(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】グリコペプチド分析のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20221117BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20221117BHJP
H01J 49/06 20060101ALI20221117BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01J49/00 720
G01N27/62 V
H01J49/06 300
H01J49/42 250
H01J49/06 700
H01J49/00 310
(21)【出願番号】P 2019572669
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2018054823
(87)【国際公開番号】W WO2019003188
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 崇
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン, イーブス
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094252(JP,A)
【文献】特表2009-516903(JP,A)
【文献】特表2016-520979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計分析のためのシステムであって、
第1の四重極質量フィルタと、
イオンガイドの多重極ロッドセットであって、前記多重極ロッドセットは、前記第1の四重極質量フィルタからイオンを受け取り、前記多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合される、多重極ロッドセットと、
前記イオンガイドのレンズ電極であって、前記レンズ電極は、前記多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために前記多重極ロッドセットの一方の端部に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、レンズ電極と、
ExDデバイスであって、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施するように適合され、前記ExDデバイスは、前記ExDデバイスの入射口が前記多重極ロッドセットと対向する前記レンズ電極の他方の側上に配置されるように位置付けられる、ExDデバイスと、
質量分析器であって、前記質量分析器は、前記ExDデバイスからイオンを受け取るために前記ExDデバイスの出射口に位置付けられる、質量分析器と、
プロセッサであって、前記プロセッサは、前記多重極ロッドセット内に閉じ込められるバンドパス質量範囲のイオンを抽出するために、前記多重極ロッドセットおよび前記レンズ電極と通信し、同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記質量分析器は、飛行時間質量分析計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記質量分析器は、イオントラップを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記質量分析器は、第2の四重極質量フィルタを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ExDデバイスは、
第1のモードおよび第2のモードのうちの少なくとも1つにおいて動作し、
前記第1のモードにおいて、前記ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、前記第2のモードにおいて、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ExDデバイスは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス
質量範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、
複数の電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記
横方向経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記
第2の中心軸上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス
質量範囲のイオンの少なくとも一部が
複数の電子と相互作用し、解離し、ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が
前記複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
1つ以上のグリコペプチドを含有するサンプルを分析する方法であって、前記方法は、
前記サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成することと、
質量フィルタ内で1つ以上のグリコペプチドイオンを単離することと、
イオンガイドの多重極ロッドセット内で前記単離されたグリコペプチドイオンを断片化することであって、前記多重極ロッドセットは、入射口端と、出射口端とを有し、前記入射口端は、前記質量フィルタから断片化されたグリコペプチドイオンを受け取り、前記多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合され、前記イオンガイドは、レンズ電極を有し、前記レンズ電極は、前記多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために前記多重極ロッドセットの出射口端に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、ことと、
同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって、前記イオンガイドの出射口端からExDデバイスの中へ前記断片化
されたグリコペプチドイオンのバンドパス範囲のイオンを抽出することと、
前記ExDデバイス内の前記バンドパス範囲のイオンの電子解離反応または電子移動反応を実施し、ExD生成イオンを形成することと、
前記ExD生成イオンを質量分析することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成することは、前記1つ以上のグリコペプチドを金属化することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属化することは、前記
1つ以上のグリコペプチドをナトリウム塩と反応させることを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記バンドパス範囲のイオンを抽出することは、同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって実施され、前記半径方向双極DC電圧および前記
軸方向トラッピングAC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記バンドパス範囲のイオンを抽出することは、同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって実施され、前記
半径方向RFトラッピング電圧振幅および前記
軸方向トラッピングAC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記ExD
デバイスは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、
複数の電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記
横方向経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記
第2の中心軸上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が
複数の電子と相互作用し、解離し、
前記ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が
前記複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
サンプル中のグリコペプチドを分析する方法であって、
質量フィルタを提供することと、
イオンガイドの多重極ロッドセットを提供することと、
前記多重極ロッドセットの下流に位置付けられるExDデバイスを提供することであって、前記ExDデバイスは、
第1のモードおよび第2のモードのうちの少なくとも1つにおいて動作するように適合され、
前記第1のモードにおいて、前記ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、前記第2のモードにおいて、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する、ことと、
