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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
F25D23/02 306D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021035059
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2018021567の分割
【原出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2021096063
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
(72)【発明者】
【氏名】森野 厚司
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓真
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-078282(JP,A)
【文献】特開2017-156002(JP,A)
【文献】特開2017-078557(JP,A)
【文献】特開平11-257835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
E05D 1/00 ~ 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室の前面の開口部を開閉する扉と、前記扉の上端部及び下端部を回動固定するヒンジ部と、備え、
前記ヒンジ部は、円筒状のヒンジ軸を有すると共に摺動面を有する下ヒンジ部材と、前記ヒンジ軸の軸受部を有すると共に前記軸受部の外周近傍に円周状の第一の摺動面を有し前記下ヒンジ部材に対して回動可能に設けられた扉固定部材と、を備えた冷蔵庫において、
前記扉固定部材は、前記軸受部の円周方向で且つ背面側に向かって延出すると共に、前記下ヒンジ部材に対向して第二の摺動面が設けられる扉固定部材支持部を有し、
前記扉固定部材支持部は、前記第二の摺動面と対向する上面部に傾斜して形成された段部を有し、
前記扉の閉鎖時に、前記下ヒンジ部材の摺動面と前記扉固定部材支持部の第二の摺動面とが近接または当接し、
前記扉の回動時若しくは開放時に、前記下ヒンジ部材の摺動面と前記扉固定部材支持部の第二の摺動面とが当接しない又は前記扉の閉鎖時よりも接触面積が小さい冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫に備えられた貯蔵室の開口部を開閉する扉の開閉方式の一つに、扉を上下方向から挟み込んだピンを中心に回動させて扉の開閉を行うヒンジ式がある。ヒンジ式の扉は、扉の上部と下部にそれぞれ上ヒンジと下ヒンジが設けられている。また、下ヒンジには、扉が所定以上に開かないように規制するストッパが設けられている。ヒンジ式の扉は、比較的大きい面積を持つものであっても、小さい力で開閉可能であり、近年の冷蔵庫では、主に最上段に位置する冷蔵室に用いられている。
【0003】
また、近年の冷蔵庫の大容量化に伴い、扉の自身の大型化、扉のポケット部への収納食品量の増加、意匠性向上のため前面パネルのガラス化、等により重量が増加する傾向がある。ヒンジ部材で支持される回転式の扉は、その片側端部を上下のヒンジ部材で保持しているため、扉の重量の増加により下ヒンジ部材は、冷蔵庫本体とのねじ固定部を支点にして、下ヒンジ部材の手前側の先端が下方に傾くように回転することで、扉の上下方向の位置が下がり気味になる虞があるという課題があった。
【0004】
このような課題を解決すべく、従来の冷蔵庫においては、下ヒンジが回転式の扉を支持するポイントを、下ヒンジの回転軸外周近傍のみでなく冷蔵庫本体方向に延長、または増設する部材を設けることで扉の下がりを防止する構造が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-78282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、延長または増設した部材(特許文献1の図8の第二凸形状44参照)が扉の開閉時に下ヒンジに常に擦れながら回動する。そのため扉の開閉操作が重くなり使い勝手が悪くなりかつ、延長または増設した部材と下ヒンジとの摺動面は摩耗により擦り減るため、次第に扉下がりの防止効果が小さくなるという問題点を有している。
