(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】膜電極接合体および電解による水素発生方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/23 20210101AFI20221117BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20221117BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20221117BHJP
C25B 11/075 20210101ALI20221117BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20221117BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20221117BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20221117BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20221117BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20221117BHJP
B01J 23/80 20060101ALI20221117BHJP
B01J 23/847 20060101ALI20221117BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20221117BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20221117BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20221117BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20221117BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221117BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20221117BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20221117BHJP
C25B 11/053 20210101ALI20221117BHJP
C25B 11/091 20210101ALI20221117BHJP
【FI】
C25B9/23
C25B11/052
C25B11/081
C25B11/075
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B13/04 301
B01J23/755 M
B01J23/889 M
B01J23/80 M
B01J23/847 M
B01J23/883 M
B01J23/89 M
B01J27/24 M
B01J35/02 311B
B01J35/10 301G
C01B3/02 H
C25B11/03
C25B11/053
C25B11/091
(21)【出願番号】P 2021172261
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2021-10-21
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】林國興
(72)【発明者】
【氏名】黄篠君
(72)【発明者】
【氏名】蔡麗端
(72)【発明者】
【氏名】陳浩銘
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525094(JP,A)
【文献】特開2020-073735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0173042(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101159333(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
C25B 11/00 - 11/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたアニオン交換膜と、
を含む膜電極接合体であって、
前記第1の電極が、
第1の金属メッシュと、
前記第1の金属メッシュを覆う第1の触媒層と、
第2の金属メッシュと、
前記第2の金属メッシュを覆う第2の触媒層と、
を含み、
前記第1の金属メッシュが前記アニオン交換膜と前記第2の金属メッシュとの間に配置され、
前記第2の金属メッシュが前記第1の金属メッシュよりも厚く、前記第1の触媒層が前記第2の触媒層よりも厚く、前記第2の触媒層が鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムであり、かつ前記第2の触媒層が結晶質であ
り、