前記ExDデバイスの下流に位置付けられる質量分析器を提供することと、
前記多重極ロッドセットと前記ExDデバイスとの間に位置付けられるレンズ電極を提供することと、
前記サンプルをイオン化し、金属化サンプルイオンを形成することと、
前記金属化サンプルイオンを前記質量フィルタに移送することと、
事前選択されたm/z範囲を有するグリコペプチドイオンをイオンガイドの前記多重極ロッドセットの中に選択的に移送するように前記質量フィルタを動作させることと、
衝突セルとして動作するように前記多重極ロッドセットを構成し、前記衝突セルが第1の解離エネルギーにおいて動作し、ペプチド断片の形成を引き起こし、前記形成されたペプチド断片を前記ExDデバイスを通して前記質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記質量分析器内の前記ペプチド断片を分析することと、
グリカン断片の形成を引き起こすように第2の解離エネルギーにおいて衝突セルとして動作するように前記多重極ロッドセットを構成し、前記第2の解離エネルギーは、前記第1の解離エネルギーよりも高く、前記形成されたグリカン断片を前記ExDデバイスを通して前記質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記質量分析器内の前記グリカン断片を分析することと、
同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって、前記多重極ロッドセットから前記ExDデバイスの中へバンドパス範囲のグリカン断片イオンを抽出し、前記バンドパス範囲のグリカン断片は、事前選択された範囲のm/z値によって定義され、電子移動反応デバイスまたは電子解離デバイスとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記バンドパス範囲のグリカン断片イオンに対してExD反応を実施し、ExD生成イオンを形成することと、
前記ExD生成イオンを質量分析することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記ExD
デバイスは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス範囲の
グリカン断片イオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、
複数の電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記
横方向経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記
第2の中心軸上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が
複数の電子と相互作用し、解離し、
前記ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が
前記複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容が、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2017年6月28日に出願された、米国仮特許出願第62/525,901号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に説明される教示は、質量分析法を使用するグリコペプチド分析および同一物を達成するための装置および方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
(背景)
グリコペプチドは、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に共有結合される1つ以上の炭水化物部分を含む、ペプチド構造のクラスである。いくつかの場合では、グリカンは、糖部分の骨格を形成する。グリコペプチドは、グリカン部分(すなわち、炭水化物)とアミノ酸残基との間の結合に応じて分類される。加えて、グリカン部分の間の結合もまた、重要である。
【0004】
グリコペプチドは、従来の質量分析法を使用して、限定された方法で特性評価されることができる。衝突誘発解離(CID)を使用するタンデム質量分析法が、グリコシド結合を破壊することができ、成分糖部分の順序および同一性を含み得る、分子のグリカン部分を分析するために利用されることができる。他の場合では、CIDは、ペプチド領域を配列決定するために使用されることができる。
【0005】
電子移動解離(ETD)およびHot EC等の種々の形態の電子捕捉解離(ECD)を含み得る電子ベースの解離(本明細書では、一般的に、ExDと称される)が、分子のペプチド部分の配列決定およびグリコシル化の部位の同定、例えば、単糖類の結合の部位(例えば、2、3、4、または6位)の決定を含み得る、種々の目的のために使用されることができる。後者の場合では、グリコシル化の部位の同定は、典型的には、酵素切断の使用によって、ペプチドから放出されたグリカンに対してのみ実施されることができる。これらの電子ベースの解離方法は、糖環の環間切断を実施し、これは、結合位置が後続分析において決定されることを可能にする。結合位置の同定は、無傷のグリコペプチドに対して実施される電子ベースの解離方法が、グリカン環ではなく、ペプチド鎖を優先的に解離するため、グリコペプチド自体では利用されることができない(例えば、酵素切断を通したペプチドからのグリカンの事前分離が存在しない)。
【0006】
したがって、簡略化された様式においてペプチド配列、グリコシル化部位、グリカン成分、および各単糖類の結合を同定することを含み得る、より徹底的な様式でグリコペプチドを特性評価することが可能である技法および装置を有することが、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要約)
種々の実施形態によると、第1の四重極質量フィルタと、第1の四重極質量フィルタからイオンを受け取るためのイオンガイドの多重極ロッドセットとを備える、質量分析計分析のためのシステムが、説明され、多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合される。本システムはまた、多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために多重極ロッドセットの一方の端部に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、イオンガイドのレンズ電極と、電子捕捉解離または電子移動解離を実施するように適合される、ExDデバイスであって、ExDデバイスの入射口が多重極ロッドセットと対向するレンズ電極の他方の側上に配置されるように位置付けられる、ExDデバイスとを備える。加えて、質量分析器が、ExDデバイスからイオンを受け取るためにExDデバイスの出射口に位置付けられる。多重極ロッドセットおよびレンズ電極と通信するプロセッサが、多重極ロッドセット内に閉じ込められるバンドパス質量範囲のイオンを抽出するために、同時に、半径方向双極DC電圧を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加する。いくつかの実施形態では、質量分析器は、飛行時間質量分析計、イオントラップ、または1つ以上の四重極質量フィルタを備えることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、ExDデバイスは、2つのモードのうちの少なくとも1つにおいて動作し、1つのモードにおいて、ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、第2のモードにおいて、ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する。
【0009】
種々の実施形態によると、1つ以上のグリコペプチドを含有するサンプルを分析する方法が、説明され、本方法は、サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成するステップと、質量フィルタ内で1つ以上のグリコペプチドイオンを単離するステップと、イオンガイドの多重極ロッドセット内で単離されたグリコペプチドイオンを断片化するステップであって、多重極ロッドセットは、入射口端と、出射口端とを有し、入射口端は、質量フィルタから断片化されたグリコペプチドイオンを受け取り、多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合され、イオンガイドは、多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために多重極ロッドセットの出射口端に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、レンズ電極を有する、ステップと、同時に、半径方向双極DC電圧を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加することによって、イオンガイドの出射口端からExDデバイスの中へ断片化グリコペプチドイオンのバンドパス範囲のイオンを抽出するステップと、ExDデバイス内のバンドパス範囲のイオンの電子解離反応または電子移動反応を実施し、ExD生成イオンを形成するステップと、ExD生成イオンを質量分析するステップとを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成するステップは、例えば、グリコペプチドをナトリウム塩と反応させるステップを含み得る、1つ以上のグリコペプチドを金属化するステップを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、バンドパス範囲のイオンを抽出するステップは、同時に、半径方向双極DC電圧を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加することによって実施され、半径方向双極DC電圧およびAC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、バンドパス範囲のイオンを抽出するステップは、同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加することによって実施され、RFトラッピング電圧振幅およびAC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される。
