウジングに取り付けられ、前記ハウジングは耐熱性物質を含む、請求項1
乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記耐熱性物質は、銅、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、
ならびにこれらの合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記耐熱性物質は、シリコン、酸素、または窒素のうちの1つ
以上を含む、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記プローブの先端部は5mm以内で前記受容体に接触する、請求項1
乃至15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記プローブの先端部は2mm以内で前記受容体に接触する、請求項1
乃至16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記プローブの先端部は1mm以内で前記受容体に接触する、請求項1
乃至17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記プローブの先端部は0.5mm以内で前記受容体に接触する、請求項1
乃至18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記プローブの先端部は0.2mm以内で前記受容体に接触する、請求項1
乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
金属製品を形成するための方法であって、
前記方法は、
格納構造体に溶融金属を提供することと、
前記溶融金属に対して接触する受容体の5mm以内の領域に冷却媒体を注入することにより、前記格納構造体内の前記溶融金属を、冷却媒体を用いて冷却することと、
前記冷却媒体中に振動および/またはキャビテーションを生成する振動プローブを介して、前記格納構造体内の前記溶融金属にエネルギーを結合することと
であって、前記結合する
ことの最中に、前記プローブの底部と前記格納構造体内の前記溶融金属に対して接触する受容体との間に冷却媒体を注入する
ことと、
を含み、
前記冷却することは、前記プローブにおける少なくとも1つの注入孔から前記冷却媒体を注入することを含み、
前記冷却することは、前記受容体に向かって前記冷却媒体を注入することと、前記冷却媒体に振動および/またはキャビテーションを含ませることと、を含む、方法。
【請求項22】
溶融金属を提供することは鋳型ホイール内のチャネルに前記溶融金属を注湯することを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
エネルギーを結合することは、超音波トランスデューサまたは磁歪トランスデューサのうちの少なくとも1つから前記エネルギーを前記プローブに供給することを含む、請求項
21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記エネルギーを供給することは、5
KHzから400kHz
までの周波数の範囲の前記エネルギーを提供することを含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記冷却することは、前記溶融金属を保持する閉じ込め構造に水、ガス、液体金属、液体窒素、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを適用することにより、前記溶融金属を冷却することを含む、請求項
21乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶融金属を提供することは
、前記溶融金属を鋳型に供給することを含む、請求項
21乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記溶融金属を提供することは
、前記溶融金属を連続鋳造鋳型、水平鋳型、垂直鋳造鋳型、または双ロール鋳造鋳型に供給することを含む、請求項
21乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
鋳造装置であって、
溶融金属を冷却するよう構成された鋳造鋳型と、
前記溶融金属に対して接触する受容体にエネルギーを供給する振動供給源であって、前記振動供給源はプローブを含み、前記プローブは
、前記プローブの底部と前記受容体との間に冷却媒体を注入するために設けられた少なくとも1つの注入ポートを有し、前記プローブは、動作時において、前記受容体に対して誘導される振動および/またはキャビテーションを発生させる、振動供給源と、
を含む、鋳造装置。
【請求項29】
前記鋳型は、連続鋳造鋳型、水平鋳型、垂直鋳造鋳型、または双ロール鋳造鋳型を含む、請求項
28に記載の鋳造装置。
【請求項30】
溶融金属処理装置であって、
溶融金属の供給源と、
前記溶融金属に挿入され
るように構成された超音波プローブを含む超音波脱ガス装置と、
前記溶融金属を受容するための鋳型と、
前記鋳型上に取り付けられた組立体であって、
振動および/またはキャビテーション供給源
と、格納構造体内の前記溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された一体化された冷媒注入器を有する振動および/またはキャビテーション供給源
を含む、組立体と
、
を含む
、溶融金属処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年2月17日に出願された米国特許出願整理番号第62/460,287号(内容全体が、参照されることにより本願に援用される)の継続出願である。
【0002】
本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING AND DEGASSING PROCEDURES AND SYSTEMS FOR METAL CASTING」を発明の名称とする2016年8月9日に出願された米国特許出願整理番号第62/372,592号(内容全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING AND DEGASSING FOR METAL CASTING」を発明の名称とする2016年2月15日に出願された米国特許出願整理番号第62/295,333号(内容全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING AND DEGASSING OF MOLTEN METAL」を発明の名称とする2015年12月15日に出願された米国特許出願整理番号第62/267,507号(内容の全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING」を発明の名称とする2015年2月9日に出願された米国特許出願整理番号第62/113,882号(内容の全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING ON A CONTINUOUS CASTING BELTを発明の名称とする2015年9月10日に出願された米国特許出願整理番号第62/216,842号(内容の全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING AND DEGASSING PROCEDURES AND SYSTEMS FOR METAL CASTING」を発明の名称とする2016年9月9日に出願されたPCT/2016/050978(内容の全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。本願は、「ULTRASONIC GRAIN REFINING AND DEGASSING PROCEDURES AND SYSTEMS FOR METAL CASTING」を発明の名称とする2016年10月28日に出願された米国特許出願整理番号第15/337,645号(内容の全体が、参照されることにより本願に援用される)に関する。
【0003】
分野
本発明は、制御された結晶粒サイズを有する金属鋳物を生成するための方法、金属鋳物を生成するためのシステム、および金属鋳物により得られる製品に関する。
【背景技術】
【0004】
溶融金属を連続的な金属棒または鋳造製品へと鋳造するための技術を開発するにあたり、相当な努力が冶金分野において費やされてきた。バッチ鋳造および連続鋳造の両方が良好に開発されている。連続鋳造がバッチ鋳造に対していくつかの点で優れているが、両方の鋳造が産業界において主要的に使用されている。
【0005】
金属鋳造物の連続的生産においては、溶融金属は、保持炉から、一連の配湯桶に通され、鋳型ホイールの鋳型に注がれる。この鋳型内で溶融金属は金属棒へと鋳造される。凝固された金属棒は鋳型ホイールから取り出され、圧延機へと誘導され、圧延機内で連続棒状体に圧延される。金属棒製品および合金の意図された最終用途に応じて、棒状体は、圧延の間に冷却されてもよく、または棒状体は、所望の機械的特性および物理的特性を棒状体に印加するために、圧延機から出た直後に冷却もしくは焼き入れされてもよい。Coferらに付与された米国特許第3,395,560号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)に記載のものなどの技術が金属棒または棒材製品を連続的に生産するため使用されてきた。
【0006】
Sperryらに付与された米国特許第3,938,991号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)では、「純粋」な金属製品の鋳造に関して長く認識された問題が存在することが示されている。「純粋」な金属鋳物という用語は、結晶粒制御の目的のための別個の不純物の包含なしに、特定的な伝導性または引っ張り強度または延性のために設計された、主要な金属元素から形成された金属または合金を指す。
【0007】
結晶粒微細化は、新しく形成された相の結晶サイズが化学的または物理的/機械的手段により低減される過程である。凝固過程、または、液相から固相への遷移過程の間に、凝固された構造の結晶粒サイズを顕著に低減させるために、通常は結晶粒微細化剤が溶融金属に添加される。
【0008】
実際、Boilyらに付与されたWIPO特許出願WO/2003/033750(内容全体が、参照することにより本願に援用される)では、「結晶粒微細化剤」の特定的な使用が説明されている。‘750出願では、その背景技術の部分で、アルミ業界では、母合金を形成するために異なる結晶粒微細化剤がアルミニウムに対して一般に混合されることが説明されている。アルミニウム鋳造における使用のための一般的な母合金は、1~10%のチタンと、0.1~5%のホウ素と、TiB2またはTiCがアルミニウムのマトリクス内に分散された状態で、実質的にアルミニウムまたはマグネシウムからなる残余分と、を含む。‘750出願によれば、チタンおよびホウ素を含む母合金は、溶融されたアルミニウム中に必要な量のチタンおよびホウ素を溶かすことにより生産されることが可能である。これは、溶融されたアルミを、KBF4およびK2TiF6と摂氏800度を越える温度で反応させることにより達成される。これらのハロゲン塩錯体は、溶融されたアルミに対して素早く反応し、溶融物に対してチタンおよびホウ素を提供する。
【0009】
‘750出願では、2002年現在では、この技術が、ほぼすべての結晶粒微細化剤製造企業による市販の母合金の生産に使用されたことが説明されている。しばしば造核剤とよばれる結晶粒微細化剤は今日も依然として使用される。例えば、鋳造構造体を精密に制御することは高品質アルミニウム合金製品の製造において主要な要件であることを、TIBOR母合金のある商業的納入業者は述べている。
【0010】
本発明の以前は、結晶粒微細化剤は、微細で均一な鋳放し粒状組織を提供するための最も効果的な方法として認識されていた。以下の参考文献(これらの参考文献の全体は引用することにより本明細書に援用される)は、この技術背景に関する詳細を提供する。
Abramov, O.V., (1998), “High-Intensity Ultrasonics,” Gordon and Breach Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands, pp. 523-552.
Alcoa, (2000), “New Process for Grain Refinement of Aluminum,” DOE Project Final Report, Contract No. DE-FC07-98ID13665, September 22, 2000.
Cui, Y., Xu, C.L. and Han, Q., (2007), “Microstructure Improvement in Weld Metal Using Ultrasonic Vibrations, Advanced Engineering Materials,” v. 9, No. 3, pp.161-163.
Eskin, G.I., (1998), “Ultrasonic Treatment of Light Alloy Melts,” Gordon and Breach Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands.
Eskin, G.I. (2002) “Effect of Ultrasonic Cavitation Treatment of the Melt on the Microstructure Evolution during Solidification of Aluminum Alloy Ingots,” Zeitschrift Fur Metallkunde/Materials Research and Advanced Techniques, v.93, n.6, June, 2002, pp. 502-507.
Greer, A.L., (2004), “Grain Refinement of Aluminum Alloys,” in Chu, M.G., Granger, D.A., and Han, Q., (eds.), “ Solidification of Aluminum Alloys,” Proceedings of a Symposium Sponsored by TMS (The Minerals, Metals & Materials Society), TMS, Warrendale, PA 15086-7528, pp. 131-145.
Han, Q., (2007), The Use of Power Ultrasound for Material Processing,” Han, Q., Ludtka, G., and Zhai, Q., (eds), (2007), “Materials Processing under the Influence of External Fields,” Proceedings of a Symposium Sponsored by TMS (The Minerals, Metals & Materials Society), TMS, Warrendale, PA 15086-7528, pp. 97-106.
Jackson, K.A., Hunt, J.D., and Uhlmann, D.R., and Seward, T.P., (1966), “On Origin of Equiaxed Zone in Castings,” Trans. Metall. Soc. AIME, v. 236, pp.149-158.
Jian, X., Xu, H., Meek, T.T., and Han, Q., (2005), “Effect of Power Ultrasound on Solidification of Aluminum A356 Alloy,” Materials Letters, v. 59, no. 2-3, pp. 190-193.
Keles, O. and Dundar, M., (2007). “Aluminum Foil: Its Typical Quality Problems and Their Causes,” Journal of Materials Processing Technology, v. 186, pp.125-137.
Liu, C., Pan, Y., and Aoyama, S., (1998), Proceedings of the 5th International Conference on Semi-Solid Processing of Alloys and Composites, Eds.: Bhasin, A.K., Moore, J.J., Young, K.P., and Madison, S., Colorado School of Mines, Golden, CO, pp. 439-447.
Megy, J., (1999), “Molten Metal Treatment,” US Patent No. 5,935,295, August, 1999
Megy, J., Granger, D.A., Sigworth, G.K., and Durst, C.R., (2000), “Effectiveness of In-Situ Aluminum Grain Refining Process,” Light Metals, pp.1-6.
Cui et al., “Microstructure Improvement in Weld Metal Using Ultrasonic Vibrations,” Advanced Engineering Materials, 2007, vol. 9, no. 3, pp. 161-163.
Han et al., “Grain Refining of Pure Aluminum,” Light Metals 2012, pp. 967-971.
【0011】
本発明の以前、米国特許第8,574,336号および米国特許第8,652,397号(各特許の内容全体は、参照することにより本願に援用される)において、例えば、超音波装置の近傍において溶融金属槽にパージ用ガスを導入することにより溶融金属槽(例えば超音波脱ガス)に溶け込んだ気体(および/または様々な不純物)の量を低減させるための方法が説明された。これらの特許は、それぞれ‘336特許および‘397特許とよぶこととする。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一実施形態では、溶融金属へとエネルギーを結合するためのエネルギー結合装置が提供される。エネルギー結合装置は、冷却媒体を通して、および溶融金属に対して接触する受容体を通して、エネルギーを供給するキャビテーション供給源を含む。キャビテーション供給源は冷却チャネル内に配置されたプローブを含む。プローブは、冷却媒体を注入するための少なくとも1つの注入ポートを、プローブの底部と受容体との間に有する。動作時のプローブは冷却媒体中にキャビテーションを発生させる。キャビテーションは冷却媒体を通って受容体に誘導される。
【0013】
本発明の一実施形態では、金属製品を形成するための方法が提供される。この方法は、溶融金属を格納構造体に提供し、溶融金属に対して接触する受容体の5mm以内の領域に冷却媒体を注入することにより冷却媒体を用いて格納構造体内の溶融金属を冷却し、冷却媒体中にキャビテーションを発生させる振動プローブを介して格納構造体内の溶融金属にエネルギーを結合する。結合の際、この方法は、プローブの底部と、格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体と、の間に冷却媒体を注入する。
【0014】
本発明の一実施形態では、鋳造装置が提供される。鋳造装置は、溶融金属を冷却するよう構成された溶融金属格納構造体と、キャビテーション供給源と格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域にキャビテーションを有する冷却媒体を注入するよう構成されたキャビテーション供給源と、を含む。
【0015】
本発明に関する上記の全般的な説明、および、以下の詳細な説明の両方が、例示的であって、本発明を制限するものではないことが、理解されるべきである。
【0016】
本発明に関するより完全な理解と、付随する利点の多数と、が容易に得られるであろう。なぜなら、これらは、以下の添付の図面と併せて考察されたときに以下の詳細な説明を参照することにより、より良好に理解されるためである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳造装置の概略図である。
【
図2】少なくとも1つの超音波振動エネルギー供給源を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。
【
図3A】少なくとも1つの機械的に駆動される振動エネルギー供給源を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。
【
図3B】少なくとも1つの超音波振動エネルギー供給源と、少なくとも1つの機械的に駆動される振動エネルギー供給源と、の両方を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール混成構成の概略図である。
【
図3C】強化された振動エネルギー結合を有する振動エネルギー供給源を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。
【
図3D】冷媒注入ポートを有する超音波プローブの概略図である。
【
図3E】複数の冷媒注入ポートを有する超音波プローブの概略図である。
【
図3F】バンドからの分離距離を示す超音波プローブの概略図である。
【
図4】鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に対して直接的に結合された振動プローブ装置を示す本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。
【
図5】本発明の振動エネルギー供給源を利用する固定鋳型の概略図である。
【
図6A】垂直鋳造装置の選択された構成要素の概略断面図である。
【
図6B】垂直鋳造装置の他の構成要素の概略断面図である。
【
図6C】垂直鋳造装置の他の構成要素の概略断面図である。
【
図6D】垂直鋳造装置の他の構成要素の概略断面図である。
【
図7】ここで示される制御のための例示的なコンピュータシステムおよび制御器の概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【
図9】超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の両方を利用する本発明の一実施形態を示す概略図である。
【
図10】ACSRワイヤ処理フローチャートである。
【
図11】ACSSワイヤ処理フローチャートである。
【
図12】アルミニウム帯状細片処理フローチャートである。
【
図13】少なくとも1つの超音波振動エネルギー供給源に対して磁歪素子を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略側面図である。
【
図15】本発明の振動エネルギー供給源を利用する双ロール鋳造装置のローラ設計の概略図である。
【
図16】本発明の振動エネルギー供給源を利用する双ロール鋳造装置のベルト設計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