前記膜電極接合体が第1の集電体と第2の集電体との間に介設されるように用いられ、前記第1の電極が前記アニオン交換膜と前記第1の集電体との間に配置され、前記第2の電極が前記アニオン交換膜と前記第2の集電体との間に配置され、かつ前記第1の電極と前記第1の集電体との間には流路層が無く、
前記第1の電極および前記第2の電極は、電位を印加されてアルカリ水溶液を電解し、前記第1の電極または前記第2の電極で水素を生成させ、かつ前記第1の電極または前記第2の電極のもう一方で酸素を生成させるために用いられる、
膜電極接合体。
【請求項2】
前記第1の電極がアノードであり、前記第2の電極がカソードであり、かつ前記第2の触媒層が鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、または金である、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項3】
前記第1の触媒層の化学構造がM’
aM”
bN
2、M’
cM”
dC
eまたはM
xRu
yN
2(式中、M’はNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、M”はNb、Ta、またはこれらの組み合わせであり、MはNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、0.7≦a≦1.7、0.3≦b≦1.3、a+b=2、0.24≦c≦1.7、0.3≦d≦1.76、0.38≦e≦3.61、0<x<1.3、0.7<y<2であり、かつx+y=2である。)であり、
M’
aM”
bN
2が立方晶系であり、M’
cM”
dC
eが立方晶系または非晶質であり、かつM
xRu
yN
2が立方晶系または非晶質である、請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記第1の電極がカソードであり、前記第2の電極がアノードであり、かつ前記第2の触媒層が鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、金、またはアルミニウムである、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
前記第1の触媒層の化学構造がM
xRu
yN
2またはM
xRu
yであり、MがNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、0<x<1.3、0.7<y<2、x+y=2であり、M
xRu
yN
2が立方晶系または非晶質であり、かつM
xRu
yが立方晶系である、請求項4に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
前記第1の触媒層の厚さが0.25マイクロメートルから1マイクロメートルであり、前記第2の触媒層の厚さが0.01マイクロメートルから0.25マイクロメートルである、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
前記第2の金属メッシュの孔径が60マイクロメートルから120マイクロメートルである、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項8】
前記第2の金属メッシュと前記第2の触媒層との重量比が90:10から99.9:0.1である、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項9】
前記第2の電極が、
第3の金属メッシュと、
前記第3の金属メッシュを覆う第3の触媒層と、
第4の金属メッシュと、
前記第4の金属メッシュを覆う第4の触媒層と、
を含み、
前記第3の金属メッシュが前記アニオン交換膜と前記第4の金属メッシュとの間に配置され、
前記第4の金属メッシュが前記第3の金属メッシュよりも厚く、前記第3の触媒層が前記第4の触媒層よりも厚く、前記第4の触媒層が鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムであり、かつ前記第4の触媒層が結晶質である、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
前記第2の電極と前記第2の集電体との間には流路層が無い、請求項
9に記載の膜電極接合体。
【請求項11】
膜電極接合体をアルカリ水溶液中に浸漬する工程であって、前記膜電極接合体が、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたアニオン交換膜と、
を含み、
前記第1の電極が、
第1の金属メッシュと、
前記第1の金属メッシュを覆う第1の触媒層と、
第2の金属メッシュと、
前記第2の金属メッシュを覆う第2の触媒層と、
を含み、
前記第1の金属メッシュが前記アニオン交換膜と前記第2の金属メッシュとの間に配置され、
前記第2の金属メッシュが前記第1の金属メッシュよりも厚く、前記第1の触媒層が前記第2の触媒層よりも厚く、前記第2の触媒層が鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムであり、かつ前記第2の触媒層が結晶質である、
工程と、
前記第1の電極および前記第2の電極に電位を印加して前記アルカリ水溶液を電解し、前記第1の電極または前記第2の電極で水素を生成させ、かつ前記第1の電極または前記第2の電極のもう一方で酸素を生成させるようにする工程と、
