(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ナットロッキングシステム、及びかかるナットロッキングシステムを備えた電子デバイス
(51)【国際特許分類】
F16B 39/10 20060101AFI20221117BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F16B39/10 Z
F16B39/10 D
H04N5/222 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021068076
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バーグスタン, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】アンデション, オラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブソン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ノードクビスト, キム
(72)【発明者】
【氏名】ホルムキスト, ヤコブ
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-128213(JP,U)
【文献】米国特許第02898135(US,A)
【文献】実開昭60-059812(JP,U)
【文献】特開2009-135723(JP,A)
【文献】独国特許発明第00721397(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/00 -43/02
H04N 5/222- 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットロッキングシステム(10)であって、ナット(100)、シャフト(200)、及び保持リング(300)を備え、前記ナット(100)がねじ式継手(12)によって前記シャフト(200)に接続され、前記シャフト(200)が、前記保持リング(300)の本体(302)が配置されている中空部(202)を備え、前記保持リング(300)が、舌状部(304)であって、前記ナット(100)の動きが抑制されるように、前記シャフト(200)に対する前記ナット(100)の
シャフト軸方向への動きに応じて前記ナット(100)と係合するように構成されている舌状部(304)を備え、前記舌状部(304)が、前記ナット(100)の上側部分(102)の上に延在する第1の舌状部分(306)であって、前記ナット(100)の前記上側部分(102)と係合するように構成されている第1の舌状部分(306)を備え
、前記舌状部(304)が、前記シャフト(200)の長手方向に延在する第2の舌状部分(308)をさらに備え、前記第2の舌状部分(308)が、前記本体(302)と前記第1の舌状部分(306)とを相互接続している、ナットロッキングシステム(10)。
【請求項2】
前記保持リング(300)の前記本体(302)がスプリットリングである、請求項1に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項3】
前記保持リング(300)の前記本体(302)が弾力材で作製されている、請求項1又は2に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項4】
前記中空部(202)には、前記保持リング(300)の前記本体(302)のセクションを受け入れる凹部(206)が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項5】
前記凹部(206)が環状溝である、請求項4に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項6】
前記舌状部(304)が、前記舌状部(304)の先端部を構成する第3の舌状部分(310)を備え、前記第3の舌状部分(310)が、前記シャフト(200)の長手方向に延在し、前記ナット(100)の外側側面(104)と係合するように構成されている、請求項1から
5のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項7】
前記ナット(100)の前記外側側面(104)には、前記第3の舌状部分(310)を受け入れるための溝(106)が設けられている、請求項
6に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項8】