金属および合金の結晶粒微細化は、インゴット鋳込み速度の最大化、熱間割れに対する耐性の改善、元素偏析の最少化、機械的特性(特に延性)の向上、錬鉄製品の仕上げ特性の改善ならびに鋳型充填特性の向上、および、鋳造合金の多孔率の低減化を含む多数の理由のために重要である。通常、結晶粒微細化は、金属または合金製品、特にアルミニウム合金およびマグネシウム合金を製造するための第1の処理ステップのうちの1つである。アルミニウム合金およびマグネシウム合金は、航空業界、防衛業界、自動車業界、建築業界、および包装業界における使用が増加しつつある軽量材料のうちの2つである。結晶粒微細化は、柱状結晶粒を取り除き等軸結晶粒を形成することにより金属および合金を鋳造可能にするための重要な処理ステップでもある。
【0019】
結晶粒微細化は、合金を鋳造可能にするために、および、欠陥生成を軽減するために、固相の結晶サイズが化学的、物理的、または機械的手段のいずれかにより縮小される凝固処理ステップである。現在は、アルミニウム製品はTIBORを使用して結晶粒微細化され、それにより、凝固されたアルミニウム中に等軸結晶粒構造が形成される。本発明の以前では、不純物または化学的「結晶粒微細化剤」の使用が、金属鋳造業界において長く認識された金属鋳造中における柱状結晶粒形成の問題を解決する唯一の方法であった。加えて、本発明の以前は、1)鋳造以前に溶融金属から不純物を除去するための超音波脱ガスと、2)上述の超音波結晶粒微細化(すなわち、少なくとも1つの振動エネルギー供給源)と、の組み合わせは着手されたことがなかった。しかし、TIBORの使用と、融解物に対して結晶粒微細化剤が入力されることに起因する機械的制約と、がコストの増大化に関連付けられている。これらの制約のうちのいくつかは、延性、機械加工性、および電気伝導性を含む。
【0020】
係るコストにも関わらず、合衆国内で生産されたアルミニウムのおよそ68%が、シート、プレート、押し出し、またはホイールへとさらに処理される前に最初にインゴットに注がれる。直接チル(DC)半連続鋳造処理および連続鋳造(CC)処理が、主にその堅牢性および比較的簡素性のために、アルミニウム業界の主力となってきた。DCおよびCC処理の1つの問題は、インゴット凝固の際に、熱間割れまたは亀裂が形成されることである。基本的に、結晶粒微細化を使用しないかぎり、すべてのインゴットには亀裂が生じる(または鋳造不能となる)であろう。
【0021】
依然として、これらの現代的処理の生産速度は亀裂形成を回避するための条件により制限される。結晶粒微細化は、合金の熱間割れ傾向を低減させ、したがって、生産速度の向上を図るための、効果的な方法である。結果的に、相当量の努力が、可能なかぎり小さい結晶粒サイズの生産を可能にする強力な結晶粒微細化剤の開発に注がれてきた。結晶粒サイズがミクロン以下のレベルまで縮小可能となった場合には超塑性が達成可能となり、それにより、今日においてインゴットが処理されるよりも、はるかに速い速度で合金の注湯が可能となるばかりではなく、より低い温度、かつ、はるかに速い速度での圧延/押し出し成型も可能となり、その結果として、コスト面およびエネルギー面での顕著な削減が達成される。
【0022】
現在、世界において1次スクラップ(およそ200億kg)または2次および内部スクラップ(250億kg)のいずれかから鋳造される、ほぼすべてのアルミニウム鋳造は、直径がおよそ数ミクロンの不溶性TiB2核の不均質核を用いて結晶粒微細化され、それによりアルミニウム中において微細な粒状組織が核生成される。化学的結晶粒微細化剤の使用に関する1つの問題は結晶粒微細化能力が限定されることである。実際、化学的結晶粒微細化剤の使用により、およそ2,500μmを越える直線結晶粒寸法を有する柱状構造から200μmより小さい等軸結晶粒へのアルミニウム結晶粒サイズの縮小化が制限される。アルミニウム合金における100μmの等軸結晶粒が市販の化学的結晶粒微細化を使用して獲得可能である限界であるように見受けられる。
【0023】
結晶粒サイズの縮小化がさらに可能であるならば生産性の顕著な向上が可能である。ミクロン以下レベルの結晶粒サイズは超塑性をもたらし、係る超塑性により、室温におけるアルミニウム合金の形成が、より容易となる。
【0024】
化学的結晶粒微細化剤の使用に関する他の問題は結晶粒微細化剤の使用に関連付けられた欠陥生成である。先行技術では結晶粒微細化に対して必要とみなされてきたが、不溶性の異質な粒子は、アルミニウムにおいては、特に粒子凝集物(「クラスタ」)の形成において、むしろ望ましくない。現在の結晶粒微細化剤は、アルミニウム系母合金中における化合物の形態で存在し、複雑な一連の採鉱過程、選鉱過程、および製造過程により生産される。現在頻繁に使用される母合金は、フッ化カリウムアルミニウム(KAIF)塩およびアルミニウム酸化物不純物(ドロス)を含み、これらはアルミニウム結晶粒微細化剤の従来の製造過程から生じる。これらは、アルミニウムにおける局所的欠陥(例えば飲料缶における「飲み口」および薄箔における「微小穴」)、機械加工摩耗、および、アルミニウムにおける表面処理問題を発生させる。アルミニウムケーブル企業のうちの1企業からの1つのデータによれば、製造上の欠陥のうちの25%はTiB2粒子凝集物に起因するものであり、欠陥のうちの別の25%は鋳造過程の際にアルミニウムに取り込まれるドロスに起因することが示されている。TiB2粒子凝集物は、押出成形の際に、特にワイヤの直径が8mm未満である場合には、しばしばワイヤを破断させる。
【0025】
化学的結晶粒微細化剤の使用に関する他の問題は結晶粒微細化剤のコストである。これは、Zr結晶粒微細化剤を使用するマグネシウムインゴットの生産に対しては特に成り立つ。Zr結晶粒微細化剤を使用する結晶粒微細化は、製造されるMg鋳造品の1キログラムにつき約1ドルの過剰なコストがかかる。アルミニウム合金に対する結晶粒微細化剤は1キログラムあたりおよそ1.50ドルである。
【0026】
化学的結晶粒微細化剤の使用に関する他の問題は電気伝導率の低下である。化学物質結晶粒微細化剤の使用により、過剰な量のTiがアルミニウム中に導入され、ケーブル用途に対して純粋なアルミニウムの電気伝導率が実質的に低下してしまう。特定の伝導率を維持するために、様々な企業は、ケーブルおよびワイヤを作るためにより純粋なアルミニウムを使用するにあたり、過剰な金額を支払うことを余儀なくされる。
【0027】
化学的方法に加えて、いくつかの他の結晶粒微細化方法が前世紀において探究されてきた。これらの方法は、物理的な場(例えば、磁場、電磁場)を使用すること、および機械的振動を使用することを含む。高強度および低振幅の超音波振動は、異種の粒子を使用することなく金属および合金の結晶粒微細化に対して示されてきた物理的/機械的機構のうちの1つである。しかし実験結果(例えば上述のCuiら、2007などの)は、短い時間帯の超音波振動が印加された数ポンドまでの小型インゴットにおいて得られたものである。高強度超音波振動を使用するCCまたはDC鋳造インゴット/ビレットに関する結晶粒微細化に対してはほとんど努力が成されていない。
【0028】
結晶粒微細化に対して本発明において取り組まれた技術的課題のうちのいくつかは、(1)長時間にわたる溶融金属に対する超音波エネルギーの結合と、(2)高温におけるシステムの固有振動数の維持と、(3)超音波導波路が高温であるときの超音波結晶粒微細化の結晶粒微細化効率を向上させることと、である。超音波導波路およびインゴットの両方に対する強化された冷却は(以下で記載するように)、これらの課題に取り組むにあたり本明細書で提示される解決策のうちの1つである。
【0029】
さらに、本発明において取り組まれた他の技術的課題は、アルミニウムの純度が高いほど、凝固過程の際に等軸結晶粒を得ることがより困難になるという事実に関連する。1000系列、1100系列、および1300系列のアルミニウムなどの純粋なアルミニウムにおいてTiB(ホウ化チタン)などの外部結晶粒微細化剤を使用したとしても、等軸結晶粒構造を得ることは依然として困難である。しかし、本明細書に記載の新規の結晶粒微細化技術を使用することにより、大幅な結晶粒微細化が達成された。
【0030】
一実施形態では、柱状結晶粒の形成は、結晶粒微細化剤の導入を必要とすることなく、部分的に抑制された。溶融金属が鋳型に注湯される際に振動エネルギーを溶融金属に印加することは、最高技術水準にあるTIBOR母合金などの結晶粒微細化剤を用いて得られる結晶粒サイズに匹敵するかたまは係る結晶粒サイズよりも小さい結晶粒サイズの実現を可能にする。
【0031】
本明細書で使用される本発明の様々な実施形態は、当業者の研究を提示するために当業者により一般的に用いられる用語を使用して説明されるであろう。これらの用語は、材料科学、冶金学、金属鋳造、および金属処理の分野の当業者により理解される一般的な意味に一致する。さらに専門的な意味を取るいくつかの用語については、以下の実施形態において説明する。それにも関わらず、「~よう構成された」という用語は、(本明細書で例示されるか、または既知であるか、または当該技術から暗示的である)適切な構造体が、「~よう構成された」の箇所で示される機能を、係る構造体の物体が実行することを可能にすることを示すものとして、本明細書では理解される。「~に連結された」という用語は、第2の物体に連結された1つの物体が、第1の物体および第2の物体が一緒に直接的に取り付けられているか否かに関わらず、第1の物体を第2の物体に対して定位置に支持(例えば、当接する、取り付けられる、互いに対して着脱可能である、互いから取り外し可能である、一緒に固定される、摺動接触状態にある、回転接触状態にある、など)するにあたり必要な構造を有することを意味する。
【0032】
Chiaらに付与された米国特許第4,066,475号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には、連続鋳造過程が記載されている。全般に、
図1には、回転鋳型リング13上に含まれた周辺溝部に溶融金属漕を誘導する注湯口11に溶融金属を供給する送達装置10(例えばタンディッシュなど)を有する鋳造装置2を有する連続鋳造システムが示されている。エンドレス可撓性金属バンド14は、鋳型リング13に設けられた溝部および覆い被さる金属バンド14により連続鋳造鋳型が画成されるよう、鋳型リング13の一部と一連のバンド位置決めローラ15の一部との両方を周回する。装置を冷却し、かつ、回転鋳型リング13上で溶融金属が輸送される際に溶融金属の凝固を制御するための、冷却システムが提供される。冷却システムは、鋳型リング13の側面上に配置された複数の側面ヘッダ17、18、および19と、金属バンド14が鋳型リングを周回する位置においてそれぞれ金属バンド14の内側側面上および外側側面上に配置された内側バンドヘッダ20および外側バンドヘッダ21と、を含む。装置の冷却および溶融金属の凝固速度が制御されるよう、様々なヘッダに対して冷媒を供給および排出するために、好適なバルブを有する導管ネットワーク24が接続されている。
【0033】
係る構成により、溶融金属は、注湯口11から鋳造鋳型に供給され、冷媒が冷却システムを通して循環されることにより、溶融金属が輸送される際に凝固され部分的に冷却される。固体の鋳造棒25は鋳型ホイールから引き出され、鋳造棒を圧延機28に搬送するコンベア27に供給される。鋳造棒25は、鋳造棒25を凝固させるにあたり十分な量のみしか冷却されず、鋳造棒25は、鋳造棒25に対して圧延操作がただちに実施可能である高温状態に維持されていることが留意されるべきである。圧延機28は直列配列の圧延スタンドを含み得る。これらの圧延スタンドは鋳造棒を連続的な長さの線材30へと連続的に圧延する。なお線材30は実質的に均一な円形断面を有する。
【0034】
図1および
図2には、より詳細に以下で説明されるように、本明細書で図示される連続鋳造システムの様々な部分を制御する制御器500が示されている。制御器500は、連続鋳造システムおよび係るシステムの構成要素の動作を制御するようプログラムされた命令(すなわちアルゴリズム)を有する1つまたは複数のプロセッサを含み得る。
【0035】
図2において示される本発明の一実施形態では、鋳造装置2は、溶融金属がその中に注湯される(例えば注がれる)格納構造体32(例えば鋳型ホイール30に設けられた溝槽またはチャネル)と、溶融金属処理装置34と、を有する鋳造ホイール30を含む。バンド36(例えば鉄鋼可撓性金属バンド)は溶融金属を格納構造体32(すなわち、チャネル)内に閉じ込める。溶融金属が鋳型ホイールのチャネル内で凝固し、溶融金属処理装置34から離間される方向に搬送される際に、ローラ38は、溶融金属処理装置34が、回転する鋳型ホイール上の静止位置に維持されることを、可能にする。
【0036】
本発明の一実施形態では、溶融金属処理装置34は鋳型ホイール30上に装着された組立体42を含む。組立体42は、少なくとも1つの振動エネルギー供給源(例えば振動器40)、振動エネルギー供給源42を保持するハウジング44(すなわち支持装置)を含む。組立体42は、冷却媒体をその中を通して輸送するための少なくとも1つの冷却チャネル46を含む。可撓性バンド36はハウジング44の下面に取り付けられたシール44aによりハウジング44に対して密閉される。それにより冷却チャネルからの冷却媒体は、鋳型ホイールのチャネル内の溶融金属に対して反対側にある可撓性バンドの側面に沿って流れることが可能となる。
【0037】
本発明の一実施形態では、鋳造バンド(すなわち、振動エネルギーの受容体)は、クロム、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、セラミック、複合材料、または金属もしくは合金、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つまたは複数から作られ得る。
【0038】
本発明の一実施形態では、鋳造バンドの幅は25mm~400mmの範囲である。本発明の他の実施形態では、鋳造バンドの幅は50mm~200mmの範囲である。本発明の他の実施形態では、鋳造バンドの幅は75mm~100mmの範囲である。
【0039】
本発明の一実施形態では、鋳造バンドの厚さは0.5mm~10mmの範囲である。本発明の他の実施形態では、鋳造バンドの厚さは1mm~5mmの範囲である。本発明の他の実施形態では、鋳造バンドの厚さは2mm~3mmの範囲である。
【0040】
図2において示されているように、冷却チャネルから漏出する水が、溶融金属の投入供給源から離間する方向に沿って誘導されるよう、空気ワイプ52は空気(安全予防策として)を誘導する。シール44aは、エチレンプロピレン、バイトン、ブナ-n(ニトリル)、ネオプレン、シリコーンゴム、ウレタン、フルオロシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ならびにその他の既知のシーラント材を含むいくつかの物質から作られ得る。本発明の一実施形態では、案内装置(例えばローラ38)は、回転する鋳型ホイール30に対して溶融金属処理装置34を案内する。冷却媒体は、格納構造体32中の溶融金属を、および/または、少なくとも1つの振動エネルギー供給源40を、冷却する。本発明の一実施形態では、ハウジングを含む溶融金属処理装置34の構成要素は、チタン、ステンレス鋼合金、低炭素鋼もしくはH13鉄鋼などの金属、またはその他の高温材料、セラミック、複合材料、もしくはポリマーから作られ得る。溶融金属処理装置34の構成要素は、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、ステンレス鋼、およびセラミックのうちの1つまたは複数から作られ得る。セラミックは、窒化ケイ素セラミック(例えば窒化ケイ素アルミナまたはサイアロン)であり得る。
【0041】
本発明の一実施形態では、溶融金属が振動器40の下方にある金属バンド36の下方を通過する際、振動エネルギーは、溶融金属の冷却および凝固が開始する際に溶融金属に供給される。本発明の一実施形態では、振動エネルギーは、例えば圧電素子超音波トランスデューサにより生成される超音波トランスデューサを用いて印加される。本発明の一実施形態では、振動エネルギーは、例えば磁歪トランスデューサにより生成される超音波トランスデューサを用いて付与される。本発明の一実施形態では、振動エネルギーは、機械的に駆動される振動器(後の箇所で説明する)を用いて印加される。一実施形態では、振動エネルギーにより複数の小さい種結晶が形成されることが可能となり、それにより微細な結晶粒金属製品が生成される。
【0042】
本発明の一実施形態では、超音波結晶粒微細化は、結晶粒サイズの微細化のために超音波エネルギー(および/または他の振動エネルギー)の印加を含む。本発明はいかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、1つの理論は、溶融合金または凝固する合金に振動エネルギー(例えば超音波出力)が注入されることにより、非線形性効果(例えばキャビテーション、音響ストリーミング、および放射圧)が発生し得るという理論である。これらの非線形性効果は、新しい結晶粒を核生成させるために、および、合金の凝固過程においてデンドライトを分裂させるために、使用可能である。
【0043】
この理論のもとで、結晶粒微細化過程は、2つの段階、すなわち、1)核生成、および、2)液体から新しく形成された固体の成長、に分割され得る。球形核はこの核生成段階において形成される。これらの核は成長段階においてデンドライトに成長する。デンドライトが単一方向に成長した場合には柱状結晶粒が形成され、熱間割れ/亀裂と、2次相の不均一な分布と、がもたらされる可能性が生じる。その結果、可鋳性が低下することとなり得る。一方、デンドライトが全方向に均一に成長した(本発明を用いた場合、可能である)場合には、等軸結晶粒が形成される。微細でかつ等軸性を有する結晶粒を含む鋳物/インゴットは優れた成形性を有する。
【0044】
この理論のもとで、合金中の温度が液相線温度より低い場合には、固体の幼核のサイズが以下の式で与えられる臨界サイズよりも大きいときに核生成が生じ得る。
【数1】
式中、r
*は臨界サイズであり、σ
slは固液界面に関連付けられた界面エネルギーであり、ΔG
Vは単位体積の液体が固体に変化することに関連付けられたギブス自由エネルギーである。
【0045】
この理論のもとでは、固体幼核のサイズがr*よりも大きい場合、ギブス自由エネルギーΔGは固体幼核のサイズが大きくなるにつれて小さくなる。これは固体幼核の成長が熱力学的に望ましいことを示す。係る条件のもとでは、固体幼核は安定的な核となる。しかし、r*より大きいサイズを有する固相は、溶融金属における大規模な過冷却を要求する極端な条件下でのみ、均一な核生成を生じる。
【0046】
この理論のもとでは、凝固の際に形成される核は、デンドライトとして知られる固体結晶粒に成長することが可能である。デンドライトは、振動エネルギーの印加により、複数の微細な断片に分裂されることも可能である。このようにして形成されたデンドライト片は新しい結晶粒に成長し、小さい結晶粒が形成される。このようにして等軸結晶粒構造が作られる。
【0047】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、鋳型ホイール30のチャネルの上部における(例えばバンド36の下面に対する)溶融金属に対する比較的少量の過冷却(例えば、摂氏2度、摂氏5度、摂氏10度、または摂氏15度より低い温度)により、純粋なアルミニウム(または他の金属もしくは合金)の小さい核の層が鉄鋼バンドに対して形成される。振動エネルギー(例えば、超音波または機械的に駆動される振動)により、これらの核が放出され、次にこれらの核が、凝固の際の造核剤として使用され、その結果、均一な結晶粒構造がもたらされる。したがって、本発明の一実施形態では、用いられる冷却方法は、鉄鋼バンドに対して鋳型ホイール30のチャネルの上部においてもたらされる少量の過冷却により、溶融金属が継続的に冷却される際に、物質の小さい核が溶融金属中に処理されることを保証する。バンド36に対して作用する振動は、鋳型ホイール30のチャネルにおける溶融金属中にこれらの核を分散させるよう機能することが可能であり、および/または、過冷却層において形成されるデンドライトを分裂させるよう機能することが可能である。例えば、溶融金属の冷却の際に溶融金属に印加される振動エネルギーは、キャビテーション(以下を参照のこと)によりデンドライトを分裂させ、それにより新しい核の形成が可能である。次に、これらの核およびデンドライトの断片は、凝固の際に鋳物中に等軸結晶粒を形成(促進)するために使用されることが可能であり、その結果、均一な結晶粒構造がもたらされる。
【0048】
換言すると、過冷却された液体金属に伝達される超音波振動により金属または金属合金中に核生成部位が作られ、それにより結晶粒サイズが微細化される。核生成部位は、デンドライトを分裂させるよう上記のように作用する振動エネルギーを介して、生成されることが可能である。それにより、異種の不純物に依存しない多数の核が溶融金属中に作られる。一態様では、鋳型ホイール30のチャネルは、例えば銅、鉄および鉄鋼、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、ならびに、これらの物質の融点を上昇させることが可能であるシリコン、酸素、または窒素などの1つまたは複数の元素を含むこれらの合金などの耐熱性金属または他の高温物質であり得る。
【0049】
本発明の一実施形態では、振動エネルギー供給源40に対する超音波振動の供給源は20kHzにおいて1.5kWの出力を提供する。本発明は、これらの出力および周波数に限定されない。以下の範囲が対象とされるが、むしろ広範囲の出力および超音波周波数が使用されることが可能である。
出力:一般にソノトロードまたはプローブの寸法に応じて、各ソノトロードに対して50~5000Wの範囲の出力。これらの出力は通常、ソノトロードの端部における出力密度が100W/cm2より高い値であることが保証されるよう、ソノトロードに印加される。この値は、溶融金属の冷却速度、溶融金属の種類、および他の要因に応じて、溶融金属中にキャビテーションを発生させるための閾値とみなされ得る。このエリアにおける出力は、50~5000W、100~3000W、500~2000W、1000~1500Wの範囲であるか、または任意の中間または重なり合う範囲であり得る。より大きいプローブ/ソノトロードに対してはより高い出力、および、より小さいプローブに対してより低い出力が可能である。本発明の様々な実施形態では、印加される振動エネルギーの出力密度は、10W/cm2~500W/cm2、もしくは20W/cm2~400W/cm2、もしくは30W/cm2~300W/cm2、もしくは50W/cm2~200W/cm2、もしくは70W/cm2~150W/cm2の範囲であるか、またはこれらの範囲の任意の中間もしくは重なり合う範囲であり得る。
周波数:一般に、5~400kHz(または任意の中間の範囲)が使用され得る。代替的に、10および30kHz(または任意の中間の範囲)が使用され得る。代替的に、15および25kHz(または任意の中間の範囲)が使用され得る。印加される周波数は、5~400KHz、10~30kHz、15~25kHz、10~200KHz、もしくは50~100kHzの範囲であるか、または、これらの範囲の任意の中間または重なり合う範囲であり得る。
【0050】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの振動器40が冷却チャネル46に連結した状態で配置される。この振動器40は、超音波トランスデューサの超音波プローブ(またはソノトロード、圧電トランスデューサ、または超音波放射器、または磁歪素子)の場合には、超音波振動エネルギーを、冷却媒体を通して、および、組立体42およびバンド36を通して、液体金属に提供する。本発明の一実施形態では、超音波エネルギーは、電流を機械的エネルギーに変換する能力を有するトランスデューサから供給され、このようにして20kHz(例えば400kHzまで)を越える振動周波数が作られる。なおこの超音波エネルギーは、圧電素子または磁歪素子のいずれかから、またはその両方から、供給される。
【0051】
本発明の一実施形態では、超音波プローブは、液体冷却媒体に対して接触するよう、冷却チャネル46内に挿入される。本発明の一実施形態では、もし存在する場合には、超音波プローブの先端部からバンド36までの分離距離は可変である。分離距離は例えば、1mm未満、2mm未満、5mm未満、1cm未満、2cm未満、5cm未満、10cm未満、20未満、または50cm未満であり得る。本発明の一実施形態では、2つ以上の超音波プローブまたは超音波プローブのアレイが、液体冷却媒体に対して接触するよう、冷却チャネル46内に挿入され得る。本発明の一実施形態では、超音波プローブは、組立体42の壁部に取り付けられてもよい。