【0013】
種々の実施形態では、サンプル中のグリコペプチドを分析する方法が、説明され、これは、質量フィルタを提供するステップと、イオンガイドの多重極ロッドセットを提供するステップと、多重極ロッドセットの下流に位置付けられるExDデバイスを提供するステップであって、ExDデバイスは、2つのモードのうちの少なくとも1つにおいて動作するように適合され、1つのモードにおいて、ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、第2のモードにおいて、ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する、ステップと、ExDデバイスの下流に位置付けられる質量分析器を提供するステップと、多重極ロッドセットとExDデバイスとの間に位置付けられるレンズ電極を提供するステップと、サンプルをイオン化し、金属化サンプルイオンを形成するステップと、金属化サンプルイオンを質量フィルタに移送するステップと、事前選択されたm/z範囲を有するグリコペプチドイオンをイオンガイドの多重極ロッドセットの中に選択的に移送するように質量フィルタを動作させるステップと、衝突セルとして動作するように多重極ロッドセットを構成し、衝突セルが第1の解離エネルギーにおいて動作し、ペプチド断片の形成を引き起こし、形成されたペプチド断片をExDデバイスを通して質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するようにExDデバイスを構成し、質量分析器内のペプチド断片を分析するステップと、グリカン断片の形成を引き起こすように第2の解離エネルギーにおいて衝突セルとして動作するように多重極ロッドセットを構成し、第2の解離エネルギーは、第1の解離エネルギーよりも高く、形成されたペプチド断片をExDデバイスを通して質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するようにExDデバイスを構成し、質量分析器内のグリカン断片を分析するステップとを含む。本方法はまた、同時に、半径方向双極DC電圧を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加することによって、多重極ロッドセットからExDデバイスの中へバンドパス範囲のグリカン断片イオンを抽出し、バンドパス範囲のグリカン断片は、事前選択された範囲のm/z値によって定義され、電子移動反応デバイスまたは電子解離デバイスとして動作するようにExDデバイスを構成し、バンドパス範囲のグリカン断片イオンに対してExD反応を実施し、ExD生成イオンを形成するステップと、ExD生成イオンを質量分析するステップとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記の方法およびシステムに説明されるExDは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列される、電極の第1のセットであって、電極の第1のセットの該第1の区画は、該第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで該第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、該近位入口端は、イオンガイドの出射口端からバンドパス範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、その少なくとも第1の区画が、第1の経路の第2の部分を画定するように、第1の中心軸を中心として四重極配向において配列される、電極の第2のセットであって、電極の第2のセットの該第1の区画は、近位端から遠位出口端まで該第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が電極の第2のセットの近位端と電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、電極の第1のセットの遠位端から離間され、該横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、電子が該交差領域に向かって該横方向経路を通して進行するように、第2の中心軸に沿って該複数の電子を導入するために第2の経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、DCおよびRF電圧を電極の該第1および第2のセットに提供し、第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するための1つ以上の電源と、第2の中心軸に平行な方向において、および該方向上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される該DCおよびRF電圧を制御するためのコントローラであって、横方向経路内のバンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が電子と相互作用し、解離し、ExD生成イオンを形成するように、横方向経路において、電子源が複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラとを備える。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
質量分析計分析のためのシステムであって、
第1の四重極質量フィルタと、
イオンガイドの多重極ロッドセットであって、前記多重極ロッドセットは、前記第1の四重極質量フィルタからイオンを受け取り、前記多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合される、多重極ロッドセットと、
前記イオンガイドのレンズ電極であって、前記レンズ電極は、前記多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために前記多重極ロッドセットの一方の端部に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、レンズ電極と、
ExDデバイスであって、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施するように適合され、前記ExDデバイスは、前記ExDデバイスの入射口が前記多重極ロッドセットと対向する前記レンズ電極の他方の側上に配置されるように位置付けられる、ExDデバイスと、
質量分析器であって、前記質量分析器は、前記ExDデバイスからイオンを受け取るために前記ExDデバイスの出射口に位置付けられる、質量分析器と、
プロセッサであって、前記プロセッサは、前記多重極ロッドセット内に閉じ込められるバンドパス質量範囲のイオンを抽出するために、前記多重極ロッドセットおよび前記レンズ電極と通信し、同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、プロセッサと
を備える、システム。
(項目2)
前記質量分析器は、飛行時間質量分析計を備える、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記質量分析器は、イオントラップを備える、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記質量分析器は、第2の四重極質量フィルタを備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記ExDデバイスは、2つのモードのうちの少なくとも1つにおいて動作し、1つのモードにおいて、前記ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、前記第2のモードにおいて、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記ExDデバイスは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記第2の経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記方向上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が前記電子と相互作用し、解離し、ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、項目5に記載のシステム。