前記保持リング(300)の前記本体(302)及び前記舌状部(304)が、一体型に形成されている、請求項1から
7のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項9】
前記ねじ式継手(12)が、前記シャフト(200)の雄ねじ(208)と、前記ナット(100)の雌ねじ(108)とを備えている、請求項1から
8のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項10】
前記保持リング(300)の前記本体(302)が、前記シャフト(200)の端部(204)からある距離に配置されている、請求項1から
9のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)。
【請求項11】
電子デバイス(1000)であって、支持体に取り付け可能である第1の部分(1002)と、請求項1から
10のいずれか一項に記載のナットロッキングシステム(10)によって、前記第1の部分(1002)に取り付けられている第2の部分(1004)とを備えている電子デバイスであって、前記ナットロッキングシステム(10)の前記シャフト(200)が、前記電子デバイス(1000)の前記第2の部分(1004)と関連付けられている、電子デバイス(1000)。
【請求項12】
前記電子デバイス(1000)が、カメラデバイス(1000)であり、前記第2の部分(1004)が、前記第1の部分(1002)に回転可能に取り付けられているカメラ部分(1004)である、請求項
11に記載の電子デバイス(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的接続の安全性の向上に関し、より具体的には、シャフトに取り付けられたナットを保持するためのナットロッキングシステムに関する。本発明はさらに、ナットロッキングシステムを備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば監視カメラなどの、人がいるかもしれない領域で使用されるデバイスは、いくつかの安全要件が課せられる。かかる要件は、例えば、デバイスがどのように構築されるか、壁又は天井などの支持体にどのように取り付けられるかに関係し得る。特定の要件は、法律及び/又は基準によって明示されており、他の要件は、事実上非公式である。監視カメラなどのデバイスの製造業者は、製品の安全性を向上させるだけでなく、小型化及び/又はより多くの電子装置を製品に組み込むことができるように絶えず努力している。
【0003】
このことは、例えば、所望の機能を確実に維持するために、電子構成部品が、構成部品間に特定の隔離間隔を必要とするなどの、特定の問題を引き起こす。これは、デバイスの電子構成部品だけでなく、機械構成部品にも影響を及ぼす。この機械構成部品は、できるだけ堅牢にするとともに、できるだけコンパクトにもしなければならない。
【0004】
パンチルトズームカメラ及びドームカメラなどの多くの種類のカメラは、カメラの大きな部分、典型的にはカメラハウジングが、カメラの固定された部分に対して可動である。かかる用途において、特にカメラデバイスの可動部が固定部分から懸架配置されるときには、可動部が固定部分にしっかりと取り付けられることが重要である。
【0005】
従来技術の解決策は、特に上記に照らして、著しくスペースをとることが証明されている。
【0006】
関連する背景技術は、例えば、独国特許第721397C号、独国特許第808308C号、独国特許第473894C号、米国特許第2131812A1号、及び独国特許第3040267A号に見出すことができる。
【発明の概要】
【0007】
上述に鑑み、本発明の目的は、従来技術の解決策に伴う問題の幾つかを軽減する、ナットロッキングシステム、及び前記ナットロッキングシステムを備えた電子デバイスを提供することである。
【0008】
上記目的、また以下の説明から明らかになる他の目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本開示によると、請求項1に規定された特徴を有するナットロッキングシステム、及び請求項12に規定された特徴を有する電子デバイスが提供される。好ましい実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0009】
より具体的には、第1の態様によれば、ナット、シャフト、及び保持リングを備えたナットロッキングシステムが提供される。ナットは、ねじ式継手によってシャフトに接続され、シャフトは、保持リングの本体が配置された中空部を備える。保持リングは舌状部を備え、該舌状部は、ナットの動きが抑制されるように、シャフトに対するナットの、シャフトの軸方向への動きに応じて、ナットと係合するように構成されている。シャフトの中空部の内側に取り付けられている保持リングは、ナットとシャフトとの間の接続の安全性を、簡潔なやり方で向上させることが可能である。