【0052】
本発明の一態様では、振動エネルギーを供給する圧電トランスデューサは、電気接続のための取付ポイントを提供する電極間に挟まれたセラミック物質から形成され得る。電圧が電極を通してセラミックに印加されると、セラミックは超音波周波数で伸縮する。本発明の一実施形態では、振動エネルギー供給源40として機能する圧電トランスデューサはブースタに取り付けられ、このブースタにより振動がプローブに伝達される。米国特許第9,061,928号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)では、超音波トランスデューサ、超音波ブースタ、超音波プローブ、およびブースタ冷却ユニットを含む超音波トランスデューサ組立体が記載されている。‘928特許に記載の超音波ブースタは、超音波トランスデューサにより生成された音響エネルギーを増幅し、かつ、増幅された音響エネルギーを超音波プローブに伝達するために、超音波トランスデューサに接続される。‘928特許のブースタ構成は、上記の液体冷却媒体に対して直接的または間接的に接触する超音波プローブに対してエネルギーを提供するにあたり、本発明において有用であり得る。
【0053】
実際、本発明の一実施形態では、超音波ブースタは超音波の分野では圧電トランスデューサにより作られた振動エネルギーを増幅または増強するために使用される。ブースタにより、振動の周波数は増減せず、振動の振幅が増大される。(ブースタが逆方向に設置された場合、ブースタは振動エネルギーを減少させ得る。)本発明の一実施形態では、ブースタは圧電トランスデューサとプローブとの間に接続される。超音波結晶粒微細化のためにブースタを使用する場合、以下は、圧電振動エネルギー供給源とともにブースタを使用することを例示する代表的ないくつかの方法ステップである。
1)電流が圧電トランスデューサに供給される。電流が供給されるとトランスデューサ内のセラミック片は伸縮する。これにより電気的エネルギーが機械的エネルギーに変換される。
2)次にこれらの振動は、一実施形態では、ブースタに伝達され、ブースタにより機械的振動か増幅または増強される。
3)次に、ブースタからの増幅または増強された振動は、一実施形態では、プローブに伝搬される。次にプローブが超音波周波数で振動し、このようにしてキャビテーションが作られる。
4)振動プローブからのキャビテーションは鋳造バンドに衝撃を与える。鋳造バンドは、一実施形態では、溶融金属に対して接触する。
5)キャビテーションは、一実施形態では、デンドライトを分裂させ、等軸結晶粒構造が作られる。
【0054】
図2を参照すると、プローブは、溶融金属処理装置34を通って流れる冷却媒体に結合される。超音波周波数で振動するプローブを介して冷却媒体中で生成されるキャビテーションは、格納構造体32内の溶融アルミニウムに対して接触するバンド36に衝撃を与える。
【0055】
本発明の一実施形態では、振動エネルギーは振動エネルギー供給源40として機能する磁歪トランスデューサにより供給されることが可能である。一実施形態では、振動エネルギー供給源40として機能する磁歪トランスデューサは、
図2の圧電トランスデューサユニットと同一の配置を有する。なお唯一の差異は、超音波周波数で振動する表面を駆動する超音波供給源が、少なくとも1つの圧電素子ではなく、少なくとも1つの磁歪トランスデューサであることである。
図13では、少なくとも1つの超音波振動エネルギー供給源に対して磁歪素子70を利用する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成が図示されている。本発明のこの実施形態では、磁歪トランスデューサ(単数または複数)70は、冷却媒体に結合されたプローブ(
図13の側面図では図示しない)を、以下で記載するように他の周波数も使用可能であるが、例えば30kHzの周波数で振動させる。本発明の他の実施形態では、磁歪トランスデューサ70は、溶融金属処理装置34内部における
図14の概略断面図において示される底部プレート71を振動させる。ここで底部プレート71は、下方の冷却チャネル中の冷却媒体に結合されている(
図14において示される)。
【0056】
磁歪トランスデューサは通常、多数の材料プレートからなり、これらの材料プレートは電磁場が印加されると伸縮する。さらに詳細には、本発明に対して好適である磁歪トランスデューサは、一実施形態では、多数のニッケル(または、その他の磁歪物質の)プレートまたは積層物を含む。なお、これらのプレートまたは積層組織は、振動されるべき処理容器の底部または他の表面に取り付けられた各積層物の1つの縁部に対して平行に配置される。磁場を提供するために、ワイヤのコイルが磁歪物質の周りに配置される。例えば、ワイヤのコイルに電流が供給されると磁場が作られる。この磁場により、磁歪物質は収縮または伸長させられ、それにより、伸縮する磁歪物質に対して接触する流体中に音波が導入される。本発明に対して好適である磁歪トランスデューサから発する通常の超音波周波数は20~200kHzの範囲である。磁歪素子の固有振動数に応じて、より高い周波数またはより低い周波数も使用されることが可能である。
【0057】
磁歪トランスデューサに対して、ニッケルが、最も使用される物質のうちの1つである。トランスデューサに電圧が印加されると、ニッケル物質は超音波周波数で伸縮する。本発明の一実施形態では、ニッケルプレートはステンレス鋼プレートに対して直接的に銀ロウ付けされる。
図2を参照すると、磁歪トランスデューサのステンレス鋼プレートは、超音波周波数で振動する表面であり、かつ、溶融金属処理装置34を通って流れる冷却媒体に対して直接的に結合された表面(またはプローブ)である。超音波周波数で振動するプレートを介して冷却媒体中で生成されるキャビテーションは、次に、格納構造体32中の溶融されたアルミニウムに対して接触するバンド36に衝撃を与える。
【0058】
米国特許第7,462,960号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には、巨大な磁歪素子を有する超音波トランスデューサ駆動器が記載されている。したがって本発明の一実施形態では、磁歪素子は、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、およびニッケル(Ni)などの、前期遷移金属と比較して並外れて大きい磁歪効果を有する、Terfenol-Dなどの希土類合金性の物質、およびその複合物から作られ得る。代替的に、本発明の一実施形態における磁歪素子は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、およびニッケル(Ni)から作られてもよい。
【0059】
代替的に、本発明の一実施形態における磁歪素子は、以下の合金、すなわち、鉄およびテルビウムの合金、鉄およびプラセオジミウムの合金、鉄、テルビウム、およびプラセオジミウムの合金、鉄およびジスプロシウムの合金、鉄、テルビウム、およびジスプロシウムの合金、鉄、プラセオジミウム、およびジスプロシウムの合金、鉄、テルビウム、プラセオジミウム、およびジスプロシウムの合金、鉄およびエルビウムの合金、鉄およびサマリウムの合金、鉄、エルビウム、およびサマリウムの合金、鉄、サマリウム、およびジスプロシウムの合金、鉄およびホルミウムの合金、鉄、サマリウム、およびホルミウムの合金、または、これらの混合物のうちの1つまたは複数から作られ得る。
【0060】
米国特許第4,158,368号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には磁歪トランスデューサが記載されている。米国特許第4,158,368号において記載され、かつ、本発明に対して好適である、磁歪トランスデューサは、ハウジング内に配置された負の磁歪を示す物質のプランジャを含み得る。米国特許第5,588,466号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には磁歪トランスデューサが記載されている。米国特許第5,588,466号において記載され、かつ、本発明に対して好適である、磁歪層が、可撓性要素(例えば可撓性を有する梁)に貼り付けられる。可撓性要素は外部の磁場により湾曲される。‘466特許に記載され、かつ、本発明に対して好適である、薄い磁歪層は、Tb(1-x)Dy(x)Fe2からなる磁歪素子に対して使用されることが可能である。米国特許第4,599,591号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には磁歪トランスデューサが記載されている。米国特許第4,599,591号に記載され、かつ、本発明に対して好適である、磁歪トランスデューサは、磁歪物質と、磁歪物質内に回転する磁気誘導ベクトルを確立する位相関係を有する複数の電流源に対して接続された複数の巻線と、を利用し得る。米国特許第4,986808号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)には磁歪トランスデューサが記載されている。米国特許第4,986808号において記載され、かつ本発明に対して好適である、磁歪トランスデューサは複数の磁歪物質の長尺帯状物を含み得る。なお各帯状物は、近位端部と、遠位端部と、実質的にV字形状の断面と、を有し、V字の各アーム部は、一定の長手方向長さの細片により形成され、各細片は、近位端部および遠位端部の両方において、隣り合う細片に接合され、それにより、中心軸を有し、かつ、この中心軸に対して径方向に延長するフィンを有する、一体化された実質的に剛性の柱状体が形成されている。
【0061】
図3Aは、鋳型ホイール30のチャネル内の溶融金属に低周波数の振動エネルギーを供給するための機械的振動の構成を示す、本発明の他の実施形態の概略図である。本発明の一実施形態では、振動エネルギーは、トランスデューサまたは他の機械的な振動器により生成された機械的振動から発したものである。当該技術分野で周知のように、振動器は振動を発する機械的装置である。振動は多くの場合、不均衡な質量を駆動シャフト上に有する電動モータにより生成される。いくつかの機械的振動器は、電磁駆動器と、垂直往復運動により動かされる攪拌シャフトと、からなる。本発明の一実施形態では、振動エネルギーは、機械的エネルギーを用いて最高で20kHz(ただし最高値は20kHzに限定されない)までの振動周波数(好適には5~10kHzの範囲)を作る能力を有する振動器(または他の構成要素)から供給される。
【0062】
振動機構のいかんに関わらず、振動器(圧電トランスデューサ、磁歪トランスデューサ、または機械的に駆動される振動器)をハウジング44に取り付けることは、振動エネルギーが組立体42の下方のチャネル内の溶融金属に伝達されることが可能であることを意味する。
【0063】
本発明に対して有用である機械的振動器は、より高い周波数またはより低い周波数も使用可能であるが、毎分8,000~15,000回の振動で動作することが可能である。本発明の一実施形態では、振動機構は毎秒565~5,000回の振動で振動するよう構成される。本発明の一実施形態では、振動機構は、毎秒数分の一回の振動というさらに低い値から、毎秒565回の振動という高い値までの周波数で振動するよう構成される。本発明に対して好適である機械的に駆動される振動の範囲は、例えば、毎分6,000~9,000回の振動、毎分8,000~10,000回の振動、毎分10,000~12,000回の振動、毎分12,000~15,000回の振動、および、毎分15,000~25,000回の振動を含む。文献報告からの本発明に対して好適である機械的に駆動される振動の範囲は、例えば、133~250Hzの範囲、200Hz~283Hz(毎分12,000~17,000回の振動)の範囲、および4~250Hzの範囲を含む。さらに、鋳型ホイール30またはハウジング44を打撃するよう周期的に駆動される簡単なハンマーまたはプランジャ装置により、多様な機械的に駆動される発振が鋳型ホイール30またはハウジング44に印加されることが可能である。一般に機械的振動は10kHzまでの範囲であり得る。したがって本発明において使用される機械的振動に対して好適である範囲は、0~10KHz、10Hz~4000Hz、20Hz~2000Hz、40Hz~1000Hz、100Hz~500Hz、および、565~5,000Hzの好適な範囲を含むこれらの中間ならびに組み合わされた範囲を含む。
【0064】
これまでは超音波および機械的に駆動される実施形態について説明してきたが、本発明は、これらの範囲のうちの1つの範囲または他の範囲に限定されるものではなく、単一の周波数供給源および複数の周波数供給源を含む、400kHzまでの広いスペクトルの振動エネルギーに対して使用され得る。加えて、供給源(以下に記載される、超音波および機械的に駆動される供給源、または異なる超音波供給源、または、異なる機械的に駆動される供給源、または音響エネルギー供給源)の組み合わせも使用されることが可能である。
【0065】
図3Aにおいて示されているように、鋳造装置2は、溶融金属がその中に注湯される格納構造体32(例えば溝槽またはチャネル)を鋳型ホイール30中に有する鋳型ホイール30と、溶融金属処理装置34と、を含む。バンド36(例えば、鉄鋼バンド)は溶融金属を格納構造体32(すなわち、チャネル)内に閉じ込める。上記のようにローラ38は、溶融金属が、1)鋳型ホイールのチャネル内で凝固し、2)溶融金属処理装置34から離間する方向に搬送される際に、溶融金属処理装置34が静止位置に留まることを可能にする。
【0066】
冷却チャネル46は、冷却媒体を、冷却チャネル46を通して輸送する。前述のように、冷却チャネルから漏出する水が、溶融金属の投入供給源から離間する方向に沿って誘導されるよう、空気ワイプ52は空気(安全予防策として)を誘導する。前述のように、ローリング装置(例えばローラ38)は、回転する鋳型ホイール30に対して溶融金属処理装置34を案内する。冷却媒体は、溶融金属を、および、少なくとも1つの振動エネルギー供給源40(
図3Aでは機械的振動器40として示される)を、冷却する。
【0067】
溶融金属が機械的振動器40の下方にある金属バンド36の下方を通過する際、機械的に駆動される振動エネルギーは、溶融金属の冷却および凝固が開始する際に、溶融金属に供給される。一実施形態では、機械的に駆動される振動エネルギーにより複数の小さい核が形成されることが可能となり、それにより微細な結晶粒金属製品が生成される。
【0068】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの振動器40が冷却チャネル46に結合した状態で配置される。この振動器40は、機械的振動器の場合には、機械的に駆動される振動エネルギーを、冷却媒体を通して、および、組立体42ならびにバンド36を通して、液体金属に提供する。本発明の一実施形態では、機械的振動器のヘッド部は、液体冷却媒体に対して接触するよう、冷却チャネル46内に挿入される。本発明の一実施形態では、2つ以上の機械的振動器のヘッド部または機械的振動器ヘッド部のアレイが、液体冷却媒体に対して接触するよう、冷却チャネル46内に挿入され得る。本発明の一実施形態では、機械的振動器ヘッド部は、組立体42の壁部に取り付けられてもよい。
【0069】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、鋳型ホイール30のチャネルの底部における比較的少量の過冷却(例えば摂氏10度より低い)により、より純粋なアルミニウム(または他の金属もしくは合金)の小さい核の層が形成される。機械的に駆動される振動により、これらの核が作られ、次にこれらの核が凝固の際に造核剤として使用され、それにより均一な結晶粒構造がもたらされる。したがって、本発明の一実施形態では、利用される冷却方法は、チャネルの底部における少量の過冷却により物質の小さい核の層が処理されることを保証する。チャネルの底部から加えられた機械的に駆動される振動は、これらの核を分散させ、および/または、過冷却層中に形成するデンドライトを分裂させることが可能である。次に、これらの核およびデンドライトの断片は、凝固の際に鋳物中に等軸結晶粒を形成するために使用され、その結果、均一な結晶粒構造がもたらされる。
【0070】
換言すると、本発明の一実施形態では、液体金属中に伝達される機械的に駆動される振動により、金属または金属合金中に核生成部位が作られ、その結果、結晶粒サイズが微細化される。上述のように、鋳型ホイール30のチャネルは、例えば銅、鉄および鉄鋼、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、および、これらの物質の融点を上昇させることが可能であるシリコン、酸素、または窒素などの1つまたは複数の元素を含むこれらの合金などの耐熱性金属または他の高温物質であり得る。
【0071】
図3Bは、少なくとも1つの超音波振動エネルギー供給源、および、少なくとも1つの機械的に駆動される振動エネルギー供給源(例えば機械的に駆動される振動器)の両方を利用する、本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール混成構成の概略図である。
図3Aの要素と共通して示される要素は、上述と同様の機能を果たす同様の要素である。例えば
図3Bにおいて示される格納構造体32(例えば溝槽またはチャネル)は、溶融金属がその中に注湯される図示の鋳型ホイール内にある。上述のように、バンド(
図3Bには図示せず)は溶融金属を格納構造体32内に閉じ込める。ここで、本発明のこの実施形態では、超音波振動エネルギー供給源(単数または複数)および機械的に駆動される振動エネルギー供給源(単数または複数)の両方は、選択的に活性化でき、振動を提供するよう、個別的に、または互いに組み合わされた状態で、駆動されることが可能である。この振動が液体金属中に伝達されると、金属または金属合金中に核生成部位が作られ、結晶粒サイズが微細化される。本発明の様々な実施形態では、超音波振動エネルギー供給源(単数または複数)および機械的に駆動される振動エネルギー供給源(単数または複数)の異なる組み合わせが、配置および利用されることが可能である。
【0072】
図3Cは、強化された振動エネルギー結合および/または強化された冷却を有する振動エネルギー供給源を利用する、本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。
図3Cにおいて示される超音波結晶粒微細化装置は、鋳型ホイール30上に配置された統合化された振動エネルギー/冷却システムと、例えば振動器40のうちの一方(または両方)の底部(必ずしも必要ではないが好適には中央底部領域)から鋳造バンド36(すなわち、溶融金蔵に対して接触する受容体)に向かって冷却媒体および/または流体を注入することによる冷却および強化された振動エネルギー結合を鋳造バンド36に提供することと、を図示する。
図3Dは、
図3Cにおける円形領域の拡大された断面を示す概略図である。
図3Dには、冷媒注入ポート40bを有する振動器40(例えば、超音波プローブ)が示されている。
図3Dにおいて示されているように、冷却媒体がプローブ先端部40aから放出された後、振動器は冷却媒体を含む冷却チャネル46入に挿入される。
【0073】
本発明の一実施形態では、各プローブは、それぞれのプローブまたは振動器40の先端部40aの下方に水を提供するための1つまたは複数の冷却媒体注入ポートを有し得る。本発明の一実施形態では、供給部から供給された冷却媒体は振動器の軸方向長さを移動し、プローブ先端部40aから、プローブの先端部と溶融金属に対して接触する受容体(例えばバンド36)との間の領域に放出される。
図3Eは、強化された振動エネルギー結合および/または冷却を提供する複数の冷媒注入ポート40bを有する超音波プローブの概略図である。
図3Eにおいて示される実施形態では、冷媒は、プローブ先端部の中心から径方向に離間した位置において供給される。
図3Eでは、2つのみの冷媒注入ポートが示されている。しかし3つ以上の注入ポートが使用されてもよい。一般に本発明は、プローブ先端部40aの底部における、または、プローブ先端部40aの底部の直接的近傍における、中心および/または径方向に離間された、冷媒注入の両方の冷媒注入を提供する。例えば、冷媒注入ライン(プローブ40から別であり、および/またはプローブ先端部40aから別である)が、追加的または代替的に、プローブの先端部と溶融金属に対して接触する受容体(例えば、バンド36)との間に、冷媒を提供/注入し得る。
【0074】
本発明の1つの代表的な実施形態では、冷却媒体/流体は、超音波振動が冷却媒体に対して結合し、キャビテーション(液体冷却媒体中の気泡)が作られることが可能となるよう、プローブの先端部に、またはその近傍に、存在する。好適な実施形態では、液体状態にある水は小さい蒸気泡を含むよう霧状化される。これらの小さい気泡はキャビテーションとして作用し、崩壊したときにバンド36に対してエネルギーを印加し、それにより鋳造バンド上の水/金属境界面における蒸気境界層が分裂され、その結果、熱伝達が大きくなる。本発明の1つの代表的な実施形態では、気泡はバンド36(すなわち受容体)上でまたはバンド36の近傍で崩壊し、振動エネルギーを溶融金属に対して接触するバンドまたは受容体に印加する。それにより、溶融金属側上のあらゆる凝固された粒子は破断されることが可能であり、破断された粒子は等軸結晶粒構造を形成するための核として使用されることが可能である。本発明の一実施形態では、気泡の崩壊により、鋳造バンドの表面に対して顕著なエネルギーが放出される。そのエネルギーは鋳造バンドの溶融金属側に結合され、鋳造バンドの溶融金属側で、そのエネルギーにより、あらゆる凝固された粒子が分裂される。本発明の一実施形態では、分解された粒子は、結果的に生成される金属鋳物中の等軸結晶粒構造を形成するための、溶融金属内の核として使用される。
【0075】
水が好都合な冷却媒体である一方で、他の冷媒も使用可能である。本発明の一実施形態では、冷却媒体は超冷却液体(例えば、摂氏0度~摂氏-196度であるかまたはそれよりも低い温度の液体、氷と液体窒素との間の温度の液体)である。本発明の一実施形態では、超冷却液体(例えば液体窒素など)は超音波または他の振動エネルギー供給源に結合される。その最終的効果は、凝固速度が高くなり、より速い処理が可能となることである。本発明の一実施形態では、プローブ(単数または複数)から流出する冷却媒体は、キャビテーションを作るのみではなく、溶融金属を霧状化および超冷却するであろう。好適な実施形態では、その結果、鋳型ホイールのゾーンにおける熱伝達が大きくなる。
【0076】
本発明の一実施形態では、プローブの先端部とバンド36、受容体との間の分離距離D(
図3F参照)は、通常、5mm未満の移動で受容体に接触する距離、2mm未満の移動で受容体に接触する距離、1mm未満の移動で受容体に接触する距離、0.5mm未満の移動で受容体に接触する距離、または、0.22mm未満の移動で受容体に接触する距離、である。
【0077】
本発明の一実施形態では、超音波プローブから流出する水は、超音波プローブの底部表面上に設けられた1つまたは複数の流体注入ポートから鋳造バンド上に注入される。本発明の他の実施形態では、鋳造バンドに当接する蒸気障壁が分裂されることが保証されるよう、水流は高速に維持される。全般に水の流れは、鋳造ベルトの表面、または溶融金属容器の壁部における、あらゆる蒸気境界層を分裂させる傾向を有する。プローブ通過時の流速は、設計毎に変動し得る。任意の設計に対する流速は、一定であってもよく、または可変であってもよい。例示的な実施形態では、1mm直径の液体注入穴に対して、水の流速は毎分1ガロン(約4リットル)のオーダーとなるであろう。
【0078】
本発明の他の実施形態では、鋳造バンドは、水に対向する表面上に、および/または、溶融金属に対向する表面上に、テクスチャを有する。好適な実施形態におけるテクスチャは、蒸気障壁を分裂させる機能を有する。いずれにせよ鋳造バンド表面は、滑らかであってもよく、粗くてもよく、凸状であってもよく、凹状であってもよく、テクスチャを有してもよく、および/または研磨されていてもよい。鋳造バンドは、クロム、ニッケル、銅、チタン、および/または、炭素繊維でメッキまたは被覆され得る。