【0007】
また、上記延長または増設した部材を大きくし摺動面積を広くした場合、扉の開閉操作時に摩擦抵抗が増加し、延長または増設した部材が捩れて変形したり、破損する虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転式の開閉扉を備えた冷蔵庫において、扉ポケットへの食品の収納量の増加や、扉の大型化に伴う重量増加による扉下がりを抑制するとともに、扉の開閉操作時の摺動性を良くして使い勝手を向上させた冷蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、貯蔵室と、前記貯蔵室の前面の開口部を開閉する扉と、前記扉の上端部及び下端部を回動固定するヒンジ部と、備え、前記ヒンジ部は、円筒状のヒンジ軸を有すると共に摺動面を有する下ヒンジ部材と、前記ヒンジ軸の軸受部を有すると共に前記軸受部の外周近傍に円周状の第一の1摺動面を有し前記下ヒンジ部材に対して回動可能に設けられた扉固定部材と、を備えた冷蔵庫において、前記扉固定部材は、前記軸受部の円周方向で且つ背面側に向かって延出すると共に、前記下ヒンジ部材に対向して第二の摺動面が設けられる扉固定部材支持部を有し、前記扉固定部材支持部は、前記第二の摺動面と対向する上面部に傾斜して形成された段部を有し、前記扉の閉鎖時に、前記下ヒンジ部材の摺動面と前記扉固定部材支持部の第二の摺動面とが近接または当接し、前記扉の回動時若しくは開放時に、前記下ヒンジ部材の摺動面と前記扉固定部材支持部の第二の摺動面とが当接しない又は前記扉の閉鎖時よりも接触面積が小さい冷蔵庫とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転式の開閉扉を備えた冷蔵庫において、扉ポケットへの食品の収納量の増加や、扉の大型化に伴う重量増加による扉下がりを抑制するとともに、扉の開閉操作時の摺動性を良くして使い勝手を向上させた冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
図2】上記実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室右扉の下ヒンジの構造を示す図である。
図3】上記実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室右扉の扉閉時の下ヒンジの構造を示す図である。
図4】(a)は上記実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室右扉の扉閉時の下ヒンジの構造を示す図であり、(b)は上記実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室右扉の扉回動時の下ヒンジの構造を示す図であり、(c)は上記実施形態に係る冷蔵庫の冷蔵室右扉の扉開時の下ヒンジの構造を示す図である。
図5】上記実施形態に係る冷蔵庫の扉固定部材93の下面図である。
図6】上記実施形態に係る冷蔵庫の下ヒンジ部材91の上面図である。
図7図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。ただし、本実施形態は、以下の内容に何ら制限されず、本発明の要旨を損なわない範囲内で任意に変更して実施可能である。
【0013】
<冷蔵庫の構成>
図1は、本実施形態の冷蔵庫の斜視図である。図1に示す冷蔵庫100は、冷蔵庫本体1の正面に、冷蔵室左扉3と、冷蔵室右扉2と、製氷室扉4と、冷凍室上段扉5と、冷凍室下段扉6と、野菜室扉7とを備えている。
【0014】
冷蔵室左扉3の上部には上ヒンジ10が設けられ、下部には下ヒンジ11が設けられている。また、冷蔵室右扉2の上部には上ヒンジ8が設けられ、下部には下ヒンジ9が設けられている。
