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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/036 20060101AFI20221117BHJP
   A61B 3/032 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61B3/036
A61B3/032
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021212792
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2017188067の分割
【原出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2022043245
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕幸
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-244734(JP,A)
【文献】特開平06-090902(JP,A)
【文献】特開2017-164113(JP,A)
【文献】特開平01-198527(JP,A)
【文献】特表2004-537331(JP,A)
【文献】特開平06-165755(JP,A)
【文献】特開平06-304139(JP,A)
【文献】特開平07-213487(JP,A)
【文献】特開平09-253049(JP,A)
【文献】特開平11-047094(JP,A)
【文献】特開2005-103069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0153797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/036
A61B 3/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視標呈示光学系と制御部とを備えた検眼装置において、
前記視標呈示光学系は、被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を前記被検眼に呈示する固視標光学系と、この固視標光学系と光軸を共通にし、乱視検査用視標に対して所定の乱視量を発生させて一対の乱視検査用視標像を前記被検眼に呈示するクロスシリンダ光学系とを有し、
前記固視標光学系は、固定固視標を前記被検眼に呈示する固定固視標光学系と、この固定固視標光学系と光軸を共通にし、表示部により表示される可変可能な可変視標を前記被検眼に呈示する可変視標光学系とを有し、
前記制御部は、前記表示部に前記可変視標を表示させる表示制御部を有し、
前記クロスシリンダ光学系は、前記乱視検査用視標を投影する光束を軸角度が異なる一対の光束に分割する光束分割部材と、一対の前記乱視検査用視標を分離した状態で前記乱視検査用視標像として前記被検眼に投影しつつ乱視軸角度を調整する視標投影部とを有し、
前記固視標光学系と前記クロスシリンダ光学系とは、合流されることで光軸が共通とされ、
前記光束分割部材は、前記クロスシリンダ光学系における前記固視標光学系と合流される前の位置に設けられ、
前記視標投影部は、前記クロスシリンダ光学系における前記固視標光学系と合流された後の位置に設けられて、前記固視標光学系と前記クロスシリンダ光学系とに共用され
前記固定固視標光学系は、内面が鏡面仕上げされた円錐状の反射板の頂点部分に配置されて前記固定固視標を照明する固視標用光源を有す
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
前記固定固視標と前記可変視標とは、前記被検眼に呈示された状態で一体の図形をなすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の検眼装置。
【請求項3】
前記固定固視標と前記可変視標とは、少なくともその中央部において重複して前記被検眼に呈示されることを特徴とする請求項2に記載の検眼装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記表示部に連続的に変化する前記可変視標を表示させることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の検眼装置。
【請求項5】
前記固定固視標光学系は、前記固定固視標の周縁部に設けられた融像枠を照明する融像枠用光源、及び/または前記固定固視標の周辺部に設けられたグレア用光源を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の検眼装置。
【請求項6】
検査指示の入力を受け入れる第一の入力部を有し、
前記表示制御部は、前記第一の入力部が受け入れた前記検査指示を含む前記可変視標を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の検眼装置。
【請求項7】
前記検査指示の入力に対応する前記可変視標上の座標指示を受け入れる第二の入力部を有し、
前記制御部は、前記可変視標上の座標指示の座標位置を検出する座標位置検出部を有することを特徴とする請求項6に記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視標呈示光学系と制御部とを備えた検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視標呈示光学系と制御部とを備えた検眼装置としては、従来、例えば特許文献1に開示されたような検眼装置が知られている。特許文献1に開示された従来の検眼装置の概要について、図14及び図15を参照して説明する。
【0003】
図14及び図15は従来の検眼装置を説明する図であって、図14は本体部5Rの右眼用光学系の概略ブロック図を示し、図15はその右眼用光学系の詳細構成を示している。なお、本体部5Lの左眼用光学系の構成は右眼用光学系と同一であるので、その説明は省略することとし、右眼用光学系についてのみ説明する。
【0004】
視標呈示光学系である右眼用光学系120は、図14及び図15に示すように、被検眼Eと本体部5Rとの距離合わせを行う視標投影光学系g′及び複数個のリングパターンを被検眼Eの角膜に向けて投影するリングパターン投影光学系f′を有する。
【0005】
視標投影光学系g′は、図14に示すように、それぞれ一対のLED121、122、及び一対の投影レンズ123、124を有している。視標投影光学系g′のLED121、122からの視標光束は、ミラー125を介して被検眼Eの角膜に斜め二方向から投影される。
【0006】
リングパターン投影光学系f′は、図15に詳細を示すように、リング状照明光源127及びリングパターン126を有し、同心円状のリングパターン像がミラー125を介して被検眼Eの角膜に同様に投影される。そのリングパターン投影光学系f′は前眼部照明光源に兼用されている。
【0007】
右眼用光学系120は、さらに図15に示すように、前眼部観察及び被検眼に対する本体部5Rのアライメントと角膜曲率分布測定とを行うための受光光学系a′、被検眼Eの屈折力を測定するための視標を眼底Efに投影する屈折力測定用視標投影光学系b′、眼底Efからの反射光束を受光する受光光学系c′、被検眼Eに固視及び雲霧視を行わせるための視標を投影する視標投影光学系d′、及び、被検眼Eと本体部5Rの対物レンズ110の光軸と直交する方向、すなわち、上下左右方向のアライメントを行うための視標を投影する視標投影光学系e′を有する。
【0008】
視標投影光学系e′は視標LED128、ダイクロイックミラー129からなっている。視標LED128からの視標光束は、ダイクロイックミラー129により反射され、ダイクロイックミラー130を透過し、対物レンズ110、ミラー125を経由して被検眼Eの角膜に投影される。
【0009】
受光光学系a′は、対物レンズ110、ダイクロイックミラー130、絞り131、リレーレンズ132、133、ダイクロイックミラー134、結像レンズ135、撮像素子136を有する。絞り131は対物レンズ110の焦点位置に配設されて、いわゆるテレセントリック絞りとして用いられる。この絞り131の中心を通る光線は、被検眼上で対物レンズ110の光軸と平行である。
【0010】
視標投影光学系e′からの視標光束による角膜からの反射光、リングパターン投影光学系f′のリングパターン126による角膜及び前眼部からの散乱反射光、視標投影光学系g′からの視標光束による角膜からの反射光は、その受光光学系a′の各光学素子を経由して、撮像素子136に受像される。その撮像素子136の受像出力はモニタを有する制御部137に入力される。
