(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】反射により視認可能な光セキュリティ部品、そのような部品の製造方法、およびそのような部品を与えられた安全な文書
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221117BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20221117BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221117BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221117BHJP
G03H 1/02 20060101ALI20221117BHJP
B42D 25/328 20140101ALN20221117BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/00 Z
G02B5/20
G02B5/30
G03H1/02
B42D25/328
(21)【出願番号】P 2019572840
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2018064801
(87)【国際公開番号】W WO2018224512
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-02
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519435865
【氏名又は名称】スリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】プティトン、バレリー
(72)【発明者】
【氏名】チハ、ハリール
(72)【発明者】
【氏名】ピジョン、ヨラン エリ
(72)【発明者】
【氏名】トレ、ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、フランソワーズ
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】里村 利光
【審判官】石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0021660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0069360(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0259456(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023495(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0192897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/18
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の観測面の反射により裸眼で観測されることを目的とした光セキュリティ部品であって、
-誘電体材料から作られ第1の屈折率(n1)を有する第1の層と、
-前記第1の層の上にエッチングされた少なくとも1つの第1の回折構造(S1、S2)と、を備え、
-前記第1の回折構造は第1のパターンで形成され、
前記第1のパターンは、所定の配置方向(X)に互いに隣接して配置されたモジュールの組で形成され、
前記モジュールの組の各モジュールの前記配置方向(X)の最大幅は、300μmより小さく、
前記モジュールの組は、最小の数のモジュールを備え、
前記第1の回折構造の前記配置方向(X)の最小寸法は、1mmより大きく、
-前記モジュールの組の各モジュールは、第1のファセットの組を備えた浅浮き彫りを備え、
前記第1のファセットの組の形状は、反射によって視認可能な光学部品を模擬するように決定され、
前記光学部品は、少なくとも1つの凸状領域、および/または、少なくとも1つの凹状領域を備え、
前記光学部品は、前記配置方向(X)と直交する、傾斜の変化方向と呼ばれる方向(Y)に沿って移動したときのみ傾斜が変化する可変傾斜プロファイルを有し、
-
前記配置方向(X)に沿って隣接して配置された2つのモジュールに関し、前記傾斜の変化方向(Y)に沿った傾斜は、前記2つのモジュールの間で異なり、
前記光学部品は、前記配置方向(X)に平行なチルト軸周りのチルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示し、
当該動的視覚効果は、1つ以上の図形要素の、前記チルト軸に直交する軸に沿った動きを含むことを特徴とする光セキュリティ部品。
【請求項2】
前記モジュールの組は、第1のモジュールサブセットと、第2のモジュールサブセットとを備え、
-前記第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域を備えた光学部品を模擬することができ、
-前記第2のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を備えた光学部品を模擬することができ、
-前記第1のモジュールサブセットのモジュールは、前記第2のモジュールサブセットのモジュールと交互に配置され、
前記光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示し、
当該動的視覚効果は、2つの直線部分の交差を含むことを特徴とする請求項1に記載の光セキュリティ部品。
【請求項3】
前記モジュールの組は、少なくとも1つの第1のモジュールサブセットを備え、
-前記第1のモジュールサブセットのモジュールにより、光学部品を模擬することができ、
前記光学部品の各々は、少なくとも1つの第1の凹状領域または少なくとも1つの第1の凸状領域を備え、
前記第1の凹状領域または前記第1の凸状領域の各々は、前記配置方向に平行な平坦線を備え、
前記第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、前記平坦線は、前記傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置され、
前記光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示し、
当該動的視覚効果は、斜め直線部分の動きを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光セキュリティ部品。
【請求項4】
前記モジュールの組は、少なくとも1つの第1のモジュールサブセットを備え、
-前記第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの第1の領域を備えた光学部品を模擬することができ、
前記第1の領域は、前記第1のモジュールサブセットのすべてのモジュールに関し凹状であるか、または前記第1のモジュールサブセットのすべてのモジュールに関し凸状であり、
-前記第1のモジュールサブセットの少なくとも2つのモジュールは、異なる傾斜変化関数プロファイルを有し、
前記光学部品は、チルト運動に伴い、反射により、変形しながら動く図形要素の動的視覚効果を示すことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項5】
前記モジュールの組の少なくとも1つモジュールにより、前記傾斜の変化方向(Y)に沿って変化する傾斜プロファイルを持つ光学部品を模擬することができ、
前記傾斜プロファイルの傾斜は、前記配置方向(X)に平行な平坦線に関して対称であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項6】
前記モジュールの組の少なくとも1つモジュールにより、前記傾斜の変化方向(Y)に沿って変化する傾斜プロファイルを持つ光学部品を模擬することができ、
前記傾斜プロファイルの傾斜は、傾斜が相殺される平坦線に関して非対称であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項7】
前記モジュールの組の少なくとも1つモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域および少なくとも1つの凸状領域を備えた光学部品を模擬することができることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項8】
前記モジュールの組のモジュールの各々は、前記傾斜の変化方向(Y)に沿って実質的に一定である幅を持ち、
前記モジュールの少なくとも2つは異なる幅を持つことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項9】
前記モジュールの組の少なくとも1つのモジュールは、前記傾斜の変化方向(Y)に沿って変化する幅を持つことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項10】
少なくとも部分的に前記第1の層を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ第2の層(214)をさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項11】
少なくとも1つの第1の領域において、前記第1のパターンは、第2のパターンによって変形されて周期的な回折格子を形成し、
前記回折格子は、100nm以上700nm以下の1つまたは2つの周期の寸法を持ち、
前記回折格子は、前記第2の層が堆積した後、第1のスペクトル帯における共鳴フィルタを生成するように決定されることを特徴とする請求項10に記載の光セキュリティ部品。
【請求項12】
-前記第2の層の上に堆積した誘電体材料から作られ、第3の屈折率(n3)を有する第3の層をさらに備え、
-前記第2の層は、第2の屈折率(n2)を有する誘電体材料の薄層であり、
