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特許7178356飲料調製マシン及びこのような飲料調製マシンの温度調節デバイスを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】飲料調製マシン及びこのような飲料調製マシンの温度調節デバイスを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/54 20060101AFI20221117BHJP
   A47J 31/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A47J31/54 115
A47J31/00 302
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019548268
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018055692
(87)【国際公開番号】W WO2018162609
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】17160448.1
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17165487.4
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】アージリス, イオアニス
(72)【発明者】
【氏名】グレンジャー, エリック
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531526(JP,A)
【文献】特表2010-519688(JP,A)
【文献】特表2013-530780(JP,A)
【文献】特開2013-020397(JP,A)
【文献】特開昭61-187821(JP,A)
【文献】特開昭61-181092(JP,A)
【文献】特表2011-518015(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009021656(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
G07F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ又は冷却器などの温度調節デバイス(71)を備える飲料調製マシン(1)であって、前記温度調節デバイス(71)は、
前記温度調節デバイス(71)の非活動温度から動作温度への始動段階を制御するための制御ユニット(4)を備え、前記制御ユニット(4)は、
前記温度調節デバイス(71)を始動するための始動プロファイルを有するコントローラであって、前記始動プロファイルは少なくとも1つのパラメータを有し、前記コントローラは、前記少なくとも1つのパラメータを調整するための自己学習モードを有する、コントローラと、
前記コントローラに接続された、前記温度調節デバイス(71)の温度を測定するための温度センサと、
を備え、
前記自己学習モードは、始動段階の間に、前記コントローラに、
前記温度調節デバイス(71)の前記始動段階の間の温度変化率を表すランプ値を計算させ、
前記少なくとも1つのパラメータを前記計算されたランプ値に応じて調整させ、
前記調整された少なくとも1つのパラメータを前記始動段階の残り部分のために使用させ、
前記温度調節デバイス(71)は、前記始動段階を通じて継続的に電気エネルギーを供給される、
飲料調製マシン(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記始動段階の少なくとも一部の持続時間である、請求項1に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記始動段階の少なくとも一部の間に前記温度調節デバイス(71)に伝達される電気エネルギーである、請求項1又は2に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項4】
前記コントローラは、前記温度調節デバイスが前記始動段階の間に第1の較正温度から第2の較正温度になるまでの、前記コントローラによって測定されるランプ時間持続時間を、前記第2の較正温度と前記第1の較正温度との間の差で除した値として、前記ランプ値を計算するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項5】
前記温度調節デバイス(71)は蓄熱器又はサーモブロックを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項6】
前記コントローラは、周期的な時間間隔で温度の測定を開始するためのクロックを少なくとも1つ含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項7】
前記コントローラは、前記温度調節デバイス内を液体が流通する間に前記温度調節デバイスが前記動作温度を維持するのに必要な電力を表す流量係数を使用して、前記始動段階後に前記温度調節デバイス(71)にエネルギーを供給するように構成されており、前記流量係数は、最後に計算された前記ランプ値に基づき決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項8】
コーヒーを調製するように構成された、請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項9】