(項目7)
1つ以上のグリコペプチドを含有するサンプルを分析する方法であって、前記方法は、
前記サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成することと、
質量フィルタ内で1つ以上のグリコペプチドイオンを単離することと、
イオンガイドの多重極ロッドセット内で前記単離されたグリコペプチドイオンを断片化することであって、前記多重極ロッドセットは、入射口端と、出射口端とを有し、前記入射口端は、前記質量フィルタから断片化されたグリコペプチドイオンを受け取り、前記多重極ロッドセットは、半径方向無線周波数(RF)トラッピング電圧および半径方向双極直流(DC)電圧を受け取るように適合され、前記イオンガイドは、レンズ電極を有し、前記レンズ電極は、前記多重極ロッドセットによって閉じ込められたイオンを抽出するために前記多重極ロッドセットの出射口端に位置付けられ、軸方向トラッピング交流(AC)電圧およびDC電圧を受け取るように適合される、ことと、
同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって、前記イオンガイドの出射口端からExDデバイスの中へ前記断片化グリコペプチドイオンのバンドパス範囲のイオンを抽出することと、
前記ExDデバイス内の前記バンドパス範囲のイオンの電子解離反応または電子移動反応を実施し、ExD生成イオンを形成することと、
前記ExD生成イオンを質量分析することと
を含む、方法。
(項目8)
前記サンプルをイオン化し、グリコペプチドイオンを形成することは、前記1つ以上のグリコペプチドを金属化することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記金属化することは、前記グリコペプチドをナトリウム塩と反応させることを含む、項目2に記載の方法。
(項目10)
前記バンドパス範囲のイオンを抽出することは、同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって実施され、前記半径方向双極DC電圧および前記AC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記バンドパス範囲のイオンを抽出することは、同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって実施され、前記RFトラッピング電圧振幅および前記AC電圧は、事前選択されたm/z値の範囲を有するグリカン断片のみを抽出するように選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記ExDは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記第2の経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記方向上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が前記電子と相互作用し、解離し、ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、項目1に記載の方法。
(項目13)
サンプル中のグリコペプチドを分析する方法であって、
質量フィルタを提供することと、
イオンガイドの多重極ロッドセットを提供することと、
前記多重極ロッドセットの下流に位置付けられるExDデバイスを提供することであって、前記ExDデバイスは、2つのモードのうちの少なくとも1つにおいて動作するように適合され、1つのモードにおいて、前記ExDデバイスは、イオンガイドとして機能し、前記第2のモードにおいて、前記ExDデバイスは、電子捕捉解離または電子移動解離を実施する、ことと、
前記ExDデバイスの下流に位置付けられる質量分析器を提供することと、
前記多重極ロッドセットと前記ExDデバイスとの間に位置付けられるレンズ電極を提供することと、
前記サンプルをイオン化し、金属化サンプルイオンを形成することと、
前記金属化サンプルイオンを前記質量フィルタに移送することと、
事前選択されたm/z範囲を有するグリコペプチドイオンをイオンガイドの前記多重極ロッドセットの中に選択的に移送するように前記質量フィルタを動作させることと、
衝突セルとして動作するように前記多重極ロッドセットを構成し、前記衝突セルが第1の解離エネルギーにおいて動作し、ペプチド断片の形成を引き起こし、前記形成されたペプチド断片を前記ExDデバイスを通して前記質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記質量分析器内の前記ペプチド断片を分析することと、
グリカン断片の形成を引き起こすように第2の解離エネルギーにおいて衝突セルとして動作するように前記多重極ロッドセットを構成し、前記第2の解離エネルギーは、前記第1の解離エネルギーよりも高く、前記形成されたグリカン断片を前記ExDデバイスを通して前記質量分析器に移送するように、イオンガイドとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記質量分析器内の前記グリカン断片を分析することと、
同時に、半径方向双極DC電圧を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加する、または同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を前記多重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧を前記レンズ電極に印加することによって、前記多重極ロッドセットから前記ExDデバイスの中へバンドパス範囲のグリカン断片イオンを抽出し、前記バンドパス範囲のグリカン断片は、事前選択された範囲のm/z値によって定義され、電子移動反応デバイスまたは電子解離デバイスとして動作するように前記ExDデバイスを構成し、前記バンドパス範囲のグリカン断片イオンに対してExD反応を実施し、ExD生成イオンを形成することと、
前記ExD生成イオンを質量分析することと
を含む、方法。
(項目14)
前記ExDは、
電極の第1のセットであって、前記電極の第1のセットは、その少なくとも第1の区画が第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第1のセットの前記第1の区画は、前記第1の中心軸に沿って延在する第1の経路の第1の部分を画定するように、近位入口端から遠位端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記近位入口端は、前記イオンガイドの出射口端から前記バンドパス範囲のイオンを受け取るためのものである、電極の第1のセットと、
電極の第2のセットであって、前記電極の第2のセットは、その少なくとも第1の区画が、前記第1の経路の第2の部分を画定するように、前記第1の中心軸を中心として四重極配向において配列され、前記電極の第2のセットの前記第1の区画は、近位端から遠位出口端まで前記第1の中心軸に沿って軸方向に延在し、前記電極の第2のセットの近位端は、横方向経路が前記電極の第2のセットの近位端と前記電極の第1のセットの遠位端との間に延在するように、前記電極の第1のセットの遠位端から離間され、前記横方向経路は、第1の軸方向端から第2の軸方向端まで、前記第1の中心軸に実質的に直交する第2の中心軸に沿って延在し、交差領域において前記第1の経路と交差する、電極の第2のセットと、
電子源であって、前記電子源は、電子が前記交差領域に向かって前記横方向経路を通して進行するように、前記第2の中心軸に沿って前記複数の電子を導入するために前記第2の経路の第1および第2の軸方向端のうちの1つに近接して配置される、電子源と、
1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、DCおよびRF電圧を前記電極の第1および第2のセットに提供し、前記第1および横方向経路のそれぞれにおいて電場を生成するためのものである、1つ以上の電源と、
磁場源であって、前記磁場源は、前記第2の中心軸に平行な方向において、および前記方向上で静的磁場を生成するように構成および適合される、磁場源と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記電極の第1および第2のセットのそれぞれに印加される前記DCおよびRF電圧を制御するためのものであり、前記コントローラは、前記横方向経路内の前記バンドパス範囲のイオンの少なくとも一部が前記電子と相互作用し、解離し、ExD生成イオンを形成するように、前記横方向経路において、前記電子源が複数の電子をそれに沿って導入する間に、RF四重極場を生成するように構成される、コントローラと
を備える、項目1に記載の方法。
【0015】
当業者は、下記に説明される図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、いかようにも本教示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本教示の実施形態による、例示的装置を描写する。