【0015】
冷蔵室左扉3は、上ヒンジ10および下ヒンジ11により、紙面手前方向に回転可能になっている。さらに、冷蔵室右扉2は、上ヒンジ8および下ヒンジ9により、紙面手前方向に回転可能になっている。すなわち、冷蔵室左扉3および冷蔵室右扉2は観音開き可能に備えられ、これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、冷蔵室(図示しない)が形成されている。
【0016】
なお、製氷室扉4、冷凍室上段扉5、冷凍室下段扉6、および野菜室扉7は紙面手前方向に引き出し可能になっている。そして、これらと冷蔵庫本体1のキャビネットとにより形成される空間に、それぞれ、冷凍室上段、冷凍室下段および野菜室(いずれも図示しない)が形成され、これら貯蔵室は仕切り部材1aにより区画されている。キャビネットは、内箱と外箱とを組み合わせたものであり、その間に断熱部材が挟まれ、断熱箱体を構成している。
【0017】
本実施形態では、下ヒンジ9,11のうち、下ヒンジ9の構造を例に採り詳しく説明する。
【0018】
<下ヒンジの構造>
図2は、冷蔵室右扉2の下ヒンジ9の構造を示す分解斜視図であり、冷蔵室右扉2の右側上方から見た図である。図3は、冷蔵室右扉2の扉閉時の下ヒンジ9の構造を示す図であり、冷蔵室右扉2の右側底面から見た斜視図である。図4は、図1のA-A断面図であり、冷蔵室右扉2を閉じた状態を(a)、開放中または閉鎖中の状態を(b)、開放した状態を図4(c)で、それぞれ冷蔵室右扉2の下方に設けられる下ヒンジ部材91と扉固定部材93の動作時の位置関係を示す。
【0019】
図2乃至4に示すように、下ヒンジ9(ヒンジ部材)は、冷蔵室右扉2の下部を冷蔵庫本体1に枢設する。下ヒンジ9は、冷蔵庫本体1に対して開閉自在に回動させるヒンジ部材である。下ヒンジ9は、冷蔵庫本体1側に固定される下ヒンジ部材91(第1ヒンジ部材)と、冷蔵庫100の冷蔵室右扉2側に固定されるストッパ部材92(第2ヒンジ部材)と、下ヒンジ部材91とストッパ部材92とが相対的に回動する際の回動中心となる下ヒンジ軸90(ピボット軸)と、を有する。
【0020】
ストッパ部材92は、回動中心の外周側に回動を規制するストッパ部922(規制部)を具備する。また、下ヒンジ部材91は、ストッパ部材92のストッパ部922が当接するストッパ当接部913(当接部)を具備する。
【0021】
このように、下ヒンジ9は、冷蔵庫本体1のキャビネットに固定され、冷蔵室右扉2を回動自在に支持する下ヒンジ軸90(ピボット軸)を板面上に有し、かつ、下ヒンジ軸90が備えられた板面の側面にストッパ当接部913を有する下ヒンジ部材91(第1ヒンジ部材)と、冷蔵室右扉2の底部に固定され、扉開時に、下ヒンジ部材91のストッパ当接部913に当接するストッパ部材92(第2ヒンジ部材)と、ストッパ部材92にねじ94により取り付けられ、扉全閉時に、下ヒンジ部材91の係合フック914に係合して冷蔵室右扉2を冷蔵庫本体1に固定する扉固定部材93(第2ヒンジ部材)と、を備える。
【0022】
冷蔵室右扉2は、底面部21に、ストッパ部材92を嵌合させて収容するストッパ部材収容部22と、扉固定部材93の突起(図示せず)が挿入される孔23(図示せず)と、底面部21の左右方向に沿って取っ手である溝部24と、冷蔵室右扉2の閉時にキャビネットに当接するマグネットを収容するマグネット収容部25と、がそれぞれ形成されている。
【0023】
ストッパ部材収容部22は、底面部21から冷蔵室右扉2の内方(上方)に形成された凹部であり、後記するストッパ部材92の取付部921の外周面が隙間なく嵌合される。ストッパ部材収容部22には、扉固定部材93の軸受931を嵌挿する開口部(図示省略)と、組み合わされたストッパ部材92および扉固定部材93をねじ94により締結するねじ穴(図示省略)と、が形成されている。
【0024】