第2の屈折率(n2)と第1の屈折率(n1)との差、および第2の屈折率(n2)と第3の屈折率(n3)との差は、0.3以上であり、
-前記第2のパターンは、前記第2の層が堆積し前記第1の回折構造が前記第3の層によって封入された後、反射によるバンドパス共鳴フィルタを形成することを特徴とする請求項11に記載の光セキュリティ部品。
【請求項13】
-前記第2の層は、金属材料から作られた40nmより厚い薄層であり、
-前記第2のパターンは、反射によるバンド阻止共鳴フィルタを形成することを特徴とする請求項11に記載の光セキュリティ部品。
【請求項14】
前記第1の回折構造(S)は、認識可能な図形を形成する輪郭を持つことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の光セキュリティ部品。
【請求項15】
少なくとも1つの第1の観測面の反射により裸眼で観測されることを目的とした光セキュリティ部品の製造方法であって、
-第1の屈折率(n1)を有する材料から作られた第1の層をサポート層の上に堆積するステップと、
-少なくとも1つの第1の回折構造(S)を前記第1の層の上に形成するステップと、を備え、
・前記第1の回折構造は第1のパターンで形成され、
前記第1のパターンは、所定の配置方向(X)に互いに隣接して配置されたモジュールの組で形成され、
前記モジュールの組の各モジュールの前記配置方向(X)の最大幅は、300μmより小さく、
前記モジュールの組は、最小の数のモジュールを備え、
前記第1の回折構造の前記配置方向(X)の最小寸法は、1mmより大きく、
・前記モジュールの組の各モジュールは、第1のファセットの組を備えた浅浮き彫りを備え、
前記第1のファセットの組の形状は、反射によって視認可能な光学部品を模擬するように決定され、
前記光学部品は、少なくとも1つの凸状領域、および/または、少なくとも1つの凹状領域を備え、
前記光学部品は、前記配置方向(X)と直交する、傾斜の変化方向と呼ばれる方向(Y)に沿って移動したときのみ傾斜が変化する可変傾斜プロファイルを有し、
・
前記配置方向(X)に沿って隣接して配置された2つのモジュールに関し、前記傾斜の変化方向(Y)に沿った傾斜は、前記2つのモジュールの間で異なり、
・前記光学部品は、前記配置方向(X)に平行なチルト軸周りのチルト運動に伴い、反射により、変形しながら動く図形要素の動的視覚効果を示し、
前記動的視覚効果は、1つ以上の図形要素の、前記チルト軸に直交する軸に沿った動きを含むことを特徴とする光セキュリティ部品の製造方法。
【請求項16】
少なくとも部分的に前記第1の層を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ第2の層を堆積するステップをさらに備える請求項15に記載の光セキュリティ部品の製造方法。
【請求項17】
請求項11から13のいずれかに記載の光セキュリティ部品を認証する方法であって、
-前記光セキュリティ部品を自然光で照射し、偏光子を用いて色付きの効果の局所的消滅を観測するステップ、または、前記光セキュリティ部品を線形偏光した光で照射し、色付きの効果の局所的消滅を観測するステップ、を備える光セキュリティ部品を認証する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はセキュリティマーキングに関し、より具体的には、文書の信頼性確認のための、反射により視認可能な光セキュリティ部品、そのような部品の製造方法、およびそのような部品を与えられた安全な文書に関する。
【背景技術】
【0002】
文書または製品の認証のための多くの技術、特に紙幣の額面やパスポートその他の身分証明書などの文書を安全化するための技術が知られている。これらの技術は、光セキュリティ部品の製造に適用される。こうした光セキュリティ部品の観測パラメータ(部品の観測軸に対する向き、光源の位置や大きさ、等)としての光学効果は、非常に特徴的で証明可能な構成を備える。これらの光学部品の一般的な目的は、複製の困難な物理構成を基に、新規な異なる光学効果を与えることにある。こうした部品の中で、回折可変画像(一般にホログラムと呼ばれる)を生成する光学部品を実現するために、DOVID(回折光可変画像装置)が使われる。
【0003】
例えば既知の技術として、光学効果の動的変化を示す効果を生み出すものがある。例えば、光の所定の向きおよび/または色のゾーンの運動(しばしば「ローリングバー」と呼ばれる)や、部品のチルト角の変化に起因する運動などがある。その後観測者は、部品が回転したときに画像に沿って動く光、および/または、色のゾーンを観測することができる。これにより、さらなる認証チェックが可能となる。
【0004】
「ローリングバー」を示すこうした動的な光学効果は、例えば国際公開第2015154943号に、本出願人の名で記載されている。その図面の1つは、本出願で流用される(
図1)。上記の出願で開示された光セキュリティ部品は、反射によって視認可能な効果を示す。この光セキュリティ部品は、誘電体材料上にエッチングされた回折構造を備える。この構造は、ファセットの第1の組を持つ浅浮き彫りを備えた第1のパターンを有する。その形状は、一連の凹状または凸状の円柱の光学部品を模擬するように決定され、反射によって視認可能である。この第1のパターンは、サブ波長の回折格子を形成する第2のパターンによって変形される。
図1に示されるように、第1の領域11では、第1のパターンによって一連の凹状の円柱部品12を模擬することができる。そして第2の領域12では、第1のパターンによって一連の凸状の円柱部品22を模擬することができる。さらに、領域11および12の各々で、第1のパターンは第2のパターンによって変形される。例えば高い屈折率を持つ誘電体材料の薄いレイヤが堆積され、それぞれ第1および第2のサブ波長フィルタとしての構造が封入された後、領域11および12は、それぞれ第1のサブ波長の回折格子および第2のサブ波長の回折格子を形成する。円柱の光学部品12、22は、例えば、幅約2mm、長さ約12mmの寸法を有するため、裸眼で視認可能である。このような光セキュリティ部品は、円柱部品の主方向Δ1、Δ2に平行な軸の周りに回転させたときに、異なる色で反対方向にスクロールする光の帯13、23の動的効果を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら既知の先行技術は、ローリングバー型の動的効果のみを示す。本出願は、より複雑な動的視覚効果を示すことのできる、オリジナルな構造を持った光セキュリティ部品を開示する。これにより、異なるメッセージ(すなわち、より認識が容易なメッセージ)を模擬することができ、究極的にはより強固な認証を保証することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの第1の観測面の反射により裸眼で観測されることを目的とした光セキュリティ部品であって、誘電体材料から作られ第1の屈折率を有する第1の層と、この第1の層の上にエッチングされた少なくとも1つの第1の回折構造と、を備えるものに関する。
【0007】
第1の態様に係る光セキュリティ部品では、前述の第1の回折構造は、第1のパターンを備える。この第1のパターンは、所定の配置方向に互いに隣接して配置された少なくとも1つのモジュールの組を備える。このモジュールの組の各モジュールの前述の配置方向の最大幅は、300μmより小さい。このモジュールの組の各モジュールは、第1のファセットの組を備えた浅浮き彫りを備える。この第1のファセットの組の形状は、反射によって視認可能な光学部品を模擬するように決定される。この光学部品は、少なくとも1つの凸状領域または少なくとも1つの凹状領域を備える。この光学部品は、配置方向と直行する、傾斜の変化方向と呼ばれる方向に沿って移動したときのみ傾斜が変化する、可変傾斜プロファイルを有する。さらに隣接して配置された2つのモジュールに関し、配置方向に平行な少なくとも1つの線に沿った傾斜は、前述の2つのモジュールの間で異なる。
【0008】
誘電体材料から作られた第1の層は、前述の部品の観測スペクトル帯で、少なくとも部分的に透明である。すなわちこの第1の層は、裸眼による観測に関し可視スペクトル内にある。「少なくとも部分的に透明な層」とは、観測スペクトル帯の波長において、少なくとも70%、好ましくは80%の透過率を有する層として定義される。
【0009】
このような光セキュリティ部品は、前述の配置方向に平行な軸周りのチルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、前述のモジュールの配置による機能である。この動的視覚効果は、1つ以上の複合した図形要素の動きを含む。このような動きの例として、異なる速度で同じ方向にまたは反対方向に「動く」2つの直線部分の交差がある。(および/または)別の例として、配置方向に対する斜め直線部分の動きがある。この複雑な動的視覚効果は、前述の視覚効果を得るために必要なモジュールの設計および製造により、単純な水平ローリングバーに比べより安全な認証およびより強い技術的バリアを提供する。
【0010】
チルト運動は、モジュールの配置方向に平行な軸周りの部品の回転を意味するものと理解される。チルト角は、観測の基準位置の周りで、通常は+/-45°、好ましくは+/-30°である。観測の基準位置は、例えば垂直照明下での観測に関し、部品の法線方向と垂直方向とのなす角が45°となるように傾けた部品で定義される。
【0011】
部品の最大幅が300μmより小さいため、各モジュールは裸眼では区別できない。これにより観測者は、視覚効果を連続的な直線または曲線として認識する。こうして観測者は、直線部分または微細な直線部分を配置して形成された曲線を認識する。実際には、第1の構造が裸眼で見えるように、モジュールの最大幅から定められた最小の数のモジュールを与えることができるだろう。こうして実際には、第1の構造の最小寸法は、1mmより大きく、好ましくは2mmより大きく、より好ましくは5mmより大きいように与えられるだろう。
