(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】原子炉の炉心構成要素、及び、原子炉
(51)【国際特許分類】
G21C 3/33 20060101AFI20221117BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G21C3/33 400
G21C3/30 100
(21)【出願番号】P 2021202534
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2018029688の分割
【原出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 一輝
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晃久
(72)【発明者】
【氏名】松原 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和生
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-170677(JP,A)
【文献】特開平11-133172(JP,A)
【文献】特開平03-087690(JP,A)
【文献】特開平07-280977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00- 3/64
21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って配列された複数の連結管を含む支持構造物によって支持可能な原子炉の炉心構成要素であって、
本体部と、
前記本体部の一端側に設けられ、前記複数の連結管のいずれかに嵌合可能なエントランスノズルと、
前記本体部の他端側の外表面の少なくとも一部に設けられ、前記本体部より大きな熱膨張率を有する第1パッド部と、
を備え
、
前記エントランスノズルは、前記連結管の入口部に対応する位置において、前記連結管の内壁に向けて突出する第1凸部を有し、
前記エントランスノズルは、前記第1凸部より前記連結管の奥側において、前記連結管の内壁に向けて突出する第2凸部を有し、
前記第2凸部は、前記本体部より大きな熱膨張率を有する第2パッド部である、原子炉の炉心構成要素。
【請求項2】
前記第1パッド部から前記エントランスノズルまでの距離は、前記エントランスノズルの長さより大きい、請求項1に記載の原子炉の炉心構成要素。
【請求項3】
前記第1パッド部は、前記本体部の外表面を周方向にわたって延在することにより、前記本体部と同心に設けられる、請求項1又は2に記載の原子炉の炉心構成要素。
【請求項4】
前記第1パッド部は、前記本体部の外表面に形成された凹部に少なくとも部分的に挿入される、請求項1から3のいずれか一項に記載の原子炉の炉心構成要素。
【請求項5】
前記凹部は、前記本体部の外側に対向する傾斜面を有する、請求項4に記載の原子炉の炉心構成要素。
【請求項6】
前記第1パッド部は、第1温度において前記外表面より内側に収容され、又は、前記外表面と平坦であり、且つ、前記第1温度より高い第2温度において前記本体部の外表面より外側に膨張するように構成される、請求項4又は5に記載の原子炉の炉心構成要素。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の炉心構成要素を備える、原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持構造物に含まれる連結管に嵌合可能なエントランスノズルを有する炉心構成要素を含む原子炉の設計方法、炉心構成要素、及び、当該炉心構成要素を備える原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
高速増殖炉などの原子炉を構成する炉心構成要素は、各炉心構成要素のエントランスノズルを支持構造物の連結管に挿入することで支持される。炉心構成要素は、連結管に嵌合して着座することにより、炉心構成要素の倒れ込みや隣り合う炉心構成要素同士の接触が防止されるとともに、炉心構成要素の水平変位を抑えることで制御棒の挿入性が確保される。このとき、炉心構成要素は連結管に挿入されることによって、自立した状態で連結管に支持されるため、炉心構成要素は連結管に対して完全には固定されておらず、跳び上がりによる上下変位に加え、曲がりや回転による水平変位が発生しうる。
【0003】
かかる構成では、例えば、地震発生時にて上下方向の振動が発生したときに、炉心構成要素が軸方向に跳び上がることで変位する場合がある。このような跳び上がりによる変位が大きいと、炉心構成要素の水平方向における可動域も広がるため、制御棒の挿入性に影響を及ぼすことがある。
【0004】
このような課題を解決するための技術として、例えば特許文献1がある。この文献では、炉心構造物のノズルエントランスに押込機構を設けるとともに、当該押込機構に対応する連結管の内壁に溝を設けることで、軸方向における跳び上がりを抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、ノズルエントランスが挿入される連結管に溝を設ける必要があるため、連結管を含む支持構造物側の設計変更が必要となる。そのため、既設炉に対して導入が容易ではない。