【0010】
舌状部は、ナットの上側部分の上に延在する第1の舌状部分をさらに備え得、第1の舌状部分は、ナットの上側部分と係合するように構成されている。
【0011】
一実施形態では、保持リングの本体は、シャフトの中空部へ保持リングを挿入することを容易にするスプリットリングである。
【0012】
さらに、保持リングの本体は、弾力材で作製され得る。保持リングの弾性により、保持リングは、シャフトの中空部に取り付けられると、ばねのようにその元の形態に戻ることができる。さらに、保持リングの弾性を使用して、シャフトと保持リングとの間にプレテンショニング力を設けることができる。
【0013】
一実施形態では、中空部には、保持リングの本体のセクションを受け入れる凹部が設けられ得る。凹部は、保持リングがシャフトの中空部の中で正しい位置に取り付けられることを容易にし、保持リングの保持力を増強する。
【0014】
凹部は、さらに、環状溝として形成され得る。
【0015】
舌状部は、シャフトの長手方向に延在する、本体と第1の舌状部分とを相互接続している第2の舌状部分をさらに備え得る。
【0016】
一実施形態では、舌状部が、舌状部の先端部を構成する第3の舌状部分を備え、第3の舌状部分は、シャフトの長手方向に延在し、ナットの外側側面と係合するように構成される。第3の舌状部分は、保持リングがナットのさらなる回転を防止する前に、ナットの可能な回転量を減少させる。したがって、第3の舌状部分は、ナットロッキングシステムの安全性をさらに向上させる。
【0017】
しかも、ナットの外側側面には、第3の舌状部分を受け入れるための溝が設けられ得る。第3の舌状部分がナットの外側側面の溝に配置されることによって、保持リングはナットの回転からのより強い力に耐えることができる。さらに、保持リング、より具体的にはその舌状部は、ナットの直径を越えて延在する必要がなく、このことにより、よりコンパクトなナットロッキングシステムが実現される。
【0018】
一実施形態では、保持リングの本体及び舌状部は、一体型に形成され得る。
【0019】
ねじ式継手は、シャフトの雄ねじとナットの雌ねじとを備え得る。したがって、ナットがシャフトの外側に配置され、一方、保持リングがシャフトの中空部に配置され、保持リングの舌状部がナットの軸方向の動きを抑制するように延在する。したがって、ナットロッキングシステムは、前記シャフトの内側に取り付けられた保持リングによって、シャフトの外側に取り付けられたナットを固定する方法を提供し、このことが、貴重なスペースを節約し、ねじ式継手の安全性を向上させる。
【0020】
保持リングの本体は、前記シャフトの端部からある距離に配置され得る。
【0021】
本開示の第2の態様では、電子デバイスが提供される。電子デバイスは、第1の部分と第2の部分とを備える。第1の部分は、支持体に取り付け可能であり、第2の部分は、第1の態様に係るナットロッキングシステムによって、第1の部分に取り付けられている。ナットロッキングシステムのシャフトは、電子デバイスの第2の部分と関連付けられている。したがって、ナットロッキングシステムが電子デバイス内に追加のスペースを必要としないので、安全性が向上し、コンパクト化が可能な電子デバイスが提供され得る。
【0022】
さらに、電子デバイスは、カメラデバイスであってもよく、第2の部分は、第1の部分に回転可能に取り付けられているカメラ部分である。カメラデバイス、特に監視に使用されるカメラデバイスは、多くの人がいる領域に配置される可能性がある。カメラ部分を意図せず第1の部分から取り外すことができないことが重要である。それは、このことが、カメラ部分が落下し、最悪のシナリオでは、カメラデバイスの下方にいる人に傷害を引き起こす結果となり得るためである。本明細書の教示により、ナットがシャフトから外れて、それにより、カメラ部分が第1の部分から解放される可能性が減少する。さらに、何らかの理由でナットがシャフトから外れても、ナットロッキングシステムは依然として、保持リングを設けることによって、第1の部分に取り付けられたままとなる。したがって、カメラデバイスのサイズを損なうことなく、安全性を向上させたカメラデバイスが提供される。
【0023】
一般的に、請求項で使用されるすべての用語は、本明細書で別途明示的に規定されない限り、当該技術分野におけるそれらの用語の通常の意味に従って解釈すべきである。別途明示的に記載されない限り、「1つの/この(素子、デバイス、構成部品、手段、ステップ等)」への言及は、前記素子、デバイス、構成部品、手段、ステップ等のうちの少なくとも1つの例を指すものとして広義に解釈すべきである。本明細書に開示のいかなる方法におけるステップも、別途明示的に記載されない限り、開示の順序通りに実施される必要はない。