を含む、
電解による水素発生の方法。
【請求項12】
前記アルカリ水溶液のpH値が13以上である、請求項
11に記載の電解による水素発生の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は膜電極接合体に関し、より詳細には、膜電極接合体を用いる電解による水素発生の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のエネルギー不足により代替エネルギーを見い出すことが急務となっているが、水素エネルギーは最良の選択である。燃料として用いられる水素ガスは環境保護の要求を満たしており、水の電解は水素と酸素とを生成する最も簡単な方法である。カーボンニュートラルのための環境に優しい水素源技術の将来の発展において、アルカリ水電解による水素発生には、設備構築のコストが低い、および部材の寿命が長いといった利点があるため、将来有望な技術であると共に、全世界で注目されている。
【0003】
クリーンな再生可能エネルギーの使用は、国際的に未来の発展の趨勢となっている。現段階でのグローバルな発展においては、再生エネルギーの効率を改善すること、特に余剰電力の部分に焦点が置かれている。水の電解による水素発生は、再生可能な電力の余剰電力を調節するのに役立つ。よって、水の電解による水素発生のコストおよび効率の改善は、次世代技術を産業化する重要な基礎となる。各構成要素を有効に整合して電解の効率改善およびコスト低減を図ることが、極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10604854号明細書(B2)
【文献】米国特許第10519555号明細書(B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電解には、アルカリ水溶液を取り込むと共に、電解により生成された水素および酸素を排出するための流路層(flow channel layer)が必要である。しかし、流路層は機械加工により作製されるものであって高価であるため、電解のコストを増加させてしまう。よって、流路層を省くことのできる新規な膜電極接合体が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1実施形態は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置されたアニオン交換膜を含む膜電極接合体を提供する。第1の電極は、第1の金属メッシュと、第1の金属メッシュを覆う第1の触媒層と、第2の金属メッシュと、第2の金属メッシュを覆う第2の触媒層とを含み、第1の金属メッシュはアニオン交換膜と第2の金属メッシュとの間に配置され、第2の金属メッシュは第1の金属メッシュよりも厚く、第1の触媒層は第2の触媒層よりも厚く、第2の触媒層は、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムであり、かつ第2の触媒層は結晶質である。
【0007】
本開示の1実施形態は、膜電極接合体をアルカリ水溶液中に浸漬する工程を含む電解による水素発生の方法であって、膜電極接合体が、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置されたアニオン交換膜を含む、方法を提供する。第1の電極は、第1の金属メッシュと、第1の金属メッシュを覆う第1の触媒層と、第2の金属メッシュと、第2の金属メッシュを覆う第2の触媒層とを含み、第1の金属メッシュはアニオン交換膜と第2の金属メッシュとの間に配置され、第2の金属メッシュは第1の金属メッシュよりも厚く、第1の触媒層は第2の触媒層よりも厚く、第2の触媒層は、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムであり、かつ第2の触媒層は結晶質である。当該方法は、第1の電極および第2の電極に電位を印加してアルカリ水溶液を電解し、第1の電極または第2の電極の一方の電極で水素を生成させ、かつ第1の電極または第2の電極の他方の電極で酸素を生成させる工程と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0008】
水素発生効率を向上すると共に、製造コストを抑えることのできる、流路層を有さない新規な膜電極接合体が開示される。
【0009】
添付の図面を参照としながら、以下の実施形態において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】1実施形態における濃度の異なる鉄前駆体溶液からなるFe-発泡ニッケルのOER曲線を示している。
【
図4】1実施形態における濃度の異なるコバルト前駆体溶液からなるCo-発泡ニッケルのOER曲線を示している。
【
図5】1実施形態における濃度の異なるコバルト前駆体溶液からなるCo-発泡ニッケルのHER曲線を示している。
【
図6】1実施形態における膜電極接合体の電流対電圧曲線を示している。
【
図7】1実施形態における膜電極接合体の電流対電圧曲線を示している。
【
図8】1実施形態における膜電極接合体の電流対電圧曲線を示している。
【