【0007】
また一般的要請として、炉心構成要素の跳び上がり変位量を、従来に比べてより抑制することが求められている。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、既設炉に対して導入が容易な構成で、上下方向の振動に対して炉心構成要素の跳び上がりを抑制可能な原子炉の設計方法、炉心構成要素、及び、当該炉心構成要素を備える原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉の設計方法は上記課題を解決するために、
エントランスノズルを有する複数の炉心構成要素と、
前記エントランスノズルと嵌合することにより前記複数の炉心構成要素をそれぞれ支持可能な複数の連結管を有する支持構造物と、
を備える原子炉の設計方法であって、
前記複数の炉心構成要素の初期変形量及び熱伸び量に基づいて、前記複数の炉心構成要素の前記エントランスノズルと前記連結管との間に作用する水平力を算出する工程と、
前記水平力が所定基準を満たすように、前記複数の連結管に対する前記複数の炉心構成要素の配置パターンを決定する工程と、
を備える。
【0010】
上記(1)の方法によれば、支持構造物が有する連結管に嵌合可能なエントランスノズルを有する複数の炉心構造要素の各々について、エントランスノズルと連結管との間に作用する水平力が、炉心構成要素の初期変形量及び熱伸び量(炉心構成要素に生じる熱変形のうち非塑性的な変形量)に基づいて求められる。複数の連結管に対する複数の炉心構成要素の配置パターンは、このように求められた水平力が所定基準を満たすように決定されることで、エントランスノズルと連結管との間に上下方向に沿って作用する摩擦力を最適化することができ、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制可能な原子炉設計が可能となる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の方法において、
前記複数の炉心構成要素の各々に対応する前記水平力の平均値又は最小値が閾値以上である場合に、前記所定基準が満たされると判断する。
【0012】
上記(2)の方法によれば、エントランスノズルと連結管との間に作用する水平力の平均値又は最小値が予め規定された基準値である閾値以上になるように、炉心構成要素の配置パターンが決定される。これにより、各炉心構成要素についてエントランスノズルと連結管との間に作用する摩擦力が十分且つ均一に確保されることで、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制可能な配置パターンが得られる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の方法において、
前記水平力は、前記炉心構成要素のスエリング量に基づいて算出される。
【0014】
上記(3)の方法によれば、初期変形量及び熱伸び量に加えてスエリング量(炉心構成要素に生じる熱変形のうち塑性的な変形量)を考慮することにより、より精度よく水平力を評価できる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一方法において、
前記配置パターンが、前記複数の炉心構成要素が前記複数の連結管に対して初期装荷可能であるか否かを判定する工程を更に備える。
【0016】
上記(4)の方法によれば、水平力を最適化する観点から演算的に求められた配置パターンが、初期装荷が可能か否か評価される。これにより、跳び上がりを効果的に防止できるか否かという観点に加えて、初期装荷が実現可能かという工事的観点からも配置パターンを評価でき、より適切な配置パターンを設計できる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一方法において、
前記配置パターンが、前記原子炉の稼働後に、前記複数の炉心構成要素が交換可能であるか否かを判定する工程を更に備える。
【0018】
上記(5)の方法によれば、水平力を最適化する観点から演算的に求められた配置パターンが、原子炉の稼働後に実施される炉心構成要素の交換作業が実現可能か否か評価される。これにより、跳び上がりを効果的に防止できるか否かという観点に加えて、交換作業が実現可能かという工事的観点からも配置パターンを評価でき、より適切な配置パターンを設計できる。
【0019】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉の炉心構成要素は上記課題を解決するために、
水平方向に沿って配列された複数の連結管を含む支持構造物によって支持可能な原子炉の炉心構成要素であって、
本体部と、
前記本体部の一端側に設けられ、前記複数の連結管のいずれかに嵌合可能なエントランスノズルと、
前記本体部の他端側の外表面の少なくとも一部に設けられ、前記本体部より大きな熱膨張率を有する第1パッド部と、
を備える。
【0020】