1つ以上のカプセル内に入れられた原材料を使用して飲料を調製するためのカプセル処理機構(11)と、前記カプセル処理機構(11)を液体、例えば水の供給源に接続し、前記液体を前記カプセル処理機構(11)に供給するための流体回路(7)であって、前記カプセル処理機構に供給される前記液体を加熱及び/又は冷却するための前記温度調節デバイス(71)を備える流体回路(7)と、を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の飲料調製マシン(1)。
【請求項10】
飲料調製マシン(1)のヒータ又は冷却器などの温度調節デバイス(71)の始動段階を制御するための方法であって、
以前の始動段階の間における前記温度調節デバイスの温度変化率を表すランプ値をロードするステップと、
前記始動段階のパラメータを、前記温度調節デバイスの始動温度、前記温度調節デバイスの記憶された動作温度、及び前記ロードされたランプ値に基づき決定するステップと、
前記温度調節デバイスに電源投入するステップと、
前記温度調節デバイスの温度が所定の閾値温度値と前記動作温度との間に含まれない場合に自己学習モードに入るステップと、
前記自己学習モードにおいて、前記温度調節デバイスが第1の較正温度から第2の較正温度になるまでのランプ時間持続時間を測定するステップと、
前記ランプ時間持続時間に基づき、調整されたランプ値を計算するステップと、
前記パラメータを前記調整されたランプ値に基づき調整し、前記調整されたパラメータを用いて前記始動段階を継続するステップと、
を含
前記温度調節デバイスは、前記始動段階を通じて継続的に電気エネルギーを供給される、
方法。
【請求項11】
前記パラメータは、前記始動段階の少なくとも一部の持続時間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記始動段階は、前記ランプ時間持続時間が経過すると再開される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記調整されたランプ値は、前記ランプ時間持続時間を前記第2の較正温度と前記第1の較正温度との間の差で除することにより計算される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
始動段階の後に、
前記温度調節デバイス内を液体が流通する間に前記温度調節デバイスが前記動作温度を維持するのに必要な電力を表す流量係数を使用して、前記温度調節デバイス(71)にエネルギーを供給するステップであって、前記流量係数は、最後に計算された前記ランプ値に基づき決定される、ステップを更に含む、
請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記温度調節デバイス(71)は、蓄熱器又はサーモブロックを備える、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された始動特性を有する温度調節デバイスを備える飲料調製マシンに関する。本発明は、特に、飲料を調製するための流体、例えば水を加熱する又は冷却するための、最適化された始動特性を有する温度調節デバイスを有する飲料調製マシンに関する。本発明は更に、そのような飲料調製マシンの温度調節デバイスを制御するための方法に関し、特に、飲料調製マシンの温度調節デバイスを休止温度から動作温度に正確に至らせるために始動段階を最適化するための方法に関する。
【0002】
本明細書では、「飲料」とは、コーヒー、茶、ホット又はコールドチョコレート、ミルク、スープ、ベビーフード等のような任意の液体食品を含むように意図される。「カプセル」は、原材料を含む軟質ポッド又は硬質カートリッジを含む、任意の材料並びに任意の形状及び構造の密閉容器、特に気密容器、例えばプラスチック、アルミニウム製の再利用可能及び/又は生物分解性容器内の任意の予め小分けにされた飲料原材料を含むことを意図する。
【背景技術】
【0003】
飲料調製マシンは、長年にわたって知られている。例えば、米国特許第5,943,472号は、エスプレッソマシンの水リザーバと湯又は蒸気分配チャンバとの間の水流通システムを開示している。流通システムは、バルブ、金属製加熱チューブ、及びポンプを含み、これらは、クランプカラーを用いて接合された異なるシリコーンホースを介して互いに及びリザーバに接続されている。
【0004】
欧州特許第1646305号は、後に淹出ユニットの入口に供給される流通水を加熱する加熱デバイスを有する飲料調製マシンを開示している。淹出ユニットは、飲料原材料の淹出のため、加熱された水を、飲料原材料を入れたカプセルに送るように構成されている。淹出ユニットは、第1の部分と第1の部分に対して移動可能な第2の部分とによって画定されるチャンバと、第1の部分及び第2の部分を淹出ユニットの開放構成から閉鎖構成に共に移動させる前に第1の部分と第2の部分との間の中間位置にカプセルを位置決めするためのガイドとを有する。
【0005】
流通する液体、特に水を加熱するためのインラインヒータも周知であり、例えば、スイス特許第593044号、独国特許第10322034号、独国特許第19732414号、独国特許第19737694号、欧州特許第0485211号、欧州特許第1380243号、仏国特許第2799630号、米国特許第4,242,568号、同第4,595,131号、同第5,019,690号、同第5,392,694号、同第5,943,472号、同第6,393,967号、同第6,889,598号、同第7,286,752号、国際公開第01/54551号、及び同第2004/006742号に開示されている。
【0006】
特に、スイス特許第593044号及び米国特許第4,242,568号は、金属塊を有するインラインサーモブロックヒータを有するコーヒーマシンを開示しており、金属塊は、この塊内に入れられた抵抗加熱ケーブルと、加熱される水の流通のためのダクトとを有する。
【0007】