【0011】
視標投影光学系d′は、ランプ138、コリメータレンズ139、回転板140、ミラー141、リレーレンズ142、ミラー143、被検眼視度調節用の移動レンズ144、リレーレンズ145、146、乱視補正用のバリアブルクロスシリンダ147、148、ミラー149、ダイクロイックミラー150を有する。
【0012】
回転板140はモータ151によって回転駆動され、回転板140には固視標152、ランドルト環等が設けられている。固視標152は、ミラー141、リレーレンズ142、ミラー143、移動レンズ144、リレーレンズ145、146、バリアブルクロスシリンダ147、148、ダイクロイックミラー150、130、対物レンズ110、ミラー125を介して被検眼Eに投影される。
【0013】
屈折力測定用視標投影光学系b′は、測定光源ユニット164、リレーレンズ157、瞳リング絞り158、三角プリズム159を有する。測定光源ユニット164は眼屈折力測定用光源153、リレーレンズ154、円錐プリズム155、測定リングターゲット156を有する。瞳リング絞り158はエッチングによりレンズに形成されたリング状の絞りである。瞳リング絞り158は、被検眼Eの瞳と共役位置に配置されている。
【0014】
被検眼Eの眼底Efで反射された測定光束は、ミラー125、対物レンズ110、ダイクロイックミラー130、150、三角プリズム159を経由して受光光学系c′に導かれる。
【0015】
受光光学系c′は、三角プリズム159、ミラー160、リレーレンズ161、移動レンズ162、ミラー163を有する。移動レンズ162は被検眼Eの屈折力に対応して移動される。眼底Efで反射された測定光束は三角プリズム159の中央部159aを通り、ミラー160で反射され、リレーレンズ161、移動レンズ162、ミラー163、ダイクロイックミラー134、結像レンズ135を経由して撮像素子136に結像される。三角プリズム159の反射面159bと反対側の面159cは瞳と共役位置に設けられ、瞳から出てきた眼底Efからの反射光束がその三角プリズム159の中心光軸部のみを通る光束となるようにエッチングが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2003/041571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の検眼装置は、固視標152が固定された、つまり単一かつ不動のものであったため、例えば被検者の視線を固視標152の中心部、つまり無限遠に固視させるための被検者への誘導(例えば検者が被検者に声で指示をするなど)が必要であるとともに、実際に被検者の視線を固視させるまでに時間を要することもあった。
【0018】
また、従来の検眼装置では、固視標の投影及びクロスシリンダの投影を共通の視標投影光学系d′で行っていたので、この視標投影光学系d′全体の構成が複雑になるおそれがあるとともに、クロスシリンダの投影を確実に行えないおそれがあった。
【0019】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、固視標への視線の固視を確実に行わせることができるとともに、クロスシリンダの投影を確実に行うことができる検眼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明の検眼装置は視標呈示光学系と制御部とを備え、視標呈示光学系は、被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を被検眼に呈示する固視標光学系と、この固視標光学系と光軸を共通にし、乱視検査用視標に対して所定の乱視量を発生させて一対の乱視検査用視標像を被検眼に呈示するクロスシリンダ光学系とを有し、固視標光学系は、固定固視標を被検眼に呈示する固定固視標光学系と、この固定固視標光学系と光軸を共通にし、表示部により表示される可変可能な可変視標を被検眼に呈示する可変視標光学系とを有し、制御部は、表示部に可変視標を表示させる表示制御部を有し、前記クロスシリンダ光学系は、前記乱視検査用視標を投影する光束を軸角度が異なる一対の光束に分割する光束分割部材と、一対の前記乱視検査用視標を分離した状態で前記乱視検査用視標像として前記被検眼に投影する視標投影部とを有し、前記固視標光学系と前記クロスシリンダ光学系とは、合流されることで光軸が共通とされ、前記光束分割部材は、前記クロスシリンダ光学系における前記固視標光学系と合流される前の位置に設けられ、前記視標投影部は、前記クロスシリンダ光学系における前記固視標光学系と合流された後の位置に設けられて、前記固視標光学系と前記クロスシリンダ光学系とに共用されていることを特徴とする。
【0021】
ここで、固定固視標と可変視標とは、被検眼に呈示された状態で一体の図形をなすように構成することができる。また、固定固視標と可変視標とは、少なくともその中央部において重複して被検眼に呈示されるように構成することができる。さらに、表示制御部は、表示部に連続的に変化する可変視標を表示させる構成とすることができる。
【0022】
また、固定固視標光学系は、固定固視標を照明する固視標用光源、及び/または固定固視標の周縁部に設けられた融像枠を照明する融像枠用光源、及び/または固定固視標の周辺部に設けられたグレア用光源を有する構成とすることができる。
【0023】
さらに、検査指示の入力を受け入れる第一の入力部を有し、表示制御部は、第一の入力部が受け入れた検査指示を含む可変視標を表示部に表示させる構成とすることができる。
【0024】
そして、検査指示の入力に対応する可変視標上の座標指示を受け入れる第二の入力部を有し、制御部は、可変視標上の座標指示の座標位置を検出する座標位置検出部を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
このように構成された本発明の検眼装置では、視標呈示光学系が、被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を被検眼に呈示する固視標光学系と、この固視標光学系と光軸を共通にし、乱視検査用視標に対して所定の乱視量を発生させて一対の乱視検査用視標像を被検眼に呈示するクロスシリンダ光学系とを有し、固視標光学系が、固定固視標を被検眼に呈示する固定固視標光学系と、この固定固視標光学系と光軸を共通にし、表示部により表示される可変可能な可変視標を被検眼に呈示する可変視標光学系とを有し、制御部が、表示部に可変視標を表示させる表示制御部を有する。
【0026】
従って、固定固視標光学系及び可変視標光学系により被検眼に呈示される固視標、さらにはクロスシリンダ光学系により被検眼に呈示される乱視検査用視標像を多様なものとすることができ、固視標への視線の固視を確実に行わせることができるとともに、クロスシリンダの投影を確実に行うことができる。
【0027】
ここで、固定固視標と可変視標とは、被検眼に呈示された状態で一体の図形をなすように構成されているので、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0028】
また、固定固視標と可変視標とは、少なくともその中央部において重複して被検眼に呈示されるので、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0029】
さらに、表示制御部は、表示部に連続的に変化する可変視標を表示させるので、固定固視標光学系及び可変視標光学系により被検眼に呈示される固視標をより多様なものとすることができ、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0030】
また、固定固視標光学系は、固定固視標を照明する固視標用光源、及び/または固定固視標の周縁部に設けられた融像枠を照明する融像枠用光源、及び/または固定固視標の周辺部に設けられたグレア用光源を有するので、固定固視標光学系及び可変視標光学系により被検眼に呈示される固視標をさらに多様なものとすることができ、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0031】
さらに、クロスシリンダ光学系は、乱視検査用視標を投影する光束を軸角度が異なる一対の光束に分割する光束分割部材と、一対の乱視検査用視標を分離した状態で乱視検査用視標像として被検眼に投影する視標投影部とを有するので、クロスシリンダの投影を確実に行うことができる。
【0032】
さらに、検査指示の入力を受け入れる第一の入力部を有し、表示制御部は、第一の入力部が受け入れた検査指示を含む可変視標を表示部に表示させるので、被検者の負担が軽減されると共に、被検者の誤答を抑制することができ、測定時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0033】