【0012】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、多色回折を実現するため、第1のパターンを形成するファセットの高さは、同じ観測角で回折の複数の次数に適するように決定される。言い換えれば、同じ回折の次数を導出する(または同じ回折の次数から導出されない)複数の波長を持つ回折であり、実質的に同じ観測角度、すなわち2°より小さい、好ましくは1°より小さい観測角度を持つものを実現するように決定される。複数の回折の次数により、これを加算合成することにより、観測者の目にとって「白」または「無色の」効果を生み出すことができる。
【0013】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、前述のモジュールの組のモジュールの各々は、傾斜の変化方向に沿って実質的に一定の幅を持つ。すべてのモジュールが同じ幅を持ってもよいし、これらのモジュールのうちの少なくとも2つが異なる幅を持ってもよい。異なる幅を持つモジュールにより、動く図形要素であって、反射により異なる明るさを示すものを生成することができる。
【0014】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、前述のモジュールの少なくとも1つは、傾斜の変化方向沿って変化する幅を持つ。このモジュールは、例えば、三角形状またはピラミッド型状その他の任意の非長方形状であってよい。これにより交差消滅視覚効果を、例えば2つの逆ピラミッド型のモジュール間で生成することができる。あるいはこれを顕微鏡で観測することにより、部品の認証レベルを向上させることができる。
【0015】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの組は、第1のモジュールサブセットと、第2のモジュールサブセットとを備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を備えた光学要素を模擬することができる。第2のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域を備えた光学要素を模擬することができる。第1のモジュールサブセットのモジュールは、第2のモジュールサブセットのモジュールと交互に配置される。
【0016】
こうしたモジュールの配置により、チルト運動に伴い、反射によりオリジナルな動的視覚効果を示す光セキュリティ部品を形成することができる。この動的視覚効果は、2つの直線部分の交差を含む。
【0017】
さらに、第1および第2のモジュールサブセットのモジュールを交代させることにより、観測者は、サブセットの各々に同時にリンクした効果を知覚する。
【0018】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの組は、少なくとも1つの第1のモジュールサブセットを備える。この第1のモジュールサブセットのモジュールにより、光学部品を模擬することができる。この光学部品の各々は、少なくとも1つの第1の凹状領域または少なくとも1つの第1の凸状領域を備える。これら第1の凹状領域または前述の第1の凸状領域の各々は、配置方向に平行な平坦線を備える。さらに、前述の第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、平坦線は、傾斜の変化方向に対してずらして配置される。
【0019】
本明細書内の意味において、平坦線は、モジュールの配置方向に平行な線である。この平坦線上で、モジュールによって模擬された光学部品のプロファイルの傾斜は相殺する。
【0020】
こうしたモジュールの配置により、チルト運動に伴い、反射によりオリジナルな動的視覚効果を示す光セキュリティ部品を形成することができる。この動的視覚効果は、斜め直線部分のモジュールの配置方向に対する動きを含む。連続したモジュールのずれを制御することにより、複数の部分を持った破線を形成することができる。
【0021】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、前述の第1のモジュールサブセットの複数の連続したモジュールに関し、平坦線は、傾斜の変化方向に対して300μmより小さなオフセットを持ってずらして配置される。これは、連続した線として見える視覚効果を観測者に与えることを目的とする。オフセット(例えば配置方向に直行する軸に沿って連続的に変化するオフセット)の方向と大きさを制御することにより、曲線を生成することができる。
【0022】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの組は、少なくとも1つの第1のモジュールサブセットを備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、以下のような光学部品を模擬することができる。すなわちこの光学部品は、第1のモジュールサブセットのすべてのモジュールに関し少なくとも1つの第1の凹状領域、および/または、第1のモジュールサブセットのすべてのモジュールに関し少なくとも1つの第1の凸状領域を備える。第1のモジュールサブセットのモジュールの少なくとも2つにより、異なる傾斜変化関数プロファイルを有する。
【0023】
こうしたモジュールの配置により、チルト運動に伴い、反射によりオリジナルな動的視覚効果を示す光セキュリティ部品を形成することができる。この動的視覚効果は、変形する図形要素の動きを含む。
【0024】
目的とする視覚効果に応じて、第1の態様に係る光セキュリティ部品のモジュールの組は、少なくとも1つの凸状領域、および/または、少なくとも1つの凹状領域を有する、異なる光学部品を模擬するように設計されてよい。
【0025】
こうして、1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの少なくとも1つにより、傾斜の変化方向に沿って変化するプロファイルを有し、配置方向に平行な平坦線に対して(絶対値で)対称である光学部品を模擬することができる。傾斜関数の対称性により、正または負の角度を持つことによる機能としての視覚効果の対称性を備えた、1つ以上の図形要素の通常の動きの効果を模擬することができる。
【0026】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの少なくとも1つにより、傾斜の変化方向に沿って変化するプロファイルを有し、配置方向に平行な平坦線に対して(絶対値で)非対称である光学要素を模擬することができる。傾斜関数の非対称性により、光学要素の基準位置(チルト0)からのいずれかの側への動き関する速度変化の効果を模擬することができる。
【0027】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールの少なくとも1つにより、少なくとも1つの凹状領域および少なくとも1つの凸状領域を備えた光学要素を模擬することができる。少なくとも1つの凹状領域および少なくとも1つの凸状領域の両方があることにより、これらの組み合わせによる複数の動く図形要素を形成することができる。
【0028】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、モジュールは、配置方向に直行する方向に追加的に配列される。例えばモジュールの組は、配置方向に直行する方向に所定の回数複製される。これにより、視覚効果を複製することができる。より複雑な視覚効果を得るために、異なるモジュールを配列することもできる。
【0029】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、光セキュリティ部品はまた、少なくとも部分的に第1の層を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ第2の層を備える。この第2の層は例えば、金属層またはいわゆる可変屈折率層である。可変屈折率層は、隣接する層の屈折率と異なる屈折率を有する層であり、好ましくはこの屈折率の差は少なくとも0.3である。
【0030】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、少なくとも1つの第1の領域において、第1のパターンは第2のパターンによって変形され、周期的なアレイを形成する。この周期は、100nm以上700nm以下であり、好ましくは200nm以上500nm以下であり、第2の層が堆積した後、第1のスペクトル帯で共鳴フィルタを生成するように決定される。
【0031】
このような部品により、動的視覚効果を色効果と組み合わせることができる。さらに裸眼による認証に加えて、偏光による光セキュリティ部品の認証を実現することができる。実際、こうして得られた共鳴フィルタは偏光に感受性がある。光セキュリティ部品を偏光した光で照射し、偏光子を通して観測することにより、色を区別して観測することができる。
【0032】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、第1のパターンは、第1の領域において第2のパターンによって変形されて第1の周期的なアレイを形成し、第1のパターンは、第2の領域において第2のパターンによって変形されて第2の周期的なアレイを形成する。これにより、第2の層が堆積した後、第1および第2の周期的なアレイは、異なるスペクトル帯で共鳴フィルタを生成する。
【0033】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、第1のパターンは、第2のパターンによって変形され、隣接して配置された2つのモジュールに関し、共鳴スペクトル帯はこの2つのモジュールの間で異なる。こうした光セキュリティ部品は、配置方向に平行な軸周りのチルト運動に伴い、反射により追加的な動的視覚効果を示す。この視覚効果は、色付きの動的視覚効果であり、前述のモジュールの配置の機能である。第1のパターンのモジュラー配置により、各モジュールの特性を追加的に組み合わせた結果として、オリジナル色を生成することができる。このオリジナル色は、先行技術の光セキュリティ部品では知覚できないこともある。
【0034】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。共鳴スペクトル帯は、少なくとも1つの第1のモジュールの2つの領域で異なる。