サーモブロックはインラインヒータであり、この中を液体が加熱のために流れる。これらは、全般的に、熱エネルギーを蓄積するための高い熱容量と、必要なときにはいつでも必要な量の蓄積された熱をサーモブロック内を流通する液体に伝達するための高い熱伝導率とを有する、特に、アルミニウム、鉄及び/又は別の金属若しくは合金製の金属塊、特に、大きな金属塊の中に延びる特に鋼製の1つ以上のダクトなどの加熱チャンバを備える。サーモブロックのダクトは、別個のダクトではなく、サーモブロックの本体内に機械加工あるいは他の手法で形成される、例えば、サーモブロックの塊の鋳造工程の間に形成される貫通通路であってもよい。サーモブロックの塊がアルミニウム製である場合、健康への配慮から、流通する液体とアルミニウムとの間の接触を避けるために、例えば、鋼製の別個のダクトを設けることが好ましい。ブロックの塊は、ダクト周囲の1つ又はいくつかの組み付け部品から作成することができる。サーモブロックは、通常、電気エネルギーを加熱エネルギーに変換する1つ以上の抵抗加熱素子、例えば、別個の又は一体の抵抗器を含む。このような抵抗加熱素子は、通常、サーモブロックの塊の中又は上の、ダクトから1mmを超える距離、特に、2~50mm、又は5~30mmの距離にある。熱は、サーモブロックの塊に供給され、この塊を通じて、流通する液体に供給される。加熱素子は、金属塊に鋳造若しくは収容されてもよく、又は金属塊の表面に固定されてもよい。ダクト(1つ又は複数)は、その長さ及びブロックを介した熱伝達を最大にするために、サーモブロックに沿って螺旋状又は別の配置を有してもよい。
【0008】
サーモブロックの欠点は、温度を正確に制御し、加熱される液体を所望の温度にするために必要とされる加熱エネルギーを最適化することが困難なことにある。実際、金属塊の熱慣性、塊の局所的かつ不均一な抵抗加熱、所定位置における塊の測定温度に影響を及ぼす塊の加熱による塊の異なる部分への動的熱拡散は、流通する液体を所望の所定温度に加熱するためのサーモブロックの正確な制御を非常に困難にし、更に、エスプレッソマシンの場合には通常1~2分の非常に長い予熱時間を必要とする。更に、連続して作製されるサーモブロックの後の使用に関与する様々なパラメータ、例えば、環境の温度、電源の正味電圧、サーモブロックの加熱抵抗器の実際値、サーモブロックの断熱、サーモブロック内を流通する液体の初期温度を予測することは困難である。したがって、サーモブロックは、通常、少なくとも1つの温度センサによって温度を連続的に測定することによりサーモブロックの給電を調整する動的ループ制御給電回路に関連付けられる。しかしながら、そのようなシステムの複雑な熱流により、流通する液体の流れの実際の加熱要求に合わせて調整された特定の温度レベルでのサーモブロックの安定化には長時間かかり、依然として達成は困難である。
【0009】
加熱精度を向上させるための手法は、欧州特許第1380243号に教示されている。この特許は、特に、コーヒーマシンを備えることを意図した加熱デバイスを開示している。この加熱デバイスは金属管を備え、この金属管内を、加熱される液体が入口ダクトから出口ダクトへと流れることができる。管の外面は、その長さのいくつかの区域にわたって、連続する複数組の電気抵抗素子で被覆されている。円筒状挿入物が管の内部に延び、管の内壁とともに螺旋ダクトを形成しており、この螺旋ダクト内を液体が流れることができ、したがって、乱流及び管から液体へのエネルギーの急速な伝達を促進する。流量計がまた、入口ダクトの上流に配置されている。デバイスは、抵抗素子の各組への入口及び抵抗素子の各組からの出口に管の長さに沿って分配された複数の温度センサを更に備える。この場合、液体への加熱エネルギーの分配を司る原理は、ダクトへの入口の水温に従い互いに独立して又は連続して切り換えることができる、抵抗素子により生成される電力の調整に基づく。このデバイスは加熱速度の点では満足な結果をもたらすものの、このデバイスは、加熱される水の体積によって管の高さが決定されるため比較的嵩張るとともに、「厚膜」技術として現在知られているものを用いて抵抗素子を管の表面上に厚膜の形態で印刷する必要があるため高額である。
【0010】
加えて、バッチ又はインライン低慣性ヒータに関するヒータの熱制御を向上させるためのやや複雑な試みが独国特許第19711291号、欧州特許第1634520号、米国特許第4,700,052号、及び同第6,246,831号で提案されている。
【0011】
ヒータを制御するための他の方法は、国際公開第2008/023132号のような様々な文書から知られており、国際公開第2008/023132号は、システム加熱速度の評価及び必要とされるエネルギーの計算について記載しているが、大半はリレー技術、及び水調理器等のヒータの異なる含水量を基礎とするものである。
【0012】
国際公開第2011/157675号は、飲料調製マシンの温度調節デバイスへの電力の伝達を制御するためのユニットについて記載している。温度調節デバイスは、上記デバイスを非活動温度から動作温度へと始動し、始動終了時に、温度調節デバイス内を流通する流体を目標温度にするための始動プロファイルを有するコントローラを備える。コントローラは、始動終了時にデバイス内に流体が流通することを可能にし、始動終了時に流れる流体の決定された温度を目標温度と比較するように構成されている。次いで、そこから温度差が導出される。始動プロファイルは少なくとも1つのパラメータを有し、コントローラは、このパラメータを導出された温度差に応じて調整するための自己学習モードを有する。調整されたパラメータは、その後、上記デバイスの後続の始動のために記憶される。このデバイス及び対応する方法は、温度調節デバイスの後続の始動の向上を可能にするが、対応する飲料調製マシンの動作条件又は環境条件が変わるたびに、始動の完了後に調製される最初の飲料の品質が、液体の実際の温度と目標温度との間の差によって最適に満たないものとなる可能性がある。