そして、検査指示の入力に対応する可変視標上の座標指示を受け入れる第二の入力部を有し、制御部は、可変視標上の座標指示の座標位置を検出する座標位置検出部を有するので、被検者の負担が軽減されると共に、被検者の誤答を抑制することができ、測定時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施の形態である検眼装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施の形態である検眼装置の光学系の概略構成を示す図である。
図3】本実施の形態である検眼装置の右眼用測定光学系の詳細構成を示す図である。
図4】視標光学部の詳細構成を示す図である。
図5】固定固視標光学系の光源の詳細構成を示す図である。
図6】視標投影系におけるプリズム付クロスシリンダの作用を説明するための図である。
図7】本実施の形態である検眼装置の全体構成を示すブロック図である。
図8】本実施の形態である検眼装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図9】本実施の形態である検眼装置により被検眼に呈示される固定固視標の一例を示す図である。
図10】本実施の形態である検眼装置により被検眼に呈示される視標の一例を示す図である。
図11】本実施の形態である検眼装置により被検眼に呈示される視標の他の例を示す図である。
図12】本実施の形態である検眼装置の動作を説明するための図である。
図13】本実施の形態である検眼装置により被検眼に呈示される視標のまた他の例を示す図である。
図14】従来の検眼装置の光学系の概略構成を示す図である。
図15】従来の検眼装置の右眼用測定光学系の詳細構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本実施の形態である検眼装置を、図1から図13を用いて説明する。先ず、検眼装置10の全体構成を説明する。
(検眼装置の全体構成)
【0036】
検眼装置10は、図1に示すように、基台11と検眼用テーブル12と支柱13とアーム14と駆動機構15と一対の測定ヘッド16とを備える。検眼装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に当てた状態で、被検者の被検眼の情報を取得する。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ヘッド16の奥行き方向)をZ方向とする。
【0037】
検眼用テーブル12は、後述する検者用コントローラ25や被検者用コントローラ26を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
【0038】
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に伸びるように基台11により支持されており、先端にアーム14が設けられている。
【0039】
アーム14は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能とされている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向及びZ方向に移動可能とされていてもよい。アーム14の先端には、駆動機構15により吊り下げられて一対の測定ヘッド16が支持されている。
【0040】
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼に個別に対応すべく対を為して設けられ、以下では個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16L及び右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼の情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼の情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
【0041】
各測定ヘッド16には偏向部材であるミラー18が設けられ、ミラー18を通じて後述する測定光学系21により対応する被検眼の情報が取得される。
【0042】
各測定ヘッド16には、被検眼の眼情報を取得する測定光学系21(個別に述べる際には右眼用測定光学系21R及び左眼用測定光学系21Lとする)が設けられている。測定光学系21の詳細構成については後述する。
【0043】
両測定ヘッド16は、アーム14の先端から吊り下げられたベース部19に設けられた駆動機構15により移動可能に吊り下げられている。駆動機構15は、本実施の形態では、図7に示すように、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用鉛直駆動部22L、左眼用水平駆動部23L及び左眼用回旋駆動部24Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用鉛直駆動部22R、右眼用水平駆動部23R及び右眼用回旋駆動部24Rとを有する。
【0044】
左眼用測定ヘッド16Lに対応する各駆動部の構成と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされており、個別に述べる時を除くと単に鉛直駆動部22、水平駆動部23及び回旋駆動部24と記す。
【0045】
鉛直駆動部22はベース部19と水平駆動部23との間に設けられ、ベース部19に対して水平駆動部23をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は鉛直駆動部22と回旋駆動部24との間に設けられ、鉛直駆動部22に対して回旋駆動部24をX方向及びZ方向(水平方向)に移動させる。
【0046】
鉛直駆動部22及び水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構とが設けられて構成される。水平駆動部23は、例えばX方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
【0047】
回旋駆動部24は、水平駆動部23に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼の眼球回旋軸を中心に回転させる。回旋駆動部24は、例えば、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成として、案内溝の中心位置が眼球回旋軸と一致されることで、被検眼の眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させる。
【0048】
なお、回旋駆動部24は、自らに設けた回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに水平駆動部23と協働して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させるものでもよい。
【0049】
これにより、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向及びZ方向に移動させることができるとともに、被検眼の眼球回旋軸を中心に回転させることができる。
【0050】
(検眼装置の光学系)
図2は本実施の形態である検眼装置の光学系の概略構成を示す図、図3は右眼用測定光学系21Rの詳細構成を示す図である。なお、左眼用測定光学系21Lの構成は右眼用測定光学系21Rと同一であるので、その説明は省略することとし、右眼用測定光学系21Rについてのみ説明する。
【0051】
右眼用測定光学系21Rは、図3に示すように、観察系31、視標投影系(固視標光学系)32、眼屈折力測定系33、自覚式検査系(クロスシリンダ光学系)34、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37を有する。
【0052】
観察系31は被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系32は被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系33は眼屈折力の測定を行い、自覚式検査系34は自覚検査を行う。
【0053】
眼屈折力測定系33は、本実施の形態では、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影した測定パターンの像を検出する機能とを有する。また、自覚式検査系34は、本実施の形態では、被検眼Eに視標を呈示する機能を有し、光学系を構成する光学素子を視標投影系32と共用する。