【0035】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、光セキュリティ部品はまた、第2の層の上に堆積した誘電体材料から作られ、第3の屈折率を有する第3の層を備える。第2の層は、第2の屈折率を有する誘電体材料の薄層である。第2の屈折率と第1の屈折率との差、および第2の屈折率と第3の屈折率との差は、少なくとも0.3である。第2の層が堆積し、第1の構造が第3の層によって封入された後、第2のパターンが、反射によるバンドパス共鳴フィルタを形成するために適用される。
【0036】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、第2の層は、金属材料から作られた40nmより厚い薄層である。第2のパターンが、反射によるバンド阻止共鳴フィルタを形成するために適用される。
【0037】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、第1の構造は、認識可能な図形を形成する輪郭を持つ。
【0038】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、構造の輪郭は、動く図形要素の形状と似た図形を形成する。
【0039】
第1のパターンが少なくとも1つの第2のパターンを備えるとき、構造は、それぞれが認識可能な形状を持って配列されてよい。
【0040】
第1の態様に係る光セキュリティ部品は、応用上の要求に応じて、1つ以上の追加的な層を備えてもよい。この(またはこれらの)層は、目的とする視覚効果には寄与しない。
【0041】
こうして1つ以上の典型的な実施の形態によれば、光セキュリティ部品は、安全な文書または製品に適し、当該光セキュリティ部品を文書または製品に適用するのに適した層(例えば、接着層または硬化接着層)を、観測面と反対の面上にさらに備える。
【0042】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、光セキュリティ部品はまた、第1の観測面の側に、サポートフィルムを備える。このサポートフィルムは、光セキュリティ部品が文書または製品に適用された後、除去されることが意図される。
【0043】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、光セキュリティ部品は、紙幣を安全化するためのセキュリティスレッドの製造に適し、第1の観測面上、および/または、第1の観測面と反対の面上に、1つ以上の保護層を備える。
【0044】
第2の態様によれば、本開示は、第1の態様に係る光セキュリティ部品の製造方法に関する。
【0045】
こうして本開示は、少なくとも1つの第1の観測面の反射により裸眼で観測されることを目的とした光セキュリティ部品の製造方法に関し、以下を備える。
-第1の屈折率を有する材料から作られた第1の層をサポート層の上に堆積するステップ。
-少なくとも1つの第1の回折構造を第1の層の上に形成するステップ。
・第1の回折構造は第1のパターンを備える。
第1のパターンは、所定の配置方向に互いに隣接して配置された少なくとも1つのモジュールの組を備える。
モジュールの組の各モジュールの配置方向の最大幅は、300μmより小さい。
・モジュールの組の各モジュールは、第1のファセットの組を備えた浅浮き彫りを備える。
第1のファセットの組の形状は、反射によって視認可能な光学部品を模擬するように決定される。
光学部品は、少なくとも1つの凸状領域、および/または、少なくとも1つの凹状領域を備える。
光学部品は、配置方向と直行する傾斜の変化方向と呼ばれる方向に沿って移動したときのみ傾斜が変化する可変傾斜プロファイルを有する。
・隣接して配置された2つのモジュールに関し、配置方向に平行な少なくとも1つの線に沿った傾斜は、2つのモジュールの間で異なる。
【0046】
1つ以上の典型的な実施の形態によれば、前述の製造法は、少なくとも部分的に第1の層を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ第2の層を堆積するステップをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明のその他の特徴および利点は、下記の図面を参照しながら以下の説明を読むことにより明らかになるだろう。
【
図1】すでに説明した通り、先行技術に係る2つのローリングバーを示す図である。
【
図2A】本開示の典型的な実施の形態の断面図である。
【
図2B】本開示の典型的な実施の形態の断面図である。
【
図3A】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図3B】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図3C】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図3D】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図4A】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図4B】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図4C】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図4D】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図5A】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図5B】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図5C】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図5D】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールであり、異なる傾斜プロファイルを持つものを示す図である。
【
図6】本開示に係る光セキュリティ部品のモジュールの外形を示す図である。
【
図7A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図7B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図8A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図8B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図9A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図9B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図10A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図10B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図11A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図11B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図12A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図12B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図13A】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図13B】本開示に係る光セキュリティ部品の異なる実施の形態および付随する視覚効果を示す図である。
【
図14A】本開示に係る光セキュリティ部品の典型的な実施の形態であり構造の特定のアウトラインを持つものおよび付随する視覚効果を示す図である。
【
図14B】本開示に係る光セキュリティ部品の典型的な実施の形態であり構造の特定のアウトラインを持つものおよび付随する視覚効果を示す図である。
【
図15A】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図15B】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図16A】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図16B】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図17A】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図17B】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図18A】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【
図18B】本開示に係る光セキュリティ部品の別の実施の形態であり、色付きの動的視覚効果を作るために第2のパターンで第1のパターンを変形するものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
見易さのため、図面上の部品は実寸を示さないことがある。
【0049】
図2Aおよび2Bに、本開示に係る光セキュリティ部品の2つの例を(部分的な)断面図で示す。
【0050】
図2Aに示される光セキュリティ部品201は、例えば文書や製品を安全化するためにこれらに適用されることを目的とした光セキュリティ部品を示す。この例では光セキュリティ部品201は、サポートフィルム211、例えばポリマー材料のフィルム、例えば数10マイクロメートル(典型的には15から100μm)のポリエチレンテレフタレート(PET)と、剥離層212、例えば、天然または合成ワックスと、を備える。剥離層により、この光セキュリティ部品を安全化されるべき製品または文書に適用した後、サポートフィルム211を除去することができる。光セキュリティ部品201はまた、誘電体材料から作られ第1の屈折率n1を有する第1の層213と、第1のパターンM