【0079】
本発明の一実施形態では、統合化された振動/冷却プローブにより提供される強化された振動エネルギー結合および/または強化された冷却は、1)TiBの化学的添加物を使用することなく等軸結晶粒構造を獲得すること、2)バンド寿命が延び、生産性が向上すること、3)冷却媒体がプローブ(単数または複数)の先端部から流出することによりキャビテーションが増加すること、のうちの1つまたは複数を可能にする。本発明の一実施形態では、統合化された振動/冷却プローブにより提供される強化された振動エネルギー結合および/または強化された冷却は、凝固熱力学的現象の変更および/または増加を可能にし、それにより機能性合金の合成が可能となる。
【0080】
本発明の様々な態様
本発明の一態様では、振動エネルギー(毎分8,000~15,000回の範囲の振動または10KHzまでの低周波数の機械的に駆動される振動器からの、および/または、5~400kHzの範囲の超音波周波数における)が、冷却の際に溶融金属格納槽に印加され得る。本発明の一態様では、複数の特異的な周波数の振動エネルギーが印加され得る。本発明の一態様では、振動エネルギーは、以下に列挙する金属および合金(すなわち、アルミニウム、銅、金、鉄、ニッケル、白金、銀、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニオブ、タングステン、マンガン、鉄、およびこれらの合金ならびに組み合わせと、真鍮(銅/亜鉛)、青銅(銅/スズ)、鉄鋼(鉄/炭素)、クロマロイ(クロム)、ステンレス鋼(鉄鋼/クロム)、工具鉄鋼(カーボン/タングステン/マンガン、チタン(鉄/アルミニウム)、ならびに、1100、1350、2024、2224、5052、5154、5356、5183、6101、6201、6061、6053、7050、7075、8XXXシリーズを含む標準化された等級のアルミニウム合金、青銅(上述)を含む銅合金、亜鉛、スズ、アルミニウム、シリコン、ニッケル、銀の組み合わせが混合された銅合金、アルミニウム、亜鉛、マンガン、シリコン、銅、ニッケル、ジルコニウム、ベリリウム、カルシウム、セリウム、ネオジム、ストロンチウム、スズ、イットリウム、希土類が混合されたマグネシウム合金、鉄、およびクロム、炭素、シリコン、クロム、ニッケル、カリウム、プルトニウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、鉛、マグネシウム、スズ、スカンジウムが混合された鉄合金、ならびに、他の合金、および、これらの組み合わせ、を含む金属合金と、を含むがこれらに限定されない、多様な金属合金)に印加され得る。
【0081】
本発明の一態様では、振動エネルギー(毎分8,000~15,000回の範囲の振動または10KHzまでの低周波数の機械的に駆動される振動器からの、および/または、5~400kHzの範囲の超音波周波数における)が、バンドに対して接触する液体媒体を通して、溶融金属処理装置34の下方における凝固する金属に結合される。本発明の一態様では、565~5,000Hzの範囲の振動エネルギーが機械的に結合される。本発明の一側面では、振動エネルギーは、毎秒数分の一回の振動というさらに低い値から、毎秒565回の振動という高い値までの周波数で振動するよう機械的に駆動される。本発明の一態様では、振動エネルギーは、5kHz~400kHzの範囲の周波数で超音波的に駆動される。本発明の一態様では、振動エネルギーは振動エネルギー供給源40を含むハウジング44を通して連結される。ハウジング44は、チャネルの壁部を通して接触するかまたは溶融金属に対して直接的に接触する他の構造要素(バンド36またはローラ38など)に接続する。本発明の一態様では、この機械的結合は、金属が冷却する際に、振動エネルギーを振動エネルギー供給源から溶融金属に伝達する。
【0082】
一態様では、冷却媒体は水などの液体媒体であり得る。一態様では、冷却媒体は圧縮空気または窒素などのガス状媒体であり得る。一態様では、冷却媒体は相変化物質であり得る。冷却媒体は、バンド36の近傍における金属が過冷却されるよう充分な速度で提供されると好適である(冷却媒体の温度は、合金の液相線温度を、摂氏5度~摂氏10度より小さい値だけ、越える値であってもよく、または液相線温度より低い値であってさえもよい)。
【0083】
本発明の一態様では、鋳造製品内の等軸結晶粒は、結晶粒の個数を増加させ、かつ、均一な異種混交的凝固を改善するために、ホウ化チタンなどの不純物粒子を金属または金属合金に添加することを必要とすることなく取得される。造核剤の使用に代わって、本発明の一態様では、振動エネルギーが、核生成部位を作るために使用され得る。
【0084】
動作時、合金の液相線温度よりも実質的に高い温度の溶融金属が、重力により、鋳型ホイール30のチャネルに流れ込み、溶融金属処理装置34の下方を通過し、溶融金属処理装置34の下方で、振動エネルギー(すなわち超音波振動または機械的に駆動される振動)に曝露される。鋳型ホイールのチャネルに流れ込む溶融金属の温度は、とりわけ合金選択の種類、注湯速度、鋳型ホイールのサイズに依存する。アルミニウム合金に対して、鋳造温度は、華氏1220度~華氏1350度の範囲であり、好適な範囲は、例えば華氏1220度~華氏1300F度、華氏1220度~華氏1280度、華氏1220度~華氏1270度、華氏1220度~華氏1340度、華氏1240度~華氏1320度、華氏1250度~華氏1300度、華氏1260度~華氏1310度、華氏1270度~華氏1320度、華氏1320度~華氏1330度であり得る。ただし、重なり合う範囲ならびに中間の範囲、および±華氏10度の分散も好適である。鋳型ホイール30のチャネルは、チャネル内の溶融金属が液相線よりも低い温度(例えば、合金の液相線温度を、摂氏5度~摂氏10度より小さい値だけ、越える温度であってもよく、または、液相線温度より低い温度でさえもよい。ただし注湯温度は摂氏10度をはるかに越える温度であり得る)に近くなることが保証されるよう、冷却される。動作時、溶融金属の周囲の雰囲気は、例えばAr、He、または窒素などの不活性ガスで充填またはパージされたシュラウド(図示せず)により制御され得る。鋳型ホイール30上の溶融金属は通常、溶融金属が液体から固体に変化するサーマルアレストの状態にある。
【0085】
液相線温度より低い温度に近い過冷却の結果として、凝固速度は、固相・液相境界面を通して平衡が可能となるような充分に低い値ではない。そのため、鋳造棒において組成の変化が生じ得る。化学組成の不均一性により、偏析がもたらされる。加えて、偏析の量は、溶融金属中の様々な元素の拡散係数に、および、熱伝達率に、直接的に関連する。他の種類の偏析は、より低い融点を有する成分が最初に凝固する場合である。
【0086】
本発明の超音波的または機械的に駆動される振動の実施形態では、振動エネルギーにより、溶融金属が冷却する際に、溶融金属が波立てられる。この実施形態では、溶融金属を波立てて効果的に攪拌するエネルギーを有する振動エネルギーが印加される。本発明の一実施形態では、機械的に駆動される振動エネルギーは、溶融金属が冷却される際に、溶融金属を連続的に攪拌するよう作用する。様々な鋳造合金処理では、アルミニウム合金中に高濃度のシリコンを有することが望ましい。しかし、より高いシリコン濃度において、シリコン沈殿が形成し得る。溶融状態に戻るようこれらの沈殿を「再混合」することにより、元素のシリコンは少なくとも部分的に溶液に戻り得る。代替的に、たとえ沈殿が残っていた場合でさえも、混合により、シリコン沈殿が偏析することはなく、それにより、下流側の金属ダイおよびローラにさらなる磨損を生じさせることは、ないであろう。
【0087】
様々な金属合金システムでは、合金の1つの成分(通常は融点がより高い成分)が純粋な形態で沈殿し、実質上、合金が純粋な成分の粒子で「汚染」された場合と同じ種類の効果が発生する。一般に、合金を鋳造した場合、偏析が発生し、それにより、溶質の濃度は、鋳物の全体で必ずしも一定ではない。これは、様々なプロセスにより生じ得る。デンドライトアーム間隔のサイズに匹敵する距離にわたり生じるミクロ偏析は、最初に形成される固体が最終的な平衡濃度よりも濃度が低く、その結果として、過度の溶質が液体中に分配され、それにより、後に形成された固体がより高い濃度を有することの結果であると考えられる。マクロ偏析は鋳物のサイズと同様の距離にわたり生じる。マクロ偏析は、鋳物が凝固する際の収縮効果、および、溶質が分配される際の液体の濃度における変化に関連する、いくつかの複雑な過程により生じ得る。全体を通して均一な特性を有する固体ビレットが与えられるよう、鋳造の際に偏析を防止することが望まれる。
【0088】
したがって、本発明の振動エネルギー処理から利益を得るであろういくつかの合金は上述の合金を含む。
【0089】
他の構成
本発明は、上述のようにチャネル構造のみに対して振動エネルギーを使用する用途に限定されない。全般に、振動エネルギー(10KHzまでの範囲の低周波数の機械的に駆動される振動器からの、および/または、5~400kHzの範囲の超音波周波数における)は、溶融金属が溶融状態から冷却を開始し固体状態に入る、鋳造処理における時点(すなわちサーマルアレスト状態)において核生成を誘導し得る。異なる見方では、本発明は、様々な実施形態において、冷却表面に隣接する溶融金属が合金の液相線温度に近接するよう、広範な供給源からの振動エネルギーと熱管理とを組み合わせる。これらの実施形態では、振動エネルギーが、核を作り、および/または、鋳型ホイール30内のチャネルの表面上に形成し得るデンドライトを分裂させる一方で、チャネル内の、または、鋳型ホイール30のバンド36に当接する、溶融金属の温度は、核生成および結晶成長(デンドライト形成)が誘導されるよう、十分低い値である。
【0090】
本発明の一実施形態では、鋳造処理に関連する有利な側面は、振動エネルギー供給源が作動されることなく、または、連続的に作動されることなく、持たれることが可能である。本発明の一実施形態では、振動エネルギー供給源に対する出力を制御することを通して、デューティサイクルに関する許容範囲がパーセンテージで、0~100%、10~50%、50~90%、40~60%、45~55%、およびその間のすべての中間の範囲にある状態で、プログラムされたon/offサイクルの間に作動され得る。
【0091】
本発明の他の実施形態では、振動エネルギー(超音波または機械的に駆動される振動エネルギー)は、バンド36が溶融金属に接触する以前に、鋳型ホイール中の溶融アルミニウム鋳物中に直接的に注入される。振動エネルギーを直接的に印加することにより、交番する圧力が溶融物中に生じる。振動エネルギーとして超音波エネルギーを溶融金属に直接的に印加することにより、溶融物中にキャビテーションが発生し得る。
【0092】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、キャビテーションは、液体中における極めて小さい不連続性またはキャビティの形成からなり、その後、成長、脈動、および崩壊が発生する。キャビティは疎位相にある音響波により生成される引っ張り応力の結果として発生する。キャビティが形成された後に引っ張り応力(または負圧)が持続する場合、キャビティは、初期サイズの数倍にまで拡張するであろう。超音波フィールド内におけるキャビティの間、多数のキャビティが超音波波長より小さい距離において同時に出現する。この場合、キャビティ気泡は球形状を保持する。キャビテーション気泡のその後の挙動は変動性が非常に高い。すなわち、極少量の気泡が合体して大きい気泡が形成されるが、ほとんどすべての気泡は密位相にある音響波により崩壊させられる。密状態の間、これらのキャビティの一部は圧縮応力のために崩壊し得る。このように、これらのキャビティが崩壊したとき、高い衝撃波が溶融物中で発生する。したがって、本発明の一実施形態では、振動エネルギーにより誘導された衝撃波は、デンドライトおよび他の成長中の核を分裂させるよう作用し、このようにして新しい核が生成され、これらの新しい核が等軸結晶粒構造をもたらす。加えて本発明の他の実施形態では、連続的な超音波振動は形成された核を効果的に均質化することが可能であり、それにより等軸構造がさらに支援される。本発明の他の実施形態では、非連続的な超音波または機械的に駆動される振動は、形成された核を効果的に均質化することが可能であり、それにより等軸構造がさらに支援される。
【0093】
図4は、振動プローブ装置66を特に有する本発明の一実施形態に係る鋳型ホイール構成の概略図である。振動プローブ装置66は、鋳型ホイール60中の溶融金属鋳物に対して直接的に挿入されたプローブ(図示せず)を有する。プローブは、超音波脱ガスの分野において周知のものと同様の構成であり得る。
図4には、ローラ62がバンド68を鋳型ホイール60のリムに対して押圧する様子が示されている。振動プローブ装置66は、振動エネルギー(超音波または機械的に駆動されるエネルギー)を、鋳型ホイール60のチャネル(図示せず)中の溶融金属鋳物に、直接的または間接的に結合する。鋳型ホイール60が反時計方向に回転するにつれて、溶融金属はローラ62の下方を通過し、省略可能である溶融金属冷却装置64と接触する。この装置64は、
図2および
図3の組立体42と同様であり得るが、振動器40を有さない。この装置64は、
図3Aの溶融金属処理装置34と同様であり得るが、機械的振動器を有さない。
【0094】
この実施形態では
図4において示されているように、鋳造装置のための溶融金属処理装置では、少なくとも1つの振動エネルギー供給源(すなわち振動プローブ装置66)が利用される。鋳型ホイール中の溶融金属が冷却される際、この振動エネルギー供給源は、鋳型ホイール内の溶融金属鋳物中に挿入されたプローブ(鋳型ホイール中の溶融金属鋳物に対して直接的に挿入されていると好適であるが、直接的挿入は必ずしも必要ではない)により、振動エネルギーを供給する。支持装置が振動エネルギー供給源(振動プローブ装置66)を定位置に保持する。
【0095】
本発明の他の実施形態では、振動エネルギーは音響発振器の使用により溶融金属が媒体として空気または気体を通して冷却される際、溶融金属に結合され得る。音響発振器(例えば音響増幅器)が、音響波を生成し、溶融金属中に伝達するために使用され得る。この実施形態では、上述の超音波または機械的に駆動される振動器は、音響発振器で置き換えられてもよく、または音響発振器により補助されてもよい。本発明に対して好適である音響増幅器は1~20,000Hzの音響振動を提供するであろう。この範囲よりも高いかまたは低い音響振動も使用されることが可能である。例えば、0.5~20Hz、10~500Hz、200~2,000Hz、1,000~5,000Hz、2,000~10,000Hz、5,000~14,000Hz、および10,000~16,000Hz、14,000~20,000Hz、および18,000~25,000Hzの音響振動の使用が可能である。電気音響的トランスデューサが音響エネルギーを生成および伝達するために使用され得る。
【0096】
本発明の一実施形態では、音響エネルギーはガス状媒体を通して溶融金属に直接的に結合され得る。この場合、音響エネルギーは溶融金属を振動させる。本発明の一実施形態では、音響エネルギーはガス状媒体を通して溶融金属に間接的に結合され得る。この場合、音響エネルギーは、溶融金属を含むバンド36または他の支持構造体を振動させ、次にバンド36または他の支持構造体が溶融金属を振動させる。
【0097】
上述のように本発明の振動エネルギー処理が連続ホイール式鋳造システムにおいて使用される他にも、本発明は、固定鋳型および垂直型鋳造装置においても利用される。
【0098】
静止型装置に対しては、溶融金属は、例えば
図5において示される静止鋳型62に注湯されるであろう。なお静止鋳型62は、この鋳型自体が溶融金属処理装置34(概略的に示されている)を有する。このように、振動エネルギー(毎分8,000~15,000回の範囲の振動または10KHzまでの低周波数の機械的に駆動される振動器からの、および/または、5~400kHzの範囲の超音波周波数における)は、溶融金属が溶融状態から冷却を開始し固体状態に入る、静止鋳造における時点(すなわちサーマルアレスト状態)において核生成を誘導し得る。
【0099】
図6A~
図6Dには、垂直型鋳造装置の選択された構成要素が図示されている。垂直型鋳造装置のこれらの構成要素および他の側面に関するさらなる詳細は、米国特許第3,520,352号(内容全体が、参照することにより本願に援用される)に見られる。図面6A~
図6Dにおいて示されているように、垂直型鋳造装置は溶融金属鋳込み空間213を含む。溶融金属鋳込み空間213は、図示の実施形態では略正方形であるが、円形、楕円形、多角形、または任意の他の好適な形状であってもよく、鋳型の上部部分に配置された、垂直で、かつ、互いに交差し合う、第1壁部部分215と、第2壁部部分またはコーナー壁部部分217と、により取り囲まれる。流体保持外囲体219は、鋳込み空間の壁部215およびコーナー部材217を、鋳込み空間の壁部215およびコーナー部材217から離間された状態で取り囲む。外囲体219は、流入導管221を介して水などの冷却流体を受容し、流出導管223を介して冷却流体を放出するよう、適応される。
【0100】
第1壁部部分215は銅などの高い熱伝導性を有する物質製であると好適であるが、第2壁部部分またはコーナー壁部部分217は例えばセラミック物質などのさほど熱伝導性が高くない物質で構築される。図面6A~
図6Dにおいて示されているように、コーナー壁部部分217は略L字形状または角のある断面を有し、各コーナーの垂直縁部は、下方に、かつ、互いに向かって集まるように、傾斜する。したがってコーナー部材217は、横断面間にある鋳型の放出端部の上方における鋳型における何らかの好都合なレベルにおいて終端する。
【0101】
動作時、溶融金属はタンディッシュ245から、垂直に往復する鋳型に流れ込み、金属の鋳造撚り線が鋳型から連続的に引き出される。溶融金属は、まず、より低温の鋳型壁部に対して接触する時点で冷却される。この鋳型壁部は第1冷却ゾーンとみなされ得る。熱は、このゾーンにおいて溶融金属から素早く除去され、物質の表面が、溶融金属の中央プールを完全に取り囲んで形成されると考えられる。
【0102】
本発明の一実施形態では、振動エネルギー供給源(単純化のために
図6D上にのみ概略的に示される振動器40)は、流体保持外囲体219に対して配置されるであろう(流体保持外囲体219内で循環する冷却媒体中に挿入された状態が好適である)。振動エネルギー(低周波数の機械的に駆動される振動器からの毎分8,000~15,000回の範囲の振動、および/または、5~400kHzの範囲の超音波周波数における、および/または、上述の音響発振器からの)は、溶融金属が液体から固体に変化し、金属の鋳造撚り線が金属鋳込み空間213から連続的に引き出される際に、溶融金属が溶融状態から冷却を開始し固体状態に入る鋳造処理における時点(すなわちサーマルアレスト状態)において、核生成を誘導するであろう。
【0103】
本発明は、連続鋳造、ダイレクトチル鋳造、固定鋳型を含むがこれらに限定されない、多様な他の鋳造方法に提供されることが可能である。本明細書で概説される主要な実施形態は、振動を、ホイールが格納構造体である連続的鋳型ホイールおよびベルト構成に適用される。しかし、他の連続鋳造方法(例えば、
図15および
図16において示されるように格納構造体としてローラまたはベルト設計を使用する双ロール鋳造)が存在する。双ロール鋳造法では、溶融金属は、ロンダーシステム75を介して鋳造装置に供給され、格納構造体に流れ込む。格納構造体は、22826mmまでの様々な幅(ただし最高値はこの値に限定されない)と、2.03mまでの長さ(ただし最高値はこの値に限定されない)を有し得る。これらの構成では、溶融金属は、鋳型の一方の側面に供給され、冷却されつつ鋳型の長さに沿って連続的に移動し、シート形状78の凝固された金属として出て来る。例えば、振動(超音波、機械的、またはこれらの組み合わせ)は、溶融金属が格納構造体内で凝固する際に、振動供給装置77により、直接的に、または、冷却媒体を通して、溶融金属の反対側にあるベルト78またはローラ76の側面に供給され得る。
【0104】
本発明の一実施形態では、上述の超音波結晶粒微細化が上記の超音波脱ガスと組み合わされると、金属が鋳造される以前に溶融槽から不純物が除去される。
図9は、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の両方を利用する本発明の一実施形態を示す概略図である。
図9において示されているように、炉が溶融金属の供給源である。溶融金属はロンダー内で炉から輸送される。本発明の一実施形態では、超音波脱ガス装置は、超音波結晶粒微細化装置(図示せず)を含む鋳造機械(例えば鋳型ホイール)に溶融金属が提供される以前の、ロンダーの経路内に配置される。一実施形態では、鋳造機械における結晶粒微細化は、超音波周波数においてなされる必要はなく、むしろ、他の箇所で説明した他の機械的に駆動される周波数のうちの1つまたは複数においてなされ得る。
【0105】
以下の特定的な超音波脱ガス装置に限定されるものではないが、‘336特許では、本発明の異なる実施形態に対して好適である脱ガス装置が説明されている。1つの好適な脱ガス装置は、超音波トランスデューサと、第1端部および第2端部を含む長尺プローブであって、第1端部は超音波トランスデューサに取り付けられ、第2端部は先端部を含む、長尺プローブと、パージ用ガス送達システムであって、パージ用ガス流入口およびパージ用ガス流出口を含み得る、パージ用ガス送達システムと、を有する超音波装置であろう。他の実施形態ではパージ用ガス流出口は長尺プローブの先端部にあってもよいが、いくつかの実施形態ではパージ用ガス流出口は長尺プローブの先端部の約10cm(または5cm、もしくは1cm)以内であってもよい。加えて超音波装置は1台の超音波トランスデューサあたり複数のプローブ組立体および/または複数のプローブを含み得る。
【0106】
以下の特定的な超音波脱ガス装置に限定されるものではないが、‘387特許では、本発明の異なる実施形態に対してまた好適である脱ガス装置が説明されている。1つの好適な脱ガス装置は、超音波トランスデューサと、超音波トランスデューサに取り付けられたプローブであって、先端部を含む、プローブと、ガス流入口、プローブを通るガス経路、およびプローブの先端部に設けられたガス流出口を含むガス送達システムと、を有する超音波装置であろう。一実施形態では、プローブは、第1端部および第2端部を含む長尺プローブであって、第1端部は超音波トランスデューサに取り付けられ、第2端部は先端部を含む、長尺プローブであり得る。さらに、プローブは、ステンレス鋼、チタン、ニオブ、セラミックなど、またはこれらの物質のうちの任意の物質の組み合わせを含み得る。他の実施形態では、超音波プローブは、一体化されたガス送達システムがその中を通る状態の単体サイアロンプローブであり得る。さらに他の実施形態では、超音波装置は、1台の超音波トランスデューサあたり複数のプローブ組立体および/または複数のプローブを含み得る。
【0107】
本発明の一実施形態では、例えば上述の超音波プローブを使用する超音波脱ガスは超音波結晶粒微細化を補完する。超音波脱ガスの様々な事例では、パージ用ガスは上述のプローブにより約1~約50L/分の範囲の速度で溶融金属に加えられる。開示により、流速は、約1~約50L/分の範囲であり得、流速は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、または約50L/分であり得る。加えて流速は約1~約50L/分の任意の範囲内であり得(例えば流速は、約2~約20L/分の範囲内)、これは約1~約50L/分の範囲の任意の組み合わせも含む。中間の範囲も可能である。同様に、本明細書で開示の他のすべての範囲も同様に解釈されるべきである。
【0108】