【
図2】
図2は、本教示の例示的実施形態のより詳細な断面図を描写する。
【
図3A】
図3Aは、本教示の実施形態において使用される、例示的ExDデバイスの構成の断面図を描写する。
【
図3B】
図3Bは、本教示の実施形態における、ExDデバイスの軸方向端の例示的実施形態を描写する。
【
図4】
図4は、本教示の例示的実施形態における、グリコペプチドを特性評価するために使用される方法のフローパスを描写する。
【
図5】
図5は、本教示の実施形態による、グリコペプチドから取得される断片の例示的カスケードを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態が詳細に説明される前に、当業者は、本発明が、その用途において、以下の詳細に記載される構造の詳細、構成要素の配列、およびステップの配列に限定されないことを理解するであろう。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実践または実行されることが可能である。また、本明細書で使用される語句および専門用語は、説明の目的のためであり、限定として見なされるべきではないことを理解されたい。
【0018】
(実施形態の詳細な説明)
当業者は、本明細書に説明されるシステムおよび方法が、非限定的例示的実施形態であり、本出願人の開示の範囲が請求項によってのみ定義されることを理解するであろう。本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本出願人の教示は、そのような実施形態に限定されることを意図していない。対照的に、本出願人の教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。一例示的実施形態と関連して例証または説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられてもよい。そのような修正および変形例は、本出願人の開示の範囲内に含まれることを意図している。
【0019】
ここで
図1を参照すると、本教示の実施形態を描写する、例示的システム100が描写される。特性評価される1つ以上のグリコペプチドを含有する、または含有していると疑われるサンプル105が、1つ以上のグリコペプチドイオンを作製するためにイオン化源110内でイオン化される。イオン化源は、当技術分野で公知である任意の源であり得る。種々の実施形態では、好適なイオン源は、限定ではないが、エレクトロスプレーイオン源(ESI)、電子衝撃源および高速原子衝撃源、大気圧化学イオン化源(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)源、またはマトリクス支援レーザ脱離源(MALDI)を含むことができる。イオン化源は、好ましくは、グリコペプチドをイオン化するように選定されることができる。好ましい方法では、エレクトロスプレーイオン化が、利用される。
【0020】
いくつかの実施形態では、グリコペプチドは、アルカリ金属電荷試薬またはアルカリ土類金属電荷試薬によってイオン化される。実施例として、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含み得るイオンの群から選定されることができる。好ましい実施形態では、金属カチオンは、ナトリウムである。ナトリウム化グリカンは、概して、プロトン化されたものよりも安定し、その結果、特に、グリカン結合分析を実施するときに好ましい。そのようなナトリウム化は、グリコペプチド溶液に塩として少量のNa+イオンを添加することによって実施されることができる。そのような添加される試薬の実施例は、炭酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムを含むことができる。
【0021】
イオン化後、グリコペプチドイオンは、質量フィルタ115を通過させられる。質量フィルタは、タンデム質量分析計システムにおける第1のステージ(Q1)として機能し、本システムは、本明細書に説明される教示に従って修正される。質量フィルタ115は、所定のm/z範囲を有する基準に適合しないイオンを除去するように機能し、それによって、あるイオンのみが下流プロセスを通過することを可能にする。質量フィルタ115は、伝統的に、これに印加されるRFおよびDC電圧を有し、イオンをフィルタリングするその能力がマシュー方程式によってモデル化される、四重極フィルタである。好ましい実施形態では、質量フィルタ115は、四重極ロッドのセットを備えるが、質量フィルタという用語は、イオンを単離する効果を生産するためにイオンをフィルタリングすることが可能である任意の質量分析計タイプデバイスを網羅することを意図することを理解されたい。例えば、質量フィルタは、イオンを閉じ込め、あるm/z値を有するイオンを走査して除外するように機能するイオントラップデバイスを備えてもよい。質量フィルタはまた、パルス化様式であるm/z値を有するイオンを単離する飛行時間(TOF)質量分析計を備えてもよい。
【0022】
いったんイオンがフィルタリングされると、それらは、本明細書の教示に従って解離デバイスに入射する。解離デバイス119は、本明細書に説明されるように構成される多重極イオンガイド120およびExDデバイス125を備えることができる。いくつかの実施形態では、多重極イオンガイド120は、タンデム質量分析計のQ2領域と類似する様式で動作し、衝突セルとして動作する四重極イオンガイドの形態をとってもよい。衝突セルは、ガスで充填され、複数の低エネルギー衝突が起こるように十分に高い圧力および電圧に維持され、これは、親イオンを断片に分解するイオンの衝突誘発解離(CID)を誘発する。衝突セルに提供されるエネルギーおよび利用されるガスに応じて、本発明のある実施形態では、多重極イオンガイド120は、ペプチドからグリカンを分離する、ペプチドを断片に分解する、および/またはグリカンをその成分糖に分解するように動作する。
【0023】
解離デバイス119はまた、衝突セルとして作用する多重極イオンガイド120からイオンを受け取り、電子を流入イオンと反応させるように機能する、ExDデバイス125を備える。好ましい実施形態では、ExDデバイス125は、ExDデバイスまたはイオンガイドのいずれかとして動作することが可能である。イオンガイドとして動作するとき、多重極イオンガイド120からExDデバイス125に入射するイオンは、反応を伴わずにExDデバイス125の出射口を通過させられる。ExDデバイス125として本デバイスを動作させるとき、利用されている電子は、所望される電子関連解離反応のタイプに応じて、約1eV~15eVのエネルギーに及び得る。ExDデバイス125において起こる電子ベースの反応は、ペプチド断片を生成し、グリカンの環間切断を実施するように機能することができる。
【0024】
多重極イオンガイド120とExDデバイス125との間に、バンドパスフィルタリングを通して多重極ロッド120によって閉じ込められるイオンを抽出するように構成されるレンズ電極121が、配置される。本バンドパスフィルタリング技法は、例えば、PCT公開出願第WO 2016/020789号(参照することによって組み込まれる)に説明されている。多重極ロッドセット120は、半径方向RFトラッピング電圧および/または半径方向双極DC電圧を受け取るように構成される。レンズ電極121は、軸方向トラッピングAC電圧および/またはDC電圧を受け取るように構成されることができる。バンドパス範囲のイオンは、半径方向双極DC電圧を多重極ロッド120に印加し、同時に軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極121に印加することによって抽出されることができる。代替として、半径方向RFトラッピング電圧振幅が、多重極ロッドセット120に印加されることができ、軸方向トラッピングAC電圧が、同時にレンズ電極121に印加されることができる。
【0025】
ExDデバイス125から出射するイオン/断片/ExD生産物は、次いで、質量分析計130内で分析される。いくつかの実施形態では、質量分析計130は、タンデム質量分析計における四重極フィルタおよび検出器から成る最終質量フィルタ(Q3)であり得る。他の実施形態では、本最終分析計は、飛行時間質量分析計またはイオントラップであってもよい。好ましい実施形態では、本最終ステージは、TOFデバイスである。
【0026】