【0024】
本発明の上記及び追加の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細説明を通して、より明確に理解されるであろう。図面では類似要素に対して同じ参照番号が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ナットロッキングシステムの斜視図を開示する。
【
図2】ナットロッキングシステムのための保持リングの斜視図を開示する。
【
図3】ナットロッキングシステムの斜視図を開示する。
【
図4】ナットロッキングシステムのための保持リングの斜視図を開示する。
【
図5a】一実施形態に係る、ナットロッキングシステムのための六角ナットの斜視図を開示する。
【
図5b】一実施形態に係る、ナットロッキングシステムのための六角ナットの斜視図を開示する。
【
図6a】一実施形態に係る、ナットロッキングシステムのための12角ナットの斜視図を開示する。
【
図6b】一実施形態に係る、ナットロッキングシステムのための12角ナットの斜視図を開示する。
【
図7】ナットロッキングシステムのためのシャフトの断面図を開示する。
【
図8】ナットロッキングシステムの断面図を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
これより、本発明の現時点で好ましい実施形態を示す添付図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。これらの実施形態はむしろ、本開示が包括的で完全となるように提供されており、当業者に本発明の範囲を十分に伝える。
【0027】
図1は、ナットロッキングシステム10の斜視図を示す。ナットロッキングシステム10は、ナット100とシャフト200との間の接続の安全性を向上させるように構成される。ナット100は、以下の
図5及び
図6に対してさらに説明される。ナット100は、ねじ式継手12によってシャフト200に接続され、ねじ式継手12は、好ましくは、シャフト200の周面の雄ねじ208とナット100の雌ねじによって形成される。ナット100は、シャフト200の端部204の近くに取り付けられ得る。かかる構成は、任意の外部保持リングがナット100とシャフト200の端部204との間に取り付けられてしまうことを防止する。
【0028】
シャフト200は、シャフト200の内部に形成された中空部202を備える。一実施形態では、中空部202は、シャフト200の全長にわたって延在し、したがって、環状断面形状を有するシャフトを形成する。しかし、中空部202は、シャフト200の全長にわたって延在する必要はない。
【0029】
本開示のナットロッキングシステム10は、シャフト200の中空部202内に配置されるように構成された本体302を有する保持リング300をさらに備える。したがって、ナット100は、シャフト200の端部204のできるだけ近くに取り付けられることが可能であり、又はシャフト200の端部204を過ぎて突出することも可能である。本明細書の教示による保持リング300は、シャフト200の中空部202の内側にのみ取り付けられるので、したがって、シャフト200の外側のスペースのために、ナット100と競合しない。
【0030】
保持リング300は、
図2に詳細に示されており、舌状部304を備える。ナット100が、何らかの理由で緩くなり、外れ始め、シャフト200の軸方向に移動する場合、舌状部304がナット100と係合するように構成される。
【0031】
好ましくは、
図1及び
図2の実施形態に示されるように、舌状部304には、ナット100の上側部分102の上に延在する第1の舌状部分306が設けられている。上側部分102は、シャフト200の端部204と同じ方向に向くナット100上の表面である。
【0032】
ナット100がシャフト200上で外れ始めると、第1の舌状部分306は、ナット100の上側部分102と係合する。したがって、シャフト200の軸方向へのナット100の動きは、保持リング300とナット100との間の相互作用によって制限/抑制される。第1の舌状部分306は、好ましくは、シャフト200の軸方向に対して実質的に垂直に延在すべきであるが、シャフト200の軸方向に対して他の角度に配置してもよいことを理解すべきである。好ましい実施形態では、第1の舌状部分306は、平坦な形状を有する。この平坦な形状は、保持リング300の本体302が配置された平面に対して平行であるが、この平面に対して垂直方向にオフセット、すなわち、シャフト200の軸方向にオフセットされて配置されている。したがって、保持リング300の本体302は、シャフト200の中空部202内に、シャフトの端部204からある距離に配置され得る。