1を有する少なくとも1つの第1の回折構造S
1とを備える。第1の回折構造S
1は第1の層213の上にスタンプされるが、この点については後で詳述する。
【0051】
図2Aの例では、光セキュリティ部品201はまた第2の層214を備える。第2の層214は、少なくとも部分的に第1の回折構造S
1を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ。第2の層214は例えば、金属層またはいわゆる屈折率変化層(すなわち、隣の層の屈折率と異なる屈折率を持ち、層213と層214の屈折率の差は少なくとも0.3である)。層214により、入射光を確実に屈折させることができる。
【0052】
光セキュリティ部品はまた、1つ以上の別の層を備える。この層は光学的機能を持たないが、例えば
図2Aの例に適した接着層217である。接着層217は例えば熱硬化性を持つ接着層であり、例えば光セキュリティ部品を製品または文書に適用するために使われる。
【0053】
後述するように、実際に光セキュリティ部品は、層をサポートフィルム211の上に積層することによって製造することができる。光セキュリティ部品はその後、接着層217を用いて安全化されるべき文書/製品に適用される。選択的にサポートフィルム211は、その後例えば剥離層212を用いて除去することができる。光セキュリティ部品の主観側面200は、層213のエッチング面と反対側の、第1の層213の側にある。
【0054】
図2Bに示される光セキュリティ部品202は、例えば紙幣を安全化することを目的とした光セキュリティ部品を示す。光セキュリティ部品202は例えば、紙幣の造幣中に紙に組み込まれることが意図されたセキュリティスレッドの一部である。この例では光セキュリティ部品202は、前述と同様にセキュリティスレッドの保護フィルムとしても機能するサポートフィルム211(12から25μm)と、
図2Aの例と同様に誘電体材料から作られ第1の屈折率n1を有する第1の層213と、第1の層213の上にスタンプされる少なくとも1つの第1の回折構造S
2と、第2の層214とを備える。第2の層214は、少なくとも部分的に第1の回折構造S
2を覆い、可視スペクトル内にある反射のスペクトル帯を持つ。
図2Bから分かるように、回折構造S
2は、特に第2のパターンM
2によって変形された第1のパターンM
1を持つ点で、回折構造S
1と異なる。第2のパターンM
2によって変形された第1のパターンM
1は、後に詳述するようにサブ波長の周期的な回折格子を形成する。
図2Bの例の光セキュリティ部品202はまた、層215、216、218の組を備える。層215、216、218はそれぞれ、封入層215、選択的な不透明な色付きコントラスト層216、保護層218(例えば第2のポリマーフィルムまたはラッカー)である。前述の例と同様に、層をサポートフィルム211の上に積層することによって製造が可能である。その後、セキュリティスレッドに必要な強度を与えるために、保護層218が堆積される。封入層215および色付きコントラスト層216は選択的であり、単層で形成されてもよい。接着層217および層215もまた、両方の機能を持つ単層で形成されてもよい。
【0055】
応用上の要求に応じて
図2Aおよび2Bの各例で他の非機能性の層を選択的に追加してもよいこと、
図2Aおよび2Bに示される実施の形態の変形の組み合わせが可能であること、特に第1のパターンM
1を備えるS1のタイプの構造または第2のパターンM
2によって変形された第1のパターンM
1を備えるS2のタイプの構造の各々が、文書または製品への適用を意図された光セキュリティ部品あるいは紙幣の安全化を意図された光セキュリティ部品に同等に使えることが、当業者には理解できるだろう。
【0056】
選択的に追加された非機能性の層、例えば層217あるいは層215、216、218がサポートフィルムとともに透明である場合は、光セキュリティ部品は、生成された光学部品の曲率を反転させて両側から視認できることに注意する。
【0057】
本開示の1つ以上の実施の形態によれば、第1のパターンM1は、所定の方向配置で隣接して配置された少なくとも1つのモジュールを備える。これらの各モジュールの最大幅は、配置方向に沿って300μmより小さいものとして定義される。各モジュールは、ファセットの第1の組を有し、少なくとも1つの凹状または凸状領域を有する浅浮き彫りを備える。その形状は、観測面200から見たときに反射によって視認可能な光学部品を模擬するように決定される。この光学部品は、配置方向と直行する方向(傾斜の変化方向と呼ばれる)に沿って移動したときのみ傾斜が変化する可変傾斜プロファイルを有する。
【0058】
第1のパターンの形状を決定するために、
図3から5に示されるフレネルレンズの形成方法を参照することができる。これらの図は、本開示に係る第1のパターンを形成するために適用されるモジュールの異なる例を示す。
【0059】
より具体的には、
図3Aから3Dに、
図3Dの断面で示される第1の例であるモジュール310を示す。モジュール310は、ファセット320の組で形成され、反射により視認可能な光学部品300を模擬するように決定される第1の回折パターンを備える。この光学部品300は、
図3Aで斜視図が示され、
図3Cで断面図が示される。
図3Aおよび3Cから分かるように、光学部品300は、Y軸方向(傾斜の変化方向と呼ばれる)に沿って移動したとき、Z軸方向の高さが変化するプロファイルを有する。モジュール310は、Y軸(傾斜の変化方向)と直行するX軸方向に配置されることが意図される。
【0060】
図3Aから3Dの例で浮き彫り310により複製されようとしている反射光学部品300は、凹状の反射光学部品、例えば母線が主方向(X軸と平行な方向)を定義する円柱の一部で形成される、円柱状反射光学部品である。代替的に光学部品は、楕円、放物線その他の対称的な曲線の一部であってもよい。曲線は、所定の回転が与えられたときに期待される視覚効果の変化速度に基づいて選択される。光学部品300は、平坦線301を備える。この平坦線301は、傾斜が相殺された線、すなわちdz/dy=0の線に相当する。この平坦線301は、傾斜の変化方向Yに直行する。
図3Bは光学部品300の平面図を示す。この図では慣習に従い、最も凹んだ凹状領域が濃い灰色で示され、最も凹んでいない領域が薄い灰色で示される。
【0061】
図3Aおよび3Dの例では、光学部品300はまた、縦軸(Δ1で示され、ここでは平坦線301に一致する)に関して対称である。
【0062】
図3Dに示されるようなモジュールの配置により、対称的な光学部品が得られ、正または負の回転角を与えたときに観測される対称な効果を得ることができる。
【0063】
明らかに、
図3Aから3Dを用いて説明した凹状の反射部品と似たものとして、凸状の反射部品を与えることもできる。
【0064】
図4Aから4Dに、
図3Dの断面で示される第2の例であるモジュール410を示す。モジュール410は、ファセット420の組で形成され、反射により視認可能な光学部品400を模擬するように決定される第1の回折パターンを備える。この光学部品400は、
図4Aで斜視図が示され、
図4Cで断面図が示される。
図4Aおよび4Cに示されるように、光学部品400は、Y軸方向(傾斜の変化方向と呼ばれる)に沿って移動したとき、Z軸方向の高さが変化するプロファイルを有する。モジュール410は、Y軸(傾斜の変化方向)と直行するX軸方向に配置されることが意図される。
【0065】
図4Aから4Dの例で浮き彫り310により複製される反射光学部品400は、凸状の領域を備える反射光学部品である。反射光学部品400は、前述の例と同様に、傾斜が相殺された線に相当する平坦線401を備える。しかしながらこの例では、反射光学部品400は、平坦線401に関して対称ではない。
図4Bは光学部品400の平面図を示す。この図では慣習に従い、最も凸状の領域が薄い灰色で示され、最も凸状でない領域が濃い灰色で示される。
【0066】
図4Dに示されるようなモジュールの配置により、正または負の回転角を与えたときに観測される非対称な効果を得ることができる。
【0067】
ここで再び、
図4Aから4Dを用いて説明した凸状の反射部品と似たものとして、凹状の反射部品を与えることもできる。
【0068】
図5Aから5Dに、
図5Dの断面で示される第3の例であるモジュール410を示す。モジュール510は、ファセット520の組で形成され、反射により視認可能な光学部品500を模擬するように決定される。この光学部品500は、
図5Aで斜視図が示され、
図5Cで断面図が示される。
図5Aおよび5Cから分かるように、光学部品500は、傾斜の変化方向であるY軸方向(傾斜の変化方向と呼ばれる)に沿って移動したとき、傾斜が変化するプロファイルを有する。モジュール510は、Y軸(傾斜の変化方向)と直行するX軸方向に配置されることが意図される。
【0069】
図5Aから5Dの例で浮き彫り510により複製されようとしている反射光学部品500は、第1の凸状の領域と第1の凹状の領域とを備える反射光学部品である。第1の凸状の領域は、凸状の領域の傾斜が相殺された線に相当する平坦線501を備える。第1の凹状の領域は、凹状の領域の傾斜が相殺された線に相当する平坦線502を備える。
図5Bは光学部品500の平面図を示す。この図でも慣習に従い、最も凸状の領域が薄い灰色で示され、最も凹状の領域が濃い灰色で示される。
【0070】
図5Dに示されるようなモジュールの配置により、以下の様な効果を得ることができる。すなわち、傾斜角-θmaxでは2つの光領域が出現し、傾斜角の減少とともに反対方向に移動する。そして傾斜角が最大値である+θmaxになると2つの光領域は合併する。
【0071】
回折ファセットの組(例えば
図3から5に示される、少なくとも1つの凸状領域、および/または、少なくとも1つの凹状領域を備えた反射光学部品を得るためのもの)は、例えば本出願人による国際特許出願2011138394に記載された既知の方法で決定することができる。