上記(6)の構成によれば、炉心構成要素は、本体部の一端側に設けられたエントランスノズルが、支持構造物に含まれる連結管に嵌合することにより、原子炉内で支持される。本体部の他端側(エントランスノズルとは反対側)には、本体部より大きな熱膨張立を有する第1パッド部が設けられており、第1パッド部は、原子炉の稼働時に温度上昇によって膨張することで本体部の外表面より外側に少なからず突出する。これにより、隣接する炉心構成要素との干渉量が増え、エントランスノズルと当該エントランスノズルが嵌合する連結管との間に作用する水平力が増加する。その結果、エントランスノズルと当該エントランスノズルが嵌合する連結管との間には、このような水平力に対応するように上下方向に沿った摩擦力が作用するため、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制できる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では上記(6)の構成において、
前記第1パッド部から前記エントランスノズルまでの距離は、前記エントランスノズルの長さより大きい。
【0022】
上記(7)の構成によれば、本体部における第1パッド部の位置は、第1パッド部から前記エントランスノズルまでの距離がエントランスノズルの長さより大きくなるように設定される。これにより、第1パッド部が膨張することで隣接する炉心構成要素との干渉量が増えると、テコの原理によって、エントランスノズルと当該エントランスノズルが嵌合する連結管との間に生じる水平力が増幅される。このように水平力が増幅されることで、エントランスノズルと連結管との間により大きな摩擦力を作用させることができる。その結果、より効果的に炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では上記(6)又は(7)の構成において、
前記第1パッド部は、前記本体部の外表面を周方向にわたって延在することにより、前記本体部と同心に設けられる。
【0024】
上記(8)の構成によれば、第1パッド部は本体部と同心に設けられるため、原子炉の稼働時に温度が上昇した際に、第1パッド部を周囲に対して本体部との同心を維持しながら均等に膨張させることができる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では上記(6)から(8)のいずれか一構成において、
前記第1パッド部は、前記本体部の外表面に形成された凹部に少なくとも部分的に挿入される。
【0026】
上記(9)の構成によれば、第1パッド部は凹部に少なくとも部分的に挿入される。これにより、本体部の外表面からの第1パッド部の突出量が減少するため、初期装荷時や交換作業時において、隣り合う炉心構成要素同士の干渉量が減少し、炉心構成要素の挿抜作業を容易に行うことができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では上記(9)の構成において、
前記凹部は、前記本体部の外側に対向する傾斜面を有する。
【0028】
上記(10)の構成によれば、第1パッド部が挿入される凹部は、本体部の外側に対向する傾斜面を有する。そのため、温度上昇によって第1パッド部が膨張した際に、第1パッド部は傾斜面に沿って本体部の外側に向けてスライド移動することで、本体部の外表面からの突出量を精度よく管理することができる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では上記(9)又は(10)の構成において、
前記第1パッド部は、第1温度において前記外表面より内側に収容され、又は、前記外表面と平坦であり、且つ、前記第1温度より高い第2温度において前記本体部の外表面より外側に膨張するように構成される。
【0030】
上記(11)の構成によれば、温度が低い第1温度(例えば常温)では、第1パッド部は本体部の内側に収容されることにより、周囲の炉心構成要素との干渉量が減り、炉心構成要素の交換作業などに伴う炉心構成要素の挿抜作業を容易に行うことができる。一方、温度が高い第2温度(例えば原子炉稼働温度)では、第1パッド部は本体部の外表面より外側に膨張することにより、周囲の炉心構成要素との干渉量に応じてエントランスノズルにおいて連結管との間に水平力を生じさせ、炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる。
【0031】
(12)幾つかの実施形態では上記(6)から(11)のいずれか一構成において、
前記エントランスノズルは、前記連結管の入口部に対応する位置において、前記連結管の内壁に向けて突出する第1凸部を有する。
【0032】
上記(12)の構成によれば、エントランスノズルのうち連結管の入口部に対応する位置には、連結管の内壁に向けて突出する第1凸部が設けられる。第1凸部では、連結管の内壁との隙間が周囲に比べて小さくなるため、第1パッド部が膨張した際に第1凸部が支点となって、エントランスノズルの先端側に水平力を的確に生じさせることができる。
【0033】
(13)幾つかの実施形態では上記(12)の構成において、
前記エントランスノズルは、前記第1凸部より前記連結管の奥側において、前記連結管の内壁に向けて突出する第2凸部を有する。
【0034】
上記(13)の構成によれば、エントランスノズルのうち第1凸部より奥側に、連結管の内壁に向けて突出する第2凸部が設けられる。第2凸部では、連結管の内壁との隙間が周囲に比べて小さくなるため、第1パッド部が膨張した際に第2凸部が連結管の内壁に干渉することで水平力が生じやすくすることができる。