【0013】
欧州特許第0935938(B1)号は、加熱目標に達した後のポンプの自動始動について記載しており、全般的に、ヒータの温度を監視するための抵抗式温度センサによる温度の測定に関する。ヒータの給電時のヒータの温度に応じてヒータに関する異なる加熱カットオフ温度が考慮される。
【0014】
温度調節デバイス内を流通する液体が目標温度で直接加熱されるように、始動段階の終了時に温度調節デバイスの動作温度に正確に到達するために、温度調節デバイス、特にサーモブロックの始動段階の簡単かつ信頼性の高い制御を提供する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、温度調節デバイス、例えば、始動後に最適な条件で最初の飲料の調製を可能にするために、始動終了時に可能な限り正確に動作温度に達するための最適化された始動プロファイルを有する好ましくはサーモブロックなどの蓄熱器を有する加熱デバイスを備える飲料調製マシンを提供することである。
【0016】
本発明の目的は、特に、始動プロファイルを有する温度調節デバイスを備える飲料調製マシンと、始動終了時にいかなる温度オーバーシュート又はアンダーシュートも回避する又は最小限にすることを可能にする、対応する制御方法とを提供することである。
【0017】
これらの目的及び他の利点は、特に、対応する独立請求項及びその従属請求項による飲料調製マシンによって達成される。
【0018】
これらの目的及び他の利点は、更に、そのような飲料調製マシンの温度調節デバイスを操作する及び/又は自己較正する方法によって達成される。
【0019】
これらの目的及び他の利点は、ヒータ又は冷却器などの温度調節デバイスを備える飲料調製マシンであって、上記温度調節デバイスは、温度調節デバイスの非活動温度から動作温度への始動段階を制御するための制御ユニットを備え、制御ユニットは、温度調節デバイスを始動するための始動プロファイルを有するコントローラであって、始動プロファイルは少なくとも1つのパラメータを有し、少なくとも1つのパラメータを調整するための自己学習モードを有する、コントローラと、コントローラに接続された、温度調節デバイスの温度を測定するための温度センサと、を備え、自己学習モードは、始動段階の間に、コントローラに、温度調節デバイスの始動段階の間の温度変化率を表すランプ値を計算させ、少なくとも1つのパラメータを調整されたランプ値に応じて調整させ、調整された少なくとも1つのパラメータを始動段階の残り部分のために使用させる飲料調製マシンによって達成される。
【0020】
少なくとも1つのパラメータは、例えば、始動段階の少なくとも一部の持続時間及び/又は始動段階の少なくとも一部の間に温度調節デバイスに伝達される電気エネルギーである。
【0021】
実施形態では、コントローラは、温度調節デバイスが始動段階の間に第1の較正温度から第2の較正温度になるまでの、コントローラによって測定されるランプ時間持続時間を、第2の較正温度と上記第1の較正温度との間の差で除した値として、ランプ値を計算するように構成されている。
【0022】
実施形態では、温度調節デバイスは蓄熱器又はサーモブロックを有する。
【0023】
コントローラは、少なくとも、周期的な時間間隔で温度の測定を開始するためのクロックを好ましくは含む。
【0024】
好ましくは、コントローラは更に、温度調節デバイス内を液体が流れる間に温度調節デバイスが動作温度を維持するのに必要な電力を表す流量係数を使用して、始動段階後に温度調節デバイスにエネルギーを供給するように構成されており、流量係数は、最後に計算されたランプ値に基づき決定される。
【0025】
飲料調製マシンは、例えば、コーヒーを調製するように構成されている。飲料調製マシンは、例えば、1つ以上のカプセル内に入れられた原材料、例えば、粉にしたコーヒーを使用して、コーヒーなどの飲料を調製するためのカプセル処理機構を備える。飲料調製マシンは、通常、カプセル処理機構を液体、例えば水の供給源に接続し、液体をカプセル処理機構に供給するための流体回路を更に備える。したがって、流体回路は、通常、カプセル処理機構に供給される液体を加熱及び/又は冷却するための温度調節デバイスを備える。
【0026】
これらの目的及び他の利点は更に、飲料調製マシンのヒータ又は冷却器などの温度調節デバイスの始動段階を制御するための方法であって、温度調節デバイスは例えば、蓄熱器又はサーモブロックを備え、方法は、以前の始動段階の間における温度調節デバイスの温度変化率を表すランプ値をロードするステップと、始動段階のパラメータを、温度調節デバイスの始動温度、温度調節デバイスの記憶された動作温度、及びロードされたランプ値に基づき決定するステップと、温度調節デバイスに電源投入するステップと、温度調節デバイスの温度が所定の閾値温度値と動作温度との間に含まれない場合に自己学習モードに入るステップと、自己学習モードにおいて、温度調節デバイスが第1の較正温度から第2の較正温度になるまでのランプ時間持続時間を測定するステップと、このランプ時間持続時間に基づき、調整されたランプ値を計算するステップと、パラメータを計算されたランプ値に基づき調整し、調整されたパラメータを用いて始動段階を継続するステップと、を含む、方法によって達成される。
【0027】
実施形態において、パラメータは、始動段階の少なくとも一部の持続時間である。始動段階は、この持続時間が経過すると好ましくは再開される。実施形態では、調整されたランプ値は、ランプ時間持続時間を第2の較正温度と第1の較正温度との間の差で除することにより計算される。
【0028】
好ましくは、方法は、始動段階の後に、温度調節デバイス内を液体が流れる間に温度調節デバイスが動作温度を維持するのに必要な電力を表す流量係数を使用して、温度調節デバイスにエネルギーを供給するステップであって、流量係数は、最後に計算されたランプ値に基づき決定される、ステップを更に含む。