【0054】
アライメント系35及びアライメント系36は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行い、アライメント系35が観察系31の光軸に沿う方向(前後方向)の、アライメント系36が当該光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントをそれぞれ行う。
【0055】
観察系31は、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ハーフミラー31c、リレーレンズ31d、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子(CCD)31gを有する。
【0056】
観察系31では、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ31aを経て結像レンズ31fにより撮像素子31g上に結像する。これにより、撮像素子31g上には、後述するケラトリング光束やアライメント光源35aの光束やアライメント光源36aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部像E′が形成される。制御部27は、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′等を表示部29の表示画面29aに表示させる。
【0057】
対物レンズ31aの前方には、ケラト系37が設けられている。ケラト系37は、ケラト板37a及びケラトリング光源37bを有する。ケラト板37aは、観察系31の光軸に関して同心状のスリットが設けられた板状を呈し、対物レンズ31aの近傍に設けられている。ケラトリング光源37bは、ケラト板37aのスリットに合わせて設けられている。
【0058】
ケラト系37では、点灯したケラトリング光源37bからの光束がケラト板37aのスリットを経ることで、被検眼E(角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。ケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系31により撮像素子31g上に結像される。これにより、撮像素子31gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)し、制御部27が、その測定パターンの像を表示画面29aに表示させ、かつ当該画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定する。
【0059】
なお、本実施の形態では、角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板37aを用いる例(ケラト系37)を示しているが、角膜形状を測定するものであれば、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、本実施の形態の構成に限定されない。
【0060】
ケラト系37(ケラト板37a)の後方にはアライメント系35が設けられている(図2参照)。アライメント系35は、一対のアライメント光源35a及び投影レンズ35bを有し、各アライメント光源35aからの光束を各投影レンズ35bで平行光束とし、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。
【0061】
制御部27または検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に沿う方向(前後方向)のアライメントを行う。この前後方向のアライメントは、撮像素子31g上のアライメント光源35aによる2個の点像の間隔とケラトリング像の直径の比を所定範囲内とするように測定ヘッド16の位置を調整して行う。
【0062】
ここで、制御部27は、当該比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示画面29aに表示させても良い。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源36aによる輝点像Brのピントが合うように測定ヘッド16の位置を調整することで行ってもよい。
【0063】
また、観察系31にはアライメント系36が設けられている。アライメント系36はアライメント光源36a及び投影レンズ36bを有し、ハーフミラー31c、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
【0064】
アライメント系36は、アライメント光源36aからの光束を、対物レンズ31aを経て平行光束として角膜Ecに投光(投影)する。制御部27または検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントを行う。
【0065】
このとき、制御部27は、輝点像Brが形成された前眼部像E′に加えて、アライメントマークの目安となるアライメントマークALを表示画面29aに表示させる。制御部27は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。
【0066】
視標投影系32は、被検眼Eを固視、雲霧させる為に視標を投影し、眼底Efに呈示する光学系である。視標投影系32は、視標光学部32A(図4参照、図3には反射ミラー32jのみ示している)、結像レンズ32b、合焦レンズ32c、リレーレンズ32d、ビームスプリッタ32e、フィールドレンズ32f、バリアブルクロスシリンダ(VCC)レンズ32g、ミラー32h及びダイクロイックフィルタ32iを有し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
【0067】
視標光学部32Aは、図4に示すように、固定固視標光学系32B及び可変視標光学系32Cを有する。固定固視標光学系32Bは、反射ミラー32j、リレーレンズ32k、反射ミラー32m、ビームスプリッタ32n、固定固視標32p及び固定固視標用光源32sを有する。また、可変視標光学系32Cはディスプレイ(表示部)32rを有し、反射ミラー32j、リレーレンズ32k、反射ミラー32m及びビームスプリッタ32nを固定固視標光学系32Bと共用する。
【0068】
固定固視標32pは、固視のために被検者に呈示する視標であり、被検眼Eがピントのズレ(ボケ具合)を明確に認識できる一定以上の視角を有する図柄である(図9参照)。固定固視標32pは、本実施の形態では注視し易い箇所を含みかつ自然に遠方視ができる風景視標とする(図9参照)。このような固定固視標32pは、平板状のガラスの表面に図9に示すような高精細な図柄を印刷または焼き付けることにより構成することができる。
【0069】
固定固視標光源32qは、図5に示すように、いずれもLED等の白色点光源からなる固定固視標用光源32s、融像枠用光源32t及びグレア用光源32uを有する。固定固視標用光源32sは、内面が鏡面仕上げされた円錐状の反射板32vの頂点部分に配置され、融像枠用光源32tは、同様に内面が鏡面仕上げされた二重の円筒状の反射筒32wの底面部分に配置され、固定固視標32pの外周部分にリング状に設けられた融像枠32xを背面から照射する。被検眼Eにグレア光を照射するグレア用光源32uは、反射筒32wの周方向に沿って所定間隔で複数設けられている。
【0070】
なお、固定固視標光源32qの組み合わせ、すなわち固定固視標用光源32s、融像枠用光源32t及びグレア用光源32uの組み合わせは本実施の形態に限定されず、少なくともいずれか一つの光源を備えれば、その組み合わせに特段の制限はない。
【0071】
ディスプレイ32rは、他覚検査及び自覚検査を実施する際に、固視及び雲霧を行う風景チャートの他、ランドルト環やE文字視標等、検眼視標や、後述するクロスシリンダ(CC)視標像(乱視検査用視標像)を識別する為の複数の視標等を表示する。このディスプレイ32rは、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(LCD)で形成することができ、制御部27の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ32rは、視標投影系32(自覚式検査系34)の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられている。
【0072】