示されるように、システム100は、加えて、その動作を制御するようにシステム100の要素のうちの1つ以上のものに動作可能に結合される、コントローラ140を含むことができる。実施例として、コントローラ140は、情報を処理するためのプロセッサ、質量スペクトルデータを記憶するためのデータ記憶装置、および実行される命令を含むことができる。下記に詳細に議論され、概して、当技術分野で公知であり、本教示に従って修正されるように、コントローラ140は、イオン源110によるイオンの生成およびExDセル125内に位置する電子源による電子の生成を制御する、および/または、実施例として、その電極への1つ以上のRF/DC電圧の印加を介して、質量フィルタ115、多重極イオンガイド120、レンズ電極121、ExDセル125、および質量分析計130の中への、およびそれを通したイオンの移動および/またはイオンのフィルタリングを制御することができる。コントローラ140は、単一の構成要素として描写されるが、1つ以上のコントローラ(局所または遠隔のいずれか)が、システム100を本明細書に説明される方法のうちのいずれかに従って動作させるように構成され得ることを理解されたい。加えて、コントローラ140はまた、ディスプレイ(例えば、情報をコンピュータユーザに表示するためのブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD))等の出力デバイスおよび/または情報およびコマンド選択をプロセッサに通信するための英数字および他のキーおよび/またはカーソル制御を含む入力デバイスと動作可能に関連付けられることができる。本教示のある実装と一貫して、コントローラ140は、例えば、データ記憶装置内に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行する、または記憶デバイス(例えば、ディスク)等の別のコンピュータ可読媒体からメモリを読み込むことができる。1つ以上のコントローラは、ハードウェアまたはソフトウェア形態をとることができ、例えば、コントローラ140は、システム100を本明細書に別様に説明されるように動作させるように実行され得る、その中に記憶されるコンピュータプログラムを有する好適にプログラムされたコンピュータの形態をとってもよいが、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに限定されない。例えば、コントローラ140と関連付けられる種々のソフトウェアモジュールは、
図2、3、4、5を参照して下記に説明される例示的方法を実施するためにプログラマブル命令を実行することができる。プロセッサおよび関連付けられる他のコンポーネントは、システム100の種々の他の部分から受信された情報を表示または解釈するために利用されてもよい。例えば、本システムは、本明細書に説明される例示的コンポーネントを利用する方法および教示を実施することからもたらされる質量スペクトルおよび/またはExDスペクトルを表示してもよい。
【0027】
図1に示されるように、例示的システム100は、加えて、RF、AC、および/またはDC成分を伴う電位を種々のコンポーネントの電極に印加し、協調方式で、および/または本明細書に別様に議論されるように種々の異なる動作モードのためにシステム100の要素を構成するように、コントローラ140によって制御され得る1つ以上の電力供給源(例えば、DC電力供給源141およびRF電力供給源142)を含むことができる。
【0028】
ここで
図2を参照すると、質量フィルタとして動作する第1の四重極205に入射するイオン源(図示せず)からのイオンを含む、質量分析計システム200を描写する、本教示の実施形態が、描写される。第1の四重極205は、共通軸の周囲で四重極配列において配列される一連の4つのロッド210から成る。四重極ロッドは、RF源およびDC源(図示せず)に取り付けられる。マシュー方程式に従って好適なRFおよびDC電圧を選択することによって、特徴的なm/z値を有するあるイオンの運動は、安定した軌跡で四重極205を通過させられることができる一方、他のイオンは、四重極から半径方向に射出させられるか、またはそれらが除去されるロッド210に接触させられるかのいずれかである。
【0029】
四重極ロッド220の第2のセットが、第1の四重極215の下流に配置される。四重極ロッド220の本第2のセットは、衝突セル225として動作し、RF電圧源および双極DC電圧源230に取り付けられる。四重極ロッド220の第2のセットの下流に位置付けられるものは、それに取り付けられるAC電圧およびDC電圧源236を有するレンズフィルタ235である。四重極ロッド220の本第2のセットは、殆どのイオンが妨げられずに通過することを可能にするイオンガイドとして作用することができる、または代替として、四重極ロッド220の第2のセットは、RF電圧源および双極DC電圧源の結合によって動作され得るバンドパスフィルタとして動作され、ある範囲内のm/z比を有するイオンが通過させられる、本教示によるバンドパスフィルタを構築してもよい。
【0030】
レンズフィルタ235の下流に、ExDデバイス245が、配置される。ExDデバイス245は、イオンが本デバイスを通過させられるイオンガイドとして、または電子源236が、ECDまたはETD等を誘発するように、イオンに直交する経路に沿って流入イオンに電子を導入するExDデバイスとして動作されることができる。ExDデバイス236の一例示的実施形態が、2014年12月4日に公開されたPCT公開出願第WO 2014/191821号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に描写されている。ExDデバイス245は、イオンが四重極イオンガイドから進行する第1の経路を部分的に画定する、イオン経路の周囲に四重極配列において配列される第1の一連の4つのL形電極247を備える(4つの電極のうちの2つのみが、
図2に描写される)。相互に略平行である4つのL形電極のそれぞれの第1の部分は、ExDセル245において四重極ロッドとして機能する。4つのL形電極のそれぞれの第2の部分は、第1の部分に略垂直であり、イオン経路から離れるように半径方向に延在する。これらの4つのL形電極はそれぞれ、次いで、L形電極247の第1のセットから離間されるL形電極248の第2のセット(それらのうちの2つのみが描写される)によって、イオン経路を横切る平面を横断して反転される。第1のセットと同様に、L形電極248の第2のセットはそれぞれ、相互に略平行であり、L形電極の第1のセットの第1の部分に平行である第1の部分を有する。ともに、L形電極のこれらの第1の部分は、イオンが多重極イオンガイド225(例えば、四重極)から質量分析器260まで横断するためのイオンガイドおよび経路を部分的に画定する。L形電極の第1のセット247および第2のセット248の第2の部分もまた、相互に略平行であり、第1の経路に略直交する第2の経路を画定する。第2の経路は、電子がExDデバイス245に入射するための経路を提供する。L形電極はそれぞれ、RF場の生成を可能にする好適な電源(図示せず)からRF電圧信号を受信するように構成される。隣接するL形電極に印加されるRF電圧の極性は、電場において反対である。これは、第WO 2014/191821号に説明されるように、電子の焦点外れを可能にする。電子は、フィラメント(タングステン、トリエーテッドタングステン、およびその他)または電子エミッタ(Y2O3カソード)であり得る、電子源236によって生成される。
図2に描写されるように、電子源236は、第2の経路の1つの入射口249の近傍に配置されるが、しかしながら、代替入射口250もまた、本明細書に説明されるExDデバイスの構成によって形成される。付加的電子源が、本代替入射口250に位置付けられてもよい。ゲート電極251もまた、電子/イオンの入射および/または出射を制御するためにこれらの入射口に位置付けられる。第2の経路に略平行であり、そしてその上の(例えば、電子の経路に沿った)静的磁場をExDデバイス内に生成する磁石(図示せず)が、ExDデバイス245内に位置付けられる。
【0031】
ゲート電極252が、ExDデバイスからのイオンの出射を制御するために、ExDセル245の第1の経路の出射口に位置付けられる。ExDデバイスおよびゲート電極の下流に位置付けられるものは、質量分析計システム260(例えば、四重極、TOF、トラップ等)である。
【0032】
ここで
図3Aを参照すると、例示的システム300の部分図および本教示の種々の側面に従って
図1の例示的方法を実施するための概略図が、描写される。
図3Aに最良に示されるように、システム300は、概して、電子源330と、中心縦方向軸(A)および横方向軸(B)を画定するように配列される複数の電極を有するExDセル310とを含む。示されるように、システム300は、加えて、衝突セル(質量フィルタ(図示せず)とExDセル310との間に配置される)として作用する上流四重極ロッドセットQ2 301と、質量分析器340として動作する下流四重極ロッドセットQ3(ExDセル310と検出器との間に配置される)とを含むことができる。種々の側面では、ExDセル310は、チャンバ内に(例えば、準大気圧において)格納され、ヘリウム(He)または窒素(N2)等のガスが、ExDセル310内の前駆体イオンの移動を緩慢にし、相互作用領域内のイオンと電子との間の相互作用時間を延長させるように添加されることができる。典型的には、冷却ガスの圧力は、非限定的実施例として、10
-2~10
-4トルであり得る。いくつかの実施形態では、ExDセル310および衝突セルQ2 301は、低圧チャンバ内でともに格納され、実質的に同一の圧力にある。加えて、永久磁石等の磁場源(図示せず)が、例えば、矢印(B)によって図式的に描写されるように、横方向通路316に平行であり、その上の静的磁場を生成するように構成されることができる。磁場はまた、任意の他の磁場生成源によって生成されることができ、また、第2の経路の第2の中心軸(B)に平行であり、それと一直線の磁場を生成するように機能する電磁石、ネオジム磁石、または同等物を含むことができる。磁束密度は、電子ビームの集束を引き起こすための磁場を実装することが可能な任意の密度であり得、例えば、最大1.5T、好ましくは、約0.1~1.0Tに及ぶことができる。より高い密度を伴う磁石は、電極対からさらに離れて位置付けられることができる。0.1Tの磁場(矢印Bによって示されるような)は、電子方向の経路に平行であり、それに沿うように整合される。
【0033】