超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する本発明の様々な実施形態は、アルミニウム、銅、鉄鋼、亜鉛、マグネシウムなど、またはこれらの金属および他の金属の組み合わせ(例えば合金)を含むがこれらに限定されない金属を含む、溶融金属の超音波脱ガスのためのシステム、方法、および/または装置を提供し得る。溶融金属から製品を処理または鋳造することは溶融金属を含む処理槽を要求し得、溶融金属のこの処理槽は、高温に保たれ得る。例えば、溶融されたアルミニウムは、およそ摂氏750度の温度に維持され得る一方で、溶融された銅は、およそ摂氏1100度の温度に維持され得る。
【0109】
本明細書で使用される「処理槽」、「溶融金属槽」、などの用語は、容器、坩堝、溝槽、ロンダー、炉、取鍋、その他を含む、溶融金属を含み得る任意の容器を含むことを意味するものである。処理槽および溶融金属槽という用語は、バッチ、連続、半連続、その他を含むものとして使用され、例えば、ここでは、溶融金属は全般に静止状態にあり(例えば、多くの場合、坩堝に関連付けられる)、溶融金属は全般に移動状態にある(例えば多くの場合、ロンダーに関連付けられる)。
【0110】
多数の器具または装置は、処理槽内の溶融金属の状態を監視、試験、または変更するために、および、所望の金属製品の最終生成または鋳造のために、使用され得る。溶融金属槽内に遭遇される高温をより良好に耐えるために、好適にはより長い寿命を有し、金属が、アルミニウムまたは銅、または鉄鋼、または亜鉛、またはマグネシウム、その他であった(アルミニウムまたは銅、または鉄鋼、または亜鉛、またはマグネシウム、その他を含んだとしても)としても、溶融金属に対する無反応性に限定される、これらの器具または装置が必要とされる。
【0111】
さらに、溶融金属は、溶融金属中に溶解された1つまたは複数のガスを有し得る。これらのガスは、所望の金属製品の最終生成物および鋳物に対して、および/または、結果的に生成される金属製品自体の物理的特性に対して、悪影響を及ぼし得る。例えば、溶融金属中に溶解されたガスは、水素、酸素、窒素、二酸化硫黄など、またはこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの状況では、ガスを除去すること、または溶融金属中のガスの量を低減させることは、有利であり得る。例えば、溶解された水素は、アルミニウム(または銅もしくは他の金属、または合金)の鋳造において有害であり、したがってアルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)から生産された仕上げ済み製品の特性は、アルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)の溶融槽に同伴された水素の量を低減させることにより、改善され得る。質量基準で0.2ppmを越える、0.3ppmを越える、または0.5ppmを越える溶解された水素は、鋳込み速度と、結果的に生成されるアルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)棒および他の製品の品質と、に対して有害な効果を有し得る。水素は、溶融アルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)を含む処理槽の上方の空気中に水素自体が存在することにより、溶融アルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)に入り込む場合もあり、または、溶融アルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)槽中で使用されるアルミニウム(または銅もしくは他の金属または合金)原料出発物質中に存在する場合もある。
【0112】
溶融金属槽中の溶解されたガスの量の軽減化が試みられてきたが、その努力は必ずしも完全に成功したとはいえない。多くの場合、過去におけるこれらの処理には、追加的で高価な機材の他にも、有害となり得る物質が用いられた。例えば、溶解されたガス含有量を低減させるために金属鋳造産業で使用される処理はグラファイトなどの物質製のロータから構成され得、これらのロータは溶融金属槽内に配置され得る。追加的に塩素ガスが溶融金属槽内のロータの近傍位置において溶融金属槽に添加され得る。塩素ガス添加は、いくつかの状況において例えば溶融金属槽内の溶解された水素の量を低減化に資する場合もあるが、この従来の処理は注目すべき欠点があり、係る欠点の一部としては、コスト、複雑性、および、危険となる可能性を有し、かつ環境的に有害となる可能性を有する、塩素ガスの使用が挙げられる。
【0113】
追加的に、溶融金属は、溶融金属中に不純物を有し得、これらの不純物は、所望の金属製品の最終生成物および鋳物に対して、および/または、結果的に生成される金属製品自体の物理的特性に対して、悪影響を及ぼし得る。例えば溶融金属中の不純物は、溶融金属中における存在が要求されることも望まれることもないアルカリ金属または他の金属を含み得る。数パーセントの特定物質か様々な金属合金中に存在し、係る金属は不純物とはみなされないであろう。非限定的な例として不純物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、鉛など、またはこれらの組み合わせを含み得る。多様な不純物が、溶融金属槽中で使用される、入ってくる金属原料出発物質中に存在することにより、溶融金属槽(アルミニウム、銅、または他の金属もしくは合金)に入り込み得る。
【0114】
超音波脱ガスおよび超音波場結晶粒微細化に関する本発明の様々な実施形態は、溶融金属槽中の溶解ガスの量を低減するための方法を、あるいは換言すると、溶融金属を脱ガスするための方法を、提供し得る。1つの係る方法は、溶融金属槽中で超音波装置を動作させること、および、超音波装置の近傍において溶融金属槽にパージ用ガスを導入することを含み得る。溶解ガスは、酸素、水素、二酸化硫黄など、またはこれらの組み合わせであってもよく、またはこれらを含んでもよい。例えば溶解ガスは、水素であってもよく、または水素を含んでもよい。溶融金属槽は、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼、マグネシウムなど、または、これらの混合物および/または組み合わせ(例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼、マグネシウム、その他の多様な合金を含む)を含み得る。超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関連するいくつかの実施形態では、溶融金属槽はアルミニウムを含む場合もあり、その一方で他の実施形態では、溶融金属槽は銅を含む場合もある。したがって、溶融金属槽中の溶融金属はアルミニウムであってもよく、または代替的に、溶融金属は銅であってもよい。
【0115】
さらに、本発明の様々な実施形態は、溶融金属槽中に存在する不純物の量を低減するための方法を、あるいは換言すると、不純物を除去するための方法を、提供し得る。超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する1つの係る方法は、溶融金属槽中で超音波装置を動作させること、および、超音波装置の近傍において溶融金属槽にパージ用ガスを導入することを含み得る。不純物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、鉛など、またはこれらの組み合わせであってもよく、またはこれらを含んでもよい。例えば不純物は、リチウムであってもよく、もしくはリチウムを含んでもよく、または代替的にナトリウムであってもよく、もしくはナトリウムを含んでもよい。溶融金属槽は、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼、マグネシウムなど、または、これらの混合物および/または組み合わせ(例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼、マグネシウム、その他の多様な合金を含む)を含み得る。いくつかの実施形態では、溶融金属槽はアルミニウムを含む場合もあり、その一方で他の実施形態では、溶融金属槽は銅を含む場合もある。したがって、溶融金属槽中の溶融金属はアルミニウムであってもよく、または代替的に、溶融金属は銅であってもよい。
【0116】
本明細書で開示の、脱ガスの方法および/または不純物を除去する方法において利用される、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関するパージ用ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および/またはキセノンのうちの1つまたは複数を含み得るが、これらに限定されない。任意の好適なガスが、係るガスが溶融金属槽中の特定の金属(単数または複数)に対して感知可能に反応または溶解するものでないかぎり、パージ用ガスとして使用され得るものと考えられる。加えて、ガスの混合物または組み合わせも用いられ得る。本明細書で開示のいくつかの実施形態によれば、パージ用ガスは不活性ガスであってもよく、または不活性ガスを含んでもよい。代替的にパージ用ガスは希ガスであってもよく、または希ガスを含んでもよい。代替的にパージ用ガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、もしくはこれらの組み合わせであってもよく、またはこれらを含んでもよい。代替的にパージ用ガスはヘリウムであってもよく、またはヘリウムを含んでもよい。代替的にパージ用ガスはネオンであってもよく、またはネオンを含んでもよい。または代替的にパージ用ガスはアルゴンであってもよく、またはアルゴンを含んでもよい。加えて、出願者らは、いくつかの実施形態では従来の脱ガス技術が本明細書で開示の超音波脱ガス処理と併せて使用可能であるものと考える。したがって、パージ用ガスは、いくつかの実施形態では、塩素ガスをさらに含み得る(例えば、パージ用ガスとして、塩素ガスを単独で使用すること、または、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、および/またはキセノンのうちの少なくとも1つと組み合わせて、使用するなど)。
【0117】
しかし本発明の他の実施形態では、脱ガスのための超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する方法、または、溶融金属槽中の溶解ガスの量を低減するための方法は、塩素ガスが実質的に不在の状態、または塩素ガスがまったく存在しない状態で、実施され得る。本明細書で使用される、実質的に不在とは、使用されるパージ用ガスの量に基づいて塩素ガスがわずか5重量%しか使用されないことを意味する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示の方法はパージ用ガスを導入することを含み得、このパージ用ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0118】
溶融金属槽に導入されるパージ用ガスの量は、いくつかの要因に応じて変動し得る。多くの場合、本発明の様々な実施形態にしたがって、溶融金属を脱ガスする方法において(および/または溶融金属から不純物を除去する方法において)導入される超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関するパージ用ガスの量は約0.1~約150標準リットル/分(L/分)の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、導入されるパージ用ガスの量は、約0.5~約100L/分、約1~約100L/分、約1~約50L/分、約1~約35L/分、約1~約25L/分、約1~約10L/分、約1.5~約20L/分、約2~約15L/分、または約2~約10L/分の範囲内であり得る。これらの体積流量の単位は標準リットル/分(すなわち標準温度(摂氏21.1度)および標準圧力(101kPa)における)である。
【0119】
連続または半連続溶融金属処理では、溶融金属槽に導入されるパージ用ガスの量は、溶融金属の出力速度または生産速度に応じて変動し得る。したがって超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する係る実施形態に係る溶融金属を脱ガスする方法において(および/または、溶融金属から不純物を除去する方法において)導入されるパージ用ガスの量は、溶融金属のkg/時あたり約10~約500mL/時のパージ用ガス(パージ用ガスmL/溶融金属kg)の範囲内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、パージ用ガスの体積流量と溶融金属の出力速度との比は、約10~約400mL/kg、代替的に約15~約300mL/kg、代替的に約20~約250mL/kg、代替的に約30~約200mL/kg、代替的に約40~約150mL/kg、または代替的に約50~約125mL/kgの範囲内であり得る。上記のように、パージ用ガスの体積流量は、標準温度(摂氏21.1度)および標準圧力(101kPa)における値である。
【0120】
超音波脱ガスならびに超音波結晶粒微細化に関する、本発明の様々な実施形態に係る溶融金属を脱ガスするための方法は、溶融金属槽中に存在する溶解ガスの約10重量パーセントを越える量を除去することにおいて効果的であり得る。すなわち、溶融金属槽中の脱溶解ガスの量は、脱ガス処理が用いられる以前に存在した溶解ガスの量から、約10重量パーセントを越える量が低減され得る。いくつかの実施形態では、溶解ガスの量は、脱ガス方法が用いられる以前に存在した溶解ガスの量から、約15重量パーセントを越える量、約20重量パーセントを越える量、約25重量パーセントを越える量、約35重量パーセントを越える量、約50重量パーセントを越える量、約75重量パーセント、または約80重量パーセントを越える量が、低減され得る。例えば、溶解ガスが水素である場合、アルミニウムまたは銅を含む溶融槽中の水素のレベルが約0.3ppmまたは0.4ppmまたは0.5ppm(質量ベースで)を越えると、有害であり得、多くの場合、溶融金属中の水素含有量は、約0.4ppm、約0.5ppm、約0.6ppm、約0.7ppm、約0.8ppm、約0.9ppm、約1ppm、約1.5ppm、約2ppm、または2ppmを越える値であり得る。本発明の様々な実施形態で開示の方法を用いることにより、溶融金属槽中の溶解ガスの量が、約0.4ppm未満に、代替的に約0.3ppm未満に、代替的に約0.2ppm未満に、代替的に約0.1~約0.4ppmの範囲内に、代替的に約0.1~約0.3ppmの範囲内に、または代替的に約0.2~約0.3ppmの範囲内に、低減され得るものと考えられる。これらの実施形態、および他の実施形態では、溶解ガスは、水素であってもよく、または水素を含んでもよく、溶融金属槽は、アルミニウムおよび/または銅であってもよく、またはアルミニウムおよび/または銅を含んでもよい。
【0121】
超音波脱ガスおよび超音波場結晶粒微細化に関し、かつ、脱ガス(例えば、溶融金属を含む処理槽中の溶解ガスの量を低減すること)の方法に、または、不純物を除去する方法に、向けられた本発明の様々な実施形態は、溶融金属槽中で超音波装置を動作させることを含み得る。超音波装置は超音波トランスデューサおよび長尺プローブを含み得、プローブは第1端部および第2端部を含み得る。第1端部は超音波トランスデューサに取り付けられ得、第2端部は先端部を含み得、長尺プローブの先端部はニオブを含み得る。本明細書で開示の処理および方法において用いられ得る、超音波装置の例示的かつ非限定的な事例に関する詳細については以下で説明する。
【0122】
超音波脱ガス処理に、または、不純物除去処理に関するものであるため、パージ用ガスは、例えば超音波装置の近傍位置において、溶融金属槽中に導入され得る。いくつかの実施形態では、パージ用ガスは、超音波装置の先端部の近傍位置において、溶融金属槽中に導入され得る。一実施形態では、パージ用ガスは、超音波装置の先端部の約1メートル内(例えば、超音波装置の先端部の約100cm内、約50cm内、約40cm内、約30cm内、約25cm内、または約20cm内)で、溶融金属槽中に導入され得る。いくつかの実施形態では、パージ用ガスは、超音波装置の先端部の約15cm内、代替的に約10cm内、代替的に約8cm内、代替的に約5cm内、代替的に約3cm内、代替的に約2cm内、または代替的に約1cm内で、溶融金属槽中に導入され得る。特定の実施形態では、パージ用ガスは、超音波装置の先端部の近傍に、または超音波装置の先端部を通して、溶融金属槽中に導入され得る。
【0123】
この理論に拘束されることを意図するものではないが、超音波装置を使用し、きわめて近接した状態でパージ用ガスを組み込むことは、溶融金属を含む処理槽中の溶解ガスの量に劇的な低減化をもたらす。超音波装置により生成された超音波エネルギーは、溶融金属中にキャビテーション気泡を作り得、そのキャビテーション気泡中に溶解ガスが拡散し得る。しかしパージ用ガスが存在しない状況では、これらのキャビテーション気泡のうちの多くが、溶融金属槽の表面に到達する以前に、崩壊し得る。パージ用ガスは、表面に到達する前に崩壊するキャビテーション気泡の量を減少させ得、および/または、溶解ガスを含むキャビテーション気泡のサイズを増加させ得、および/または、溶融金属槽中のキャビテーション気泡の個数を増加させ得、および/または、溶解ガスを含むキャビテーション気泡が溶融金属槽の表面に輸送される速度を増加させ得る。超音波装置は、超音波装置の先端部にきわめて近接した範囲内でキャビテーション気泡を作り得る。例えば、約2~5cmの直径を有する先端部を有する超音波装置に対して、キャビテーション気泡は、崩壊する以前に、超音波装置の先端部の約15cm、約10cm、約5cm、約2cm、または約1cm内となり得る。パージ用ガスが超音波装置の先端部から過剰に離間した距離において加えられた場合、パージ用ガスはキャビテーション気泡中に拡散することが不可能となり得る。したがって、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する様々な実施形態では、パージ用ガスは、超音波装置の先端部の約25cmまたは約20cm内で、より有利には、超音波装置の先端部の約15cm内、約10cm内、約5cm内、約2cm内、または約1cm内で、溶融金属槽に導入される。
【0124】
本発明の様々な実施形態に係る超音波装置は、例えば米国特許公報第2009/0224443号(本明細書において参照することによりその全体が援用される)で開示されているように、アルミニウムまたは銅などの溶融金属に対して接触し得る。溶融金属中の溶解ガス含有量(例えば水素)を低減するための超音波場装置では、ニオブまたはその合金が、装置が溶融金属に曝露された際の装置に対する保護防壁として、または、溶融金属に対して直接的に曝露する装置の構成要素として、使用され得る。
【0125】
超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する本発明の様々な実施形態は、溶融金属に対して直接的に接触する構成要素の寿命を向上させるためのシステムおよび方法を提供し得る。例えば、本発明の様々な実施形態では、溶融金属に対して接触する物質の劣化を低減させ、それにより最終製品において顕著な品質改善がもたらされるよう、ニオブが使用され得る。換言すると、本発明の様々な実施形態は、保護防壁としてニオブを使用することにより、溶融金属に対して接触する物質または成分の寿命を向上させるか、または係る物質または成分を保持し得る。ニオブは、本発明の前述の実施形態を提供することを支援し得る特性(例えば、その高い融点)を有し得る。加えて、ニオブは摂氏約200度以上の温度に曝露されたときに保護的な酸化物防壁を形成し得る。
【0126】
さらに、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する本発明の様々な実施形態は、溶融金属に対して直接的に接触または結合する構成要素の寿命を向上させるためのシステムおよび方法を提供し得る。ニオブが特定の溶融金属に対して低い反応性を有するため、ニオブの使用は基板物質が劣化することを防止し得る。したがって、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化に関する本発明の様々な実施形態では、基材物質の劣化を低減させ、それにより最終製品において顕著な品質改善がもたらされるよう、ニオブが使用され得る。したがって溶融金属と組み合わされたニオブにおいては、ニオブの高い融点と、溶融金属(例えばアルミニウムおよび/または銅など)に対するその低い反応性と、が組み合わされ得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、ニオブまたはニオブの合金は、超音波トランスデューサおよび長尺プローブを含む超音波装置において使用され得る。長尺プローブは第1端部および第2端部を含み得、第1端部は超音波トランスデューサに取り付けられ得、第2端部は先端部を含み得る。この実施形態によれば、長尺プローブの先端部はニオブ(例えば、ニオブまたはニオブの合金)を含み得る。超音波装置は、上述のように、超音波脱ガス処理において使用され得る。超音波トランスデューサは超音波を生成し得、トランスデューサに取り付けられたプローブは、例えばアルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼、マグネシウムなど、または、これらの混合物および/または組み合わせ(例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄鋼マグネシウム、その他の様々な合金を含む)などの溶融金属を含む処理槽に超音波を伝達し得る。
【0128】
本発明の様々な実施形態では、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の組み合わせが使用され得る。超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の組み合わせの使用は、以下の記載のように、単独での利点、組み合わせによる利点の両方を提供する。以下の説明に限定されるものではないが、以下の説明は、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の組み合わせに付随し、かつ、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化のうちのいずれか一方のみが使用された場合には期待されないであろう鋳造製品の全体的な品質における改善(単数または複数)をもたらす、比類のない効果に関する理解を提供する。これらの効果は、この組み合わされた超音波処理の開発において、発明者らにより実現化されている。
【0129】
超音波脱ガスにおいて、塩素系の化学物質(超音波脱ガスが使用されない場合に利用される)は金属鋳造処理から除去される。化学物質としての塩素が溶融金属槽中に存在する場合、塩素は、反応して、存在し得るアルカリなどの処理槽中の他の元素に対する強力な化学結合を形成することが可能である。アルカリが存在する場合、安定な塩が溶融金属槽中に形成される。安定な塩は鋳造金属製品中における包有物をもたらすこととなり、その電気伝導性および機械的特性に劣化が生じる。超音波結晶粒微細化を用いない場合、ホウ化チタンなどの化学物質結晶粒微細化剤が使用されるが、これらの物質は通常、アルカリを含む。
【0130】
したがって、超音波脱ガスにより処理元素としての塩素が除去され、超音波結晶粒微細化により結晶粒微細化剤(アルカリの供給源)が除去されることにより、安定的な塩が形成される可能性と、結果的に鋳造金属製品中における包有物形成と、が大幅に低減される。さらに、これらの異種の元素が不純物として除去されることにより、鋳造金属製品の電気伝導性が改善される。したがって本発明の一実施形態では、不純物の主要な供給源の2つが、1つの異種の不純物を他の不純物で代替することなく、除去されるため、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の組み合わせは、結果的に生成される鋳造製品が優れた機械的特性および電気伝導特性を有することを意味する。
【0131】