扉固定部材93には、ストッパ部材92のストッパ部922を覆うストッパ隠し935が備えられる。この構造により、扉固定部材93を黒色の樹脂で成形することで、冷蔵庫100を正面から見た場合、冷蔵庫100全体の色調に統一感をもたせることができ、外観上優れたものとなる。なぜなら冷蔵室扉と製氷室扉および急速冷凍室扉の間は光が当たりづらく影になりやすいのに対してストッパ部材92は明色の金属製のためストッパ部材92のストッパ部922が目立ってしまうのを、黒色のストッパ隠し935が隠すからである。このことにより、冷蔵庫100全体の外観が良好に保たれる。
【0025】
<下ヒンジ部材91>
下ヒンジ部材91は、厚みのある金属製の板材を曲げ加工して形成される。下ヒンジ部材91は、冷蔵庫本体1のキャビネット及び冷蔵室とその下方に隣接した貯蔵室との間を区画する仕切り部材1aへ下ヒンジ部材91を取付けるための取付部911を備える。取付部911の右側、中央部、左側には、横長のねじ貫通孔911a,911b,911cがそれぞれ開口している。これらねじ貫通孔911a,911b,911cは図示しないねじが貫通する。
【0026】
取付部911の右側の上端部分から板状の軸支持部912が前方に垂直に折り曲げられて突出している。軸支持部912は、曲げ剛性を高めるために、断面視で波状の凹凸部912aが形成されている。軸支持部912の右側は、前方に行くほど狭くなり、先端部912bは半円形を構成し、この半円形の先頭部912bの中心部からは下ヒンジ軸90が上方に突出している。
【0027】
半円形の先頭部912bの右側の側面には、ストッパ部材92のストッパ部922が当接するストッパ当接部913が形成されている。ここで、ストッパ当接部913は、指等の挟み込みを未然に防止する観点から、ストッパ機能が保たれる最小限の段差に形成することが好ましい。
【0028】
ストッパ部材92のストッパ部922は、冷蔵室右扉2の開限界に近付くと、ストッパ当接部913に突き当たって停止する。
【0029】
また、軸支持部912の中央部からは、係合フック914が左前方に突出している。この係合フック914は、後記する扉固定部材93の係合溝934に係合する。係合フック914は、先端部がやや左側に折曲されフック形状を成している。
【0030】
係合フック914と係合溝934とはクローザの役目を果たす。冷蔵室右扉2を閉じる際、係合フック914と係合溝934とが接触した後にさらに閉じる方向に力を加えると、係合フック914が係合溝934に有する凸部を乗り越え、冷蔵室右扉2を引き込む力が加わり、冷蔵室右扉2と冷蔵庫本体1との間に閉め忘れの小さな空間(所謂半ドア)が生じることを防ぐ。
【0031】
<ストッパ部材92>
ストッパ部材92は、厚みのある金属製の板材を曲げ加工して形成され、全ての表面に下ヒンジ部材91と同様の塗装またはメッキがされている。ストッパ部材92は、冷蔵室右扉2の底面部21のストッパ部材収容部22へストッパ部材92を取付けるための取付部921を備える。取付部921の右側には、扉固定部材93から突出する軸受931を貫通する円形貫通孔921aと、扉固定部材93と共締めするねじ94を貫通するねじ貫通孔921bとがそれぞれ開口している。
【0032】
取付部921の前面の端部分から板状のストッパ部922が下方に垂直に折り曲げられている。
【0033】
ストッパ部922は、扉開時、ストッパ当接部913に当接する。ストッパ部922がストッパ当接部913に当たり、冷蔵室右扉2が必要以上に回動しないようにすることができる。
【0034】
<扉固定部材93>
扉固定部材93は、樹脂製であり、適度な弾性力を有する。扉固定部材93は、ストッパ部材92の取付部921の底面に組み合わされて、ストッパ部材92と見かけ上一体化される。
【0035】
扉固定部材93の右側には、下ヒンジ部材91から突出する下ヒンジ軸90の軸受931が上方に突設されている。この軸受931は、ストッパ部材92の円形貫通孔921aに挿入される。
【0036】
扉固定部材93の中央部には、ストッパ部材92のねじ貫通孔921bに対応する位置に、ストッパ部材92と共締めするねじ94を貫通するねじ貫通孔932が開口している。扉固定部材93の中央部左側には、ストッパ部材92と組み合わされた扉固定部材93を冷蔵室右扉2の底面部21に開口された孔(図示省略)に挿通する突起933が突出している。
【0037】