合焦レンズ32cは、駆動モータ(図示せず)により光軸に沿って進退駆動される。合焦レンズ32cを被検眼E側に移動させることで、屈折力をマイナス側に変位させることができると共に、合焦レンズ32cを被検眼Eから離反する方向に移動させることで、屈折力をプラス側に変位させることができる。従って、合焦レンズ32cの進退駆動により、固定固視標32pまたはディスプレイ32rに表示された視標の呈示距離を変更可能、即ち視標像の呈示位置を変更可能であると共に、被検眼Eを固視、雲霧させることができる。
【0073】
VCCレンズ32gは、互いに正負の屈折力を有し、凸曲面を有するシリンダレンズと、凹曲面を有するシリンダレンズとから構成されている。2つのシリンダレンズは、図示しないパルスモータ等の駆動機構により、光軸を中心にそれぞれ独立して回転する様になっている。2つのシリンダレンズを相対的に回転させることで乱視量を調整でき、2つのシリンダレンズを一体に回転させることで乱視軸角度を調整することができる。従って、VCCレンズ32gは、被検眼Eの乱視を打ち消す様に作用する。なお、VCCレンズ32gは、例えば被検眼E上で0~8Dの乱視量を発生させることができ、対物レンズ31aを介して被検眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置される。
【0074】
自覚式検査系34は、CC視標像を眼底に呈示する光学系である。自覚式検査系34は、LED34a、拡散板34b、CC視標板(乱視検査用視標)34c、結像レンズ34d、光束分割部材としてのプリズム付クロスシリンダ(CC)レンズ(光束分割部材)34e、ミラー34f及びリレーレンズ34gを有し、ビームスプリッタ32e、フィールドレンズ32f、VCCレンズ(視標投影部)32g、ミラー32h及びダイクロイックミラー32jを視標投影系32と共用する。
【0075】
CC視標板34cは、ガラス基板にCC検査用の点群状のドット視標パターン40(乱視検査用視標:図6参照)が描画されたものである。LED34aから白色光が照射され、白色光がCC視標板34cを透過し、被検眼EにCC視標像が呈示される。また、CC視標板34cに隣接して拡散板34bが配置されている。この拡散板34bにより、CC視標板34cを透過する白色光の照明ムラが低減される。
【0076】
LED34a、拡散板34b及びCC視標板34cは、駆動モータ(図示せず)により、光軸に沿ってCC視標ユニットとして一体に進退駆動される。LED34a、拡散板34b及びCC視標板34cの進退駆動により、CC視標板34cから投影されるCC視標像の呈示距離を変更可能とすることができる。
【0077】
なお、LED34a、拡散板34b及びCC視標板34cを固定とし、合焦レンズを追加し、この合焦レンズを光軸に沿って進退駆動する構成としてもよい。又、LED34a、拡散板34b及びCC視標板34cに替えて、視標光学部32Aと同様にディスプレイ32rを用いてもよい。
【0078】
プリズム付CCレンズ34eは、プリズムとクロスシリンダレンズとが一体化されたものである。プリズム付CCレンズ34eは、例えば±0.5D等のシリンダレンズが光軸と直交し、母線が光軸に対して45°傾斜したプリズム34h、34iを有している(図6参照)。また、プリズム付CCレンズ34eは、リレーレンズ34gに対してVCCレンズ32gと略共役であり、即ち被検眼Eの瞳孔と略共役な位置となっている。
【0079】
プリズム付CCレンズ34eの周囲には、例えばリングギア34jが形成されている。このリングギア34jは、駆動モータの出力軸に形成された駆動ギア34kと噛合し、駆動モータを介してプリズム付CCレンズ34eが回転される。なお、駆動モータは、回転角を検出できるもの、あるいは駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータ34mが用いられる。
【0080】
図6はプリズム付CCレンズ34eの作用例を示したものである。図6に示すように、プリズム付CCレンズ34eにCC視標板34cからのドット視標パターン40の光束が入射すると、この光束はプリズム34hを透過した光束とプリズム34iを透過した光束に分割される。分割された光束は軸角度が90°異なった2つのCC視標像40a、40bとして被検眼Eに分離した状態で呈示される。従って、プリズム付CCレンズ34eの作用例を示したものである。図6に示すように、プリズム付CCレンズ34eを設けることで、軸角度が90°異なる2つのCC視標像40a、40bを同時に観察できる。
【0081】
眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系33A、及び眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系33Bを有する。
【0082】
リング状光束投影系33Aは、レフ光源ユニット部33a、リレーレンズ33b、瞳リング絞り33c、フィールドレンズ33d、穴開きプリズム33e及びロータリープリズム33fを有し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。レフ光源ユニット部33aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源33g、コリメータレンズ33h、円錐プリズム33i及びリングパターン形成板33jを有し、それらが制御部27の制御下で眼屈折力測定系33の光軸上を一体的に移動可能とされる。
【0083】
リング状光束受光系33Bは、穴開きプリズム33eの穴部33p、フィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t及び反射ミラー33uを有し、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子31gを観察系31と共用し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32(自覚式検査系34)と共用し、ロータリープリズム33f及び穴開きプリズム33eをリング状光束投影系33Aと共用する。
【0084】
次に、眼屈折力測定モードの際の動作について説明する。制御部27はレフ測定光源33gを点灯させ、かつリング状光束投影系33Aのレフ光源ユニット部33aとリング状光束受光系33Bの合焦レンズ33tとを光軸方向に移動させる。リング状光束投影系33Aでは、レフ光源ユニット部33aがリング状の測定パターンを出射し、その測定パターンをリレーレンズ33b、瞳リング絞り33c及びフィールドレンズ33dを経て穴開きプリズム33eに進行させ、その反射面33vで反射し、ロータリープリズム33fを経てダイクロイックフィルタ32iに導く。リング状光束投影系33Aでは、その測定パターンをダイクロイックフィルタ32i及びダイクロイックフィルタ31bを経て対物レンズ31aに導くことで、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影する。
【0085】
リング状光束受光系33Bでは、眼底Efに形成されたリング状の測定パターンを対物レンズ31aで集光し、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ32i及びロータリープリズム33fを経て穴開きプリズム33eの穴部33pに進行させる。リング状光束受光系33Bでは、その測定パターンをフィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t、反射ミラー33u、ダイクロイックフィルタ31e及び結像レンズ31fを経ることで、撮像素子31gに結像させる。これにより、撮像素子31gがリング状の測定パターンの像を検出し、制御部27は、その測定パターンの像を表示画面29aに表示させ、その画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度を周知の手法により測定する。
【0086】
また、眼屈折力測定モードでは、制御部27は、視標投影系32において、固定固視標光源32qを点灯させて固定固視標32p(図8参照)を表示させるとともに、ディスプレイ32rに後述する可変視標を表示させる。固定固視標32p及びディスプレイ32rからの光束は、ビームスプリッタ32n、反射ミラー32m、リレーレンズ32k、反射ミラー32j、結像レンズ32b、合焦レンズ32c、リレーレンズ32d、ビームスプリッタ32e、フィールドレンズ32f、VCCレンズ32g、ミラー32h、ダイクロイックフィルタ32i、ダイクロイックフィルタ31b、対物レンズ31aを経て、被検眼Eの眼底Efに投光(投影)する。検者または制御部27は、呈示した固定固視標32p等を被検者に固視させた状態でアライメントを行い、眼屈折力(レフ)の仮測定の結果に基づいて被検眼Eの遠点に合焦レンズ32cを移動させた後にさらに雲霧状態として、調節休止時の眼屈折力を測定する。
