(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24F 42/10 20200101AFI20221117BHJP
A24F 42/80 20200101ALI20221117BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20221117BHJP
【FI】
A24F42/10
A24F42/80
A24D1/20
(21)【出願番号】P 2021508381
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012203
(87)【国際公開番号】W WO2020194399
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】片山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新川 雄史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮治
(72)【発明者】
【氏名】山本 法生
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536673(JP,A)
【文献】特表2016-531572(JP,A)
【文献】特表2016-500274(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163253(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A24D 1/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上用部材、熱源、香味源、及びフィルタ部材をこれらの順に一列に並べて形成される喫煙物品であって、
前記巻上用部材、前記熱源、及び前記香味源を一体に巻き上げる第1巻紙と、
前記第1巻紙で巻き上げられた前記巻上用部材、前記熱源、及び前記香味源を前記フィルタ部材と一体に巻き上げる第2巻紙と、
前記巻上用部材、前記熱源の一部、及び前記香味源と、前記第1巻紙とを接着する接着部と、
前記熱源の前記巻上用部材の側において前記第1巻紙と接着しない非接着部と
を備え、
前記巻上用部材は、前記第1巻紙で巻き上げる際の巻上適正を向上させるとともに、前記喫煙物品の製造時及び使用前に前記熱源を覆って保護するために用いられ、前記巻上用部材の少なくとも一部を前記非接着部にて離脱させることにより、前記熱源の少なくとも一部を着火による加熱が可能に露出して使用する、喫煙物品。
【請求項23】
前記香味源は、たばこ材料を含む、請求項1から22の何れか一項に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、喫煙物品の遠位端(マウスピースの反対側の端)に位置する可燃性炭素質熱源と、熱源に隣接するエアロゾル形成基質と、熱源を少なくとも部分的に覆うように構成され、且つ虚弱線で遠位端に取り付けられたキャップとを備えた喫煙物品が開示されている。キャップは、ラッパー(巻紙)によって囲まれた円筒形のプラグの材料を含み、喫煙物品を使用する前に熱源を露出するために取り外し可能である。
【0003】
また、この喫煙物品は、エアロゾル形成基質の下流に、気流指向要素(管)とマウスピースとを備える。キャップは、ラッパーで巻き上げられたマルチセグメント又は構成要素を気流指向要素において切断することにより、気流指向要素と同一材料で形成され、喫煙物品の遠位端に位置付けられる。
【0004】
また、キャップは、喫煙物品の端面を含めた遠位端を実質的に取り囲む保護カバーであって、熱源を覆うことにより意図しない熱源の着火を抑制し、ユーザーの衛生面を確保し、ユーザーが熱源に接触することによる衣服や手の汚れを抑制する役割を担う。また、キャップは、喫煙物品の製造時に、熱源が製造設備を汚すことを抑制し、製造時の熱源の破損を抑制する役割をも担う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、キャップは、喫煙物品の製造工程において気流指向要素を切断して形成される。従って、キャップを形成することだけを目的として切断工程を行わなければならず、喫煙物品の生産性が悪化する。
また、キャップの主たる役割は、喫煙物品の使用時及び製造時の双方における熱源の保護であり、喫煙物品の製造過程におけるキャップの役割について格別な配慮がなされていない。
【0007】
また、キャップを端に位置付けた状態で他の構成部材とともに構成された連結体を巻紙により巻き上げて喫煙物品を製造する場合、端に位置付けられたキャップは、連結体を巻紙により巻き上げたときの巻上適正(巻上対象の周面を偏りなく均一に巻き上げ可能とする適正)を左右するセグメントとしての役割がある。しかしながら、特許文献1においては、このような製法を用いた場合について格別な配慮がなされていないため、気流指向要素、つまり単なる管状部材としての機能を有するだけのキャップを用いると、巻上適正が悪化し、喫煙物品の品質不良を招くおそれがある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、喫煙物品の品質向上及び生産性向上の双方を実現することができる、喫煙物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の喫煙物品は、巻上用部材、熱源、香味源、及びフィルタ部材をこれらの順に一列に並べて形成される喫煙物品であって、巻上用部材、熱源、及び香味源を一体に巻き上げる第1巻紙と、第1巻紙で巻き上げられた巻上用部材、熱源、及び香味源をフィルタ部材と一体に巻き上げる第2巻紙と、巻上用部材、熱源の一部、及び香味源と、第1巻紙とを接着する接着部と、熱源の巻上用部材の側において第1巻紙と接着しない非接着部とを備え、巻上用部材は、第1巻紙で巻き上げる際の巻上適正を向上させるとともに、喫煙物品の製造時及び使用前に熱源を覆って保護するために用いられ、巻上用部材の少なくとも一部を非接着部にて離脱させることにより、熱源の少なくとも一部を着火による加熱が可能に露出して使用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の喫煙物品によれば、喫煙物品の品質向上及び生産性向上の双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る喫煙物品の軸線方向における概略的な横断面図である。