扉固定部材93の左側には、屈曲した係合溝934が設けられ、冷蔵室右扉2を閉めた状態で、係合フック914が係合溝934と係合し、冷蔵室右扉2が、使用者の意図せず開放状態になることを防止する。
【0038】
次に、冷蔵室右扉2の下ヒンジ9の組み立てについて説明する。
【0039】
図2に示すように、冷蔵室右扉2の底面部21のストッパ部材収容部22に、下方からストッパ部材92と扉固定部材93と下ヒンジ部材91とをこの順で重ねて取付ける。この場合、ストッパ部材92の取付部921の円形貫通孔921aに扉固定部材93の軸受931を挿通して重ね合わせる。ストッパ部材92の取付部921の円形貫通孔921aに扉固定部材93の軸受931が隙間なく挿通されること、およびストッパ部材92の取付部921とストッパ部材92との段部に扉固定部材93が密着することで、ストッパ部材92と扉固定部材93とは一体化される。その上で、ストッパ部材92の取付部921のねじ貫通孔921bと扉固定部材93のねじ貫通孔932とを位置合せし、ねじ貫通孔921b,932にねじ94を貫通させてねじ止めする。
【0040】
ここで、冷蔵室右扉2の底面部21のストッパ部材収容部22の凹部の外周形状は、ストッパ部材92の取付部921の外周形状と略等しい。このため、ストッパ部材92の取付部921は、冷蔵室右扉2の底面部21のストッパ部材収容部22に隙間なく収容される。さらに、ストッパ部材92に組み合わされた扉固定部材93の突起933は、冷蔵室右扉2の底面部21に開口された孔(図示省略)に挿通される。このようにして、ストッパ部材92および扉固定部材93は、冷蔵室右扉2の底面部21のストッパ部材収容部22に確実に取り付けられる。特に、ストッパ部材92および扉固定部材93は、冷蔵室右扉2の回動方向の力に対しては、強固に取り付けられている。また扉固定部材93には、底面部21のストッパ部材収容部22の壁面に当接するように、凸形状936が設けられている。凸形状936はストッパ部922の、ストッパ当接部913との当接面に対して投影面上に位置するため、ストッパ部922がストッパ当接部913に当たり扉の回転を止める際に、扉固定部材93は、ストッパ当接部913からストッパ部922が受ける力を、曲げ応力でなく圧縮応力のみを受けながら、ストッパ部材収容部22の壁面にまで伝える。これにより、扉固定部材93の変形を防ぐことができる。
【0041】
一方、図2に示すように、下ヒンジ部材91は、冷蔵庫本体1のキャビネットへねじ止めにより冷蔵庫本体1に固定される。このねじ止めは、下ヒンジ部材91の取付部911のねじ貫通孔911a,911b,911cへの3箇所のねじ止めである。なお、下ヒンジ部材91は、下ヒンジ部材91に備えられた90を扉固定部材93の軸受931を挿通し、下ヒンジ部材91とストッパ部材92と扉固定部材93とが一体となった状態で、冷蔵庫本体1のキャビネットへねじ止め固定してもよいし、あるいは先に下ヒンジ部材91を冷蔵庫本体1のキャビネットへねじ止め固定してから、冷蔵室右扉2に取り付けたストッパ部材92および扉固定部材93の軸受931に、下ヒンジ部材91の下ヒンジ軸90を挿通する組当て方法のいずれでもよい。なお、下ヒンジ軸90と軸受931との間に、潤滑性を保つためのグリスを塗付する。シリコングリス(白色)を塗付すると目立ちやすいため、オレフィン系グリス(乳白色)を用いることが好ましい。
【0042】
作業者は、続いて上ヒンジ10(図1参照)を取り付けることにより、冷蔵室右扉2が回動自在に取り付けられる。作業者は、冷蔵室右扉2と同様なヒンジ構造を有する冷蔵室左扉3も同様にして取り付ける。
【0043】
次に、下ヒンジ9の機能について説明する。
【0044】
図3に示すように、冷蔵室右扉2は、扉閉時には、下ヒンジ部材91の係合フック914が扉固定部材93の係合溝934と係合し、冷蔵室右扉2が開放状態になることを防止する。
【0045】
このとき、ストッパ部材92のストッパ部922は、冷蔵庫本体1の正面に位置することになる。しかし、ストッパ部922は、扉固定部材93のストッパ隠し935によって覆われるので、ストッパ部材92が目立つことはない。このことにより、冷蔵庫100全体の外観が良好に保たれる。