超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の組み合わせにより提供される他の利点は、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の両方が溶融槽を効果的に「攪拌」し、それにより溶融物質が均質化されるという事実に関する。金属の合金が溶融され、次に凝固するよう冷却されると、異なる合金部分の融点がそれぞれ異なるため、合金の中間相が存在し得る。本発明の一実施形態では、超音波脱ガスおよび超音波結晶粒微細化の両方は、中間相を攪拌および混合して、中間相を溶融相に戻す。
【0132】
これらの利点の全部は、超音波脱ガスまたは超音波結晶粒微細化のいずれか一方が使用された場合に、または、一方もしくは両方が従来の塩素処理で置き換えられるか、もしくは化学的結晶粒微細化剤が使用された場合に、期待されるよりも、結晶粒が小さく、より少ない不純物、より少ない包有物、良好な電気伝導性、良好な延性、および、より高い引っ張り強度を有する製品を取得することを可能にする。
【0133】
超音波結晶粒微細化の実証
10cmの深さおよび8cmの幅を有し、それにより鋳型ホイール30内に溝槽またはチャネルが形成されている、
図2および
図3において図示する格納構造体が使用された。可撓性を有する金属バンドの厚さは6.35mmであった。可撓性を有する金属バンドの幅は8cmであった。バンドのために使用された鉄鋼合金は1010鋼であった。20KHの超音波周波数が120W(プローブあたり)の出力で使用された。この超音波周波数は、冷却媒体中の水に対して接触する振動プローブを有する1つまたは複数のトランスデューサに供給された。銅合金鋳型ホイールの区域が鋳型として使用された。冷却媒体として水が室温付近で供給され、およそ15リットル/分でチャネル46を通って流れた。
【0134】
溶融アルミニウムが40kg/分の速度で注湯されると、連続的なアルミニウム鋳物が生成された。このアルミニウム鋳物は、結晶粒微細化剤がまったく添加されなかったにも関わらず、等軸結晶粒構造と一致する特性を示した。実際、この技術を使用して、3億ポンドを超えるアルミニウム棒が鋳造され、ワイヤおよびケーブル用途に対する最終寸法に引き抜き加工された。
【0135】
金属製品
本発明の本発明の一態様では、鋳造金属組成を含む製品は、結晶粒微細化剤を必要とすることなく、上述の鋳型ホイールのチャネル内または鋳造構造体内で形成されることが可能であり、依然としてミリメートル未満の結晶粒サイズを有する。したがって、鋳造金属組成物は、5%未満の結晶粒微細化剤を含む組成物を用いて作られることが可能であり、依然として1ミリメートル未満の結晶粒サイズが取得される。鋳造金属組成物は、2%未満の結晶粒微細化剤を含む組成を用いて作られることが可能であり、依然として1ミリメートル未満の結晶粒サイズが取得される。鋳造金属組成物は、1%未満の結晶粒微細化剤を含む組成を用いて作られることが可能であり、依然として1ミリメートル未満の結晶粒サイズが取得される。好適な組成では、結晶粒微細化剤は、0.5%未満、または0.2%未満、または0.1%未満である。鋳造金属組成物は、結晶粒微細化剤をまったく含まない組成を用いて作られることが可能であり、依然として1ミリメートル未満の結晶粒サイズが取得される。
【0136】
鋳造金属組成物は、「純粋」金属または合金の成分、注湯速度、注湯温度、冷却速度を含むいくつかの要因に応じて、多様なミリメートル未満の結晶粒サイズを有し得る。本発明に対して利用可能な結晶粒サイズのリストは以下を含む。アルミニウムおよびアルミニウム合金に対して、結晶粒サイズは、200~900ミクロン、または300~800ミクロン、または400~700ミクロン、または500~600ミクロンの範囲である。銅および銅合金に対して、結晶粒サイズは、200~900ミクロン、または300~800ミクロン、または400~700ミクロン、または500~600ミクロンの範囲である。金、銀、もしくはスズまたはこれらの合金に対して、結晶粒サイズは、200~900ミクロン、または300~800ミクロン、または400~700ミクロン、または500~600ミクロンの範囲である。マグネシウムまたはマグネシウム合金に対して、結晶粒サイズは、200~900ミクロン、または300~800ミクロン、または400~700ミクロン、または500~600ミクロンの範囲である。範囲で与えられてはいるが、本発明では中間の値も可能である。本発明の本発明の一態様では、低濃度(5%)未満の結晶粒微細化剤が、結晶粒サイズを100~500ミクロンの範囲の値にさらに減少させるために、添加されてもよい。鋳造金属組成物は、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛、鉛、金、銀、スズ、青銅、真鍮、およびこれらの合金を含み得る。
【0137】
鋳造金属組成物は、バーストック、棒状体、ストック、シートストック、ワイヤ、ビレット、およびペレットに引き抜き加工されるかまたは別様に形成されることが可能である。
【0138】
コンピュータ化制御
図1、
図2、
図3、および
図4における制御器500は、
図7において示されるコンピュータシステム1201により実装されることが可能である。コンピュータシステム1201は、本発明の超音波処理を用いる、上述の、または、任意の他の、鋳造システムもしくは装置を制御するための制御器500として使用され得る。
図1、
図2、
図3、および
図4では、1つの制御器として単独で図示されているが、制御器500は、相互に通信し合う個別および分離した、および/または、特定の制御機能専用のプロセッサを、含み得る。
【0139】
特に、制御器500は、特に
図8におけるフローチャートにより示される機能を実行する制御アルゴリズムを用いてプログラムされ得る。
【0140】
図8には、フローチャートが図示されており、このフローチャートの要素は、コンピュータ可読媒体において、または以下で説明するデータ記憶装置のうちの1つにおいて、プログラムまたは格納され得る。
図8のフローチャートには、金属製品中に核生成部位を誘導するための本発明の方法が図示されている。ステップ要素1802において、プログラムされた要素は、溶融金属格納構造体に溶融金属を注湯する動作を指示するであろう。ステップ要素1804において、プログラムされた要素は、例えば溶融金属格納構造体の近傍において冷却チャネルの中に液体媒体を通すことにより、溶融金属格納構造体を冷却する動作を指示するであろう。ステップ要素1806において、プログラムされた要素は、溶融金属に振動エネルギーを結合する動作を指示するであろう。この要素では、振動エネルギーは、上述のように溶融金属中で核生成部位を誘導する周波数および出力を有するであろう。
【0141】
様々な要素(例えば、溶融金属温度、注湯速度、冷却チャネル流路を通る冷却流、および鋳型冷却、および、振動エネルギー供給源の出力ならびに周波数の制御を含む、制御、ならびに、圧延機を通して鋳造製品を引き出すことに関する要素など)が、溶融金属中に核生成部位を誘導するための本発明の方法を適用するための命令を含む特殊用途プロセッサを生成するために、標準的なソフトウェア言語(以下で説明する)を用いてプログラムされるであろう。
【0142】
さらに詳細には、
図7において示されるコンピュータシステム1201は、情報を通信するためのバス1202またはその他の通信機構と、情報を処理するためにバス1202に対して連結されたプロセッサ1203と、を含む。コンピュータシステム1201は、情報を、またはプロセッサ1203により実行される命令を、格納するためにバス1202に対して結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはその他のダイナミック記憶装置(例えば、ダイナミックRAM(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM))などのメインメモリ1204も含む。加えてメインメモリ1204はプロセッサ1203により命令が実行される間に一時変数または他の中間的情報を格納するために使用され得る。コンピュータシステム1201は、静的情報を、またはプロセッサ1203に対する静的命令を格納するためにバス1202に対して連結された、リードオンリーメモリ(ROM)1205または他のスタティック記憶装置(例えば、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、および電気的消去可能PROM(EEPROM))をさらに含む。
【0143】
コンピュータシステム1201は、情報および命令を格納するための1つまたは複数の記憶装置を制御するためにバス1202に対して連結されたディスク・コントローラ1206(例えば、磁気ハードディスク1207および着脱可能媒体駆動装置1208(例えば、フロッピディスク駆動装置、読み出し専用コンパクトディスク駆動装置、読み取り/書き込み可能コンパクトディスク駆動装置、コンパクトディスクジュークボックス、テープ駆動装置、着脱可能光磁気駆動装置)など)も含む。これらの記憶装置は、適切なデバイスインターフェース(例えば、スモール・コンピュータ・システム・インターフェース(SCSI)、インテグレーテッド・デバイス・エレクトロニクス(IDE)、エンハンストIDE (E-IDE)、ダイレクト・メモリ・アクセス(DMA)、またはウルトラDMA)を用いて、コンピュータシステム1201に追加され得る。
【0144】
コンピュータシステム1201は、特殊用途論理デバイス(例えば、特定用途集積回路(ASIC))または構成可能論理デバイス(例えば、単純プログラム可能論理デバイス(SPLD)、複合プログラム可能論理デバイス(CPLD)、および、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA))も含み得る。
【0145】
コンピュータシステム1201は、コンピュータユーザに情報を表示するためにカソードレイチューブ(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイを制御するためにバス1202に連結されたディスプレイコントローラ1209も含み得る。コンピュータシステムは、コンピュータユーザ(例えば制御器500に対してインターフェースを介して接続されたユーザ)に対して相互作用するために、および、プロセッサ1203に対して情報を提供するために、入力装置(例えばキーボードおよびポインティングデバイスなど)を含む。
【0146】
コンピュータシステム1201は、メインメモリ1204などのメモリに含まれた1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行するプロセッサ1203に応答して、本発明の処理ステップ(例えば、サーマルアレスト状態にある液体金属に対して振動エネルギーを提供することに関して説明した処理ステップなど)の一部または全部を実行する。係る命令は、他のコンピュータ可読媒体(例えばハードディスク1207または着脱可能媒体駆動装置1208)からメインメモリ1204に読み込まれ得る。マルチプロセッサ構成にある1つまたは複数のプロセッサも、メインメモリ1204に含まれた命令のシーケンスを実行するために用いられ得る。代替的な実施形態では、ハードワイヤ化された回路が、ソフトウェア命令に代わって、またはソフトウェア命令と組み合わせて、使用され得る。したがって、本発明の様々な実施形態はハードウェア回路およびソフトウェアのいかなる特定的な組み合わせにも限定されない。
【0147】
コンピュータシステム1201は、本発明の教示にしたがってプログラムされた命令を保持するための、および、本明細書で記載のデータ構造、テーブル、レコード、または他のデータを含むための、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体またはメモリを含む。コンピュータ可読媒体の例としては、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、または任意の他の磁気媒体、コンパクトディスク(例えばCD-ROM)、または任意の他の光媒体、または他の物理的媒体、搬送波(以下で説明する)、またはコンピュータがそこから読み出すことが可能である任意の他の媒体が挙げられる。
【0148】
本発明は、コンピュータシステム1201を制御するための、本発明を実装するための装置(単数または複数)を駆動するための、およびコンピュータシステム1201が、人であるユーザと相互作用することを可能にするための、コンピュータ可読媒体のうちの任意の1つの上、または、コンピュータ可読媒体の組み合わせの上に格納された、ソフトウェアを含む。係るソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、およびアプリケーションソフトウェアを含み得るが、これらに限定されない。係るコンピュータ可読媒体は、本発明を実装する際に実行される処理の全部または一部(処理が分散化されている場合)を実行するための本発明のコンピュータプログラム製品をさらに含む。
【0149】
本発明のコンピュータコード装置は、スクリプト、インタープリット可能プログラム、ダイナミック・リンク・ライブラリ(DLL)、Javaクラス、完全実行可能プログラムを含むがこれらに限定されない、任意のインタープリット可能または実行可能なコード機構であり得る。さらに、本発明の処理の様々な部分は、より良好な性能、信頼性、および/またはコストのために、分散化され得る。
【0150】
本明細書では使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令をプロセッサ1203に実行されるよう提供することに関与する任意の媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない、多数の形態を取り得る。不揮発性媒体は例えば、光ディスク、磁気ディスク、および光磁気ディスク(例えばハードディスク1207または着脱可能媒体駆動装置1208など)を含む。揮発性媒体はダイナミックメモリ(例えばメインメモリ1204)を含む。伝送媒体は、バス1202を形成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。伝送媒体は、音響波または光波(例えば、電波および赤外線データ通信の際に生成されるものなど)の形態も取り得る。
【0151】
コンピュータシステム1201は、バス1202に連結された通信インターフェース1213も含み得る。通信インターフェース1213は、例えばローカル・エリア・ネットワーク(LAN)1215に、または他の通信ネットワーク1216(例えばインターネット)に、接続されたネットワークリンク1214に対して双方向データ通信接続を提供する。例えば、通信インターフェース1213は、任意のパケット交換式LANに取り付けられるネットワーク・インターフェース・カードであり得る。他の例として、通信インターフェース1213は、データ通信接続を対応する種類の通信回線に提供するための、非対称型デジタル加入者回線(ADSL)カード、デジタル総合サービス通信網(ISDN)カード、またはモデムであり得る。ワイヤレスリンクも実装され得る。任意の係る実現形態において通信インターフェース1213は、多様な種類の情報を表現するデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0152】
ネットワークリンク1214は通常、1つまたは複数のネットワークを通して他のデータ装置にデータ通信を提供する。例えばネットワークリンク1214は、ローカルネットワーク1215(例えばLAN)を通して、または、通信ネットワーク1216を通して通信サービスを提供するサービスプロバイダにより操作される機材を通して、他のコンピュータに対して通信を提供し得る。一実施形態では、この能力は、本発明が、工場規模のオートメーションまたは品質管理などの目的のために、一緒にネットワーク化された上記の制御器500のうちの複数を有することを可能にする。ローカルネットワーク1215および通信ネットワーク1216は、例えば、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号と、関連する物理層(例えばCAT5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバ、その他)を使用する。コンピュータシステム1201からのデジタルデータまたはコンピュータシステム1201へのデジタルデータを搬送する、様々なネットワークを通る信号、ネットワークリンク1214上の、または通信インターフェース1213を通る信号は、ベースバンド信号または搬送波ベースの信号において実装され得る。ベースバンド信号は、デジタルデータビットのストリームを記述する無変調電気パルスとしてデジタルデータを搬送する。なおここでは「ビット」という用語はシンボルを意味するものとして広範に解釈されるべきであり、各シンボルは少なくとも1つまたは複数の情報ビットを担持する。デジタルデータも、例えば、伝導性媒体上で伝搬されるか、または伝搬媒体を通して電磁波として伝送される、振幅、位相、および/または周波数偏位符号化信号を用いて搬送波を変調するために使用され得る。したがって、デジタルデータは、「有線」通信チャネルを通して無変調ベースバンドデータとして、および/または、搬送波を変調することにより、ベースバンドとは異なる事前決定された周波数帯域内で送信され得る。コンピュータシステム1201はネットワーク(単数または複数)1215ならびに1216、ネットワークリンク1214、および通信インターフェース1213を通してプログラムコードを含むデータを送受信することが可能である。さらに、ネットワークリンク1214はLAN1215を通してモバイル装置1217(例えば携帯情報端末(PDA)ラップトップ・コンピュータ、またはセルラ電話)に通信を提供し得る。
【0153】
さらに詳細には、本発明の一実施形態では、純粋な電気導体級のアルミニウム棒および合金導体級のアルミニウム棒コイルを、連続的に溶融金属から直接的に生成することが可能である、連続鋳造および圧延システム(CCRS:continuous casting and rolling system)が提供される。CCRSは、制御、監視、およびデータ格納を実装するために、コンピュータシステム1201(上述)のうちの1つまたは複数を使用することが可能である。
【0154】
本発明の一実施形態では、高品質アルミニウム棒の歩留まりを高めるために、先進的コンピュータ監視・データ取得(SCADA)システムが、圧延機の監視および/または制御(CCRS)を実施する。このシステムの追加的な変数およびパラメータは、品質管理のために、表示、図化、格納、および分析されることが可能である。
【0155】
本発明の一実施形態では、以下の生産後の試験過程のうちの1つまたは複数が、データ取得システムにおいてキャプチャされる。
【0156】
渦電流探傷装置が、アルミニウム棒の表面品質を直列型で連続的に監視するために使用され得る。包有物が、アルミニウム棒の表面付近に見出された場合には、マトリクス包有物が非連続的な欠陥として作用するため、検出されることが可能である。アルミニウム棒の鋳造および圧延の際、完成品における欠陥は、処理におけるいかなる箇所においても発生する可能性がある。溶融金属における不正確な溶融化学反応および/または過度の水素により、圧延工程の際に欠陥が生じ得る。渦電流システムは非破壊検査であり、CCRSに対する制御システムは上述の欠陥のうちの任意の1つに対して操作員(単数または複数)にアラートを発することが可能である。渦電流システムは、表面欠陥を検出し、欠陥を小、中、または大に分類することが可能である。渦電流結果は、SCADAシステム内に記録され、アルミニウム(または処理された他の金属)のロットに、および欠陥が発生した時点に、追跡されることが可能である。
【0157】
棒が工程の終点においてコイル化された後、鋳造アルミニウムのバルク的な機械特性および電気特性は、測定され、SCADAシステムにおいて記録されることが可能である。製品品質試験は引っ張り、伸長、および伝導性を含む。引っ張り強度は、物質の強度の測定値であり、破壊が生じるまで張力下で耐えることが可能である物質の最大強度である。伸長値は、物質の延性の測定値である。伝導性測定値は全般に、「国際軟銅規格」(IACS:international annealed copper standard)のパーセンテージとして報告される。これらの製品品質評価指標は、SCADAシステム内に記録され、アルミニウムのロットに、および欠陥が発生した時点に、追跡されることが可能である。
【0158】
渦電流データに加えて、表面分析がねじり試験を使用して実施され得る。鋳造アルミニウム棒に対して制御されたねじり試験が実施される。圧延工程の際に形成された不適切な凝固に関連付けられた欠陥、包有物、およびに長手方向欠陥は、拡大され、ねじれた棒の上で明らかになる。全般に、これらの欠陥は、圧延方向に対して平行なシームの形で現れる。棒が時計方向および反時計方向にねじられた後に現れる一連の平行な線は、試片が均質であることを示し、その一方で、鋳造工程における非均質性は、ゆらいだ線をもたらすであろう。ねじり試験の結果は、SCADAシステム内に記録され、アルミニウムのロットに、および欠陥が発生した時点に、追跡されることが可能である。
【0159】
試片および製品準備
試片および製品は、上記で詳述した強化振動エネルギー結合および/または強化冷却技術を利用する上述のCCRシステムを用いて作られることが可能である。鋳造および圧延過程は、溶融アルミニウムの連続ストリームが溶融保持炉システムから、耐熱性ライニングが施されたロンダーシステムを通って、直列型化学的結晶粒微細化システムに、または、超音波結晶粒微細化システムに、供給されると、開始する。加えて、CCRシステムは、上述の超音波脱ガスシステムも含むことが可能である。この超音波脱ガスシステムは、溶融アルミニウムから分解された水素または他のガスを除去するために、音響波およびパージガスを使用する。脱ガス装置から、金属は、多孔性セラミック要素を有する溶融金属フィルタに流れるであろう。この溶融金属フィルタは溶融金属中の包有物をさらに低減させる。次にロンダーシステムは溶融アルミニウムをタンディッシュに輸送するであろう。タンディッシュから、溶融アルミニウムは鋳型に注湯されるであろう。この鋳型は、上述のように、銅鋳造リングの周辺溝部と、鉄鋼バンドと、により形成され、振動エネルギープローブの底部において、または振動エネルギープローブの近傍に設けられた、冷媒流を提供する上述の冷媒注入ポートを含む。溶融アルミニウムは、臨界ゾーンに対する磁気流量計を有するマルチゾーン水マニホールドからスプレーノズルを通して分散される水により冷却されて固体鋳造棒になる。連続アルミニウム鋳造棒は、棒抽出コンベア上に鋳造リングを出て、圧延機に到達する。
【0160】
圧延機は個別的に駆動される圧延スタンドを含み得、この圧延スタンドにより棒の直径が小さくなる。棒は引抜圧延に送られ、引抜圧延において、棒は事前決定された直径に引き出され、次に巻き取られる。棒が過程の終点において巻き取られると、鋳造アルミニウムのバルク的な機械特性および電気特性が測定されるであろう。品質試験は引っ張り、伸長、および伝導性を含む。引っ張り強度は、物質の強度の測定値であり、破壊が生じるまで張力下で耐えることが可能である物質の最大強度である。伸長値は、物質の延性の測定値である。伝導性測定値は全般に、「国際軟銅規格」(IACS)のパーセンテージとして報告される。
【0161】
1)引っ張り強度は、物質の強度の測定値であり、破壊が生じるまで張力下で耐えることが可能である物質の最大強度である。引っ張りおよび伸長の測定は、同一の試片に対して実施された。10”ゲージ長の試片が引っ張りおよび伸長の測定のために選択された。棒試片が引っ張り機械に挿入された。把手が10”ゲージマークに配置された。引っ張り強度=分裂力(ポンド)/断面積(πr2)である。ただし式中、r(インチ)は棒の半径である。
【0162】
2)%伸長=((L1-L2)/L1)×100である。L1は物質の初期ゲージ長であり、L2は、引張試験から得られた2つの破壊された試片を一緒に配置し、発生した欠陥を測定することにより得られた最終長さである。全般に、物質の延性が大きいほど、引っ張り状態にある試片において、より大きいくびれ部が観察されるであろう。