【
図2】喫煙物品の製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】第1配列工程(ステップS1)を示す図である。
【
図4】第1巻上工程(ステップS2)を示す図である。
【
図5】第1切断工程(ステップS3)を示す図である。
【
図6】第2配列工程(ステップS4)を示す図である。
【
図7】第2巻上工程(ステップS5)を示す図である。
【
図8】第2切断工程(ステップS6)を示す図である。
【
図9】喫煙物品から巻上用部材を離脱させた状態を示す図である。
【
図10】硬さ評価工程を示すフローチャートである。
【
図12】硬さ測定の荷重の付与前後における測定対象を示す断面図である。
【
図13】復元率評価工程を示すフローチャートである。
【
図15】楕円率測定の荷重の付与前後における測定対象を示す断面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図18】本発明の第4実施形態に係る喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係る喫煙物品の第1巻紙をその内周面の側から見た平面図である。
【
図20】
図19の第1巻紙を使用した場合の第1連続体の断面図である。
【
図21】本発明の第6実施形態に係る喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図22】
図21の変形例となる喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図23】本発明の第7実施形態に係る喫煙物品を部分的に示す図である。
【
図24】本発明の第8実施形態に係る喫煙物品を示す図である。
【
図25】本発明の第9実施形態に係る喫煙物品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態に係る喫煙物品について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る喫煙物品1の軸線方向Xにおける概略的な断面図を示す。喫煙物品1は、巻上用部材2、熱源3、香味源4、及びフィルタ部材5をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べて形成される熱源型シガレットである。
【0013】
喫煙物品1は、巻上用部材2、熱源3、及び香味源4を一体に巻き上げる第1巻紙6と、第1巻紙6で巻き上げられた巻上用部材2、熱源3、及び香味源4をさらにフィルタ部材5と一体に巻き上げる第2巻紙7とを備えている。また、喫煙物品1は、巻上用部材2、熱源3の一部、及び香味源4と、第1巻紙6とを接着する接着部8と、熱源3の巻上用部材2の側において、熱源3の残りの一部と第1巻紙6とを接着しない非接着部9とを備えている。喫煙物品1は、巻上用部材2を非接着部9にて離脱させることにより、熱源3の少なくとも一部を着火による加熱が可能に露出して使用する。
【0014】
[巻上用部材]
本実施形態の巻上用部材2は、例えば紙管であって、後述する第1配列工程で形成する第1連結体13を、後述する第1巻上工程において第1巻紙6で巻き上げる際の巻上適正を向上させるための部材である。巻上用部材2は、併せて喫煙物品1の製造時及び使用前に熱源3を覆って保護する機能も備えている。
【0015】
巻上適正とは、巻上対象の周面を偏りなく均一に巻き上げ可能とする適正のことを意味する。巻上用部材2を備えた喫煙物品1は、第1巻紙6による巻上不良を極力なくすことができる。巻上用部材2は、紙管以外の任意の材料で作ることもできるが、香味源4と同程度の硬さを有することが好ましく、これにより巻上適正が向上する。加えて、喫煙物品1から巻上用部材2のみを触感により容易に離脱可能とする、いわば離脱適正も向上する。
【0016】
さらに、第1連結体13に対する第1巻紙6の接着適正を高めるためには、巻上用部材2と香味源4は荷重付与により変形した後の楕円率(換言すると復元率)が同程度であるものが好ましい。巻上適正、離脱適正、及び接着適正が向上する理由の詳細は後述する。なお、巻上用部材2は、中空フィルタートウを巻取紙で巻いたものや、中実フィルタートウを巻取紙で巻いたものであっても良い。
また、巻上用部材2は、ユーザーが指で引き抜いたり、もぎ取ったりし易いように、軸線方向Xの長さは、好ましくは5mm~20mmであり、より好ましくは10mm~15mmである。これにより、喫煙物品1の離脱適正を高めることができる。
【0017】
[熱源]
熱源3は、柱状に成形された固形物であって、例えば炭素熱源であり、本実施形態の場合、軸線方向Xに貫通する中空部3aを有する。熱源3は、着火することにより燃焼し発熱する。中空部3aを通過することにより熱源3で加熱した気流を効率的に生成可能である。熱源3で加熱されたエアが香味源4を通過することにより、香味成分を含むエアロゾルが効率的に生成される。
【0018】
[香味源]
香味源4は、柱状の成形物であって、例えば、刻みたばこ、たばこ材料を顆粒状やシート状など任意の形状に成形した成形体、たばこ以外の植物、その他の香料などの少なくとも何れかを巻取紙4aにより包み込んだものである。香味源4には、エアロゾル形成基質が添加されている。
【0019】
ユーザーは、熱源3により加熱された気流が香味源4を通過した後に生成されたエアロゾルを吸引する。これにより、ユーザーは香味源4の成分を摂取することができる。なお、香味源4は後述する香味源材料12を二分して形成され、双方は同一材質であるため、以降の説明において香味源4と香味源材料12とを同意義で用いることがある。
【0020】
[フィルタ部材]
フィルタ部材5は、香味源4側から順に管10、フィルタ要素11を軸線方向Xに一列に並べて形成される。管10は、喫煙物品1を流れる気流を整流するために設けられる。管10は、例えば紙管であって、プラスチック管であっても良い。フィルタ要素11は、例えばアセテートのフィルタ繊維束を巻取紙11aにより包み込んだものである。
【0021】