【0033】
しかし、一実施形態(図示せず)では、第1の舌状部分306は、保持リング300の本体302の平面に配置されてもよい。この実施形態では、第1の舌状部分306は、ナット100の上側部分102の上方に配置されるように、ナット100とシャフト200の端部204との間に配置されるシャフト200の穴を通して本体302から延在するように構成される。
【0034】
好ましくは、保持リング300、より具体的にはその本体302は、スプリットリングとして形成され、シャフト200の中空部202に嵌合されるように圧縮可能である。保持リング300は、さらに好ましくは、鋼、好ましくはばね鋼などの弾力材から作製されるが、他の金属材料、複合材料、及びプラスチック等のポリマー材料などの他の材料も考えられる。保持リング300の弾性は、挿入されたときに屈曲し、次いで元の形状に戻ることを可能にし、好ましくは、それにより、保持リング300とシャフト200との間の摩擦を増加させる特定のプレテンション力をシャフト200の内側に加える。このことは、保持リング300の保持機能性を向上させるだけでなく、保持リング300がシャフト200に緩く嵌合した場合に発生し得るいかなる望ましくないノイズをも避ける点で、さらに有益であり得る。
【0035】
保持リング300の舌状部304は、シャフト200の長手方向に延在する、本体302と第1の舌状部分306とを相互接続している第2の舌状部分308をさらに備え得る。好ましい実施形態では、本体302及び舌状部304は、例えば、スタンピング及び/又は曲げ製造工程によって、一体型に形成される。
【0036】
図3及び
図4は、ナットロッキングシステム10のさらなる別の実施形態を示す。
図3及び
図4に示される実施形態は、
図1及び
図2に示される実施形態と大部分の特徴を共有し、したがって、以下では異なる特徴のみを強調する。
【0037】
図3及び
図4に示される実施形態における保持リング300は、舌状部304の先端部を構成する第3の舌状部分310をさらに備える。第3の舌状部分310は、シャフト200の長手方向に延在し、ナット100の外側側面104と係合するように構成される。第3の舌状部分310は、好ましくは、第1の舌状部分306から延在する。したがって、
図3及び
図4に示される実施形態における舌状部304は、実質的にU字形であり、シャフト200の中空部202内にある本体302から、シャフト200の端部204を越えて、ナット100の径方向外側へ延長する。
【0038】
第3の舌状部分310は、好ましくは、ナットロッキングシステム10がその組み立てられた状態にあるとき、すなわちナット100と保持リング300の両方がシャフト200に取り付けられているときに、ナット100の外側側面104の近くに、又はそれに接触して配置される。外側側面104は、好ましくは、
図5a若しくは
図5bに示されるように、六角ナット上の側面のうちの1つ、又は
図6a若しくは
図6bに示されるように、12角ナット上の側面のうちの1つである。ナット100が回転すると、第3の舌状部分310にすでに接触していなければ、第3の舌状部分310に接触することになる。したがって、第3の舌状部分310がさらなる回転を防止する前に、ナット100は、短い距離のみ回転することが可能であるので、許容されるナット100の動きが少なくなる。例えば、ナット100とシャフト200との間のネジ接続部のピッチが小さいとき、すなわち、ナット100の特定の軸方向の動きをもたらすためにナット100の比較的大きな回転が必要とされるとき、第3の舌状部分310は、ナット100が幾らか軸方向への大幅な動作を達成する前に、その回転を防止し得る。第1の舌状部分306は、第3の舌状部分310を補足し得、何らかの理由で第3の舌状部分310がナット100の動きを止められない場合、第1の舌状部分306もナット100に係合して、保持リング300の保持機能性を補強する。
【0039】
第3の舌状部分310はナット100の外側側面104に接触するように配置されるので、第3の舌状部分310上のナット100からの力が、保持リング300とシャフト200との間の摩擦力を増し加え、セルフロッキングするように保持リング300からの保持力を増強する。このことは、ナット100が第1の舌状部分306に係合するときにも起こる。
【0040】
図5aは、シャフト200(
図7に示される)に設けられた雄ねじ208と協働するための雌ねじ108を有し、ねじ式継手12を形成する従来の六角ナット100を示す。ナット100は、6つの外側側面104及び上側部分102を備える。