【0072】
光学部品を一定のピッチでメッシュ化してもよい(例えば
図3から5に示されるXZ平面に平行な等距離の平面の組で)。その後各メッシュで、厚さを減じた浅浮き彫り形状における第1のパターン(そのファセットがそれぞれの面の形状を再現する)を得るために、反射部品の各面を移動することにより第1のパターンの形状が得られる。一定のレベルでスライスの形でメッシュ化してもよい(例えば
図3から5に示されるXZ平面に平行な等距離の平面の組で)。前述のように、厚さを減じた浅浮き彫り形状における第1のパターン(そのファセットがそれぞれの面の形状を再現する)を得るために、反射部品の各面を移動することにより第1のパターンの形状が得られる。このような実施の形態は、浮き彫りによる模擬で特に有利である。なぜなら、結果として得られる第1のパターンの厚さの変化が抑制されるからである。
【0073】
一般に、反射によって視認できる少なくとも1つの凹状領域、および/または、少なくとも1つの凸状領域を持った光学部品を模擬するように決定される、ファセットのピッチおよび高さを持つ回折構造を形成するために、2つのアプローチのうちの一方を選ぶことができ、あるいは2つのアプローチを組み合わせることができる。屈折率n1の誘電体材料の第1の層が堆積される回折構造では、ファセット(320、420、520)のピッチおよび高さは回折の法則よって決定される。ピッチは2μm以上300μm以下であり、好ましくは3μm以上100μm以下であり、好ましくは4μm以上50μm以下である。アクロマートな回折を保つため、ファセットの高さは、回折の複数の次数に適するように決定される。例えば第1のパターンのファセットの高さhは、一般に0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.3μm以上5μm以下である。各ファセットは長方形にたとえられ、モジュールの幅に相当する長辺と、短辺を持つ。長辺と直行する方向で測ったとき、短辺の寸法は2μm以上20μm以下、好ましくは4μm以上10μm以下である。回折構造を形成するために、モジュールは数10から数1000のファセットを備えてよい。
【0074】
図3から5に示される本開示に係る光セキュリティ部品の第1のパターンを形成するモジュールはXY平面で実質的に長方形の形状を有するが、他の形状であってもよい。
【0075】
従って符号601から607を付された
図6は、本開示に係るモジュールの異なる形状を示す。これらのモジュールは上述のものであり、それぞれ配置方向Xおよび傾斜の変化方向で定義されたXY平面にある。
【0076】
例えば、逆ピラミッド形状(例えば604、605)のモジュールにより、クロスディゾルブ型の視覚効果が得られる。複合形状(606、607)のモジュールにより、顕微鏡による追加的な認証が可能となる。
【0077】
これらのモジュールの各々に関し、可変な(606から606の場合)より大きな寸法Lおよび幅lを定義することもできる。しかしながらいずれの場合においても、幅の最大値lは300μmより小さい。長方形のモジュールに関しては、λの好ましい選択は10μm<λ<300μmであり、好ましくは30μm<λ<100μmである。Lに関しては、好ましい選択は2mm<L<50mmであり、好ましくは5mm<L<20mmである。各モジュールの最終的な長さは、瞳によって決められてよい。
【0078】
本開示に係る光セキュリティ部品の1つ以上の典型的な実施の形態によれば、隣接して配置された2つのモジュールに関し、配置方向Xに平行な少なくとも1つの線に沿った傾斜は、これら2つのモジュールの間で異なる。本出願人は、配置方向に平行な軸周りのチルト運動の効果に関し、このような光セキュリティ部品が、前述のモジュールの前述の配置の関数として、2つの直線部分および/または斜線部分の動きを表す動的視覚効果を有することを示した。
【0079】
こうした動的視覚効果の非限定的な例が、
図7から14で示される。
【0080】
単純化を目的として、
図7A、8A、9A、10A、11A、12A、13A、14Aでは、各光セキュリティ部品に関し、前述のいくつかのモジュールの組のみが示される。さらに、前述(
図3B、4B、5B参照)の慣習に従い、最も凹状の領域は濃い灰色で示され、最も凸状の領域は薄い灰色で示される。実際には第1のパターンは、図示されるものより多くのモジュールを備えてもよい。特にさらにモジュールは、配置方向と直行して並列することができる。視覚効果を複製する目的で、例えば図示されるモジュールの組は、配置に方向に直行するように、所定の複数の回数、複製されてよい。より複雑な視覚効果を生み出すために、異なるモジュールを並列することもできる。
図7B、8B、9B、10B、11B、12B、13B、14Bは、光セキュリティ部品が反射によって視認されたとき、さらに前述の配置方向に平行な軸の周りのチルト運動(角度θ)の結果生じる視覚効果を示す。
【0081】
図9A、10A、11A、12A、13Aでは、構造は「瞳化」される。すなわち、光セキュリティ部品において、視覚効果が実質的に長方形の領域(
図8B、9B、10B、11B参照)で視認されるように画定される。前述の瞳の輪郭は、
図9A、10A、11A、12A、13Aには示されていない。
図14Aでは、構造はやはり瞳化されるが、その仕方は異なる。「瞳化」は、光セキュリティ部品の製造で実現される。これは例えば、所望の瞳を超えるエッチング情報を除去するためのエッチングコンピュータデータへのデジタルフィルタの応用によって実現される。あるいはこれは、入射エッチングビームと光感受性表面との間の光学的登録時に挿入される物理的な瞳によって実現される。
【0082】
これらの視覚効果を説明するための図は実寸では示されず、部品の実際の観測と比較することにより簡略化される。さらに各図面で示される視覚効果は、組み合わされてもよい。モジュールが凸状で表されるとき、反対方向への動きの効果を凹状のモジュールで得ることができる(逆も然りである)。
【0083】
図7Aおよび7Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第1の例である光セキュリティ部品700を示す。
【0084】
この例ではモジュールの組は、第1のモジュールサブセット710と、第2のモジュールサブセット720とを備える。第1のモジュールサブセット710のモジュール(711、712)により、凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第2のモジュールサブセット720のモジュール(721、722)によってもまた、凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。しかしながら、第2のモジュールサブセット720の傾斜の変化のプロファイルは、第1のモジュールサブセット710の傾斜の変化のプロファイルと異なる。この例では、第1のモジュールサブセット710のモジュール(711、712)の傾斜の変化は、第2のモジュールサブセット720のモジュール(721、722)の傾斜の変化より急速である。
図7Aに示されるように、例えば第1のモジュールサブセット710のモジュールは、第2のモジュールサブセット720のモジュールと交互に配置される。この例では、モジュールの平坦線は実質的に平行である。
【0085】
図7Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により変形の動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、部品の回転とは無関係な2つのバー701、702の動きを含む。バー701は第1のサブセットに相当し、第2のサブセットに相当するバー702より速く動く。モジュールの傾斜の機能の相違により、中央水平線(傾き0に相当する基準位置)の視覚効果を与えることが可能となる。この中央水平線は、文書が基準位置から傾いたとき分離し、一方の線が他方の線と交差する。これらの線は同じ方向に動くが、その速度は異なる。
【0086】
図8Aおよび8Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第2の例である光セキュリティ部品800を示す。
【0087】
この例ではモジュールの組は、第1のモジュールサブセット810と、第2のモジュールサブセット820とを備える。第1のモジュールサブセット810のモジュール(811、812)により、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第2のモジュールサブセット820のモジュール(821、822)により、少なくとも1つの凹状領域を有する光学部品を模擬することができる。
図8Aに示されるように、第1のモジュールサブセット810のモジュールは、第2のモジュールサブセット820のモジュールと交互に配置される。第2のモジュールサブセット820のモジュールは、第1のモジュールサブセット810のモジュールより薄い。前述の例と同様に、モジュールの平坦線は実質的に平行である。
【0088】
図8Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、2つの直線部分801、802の交差を含む。直線部分801は第1のモジュールサブセット810に関連し、直線部分802は第2のモジュールサブセット820に関連する。この例では、凸状領域を有するモジュールと凹状領域を有するモジュールとが交互に配置されているため、直線部分は反対方向に移動することにより、互いに交差する。モジュールサブセット820のモジュールによって占められる領域は、より小さい(モジュールがより薄いため)。直線部分802は、直線部分801より暗い。
【0089】
図9Aおよび9Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第3の例である光セキュリティ部品900を示す。
【0090】
この例ではモジュールの組は、第1のモジュールサブセット911-915を備える。第1のモジュールサブセット911-915により、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、前述の平坦線は、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。実際に