フィルタ繊維束は中実であっても良いし、中空であっても良い。また、フィルタ繊維束に、活性炭の粒子やハイドロタルサイト類化合物の粒子を加えても良いし、破壊可能なシェルに内容液を充填したカプセルを埋設しても良い。この内容液は、例えば、香料、及び香料が溶解する溶媒としての食用油などである。また、フィルタ要素11は、フィルタープラグを複数接合したいわゆるマルチセグメントフィルタであっても良い。
【0022】
[第1巻紙]
第1巻紙6は、紙巻たばこ用の空気透過率の比較的低い紙素材(金属貼合紙、例えばアルミニウム貼合紙を含む)で形成され、第1巻紙6の端から巻上用部材2の先端が突出されている。これにより、離脱するべき巻上用部材2の存在を容易に目視可能である。
【0023】
[第2巻紙]
第2巻紙7は、紙巻たばこ用の空気透過率の低い紙で作られている。また、第2巻紙7は、フィルタ部材5からそれに隣接する香味源4の一部に至る領域に巻き上げられ、フィルタ部材5と香味源4とを第2巻紙7により連結可能な領域に図示しない接着部が形成される。
【0024】
以下、
図2~
図8を参照し、喫煙物品1の製造工程を説明する。
図2は喫煙物品1の製造工程を示すフローチャートであり、
図3~
図8は、
図2に示すステップS1~S6を説明するための図である。
【0025】
[第1配列工程](ステップS1)
喫煙物品1の製造工程が開始されると、先ず
図3に示すように、2つの巻上用部材2と2つの熱源3と1つの香味源材料12とを供給し、巻上用部材2、熱源3、香味源材料12、熱源3、巻上用部材2をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べた第1連結体13を形成する。香味源材料12は、軸線方向Xにおいて香味源4の2倍程度の長さを有する。
【0026】
具体的には、第1連結体13を構成する各材料は、図示しない供給ユニットにより供給される。供給ユニットから供給された材料は、
図3の順に並べて配置され、各材料は、サクションドラムによって吸引され、各セクションに到達した都度、新たな材料の供給が可能な間隔を存して位置付けられる。なお、各工程で必要な各材料の供給、配列、処置を一カ所で行うようにしても良い。
【0027】
[第1巻上工程](ステップS2)
次に
図4に示すように、第1連結体13をその軸線方向Xに亘って第1巻紙6で巻き上げて第1連続体14を形成する。具体的には、巻上ローラを有する図示しない巻上ユニットを使用する。巻上ユニットに第1巻紙6を供給し、第1巻紙6上に第1連結体13を配置し、巻上ローラにより第1巻紙6を第1連結体13の軸線方向Xの全域に亘って実質的に均一に押圧しながら巻き上げる。
【0028】
この巻き上げに際し、第1連結体13の両端にそれぞれ巻上用部材2が位置付けられることにより、第1連結体13の両端が潰れることはなく、第1連結体13の周面を偏りなく第1巻紙6により均一に巻き上げることができる。従って、第1連結体13の巻上適正が向上する。さらに、前述したように巻上ローラは第1連結体13の全体を押圧することから、第1連結体13に巻上用部材2のみならず、香味源材料12が存在することも、第1連結体13の巻上適正が向上する要因の一つである。
【0029】
なお、熱源3は、巻上用部材2及び香味源材料12と比較して直径が若干小さいことから、上記巻き上げに際し巻上ローラに熱源3は接触しない。従って、熱源3の硬さ等は巻上適正に影響しない。そして、第1巻紙6により巻き上げられた第1連続体14内の不要な隙間や、第1連続体14の表面の凹凸が抑制され、喫煙物品1の巻き上げに係る適合品質を満たした第1連続体14が形成される。
【0030】
また、第1連結体13を第1巻紙6で巻き上げたとき、第1連結体13と第1巻紙6とを接着する接着部8と、各熱源3のそれぞれの巻上用部材2の側において少なくとも熱源3の一部と接着されない非接着部9とが形成される。
【0031】
より詳しくは、第1連続体14の状態における第1巻紙6の内周面には、巻上用部材2、熱源3の一部、及び香味源材料12に対向する軸線方向Xに連続した領域(全周面、或いは一部周面)に接着剤が塗布されており、第1連結体13を第1巻紙6で巻き上げることにより接着部8が形成される。
【0032】
一方、第1巻紙6の内周面には、熱源3の一部と巻上用部材2とに対向する軸線方向Xに連続した領域(全周面、或いは一部周面)に接着剤を塗布しておらず、第1連結体13を第1巻紙6で巻き上げることにより非接着部9が形成される。そして、喫煙物品1は、巻上用部材2の少なくとも一部を非接着部9にて離脱させ、熱源3の少なくとも一部を着火による加熱が可能に露出して使用する。
【0033】
なお、非接着部9が存在するのであれば、接着部8を巻上用部材2の側の全域に形成しなくても良い。また、第1巻紙6の両端からそれぞれ巻上用部材2の先端を必ずしも突出させる必要はない。
【0034】
[第1切断工程](ステップS3)
次に
図5に示すように、第1連続体14を香味源材料12の破線で示す箇所において図示しないカッターで切断して二分し、巻上用部材2、熱源3、香味源材料12を二分して形成した香味源4をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べた中間ロッド15を2つ形成する。
【0035】
[第2配列工程](ステップS4)
次に
図6に示すように、2つの中間ロッド15を軸線方向Xに離間させたうえで、中間ロッド15間にフィルタ部材材料16を供給する。2つの中間ロッド15はステップS3で切断した状態の向きのままで良く、反転しての向き変更は不要である。フィルタ部材材料16は、軸線方向Xにおいてフィルタ要素11の2倍程度の長さを有するフィルタ要素材料17と、フィルタ要素材料17の両端にそれぞれ配置された管10とから形成されている。
【0036】
フィルタ部材材料16の供給は、管10、フィルタ要素材料17、管10をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べた後に行っても良いし、管10、フィルタ要素材料17、管10を個別に供給して配列することによりフィルタ要素材料17として供給するようにしても良い。そして、フィルタ部材材料16の両端にそれぞれ2つの中間ロッド15の香味源4の側を向けて、中間ロッド15、フィルタ部材材料16、中間ロッド15をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べた第2連結体18を形成する。