図9】1実施形態における、60時間動作後の膜電極接合体の電流対電圧曲線を示している。
【
図10】1実施形態における膜電極接合体の電流対電圧曲線を示している。
【
図11】各種膜電極接合体の電流対電圧曲線の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な記載では、説明の目的で、開示された実施形態が十分理解されるように多数の特定の詳細が示されている。しかしながら、これら特定の詳細が無くても、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは、明らかであろう。また、図を簡潔とするために、周知の構造及び装置は概略的に図示されている。
【0012】
図1に示されるように、本開示の1実施形態は、水素発生に用いる電解装置100を提供する。アニオン交換膜13がアノード11とカソード15との間に配置されて膜電極接合体(MEA)10が形成され、MEA10は2つの集電体19の間に配置される。反応物質(例えばアルカリ水溶液)をMEA10中に取り込み、かつ生成物(例えば水素および酸素)をMEA10から排出するために、集電体19とアノード11との間に1つの流路層17が配置される必要があり、かつ集電体19とカソード15との間にもう1つの流路層17が配置される必要がある。一般に、流路層17の製造コストは高いため、水素発生に用いる電解装置100のコストが上がってしまう。
【0013】
かかる流路層の問題を克服するため、本開示の1実施形態は、
図2に示されるような水素発生に用いる電解装置200を提供する。この水素発生に用いる電解装置200は、2つの集電体19の間に配置されるMEA20を含む。MEA20はアノード11、カソード15、およびアノード11とカソード15との間に配置されるアニオン交換膜13を含む。アノード11は、触媒層C1(図示せず)に覆われている金属メッシュ11A、および触媒層C2(図示せず)に覆われている金属メッシュ11Bを含む。金属メッシュ11Aはアニオン交換膜13と金属メッシュ11Bとの間に配置される。例えば、金属メッシュ11Aは、ステンレス鋼メッシュ、Tiメッシュ、Niメッシュ、Ni合金メッシュ、ニオブ合金メッシュ、銅メッシュ、またはアルミニウムメッシュであってよい。触媒層C1の化学構造は、M’
aM”
bN
2、M’
cM”
dC
eまたはM
xRu
yN
2である(ただし、M’はNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、M”はNb、Ta、またはこれらの組み合わせであり、MはNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、0.7≦a≦1.7、0.3≦b≦1.3、a+b=2、0.24≦c≦1.7、0.3≦d≦1.76、0.38≦e≦3.61、0<x<1.3、0.7<y<2であり、かつx+y=2である。)。M’
aM”
bN
2は立方晶系であり、M’
cM”
dC
eは立方晶系または非晶質であり、かつM
xRu
yN
2は立方晶系または非晶質である。触媒層C1に覆われた金属メッシュ11Aについては、本出願人が先に出願した台湾特許第I677596号明細書を参照にすることができる。なお、触媒層C1は上述した触媒組成に限定されず、アノードに適した任意の市販の触媒であってもよいという点に留意されたい。
【0014】
また、金属メッシュ11Bはステンレス鋼メッシュ、Tiメッシュ、Niメッシュ、Ni合金メッシュ、ニオブ合金メッシュ、銅メッシュ、またはアルミニウムメッシュであってよい。触媒層C2は、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムである。1実施形態において、金属メッシュ11Bを覆う触媒層C2は、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、または金である。触媒層C2に覆われる金属メッシュ11Bは化学的還元によって形成されるため、触媒層C2は結晶質となる。実験から、結晶質の触媒層C2の電解による水素発生の効果は、非晶質の触媒層C2よりも高いことが分かっている。さらに、金属メッシュ11Bは、流路層に代わってその機能を果たすように、金属メッシュ11Aよりも厚くなっている。1実施形態において、金属メッシュ11Aは、表面が平滑なステンレス鋼メッシュであり、金属メッシュ11Bは、表面が粗いニッケルメッシュ(例えば発泡ニッケル(nickel foam))である。金属メッシュ11Aは、金属メッシュ11Bがアニオン交換膜13に突き刺さらないよう、アニオン交換膜13を保護することができる(穿通されたアニオン交換膜13は装置のショート不良を引き起こし得る)。金属メッシュ11Bは、高価な流路層に取って代わることができる上、流路層よりも優れた電解による水素発生の効果を提供できる。また、触媒層C1は触媒層C2よりも厚い。触媒層C1の厚さは0.25マイクロメートル(μm)から1マイクロメートルであってよく、触媒層C2の厚さは0.01マイクロメートルから0.25マイクロメートルであってよい。触媒層C1の厚さが触媒層C2の厚さ以下であると、電解による水素発生の効果が不十分となる。
【0015】