図5bは、ナット100の外側側面104の1つ又は幾つかに配置された溝106がナット100に設けられている六角ナット100の別の実施形態を示す。ナット100上の溝106は、第3の舌状部分310を受け入れるように構成され、この第3の舌状部分310は、その目的のために、残りの第1の舌状部分及び第2の舌状部分306、308よりも狭い幅を有し得る。溝106は、ナット100の外側側面104における垂直な長方形のノッチ及び/又は凹部によって形成され得る。上述のように、ナット100は、例えば、その外側側面104のそれぞれに、若しくは2つ目の外側側面104ごとに、幾つかの溝106が設けられてもよく、又は各外側側面104に2以上の溝106が設けられてもよい。
【0041】
図6aにおいて、ナットロッキングシステム10のためのナット100の別の実施形態が示されている。
図6aのナット100は12角ナットであり、シャフト200から/の周りのナット100の横方向の突出、すなわち直径を減少させることをさらに容易にする。したがって、12角ナット100は、外側側面104及び上側部分102を備える。ナット100は、シャフト200(
図7に示される)の雄ねじ208と協働するように配置された雌ねじ108を備え、したがってねじ式継手12を形成する。しかも、
図6bの好ましい実施形態に示されるように、12角ナット100には、ナット100の外側側面104の1つ又は幾つかに配置された溝106が設けられてもよい。
【0042】
ナット100の溝106は、
図5bに示された実施形態のように、第3の舌状部分310を受け入れるように構成され、この第3の舌状部分310は、その目的のために、残りの舌状部分306、308よりも狭い幅を有し得る。溝106は、ナット100の外側側面104における垂直な長方形のノッチ及び/又は凹部によって形成され得る。ナット100は、例えば、その外側側面104のそれぞれに、又は2つ目の外側側面104ごとに、幾つかの溝106がさらに設けられてもよく、又は各外側側面104に2以上の溝106が設けられてもよい。
【0043】
第3の舌状部分310は、ナット100の溝106との相互作用によって、ナットロッキングシステム10に追加のロッキング力を提供する。さらに、本明細書の教示に従ってナットロッキングシステム10を設けることによって、保持リング300は、ナット100の横方向又は外側に突出せず、これは、よりコンパクトなナットロッキングシステム10を提供する上で有益である。ナット100の溝106は、舌状部304の第3の舌状部分310を、ナット100の外径からなお突出させずにナット100の外側に配置することをさらに容易にする。さらに、本明細書で提供されるナットロッキングシステム10は、シャフト200の外側に取り付けられたナット100が、前記シャフトの中空部202の内側に取り付けられた保持リング300によって保持され得ることを可能にし、このことは、上述のように、シャフト200の周面に、保持リングの取り付けのために、ナット100とシャフト200の端部204との間のスペースを設ける必要がないということを意味する。
【0044】
さらに、ナット100の側部の数は6個又は12個に限定されず、本明細書の教示は、任意の数の側部を有するか、又は完全に円形若しくは楕円形の外周側面104を有する任意の種類のナット100に適用可能である。
【0045】
図7では、シャフト200は断面図で見ることができる。シャフト200は、上述のように、保持リング300の本体302が配置されるように構成された中空部202を備える。保持リング300をシャフト200の中空部202に取り付けることを容易にするために、中空部202には、保持リング300の本体302のセクションを受け入れるための凹部206が設けられ得る。凹部206は、保持リング300をシャフト200に対してその所望の位置に保持し、ナットロッキングシステム10の保持力を向上させるようになっている。凹部206は、多くの異なる方法で形成されてもよく、例えば、前記シャフトの端部204に最も近いシャフト200の中空部202の部分が、端部204からより遠くに配置された中空部202の隣接部分よりも小さい内径を有するステップによって形成されてもよい。ステップの形状の凹部206は、保持リング300の本体302がステップ206を過ぎてシャフト200の端部204の方へ移動するのを防止し、その一方で、舌状部304又はより具体的には第1の舌状部分306は、保持リング300がシャフト200の端部204から離れる動きを防止する。
【0046】
好ましい実施形態では、凹部206は環状溝206である。環状溝206は、シャフト200に対する保持リング300の動きを、その端部204に向かう方向及びそれから離れる方向の両方に抑制する。
【0047】