【0037】
[第2巻上工程](ステップS5)
次に
図7に示すように、第2連結体18を第2巻紙7で巻き上げて第2連続体19を形成する。具体的には、ステップS2の場合と同様の巻上ユニットに第2巻紙7を供給し、第2巻紙7上に第2連結体18を配置する。そして、巻上ローラにより、第2巻紙7を軸線方向Xにおいてフィルタ部材材料16から2つの中間ロッド15の香味源4に至る連続した領域に亘って実質的に均一に押圧しながら巻き上げる。
【0038】
この巻き上げに際し、第2連結体18の両端にそれぞれ香味源4が位置付けられることにより、フィルタ部材材料16及び中間ロッド15の香味源4の周面を偏りなく第2巻紙7により均一に巻き上げることができる。従って、第2連結体18の巻上適正が向上し、喫煙物品1の巻き上げに係る適合品質を満たした第2連続体19が形成される。
【0039】
また、第2連続体19においては、第2巻紙7の両端からそれぞれ中間ロッド15の熱源3の少なくとも一部が突出されている。これにより、喫煙物品1において巻上用部材2を離脱させる際に第2巻紙7の引き裂きは不要となるため、巻上用部材2の離脱が容易となる。
【0040】
また、第2連結体18を第2巻紙7で巻き上げたときに、図示しない接着部において適宜接着され、これにより、第2連続体19におけるフィルタ部材材料16と中間ロッド15との連結が強固となる。
【0041】
[第2切断工程](ステップS6)
次に
図8に示すように、第2連続体19をフィルタ部材材料16の破線で示す箇所において図示しないカッターで切断して二分し、巻上用部材2、熱源3、香味源4、フィルタ部材材料16を二分して形成したフィルタ部材5をこれらの順に軸線方向Xに一列に並べた喫煙物品1を2つ形成する。これにより、喫煙物品1の製造工程が終了する。
【0042】
図9は、喫煙物品1から巻上用部材2を離脱させた状態を示す。ユーザーは、喫煙物品1を使用する際に巻上用部材2を軸線方向Xに引っ張ることにより、第1巻紙6が非接着部9において周方向に引き裂かれ、喫煙物品1から巻上用部材2をもぎ取るようにして離脱可能である。これにより、
図9に示すように喫煙物品1の先端に熱源3が露出した状態となり、熱源3への着火が可能となる。なお、喫煙物品1の製造工程に巻上用部材2を離脱する工程を設け、巻上用部材2を離脱した後の喫煙物品1を完成品として扱っても良い。
【0043】
ここで、喫煙物品1から巻上用部材2を離脱させる際、巻上用部材2のみを非接着部9において喫煙物品1から確実に離脱するためには、ユーザーは、指で触った感触を頼りにすることが多い。つまり、喫煙物品1の使用に際し、巻上用部材2の存在、ひいては、巻上用部材2と熱源3との境界(つまり非接着部9の位置)が触感により判別し難い場合、ユーザーは巻上用部材2のみならず熱源3をも一緒に離脱、或いは、香味源4を含む中間ロッド15ごと離脱してしまうおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、喫煙物品1において前述した巻上適正のさらなる向上を図るとともに、喫煙物品1から巻上用部材2のみを触感により容易に離脱可能とする離脱適正を喫煙物品1に付与するべく、喫煙物品1の硬さ評価工程を行う。
以下、
図10の硬さ評価工程を示すフローチャートを参照し、硬さ評価工程について説明する。
【0045】
[硬さ測定](ステップS11)
硬さ評価工程が開始されると、先ず、巻上用部材2、熱源3、及び香味源材料12の硬さ測定を行う。
図11は、硬さ測定で用いる硬さ測定ユニット20の側面図を示す。
【0046】
硬さ測定ユニット20は、ベース21、一対の支持壁22、2本の下側ロッド23、2本の上側ロッド24、及び昇降器25などを備えている。一対の支持壁22は、ベース21に平行に立設され、
図11の奥行方向に延設されている。2本の下側ロッド23は、一対の支持壁22の間においてベース21に固体され、一対の支持壁22と平行に延設されている。2本の上側ロッド24は、2本の下側ロッド23の上側に対向して配置され、昇降器25に昇降自在に支持されている。
【0047】
先ず、巻上用部材2、熱源3、及び香味源材料12の何れか(以下、測定対象Aとも称する)を、対となる支持壁22と下側ロッド23とにそれぞれ架け渡して配置する。支持壁22及び下側ロッド23の延設方向に沿って測定対象Aを多数配置することにより、一度に多数(例えば20本)の測定対象Aの硬さ測定が可能である。なお、香味源材料12を二分した後の香味源4も香味源材料12と同じ硬さを有するため、喫煙物品1自体や、それを構成する香味源4を測定対象Aとしても良い。
【0048】
次に、昇降器25を作動させて
図11の矢印方向に上側ロッド24を下降すると、測定対象Aが上側ロッド24と下側ロッドとの間に挟まれ、測定対象Aに荷重が付与される。測定対象Aを軸線方向Xにずらすことにより、測定対象Aの所望の位置に荷重を付与することができる。なお、測定対象Aの硬さを測定する際は、測定対象Aの長手方向の中央部分に荷重を付与して測定するのが好ましい。
【0049】
硬さ測定は、20本の測定対象Aに対して19.6Nの荷重を20秒間継続して付与したときの個々の測定対象Aの変形量の平均値に基づいて行われる。
図12は、荷重Fを付与する前の測定対象Aの断面形状を一点鎖線で示し、荷重Fを付与したときの測定対象Aの断面形状を実線で示す。測定対象Aは、荷重Fを付与する前は断面円形であって初期高さH1(=測定対象Aの直径)を有し、荷重Fを付与したときには断面楕円形となって残高さH2を有する。
【0050】
本実施形態では、測定対象Aの硬さを次式に基づいて算出する。
・硬さ(%)=(H2/H1)×100
この式によれば、初期高さH1に対する残高さH2の割合(百分率)に基づいて個々の測定対象Aの硬さを測定する。そして、本評価では、測定した20本の測定対象Aの硬さの平均値を算出し、この平均値を測定対象Aの硬さ、つまり、巻上用部材2、熱源3、及び香味源材料12の何れかの硬さと規定する。以降同様とする。
【0051】
初期高さH1から残高さH2を減じた差分(ΔH)が小さいほど硬さの数値は大きくなり、測定対象Aが硬いと判定される。なお、熱源3が炭素熱源である場合、測定対象Aを炭素熱源として硬さを特定すると、残高さH2は初期高さH1と等しくなり、硬さの実測値は100%であった。従って、熱源3の硬さを100%と規定して以下の説明を行う。