【0035】
(14)幾つかの実施形態では上記(13)の構成において、
前記第2凸部は、前記本体部より大きな熱膨張率を有する第2パッド部である。
【0036】
上記(14)の構成によれば、第2パッド部は本体部より大きな熱膨張率を有するため、原子炉の稼働時に温度が上昇すると、外側に突出して第2凸部として機能する。一方、温度が低い場合には、外側への突出量が減少することで、エントランスノズルが挿入される連結管との干渉量が減り、炉心構成要素の交換作業などに伴う炉心構成要素の挿抜を容易に行うことができる。
【0037】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉は上記課題を解決するために、
上記(6)から(14)のいずれか一項に記載の炉心構成要素を備える。
【0038】
上記(15)の構成によれば、原子炉の稼働時に温度が上昇すると、第1パッド部が熱膨張することによって隣接する炉心構成要素との干渉量が増え、エントランスノズルと当該エントランスノズルが嵌合する連結管との間に作用する水平力が増加する。その結果、エントランスノズルと当該エントランスノズルが嵌合する連結管との間には、上下方向に沿った摩擦力が作用するため、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、既設炉に対して導入が容易な構成で、上下方向の振動に対して炉心構成要素の跳び上がりを抑制可能な原子炉の設計方法、炉心構成要素、及び、当該炉心構成要素を備える原子炉を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉を含む原子力プラントを概略的に示す全体構成図である。
【
図2】本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉の内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図2の炉心構成要素の支持構造を示す拡大図である。
【
図4】
図2の炉心構成要素を単体で示す斜視図である。
【
図5】第1温度における
図4のA-A断面図である。
【
図7】第2温度における
図4のA-A断面図である。
【
図8】比較的高温である第2温度における構成を示している。
【
図9】本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉の設計方法を工程毎に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0042】
<原子力プラント>
図1は、本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉を含む原子力プラント100を概略的に示す全体構成図である。
図1では、原子力プラント100の一例として、高速増殖炉を備える原子力発電プラントを示している。
【0043】
原子力プラント100は、原子炉格納容器101、原子炉容器102、一次主冷却系中間熱交換器103、及び、一次主冷却系循環ポンプ104を含む原子炉1を備える。原子炉容器102、一次主冷却系中間熱交換器103及び一次主冷却系循環ポンプ104は、原子炉格納容器101に格納されており、一次主冷却系配管105a、105b、105cを介して互いに接続されている。
【0044】
一次主冷却系配管105a、105b、105cには、一次主冷却材として液体金属(例えば、ナトリウム)が流れている。一次主冷却材は、一次主冷却系配管105a、105b、105cを介して原子炉容器102、一次主冷却系中間熱交換器103及び一次主冷却系循環ポンプ104間を循環しており、一次主冷却系ループが形成されている。
【0045】
また原子力プラント100は、原子炉格納容器101の外部に、過熱器106、蒸発器107、及び、二次主冷却系循環ポンプ108を備える。過熱器106、蒸発器107及び二次主冷却系循環ポンプ108は、二次主冷却系配管110a、110b、110cを介して直列に接続される。また、二次主冷却系配管110aの一部は、原子炉格納容器101に引き込まれ、一次主冷却系中間熱交換器103に対して熱交換可能に配設される。
【0046】
二次主冷却系配管110a、110b及び110cには、二次主冷却材として液体金属(例えば、ナトリウム)が流れている。二次主冷却材は、二次主冷却系配管110a、110b及び110cを介して過熱器106、蒸発器107及び二次主冷却系循環ポンプ108間を循環することにより、二次主冷却系ループが形成されている。
【0047】
また原子力プラント100は、原子炉格納容器101の外部に、蒸気タービン112、復水器113、給水ポンプ114、及び、発電機115を備える。蒸気タービン112、復水器113及び給水ポンプ114は、水・蒸気系配管116を介して互いに直列に接続されている。また、水・蒸気系配管116の一部は、過熱器106及び蒸発器107に対して熱交換可能にそれぞれ配設されている。
【0048】
水・蒸気系配管116には、水又は蒸気が流れている。水又は蒸気は、蒸気タービン112、復水器113及び給水ポンプ114を循環することにより水・蒸気系ループが形成されている。
【0049】