図2に描写される連続的L形電極(247、248)と異なり、ExDセル310は、軸方向通路および横方向通路をともに画定する電極の複数のセットを備える。具体的には、
図3Aは、それに印加される信号が上記に説明される例示的方法の間に相互に異なり得るように、
図3Bに示されるような第3(313a、313c)および第4のセット(314a、314d)からの隣接する電極のうちの1つから電気的に絶縁され、それとともに略L形状を形成する、電極311a-d(311aおよびbのみが
図3Aに描写されるが、
図3Bにより完全に描写される)を描写する。理解されるはずであるように、
図2に描写されるような連続的L形電極を形成するために、電極対(311a/313a、311b/314a、311d/314d、311c/313c)は、継合される。すなわち、例えば、中心縦方向軸に沿って延在する電極311aの部分および横方向軸に沿って延在する電極313aの部分は、常時、同一の電位において維持される。本配列によって、RF電圧の適切な印加(例えば、セット311d、314d内およびその間の各隣接する電極の相が相互に反対である正弦波RF電位)を伴うと、四重極場が、軸方向および横方向通路のそれぞれにおいて生成されることができる。
【0034】
図3Aに示されるように、例示的ExDセル310は、電極311-314の4つのセットを備え、そのそれぞれは、2つの軸のうちの1つを中心として四重極配向において配列される。すなわち、電極311-314の各セットは、それらの中心が正方形の角を形成し、その反対の極が電気的に接続され得る(例えば、典型的な四重極場に関して、隣接する電極の相が相互に反対である静的DC電位および正弦波RF電位の重ね合わせ)ように配列される4つの平行な伝導性ロッドまたは伸長電極を備える。具体的には、
図3Aに示されるように、4つの電極311a-dの第1のセット311は、軸方向通路の一部315aを画定するように、中心縦方向軸(A)を中心として配置される。電極の第1のセット311(a-d)は、それを通して上流サンプルイオン源(図示せず、例えば、Q1およびQ2を介する)によって生成された前駆体イオンがExDセル310内の遠位端に受け取られ得る、入口端からそれに沿って軸方向に延在する。4つの電極312a-d(その電極312aおよび312bのみが示される)の第2のセット312もまた、軸方向通路の第2の部分315bを画定するように、中心縦方向軸(A)を中心として配置される。示されるように、電極の第2のセット312は、横方向軸(B)が電極の第1のセット311の遠位端と電極の第2のセット312の近位端との間で延在するように、電極の第1のセット311から離間される。示されるように、電極の第2のセット312は、近位端から、それを通してイオンがExDセル310から、例えば、1つ以上の質量分析器340(例えば、出射レンズIQ3A 320bを介してQ3)または検出器に射出され得る遠位端まで延在する。加えて、電極313a-dの第3のセット313および電極314a-dの第4のセット314(各セットにおいて、4つの電極のうちの2つのみが示される)が、横方向軸(B)を中心として配置され、各セットは、中心縦方向軸(A)の対向する側上で四重極配向において配置される。本配列によって、第1のセット311の各電極は、概して、第3のセット313または第4のセット314の電極のうちの1つを伴うL形状を形成する一方、第2のセット312の各電極は、概して、第3のセット313または第4のセット314の電極を伴うL形状を形成する。したがって、示されるように、第1および第2のセット311、312は、少なくとも部分的に、軸方向通路を画定し、第3および第4のセット313、314は、少なくとも部分的に、交差領域317において軸方向通路315と交差する横方向通路316を画定する。
【0035】
第1、第2、第3、および第4のセットの電極は、種々の形状およびサイズを有し得るが、概して、適切なRF信号が各セットの電極に印加されると、各セットが囲繞する通路の一部の中に四重極場を生成するように構成されることが、当業者によって理解されるであろう。非限定的実施例として、各電極は、約3cmの範囲内の縦方向寸法(例えば、電極311a-dに関する中心縦方向軸(A)に沿った、そして電極313a-dに関する横方向軸(B)に沿った寸法)と、約5mm以上の範囲内の横方向寸法(例えば、幅または半径、すなわち、電極311a-dに関する中心縦方向軸(A)に垂直な、そして電極313a-dに関する横方向軸(B)に垂直な寸法)とを有することができる。
図3Bに示されるように、いくつかの側面では、各電極は、距離(2R)だけそのセット内のその対向する電極(例えば、電極311a-d毎の中心縦方向軸(A)を横断する非隣接電極)から半径方向に分離されることができる、Rは、約2mm~約10mmの範囲内である。
【0036】
継続して
図3Aを参照すると、ExDセル310はさらに、複数のレンズ320a-dを含むことができ、そのそれぞれは、それを通してイオンまたは電子が移送され得る中心オリフィスを有する伝導性板の形態であり得る。示されるように、レンズ320a-dは、上記に議論される電極の種々のセットの入口または出口端に近接して配置されることができる。例えば、レンズ320aは、それを通してイオンがExDセルに入射し得るイオン注入ポートとして機能することができ、レンズ320bは、それを通してイオン(例えば、下記に議論されるような生成イオン)が解離後にExDセル310から出射し得るイオン射出ポートとして機能することができる。本明細書に別様に議論されるように、RFおよび/またはDC電位が、ExDセル310内のイオンの移動を制御するために、種々のレンズ320a-dに印加されることができる。例えば、下記により詳細に議論されるように、種々のRFおよび/またはDC信号が、電極の間の空間の一部の中のイオンの軸方向トラッピングを促進するために、またはExDセル310の内外へのイオンの注入および射出を促進するために、イオン処理の種々の段階の間にレンズ320aおよび320bに印加されることができる。同様に、レンズ320cおよびレンズ320dは、横方向経路316内のイオンの出射を阻止するために、(例えば、適切なDC電圧の印加を介して)付勢されることができる。
【0037】
本教示の種々の側面では、Q1は、着目イオンおよび/または着目イオンの範囲を選択するように動作可能な従来の移送RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。実施例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードにおける動作のために好適なRF/DC電圧を提供されることができる。当業者によって理解されるであろうように、Q1の物理的および電気的性質を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータは、Q1が特定の前駆体イオン(例えば、特定の範囲内に該当するm/zを呈する)が大幅に摂動せずに四重極場を横断することを可能にするように選択されるm/z通過帯域を有する四重極場を確立する一方、通過帯域の外側に該当するm/z比を有するイオンが四重極場によって軌道減衰へ変質され得るように選択されることができる。本動作モードは、Q1のための1つの可能性として考えられる動作モードにすぎないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、RF専用スタビロッドのセットが、四重極の間のイオンの移動を促進するために、四重極ロッドセットの隣り合う対の間に提供されることができる。スタビロッドは、ブルベーカレンズとしの役割を果たすことができ、例えば、レンズがオフセット電位において維持される場合、隣接するレンズの近傍に形成されている場合がある任意のフリンジング場との相互作用に起因して、イオンが軌道減衰を受けることを防止することに役立つことができる。同様に、ExDセル310によって移送されるイオン(例えば、生成イオン)は、レンズ320bによって上流で境界され得る隣接する四重極ロッドセットQ3の中に通過することができる。当業者によって理解されるであろうように、Q3は、いくつかの様式で、例えば、走査RF/DC四重極として、四重極イオントラップとして、または線形イオントラップとして動作されることができる。
【0038】
本明細書に説明される教示は、単一の実験実行においてグリコペプチドイオンを特性評価するために利用されてもよく、すなわち、グリコペプチドペプチド配列、グリカン組成、およびグリカン結合鎖が、本システムを本明細書に説明されるような異なる様式で動作するように構成することによって、本明細書に説明される手順を使用する分析において取得されることができる。
【0039】
ここで
図4および5を参照すると、本教示の1つの実施形態を実行するために、本明細書に説明される手順および/またはシステムの動作を実証するフローチャートが、描写される。
【0040】
枠400では、好ましくは、ナトリウム化されているグリコペプチド分析物が、好適なイオン化プロセスを使用してイオン化を受ける。イオン化種は、Q1 405、例えば、第1の質量フィルタを通過し、これは、特徴的なm/z値を有するイオンを分離する。これは、ある範囲のm/z値を含むことができるが、好ましい実施形態では、特徴的なm/z値を有する単一のグリコペプチドイオンが、第1の質量フィルタ内で単離され、全ての他のイオンタイプは、半径方向に射出される、または別様にQ1から除去される。単離されたグリコペプチドは、次いで、Q2 410、例えば、本教示に従って修正される四重極衝突セルを通過し、これは、Q1 405から受け取られたフィルタリングされたグリコペプチドイオンに対して種々の動作を実施するように、いくつかの異なるモードにおいて動作する。