【0029】
本発明によれば、始動段階は、始動プロファイルの少なくとも1つのパラメータ、例えば、始動段階の持続時間を、始動段階の間に自己学習モードにおいて、現在の環境及び/又は給電条件に合わせて調整するように修正することができるという点で正確に制御され、それにより、始動後に調製される最初の飲料の品質を阻害するおそれのある始動段階の終了時の温度オーバーシュート又はアンダーシュートを回避する。
【0030】
更に、最後に計算されたランプ値を使用し、液体が温度調節デバイス内を流れる間に温度調節デバイスを動作温度に維持するために温度調節デバイスが必要とするエネルギー、すなわち温度調節デバイス内を流通する液体、例えば水を目標温度にするために温度調節デバイスが必要とするエネルギーを決定するために使用される流量係数を調整する及び/又は修正することで、マシンのほぼあらゆる環境及び/又は給電条件において正確な目標温度で液体、したがって飲料を得るために、飲料調製中に正しい量の電気エネルギーを温度調節デバイスに供給することが可能になる。
【0031】
ここで、本発明を図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】温度調節デバイスを備える飲料調製マシンの概略図である。
図2】温度調節デバイスを備える飲料調製マシンの切断図である。
図3】本発明による温度調節デバイスを制御するための方法を示すフローチャート図である。
図4】本発明の方法の特定例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による例示的実施形態の以下の説明は、飲料調製用の電気デバイスに関し、特に、カプセル内に入れられた原材料から飲料を調製するためのマシンに関する。
【0034】
図1は、このような飲料調製マシン1の例示的実施形態を概略的に示す。飲料調製マシンは、例えば、カプセル処理機構11を液体、例えば水の供給源(リザーバ出口80により流体回路7に接続された液体リザーバ8など)に接続する流体回路7を備える。流体回路7は、ポンプ70、例えばソレノイド(往復動ピストン)ポンプ又は蠕動ポンプ又はダイアフラムポンプと、温度調節デバイス71、例えばサーモブロックを備える例えばヒータ及び/又は冷却器とから選択される少なくとも1つのデバイス70、71を好ましくは含む。流体回路は、温度センサ、例えば温度調節デバイス71に組み込まれた若しくはこれとは別個の温度センサ、又は圧力センサ、例えばポンプ70の下流の圧力センサ、又は流量計、例えばポンプ70の上流の流量計などの1つ以上のセンサを更に備えてもよい。そのようなデバイス70、71及び/又はセンサは、好ましくは制御ユニット4を介して制御される及び/又は電力供給される。
【0035】
カプセル処理機構11は、1つ以上のカプセル、例えば2つのカプセル内に入れられた原材料を、流体回路7から供給される液体、例えば水とともに使用して飲料を調製するように適合されている。カプセル処理機構11は、例えば、淹出ユニット、溶解ユニット、混合ユニット、又はこれらの組み合わせを備える。開放位置において、カプセル処理機構11は、例えば、1つ以上のカプセルを内部に挿入することを可能にするカプセル挿入チャネルを画定する。閉鎖位置において、カプセル処理機構11は、カプセルを処理し、対応する飲料又は飲料の一部を調製するために、挿入されたカプセルを好ましくは閉じられたチャンバ内で保持してもよい。
【0036】
マシン1は、例えば、カプセル処理機構11、例えば、淹出、浸出又は希釈ユニットを有する飲料調製マシンである。カプセル処理機構11は1つのカプセルを一度に処理するためのものであり、以下のように動作する。
【0037】
まず、例えば、カプセル処理機構11の閉鎖及び開放を指示するハンドル20を作動させることによりカプセル処理機構11を開放する。カプセル処理機構11を開放するために、ハンドル20を、例えば、第1の位置から第2の位置(図示せず)に軸線21を中心に枢動させる。第1の位置では、ハンドル20は、マシン1のハウジング3と整列し、カプセル処理機構11は、その閉鎖位置にあり、第2の位置では、ハンドルは、ハウジングの上方に上昇し、カプセル処理機構は、その開放位置にある。
【0038】
次いで、カプセルが、例えば、開放位置にあるカプセル処理機構11に、例えば、上記のようなカプセル挿入チャネルを通じて挿入される。
【0039】
カプセル処理機構11は、次いで、挿入されたカプセルをカプセル処理機構11内で処理構成に固定するように、ハンドル20を第2の位置と第1の位置との間でその回転軸線21を中心に旋回させることにより閉鎖される。
【0040】
次いで、カプセルは、例えば、上記の流体回路7のデバイスを作動させることによって、飲料を調製するように処理される。カプセルの処理は、例えば、ユーザインタフェース要素、例えば、押しボタン41を作動させることにより開始され、好ましくは制御ユニット4により制御される。調製された飲料は、カプセル処理機構11と流体連通したマシン1の出口14を通じて、上記出口14の下に定置されたユーザの容器に注出される。
【0041】
最後に、例えば、カプセル処理機構11を開放位置に移動させて、処理済みのカプセルを例えば重力によりカプセル処理機構11から取り出すために、ハンドル20を、第1の位置と第2の位置との間でその回転軸線21を中心に枢動させるように再び作動させる。処理済みのカプセルは飲料調製マシン1の取り外し可能な容器5に取り出されてもよい。
【0042】
カプセルは、例えば、茶、コーヒー、ホットチョコレート、コールドチョコレート、ミルク、スープ、又はベビーフードを少なくとも一部調製するための1種以上の原材料を含む。
【0043】
図2は、カプセル処理機構が、粉にしたコーヒーを含むカプセルからコーヒーを調製するための淹出ユニット11であり、温度調節デバイス71がサーモブロックであるコーヒーマシンの形態の図1の飲料調製マシン1の例示的実施形態を示す。