【0052】
そして、巻上適正及び離脱適正の双方を向上するためには、発明者の実験により、熱源の硬さHhを100%と規定したとき、巻上用部材2の硬さHwと香味源材料12の硬さHfの好ましい数値は60%以上であって95%以下であり、さらに好ましくは65%以上であって80%以下であり、さらに好ましくは、巻上用部材2の硬さHwと香味源材料12の硬さHfとの数値差は30%以下であり、さらに好ましくは、この硬さの数値差は15%以下であると判明している。従って、本実施形態では、以下のステップS12~S14の少なくとも何れかの判定を行うことにより硬さ評価を行う。
【0053】
[第1硬さ判定](ステップS12)
図10に示すように、熱源3の硬さHhを100%と規定したとき、巻上用部材2の硬さHw及び香味源材料12の硬さHfは60%以上であって95%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、喫煙物品1において熱源3とその両側に隣接する巻上用部材2及び香味源材料12との硬さの差((Hh-Hw)及び(Hh-Hf))がある程度は存在するため、要求される巻上適正を確保可能であり、且つ、巻上用部材2及び香味源材料12が熱源3よりも柔らかく、ユーザーが巻上用部材2と熱源3との境界を触感により認識し易いため、要求される離脱適正を確保可能と判定し、ステップS15に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0054】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源材料12が柔らかすぎて巻上適正を確保できない、或いは、巻上用部材2及び香味源材料12が熱源3と同じくらい硬いために巻上用部材2及び熱源3の離脱、或いは、中間ロッド15ごとの離脱を招くおそれがあり、離脱適正を確保できないと判定し、ステップS16に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0055】
[第2硬さ判定](ステップS13)
熱源3の硬さHhを100%と規定したとき、巻上用部材2の硬さHwと香味源材料12の硬さHfとの差が30%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、巻上用部材2と香味源材料12との硬さの差(|Hw-Hf|(絶対値))が比較的小さいため、巻上用部材2と香味源材料12との硬さが近づくことにより巻上適正がさらに向上し、且つ、巻上用部材2と香味源4とに挟まれた熱源3の硬さがさらに強調され、ユーザーが巻上用部材2と熱源3との境界を触感によってさらに認識し易いため、離脱適正がさらに向上すると判定し、ステップS15に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0056】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源材料12の硬さの差が大きすぎて巻上適正を確保できない、或いは、巻上用部材2又は香味源材料12が熱源3と同じくらい硬いことにより当該硬さの差が生じている場合、巻上用部材2及び熱源3の離脱、或いは、中間ロッド15ごとの離脱を招くおそれがあり、離脱適正を確保できないと判定し、ステップS16に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0057】
[第3硬さ判定](ステップS14)
熱源3の硬さHhを100%と規定したとき、巻上用部材2の硬さHwと香味源材料12の硬さHfとの差が15%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、巻上用部材2と香味源4との硬さの差(|Hw-Hf|)がさらに小さいため、巻上用部材2と香味源材料12との硬さがさらに近づくことにより巻上適正がより一層向上し、且つ、巻上用部材2と香味源4とに挟まれた熱源3の硬さがより一層強調され、ユーザーが巻上用部材2と熱源3との境界を触感によりさらに認識し易いため、離脱適正がより一層向上すると判定し、ステップS15に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0058】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源4の硬さが若干大きすぎて巻上適正を必ずしも確保できない、或いは、巻上用部材2及び香味源4の離脱、或いは中間ロッド15ごとの離脱を招くおそれを払拭できず、離脱適正を必ずしも確保できないと判定し、ステップS16に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0059】
ここで、前述した第1巻上工程で接着部において第1連結体13と第1巻紙6とを偏りなく接着するためには、巻上用部材2及び香味源材料12の圧縮強度が重要である。喫煙物品の製造工程において、巻上用部材2及び香味源材料12が製造過程において圧し潰される可能性があり、巻上用部材2及び香味源材料12が圧し潰された状態で第1巻上工程が行われると、巻上適正の悪化は勿論のこと、接着部8に隙間が生じて第1連結体13ひいては喫煙物品1の接着不良を招くからである。
【0060】
そこで、本実施形態では、喫煙物品1において巻上適正のさらなる向上を図るとともに、接着部8における第1連結体13と第1巻紙6との接着を適正に行う、いわば接着適正を喫煙物品1に付与するべく、喫煙物品1の復元率評価工程を行う。
以下、
図13の復元率評価工程を示すフローチャートを参照し、復元率評価工程について説明する。
【0061】
[復元率測定](ステップS21)
復元率評価工程が開始されると、先ず、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率測定を行う。
図14は、復元率測定で用いる復元率測定ユニット30の側面図を示す。
【0062】
復元率測定ユニット30は、ベース31、円盤32、及び昇降器33などを備えている。円盤32は、その円形面がベース31に向けて配置され、昇降器33に昇降自在に支持されている。
【0063】
先ず、巻上用部材2又は香味源材料12(以下、測定対象Bとも称する)をベース31に載置した後、昇降器33を作動させて