図2に示されるように、カソード15は、触媒層C3(図示せず)に覆われた金属メッシュ15A、および触媒層C4(図示せず)に覆われた金属メッシュ15Bを含む。金属メッシュ15Aはアニオン交換膜13と金属メッシュ15Bとの間に配置される。例えば、金属メッシュ15Aはステンレス鋼メッシュ、Tiメッシュ、Niメッシュ、Ni合金メッシュ、ニオブ合金メッシュ、銅メッシュ、またはアルミニウムメッシュであってよい。触媒層C3の化学構造は、M
xRu
yN
2またはM
xRu
yである(ただし、MはNi、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ti、Cu、またはZnであり、0<x<1.3、0.7<y<2、x+y=2である。)。M
xRu
yN
2は立方晶系または非晶質であり、かつM
xRu
yは立方晶系である。触媒層C3に覆われた金属メッシュ15Aについては、本出願人が先に出願した台湾特許第I677596号明細書を参照にすることができる。なお、触媒層C3は上述した触媒組成に限定されず、カソードに適した任意の市販の触媒であってもよいという点に留意されたい。
【0016】
また、金属メッシュ15Bは、ステンレス鋼メッシュ、Tiメッシュ、Niメッシュ、Ni合金メッシュ、ニオブ合金メッシュ、銅メッシュ、またはアルミニウムメッシュであってよい。触媒層C4は、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、白金、金、またはアルミニウムである。1実施形態において、金属メッシュ15Bを覆う触媒層C4は、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ニオブ、モリブデン、金、またはアルミニウムである。触媒層C4に覆われる金属メッシュ15Bは化学的還元によって形成されるため、触媒層C4は結晶質となる。実験から、結晶質の触媒層C4の電解による水素発生の効果は、非晶質の触媒層C4よりも高いことが分かっている。さらに、金属メッシュ15Bは、流路層に代わってその機能を果たすように、金属メッシュ15Aよりも厚くなっている。1実施形態において、金属メッシュ15Aは表面が平滑なステンレス鋼メッシュであり、金属メッシュ15Bは表面が粗いニッケルメッシュ(例えば発泡ニッケル)である。金属メッシュ15Aは、金属メッシュ15Bがアニオン交換膜13に突き刺さらないよう、アニオン交換膜13を保護することができる(穿通されたアニオン交換膜13は装置のショート不良を引き起こし得る)。金属メッシュ15Bは、高価な流路層に取って代わることができる上、流路層よりも優れた電解による水素発生の効果を提供できる。また、触媒層C3は触媒層C4よりも厚い。触媒層C3の厚さは10マイクロメートルから100マイクロメートルであってよく、触媒層C4の厚さは0.01マイクロメートルから0.25マイクロメートルであってよい。触媒層C3の厚さが触媒層C4の厚さ以下であると、電解による水素発生の効果が不十分となる。
【0017】
1実施形態において、アニオン交換膜13はハロゲンイオン含有イミダゾールポリマーまたはその他の適した素材であってよい。例えば、アニオン交換膜13はFAS(Fumatech社製)またはX37-50(Dioxide materials社製)であり得る。MEA20は、アルカリ水溶液を電解することによって水素を生成するのに用いられるため、他のイオン交換膜ではなく、アニオン交換膜13が採用される。いくつかの実施形態では、集電体はステンレス鋼プレート、チタンプレート、またはその他の適したプレートであってよい。
【0018】
アノード11の金属メッシュ11Bおよびカソード15の金属メッシュ15Bは流路層として機能し得るため、MEA20と集電体19との間にさらなる流路層の存在は必要ない。なお、
図2では、アノード11およびカソード15の両者に2層金属メッシュの設計を採用しているが、本開示はこれに限定されることはないという点に留意されたい。例えば、アノードを別の市販のアノード(非金属メッシュ)として流路層と組み合わせて用いてもよく、カソードだけに2層金属メッシュの設計を用いて流路層を省くようにする。また、カソードを別の市販のカソード(非金属メッシュ)として流路層と組み合わせて用いてもよく、アノードだけに2層金属メッシュの設計を用いて流路層を省くようにする。つまり、MEAの片側のみに2層金属メッシュを用いて流路層を省き、MEAの他方の側に従来の流路層を用いるようにすることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、触媒層C1の厚さは0.25マイクロメートルから1マイクロメートルであり、触媒層C3の厚さは10マイクロメートルから100マイクロメートルである。触媒層C1または触媒層C3が薄すぎると、電解による水素発生の効果が不十分となってしまう。触媒層C1または触媒層C3が厚過ぎると、電解による水素発生の効果が不十分となってしまう。いくつかの実施形態において、触媒層C2(または触媒層C4)の厚さは0.01マイクロメートルから0.25マイクロメートルである。触媒層C2または触媒層C4が薄すぎると、触媒層が無い場合と効果が同等になってしまう。触媒層C2または触媒層C4が厚過ぎると、MEAの電解による水素発生の効果が低下してしまう。
【0020】