発電機115は、蒸気タービン112に動力伝達可能に連結される。また、復水器113は、取水管117、配水管118及び循環水ポンプ119を有する。復水器113には、循環水ポンプ119により汲み上げられた冷却水(例えば、海水)が取水管117及び配水管118を介して循環する。
【0050】
このように構成される原子力プラント100の原子炉1では、まず、原子炉容器102の炉心で発生した熱が、一次主冷却材に吸収される。続いて、一次主冷却材と二次主冷却材とが一次主冷却系中間熱交換器103で熱交換されることで、一次主冷却材の熱が二次主冷却材に吸収される。続いて、二次主冷却材が過熱器106及び蒸発器107で熱交換されることで、二次主冷却材の熱によって水・蒸気系の水が蒸気に変えられる。続いて、当該蒸気が蒸気タービン112の作動流体として用いられることにより、蒸気タービン112で動力が発生される。そして、この動力により発電機115が駆動され、発電が行われる。一方、蒸気タービン112を通過した蒸気は、復水器113で冷却されることにより復水される。
【0051】
<原子炉>
続いて上述の原子力プラント100の原子炉1の具体的構成について説明する。
図2は本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉1の内部構成を示す概略断面図である。
【0052】
原子炉1は、例えば高速増殖炉であり、原子炉容器2と、炉心3と、支持構造物4と、上部構造物5と、を備える。
【0053】
原子炉容器2は、容器本体21と、遮蔽プラグ22と、冷却材入口配管23及び冷却材出口配管24と、隔壁25と、を有する。容器本体21は、上部に開口部を有し、底側を鉛直下方に向けて原子炉格納容器(不図示)に格納される。遮蔽プラグ22は、容器本体21の開口部に設置されており、開口部を封止する。冷却材入口配管23及び冷却材出口配管24は、原子炉容器2内への一次主冷却材の出入口を構成する。隔壁25は、中央部に開口部を有する板状部材であり、原子炉容器2の内部を水平方向に横断して原子炉容器2の内部空間を上下に仕切る。
【0054】
炉心3は、主として制御棒集合体や燃料棒集合体を含む炉心構成要素31からなり、原子炉容器2内の略中央部に配置される。支持構造物4は、炉心構成要素31を支持する構造物であり、原子炉容器2の略中心部に配置される。また、隔壁25が原子炉容器2と支持構造物4とに固定される。
【0055】
支持構造物4は、連結管41を有する。連結管41には、後述するように、炉心構成要素31のエントランスノズル312(
図4を参照)が挿入されることで、炉心構成要素31を支持する。上部構造物5は、例えば、炉心構成要素31である制御棒を駆動するための駆動機構から構成される。この上部構造物5は、炉心3の上方に配置され、遮蔽プラグ22を貫通して遮蔽プラグ22に支持される。
【0056】
原子炉1では、炉心3での核分裂反応により、熱が発生する。また、一次主冷却材が、冷却材入口配管23から原子炉容器2内の下部に供給されており、下方から上方に向けて流れが形成される。そして、一次主冷却材が、連結管41を通り、炉心構成要素31の内部を通過して、炉心3の熱を吸収する。その後に、高温となった一次主冷却材が、冷却材出口配管24から原子炉容器2の外部に供給される。
【0057】
<炉心構成要素の支持構造>
図3は、
図2の炉心構成要素31の支持構造を示す拡大図であり、
図4は
図2の炉心構成要素31を単体で示す斜視図であり、
図5は第1温度(常温)における
図4のA-A断面図であり、
図6は
図5のB-B断面図であり、
図7は第2温度(>第1温度)における
図4のA-A断面図である。
尚、本実施形態では炉心構成要素31の一例として、制御棒集合体が示されている。
【0058】
図3に示されるように、支持構造物4は、上下方向に所定間隔をあけて水平方向に沿ってそれぞれ配置された板状部材である上部支持部材42及び下部支持部材43と、上部支持部材42及び下部支持部材43によって支持される複数の連結管41と、を備える。各連結管41は、炉心構成要素31のエントランスノズル312が挿入されることにより、炉心構成要素31を支持可能な円筒形状を有しており、軸方向を上下に向けた姿勢で、上部支持部材42及び下部支持部材43を貫通するように支持される。各連結管41は、上部が上部支持部材42によって支持されるとともに、下部が下部支持部材43によって支持されており、支持対象となる複数の炉心構成要素31にそれぞれ対応するように水平方向に格子状に複数配列されている。
【0059】
炉心構成要素31は、上端部及び下端部を連通する中空構造を有し、長尺な柱状形状を有する本体部311と、本体部の一端側に設けられるエントランスノズル312と、を備える。本体部311は、六角形柱状を有するラッパ管又は案内管であり、炉心構成要素31の本体を構成する。
【0060】
炉心構成要素31は、エントランスノズル312側を鉛直下方に向けつつ、エントランスノズル312を支持構造物4の連結管41に挿入して配置される(
図3参照)。連結管41に挿入された炉心構成要素31は、連結管41によって自立した状態で支持される。このとき炉心構成要素31は連結管41に嵌合して着座することにより、炉心構成要素31の倒れ込みが防止される。
【0061】