【0046】
冷蔵室右扉2の溝部24等を取っ手とし、所定以上の力で冷蔵室右扉2を右側手前に開くと、樹脂からなる扉固定部材93の係合溝934は、外方に撓って下ヒンジ部材91の係合フック914から開放される。なお、電動冷蔵室ドアを備える冷蔵庫である場合、操作部にタッチすることで所望の冷蔵室扉を自動で開くことができる。
【0047】
冷蔵室右扉2は、上ヒンジ10(図1参照)および下ヒンジ9(図1参照)により、最大扉開の範囲内で所望の角度まで回転可能である。
【0048】
図4に示すように、冷蔵室右扉2は、最大開放位置まで開かれた場合、ストッパ部922の先端は、ストッパ当接部913に突き当たり、冷蔵室右扉2のそれ以上の回動を規制する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の冷蔵庫100は、冷蔵庫本体1側に固定される下ヒンジ部材91と、冷蔵庫100の冷蔵室右扉2側に固定されるストッパ部材92と、下ヒンジ部材91とストッパ部材92とが相対的に回動する際の回動中心となる下ヒンジ軸90と、扉全閉時に、冷蔵室右扉2を冷蔵庫本体1に固定する扉固定部材93と、を備える。ストッパ部材92は、回動中心の外周側に回動を規制するストッパ部922を具備する。また、下ヒンジ部材91は、ストッパ部材92が当接するストッパ当接部913を具備する。
【0050】
<扉固定部材支持部937(扉下がり抑制)>
冷蔵室右扉2の開動作時および閉動作時において、図4図5図6図7を用いて説明する。図4(a)~図4(c)は、冷蔵室右扉2の開閉動作時における扉固定部材93と下ヒンジ部材91との位置関係を示した図であり、夫々、図4(a)は冷蔵室右扉2を完全に閉じた状態を、図4(b)は冷蔵室右扉2の回動時の状態を、図4(c)は冷蔵室右扉2を最大に開放させた状態を示す。図5は、冷蔵室右扉2の扉固定部材93の下面側(即ち、下ヒンジ部材91の上面側と対向する面)を示す図である。図6は、下ヒンジ部材91を上面側(即ち、扉固定部材93の下面側と対向する面)を示す図である。図7図1のA-A断面図であり、冷蔵室右扉2が下ヒンジ部材91や扉固定部材93等を介して冷蔵庫本体1に固定している状態を示す。
【0051】
扉固定部材93には、上下に隣接して設けられた下ヒンジ部材91と摺動する面を有している。第一の摺動面として、下ヒンジ軸90の外周近傍に円周状に設けられた摺動面937aを有する。また、第二の摺動面として、固定部材93の冷蔵庫本体方向(背面側)に延伸して設けられた扉固定部材支持部937の底面側、即ち、冷蔵室右扉2の閉時に下ヒンジ部材91と対向する摺動面937bを備える。下ヒンジ部材91の上面側には、冷蔵室右扉2の閉状態時において、扉固定部材93側に有する摺動面937a及び摺動面937bと対向して摺動面915を有する。すなわち、冷蔵室右扉2が閉状態のとき、下ヒンジ部材91側の摺動面915と扉固定部材93側の摺動面937aとが近接するとともに、下ヒンジ部材91側の摺動面915と扉固定部材93(扉固定部材支持部937)側の摺動面937bとが近接する。
【0052】
これにより、冷蔵室右扉2が閉状態のとき、冷蔵室右扉2自身の重量やポケット部の食品量により冷蔵室右扉2に負荷がかかると、下ヒンジ部材91付近に鉛直方向の荷重がかかり、取付部911を支点として下ヒンジ部材91の手前側が下方に回転する力が働く。このとき、摺動面915と扉固定部材支持部937の下面側の摺動面937bとが接することで、冷蔵室右扉2を支持する箇所は下ヒンジ軸90の周辺近傍でなく、扉固定部材支持部937を介して冷蔵庫本体1付近に移動する。移動前と比較すると、下ヒンジ軸90から取付部911までの前後方向の距離よりも、扉固定部材支持部937の端部から取付部911までの前後方向の距離を短くして、取付け支点(回転支点)との距離を近くした。
【0053】
以上により、下ヒンジ部材91の先端部が下方向に回転し、冷蔵室右扉2の位置が下がる際の上下方向の変位量を小さくでき、下ヒンジ部材91の変形や、取付部911が固定されるキャビネット及び仕切り部材1aの変形を抑制することができ、冷蔵室右扉2の位置の下がり量を抑制することができ、冷蔵室内からの冷気漏れや外観品質の低下を抑制できる。