図14に示すように円盤32を下降すると、測定対象Bが円盤32とベース31との間に挟まれ、測定対象Bに荷重が付与される。なお、香味源材料12を二分した後の香味源4も香味源材料12と同じ復元率を有するため、香味源4を測定対象Bとしても良い。
【0064】
復元率測定は、測定対象Bに、測定対象Bを直径の1/2まで圧縮させる荷重を1分間付与した後、5分間放置したときの楕円率に基づいて行われる。
図15は、荷重Fを付与する前の測定対象Bの断面形状を一点鎖線で示し、荷重Fを付与して放置した直後の測定対象Bの断面形状を実線で示す。
【0065】
測定対象Bは、荷重Fを付与する前はほぼ断面円形であって、荷重Fを付与して放置した直後には断面楕円形となって長径Da及び短径Dbを有する。
本実施形態では、測定対象Bの楕円率を次式に基づいて算出する。
・楕円率(%)=2(Da-Db)/(Da+Db)×100
この式によれば、長径Daから短径Dbを減じた差分が小さいほど楕円率の数値は小さくなり、測定対象Bの復元率が大きいと判定される。
【0066】
そして、巻上適正及び接着適正の双方を向上するためには、発明者の実験により、巻上用部材2の楕円率Ewと香味源材料12の楕円率Efとの好ましい数値は40%以下であり、さらに好ましくは、巻上用部材2の楕円率Ewと香味源材料12の楕円率Efとの数値差は30%以下であり、さらに好ましくは、この楕円率の数値差は15%以下であると判明している。従って、本実施形態では、以下のステップS22~S24の少なくとも何れかの判定を行うことにより楕円率評価を行う。
【0067】
[第1楕円率判定](ステップS22)
図13に示すように、巻上用部材2の楕円率Ewと香味源材料12の楕円率Efとが40%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率が比較的大きいため、要求される巻上適正を確保可能であり、且つ、第1巻上工程で接着部8において第1連結体13と第1巻紙6とを偏りなく接着可能と判定し、ステップS25に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0068】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率が小さいため、巻上適正が確保できない、或いは、製造工程で生じた巻上用部材2又は香味源材料12の凹みが接着部8において非接着領域を生じさせる、或いは、接着部8における第1巻紙6の剥離が生じ易くなるため、接着適正を確保できないと判定し、ステップS26に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0069】
[第2楕円率判定](ステップS23)
次に、巻上用部材2の楕円率Ewと香味源材料12の楕円率Efとの差が30%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、巻上用部材2と香味源材料12との楕円率の差(|Ew-Ef|(絶対値))が比較的小さいため、巻上用部材2と香味源材料12との復元率が近づくことにより巻上適正がさらに向上し、且つ、接着部8における巻上用部材2と香味源材料12との接着態様に差異が生じ難いことにより接着適正がさらに向上すると判定し、ステップS25に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0070】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率の差が大きすぎて巻上適正を確保できない、或いは、接着部8における巻上用部材2と香味源材料12との接着態様に差異によって接着不良を招くおそれがあり、接着適正を確保できないと判定し、ステップS26に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0071】
[第3楕円率判定](ステップS24)
次に、巻上用部材2の楕円率Ewと香味源材料12の楕円率Efとの差が15%以下であるか否かを判定する。判定結果がYesの場合、巻上用部材2と香味源材料12との楕円率の差(|Ew-Ef|)がさらに小さいため、巻上用部材2と香味源材料12との復元率がさらに近づくことにより巻上適正がより一層向上し、且つ、接着部8における巻上用部材2と香味源材料12との接着態様の差異がさらに生じ難くなったことにより接着適正がより一層向上すると判定し、ステップS25に移行して受入許可とした後、本工程を終了する。
【0072】
一方、判定結果がNOの場合、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率が若干大きすぎて巻上適正を必ずしも確保できない、或いは、巻上用部材2及び香味源材料12の接着不良を招くおそれを払拭できず、接着適正を必ずしも確保できないと判定し、ステップS26に移行して受入拒否とした後、本工程を終了する。
【0073】
以上のように本実施形態では、喫煙物品1をステップS1~S6の工程によって製造することにより、セグメント長が長くアスペクト比が大きなセグメント(構成部材)を使用して喫煙物品1を製造することができる。従って、製造時において、セグメントの転動を抑制するべくセグメントの姿勢を厳密に管理する必要はなく、また、そのための設備を用意しなくとも良いため、喫煙物品1の品質向上及び生産性向上の双方を実現することができる。
【0074】
また、第1切断工程では、第1連続体14を香味源材料12において切断して二分して2つの中間ロッド15を形成し、第2切断工程では、第2連続体19をフィルタ部材材料16において切断して二分して2つの喫煙物品1を形成する。従って、軸線方向Xにおいて左右対称の連続体を二分して2つの同部材を形成することにより、予め切断或いは成形された多数の小さなセグメントを個別に供給して連結体、ひいては連続体を形成して喫煙物品1を製造する場合に比して、喫煙物品1を効率的に製造することができ、喫煙物品1の生産性が向上する。
【0075】
また、ステップS1~S6の一連の工程において、巻上用部材2は、各連結体13、18、中間ロッド15、各連続体14、19の両端に常時位置付けられる。特に、第1連続体14を形成するに際し、第1連結体13を第1巻紙6により巻き上げるとき、巻上用部材2が両端に位置付けられることにより、喫煙物品1の巻上適正を向上することができ、喫煙物品1のさらなる品質向上を図ることができる。