【0163】
3)伝導性:伝導性測定値は全般に、「国際軟銅規格」(IACS)のパーセンテージとして報告される。伝導性測定はケルビンブリッジを使用して実施され、詳細はASTM B193-02に記載されている。IACSは、標準軟銅導体に対する、金属および合金のための電気伝導率の単位である。100%のIACS値は、摂氏20度における単位長さあたり5.80×107シーメンスの伝導率(58.0MS/m)を指す。
【0164】
上述の連続棒処理は、超音波結晶粒微細化および超音波脱ガスを利用して、電気グレードのアルミニウム導体を生成するためのみではなく、機械的アルミニウム合金に対しても使用可能である。試験および品質管理、超音波結晶粒微細化処理のために、鋳造棒試片は収集され、エッチングされるであろう。
【0165】
図10はACSRワイヤ処理フローチャートである。
図10では、純粋な溶融アルミニウムをACSRワイヤにおいて使用されるであろうアルミニウムワイヤに変換する様子が示されている。変換処理における第1のステップは、溶融アルミニウムをアルミニウム棒に変換することである。次のステップでは、棒はいくつかのダイを通して引き抜き加工され、最終直径に応じて、この過程は、1回または複数回の引き抜き加工を通して達成され得る。棒が最終直径に引き抜き加工されると、ワイヤは200~500ポンドの範囲の重量のリールに巻かれる。これらの個々のリールが、鋼撚りケーブルの周りに撚られると、いくつかの個々のアルミニウム撚り線を含むACSRケーブルとなるであろう。撚り線の個数および各撚り線の直径は、例えば、顧客の要件に依存するであろう。
【0166】
図11はACSSワイヤ処理フローチャートである。
図11では、純粋な溶融アルミニウムをACSSワイヤにおいて使用されるであろうアルミニウムワイヤに変換する様子が示されている。変換処理における第1のステップは、溶融アルミニウムをアルミニウム棒に処理することである。次のステップでは、棒はいくつかのダイを通して引き抜き加工され、最終直径に応じて、この過程は、1回または複数回の引き抜き加工を通して達成され得る。棒が最終直径に引き抜き加工されると、ワイヤは200~500ポンドの範囲の重量のリールに巻かれる。これらの個々のリールが、鋼撚りケーブルの周りに撚られると、いくつかの個々のアルミニウム撚り線を含むACSSケーブルとなるであろう。撚り線の個数および各撚り線の直径は、顧客の要件に依存するであろう。ACSRケーブルとACSSケーブルとの間の1つの相違点は、アルミニウムが鋼材ケーブルの周りに撚られた後、ケーブル全体が炉内で熱処理されて、アルミニウムがデッドソフト状態に達することである。ACSRでは、ケーブルの強度がアルミニウムケーブルおよび鋼材ケーブルに起因する強度の組み合わせに由来し、その一方で、ACSSケーブルでは強度の大部分がACSSケーブル内部の鉄鋼に由来することに注意することが重要である。
【0167】
図12は、アルミニウム帯状細片化処理フローチャートであり、
図12では、帯状細片が金属外装ケーブルに最終的に処理される。
図12では、第1のステップが溶融アルミニウムをアルミニウム棒に変換することであることが示されている。第1ステップに引き続き、棒はいくつかの圧延ダイを通して圧延されて、帯状細片に変換される。この帯状細片は幅が約0.375”であり、厚さが約0.015~0.018”である。圧延された帯状細片は、およそ600ポンド重量のドーナツ形状パッドに処理される。他の幅および厚さも、圧延工程を使用して生産が可能であるが、0.375”の幅および0.015~0.018”の厚さが最も一般的であることに注意することが重要である。次にこれらのパッドは炉内で熱処理されて、パッドは中間的な焼鈍状態に達する。この状態では、アルミニウムは、フルハード状態でもデットソフト状態でもない。次に帯状細片は、1つまたは複数の絶縁回路導体を包囲する噛み合う金属テープ(帯状細片)の防護具として組み立てられた保護ジャケットとして使用されるであろう。
【0168】
上述の強化振動エネルギー結合を利用する本発明の超音波結晶粒微細化物質は、上述の過程を使用して、上述のワイヤおよびケーブル製品へと製作されることが可能である。
【0169】
本発明に関する一般的ステートメント
本発明に関する以下のステートメントは、本発明の1つまたは複数の特徴を提供し、本発明の範囲を限定するものではない。
【0170】
ステートメント1
鋳造装置上の鋳型ホイールのための溶融金属処理装置であって、振動エネルギー(例えば、超音波、機械駆動、および/または音響エネルギー)を、鋳型ホイール内の溶融金属鋳造物に対して、鋳型ホイール内の溶融金属が冷却される際に、供給する(例えば、供給する構成を有する)、少なくとも1つの振動エネルギー供給源を含む、鋳型ホイール上装着(または結合)された組立体と、少なくとも1つの振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、所望により、鋳型ホイールの動きに対して組立体を案内する案内装置と、を含む、装置。この溶融金属処理装置の一態様では、エネルギーを溶融金属に結合するためのエネルギー結合装置が提供される。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント129におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0171】
ステートメント2
支持装置は、冷却媒体をその中を通して輸送するための冷却チャネルを含むハウジングを含む、ステートメント1に記載の装置。
【0172】
ステートメント3
冷却チャネルは、水、ガス、液体金属、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを含む該冷却媒体を含む、ステートメント2に記載の装置。
【0173】
ステートメント4
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、少なくとも1つの超音波トランスデューサ、少なくとも1つの機械駆動振動器、またはこれらの組み合わせを含む、ステートメント1、ステートメント2、ステートメント3、またはステートメント4に記載の装置。
【0174】
ステートメント5
超音波トランスデューサ(例えば圧電素子)は400kHzまでの周波数の範囲の振動エネルギーを提供するよう構成されるか、または超音波トランスデューサ(例えば磁歪素子)は20~200kHzの範囲の振動エネルギーを提供するよう構成される、ステートメント4に記載の装置。
【0175】
ステートメント6
機械駆動振動器は複数の機械駆動振動器を含む、ステートメント1、ステートメント2、またはステートメント3に記載の装置。
【0176】
ステートメント7
機械駆動振動器は、10kHzまでの周波数の範囲の振動エネルギーを提供するよう構成され、または機械駆動振動器は毎分8,000~15,000回の振動の周波数の範囲の振動エネルギーを提供するよう構成された、ステートメント4に記載の装置。
【0177】
ステートメント8a
鋳型ホイールは、溶融金属を鋳型ホイールのチャネルに閉じ込めるバンドを含む、ステートメント1に記載の装置。
【0178】
ステートメント8b
組立体は、鋳型ホイール上に配置され、そこを通過するよう溶融金属を鋳型ホイールのチャネルに閉じ込めるバンドのためのハウジング内に通路を有する、ステートメント1~ステートメント7のうちいのいずれか1項に記載の装置。
【0179】
ステートメント9
冷却チャネルからの冷却媒体が溶融金属の逆側のバンドの側面に沿って流れることが可能となるよう、該バンドはハウジングに沿って案内される、ステートメント8に記載の装置。
【0180】
ステートメント10
支持装置は、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、ステンレス鋼、セラミック、複合材料、ポリマー、または金属のうちの少なくとも1つまたは複数を含む、ステートメント1~ステートメント9のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0181】
ステートメント11
セラミックは窒化ケイ素セラミックを含む、ステートメント10に記載の装置。
【0182】
ステートメント12
窒化ケイ素セラミックはサイアロンを含む、ステートメント11に記載の装置。
【0183】
ステートメント13
ハウジングは耐熱性物質を含む、ステートメント1~ステートメント12のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0184】
ステートメント14
耐熱性物質は、銅、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、および、これらの合金のうちの少なくとも1つを含む、ステートメント13に記載の装置。
【0185】
ステートメント15
耐熱性物質は、シリコン、酸素、または窒素のうちの1つまたは複数を含む、ステートメント14に記載の装置。
【0186】
ステートメント16
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、冷却媒体に対して接触する(例えば、支持装置または案内装置を通って流れる冷却媒体に対して接触する)少なくとも2つの振動エネルギー供給源を含む、ステートメント1~ステートメント15のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0187】
ステートメント17
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置内の冷却チャネル内に挿入された少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント16に記載の装置。
【0188】
ステートメント18
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置に対して接触する少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント1~ステートメント3およびステートメント6~ステートメント15のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0189】
ステートメント19
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置の基部においてバンドに対して接触する少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント1~ステートメント3およびステートメント6~ステートメント15のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0190】
ステートメント20
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置における異なる位置に分配された複数の振動エネルギー供給源を含む、ステートメント1~ステートメント19のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0191】
ステートメント21
案内装置は鋳型ホイールのリム上のバンド上に配置された、ステートメント1~ステートメント20のうちのいずれか1項に記載の装置。
【0192】
ステートメント22
金属製品を形成するための方法であって、鋳造装置の格納構造体に溶融金属を提供することと、格納構造体中の溶融金属を冷却することと、該冷却中に格納構造体中の溶融金属に振動エネルギーを結合することと、を含む、方法。金属製品を形成するためのこの方法は、所望により、ステートメント129~ステートメント138に記載のステップ要素のうちのいずれかを含む。
【0193】
ステートメント23
溶融金属を提供することは鋳型ホイール内のチャネルに溶融金属を注湯することを含む、ステートメント22に記載の方法。
【0194】
ステートメント24
振動エネルギーを結合することは、超音波トランスデューサまたは磁歪トランスデューサのうちの少なくとも1つから該振動エネルギーを供給することを含む、ステートメント22またはステートメント23に記載の方法。ステートメント25 該振動エネルギーを供給することは、5~40kHzの周波数の範囲の振動エネルギーを提供することを含む、ステートメント24に記載の方法。ステートメント26 振動エネルギーを結合することは、機械的に駆動される振動器から該振動エネルギーを供給することを含む、ステートメント22またはステートメント23に記載の方法。
【0195】
ステートメン27
該振動エネルギーを供給することは、毎分8,000~15,000回の振動の、または、10kHzまでの、周波数の範囲の振動エネルギーを提供することを含む、ステートメント26に記載の方法。
【0196】
ステートメント28
冷却することは、溶融金属を保持する閉じ込め構造体に水、ガス、液体金属、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを適用することにより、溶融金属を冷却することを含む、ステートメント22~ステートメント27のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0197】
ステートメント29
溶融金属を提供することは該溶融金属を鋳型に供給することを含む、ステートメント22~ステートメント28のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0198】
ステートメント30
溶融金属を提供することは該溶融金属を連続鋳造鋳型に送達することを含む、ステートメント22~ステートメント29のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0199】
ステートメント31
溶融金属を提供することは、該溶融金属を、水平または垂直の鋳型または双ロール鋳造鋳型に送達することを含む、ステートメント22~ステートメント30のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0200】
ステートメント32
溶融金属を冷却するよう構成された鋳型と、ステートメント1~ステートメント21および/またはステートメント106~ステートメント128のうちのいずれか1項に記載の溶融金属処理装置と、を含む鋳造装置。
【0201】
ステートメント33
鋳型は連続鋳造鋳型を含む、ステートメント32に記載の鋳造装置。
【0202】
ステートメント34
鋳型は水平または垂直の鋳造鋳型を含む、ステートメント32またはステートメント33に記載の鋳造装置。
【0203】
ステートメント35
溶融金属を冷却するよう構成された溶融金属格納構造体と、溶融金属格納構造体に取り付けられ、かつ、400kHzまでの周波数の振動エネルギーを溶融金属に結合するよう構成された、振動エネルギー供給源と、を含む鋳造装置。この鋳造装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0204】
ステートメント36
溶融金属を冷却するよう構成された溶融金属格納構造体と、溶融金属格納構造体に取り付けられ、かつ、10kHzまでの範囲(毎分0~15,000回の振動の、および毎分8,000~15,000回の振動の、範囲を含む)の周波数の振動エネルギーを溶融金属に結合するよう構成された、機械的に駆動される振動エネルギー供給源と、を含む鋳造装置。この鋳造装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0205】
ステートメント37
溶融金属格納構造体に溶融金属を注湯するための手段と、溶融金属格納構造体を冷却するための手段と、400kHzまでの範囲(毎分0~15,000回の振動の、毎分8,000~15,000回の振動の、10kHzまでの、15~40kHzの、または20~200kHzの、範囲を含む)の周波数の振動エネルギーを溶融金属に結合するための手段と、データ入力および制御出力を含み、かつ、ステートメント22~ステートメント31および/またはステートメント129~ステートメント138に記載のステップ要素のうちのいずれか1つの動作を可能にする制御アルゴリズムを用いてプログラムされた、制御器と、を含む、金属製品を形成するためのシステム。
【0206】
ステートメント38
ステートメント1~ステートメント21および/またはステートメント106~ステートメント128のうちのいずれか1項に記載の溶融金属処理装置と、データ入力および制御出力を含み、かつ、ステートメント22~ステートメント31および/またはステートメント129~ステートメント138に記載のステップ要素のうちのいずれか1つの動作を可能にする制御アルゴリズムを用いてプログラムされた、制御器と、を含む、金属製品を形成するためのシステム。
【0207】
ステートメント39
鋳型ホイールに結合された組立体であって、鋳型ホイール内の溶融金属鋳物が冷却媒体により冷却されるよう冷却媒体を保持するハウジングを、および、鋳型ホイールの動きに対して組立体を案内する装置を、含む組立体を含む、金属製品を形成するためのシステム。このシステムは所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0208】
ステートメント40
ステートメント2~ステートメント3、ステートメント8~ステートメント15、およびステートメント21に定義された要素のうちのいずれかを含む、ステートメント38に記載のシステム。
【0209】
ステートメント41
鋳造装置のための溶融金属処理加工装置であって、鋳型ホイール内の溶融金属が冷却される際に鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に振動エネルギーを供給する少なくとも1つの振動エネルギー供給源と、該振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、を含む、溶融金属処理装置。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0210】
ステートメント42
ステートメント4~ステートメント15に定義された要素のうちのいずれかを含む、ステートメント41に記載の装置。
【0211】
ステートメント43
鋳造装置上の鋳型ホイールのための溶融金属処理装置であって、1)鋳型ホイール内の溶融金属が冷却される際に鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に振動エネルギーを供給する少なくとも1つの振動エネルギー供給源と、2)該少なくとも1つの振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、3)鋳型ホイールの動きに対して組立体を案内する省略可能な案内装置と、を含む、鋳型ホイールに連結された組立体を含む、溶融金属処理装置。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0212】
ステートメント44
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に対して振動エネルギーを直接的に供給する、ステートメント43に記載の装置。
【0213】
ステートメント45
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に対して振動エネルギーを間接的に供給する、ステートメント43に記載の装置。
【0214】
ステートメント46
鋳造装置のための溶融金属処理装置であって、鋳型ホイール内の溶融金属が冷却される際に溶融金属鋳物に挿入されたプローブにより鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に振動エネルギーを供給する少なくとも1つの振動エネルギー供給源と、該振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、を含み、振動エネルギーは金属が凝固する際の溶融金属偏析を低減させる、溶融金属処理装置。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0215】
ステートメント47
ステートメント2~ステートメント21に定義された要素のうちのいずれかを含む、ステートメント46に記載の装置。
【0216】
ステートメント48
鋳造装置のための溶融金属処理装置であって、鋳型ホイール内の溶融金属が冷却される際に鋳型ホイール内の溶融金属鋳物に音響エネルギーを供給する少なくとも1つの振動エネルギー供給源と、該振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、を含む、溶融金属処理装置。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0217】
ステートメント49
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は音響増幅器を含む、ステートメント48に記載の装置。
【0218】
ステートメント50
音響増幅器は、振動エネルギーを、ガス状媒体を通して、溶融金属に結合する、ステートメント49に記載の装置。
【0219】
ステートメント51
音響増幅器は、振動エネルギーを、ガス状媒体を通して、溶融金属を保持する支持構造体に結合する、ステートメント49に記載の装置。
【0220】
ステートメント52
結晶粒サイズを微細化するための方法であって、溶融金属が冷却される際に溶融金属に振動エネルギーを供給することと、溶融金属中に核の供給源を生成するために、溶融金属中に形成されたデンドライトを分裂させることと、を含む、方法。結晶粒サイズを微細化するためのこの方法は、所望により、ステートメント129~ステートメント138に記載のステップ要素のうちのいずれかを含み得る。
【0221】
ステートメント53
振動エネルギーは、超音波振動、機械的に駆動される振動、および音響振動のうちの少なくとも1つまたは複数を含む、ステートメント52に記載の方法。
【0222】
ステートメント54
溶融金属中の核の供給源は異種の不純物を含まない、ステートメント52に記載の方法。
【0223】
ステートメント55
溶融金属の一部分は該デンドライトを生成するために過冷却される、ステートメント52に記載の方法。
【0224】
ステートメント56
溶融金属の供給源と、溶融金属中に挿入された超音波プローブを含む超音波脱ガス装置と、溶融金属を受容するための鋳型と、鋳型内の溶融金属が冷却される際に鋳型内の溶融金属鋳物に振動エネルギーを供給する少なくとも1つの振動エネルギー供給源を、および、該少なくとも1つの振動エネルギー供給源を保持する支持装置を、含む鋳型上に装着された組立体と、を含む溶融金属処理装置。この溶融金属処理装置は所望により、ステートメント106~ステートメント128におけるエネルギー結合装置のうちのいずれかを含むことが可能である。
【0225】
ステートメント57
鋳型は鋳造装置の鋳型ホイールの構成要素を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0226】
ステートメント58
支持装置は、冷却媒体をその中を通して輸送するための冷却チャネルを含むハウジングを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0227】
ステートメント59
冷却チャネルは、水、ガス、液体金属、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを含む該冷却媒体を含む、ステートメント58に記載の装置。
【0228】
ステートメント60
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は超音波トランスデューサを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0229】
ステートメント61