各炉心構成要素31は、本体部311の外表面の一部に第1パッド部3111を有する。第1パッド部3111は、本体部311のうちエントランスノズル312とは反対側の端部近傍に設けられ、隣り合う炉心構成要素31同士が第1パッド部3111にて相互に接触することにより、各炉心構成要素31が水平方向から支持されるように構成される。かかる支持構造では、例えば、地震発生時にて上下方向の振動が発生したときに、連結管41に対して炉心構成要素31が軸方向に跳び上がり変位して振動の衝撃を逃がすことが可能となる。
【0062】
図6及び
図7に示されるように、第1パッド部3111は、本体部311の外表面に形成された凹部315に少なくとも部分的に挿入される。凹部315は、本体部311の外表面状に周方向に沿って同心リング状に形成されている。第1パッド部3111は、このような凹部315に対応する同心リング形状を有しており、その内側が凹部315に挿入されている。
【0063】
第1パッド部3111は、本体部311とは異なる熱膨張率を有する材料を含んで形成される。ここで
図7は比較的低温である第1温度(例えば常温)における構成を示しており、
図8は比較的高温である第2温度(例えば原子炉1の稼働温度)における構成を示している。
図7及び
図8を比較すると、第2温度では、第1温度に比べて第1パッド部3111が熱膨張することにより外側への突出量が増加する。
【0064】
ここで
図8は第1パッド部3111が熱膨張した際に炉心構成要素31に作用する各力を示す模式図である。第1パッド部3111の突出量が増加すると、第1パッド部3111には隣り合う炉心構成要素31からの反力Frが作用する。反力Frは、連結管41の入口側の開口端部が支点41a(
図3を参照)となって、エントランスノズル312の先端部において、連結管41の内壁に対する水平力Fhが生じる。
【0065】
このような水平力Fhは、互いに接触するエントランスノズル312と連結管41との間に、摩擦係数に比例した摩擦力を軸方向に沿って発生させる。このように、エントランスノズル312と当該エントランスノズル312が嵌合する連結管41との間には、上下方向に沿った摩擦力が作用するため、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制できる。
【0066】
本実施形態では特に、第1パッド部3111からエントランスノズル312までの距離L1は、エントランスノズル312の長さL2より大きく構成されている。つまり、本体部311における第1パッド部3111の位置は、第1パッド部3111からエントランスノズル312までの距離L1がエントランスノズル312の長さL2より大きくなるように設定される。これにより、第1パッド部3111が膨張することで反力Frが生じると、テコの原理によって反力Frが増幅されることによって、エントランスノズル312と連結管41との間に大きな水平力Fhを生じさせることができる。このように水平力Fhが増幅されることで、エントランスノズル312と連結管41との間により大きな摩擦力を作用させ、より効果的に炉心構成要素の跳び上がりを抑制できる。
【0067】
一方、比較的低温な第1温度では、第1パッド部3111の熱膨張量が減少することで、隣り合う炉心構成要素31同士の干渉量も減少する。これに伴い、水平力Fhも小さくなるため、軸方向に沿った摩擦力も小さくなる。これにより、炉心構成要素31の交換作業などに伴う炉心構成要素31の挿抜を容易に行うことができる。
【0068】
本実施形態では特に、
図6に示されるように、第1パッド部3111は、第1温度において本体部311の外表面より内側に収容されるように構成される。これにより、第1温度では、第1パッド部3111は本体部311の外表面から突出しないので、炉心構成要素31の挿抜をよりスムーズに実施できる。
【0069】
図6及び
図7に示されるように、本体部311において第1パッド部3111が挿入される凹部315は、本体部311の外側に対向する傾斜面315aを有する。本実施形態では、凹部315は、上側と下側にそれぞれ設けられた一対の傾斜面315aと、当該一対の傾斜面315aの間に形成された平坦面315bと、を有する。一対の傾斜面315aは、それぞれ外側に向けて開口が広がる勾配を有する。
【0070】
一方、形状を有する凹部315に挿入される第1パッド部3111は、凹部315の傾斜面315aに対応する一対の傾斜面3111aと、凹部315の平坦面315bに対応する平坦面3111bと、を有する。これにより、温度上昇によって第1パッド部3111が熱膨張すると、第1パッド部3111は凹部315の傾斜面315aによってガイドされるように外側に向けて突出する。
【0071】
このような形状を有する凹部315及び第1パッド部3111を採用することにより、傾斜面によるガイドを伴いながら第1パッド部3111の突出量を、両者の同心を確保しながら、精度よく調整できる。
【0072】
また
図3に示されるように、連結管41のうちエントランスノズル312との嵌合面は、エントランスノズル312の挿入側の開口部にて縮径することにより内側に突出した第1凸部41bを有する。またエントランスノズル312は、当該連結管41の嵌合面における第1凸部41bに対応する位置において、連結管41の嵌合面に向けて突出する第1凸部31bを有する。このように、連結管41の嵌合面、及び、エントランスノズル312の表面にそれぞれ第1凸部41b、31bを設けることで、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312との間の隙間を小さくし、上記支点41aとして、より効果的に機能しやすく構成されている。