【0076】
また、第1巻上工程において、第1連結体13と第1巻紙6とを接着する接着部8と、各熱源3のそれぞれの巻上用部材2の側において少なくとも熱源3の一部と接着されない非接着部9とが形成される。これにより、巻上用部材2の少なくとも一部を非接着部9にて離脱させ、熱源3の少なくとも一部を着火による加熱が可能に露出して使用することができる。
【0077】
また、前述した硬さ評価工程を行うことにより、喫煙物品1において巻上適正がさらに向上するとともに、喫煙物品1に離脱適正を付与することができる。詳しくは、硬さ評価工程では、巻上用部材2、熱源3、及び香味源材料12に19.6Nの荷重を20秒間継続して付与したときの初期高さH1に対する残高さH2の割合に基づいて、これらの硬さを測定する。そして、第1硬さ判定を行うことにより、巻上用部材2及び香味源材料12は、熱源3よりも柔らかく、ユーザーが巻上用部材2と熱源3との境界を触感により認識し易い、離脱適正が確保可能なもののみ受入許可を出す。
【0078】
さらに、第2及び第3硬さ判定を行うことにより、巻上用部材2と香味源材料12は、互いの硬さが近いことにより巻上適正がより一層向上し、且つ、喫煙物品1において巻上用部材2と香味源4とに挟まれた熱源3の硬さがより一層強調され、ユーザーが巻上用部材2と熱源3との境界を触感によりさらに認識し易い、離脱適正がより一層向上するもののみ受入許可を出す。なお、第1~第3硬さ判定のすべての判定を行うのではなく、少なくとも何れか1つの判定を行うようにしても良いし、第1~第3硬さ判定を順次行うようにしても良い。この場合であっても、喫煙物品1の巻上適正及び離脱適正が向上する。
【0079】
また、前述した復元率評価工程を行うことにより、喫煙物品1において巻上適正がさらに向上するとともに、喫煙物品1に接着適正を付与することができる。詳しくは、復元率評価工程は、巻上用部材2及び香味源材料12に直径の1/2まで圧縮させる荷重を1分間付与した後、5分間放置したときの楕円率に基づいて、これらの復元率を測定する。そして、第1楕円率判定を行うことにより、巻上用部材2及び香味源材料12は、復元率が比較的大きいため、要求される巻上適正を確保可能であり、且つ、第1巻上工程で接着部8において第1連結体13と第1巻紙6とを偏りなく接着可能な接着適正を有するもののみ受入許可を出す。
【0080】
さらに、第2及び第3楕円率判定を行うことにより、巻上用部材2と香味源材料12とは、互いの復元率が近いことにより巻上適正がより一層向上し、且つ、接着部8における巻上用部材2と香味源材料12との接着態様の差異がさらに生じ難くなったことにより接着適正がより一層向上するもののみ受入許可を出す。なお、第1~第3楕円率判定のすべての判定を行うのではなく、少なくとも何れか1つの判定を行うようにしても良いし、第1~第3楕円率判定を順次行うようにしても良い。この場合であっても、喫煙物品1の巻上適正及び接着適正が向上する。
【0081】
このように、本実施形態の喫煙物品1は、巻上用部材2を備えることによる巻上適正の向上のみならず、巻上用部材2及び香味源材料12の硬さ評価により巻上適正のさらなる向上と、離脱適正の向上を図り、さらには、巻上用部材2及び香味源材料12の復元率評価により巻上適正のさらなる向上と、接着適正の向上を図っている。
【0082】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態により製造される喫煙物品1は、より好ましい形態が存在し、また、前述した構造に限定されるものではない。従って、前述した喫煙物品1の製造方法が適用可能な他の喫煙物品1の態様について以下に説明する。
【0083】
<第2実施形態>
図16の喫煙物品1(中間ロッド15のみを部分的に示す)に示すように、第1連結体13に対し巻き上げたときの第1巻紙6の外周面6aは、炭酸カルシウムなどの顔料がコーティングされていない非コーティング面である。また、第1巻紙6は、坪量が70g/m2~140g/m2の範囲の高密度紙であるのが好ましい。なお、このような坪量範囲を有する第1巻紙6は、前述したように金属貼合紙、例えばアルミニウム貼合紙である場合もあり得る。
【0084】
第1巻紙6の外周面6aを紙素材が剥き出しの非コーティング面とすることにより、喫煙物品1の生産コストを低減することができる。また、第1巻紙6を高密度紙とすることにより、喫煙物品1を使用中に熱源3が加熱したときの第1巻紙6の焦げが抑制され、また、第1巻紙6に適度な引張強度が付与されて第1巻紙6によるセグメントの連結が強固となる。これにより、喫煙物品1の品質がさらに向上する。
【0085】
<第3実施形態>
図17の喫煙物品1(中間ロッド15のみを部分的に示す)に示すように、非接着部9は、接着部8に比して第1巻紙6の厚みが薄い薄肉部6cであって、薄肉部6cの厚みは第1巻紙6の厚みの例えば1/2以下である。これにより、非接着部9において巻上用部材2を離脱し易くなるため、喫煙物品1の離脱適正がさらに向上する。
【0086】
<第4実施形態>
図18の喫煙物品1(中間ロッド15のみを部分的に示す)に示すように、第1連結体13に対し巻き上げたときの第1巻紙6の内周面6bの内側には熱伝導要素40が配置されている。熱伝導要素40は、軸線方向Xにおいて、巻上用部材2から熱源3を経て香味源4に至る領域に配置され、第1連続体14においては、両端の巻上用部材2に亘って配置される。
【0087】
この場合において、第1巻紙6は、紙素材に熱伝導要素40を貼り合わせて一体化したアルミニウム貼合紙であっても良い。このようなアルミニウム貼合紙は、紙、アルミニウムの二層(この場合、巻き上げ時の外周側が紙)であっても良いし、紙、アルミニウム、紙の三層であっても良い。また、第1巻紙6がアルミニウム貼合紙の場合、アルミニウムは香味源4の軸線方向Xの中央位置に存在しないのが好ましい。この中央部分にアルミニウムが存在しないことにより、第1切断工程における第1連続体14の切断が容易になるという利点がある。
【0088】
なお、第1連続体14において2つの香味源材料12に亘って配置するようにしても良い。熱伝導要素40は、任意の材料で作ることができるが、金属箔(例えばアルミニウム箔)が好ましい。熱伝導要素40を配置することにより、熱源3から香味源4への熱伝達が促進されるため、香味源4からエアロゾルをより一層効率的に生成可能である。