【0087】
次に、自覚検査モードの際の動作について説明する。制御部27は、眼屈折力測定モードで測定した被検眼Eの眼屈折力に適合する位置にCC視標ユニット、すなわちLED34a、拡散板34b及びCC視標板34cを一体に移動させ、眼屈折力測定モードで測定した被検眼Eの乱視状態を矯正する姿勢にVCCレンズ32gを設定する。また、プリズム付CCレンズ34eを、VCCレンズ32gによって発生されている乱視の軸角度に合わせて回転させる。
【0088】
次に、LED34aを点灯させ、また、ディスプレイ32rに後述する可変視標を表示させる。LED34aから発せられた白色光は、CC視標板34cを透過し、プリズム付CCレンズ34eで分割され、分離された点群状のCC視標像40a、40b(図6参照)として被検眼Eに呈示される。
【0089】
この時、被検者は、例えば図11(b)に示すように、所定の位置関係で配置された(図11(b)では斜めに並んで配置された)CC視標像40a、40bを確認することができる。配置の角度はプリズム付CCレンズ34eの回転角度、即ち被検眼Eの軸角度に一致する。なお、CC視標像40a、40bはプリズム付CCレンズ34eの影響でボケた状態で呈示されている。CC視標像40a、40bのボケ具合を比較して、双方のボケがぼぼ同じになるようにVCCレンズ32gの相対角度を調整することで、正確な乱視量、軸角度を決定することができる。
【0090】
検者はどちらのCC視標像40a、40bが明瞭に(はっきりと)見えるかを問いかけ、被検者は、CC視標像40a、40bのどちらが明瞭に視認できるかを判断する。CC視標像40a、40bが同程度にボケて見える(明瞭である)と判断した場合には、被検者はその旨を検者に応答し、CCテストが完了する。尚、被検者の応答は、音声であってもよいし、後述する被検者用コントローラ26に設けられた傾動可能なレバー等であってもよい。
【0091】
また、CC視標像40a、40bの明瞭さが異なる場合には、被検者ははっきりと視認できたCC視標像40a、40bを検者に応答する。検者は、被検者の応答に基づき、条件を替えて再度被検者に確認する。即ち、VCCレンズ32gを相対的に回転し、乱視量及び乱視軸角度を調整する。プリズム付CCレンズ34eは、VCCレンズ32gにより発生する軸角度に合わせて回転する。そして、被検者がCC視標像40a、40bが同程度であると応答する迄、上述の工程を繰り返す。
【0092】
以上の工程により、制御部27は、VCCレンズ32gの相対回転量とプリズム付CCレンズ34eの一体回転量とに基づき、被検眼Eの乱視量と乱視軸角度を演算することができる。これにより、乱視量と乱視軸角度を測定するCCテストが完了する。以降、レッドグリーンテスト、両眼開放検査等を実施し、自覚検査を終了する。
【0093】
なお、この自覚検査モードでは、グレア検査(グレアテスト)を行う場合、制御部27の制御下でグレア用光源32uを点灯させて自覚検査を行う。
【0094】
なお、眼屈折力測定系33、自覚式検査系34、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37等の構成や、眼屈折力(レフ)、自覚検査及び角膜形状(ケラト)の測定原理等は、公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0095】
(検眼装置の制御系)
基台11には、検眼装置10の各部を統括的に制御する制御部27が設けられている(図1参照)。制御部27には、図8に示すように、上記した測定光学系21と、駆動機構15としての鉛直駆動部22、水平駆動部23及び回旋駆動部24とに加えて、検者用コントローラ(第一の入力部)25と被検者用コントローラ(第二の入力部)26と記憶部28と表示部29とが接続されている。
【0096】
検者用コントローラ25は、検者が検眼装置10を操作するために用いられる。被検者用コントローラ26は、被検眼の各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。検者用コントローラ25及び被検者用コントローラ26は、いずれも、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備え、また、検者用コントローラ25については、後述する表示部29がタッチパネル式であれば、このタッチパネルも含まれうる。制御部27は、検者用コントローラ25や被検者用コントローラ26とそれぞれ有線または無線の通信路を介して接続されている。
【0097】
制御部27は、接続された記憶部28または内蔵する内部メモリ27aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ25や被検者用コントローラ26に対する操作に応じて、検眼装置10の動作を統括的に制御する。本実施の形態では、内部メモリ27aはRAM等で構成され、記憶部28は、ROMやEEPROM等で構成される。また、制御部27は、ディスプレイ32rに可変可能な視標(可変視標)を表示させる表示制御部27bを備える。
【0098】
表示部29は、観察系31に設けられた撮像素子(CCD)31gから出力される画像信号に基づく前眼部像E′等を表示画面29a(図2参照)に表示するものである。
【0099】
なお、既に詳述したように、測定光学系21は、観察系31、視標投影系32、眼屈折力測定系33、自覚式検査系34、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37を有する。
【0100】
(検眼装置の固視標の一例)
図10及び図11は、本実施の形態である検眼装置10により被検眼Eに呈示される固視標の一例を示す図である。図10及び図11に示す固視標は、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pとディスプレイ32rとによる固視標像、及び自覚式検査系34のCC視標像40a、40bによる固視標像が合体して被検眼Eの眼底Efに投影されたものである。
【0101】
まず、図10(a)は、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pとディスプレイ32rとを用いた固視標の例である。図10(a)に示す固視標では、制御部27が、固定固視標用光源32sを点灯させることで、固定固視標32pにより被検眼の視線の無限遠位置(つまり中央位置)に太陽50を表示させ、また、ディスプレイ32rにより下位置から中央位置に延びる道路51及び中央位置から下位置に向けて移動するセンターライン52を表示させるとともに、同様にディスプレイ32rにより中央位置から左右位置に向けて移動するビル53を表示させている。
【0102】
これにより、被検者に、無限遠に位置する太陽に向けて道路51上を移動(走行)しているかのような固視標を表示させることができ、被検者の視線を無限遠に固視させることを手助けすることができる。
【0103】
好ましくは、制御部27は、左被検眼EL(図2参照)から所定かつ異なる距離だけ離れた位置に相当する位置にそれぞれのビル53が表示されるように、所定距離に相当する視差を与えた状態で左眼用測定光学系21Lのディスプレイ32rにそれぞれのビル53を表示させ、同様に、右被検眼ER(図2参照)から所定かつ異なる距離だけ離れた位置に相当する位置にそれぞれのビル53が表示されるように、所定距離に相当する視差を与えた状態で右眼用測定光学系21Rのディスプレイ32rにそれぞれのビル53を表示させる。これにより、左右の測定光学系21R、Lのディスプレイ32rに表示されたビル53が、中央位置に近いビル53が無限遠に、左右位置に近いビル53が手前に見えるように立体視されて被検眼に呈示される。
【0104】
次に、図10(b)も、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pとディスプレイ32rとを用いた固視標の例である。図10(b)に示す固視標では、制御部27が、固定固視標用光源32sを点灯させることで、固定固視標32pにより被検眼の視線の無限遠位置(つまり中央位置)に太陽50を表示させるとともに、中央位置から下位置にかけての領域に海54及び船55を表示させ、また、ディスプレイ32rにより左右方向に延びかつ図中左から右に向けて移動するガードレール56を表示させている。
【0105】
これにより、被検者に、無限遠に位置する太陽を見ながら、ガードレール56手前の道路(図略)を右から左に移動(走行)しているかのような固視標を表示させることができ、被検者の視線を無限遠に固視させることを手助けすることができる。