いくつかの実施形態において、金属メッシュ11Bまたは金属メッシュ15Bの孔径は60マイクロメートルから120マイクロメートルである。金属メッシュ11Bまたは金属メッシュ15Bの孔径が小さすぎると、反応物質、例えばアルカリ水溶液が有効にMEA20に取り込まれ得ない、またはガス生成物(例えば水素および酸素)が有効にMEA20から排出され得なくなる。金属メッシュ11Bまたは金属メッシュ15Bの孔径が過度に大きいと、電解による水素発生の効率を長時間保つことができなくなる(例えば、長時間動作後の減衰の程度が高まる)。
【0021】
いくつかの実施形態において、金属メッシュ11Bと触媒層C2との重量比は90:10から99.9:0.1であるか、または金属メッシュ15Bと触媒層C4との重量比は90:10から99.9:0.1である。上記重量比が過度に低い(例えば、触媒層の量が多すぎる)と、電解の水素発生の効率が不十分になってしまう。上記重量比が過度に高い(例えば、触媒層の量が少なすぎる)と、触媒層が無い場合と効果が同等になってしまう。
【0022】
いくつかの実施形態において、触媒層C2に覆われた金属メッシュ11Bは、触媒層C4に覆われた金属メッシュ15Bと同じものである。或いは、触媒層C2に覆われた金属メッシュ11Bは、触媒層C4に覆われた金属メッシュ15Bと、例えば、触媒の種類が異なる、金属メッシュの孔径が異なる、金属メッシュの厚さが異なる、またはこれらの組み合わせであるように、異なるものである。例として、金属メッシュ11Bを覆う触媒層C2には鉄を採用してよく、金属メッシュ15Bを覆う触媒層C4にはコバルトまたは金を採用してよい。
【0023】
本開示の1実施形態は、MEA20をアルカリ水溶液中に浸漬する工程を含む電解による水素発生の方法を提供する。MEA20は上述したものと類似するものであり、よって詳細をここで繰り返さない。次いで、アノード11およびカソード15に電位を印加してアルカリ水溶液を電解し、カソード15で水素を生成すると共に、アノード11で酸素を生成するようにする。1実施形態において、アルカリ水溶液のpH値は13以上である。アルカリ水溶液のpH値が低すぎると、その導電性が不十分となってしまう。1実施形態において、アルカリ水溶液のpH値は14である。
【0024】
以下に、本分野において通常の知識を有する者がより容易に理解できるよう、添付の図面を参照にしながら、例示的な実施例を記載する。本発明概念は、ここに記載される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化することができる。明確とするため、周知の部分についての記載は省き、全体を通し、類似する符号は類似する構成要素を指すものとする。
【実施例】
【0025】
実施例1(各種金属に覆われる発泡ニッケル)
市販の発泡ニッケル(GF28024657、Merck社製)を次のステップにより前処理した:(1)アセトン中に浸漬し超音波振動を15分;(2)脱イオン水で10分洗浄;(3)10wt%のHCl中に浸漬し超音波振動および洗浄30分の後、水で洗浄;ならびに(4)50℃の真空オーブン中で乾燥。前処理の後、Fe、Co、Mn、Zn、Nb、Mo、Cu、Ru、Pt、Au、Al、およびCrの金属前駆体溶液250mMをそれぞれ調製した。前処理した発泡ニッケルを金属前駆体溶液中に浸漬して3時間撹拌してから、発泡ニッケルの表面を、浸出液が透明になるまで脱イオン水で洗浄した。発泡ニッケル上の余分な水気を拭取ペーパーで拭い、90℃での熱風循環型オーブンで乾燥させることにより、金属-発泡ニッケルサンプルを得た。透過電子顕微鏡(TEM)の回折パターンから、サンプルの金属は結晶質相を有していることがわかった。なお、金属により発泡ニッケルを被覆する方法は化学的還元の方法であることから、結晶質相の金属が形成されることになるという点に注目されたい。電気メッキのような別の方法が用いられた場合、発泡ニッケル上に形成される金属は結晶質相ではない。ハーフセルの電気化学性能を次のステップにより測定した。0.1M KOH溶液中で、Ag/AgClを参照電極とし、OER(酸素発生反応)およびHER(水素発生反応)のEISおよびLSVを測定した。EIS測定では、OERおよびHERの走査範囲は0.1Hzから10000Hzとした。OERのLSV測定では、走査電圧を1.0Vから2.0Vの範囲とし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査の回数を3回とした。HERのLSV測定では、走査電圧を0から0.4Vの範囲とし、走査速度を10mV/sとし、かつ走査の回数を3回とした。
【0026】
【0027】
表1に示されるように、非貴金属のうちではCo-発泡ニッケルのHER性能が最も優れており、電流密度10mA/cm2における過電圧が147mVであった。また、貴金属のうちではAu-発泡ニッケルのHER性能が最も優れており、電流密度10mA/cm2における過電圧が132mVであった。OER反応において、Fe-発泡ニッケルは、電流密度100mA/cm2における過電圧が272mVで、最も低かった。
【0028】
実施例2(異なる量の各種金属により覆われる発泡ニッケル)
Fe、Co、Mn、Zn、Nb、Mo、Cu、Ru、Pt、Au、Al、およびCrの金属前駆体溶液の濃度をそれぞれ調整した。前処理した発泡ニッケルを金属前駆体溶液中に浸漬して3時間撹拌してから、発泡ニッケルの表面を、浸出液が透明になるまで脱イオン水で洗浄した。発泡ニッケル上の余分な水気を拭取ペーパーで拭い、90℃での熱風循環型オーブンで乾燥させることにより、金属-発泡ニッケルサンプルを得た。各金属の発泡ニッケル上の被覆量、HER活性、およびOER活性を表2および表3に示す。HER活性、およびOER活性は上述した方法により測定した。