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は機械的に駆動される振動器を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0230】
ステートメント62
機械的に駆動される振動器は、10kHzまでの周波数の範囲の振動エネルギーを提供するよう構成された、ステートメント61に記載の装置。
【0231】
ステートメント63
鋳型は、溶融金属を鋳型ホイールのチャネルに閉じ込めるバンドを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0232】
ステートメント64
組立体は、鋳型ホイール上に配置され、そこを通過するよう溶融金属を鋳型ホイールのチャネルに閉じ込めるバンドのためのハウジング内に通路を有する、ステートメント63に記載の装置。
【0233】
ステートメント65
冷却チャネルからの冷却媒体が溶融金属の逆側のバンドの側面に沿って流れることが可能となるよう、該バンドはハウジングに沿って案内される、ステートメント64に記載の装置。
【0234】
ステートメント66
支持装置は、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、ステンレス鋼、セラミック、複合材料、ポリマー、または金属のうちの少なくとも1つまたは複数を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0235】
ステートメント67
セラミックは窒化ケイ素セラミックを含む、ステートメント66に記載の装置。
【0236】
ステートメント68
窒化ケイ素セラミックはサイアロンを含む、ステートメント67に記載の装置。
【0237】
ステートメント69
ハウジングは耐熱性物質を含む、ステートメント64に記載の装置。
【0238】
ステートメント70
耐熱性物質は、銅、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、ならびに、これらの合金のうちの少なくとも1つを含む、ステートメント69に記載の装置。
【0239】
ステートメント71
耐熱性物質は、シリコン、酸素、または窒素のうちの1つまたは複数を含む、ステートメント69に記載の装置。
【0240】
ステートメント72
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、冷却媒体に対して接触する2つ以上の振動エネルギー供給源を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0241】
ステートメント73
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置内の冷却チャネル内に挿入された少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント72に記載の装置。
【0242】
ステートメント74
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置に対して接触する少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0243】
ステートメント75
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置の基部においてバンドに対して直接接触する少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0244】
ステートメント76
少なくとも1つの振動エネルギー供給源は、支持装置における異なる位置に分配された複数の振動エネルギー供給源を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0245】
ステートメント77
鋳造ホイールの動きに対して組立体を案内する案内装置をさらに含む、ステートメント57に記載の装置。
【0246】
ステートメント78
案内装置は鋳型ホイールのリム上のバンド上に配置された、ステートメント72に記載の装置。
【0247】
ステートメント79
超音波脱ガス装置は、第1端部および第2端部を含む長尺プローブであって、第1端部は超音波トランスデューサに取り付けられ、第2端部は先端部を含む、長尺プローブと、パージ用ガス流入口およびパージ用ガス流出口を含むパージ用ガス送達であって、該パージ用ガス流出口は溶融金属にパージ用ガスを導入するために長尺プローブの先端部に配置された、パージ用ガス送達と、を含む、ステートメント56に記載の装置。
【0248】
ステートメント80
長尺プローブはセラミックを含む、ステートメント56に記載の装置。
【0249】
ステートメント81
ミリメートル未満の結晶粒サイズを有し、その中に0.5%より悔いない結晶粒微細化剤を含み、以下の特性、すなわち、100lb/in2の伸張力のもとで10~30%の範囲の伸張、50~300MPaの範囲の引っ張り強度、または、45~75%の範囲のIACを有する電気伝導率(ただしIACは標準軟銅導体に対する電気伝導率のパーセント単位である)、のうちの少なくとも1つを有する、鋳造金属組成物を含む、金属製品。
【0250】
ステートメント82
組成物は0.2%より少ない結晶粒微細化剤をその中に含む、ステートメント81に記載の製品。
【0251】
ステートメント83
組成物は0.1%より少ない結晶粒微細化剤をその中に含む、ステートメント81に記載の製品。
【0252】
ステートメント84
組成物は結晶粒微細化剤をその中にまったく含まない、ステートメント81に記載の製品。
【0253】
ステートメント85
組成物は、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛、鉛、金、銀、スズ、青銅、真鍮、およびこれらの合金のうちの少なくとも1つを含む、ステートメント81に記載の製品。
【0254】
ステートメント86
組成物は、バーストック、棒状体、ストック、シートストック、ワイヤ、ビレット、およびペレットのうちの少なくとも1つに形成される、ステートメント81に記載の製品。
【0255】
ステートメント87
伸長は15~25%の範囲であり、または、引っ張り強度は100~200MPaの範囲であり、または、電気伝導率は50~70%のIACの範囲である、ステートメント81に記載の製品。
【0256】
ステートメント88
伸長は17~20%の範囲であり、または、引っ張り強度は150~175MPaの範囲であり、または、電気伝導率は55~65%のIACの範囲である、ステートメント81に記載の製品。
【0257】
ステートメント89
伸長は18~19%の範囲であり、または、引っ張り強度は160~165MPaの範囲であり、または、電気伝導率は60~62%のIACの範囲である、ステートメント81に記載の製品。
【0258】
ステートメント90
組成は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、ステートメント81、ステートメント87、ステートメント88、およびステートメント89のうちのいずれか1項に記載の製品。
【0259】
ステートメント91
アルミニウムまたはアルミニウム合金は鉄鋼補強ワイヤ撚り線を含む、ステートメント90に記載の製品。
【0260】
ステートメント91A
アルミニウムまたはアルミニウム合金は鉄鋼支持ワイヤ撚り線を含む、ステートメント90に記載の製品。
【0261】
ステートメント92
ステートメント52~ステートメント55またはステートメント129~ステートメント138に記載の処理ステップのうちの任意の1つまたは複数により作られ、かつ鋳造金属組成物を含む、金属製品。
【0262】
ステートメント93
鋳造金属組成物は、ミリメートル未満の結晶粒サイズを有し、0.5%より少ない結晶粒微細化剤をその中に含む、ステートメント92に記載の製品。
【0263】
ステートメント94
金属製品は、以下の特性、すなわち、100lb/in2の伸張力のもとで10~30%の範囲の伸張、50~300MPaの範囲の引っ張り強度、または、45~75%の範囲のIACを有する電気伝導率(ただしIACは標準軟銅導体に対する電気伝導率のパーセント単位である)、のうちの少なくとも1つを有する、ステートメント92に記載の製品。
【0264】
ステートメント95
組成は0.2%より少ない結晶粒微細化剤をその中に含む、ステートメント92に記載の製品。
【0265】
ステートメント96
組成は0.1%より少ない結晶粒微細化剤をその中に含む、ステートメント92に記載の製品。
【0266】
ステートメント97
組成は結晶粒微細化剤をその中にまったく含まない、ステートメント92に記載の製品。
【0267】
ステートメント98
組成物は、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛、鉛、金、銀、スズ、青銅、真鍮、およびこれらの合金のうちの少なくとも1つを含む、ステートメント92に記載の製品。
【0268】
ステートメント99
組成は、バーストック、棒状体、ストック、シートストック、ワイヤ、ビレット、およびペレットのうちの少なくとも1つに形成される、ステートメント92に記載の製品。
【0269】
ステートメント100
伸長は15~25%の範囲であり、または、引っ張り強度は100~200MPaの範囲であり、または、電気伝導率は50~70%のIACの範囲である、ステートメント92に記載の製品。
【0270】
ステートメント101
伸長は17~20%の範囲であり、または、引っ張り強度は150~175MPaの範囲であり、または、電気伝導率は55~65%のIACの範囲である、ステートメント92に記載の製品。
【0271】
ステートメント102
伸長は18~19%の範囲であり、または、引っ張り強度は160~165MPaの範囲であり、または、電気伝導率は60~62%のIACの範囲である、ステートメント92に記載の製品。
【0272】
ステートメント103
組成はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、ステートメント92に記載の製品。
【0273】
ステートメント104
アルミニウムまたはアルミニウム合金は鉄鋼補強ワイヤ撚り線を含む、ステートメント103に記載の製品。
【0274】
ステートメント105
アルミニウムまたはアルミニウム合金は鉄鋼支持ワイヤ撚り線を含む、ステートメント103に記載の製品。
【0275】
ステートメント106
冷却媒体を通して、および、溶融金属に対して接触する受容体を通して、エネルギーを供給するキャビテーション供給源であって、該キャビテーション供給源は冷却チャネル内に配置されたプローブを含み、該プローブは、冷却媒体を注入するための少なくとも1つの注入ポートを、プローブの底部と受容体との間に有し、動作中の該プローブは冷却媒体中にキャビテーションを生成し、該キャビテーションは冷却媒体を通して受容体に誘導される、キャビテーション供給源を含む、エネルギーを溶融金属に結合するためのエネルギー結合装置。本発明の一態様では、注入ポートを有するキャビテーション供給源は、溶融金属に対して強化された振動エネルギー結合を、および/または、溶融金属の強化された冷却を、提供する。
【0276】
ステートメント107
該少なくとも1つの注入ポートは、冷却媒体を、プローブを通して通過させるための貫通孔を含む、ステートメント106に記載の装置。
【0277】
ステートメント108
鋳造装置の鋳型ホイール上に、または鋳型ホイールに溶融金属を供給するタンディッシュ上に、該キャビテーション供給源を取り付ける組立体をさらに含む、ステートメント106に記載の装置。
【0278】
ステートメント109
組立体は、そこを通過するよう溶融金属を鋳型ホイールのチャネルに閉じ込めるバンドのためのハウジング内に通路を有する、ステートメント108に記載の装置。
【0279】
ステートメント110
該バンドは溶融金属に対して接触する該受容体を含む、ステートメント109に記載の装置。
【0280】
ステートメント111
キャビテーション供給源は、該エネルギーを該プローブに提供する、超音波トランスデューサまたは磁歪トランスデューサのうちの少なくとも1つを含む、ステートメント106に記載の装置。
【0281】
ステートメント112
該プローブに提供されるエネルギーは400kHzまでの周波数の範囲内である、ステートメント111に記載の装置。
【0282】
ステートメント113
該少なくとも1つの注入ポートは冷却媒体を通すためにプローブに貫通孔を含む、ステートメント106に記載の装置。
【0283】
ステートメント114
該少なくとも1つの注入ポートは、中央貫通孔および周辺部貫通孔をプローブに含む、ステートメント106に記載の装置。
【0284】
ステートメント115
該冷却媒体は、水、ガス、液体金属、液体窒素、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを含む、ステートメント106に記載の装置。
【0285】
ステートメント116
受容体は、ニオブ、ニオブ合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、銅、銅合金、レニウム、レニウム合金、鉄鋼、モリブデン、モリブデン合金、ステンレス鋼、セラミック、複合材料、または金属のうちの少なくとも1つまたは複数を含む、ステートメント106に記載の装置。
【0286】
ステートメント117
セラミックは窒化ケイ素セラミックを含む、ステートメント116に記載の装置。
【0287】
ステートメント118
窒化ケイ素セラミックは窒化ケイ素アルミナを含む、ステートメント117に記載の装置。
【0288】
ステートメント119
キャビテーション供給源は、溶融金属を含み、かつ、冷却チャネルを含む、ハウジングを含み、ハウジングは耐熱性物質を含む、ステートメント106に記載の装置。
【0289】
ステートメント120
耐熱性物質は、銅、ニオブ、ニオブおよびモリブデン、タンタル、タングステン、およびレニウム、および、これらの合金のうちの少なくとも1つを含む、ステートメント119に記載の装置。
【0290】
ステートメント121
耐熱性物質は、シリコン、酸素、または窒素のうちの1つまたは複数を含む、ステートメント119に記載の装置。
【0291】
ステートメント122
キャビテーション供給源は2つ以上のキャビテーション供給源を含む、ステートメント106に記載の装置。
【0292】
ステートメント123
プローブは少なくとも1つの振動プローブを含む、ステートメント106に記載の装置。
【0293】
ステートメント124
プローブの先端部は5mm以内で受容体に接触する、ステートメント106に記載の装置。
【0294】
ステートメント125
プローブの先端部は2mm以内で受容体に接触する、ステートメント106に記載の装置。
【0295】
ステートメント126
プローブの先端部は1mm以内で受容体に接触する、ステートメント106に記載の装置。
【0296】
ステートメント127
プローブの先端部は0.5mm以内で受容体に接触する、ステートメント106に記載の装置。
【0297】
ステートメント128
プローブの先端部は0.2mm以内で受容体に接触する、ステートメント106に記載の装置。
【0298】
ステートメント129
金属製品を形成するための方法であって、格納構造体に溶融金属を提供することと、溶融金属に対して接触する受容体の5mm以内の領域に冷却媒体を注入することにより、格納構造体内の溶融金属を冷却媒体で冷却することと、冷却媒体中にキャビテーションを生成する振動プローブを介して、格納構造体内の溶融金属にエネルギーを結合することと、該結合の際、冷却媒体を、プローブの底部と、格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体と、の間に注入することと、を含む、方法。
【0299】
ステートメント130
溶融金属を提供することは鋳型ホイール内のチャネルに溶融金属を注湯することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0300】
ステートメント131
エネルギーを結合することは、超音波トランスデューサまたは磁歪トランスデューサのうちの少なくとも1つから該振動エネルギーを該プローブに供給することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0301】
ステートメント132
該エネルギーを供給することは、5~400kHzの周波数の範囲のエネルギーを提供することを含む、ステートメント131に記載の方法。
【0302】
ステートメント133
冷却することは、プローブにおける少なくとも1つの注入孔から該冷却媒体を注入することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0303】
ステートメント134
冷却することは、受容体に向かって冷却媒体を注入することと、冷却媒体中にキャビテーションを含ませることと、を含む、ステートメント129に記載の方法。
【0304】
ステートメント135
冷却することは、溶融金属を保持する閉じ込め構造体に水、ガス、液体金属、液体窒素、およびエンジンオイルのうちの少なくとも1つを適用することにより、溶融金属を冷却することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0305】
ステートメント136
溶融金属を提供することは該溶融金属を鋳型に供給することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0306】
ステートメント137
溶融金属を提供することは該溶融金属を連続鋳造鋳型に供給することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0307】
ステートメント138
溶融金属を提供することは該溶融金属を水平または垂直の鋳造鋳型に供給することを含む、ステートメント129に記載の方法。
【0308】
ステートメント139
溶融金属を冷却するよう構成された鋳造鋳型と、ステートメント106~ステートメント128のうちのいずれか1項に記載のエネルギー結合装置と、を含む鋳造装置。
【0309】
ステートメント140
鋳型は連続鋳造鋳型を含む、ステートメント139に記載の鋳造装置。
【0310】
ステートメント141
鋳型は水平または垂直の鋳造鋳型を含む、ステートメント139に記載の鋳造装置。
【0311】
ステートメント142
溶融金属を冷却するよう構成された溶融金属格納構造体と、キャビテーション供給源と、格納構造体中の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション供給源と、を含む、鋳造装置。
【0312】
ステートメント143
溶融金属を冷却するよう構成された溶融金属格納構造体と、キャビテーション気泡発生器と、格納構造体中の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション気泡発生器と、を含む、鋳造装置。
【0313】
ステートメント144
溶融金属格納構造体に溶融金属を注湯するための手段と、溶融金属格納構造体を冷却するための手段と、格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体の5mm以内の領域に冷却媒体を注入することにより、溶融金属格納構造体を冷却するための手段と、データ入力および制御出力を含み、かつ、請求項24~33に記載のステップ要素のうちの任意の1つの動作を可能にする制御アルゴリズムを用いてプログラムされた、制御器と、を含む、金属製品を形成するためのシステム。
【0314】
ステートメント145
請求項106~請求項128のうちのいずれか1項に記載のエネルギー結合装置と、データ入力および制御出力を含み、かつ、請求項129~請求項138に記載のステップ要素のうちのいずれか1つの動作を可能にする制御アルゴリズムを用いてプログラムされた、制御器と、を含む、金属製品を形成するためのシステム。
【0315】
ステートメント146
鋳型ホイールに結合された組立体であって、鋳型ホイール内の溶融金属鋳物が冷却媒体に冷却されるよう冷却媒体を保持するハウジングを、および、キャビテーション供給源と格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された、一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション供給源を、を含む組立体と、鋳型ホイールの動きに対して組立体を案内する装置と、を含む、金属製品を形成するためのシステム。
【0316】
ステートメント147
鋳造装置のための溶融金属処理装置であって、キャビテーション供給源と格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された、一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション供給源と、該振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、を含む、溶融金属処理装置。
【0317】
ステートメント148
鋳造装置上の鋳型ホイールのための溶融金属処理装置であって、キャビテーション供給源と格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された、一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション供給源を含む、鋳型ホイールに結合された組立体と、該少なくとも1つの振動エネルギー供給源を保持する支持装置と、鋳造ホイールの動きに対して組立体を案内する案内装置と、を含む、溶融金属処理装置。
【0318】
ステートメント149
キャビテーション供給源はキャビテーション気泡を供給し、キャビテーション気泡の崩壊は冷却媒体中に衝撃波を発生させる、ステートメント148に記載の装置。
【0319】
ステートメント150
キャビテーション供給源はキャビテーション気泡を供給し、溶融金属に対して接触する受容体上でのキャビテーション気泡の崩壊は冷却媒体中に衝撃波を発生させる、ステートメント148に記載の装置。
【0320】
ステートメント151
鋳造装置のための溶融金属処理装置であって、格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体にキャビテーション気泡を供給するキャビテーション気泡発生器であって、キャビテーション気泡発生器と受容体との間の領域に冷却媒体を注入し、キャビテーション気泡は溶融金属にエネルギーを供給する、キャビテーション気泡発生器を含む、溶融金属処理装置。
【0321】
ステートメント152
鋳造装置のための溶融金属処理装置であって、鋳型ホイール中の溶融金属が冷却媒体により冷却される際にエネルギーを鋳型ホイール中の溶融金属鋳物に供給し、かつ、キャビテーション気泡発生器と格納構造体中の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域にキャビテーション気泡を有する冷却媒体を供給する、キャビテーション気泡発生器と、冷却媒体内に該キャビテーション気泡発生器を保持する支持装置と、を含む、溶融金属処理装置。
【0322】
ステートメント153
溶融金属の供給源と、溶融金属に挿入された超音波プローブを含む超音波脱ガス装置と、溶融金属を受容するための鋳型と、鋳型上に取り付けられた組立体であって、キャビテーション供給源と格納構造体内の溶融金属に対して接触する受容体との間の領域に冷却媒体を注入するよう構成された、一体化された冷媒注入器を有するキャビテーション供給源を、および、該少なくとも1つの振動エネルギー供給源を保持する支持装置を、含む組立体と、を含む溶融金属処理装置。
【0323】
本発明の多数の変更および変化が、上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の請求項の範囲内で本発明は本明細書で特に説明された以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。