環状溝206は、シャフト200の端部204から所定の距離で中空部202に形成され、好ましくは、保持リング300は、シャフトに取り付けられると、第1の舌状部分306がナット100の上側部分102の上方に配置されるように配置される。第1の舌状部分306は、好ましくは、ナット100の外側、すなわち最大直径を過ぎて延在しないように、シャフト200の半径方向に対して延長を有するべきである。
【0048】
好ましい実施形態では、保持リング300の第1の部分306は、本体302がシャフト200の凹部206内に配置されるときに、シャフト200の端部204に隣接して、又は当接して配置される。
【0049】
図8は、ナットロッキングシステム10の断面図を示す。
図8において、ナット100は、保持リング300によって固定/保持され、その本体302は、シャフト200の中空部202内の凹部206に配置される。保持リング300は、ナット100を保持することに加えて、さらに、シャフト200の中空部202内に構成部品400を固定するために使用され得る。
図8において、構成部品400は、シャフト200の中空部202内に配置されたスリップリング400によって示され、凹部206から中空部202内に突出する保持リング300の本体302によって保持されており、したがって、スリップリング400を所定位置に保持する。しかし、構成部品400は、シャフト200の中空部202内に配置するのに適した任意の構成部品400によって形成され得る。
【0050】
最後に、本開示に係る、ナットロッキングシステム10を備えた電子デバイス1000の断面図を示す
図9を参照する。
図9の電子デバイス1000は、本発明が特に有益である典型的な用途を示すが、他の用途も想定される。
【0051】
電子デバイス1000は、第1の部分1002と第2の部分1004とを備える。第1の部分1002は、支持体に取り付け可能であり、したがって、第2の部分1004が取り付けられる基部又はハウジングを形成し得る。支持体は、ビルの壁若しくは天井、又は電子デバイス1000が取り付けられ得る任意の他の種類の構造体であり得る。
【0052】
第2の部分1004は、好ましくは、本明細書の教示によると、第1の部分1002に回転可能に取り付けられたシャフト200を備える。ナット100は、第2の部分1004を第1の部分1002に取り付けるように構成されており、ナット100を取り外さない限り、第2の部分1004を第1の部分1002から解放することはできない。ナットロッキングシステム10は、ナット100を意図せず取り外すことを防止する。
【0053】
好ましい実施形態では、電子デバイス1000は、パンチルト(PAN-TILT-ZOOM(PTZ))カメラ又はドームカメラ等などのカメラデバイス1000である。したがって、第2の部分1004は、第1の部分1002に対して回転可能であるように構成され得る。
【0054】
かかる用途では、電子デバイス1000は、例えば、小売店又はオフィスビルなどの、電子デバイス1000の周り及び/又は下方を移動する人の密度が高い可能性がある領域に、監視のために取り付けられるように構成され得る。かかる状況では、第2の部分1004、すなわちカメラ部分1004を所定位置に保持するナット100が、何らかの理由でシャフト200から落ちるか又は緩んでも、第2の部分1004を第1の部分1002から解放してはならないという厳しい要件がある。本明細書に記載のナットロッキングシステム10を備えた電子デバイス1000を設けることによって、かかる事象が起こるリスクが大幅に低減される。なぜなら、保持リング300は、シャフト200からナット100が外れることの防止を容易にするだけでなく、何らかの理由でナット100が完全に落ちてしまった場合に、第2の部分1004をさらに支持することができるからである。
【0055】
電子デバイス1000に設けられるナットロッキングシステム10は、デバイス1000の全体的な安全性を向上させるだけでなく、電子デバイス1000の他の構成部品によって要求されるスペースとの干渉を避けつつ、向上した安全性の提供を容易にする。上述のように、カメラデバイス1000などの電子デバイス1000内の構成部品は、隣接する構成部品への電気的絶縁距離を必要とし、さらに、全体のサイズを縮小した電子デバイス1000を提供することが一般的に望まれる。その観点から、本明細書の教示は、安全なナットロッキングシステム10の提供により、安全性が向上したコンパクトな電子デバイス1000の提供を容易にする。
【0056】
本発明は、示された実施形態に限定されないことが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される発明の範囲内で、幾つかの修正例及び変形例が想定できる。