【0029】
【0030】
【0031】
表2および表3に示されるように、十分なHER活性またはOER活性が得られるような発泡ニッケルを覆う金属の用量は低いもの(例えば、10wt%またはat%以下)であった。
【0032】
実施例3
前処理した発泡ニッケルを、各種濃度の鉄前駆体溶液中に浸漬して3時間撹拌した。次いで、発泡ニッケルの表面を、浸出液が透明になるまで脱イオン水で洗浄した。発泡ニッケル上の余分な水気を拭取ペーパーで拭い、90℃での熱風循環型オーブンで乾燥させることにより、鉄-発泡ニッケルサンプルを得た。各種濃度の鉄前駆体溶液から形成された鉄-発泡ニッケルサンプルについて、エネルギー分散型X線で測定し、元素分析を行った。各種鉄-発泡ニッケルサンプルのHER活性およびOER活性が上述したような方法により測定されて、それらの結果が表4に示される。さらに、各種濃度の鉄前駆体溶液から形成された鉄-発泡ニッケルのOER曲線が
図3に示されている。
図3における横軸は可逆水素電極(RHE)に対する電圧(V)であり、縦軸は電流密度(J,mA/cm
2)である。表4に示されるように、少量の鉄で覆われた発泡ニッケルはHERおよびOERを改善させる効果を備えていた。
【0033】
【0034】
実施例4
前処理した発泡ニッケルを、各種濃度のコバルト前駆体溶液中にそれぞれ浸漬して3時間撹拌した。次いで、発泡ニッケルの表面を、浸出液が透明になるまで脱イオン水で洗浄した。発泡ニッケル上の余分な水気を拭取ペーパーで拭い、90℃での熱風循環型オーブンで乾燥させることにより、コバルト-発泡ニッケルサンプルを得た。各種濃度のコバルト前駆体溶液から形成されたコバルト-発泡ニッケルサンプルについて、エネルギー分散型X線で測定し、元素分析を行った。各種コバルト-発泡ニッケルサンプルのHER活性およびOER活性が上述したような方法により測定されて、それらの結果が表5に示される。さらに、各種濃度のコバルト前駆体溶液から形成されたコバルト-発泡ニッケルのOER曲線が
図4に示されている。
図4における横軸は可逆水素電極(RHE)に対する電圧(V)であり、縦軸は電流密度(J,mA/cm
2)である。各種濃度のコバルト前駆体溶液から形成されたコバルト-発泡ニッケルのHER曲線が
図5に示されている。
図5における横軸は可逆水素電極(RHE)に対する電圧(V)であり、縦軸は電流密度(J,mA/cm
2)である。表5に示されるように、少量のコバルトで覆われた発泡ニッケルはHERおよびOERを改善させる効果を備えていた。
【0035】
【0036】
実施例5
市販のPtCをカーボンペーパーおよび発泡ニッケル(孔径91マイクロメートル)に塗布し、HERのカソードとして用いた。市販の不溶性アノード(IrO2/RuO2-Tiメッシュ、DSA電極)および発泡ニッケル(孔径91マイクロメートル)をOERのアノードとして用いた。アニオン交換膜X37-50(Dioxide Materials製)をPtCのカソードとDSA電極のアノードとの間に介設して膜電極接合体(MEA)を得た。MEAを2つのステンレス鋼集電体の間に介設し、次いで2M KOH溶液に浸漬してその電気化学活性をテストした。走査電圧を1.2Vから2.2Vの範囲とし、走査速度を50mV/sとした。その膜電極接合体は、2Vで5.18Aの電流を生じさせることができた。MEAの電位を2Vに制御し、1000分連続して動作させたところ、MEAの電流減衰は約4.6%となった。
【0037】
発泡ニッケルの孔径を151マイクロメートルに変えたことを除き、上述の実験を繰り返し行った。MEAの他の構成要素および電気化学活性のテスト方法は上述と同じようにした。膜電極接合体は2Vで5.42Aの電流を生じさせることができた。MEAの電位を2Vに制御し、1000分連続して動作させたところ、MEAの電流減衰は約26.2%となった。
【0038】
発泡ニッケルの孔径を219マイクロメートルに変えたことを除き、上述の実験を繰り返し行った。MEAの他の構成要素および電気化学活性のテスト方法は上述と同じようにした。膜電極接合体は2Vで5.63Aの電流を生じさせることができた。MEAの電位を2Vに制御し、1000分連続して動作させたところ、MEAの電流減衰は約22.4%となった。これら実験からわかるように、発泡ニッケルの孔径が大きすぎると、長時間動作後のMEAの減衰の程度が高まる。
【0039】
実施例6-1
台湾特許第I677596号明細書における作製例2および12のように、導電性カーボンペーパー上にNi
0.065Ru
1.935触媒を作製して、HERのカソードとした。また、台湾特許第I677596号明細書における作製例9のNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュをOERのアノードとして選択した。そして、市販のアニオン交換膜X37-50(Dioxide Materials製)をそれらカソードとアノードとの間に介設してMEAを形成した。そのMEAを2つのステンレス鋼集電体の間に介設し、蛇行状(serpentine)流路層をNi