【0073】
尚、本実施形態では、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312の双方に第1凸部41b、31bを設けた場合を示しているが、どちらか一方にのみ第1凸部を設けることで、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312との間の隙間を小さくしてもよい。
【0074】
また連結管41のエントランスノズル312との嵌合面は、エントランスノズル312の挿入側の奥部にて縮径することにより内側に突出した第2凸部41cを有する。またエントランスノズル312は、当該連結管41の嵌合面における第2凸部41cに対応する位置において、連結管41の嵌合面に向けて突出する第2凸部31cを有する。このように、連結管41の嵌合面、及び、エントランスノズル312の表面にそれぞれ第2凸部41c、31cを設けることで、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312との間の隙間を小さくし、上記水平力Fhがより効果的に作用しやすく構成されている。
【0075】
尚、本実施形態では、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312の双方に第2凸部41c、31cを設けた場合を示しているが、どちらか一方にのみ第2凸部を設けることで、連結管41の嵌合面とエントランスノズル312との間の隙間を小さくしてもよい。
【0076】
このように本実施形態の支持構造では、第1パッド部3111は、第1温度において本体部311の外表面より内側に収容され、又は、外表面と平坦であり、且つ、第1温度より高い第2温度において本体部311の外表面より外側に膨張するように構成される。これにより、温度が低い第1温度では、第1パッド部3111は本体部311の内側に収容されることにより、周囲の炉心構成要素との干渉量が減り、炉心構成要素31の交換作業などに伴う挿抜を容易に行うことができる。一方、温度が高い第2温度では、第1パッド部3111は本体部311の外表面より外側に膨張することにより、周囲の炉心構成要素31との干渉量に応じてエントランスノズル312において連結管41との間に水平力Fhを生じさせ、炉心構成要素31の跳び上がりを抑制できる。
【0077】
尚、炉心構成要素31の第2凸部31cは、前述の第1パッド部3111と同様に、本体部311より熱膨張率が大きな材料を含んで形成される第2パッド部として構成してもよい。すなわち、この場合、第2パッド部は本体部311より大きな熱膨張率を有するため、原子炉1の稼働時に温度が上昇すると、本体部311の外表面より外側に突出して第2凸部31cとして機能する。一方、温度が低い場合には、外側への突出量が減少することで、エントランスノズル312が挿入される連結管41との干渉量が減り、炉心構成要素31の交換時などにおける炉心構成要素31の挿抜作業を容易に行うことができる。
【0078】
<原子炉の設計方法>
続いて上記構成を有する原子炉の設計方法について説明する。
図9は本発明の少なくとも一実施形態に係る原子炉1の設計方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0079】
まず設計方法を実施するために必要な情報として、炉心構成要素31の初期変形量、熱伸び量及びスエリング量をそれぞれ取得する(ステップS1~S3)。
【0080】
初期変形量は、複数の炉心構成要素31の各々における固有の変形量であり、例えば製造誤差である。初期変形量は、本来設計値からの変形量として取得され、例えば、第1温度(常温)における炉心構成要素31を三次元計測することにより測定される(すなわち互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿った変位量を取得することにより測定される)。具体例としては、初期変形量は、炉心構成要素31の所定の基準点(例えば連結管41に挿入されるエントランスノズル312の付け根部)に対する本体部311及びエントランスノズル312の偏心量として測定される。
【0081】
熱伸び量は、原子炉1の運転時に炉心構成要素31に生じる熱変形量のうち、非塑性的な成分である。このような熱伸び量は、原子炉1の運転条件から算出される運転時の炉内温度分布に基づいて、各場所に配置される炉心構成要素31について演算的に算出される。
【0082】
スエリング量は、原子炉1の運転時に炉心構成要素31に生じる熱変形量のうち、塑性的な成分である。このようなスエリング量は、前述の熱伸び量と同様に、原子炉1の運転条件から算出される運転時の炉内温度分布に基づいて、各場所に配置される炉心構成要素31について演算的に算出される。
【0083】