【0044】
図1及び図2を参照すると、制御ユニット4は、温度調節デバイス71及びポンプ70への電力の伝達を好ましくは制御する。制御ユニット4は、制御ユニット4の機能を制御するためのコントローラ、例えばマイクロコントローラ又はプロセッサ(図示せず)を備える。制御ユニット4は、例えば、温度調節デバイス71を始動温度、例えば非活動温度から始動段階の終了時の動作温度へと始動するための始動プロファイルを有しており、動作温度は、好ましくは、上記温度調節デバイス71内を流通する流体を目標温度にするための、温度調節デバイス71の温度に相当する。制御ユニット4は、コントローラに接続され、温度調節デバイス71に熱的に結合された、温度調節デバイス71の温度を検知するための第1の温度センサを備える。
【0045】
制御ユニット4は、好ましくは、始動段階の終了時に、すなわち、温度調節デバイス71がその動作温度に達したときにポンプ70を作動させることにより温度調節デバイス71内の流体の流通を可能にするように構成されている。任意選択的に、制御ユニット4は、温度調節ユニット71の出力における流体、例えば水の温度を測定するために、コントローラに接続された第2の温度センサを備える。制御ユニット4は、始動段階の後に、例えば、温度調節ユニット71内を流通する流体の温度を目標温度と比較するように構成されていてもよい。
【0046】
本発明によれば、始動プロファイルは少なくとも1つのパラメータを有する。パラメータは、好ましくは、始動段階の少なくとも一部の持続時間及び/又は始動段階の少なくとも一部の間に温度調節デバイス71に伝達される電気エネルギーの量である。本発明によれば、コントローラは、始動段階の間に少なくとも1つのパラメータを調整するための自己学習モードを有し、調整された少なくとも1つのパラメータを使用して、始動段階の残りを制御する。少なくとも1つのパラメータは、好ましくは、始動段階の間に決定された温度調節デバイスの温度変化率を表すランプ値に応じて調整される。ランプ値は、好ましくは、記憶され、後続の始動段階の少なくとも一部の持続時間を計算するために使用される。
【0047】
以下で更に詳細に説明する好適な実施形態では、始動プロファイルの少なくとも1つのパラメータは、始動段階の少なくとも一部の持続時間である。
【0048】
図3を参照すると、飲料調製マシンはステップ100で起動される。飲料調製マシンは、例えば、非活動期間後にオンにされる。したがって、制御ユニットは、温度調節デバイスを始動温度(すなわち始動段階の開始時の温度調節デバイスの温度)から所定の動作温度に至らせる始動段階を開始する。動作温度は、通常、温度調節デバイスがその中を流通する液体、例えば水を、所与の飲料の調製に適した目標温度にするのに必要な温度に相当する。
【0049】
101において、制御ユニット4のコントローラは、以前に記憶された、温度調節デバイスの温度変化率を表すランプ値をロードする。以前に記憶されたランプ値は、例えば、マシンの製造中に制御ユニットのメモリに記憶されたデフォルトランプ値である。好ましくは、以前に記憶されたランプ値は、飲料調製マシンの以前の始動段階の間に決定されたランプ値である。
【0050】
102において、コントローラは、温度調節デバイスの温度を測定し、始動段階持続時間を、測定された始動温度、既知の動作温度、及び101でロードされたランプ値に基づき計算し、温度調節デバイスを動作温度にするために温度調節デバイスへの電源の投入を開始する。始動段階持続時間は、例えば、以下のように計算される。
start-up=(TO-TS)・R (1)
式中、TOは、動作温度(℃)、TSは、始動温度(℃)、及びRは、ランプ値(s/℃)である。したがって、ランプ値は、例えば、温度調節デバイスが始動段階の間に電力供給されるとき、すなわち、好ましくは液体が温度調節デバイス内を流通していないときに温度調節デバイスの温度を1℃変更するのに必要な時間(秒)を示す。
【0051】
好ましくは、始動段階の開始直後に、コントローラは、103において、温度調節デバイスの温度、例えば、その始動温度若しくはその瞬間温度が閾値温度に等しいかどうか、又はこの温度が閾値温度と動作温度との間に含まれるかどうかを確認する。すなわち、コントローラは、
始動段階が加熱段階である場合には、
threshold=<T<TO (2)
であるかどうか、
又は
始動段階が冷却段階である場合には、
TO<T=<Tthreshold (3)
であるかどうかを確認する。
式中、Tthresholdは閾値温度であり、Tは、ステップ103における温度調節デバイスの温度であり、TOは動作温度である。
【0052】
試験103の結果が肯定的である場合、すなわち、上記条件(2)又は条件(3)のうちの適切な1つが満たされている場合、コントローラは、102で計算された始動段階持続時間の終了に達するまで温度調節デバイスへの電力供給を継続する(試験111)。
【0053】
計算された始動段階持続時間に達すると、温度調節デバイスはその動作温度にあり、飲料調製マシンは、ステップ120において準備完了モードに入り、飲料を調製する準備が完了する。
【0054】
試験103の結果が否定的である場合、すなわち、上記条件(2)又は条件(3)のうちの適切な1つが満たされていない場合、コントローラは自己学習モードに入る。
【0055】
自己学習モードにおいて、コントローラは、温度調節デバイスの温度を定期的に測定し、104において、第1の較正温度に達したかどうかを確認する。すなわち、コントローラは、
始動段階が加熱段階である場合には、
T>=TC (4)
であるかどうか、
又は
始動段階が冷却段階である場合には、
T=<TC (5)
であるかどうかを確認する。
式中、Tは、ステップ104における熱温度調節デバイスの温度であり、TCは、第1の較正温度である。