【0106】
好ましくは、制御部27は、左被検眼EL(図2参照)から所定距離だけ離れた位置に相当する位置にガードレール56が表示されるように、所定距離に相当する視差を与えた状態で左眼用測定光学系21Lのディスプレイ32rにガードレール56を表示させ、同様に、右被検眼ER(図2参照)から所定かつ異なる距離だけ離れた位置に相当する位置にガードレール56が表示されるように、所定距離に相当する視差を与えた状態で右眼用測定光学系21Rのディスプレイ32rにガードレール56を表示させる。
【0107】
これにより、左右の測定光学系21R、Lのディスプレイ32rに表示されたガードレール56が所定距離だけ離れた位置にあるように立体視されて被検眼に呈示される。
【0108】
次に、図10(c)は、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pと融像枠32xとを用いた固視標の例である。図10(c)に示す固視標では、制御部27が、固定固視標用光源32sを点灯させることで、図8に示すような風景チャート(固定固視標32p)を表示させ、また、融像枠用光源32tを点灯させることで、この風景チャートの周縁部に融像枠32xを表示させている。これにより、左右の被検眼に呈示される固視標に対して強く融像を起こすことができる。
【0109】
次に、図10(d)は、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pとグレア用光源32uとを用いた固視標の例である。図10(d)に示す固視標では、制御部27が、固定固視標用光源32sを点灯させることで、図9に示すような風景チャート(固定固視標32p)を表示させ、また、グレア用光源32uを点灯させている。これにより、被検眼の視線の固視を行わせつつ、グレアテスト(グレア検査)を行うことができる。
【0110】
次に、図11(a)は、視標投影系32の視標光学部32Aのディスプレイ32rと融像枠32xとを用いた固視標の例である。図11(a)に示す固視標では、制御部27が、ディスプレイ32rにより乱視チャート57及びポインタ58を表示させ、また、融像枠用光源32tを点灯させることで、乱視チャート57の周縁部に融像枠32xを表示させている。
【0111】
乱視チャート57がディスプレイ32rにより表示されているので、この乱視チャート57を任意に回転することができ、また、乱視チャート57の表示形状を任意に変更することができる。また、検者用コントローラ25を用いてこのポインタ58の表示位置を任意の位置にすることができ、これにより、被検者に対して乱視チャート57の注視位置を指示することができる。
【0112】
そして、図11(b)は、自覚式検査系34のCC視標像40a、40bと視標光学部32Aのディスプレイ32rと融像枠32xとを用いた固視標の例である。図11(b)に示す固視標では、制御部27がLED34aを点灯させることで、CC視標板34cからの光束をプリズム付CCレンズ34eで分割させ、分離された点群状のCC視標像40a、40bを被検眼Eに呈示させることができる。また、ディスプレイ32rにより、これらCC視標像40a、40bの近傍に数字等の識別用視標59a、59b及びポインタ58を表示させている。さらに、融像枠用光源32tを点灯させることで、CC視標像40a、40bの周縁部に融像枠32xを表示させている。
【0113】
識別用視標59a、59bはプリズム付CCレンズ34eを透過しない為、双方とも同等の「見え」となる。また、CC視標像40a、40bはプリズム付CCレンズ34eの影響で、いずれかの視標像もしくは双方が同じ様にボケて視認される。従って、被検眼Eが識別用視標59a、59bに注目して調節してしまったり、CC視標像40a、40bではなく識別用視標59a、59bに着目して、「両方ともはっきり見える」と誤認してしまう等の不具合を回避することができる。
【0114】
従って、被検者は、CC視標像40a、40bの配置に拘わらず、明瞭に視認されているCC視標像40a、40bの近傍に位置する識別用視標59a、59bを答えるだけでよいので、被検者の負担が軽減されると共に、被検者の誤答を抑制することができ、測定時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。また、検者用コントローラ25や被検者用コントローラ26を用いてこのポインタ58の表示位置を任意の位置にすることができ、これにより、被検者に対してCC視標像40a、40bのいずれか一方を指示してその見え具合を被検者に確認させることができる。
【0115】
なお、制御部27は、プリズム付CCレンズ34eの回転角の変化に基づき、ディスプレイ32rに表示される識別用視標59a、59bの呈示位置を変更可能となっている。即ち、被検眼Eに対するCC視標像40a、40bの呈示位置の変化に追従させて、ディスプレイ32rに表示された識別用視標59a、59bの呈示位置を変更可能となっている。
【0116】
なお、識別用視標59a、59bは、図11(b)に示すような数字に限らず、LeftとRightの頭文字を取ったLとRとしてもよい。また、左右、上下等、漢字を識別用視標59a、59bとしてもよい。さらに、識別用視標59a、59bを例えば赤と緑の円とし、この円でCC視標像40a、40bを囲む様にしてもよい。
【0117】
そして、識別用視標59a、59bの態様は、上記したパターンに限られるものではなく、CC視標像40a、40bを識別可能となるものであればどの様なものでもよい。例えば、識別用視標59a、59bを漢数字やローマ数字としてもよいし、形状の異なる図形としてそれぞれCC視標像40a、40bを囲むようにしてもよい。更に、識別用視標59a、59bは、形状の異なる矢印等の記号であってもよいのは言う迄もない。
【0118】
以上、本実施の形態である検眼装置10により被検眼Eに呈示される固視標の一例について図10及び図11を参照して説明してきたが、本実施の形態である検眼装置10により呈示可能な固視標は図示例に限定されない。
【0119】
一例として、制御部27がディスプレイ32rにより各種メッセージを示すアイコン、例えば「ここを見て下さい」「どちらがよく見えますか」などのメッセージを示すアイコンを固定固視標32pの一部やCC視標像40a、40bの少なくとも一方の近傍に表示することで、被検者に回答を求めてもよい。
【0120】
例えば、図11(b)に示す例において、被検者用コントローラ26のマウスと連動して動くポインタ58と、例えば「変わらない」と表示されたアイコン(図略)とをディスプレイ32rに表示させる。被検者は、CC視標像40a、40bのうち、はっきり見えるCC視標像40a、40bの上にポインタ58を移動させ、クリックする。あるいは、CC視標像40a、40bが同じように見える場合には、アイコン上にポインタ58を移動させ、クリックする。
【0121】
あるいは、被検者用コントローラ26に入カバッドを接続し、入力パッドの入力位置と連動して移動するポインタ58と、「変わらない」と表示されたアイコンとを表示させる様にしてもよい。被検者は、CC視標像40a、40bのうち、はっきり見えるCC視標像40a、40bの上にポインタ58を移動させ、丸で囲む。或は、CC視標像40a、40bが同じように見える場合には、アイコンを丸で囲むかタッチする。
【0122】
制御部27に設けられた座標位置検出部は、クリック等により入力信号が発せられた際のポインタ58のディスプレイ32r上の位置に基づき、条件の変更、CCテストの終了等、各種処理を自動で実施することが好ましい。
【0123】
また、図9に示すような固定固視標32pにおいて、被検者の視線の無限遠位置(中央位置)に存在する家の屋根が例えば赤色に表示されていた場合、ディスプレイ32rによりこの屋根の位置に赤色とは異なる色で屋根形状の視標を表示することで、被検者に呈示される固視標の屋根の色を変更することができる。あるいは、ディスプレイ32rにより屋根の位置に赤色の屋根形状の視標を表示することで、屋根の明るさを増加させることもでき、この視標を点滅させると屋根を点滅表示させることができる。このように、本実施の形態である検眼装置10によれば、固定固視標32pの風景チャートの色の変更、輝度調整等を行うことができる。
(検眼装置の固視標の他の例)
【0124】
図13は、本実施の形態である検眼装置10により被検眼Eに呈示される固視標の他の例を示す図である。図12に示す固視標は、視標投影系32の視標光学部32Aの固定固視標32pとディスプレイ32rの可変視標とによる固視標像が合体して被検眼Eの眼底Efに投影されたものである。
【0125】