続いてステップS1~S3で取得した炉心構成要素31の初期変形量、熱伸び量及びスエリング量に基づいて、複数の炉心構成要素31のエントランスノズル312と連結管41との間に作用する水平力Fhを算出する(ステップS4)。このような水平力Fhの算出は、原子炉1に含まれる複数の炉心構成要素31の各々に対して行われることにより、隣り合う炉心構成要素31同士に生じる干渉量を加味して解析的に求められる。
【0084】
尚、ステップS4では、水平力Fhの算出のために初期変形量、熱伸び量及びスエリング量を用いた場合を例示しているが、少なくとも初期変形量及び熱伸び量に基づいて算出することが可能である。この場合、本実施形態のようにスエリング量を考慮した場合に比べて算出精度は劣るものの演算負担を軽減することができる。
【0085】
続いて、ステップS4で算出された水平力Fhが所定基準を満たすように、複数の連結管41に対する複数の炉心構成要素31の配置パターンを決定する(ステップS5)。
【0086】
ここでステップS5で用いられる所定基準は、例えば、複数の炉心構成要素31の各々に対応する水平力Fhの平均値又は最小値が閾値以上であるか否かとして設定される。すなわち、ステップS5では、エントランスノズル312と連結管41との間に作用する水平力Fhの平均値又は最小値が予め規定された基準値である閾値以上になるように、炉心構成要素31の配置パターンが決定される。ここで水平力Fhが閾値未満である場合には、他の配置パターン(前回用いた配置パターンに関するパラメータを変更した配置パターン)について水平力Fhの再演算を行うことで、水平力Fhが閾値以上になるような配置パターンが逐次的に求められる。その結果、水平力Fhが閾値以上となる少なくとも一つの配置パターンが特定される。
【0087】
尚、ステップS5では、水平力Fhが閾値以上となる配置パターンが複数選定されてもよい。
【0088】
また、水平力Fhは干渉量に基づいて作用するため、ステップS5の判断では水平力Fhに代えて第1パッド部3111の干渉量が閾値以上となるように配置パターンが決定されてもよい。
【0089】
続いてステップS5で決定された配置パターンについて、複数の炉心構成要素31の各々が複数の連結管41に対して初期装荷可能であるか否かが判定される(ステップS6)。つまり、ステップS5では水平力Fhが閾値以上となる配置パターンが選択されるが、当該配置パターンは演算的に求められた結果であるため、構造的に初期装荷できるような現実的な配置パターンであるか否かが判断される。これにより、水平力Fhを最適化する観点から演算的に求められた配置パターンが、連結管41に対して炉心構成要素31が構造的に挿抜可能であるか否かという構造的観点からも適切であるかが評価される。
【0090】
尚、ステップS6における判定は、ステップS1で取得される初期変形量に基づいて、各炉心構成要素31が有する変形量を評価することにより判断される。初期装荷は、原子炉1の稼働前に行われるからである。
【0091】
続いてステップS5で決定された配置パターンについて、原子炉1の稼働後に実施される交換作業が可能であるか否かが判定される(ステップS7)。通常運用時において第2温度で稼働される原子炉1は、所定のタイミングで第1温度(常温)に冷却された状態で、炉心構成要素31の交換作業を含むメンテナンスが実施される。このようなメンテナンス作業が実施される際に、交換対象となる炉心構成要素31は、初期変形量及びスエリング量を含む。そのため、ステップS1及びS3で取得した初期変形量及びスエリング量に基づいて、メンテナンス実施時における炉心構成要素31の変形量が演算的に求められる。そして求められた変形量に基づいて、複数の炉心構成要素31間における干渉量を評価し、ステップS5で決定された配置パターンが、炉心構成要素31の交換作業が実現可能なものであるか否かが判断される。
【0092】
このようにして水平力Fhが閾値以上になることによって跳び上がりが防止される配置パターンであって、初期装荷及び交換作業の観点からも実現可能な配置パターンが決定される(ステップS8)。
【0093】
上述の設計方法によれば、支持構造物4が有する連結管41に嵌合可能なエントランスノズル312を有する複数の炉心構成要素31の各々について、エントランスノズル312と連結管41との間に作用する水平力Fhが求められる。複数の連結管41に対する複数の炉心構成要素31の配置パターンは、このように求められた水平力Fhが所定基準を満たすように決定されることにより、エントランスノズル312と連結管41との間に上下方向に沿って作用する摩擦力を最適化することができ、地震発生時などにおいても炉心構成要素の跳び上がりを効果的に抑制可能な原子炉設計が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の少なくとも一実施形態は、支持構造物に含まれる連結管に嵌合可能なエントランスノズルを有する炉心構成要素を含む原子炉の設計方法、炉心構成要素、及び、当該炉心構成要素を備える原子炉に利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 原子炉
2 原子炉容器
3 炉心
4 支持構造物
5 上部構造物
31 炉心構成要素
41 連結管
42 上部支持部材
43 下部支持部材
100 原子力プラント
311 本体部
312 エントランスノズル
315 凹部
315a,3111a 傾斜面
315b,3111b 平坦面
3111 第1パッド部