【0054】
尚、厳密には、冷蔵室右扉2のポケット部に収納した食品などにより過度の負荷が加えられていない場合には、摺動面937bと摺動面915の間にはわずかな隙間が設けられてもよく、冷蔵室右扉2の開閉の動作の際に、摩擦が発生し難い構造となっている。
【0055】
<凹み面916(摺動性向上)>
図4乃至図6に示すとおり、下ヒンジ部材91には摺動面915と隣接して凹み面916が設けられる。これにより、扉固定部材支持部937の動作時、即ち、図4(b)に示すような冷蔵室右扉2の開閉動作中の状態や、図4(c)に示すような冷蔵室右扉2を完全に開放した状態においては、摺動面915と摺動面937bとが接触しない、若しくは、接触する面積を小さくする位置関係とした。
【0056】
扉固定部材93の摺動面937bは、冷蔵室右扉2を閉状態から図4(b)のように一定以上開動すると、摺動面915との接触部分は除々に小さくなる。このとき、凹み面916は、扉固定部材支持部937の回転軌跡上に設けられており、下ヒンジ部材91と固定部材93が擦れるのは、冷蔵室右扉2を一定以上閉じたときである。
【0057】
また、凹み面916から摺動面915にかけて設けられる立ち上がり壁は滑らかな傾斜面である。さらに、該立ち上がり壁は、図4(a)に示すように冷蔵室右扉2の閉鎖時の下ヒンジ部材91の上面視において、扉固定支持部937の延伸方向(冷蔵庫本体1方向)と平行するように設けられる。これにより、図4(c)に示す冷蔵室右扉2の開放状態から閉鎖状態にするとき、まず摺動面937bは凹み面916上を抵抗なく移動した後、傾斜面を乗り上げながら移動して摺動面915との接触面積が次第に増していき、冷蔵室右扉2の閉鎖状態において摺動面937bと摺動面915とが重なり合った位置関係となる。
【0058】
また、冷蔵室右扉2の閉じ動作時において、係合溝934が係合フック914を乗り越えた後に、摺動面937bと摺動面915とが完全に重なり合う位置関係とした。これにより、冷蔵室右扉2の閉じ動作時に、摺動面937bと摺動面915との接触面積且つ摩擦抵抗が小さいときに、係合溝934が係合フック914を乗り越えるタイミングとしたので、係合溝934が係合フック914を乗り越えるときの抵抗を減らし、冷蔵室右扉2が半ドア状態になることを抑制する。
【0059】
また、図5に示すとおり、扉固定部材93の摺動面937bには小孔938が複数設けられている。これにより摺動面937bと下ヒンジ部材91摺動面915の間に、塗布したグリスが保持され、扉開閉に伴いグリスが供給され続けることができ、かつ固定部材93の摺動面937bの摩耗粉が、万が一発生した場合でも、散乱するのを防ぐことができる。
【0060】
以上により、冷蔵室右扉2の開閉操作が重くなったり、且つ、摺動面937bが摩耗により擦り減ることと抑制し、冷蔵室右扉2の取付け位置下がりを抑制する効果の長期的に得ることができる。また、副次的な効果として、板状の軸支持部912に凹み面916を成形することは、軸支持部912に波状の凹凸部を成形することと同義であるため、軸支持部912の剛性を上げることにも繋がる。
【0061】
<収納凹部940(嵌め合い公差)>
扉固定部材93に一体成形で設けられた扉固定部材支持部937は、底面部21に設けられた収納凹部940に収められる。扉固定部材支持部937は、その高さ寸法を厚く形成するほど強度を確保できるが、摺動面937aと摺動面937bとを略同一の平面形状としつつ、摺動面915との間にわずかな隙間を確保することが望ましいことから、下方向に厚みを増したり突出させたりすることは困難である。そこで、底面部21に収納凹部940を設けることで、扉固定部材支持部937の厚みを増して強度を向上できた。また、本実施の形態においては、冷蔵室右扉2の開閉方向に対して、収納凹部940内の側壁940aの投影面上に、扉固定部材支持部937の側面部937cが位置する。従って、冷蔵室右扉2の開閉時、互いに向かい合う側壁940a及び側面部937が当接するように固定したことで、冷蔵室右扉2の開閉動作時に互いにかかる力を伝達させやすくし、応力集中による捩れや変形を抑制できる。