より詳細には、図13(a)は左眼用測定光学系21Lの固定固視標32pとディスプレイ32rの可変視標とによる固視標像が合体して被検眼Eの眼底Efに投影されたものであり、図13(b)は右眼用測定光学系21Rの固定固視標32pとディスプレイ32rの可変視標とによる固視標像が合体して被検眼Eの眼底Efに投影されたものである。
【0126】
図13に示す例では、固定固視標32pは、いくつかの検査距離(例えば30cm~無限遠)に応じた視標(例えば検査距離30cmであれば本、無限遠であれば海)が複数表示されたものである。そして、本実施の形態である検眼装置10では、指定された検査距離に被検者の視線を固視させる動作を行う。
【0127】
例えば、検者が検者用コントローラ25に対して操作を行うことにより検査距離Lが指定されると、制御部27は、図12に示すように、被検者の瞳孔間距離PDと、検査距離Lとに基づいて左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rの回旋角θを求める。ここで、瞳孔間距離PDは、標準距離であってもよいし、左被検眼ELの瞳孔中心(重心)位置と右被検眼ERの瞳孔中心(重心)位置との間の距離を測定して得られたものであってもよい。標準距離は、模型眼により規定された距離であってよい。模型眼には、Gullstrandの模型眼などがある。なお、検査距離は、制御部27があらかじめ決められた検査シーケンスに従って指定してもよいし、被検者が被検者用コントローラ310に対して操作を行って指定してもよい。
【0128】
瞳孔間距離PDの半分の距離をhPDとすると、回旋角θは、式(1)により求められる。
【数1】
【0129】
制御部27は、式(1)により求められた回旋角θだけ眼球回旋点を中心に左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rのそれぞれを逆方向に回旋させる。それにより、被検眼を輻輳(又は開散)させ、検査距離Lの位置に被検者の視線を固視させることができる。
【0130】
また、図13に示す例では、固定固視標32pに重畳して、ディスプレイ32rにより一対の可変視標60R、60Lが表示されている。上述の検査距離Lが指定されると、制御部27は、一対の可変視標60R、60Lを左眼用測定光学系21L及び右眼用測定光学系21Rのディスプレイ32rにそれぞれ同時に表示させる。可変視標60R、60Lは、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれがモニタMを注視するように提示される。一対の可変視標60R、60Lは、検査距離Lに応じた視差が設けられて被検眼に呈示される。
【0131】
制御部27は、検査距離Lに相当する位置の近傍に可変視標60R、60Lを提示するように右眼用測定光学系21R及び左眼用測定光学系21Lのディスプレイ32rを制御する。このとき、制御部27は、可変視標60R、60Lの少なくとも一部の形態(例えば、形状、サイズ、向き等)を変化させるようにディスプレイ32rを制御することが可能である。例えば、制御部27は、可変視標60R、60Lの翼の部分が上下に動くようにディスプレイ32rを制御する。それにより、被検者に可変視標60R、60Lの位置を認識させやすくなり、右被検眼ER及び左被検眼ELを可変視標60Lに固視させやすくすることが可能になる。
【0132】
また、制御部27は、可変視標60R、60Lの提示位置に応じて、固定固視標32pに対してぼかし処理を施すことが可能である。制御部27は、ぼかし処理のみの画像を右眼用測定光学系21R及び左眼用測定光学系21Lのディスプレイ32rに表示させる。例えば、制御部27は、可変視標60R、60Lの提示位置から所定の距離だけ離れた他の検査距離に相当する視標が描出された領域に対してぼかし処理を施す。また、制御部27は、可変視標60R、60Lの位置の近傍だけ(可変視標60R、60Lの位置が含まれる所定の検査距離に対応する画像だけ)を拡大して右被検眼ER及び左被検眼ELに提示してもよい。
(検眼装置の効果)
【0133】
このように構成された本実施の形態である検眼装置10では、視標呈示光学系が、被検眼の視線の固視を行わせるための固視標を被検眼に呈示する視標投影系(固視標光学系)32と、この視標投影系32と光軸を共通にし、CC視標板(乱視検査用視標)34cに対して所定の乱視量を発生させて一対のCC視標像(乱視検査用視標像)40a、40bを被検眼に呈示する自覚式検査系(クロスシリンダ光学系)34とを有し、視標投影系32が、固定固視標32pを被検眼に呈示する固定固視標光学系32Bと、この固定固視標光学系32Bと光軸を共通にし、表示部29により表示される可変可能な可変視標を被検眼に呈示する可変視標光学系32Cとを有し、制御部27が、表示部29に可変視標を表示させる表示制御部27bを有する。
【0134】
従って、固定固視標光学系32B及び可変視標光学系32Cにより被検眼に呈示される固視標、さらには自覚式検査系34により被検眼に呈示されるCC視標像40a、40bを多様なものとすることができ、固視標への視線の固視を確実に行わせることができるとともに、クロスシリンダの投影を確実に行うことができる。
【0135】
ここで、固定固視標32pと可変視標とは、被検眼に呈示された状態で一体の図形をなすように構成されているので、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0136】
また、固定固視標32pと可変視標とは、少なくともその中央部において重複して被検眼に呈示されるので、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0137】
さらに、表示制御部27bは、表示部29に連続的に変化する可変視標を表示させるので、固定固視標光学系32B及び可変視標光学系32Cにより被検眼に呈示される固視標をより多様なものとすることができ、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0138】
また、固定固視標光学系32Bは、固定固視標32pを照明する固定固視標用光源32sと、固定固視標32pの周縁部に設けられた融像枠32xを照明する融像枠用光源32tと、固定固視標32pの周辺部に設けられたグレア用光源32uとを有するので、固定固視標光学系32B及び可変視標光学系32Cにより被検眼に呈示される固視標をさらに多様なものとすることができ、固視標への視線の固視をさらに確実に行わせることができる。
【0139】
さらに、自覚式検査系34は、CC視標板34cを投影する光束を軸角度が異なる一対の光束に分割するプリズム付CCレンズ(光束分割部材)34eと、一対のCC視標板34cを分離した状態でCC視標像(乱視検査用視標像)40a、40bとして被検眼に投影するVCCレンズ(視標投影部)32gとを有するので、クロスシリンダの投影を確実に行うことができる。
【0140】
さらに、検査指示の入力を受け入れる検者用コントローラ(第一の入力部)25を有し、表示制御部27bは、検者用コントローラ25が受け入れた検査指示を含む可変視標を表示部29に表示させるので、被検者の負担が軽減されると共に、被検者の誤答を抑制することができ、測定時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0141】
そして、検査指示の入力に対応する可変視標上の座標指示を受け入れる被検者用コントローラ(第二の入力部)26を有し、制御部27は、可変視標上の座標指示の座標位置を検出する座標位置検出部を有するので、被検者の負担が軽減されると共に、被検者の誤答を抑制することができ、測定時間の短縮、作業性の向上を図ることができる。
【0142】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0143】
一例として、図9図11及び図13に示す固視標は単なる一例であり、本発明の検眼装置により被検眼に呈示可能な固視標はこれら図に示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0144】
E 被検眼
10 検眼装置
21 測定光学系
25 検者用コントローラ(第一の入力部)
26 被検者用コントローラ(第二の入力部)
27 制御部
27b 表示制御部
32 視標投影系(視標呈示光学系)
32B 固定固視標光学系
32C 可変視標光学系
32g VCCレンズ(視標投影部)
32p 固定固視標
32r ディスプレイ(表示部)
32s 固定固視標用光源
32t 融像枠用光源
32u グレア用光源
34 自覚式検査系(クロスシリンダ光学系)
34c CC視標板(乱視検査用視標)
34e プリズム付CCレンズ(光束分割部材)
40a、40b 視標像(乱視検査用視標像)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15