【0041】
1つのそのようなモードでは、四重極衝突セル410は、第1の解離エネルギーにおいて衝突セルとして第1のモード451において動作される。本第1の解離エネルギーは、グリコペプチドの衝突誘発解離がペプチド断片を形成するように実施されるほど十分に緩やかな条件を伴う。別のモード452では、四重極衝突セル410は、第2の解離エネルギーにおいて衝突セルとして動作され、第2の解離エネルギーは、第1の解離エネルギーよりも高い。本第2の解離エネルギーは、グリコペプチドの衝突誘発解離にグリカン断片を形成させる、より苛酷な条件において動作する。さらに別のモード453では、四重極衝突セル410の出射口に位置付けられるレンズ電極が、同時に、半径方向双極DC電圧を四重極衝突セル410を構成する四重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加するような方法で構成される。代替として、同時に、半径方向RFトラッピング電圧振幅を四重極ロッドセットに印加し、軸方向トラッピングAC電圧をレンズ電極に印加することができる。これらのモードでは、四重極ロッドセットおよび出射レンズの作用の組み合わせは、付加的質量フィルタを組み込む必要性なく、特定のm/z値を有するバンドパス範囲の断片を抽出するための二次フィルタとして動作する。特に、これは、四重極衝突セルからグリカン断片の範囲を選択的に抽出するように動作する。
【0042】
レンズ電極を通過した四重極衝突セル410から除去されたイオンは、本教示の別の場所により詳細に説明されるExDデバイス415に入射する。ExDデバイス415は、いくつかの異なるモードにおいて動作する。イオンの数およびタイプに応じて、ExDデバイス415は、2つのモードにおいて動作されることができる。第1のモード462では、ExDデバイスは、処理/検出のために下流の四重極衝突セル410からイオンを移動させるイオンガイドとして動作する、または第2のモード461/463では、ExDデバイスは、流入イオンの電子ベースの解離を実施する。これらのモードの機能は、本明細書に記載されるような元々のグリコペプチド分子の種々の特徴を照合する目的のためのものである。
【0043】
ExDデバイスのように使用されるとき、第1のExDモード461では、第1の解離エネルギー451において四重極衝突セル410を動作させている間に生成されたペプチド断片は、電子と反応させられ、これは、cおよびz断片が生成されるような様式でペプチド断片の断片化を引き起こす。これは、ペプチド配列、ペプチド鎖上のグリコシル化の部位、およびグリカン質量が同定されることを可能にする。第2のExDモード463では、グリカン断片を生成するために第2の解離エネルギー452において四重極衝突セル410を動作させているときに生成されるグリカン断片の抽出されたバンドパス範囲は、ExDプロセスを受けることができる。選択された条件においてこれらの断片に対して実施されたExDは、グリカン断片のグリカン環を環間切断し、断片を作製する単糖類上のグリカン結合位置の照合を可能にする付加的グリカン断片を生成する。
【0044】
モード462においてイオンガイドとして使用されるとき、ExDデバイスは、四重極衝突セル410内で生成されたイオンを、検出および分析のために質量分析計420(例えば、Q3/TOF/トラップ)に通過させる。このように、四重極衝突セル内で生成されたグリカン断片は、1つ以上の成分糖を有するグリカン鎖を含む。これらの鎖を質量分析することは、成分糖の全体的質量の決定を提供することができ、これは、グリカンの全体的構造の決定を可能にする。グリカン構造の具体的結合が、前述で説明されるExD分析に従って決定される。
【0045】
生成されたペプチド断片およびグリカン断片は、次いで、好適な質量分析計420内で質量分析される。これは、当技術分野で公知である任意の方法を使用することによって実施されることができ、四重極フィルタ、飛行時間質量分析計、またはイオントラップと結合される検出器を含むことができる。他の実施形態では、1つ以上の付加的処理ステップが、種々のステージの間でイオンを移動させる目的のために、本明細書に説明される方法に組み込まれることができる。
【0046】
ここで
図5を参照すると、本教示の方法および装置を利用してグリコペプチド分子が受ける種々のプロセスの描写が、示される。随意に、ナトリウム化される、グリコペプチド500は、グリカン501部分と、ペプチド502部分とを含む。グリコペプチド500が、グリコペプチドイオンがECDデバイスを通過させられるCIDが殆どまたは全く起こらない、四重極衝突セル内のより低いエネルギーの解離エネルギー505を受ける。代替実施形態では、最小解離エネルギーが、印加され、四重極衝突セルは、イオンガイドとして動作する。グリコペプチドイオンは、元々のペプチド502のcおよびz断片550を生成するExD反応を用いた種々の方法において、ペプチド断片を選択的に切断するECDデバイスを通過する。これらの断片550は、プロセッサによって処理されるとき、ペプチド502の順序を配列決定するために使用されることができる。より低いエネルギー505の衝突誘発解離もまた、グリカン部分の全体的質量およびグリカン部分501の個々の成分の推定を提供するために使用され得る、比較的に無傷のグリカン部分501を生産する。
【0047】
より高いCIDエネルギー506(例えば、ペプチド配列分析において利用されるエネルギーよりも高い)を受けると、元々のグリコペプチド500は、成分部分に断片化させられる。ペプチド部分502は、ExD反応510と類似するプロセスを使用してペプチド鎖を配列決定するために使用され得る、比較的に無傷のペプチド断片551を生成する。より高いCIDエネルギー506下のグリカン部分501は、元々のグリカン501の個々のグリカン単糖類単位または部分鎖から成り得るグリカン断片552に断片化する。CIDプロセス506後に生成されるグリカン断片552は、本教示によるバンドパスフィルタを利用して選択され、ExDデバイスに移送されてもよく、グリカンは、より小さいグリカン鎖上の個々のグルコース単位に対して環間切断解離を実施するExD反応511を受け、環間グリカン断片部分555を形成する。これらの断片部分555の質量分析は、単糖類を配列決定するために利用されることができ、より具体的には、環間切断断片は、元々のグリカン分子の構造を照合するために利用され得る環結合(すなわち、その隣り合うものに結合される特定の単糖類上の位置)の決定を可能にする。別の実施形態では、より低いか、またはより高いかのいずれかのCIDエネルギー506の使用からもたらされるグリカン部分501は、バンドパスフィルタを利用して選択され、次いで、イオンガイドとしてのみ機能するExDデバイスを通過させられることができる。このように、具体的に無傷なグリカンであるイオンが、質量分析されるために通過し、その分析は、グリカン構造の全体的質量の測度を提供する。グリカン構造が成分糖の単純な組み合わせであると仮定され得るため、グリカン部分の大まかな構造の推定された再構築が、プロセッサによって実行されることができる。
【0048】
より効率的なExD反応が、ExDデバイスを通して進行するイオンが、電子へのそれらの暴露を延長するために本デバイス内に瞬間的に閉じ込められる、準フロースルー方法を利用することによって実施されることができる。ExDデバイス出射レンズは、閉位置と開位置との間で、1つのモードにおいて、イオンがExDデバイス内に蓄積し始め、電子への暴露時間の増加を可能にし、第2のモードにおいて、出射レンズが開放され、イオンが本デバイスから出射ゲートを通して射出されるように発振することができる。代替実施形態では、ExDデバイスのイオン入射口端におけるレンズもまた、ExDデバイスの中へのイオンの流入を制御するように開放および閉鎖してもよい。これの実施例が、第WO 2014/191821号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に例示されている。
【0049】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に限定されることを意図していない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0050】
さらに、種々の実施形態を説明する際、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして方法および/またはプロセスを提示している場合がある。しかしながら、本方法またはプロセスが、本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない範囲について、本方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも、可能性として考えられ得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に対する限定として解釈されるべきではない。加えて、本方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、記載される順序におけるそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まることを容易に理解することができる。