図9Bに示されるように、ずらして配置される同一のモジュールを計算することができる。
図9Aおよび9Bの例では、モジュールによって形成される構造は、実質的に長方形の光セキュリティ部品を出現させるために「瞳化」される(瞳化は
図9Aには示されない)。
【0091】
図9Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、斜め直線部分901の動きを含む。斜め直線とは、モジュールの配置方向Xと平行でないことを示す。
【0092】
2つの連続したモジュールの平坦線間のずれが十分小さければ(典型的には300μmより小さい)、観測者には連続的な線が見えるだろう。
【0093】
図9Bの例では、直線部分を示した。しかしながら、平坦線が連続的に変化するずれを持つものであれば、2つの連続したモジュールによって形成された斜めの個別の直線部分を少なくとも1つ備えた任意の形状の曲線であってよい。
【0094】
図10Aおよび10Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第4の例である光セキュリティ部品1000を示す。
【0095】
この例ではモジュールの組は、モジュール1011-1015の第1のモジュールサブセット1010を備える。第1のモジュールサブセット1010により、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、前述の平坦線は、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。このモジュールの組は、モジュール1021-1024の第2のモジュールサブセット1020をさらに備える。第2のモジュールサブセット1020により、少なくとも1つの凹状領域を有する光学部品を模擬することができる。モジュールの平坦線は実質的に平行である。
【0096】
図10Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、斜め直線部分1001の一方向への動きを含む。斜め直線とは、モジュールの配置方向Xと平行でないことを示す。この動的視覚効果は、同時に、水平直線部分1002の反対方向への動きを含む。
【0097】
図11Aおよび11Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第5の例である光セキュリティ部品1100を示す。この例は
図9Aに示されるものと実質的に似ているが、モジュール1111-1119が山型を形成するように互いに配置される点で異なる。各モジュールは互いに同じものであるが、ずらして配置される。光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、図形オブジェクト1101(ここでは山型)の動きを含む。図形オブジェクト1101は、変形することなく、チルト0に相当する基準位置からいずれかの方へ動く。
【0098】
図12Aおよび12Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第6の例である光セキュリティ部品1200を示す。
【0099】
この例では
図9Aおよび9Bと同様に、モジュールの組は、モジュール1211-1219の第1のモジュールサブセットを備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、前述の平坦線は、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。しかしながらこの例では、第1のモジュールサブセットの少なくとも2つのモジュールは、傾斜の変化方向(Y)に沿った異なる傾斜の変化プロファイルを持つ。
【0100】
図12Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、図形要素の動きを含む。この図形要素は、動いている間に変形する。図示されるように、この図形要素は、チルト角-θmax、+θmaxの間で、3つの異なる独立した形をとる。
【0101】
形状を変化させながら基準位置からいずれかの方へ動く図形要素の動的視覚効果を組み合わせることもできる。これにより、部品の認証をより強固なものとすることができる。
【0102】
本開示に係る光学部品により、複合的な図形要素の動的視覚効果を実現することができる。
【0103】
図13Aおよび13Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第7の例である光セキュリティ部品1300を示す。
【0104】
この例ではモジュールの組は、第1のモジュールサブセット1310を備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、前述の平坦線は、認識可能な図形サイン「Y」が形成されるように、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。さらにモジュールの組は、第2のモジュールサブセット1320を備える。第2のモジュールサブセットによってもまた、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。このモジュールの平坦線は、認識可能な図形サイン「F」が形成されるように、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。この例では各モジュールは互いに同じものであるが、ずらして配置される。
【0105】
図13Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、複合的な図形要素1301(YF)の動きを含む。モジュールがすべて同一であるため、図形要素1301は動いている間に変形しない。
【0106】
この例では、Fの水平なバーは、モジュールのはめ込みサブセットを用いて得られる点に注意すべきである。例えば
図5Aから5Dで説明したモジュールによっても、この効果を得ることができる。これにより、複数の凹/凸の領域を持つ光学部品を模擬することができる。
【0107】
図14Aおよび14Bは、本開示に係る光セキュリティ部品の第8の例である光セキュリティ部品1400を示す。
【0108】
この例ではモジュールの組は、モジュール1411-1419の第1のモジュールサブセット1410を備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。第1のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールに関し、平坦線は、第1の図形要素(この例では、上側に点がある山型)が形成されるように、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。モジュールの組はまた、モジュール1421-1429の第2のモジュールサブセット1420を備える。第2のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域を有する光学部品を模擬することができる。このモジュールの平坦線は、第2の図形要素(この例では、下側に点がある山型)が形成されるように、傾斜の変化方向(Y)に対してずらして配置される。この例では各モジュールは互いに同じものであるが、ずらして配置される。この例では、構造は瞳Pを用いて「瞳化」される。瞳「P」自体が、山型の形状を想起させる。
【0109】
図14Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により動的視覚効果を示す。この動的視覚効果は、第1の図形要素1401の一方向への動きと、第2の図形要素1402の反対方向への動きを含む。
【0110】
次に
図15-18を用いて、色付きの動的視覚効果の非限定的な例を説明する。
【0111】
色付きの視覚効果を得るために、光セキュリティ部品は、
図2Bに示されるように周期的な回折格子を形成する、第2のパターンM
2によって変形された第1のパターンM
1を備えてもよい。この回折格子の周期は100nm以上700nm以下であり、有利には200nm以上500nm以下である。この周期は、可視スペクトルにおいて、いわゆる「サブ波長」(すなわち、観測に使われる最小の波長より短い)として振る舞う。回折格子は、可視スペクトルで反射する第2の層214が堆積した後、第1のスペクトル帯における共鳴フィルタを生成するように決定される。
【0112】
第1の典型的な実施の形態によれば、第2の層214は、屈折率n2の誘電体材料から作られる。この第2の層214は、屈折率n1の誘電体材料から作られた第1の層213と、屈折率n3の誘電体材料から作られた同3の層との間に封入される。共鳴フィルタはサブ波長フィルタであり、以下本明細書では「誘電体減算共鳴フィルタ」と呼ぶ。このようなフィルタの例として、本出願人により製造されるDIDM(登録商標)(「回折認証デバイス」)がある。第2のパターンは、1つまたは2つの寸法を持つサブ波長回折格子を形成する。このサブ波長回折格子を適用することにより、第2の層内での導波モードの励起が可能となる。これは、反射によるバンドパス共鳴フィルタを形成する。その共鳴スペクトル帯Δλは、第1の波長λ1にセンタリングされる。第2の層214は、好ましくは厚さ20nm以上200nm以下、さらに好ましくは厚さ60nm以上150nm以下の薄層を備える。この薄層は第2の屈折率n2を有する。第2の屈折率n2は、第1の屈折率n1および第3の屈折率n3と、少なくとも0.3(好ましくは少なくとも0.5)の差で異なる。1つ以上の実施の形態に従うと、この誘電体の薄層はいわゆる「高屈折率」(「HRI」)材料であり、1.8以上2.9以下、好ましくは2.0以上2.4以下の屈折率を有する。第1および第3の誘電体の層(第2の層の両側の層)はいわゆる「低屈折率」材料であり、1.3以上1.8以下、好ましくは1.4以上1.7以下の屈折率を有する。
【0113】