【0062】
仮に、この収納凹部940に扉固定部材支持部937を収納しない場合、即ち、扉固定部材支持部937の上面部937eと底面部21とを上下方向に重ねて配置した場合、例えば、冷蔵室右扉2の閉動作時に、摺動面937bと摺動面915とが接触して摩擦抵抗が増すと、底面部21にしっかり固定されていない扉固定部材支持部937は、冷蔵室右扉2の回動に追従できずに捩れや変形する虞がある。
【0063】
また、底面部21や扉固定部材93は樹脂成形品であり、その成形時の収縮や変形等によって生じる嵌め合い公差を考慮する必要がある。扉固定部材支持部937を収納凹部940に収納する際、嵌め合い公差によるギャップの調整を容易にするために、扉固定部材支持部937の側面部937cに凸部937dが設けられ、また、上面部937eに段部937fが設けられる。
【0064】
凸部937dは下ヒンジ軸90の先端部、即ち、冷蔵庫本体1の近傍側に設けることが望ましい。冷蔵室右扉2の開閉動作時に、側面部937dと収納凹部940とを直ぐに当接できるようにして互いのがた付きを抑制している。
【0065】
扉固定部材支持部937の上面部937eには緩やかに傾斜して形成された段部937fを有する。これにより、収納凹部940及び扉固定部材支持部937が変形し、これらの上下方向の隙間が大きくなった場合でも、冷蔵室右扉2にかかる荷重を、扉固定部材支持部937の先端部に設けた段部937fで確実に受けることができ、取付け部911との距離を短くできる。
【0066】
また、上面部937eは、下ヒンジ軸90側から端部側に向かって複数のリブを形成し、強度を向上している。
【0067】
以上、本実施形態について図面を参照しながら説明したが、本実施形態は前記の内容に何ら限定されるものではない。したがって、本発明には、様々な変形例が含まれる。すなわち、前記の実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0068】
例えば、冷蔵庫の扉のヒンジ構造として下ヒンジ9を挙げたが、ストッパを有するヒンジであればよく、冷蔵室左扉3の下ヒンジ11など他の扉に適用してもよい。
【0069】
また、実施の形態において、冷蔵室右扉2で説明しているがこれに限らず、冷蔵室左扉3に適用可能であり、また、ヒンジによる回転式の扉であればどの貯蔵室の扉にでも適用することが可能である。
【0070】
これらの他にも、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置換することが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらには、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加、削除、置換等することもできる。
【0071】
例えば、本実施形態では、冷凍庫を備える冷蔵庫への適用例を挙げたが、扉を備える冷蔵庫であれば同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 冷蔵庫本体
3 冷蔵室左扉(扉)
2 冷蔵室右扉(扉)
8,10 上ヒンジ
9,11 下ヒンジ(ヒンジ部材)
90 下ヒンジ軸(ピボット軸)
91 下ヒンジ部材(第1ヒンジ部材)
911,921 取付部
912 軸支持部
912b 先頭部
913 ストッパ当接部(当接部)
914 係合フック
915 摺動面
916 凹み面
92 ストッパ部材(第2ヒンジ部材)
922 ストッパ部
93 扉固定部材(第2ヒンジ部材)
931 軸受(軸受部)
934 係合溝
935 ストッパ隠し
936 凸形状(折れ防止)
937 扉固定部材支持部
937a 摺動面(扉固定部材に有する第一の摺動面)
937b 摺動面(扉固定部材に有する第二の摺動面)
937c 側面部
937d 側面凸部
937e 上面部
937f 段部
938 小孔
94 ねじ
940 収納凹部
100 冷蔵庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7