0.065Ru
1.935-導電性カーボンペーパーと一方の集電体との間に介設し、もう1つの蛇行状流路層をNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュともう一方の集電体との間に介設した。MEAを2M KOH溶液中に浸漬し、下記のようにそのLSVの電気化学活性をテストした。走査電圧は1.0Vから2.0Vまでの範囲とし、走査速度は50mV/sとした。MEAの電流対電圧曲線が
図6に示されている。
【0040】
実施例6-2
実施例6-2は実施例6-1と類似しているが、実施例6-2ではNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュおよびCo-発泡ニッケル(例えば実施例1)をOERのアノードとして用い、かつNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュと集電体との間に介設される蛇行状流路層を省いた点が相違している。MEAの他の構成要素および電気化学活性のテスト方法は上述と同じようにした。MEAの電流対電圧曲線は
図7に示されるとおりである。
【0041】
実施例6-3
実施例6-3は実施例6-1と類似しているが、実施例6-3ではNi
0.75Ru
1.25N
2-ステンレス鋼メッシュおよびCo-発泡ニッケル(例えば実施例1)をHERのカソードとして用い、かつNi
0.75Ru
1.25N
2-ステンレス鋼メッシュと集電体との間に介設される蛇行状流路層を省いた点が相違している。MEAの他の構成要素および電気化学活性のテスト方法は上述と同じようにした。MEAの電流対電圧曲線は
図8に示されるとおりである。
【0042】
実施例6-4
実施例6-4は実施例6-1と類似しているが、実施例6-4ではNi
0.065Ru
1.935-導電性カーボンペーパーおよびそれぞれ異なる金属-発泡ニッケル(例えば実施例1)をHERのアノードとして用い、Ni
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュおよびそれぞれ異なる金属-発泡ニッケル(例えば実施例1)をOERのアノードとして用い、かつNi
0.065Ru
1.935-導電性カーボンペーパーと集電体との間に介設される蛇行状流路層を省いたと共に、Ni
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュと集電体との間に介設される蛇行状流路層を省いた点が相違している。MEAの他の構成要素および電気化学活性のテスト方法は上述と同じようにした。60時間動作した後のMEAの電流対電圧曲線は
図9に示されるとおりである。この実施例ではアノードおよびカソードにおける金属-発泡ニッケルは同じであるが、アノードおよびカソードにおける金属-発泡ニッケルは異なるものであってもよい(例えば、発泡ニッケルの孔径が異なる、発泡ニッケルを覆う金属の量が異なる、金属の種類が異なる、またはこれらの組み合わせ)という点を理解すべきである。
【0043】
実施例7
台湾特許第I677596号明細書における作製例11および12のNi
0.065Ru
1.935-導電性カーボンペーパーをHERのカソードとして選び、台湾特許第I677596号明細書における作製例9のNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュをOERのアノードとして選び、かつ市販のアニオン交換膜X37-50(Dioxide Materials製)をそれらカソードとアノードとの間に介設してMEAを形成した。そしてMEAを2つのステンレス鋼集電体の間に介設し、ピン型(pin-type)流路層をNi
0.065Ru
1.935-導電性カーボンペーパーと一方の集電体との間に介設し、もう1つのピン型流路層をNi
1.5Nb
0.5N
2-ステンレス鋼メッシュともう一方の集電体との間に介設した。MEAを2M KOH溶液中に浸漬し、下記のようにそのLSVの電気化学活性をテストした。走査電圧は1.0Vから2.0Vまでの範囲とし、走査速度は50mV/sとした。MEAの電流対電圧曲線が
図10に示されている。実施例6-1、実施例6-2、実施例6-3、および実施例7の電流対電極曲線の比較が
図11に示されている。この比較からわかるように、一方の電極にだけ(例えばアノードまたはカソード)に金属-発泡ニッケルを採用した場合、MEAの水素発生効率が改善され、かつMEAの片側の流路層を省くことができることが示された。アノードおよびカソードの両方に金属-発泡ニッケルを採用した場合には、MEAの水素発生効率がより改善され、かつMEAの両側の流路層を省くことができた。
【0044】
開示した方法および材料に様々な変更および変化を加え得るということが、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示であるとみなされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。
【符号の説明】
【0045】
10、20…膜電極接合体
11…アノード
11A、11B、15A、15B…金属メッシュ
13…アニオン交換膜
15…カソード
17…流路層
19…集電体
100、200…水素発生に用いる電解装置