【0089】
<第5実施形態>
図19は、第1巻紙6を広げて内周面6bの側から見た平面図を示す。第1巻紙6の内周面6bには熱伝導要素40としての金属箔41(例えばアルミニウム箔)が貼合され、第1巻紙6は金属貼合紙を構成する。金属箔41は、第1巻紙6の巻き方向Yにおける両端部42を除く、巻き方向Yの中央に3カ所に貼合されている。3カ所の金属箔41は、2つの端部42に亘って巻き方向Yに延設する2つの直線部43を隔てて配置される。つまり、2つの端部42と2つの直線部43とは紙素材から形成される。
【0090】
図20は、金属貼合紙である第1巻紙6を使用した場合の第1連続体14の断面図を示す。紙素材のみからなる2つの直線部43は、非接着部9に相当する箇所に形成され、つまり、金属箔41は内周面6bの少なくとも非接着部9に相当する箇所を除いて貼合される。これにより、巻上用部材2の離脱を各直線部43において容易に行うことができ、喫煙物品1の離脱適正を確保することができる。
【0091】
一方、接着部8は、内周面6bの両端部42、つまり金属箔41を除いた箇所に形成される。これにより、金属箔41に接着剤を塗布して接着部8を形成する場合に比して、第1巻紙6の接着性が高まり、喫煙物品1の接着適正が向上する。さらに、熱伝導要素40としての金属箔41を内周面6bに貼合して一体化したことにより、第1巻紙6に離脱適正を高めるための加工(ミシン目などの弱化線形成)をしなくとも、外周面6aをフラットに形成可能であり、喫煙物品1の生産性を向上しながら、喫煙物品1の美観を向上することができる。
【0092】
<第6実施形態>
図21の喫煙物品1(中間ロッド15のみを部分的に示す)に示すように、巻上用部材2は、非接着部9にて分離可能な2つの分離体2a、2bから構成されている。分離体2aは、巻上用部材2の先端に位置し、軸線方向Xにおける巻上用部材2の所定長さを確保するために設けられ、主として巻上適正を高める機能を有する。従って、分離体2aは非接着部9に配置され、喫煙物品1の製造工程の第1巻上工程以降に取り外し可能であり、完成した喫煙物品1においては存在しなくとも良い。
【0093】
なお、接着部8が1~2μm程度の薄層であることにより、
図21に図示するような分離体2aと第1巻紙6との隙間は微小なものである。従って、分離体2aは第1巻紙6で巻き上げられたときに第1巻紙6に摩擦によって係止され、容易に脱落することはない。
【0094】
一方、分離体2bは、主として熱源3を保護するための機能を有し、ユーザーが喫煙物品1を使用する際に離脱するものである。このため、第1巻紙6の分離体2bが配置される領域には接着部8が形成されている。このように、巻上用部材2を2つの分離体2a、2bから形成し、機能分離を図ったことにより、喫煙物品1の設計自由度を高めることができる。
【0095】
また、
図22に示すように、巻上用部材2は、分離体2a、2bを連結する連結部2cを設けても良い。これにより、分離体2aの意図しない脱落を防止することができる。なお、分離体2aを容易に取り外し可能とするために、連結部2cの個数は1又は2であることが好ましい。
【0096】
<第7実施形態>
図23の喫煙物品1(中間ロッド15のみを部分的に示す)に示すように、第1巻紙6は、熱源3の近傍から香味源4への通気を可能とする通気孔6dを有する。このような通気孔は、香味源4の外周側に設けても良い。また、熱源3は、着火により燃焼し発熱するのであれば、炭素以外の顆粒材料を固めて成形したものでも良く、
図23に示すように中空部3aを有さない場合もあり得る。
【0097】
また、熱源3は、固形物に限らずシート状に成形したものを巻いて使用しても良い。中空部3aを有さない場合であっても、通気孔6dから熱源3を経て香味源4に至るベンチレーションエアを生成可能である。なお、中空部3aと通気孔6dとの双方を設けても良い。また、中空部3aは軸線方向Xに貫通する孔に限らず、熱源3の周面に開けた孔でも良い。また、少なくとも中空部3a及び通気孔6dの何れかを設けた場合、伝熱効率が高まるため、熱伝導要素40が不要となる場合もあり得る。
【0098】
<第8実施形態>
図24の喫煙物品1に示すように、フィルタ部材5は、香味源4側から順に、管10、冷却要素50、及びフィルタ要素11を軸線方向Xに一列に並べて形成される。冷却要素50は、例えば、シート状の紙や生分解性ポリマー等を折り畳んだものを巻取紙50aにより包み込んだものである。この場合には、熱源3、香味源4を順に通過した気流が冷却要素50において冷却され、エアロゾルの生成効率がより一層向上する。
【0099】
また、
図24の場合には、冷却要素50及びフィルタ要素11は、巻取紙51で一体に包み込まれたデュアルセグメントアタッチメント52である。これにより、フィルタ部材材料16は、管10及びデュアルセグメントアタッチメント52の2つの部材だけから構成されるため、第2配列工程における部材のハンドリング性が向上し、フィルタ部材5ひいては喫煙物品1の生産性が向上する。
【0100】
<第9実施形態>
図25の喫煙物品1に示すように、フィルタ部材5は、香味源4側から順に、管10、冷却要素50、及びフィルタ要素11を軸線方向Xに一列に並べて形成され、これらは、巻取紙51で一体に包み込まれたトリプルセグメントアタッチメント53である。これにより、フィルタ部材材料16は、トリプルセグメントアタッチメント53の1つの部材だけから構成されるため、第2配列工程における部材のハンドリング性がさらに向上し、フィルタ部材5ひいては喫煙物品1の生産性がさらに向上する。
【0101】
前述した喫煙物品1の製造方法は、上記各実施形態の単独、或いは組み合わせにより製造される喫煙物品1に適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 喫煙物品
2 巻上用部材
2a 分離体
2b 分離体
2c 連結部
3 熱源(炭素熱源)
3a 中空部
4 香味源(たばこ材料)
5 フィルタ部材
6 第1巻紙
6a 外周面(非コーティング面)
6b 内周面
6c 薄肉部
6d 通気孔
7 第2巻紙
8 接着部
9 非接着部
10 管
11 フィルタ要素
40 熱伝導要素
41 金属箔
50 冷却要素
51 巻取紙
52 デュアルセグメントアタッチメント
53 トリプルセグメントアタッチメント