【0056】
好ましくは、始動段階が加熱段階である場合にはTC>Tthresholdであり、始動段階が冷却段階である場合にはTC<Tthresholdである。
【0057】
試験104は、その結果が否定的である限り一定の間隔で繰り返される。
【0058】
試験104が肯定的である場合、すなわち、第1の較正温度に達すると、コントローラはステップ105においてランプ時間測定段階を開始する。
【0059】
ランプアップ時間測定段階の間、コントローラは温度調節デバイスの温度を定期的に測定し続け、106において、第2の較正温度に達したかどうかを確認する。すなわち、コントローラは、
始動段階が加熱段階である場合には
T>=TC (4)
であるかどうか、
又は
始動段階が冷却段階である場合には
T=<TC (5)
であるかどうかを確認する。
式中、Tは、ステップ104における温度調節デバイスの温度、及びTCは、第2の較正温度である。
【0060】
好ましくは、始動段階が加熱段階である場合にはTC<TC<TOであり、始動段階が冷却段階である場合にはTC>TC>TOである。
【0061】
試験106は、その結果が否定的である限り、一定の間隔で繰り返される。
【0062】
試験106が肯定的である場合、すなわち、第2の較正温度に達すると、コントローラはステップ107においてランプ時間測定段階を停止する。
【0063】
ステップ108において、コントローラは調整されたランプ値を、第2の較正温度と第1の較正温度との間の差で除したランプ時間測定段階の持続時間、
adjusted=tramp/(TC-TC) (6)
として計算する。
式中、Radjustedは、調整されたランプ値(s/℃)であり、trampは、ランプ時間測定段階の測定された持続時間(秒)である。
【0064】
ステップ109において、コントローラは残りの始動段階持続時間を、ステップ109における温度調節デバイスの温度、既知の動作温度、及び調整されたランプ値に基づき計算する。
remain start-up=(TO-T)・Radjusted (7)
式中、tremain start-upは、ステップ109から始動段階の終了までの残り時間、Tは、ステップ109における温度調節デバイスの温度である。
【0065】
代替的に又は付加的に、ステップ109において、コントローラは始動段階持続時間全体を、始動温度、動作温度、及び調整されたランプ値に基づき再計算する。
start-up recalculated=(TO-TS)・Radjusted (8)
式中、tstart-up recalculatedは、再計算された始動段階の持続時間(秒)である。
【0066】
調整されたランプ値は次の始動段階で使用するために好ましくは記憶され、以前に記憶されたランプ値に好ましくは取って代わる。
【0067】
ステップ109の後、コントローラは、109で計算され、ステップ109で測定された残りの始動段階持続時間、及び/又は109で計算され、ステップ102で測定された、再計算された始動段階持続時間の終了に達するまで温度調節デバイスへの電力供給を継続する(試験110)。
【0068】
試験110が肯定的である場合、すなわち、残りの始動段階持続時間及び/又は再計算された始動段階が経過すると、温度調節デバイスはその動作温度にあり、始動段階は終了し、温度調節デバイスへの給電は中断又は低減され、飲料調製マシンはステップ120において準備完了モードに入り、飲料を調製する準備が完了する。
【0069】
ステップ120においてマシンの準備が完了すると、例えば、自動的に、又はユーザによるユーザインタフェース例えば押しボタンの作動時に飲料調製サイクル121、122に入ってもよい。
【0070】
ステップ121において、コントローラは、温度調節デバイス内を液体が流通する間に温度調節デバイスが動作温度を維持するのに必要な電力を表す、すなわち、温度調節デバイスから流出する液体を目標温度に維持するのに温度調節デバイスが必要とする電力を表す流量係数を好ましくはロードする。流量係数は、例えば、最後に計算されたランプ値、及び温度調節デバイスの既知の又は測定された特性に基づき決定される。
【0071】
ステップ122において、コントローラは以前にロードされた流量係数を使用して、温度調節デバイスにエネルギーを供給し、飲料調製マシンの流体回路は、飲料を調製するために、液体、例えば水をリザーバから温度調節デバイスを通してカプセル処理機構に流通させるために作動される。飲料調製が完了すると、ステップ120においてマシンは準備完了状態に戻る。
【0072】
図4は、上記の方法を、例示的ではあるが非限定的な特定の実施形態において示すものであり、ここで、飲料調製マシンは、温度調節デバイスとしてサーモブロックを有するコーヒーマシンであり、閾値温度値は33℃であり、第1の較正値は48℃であり、第2の較正値は56℃である。動作温度は、例えば95℃である。
【0073】
この実施形態によれば、したがって、始動段階は加熱段階である。低温加熱(cold heatup)は、例えば、閾値温度33℃を下回るサーモブロック温度で開始する加熱プロセスと定義することができ、これは、例えば、コーヒーマシンが数時間の非活動の後に電源投入される状況に相当する。そのような各低温加熱段階の間、加熱段階持続時間を、例えば、主電源の電圧、周囲温度等のような、その加熱時間に影響し得るマシンの現在の動作条件を考慮して最適化するために、調整されたランプ値の計算、並びに対応する加熱段階持続時間の修正及び/又は再計算が行われる。暖温加熱(warm heat-up)は、サーモブロックを、閾値温度33℃を超える始動温度から動作温度まで加熱しなければならないときに行われる。したがって、システムはランプ値を決定することができないため、最後に記憶されたランプ値が加熱段階持続時間の決定のために考慮される。この状況は、例えば、数分の非活動の後、例えば、スタンバイモードに入った数分後にマシンが再作動される場合に生じる。