第2の典型的な実施の形態によれば、第2の層212は、好ましくは40nmより厚い、金属材料(例えば銀またはアルミニウム)の薄層を備える。第2のパターンM2は、1つまたは2つの寸法を持つサブ波長回折格子を形成する。このサブ波長回折格子を適用することにより、反射によるバンド阻止共鳴フィルタを形成することができる。これは反射プラズモンフィルタであり、以下、本明細書では「R’プラズモン」と呼ぶ。このR’プラズモンは、例えば仏国特許出願公開第FR2982038A1に開示されている。波長の関数として2%の最大残留伝達を示す目的で、第2の金属層22は十分厚いことが望ましい。
【0114】
図15から18に示す例は、例えば、誘電体減算共鳴フィルタ型のまたはR’プラズモンタイプ型の構造を備えてよい。誘電体減算共鳴フィルタ型の構造の場合であって、第2のパターンを形成する回折格子が1つの寸法を持つ場合、光セキュリティ部品は追加的な視覚効果、すなわち部品の方位角の変化に伴う色の変化を表すだろう。光学部品は、少なくとも2つのゾーンを持つことが望ましい。これら2つゾーンにおいて、サブ波長回折格子はそれぞれX軸およびY軸の方向を向く。この場合の誘電体減算共鳴フィルタの認証チェックは、2つの色の交換を照合することからなる。
【0115】
図15Aおよび15Bは、本開示に係る光セキュリティ部品であって、色付き動的視覚効果を有するものの第1の例である光セキュリティ部品1500を示す。
【0116】
この例ではモジュールの組は、モジュール1511、1513の第1のモジュールサブセットと、モジュール1512、1514の第2のモジュールサブセットとを備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。その平坦線は実質的に平行である。第2のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域を有する光学部品を模擬することができる。その平坦線は、第1のモジュールサブセット上の平坦線と実質的に平行である。
図15Aに示されるように、第1のモジュールサブセットのモジュールは、第2のモジュールサブセットのモジュールと交互に配置される。この例では、第1のモジュールサブセットの各モジュールの第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。その結果、第1の領域(符号Gで示される領域)では第1の色(例えば緑)が形成され、第2の領域(符号Rで示される領域)では第2の色(例えば赤)が形成される。さらに、第2のモジュールサブセットの各モジュールの第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。その結果、第1の領域(領域G)では第1の色(例えば緑)が形成され、第2の領域(領域R)では第2の色(例えば赤)が形成される。
図15Aで示される例では、2つの領域により、各モジュール上で2つの色を形成することが可能となる。これら2つの色は平坦線によって分離される。第1および第2の色は、それぞれ第1および第2のモジュールサブセットの2つの連続したモジュールの間で反転する。異なる色は、例えば前述の誘電体減算共鳴フィルタまたはR’プラズモンフィルタの効果により得ることができる。特にこの効果は、直交方向を向く同一のサブ波長変形回折格子を使うことにより得ることができる。
【0117】
図15Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により色付きの動的視覚効果を示す。この色付きの動的視覚効果は、第1の色(緑)の色線1501の最初は第1の方向への、その後第2の方向への動きと、第2の色(赤)の色線1502の色線1501と反対方向への動きとを含む。平坦線上の色は混色(この場合は黄)である点に注意すべきである。これは、第1および第2の色の付加的な合成の結果である。
図16Aおよび16Bは、本開示に係る光セキュリティ部品であって、色付き動的視覚効果を有するものの第2の例である光セキュリティ部品1600を示す。
【0118】
前述と同様に、モジュールの組は、モジュール1611-1615の第1のモジュールサブセット1610と、モジュール1621-1624の第2のモジュールサブセット1620とを備える。第1のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凸状領域を有する光学部品を模擬することができる。その平坦線は実質的にずれている。第2のモジュールサブセットのモジュールにより、少なくとも1つの凹状領域を有する光学部品を模擬することができる。その平坦線は実質的にずれている。前述と同様に、第1のモジュールサブセット1610の各モジュールの第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。その結果、第1の色(例えば赤)が形成される。第2のモジュールサブセット1620の各モジュールの第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。その結果、第2の色(例えば緑)が形成される。第1の領域(符号Gで示される領域)では第1の色(例えば緑)が形成され、第2の領域(符号Rで示される領域)では第2の色(例えば赤)が形成される。さらに、第2のモジュールサブセットの各モジュールの第1のパターンは、第2のパターンによって変形される。その結果、第1の領域(領域G)では第1の色(例えば緑)が形成され、第2の領域(領域R)では第2の色(例えば赤)が形成される。異なる色は、例えば前述の誘電体減算共鳴フィルタまたはR’プラズモンフィルタの効果により得ることができる。
図16Aに見られるように、第1のモジュールサブセットのモジュールは、第1のモジュールサブセットのモジュールと交互に配置される。この例は、すべてのモジュールは実質的に同じ幅を持つ。
【0119】
図16Bに示されるように、光学部品は、チルト運動に伴い、反射により色付きの動的視覚効果を示す。この色付きの動的視覚効果は、色線1601(ここでは緑の線)の1方向への動きと、斜めの色線1602(ここでは赤の線)の反対方向への動きとを含む。チルト角0では、2つの線は重ね合わさり、前述のように色は混じり合う。
【0120】
前述の例では、モジュールは異なる色の交代であった。
【0121】
例7から14で説明した構造を生成し、この構造の1つ以上の所定の輪郭を持つ第1のパターンを第2のパターンを用いて変形することも可能である。
【0122】
図17Aでは、モジュールの組は、異なるモジュールサブセット1710、1720、1730、1740、1750、1760を備える。各モジュールサブセットは、
図11Aの例に従う。各モジュールサブセットは、特定の色を持つ。例えば、モジュールサブセット1710、1730、1750は赤であり、モジュールサブセット1720、1740、1760は緑である。色は、第2のパターンによる第1のパターンの変形によって得られる。第2のパターンは、各サブセットに特有のものである。
【0123】
さらに完成した構造は、瞳Pを用いて、例えばハート型に「瞳化」される。
【0124】
図17Bに示されるように、光学部品1700は、チルト運動に伴い、反射により色付きの動的視覚効果を示す。この色付きの動的視覚効果は、図形要素1701および1702の同じ方向への動きを含む。これらの図形要素の各々は山型に形成され、交代する異なる色を持つ。
【0125】
図18Aでは、
図10Aに示されるタイプの構造が、第2のパターンによる第1のパターンの変形を備える。第2のパターンは、第1の領域P1と第2の領域P2とで異なる。
領域P2(偏菱形で示される)は、モジュールまたはモジュールサブセットの配置の形とは独立である。
【0126】
図18Bに示されるように、光学部品1800は、チルト運動に伴い、反射により色付きの動的視覚効果を示す。この色付きの動的視覚効果は、図形要素1801および1802の反対方向への動きを含む。これらの図形要素は、それぞれ斜線および水平線で形成される。これらの線の色は、チルト0の基準位置と、基準位置からいずれかの方に動いた位置との間で変化する。
【0127】
本開示に係る光セキュリティ部品の製造方法は、好ましくは以下のステップを備える。
【0128】
第1のパターン(第2のパターンによって変形されてもよい)で形成された光学構造(S1またはS2)は、フォトリソグラフィまたは電子ビームリソグラフィにより、感光性サポート(または「フォトレジスト」)の上にレジストされる。galvanoplasty(電鋳)ステップにより、光学構造を堅固な材料(例えばニッケルベース)に転写し、光学構造を備える金属マトリックスまたは「マスター」を製造することができる。
その後光セキュリティ部品の製造は、複製ステップを備える。複製は例えば、誘電体材料から作られ屈折率n1を持つ第1の層213(
図2A、2B)(例えば低屈折率層)のスタンピング(熱プレスまたは「ホットエンボス」)、典型的には厚さ数ミクロンのラッカーのスタンピングにより行われる。層213は、サポートフィルム211、例えば12μm以上100μm以下のポリマー材料のフィルム、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)で支えられることが望ましい。複製はまた、ダイイングの前にスタンピングラッカーの層をモールドし、その後紫外線架橋(「UVキャスティング」)することにより行われてもよい。特に紫外線架橋による複製は、深さの大きい構造を再生と、複製の精度の向上を可能とする。一般に複製ステップにおいて、他の任意の既知の高精度複製手法を用いることができる。その後、例えばコーティング手法または紫外線架橋可能なラッカーを用いて、正確に打ち出された層の上に、他の任意の層、例えば反射層214、(選択的な)封入層215、(選択的な)不透明な色付きコントラスト層216(この層は、一様にまたはプリントして堆積することにより、新たなパターンを形成する)、接着またはラッカータイプの層(217、218)が堆積される。
【0129】
いくつかの典型的な実施の形態を説明したが、本発明に係る光セキュリティ部品およびその製造方法が、異なる変形、変更および改造を含むことは当業者に明らかだろう。
これらの異なる変形、変更および改造も、以下の請求項で定義される本発明の範囲に含まれることが理解される。