【0074】
この実施形態によれば、低温加熱の場合、マシンがオンにされる又は再作動されると、コントローラは最後に記憶されたランプ値をロードし、加熱段階の持続時間を、ロードされたランプ値、サーモブロックの瞬間温度、及び記憶された動作温度に基づき計算する。コントローラは、次いで、サーモブロックへの電力供給を開始してこれを加熱することにより加熱段階を開始する。コントローラは、次いで、好ましくは、サーモブロックの瞬間温度又はその始動温度が33℃以上であるかどうかを即座に確認する。これに該当しないため、マシンは自己学習モードに入る。自己学習モードにおいて、コントローラは一定の間隔でサーモブロックの温度を測定し、これを第1の較正温度と照らし合わせて確認する。測定温度が48℃以上になるとすぐに、ランプアップ時間を決定するために時間の測定を開始する。コントローラは一定の間隔でサーモブロックの温度の測定を継続し、これを第2の較正温度と照らし合わせて確認する。測定温度が56℃以上になるとすぐに、時間の測定を停止する。測定されるランプアップ時間は、したがって、対応する時間測定の開始と停止との間で測定される時間に相当する。次いで、ランプアップ時間(秒)を8℃で除し、調整されたランプ値(s/℃)を得る。加熱段階の残りの持続時間は、調整されたランプ値、サーモブロックの瞬間温度、及び動作温度に基づき計算される、並びに/又は加熱段階持続時間は、調整されたランプ値、サーモブロックの始動温度、及び動作温度に基づき再計算される。サーモブロックは、残りの加熱段階持続時間、又は再計算された加熱段階持続時間のいずれか1つに達するまで更に加熱される。マシンは、次いで、準備完了モードに入り、上で説明したように飲料を調製することができる。
【0075】
暖温加熱の場合、コントローラは最後に記憶されたランプ値をロードし、加熱段階持続時間を、ランプ値、始動温度、及び記憶された動作温度に基づき計算する。コントローラは、次いで、サーモブロックへの電力供給を開始してこれを加熱することにより加熱段階を開始する。コントローラは、次いで、好ましくは、サーモブロックの瞬間温度又はその始動温度が33℃以上であるかどうかを即座に確認する。これに該当するため、コントローラは加熱段階の計算された持続時間に達するまでサーモブロックの加熱を継続する。マシンは、次いで、準備完了モードに入り、上で説明したように飲料を調製することができる。
【0076】
本発明による始動プロファイル及び対応する方法は、飲料調製マシン、例えば、液体がサーモブロックを通って流通し、次いで、コーヒーを淹出するための淹出チャンバに案内され、淹出ユニットに入れられたカプセルに供給されるコーヒーマシンの温度調節デバイスの始動段階を最適化するように構成される。
【0077】
本発明のデバイス及び方法によれば、始動プロファイルの少なくとも1つのパラメータ、例えば、始動段階の持続時間は、始動段階の間、又は前の始動段階の間、すなわち飲料調製の開始前、すなわちマシンの流体回路が作動停止されている間に行われる温度測定に基づき調整される。したがって、例えば始動段階の少なくとも一部の時間を計算するために使用されるランプ値は、液体が温度調節デバイス内を流通していない間の温度調節デバイスの温度の変化を表す。
【0078】
これにより、始動プロファイルのパラメータを正確に決定することを可能にし、特に、始動段階の終了時に動作温度に正確に到達し、したがって、マシン起動後の最初の飲料から最適な飲料調製条件を有するために、始動段階の厳密な持続時間及び/又は温度調節デバイスに送達するエネルギーを計算することを可能にする。
【0079】
実施形態では、制御ユニットは、
コントローラに接続された又はこれに組み込まれた、温度調節デバイスの温度を測定するための少なくとも第1の温度センサと、
周期的な時間間隔で温度の測定を開始するための少なくとも1つのクロックと、
を備える。
【0080】
好ましくは、制御ユニットはまた、
少なくとも1つのランプ値、動作温度、第1及び第2の較正温度、及び上記周期的な時間間隔における上記測定温度を記憶するためのデータ記憶手段と、
始動段階持続時間、ランプ値等を計算するための計算手段と、
を含む。
【0081】
本発明によれば、これら計算手段は、
a)記憶された異なる較正温度値の間のランプ値を計算し、
b)始動段階の少なくとも一部の持続時間を、上記動作温度から始動又は現在温度を減じ、これにランプ値を乗じることにより計算する
ように構成されている。
【0082】
ランプ値は、例えば、マシンの環境及び/又は給電条件に依存し得る。
【0083】
本発明によって達成される改善及び利点は、始動プロファイルの定期的に調整されるパラメータ及び現在の始動段階における任意の新たに調整されたパラメータの即時使用によって、飲料調製マシンの始動を最適化し、全ての始動温度に対し最適に調整された始動段階、あらゆる温度調節デバイス電力許容値、ネットワーク電圧許容値、サーモブロック中の水、温度調節デバイスエネルギー損失、及び環境温度をもたらし、それにより、始動後の最初の飲料に対しても温度調節デバイスの温度の正確な調整及び最適な飲料調製結果をもたらす自己較正システムを含む。
【0084】
更に、最後に計算されたランプ値を使用し、液体が温度調節デバイス内を流通する間に温度調節デバイスを動作温度に維持するために温度調節デバイスが必要とするエネルギー、すなわち温度調節デバイス内を流通する液体、例えば水を目標温度にするために温度調節デバイスが必要とするエネルギーを決定するために使用される流量係数を調整する及び/又は修正することで、マシンのほぼあらゆる環境及び/又は給電条件において正確な目標温度で液体、したがって飲料を得るために、飲料調製中に正しい量の電気エネルギーを温度調節デバイスに供給することが可能になる。
図1
図2
図3
図4