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特許7178488負極、並びに、それを含む電気化学装置及び電子装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】負極、並びに、それを含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20221117BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20221117BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20221117BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20221117BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221117BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20221117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221117BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221117BHJP
【FI】
H01M4/134
H01G11/36
H01G11/42
H01G11/46
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021512581
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2019121735
(87)【国際公開番号】W WO2021102846
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲りょう▼群超
(72)【発明者】
【氏名】崔航
(72)【発明者】
【氏名】謝遠森
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091630(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107242(WO,A1)
【文献】特開2019-133920(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179813(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035274(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220576(WO,A1)
【文献】特開2015-026579(JP,A)
【文献】特表2015-503836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01G 11/36
H01G 11/42
H01G 11/46
H01M 4/13
H01M 4/133
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素系粒子及びグラファイト粒子を含む負極であって、
前記ケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数をNとし、
前記ケイ素系粒子の合計数に対して、50%超のケイ素系粒子が6≦N≦17を満たし、
前記ケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数Nの測定は、
負極の断面をAr粒子で研磨した後、
SEMを使用して、ケイ素系粒子のエッジから集電体および負極表面までの最小距離が6μm以上のケイ素系粒子について、1度に少なくとも30個ケイ素系粒子を撮影し、前記少なくとも30個のケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数Nを記録することにより実行され、
前記グラファイト粒子数は、単独のグラファイト粒子数、すなわち一次グラファイト粒子数であり、
前記N個のグラファイト粒子の全てが、粒子全体が前記少なくとも30個のケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が0~6μmの範囲内であるか、又は、前記のN個のグラファイト粒子のうちの幾つかの粒子全体が前記範囲内にあり、残りのグラファイト粒子は粒子の一部が前記範囲内にあり、
前記ケイ素系粒子が、ケイ素複合化物マトリックスおよび酸化物MeOy層を含み、
前記酸化物MeOy層が、炭素材料を含むとともに、前記ケイ素複合化物マトリックスの少なくとも一部を被覆し、
MeがAl、Ti、Mn、V、Cr、Co又はZrの少なくとも一種を含み、yが0.5~3である、負極。
【請求項2】
前記ケイ素系粒子は、X線回折パターンにおける2θが28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をIとし、X線回折パターンにおける2θが20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I ≦1を満たす、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記ケイ素系粒子の粒度分布が0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、請求項1又は2に記載の負極。
【請求項4】
前記ケイ素系粒子が、さらに重合体層を含み、前記重合体層が前記酸化物MeO層の少なくとも一部を被覆し、かつ、前記重合体層が炭素材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の負極。
【請求項5】
前記グラファイト粒子の平均球形度をAとし、前記ケイ素系粒子の平均球形度をBとし、AとBが0<B-A≦0.3を満たす、請求項1に記載の負極。
【請求項6】
前記ケイ素複合化物マトリックスがSiOを含み、かつ、xが0.6≦x≦1.5を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項7】
前記ケイ素複合化物マトリックスがナノSi結晶粒子、SiO、SiO、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項8】
前記ナノSi結晶粒子のサイズが100nm以下である、請求項に記載の負極。
【請求項9】
前記酸化物MeO層の厚さが0.5nm~1000nmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項10】
前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、Me元素の重量分率が0.005wt%~1wt%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項11】
前記重合体層が、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項に記載の負極。
【請求項12】
前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記重合体層の重量分率が0.05~5wt%である請求項4または11に記載の負極。
【請求項13】
前記重合体層の厚さが1nm~100nmである、請求項4または11に記載の負極。
【請求項14】
前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項15】
前記ケイ素系粒子の粒子径Dv50が0.01~50μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項16】
前記ケイ素系粒子の比表面積が1~50m/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項17】
前記ケイ素系粒子の平均球形度が0.8~1.0である、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項18】
ケイ素系粒子の合計数に占める球形度が0.8未満であるケイ素系粒子数の百分率が10%以下である、請求項17に記載の負極。
【請求項19】
前記グラファイト粒子の平均球形度が0.5~0.8である、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項20】
グラファイト粒子の合計数に占める球形度が0.5~0.8であるグラファイト粒子数の百分率が95%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項21】
前記グラファイト粒子は、ラマン分光分析における1330cm-1に散乱ピークI1330が有し、かつ、1580cm-1に散乱ピークI1580を有し、I1330/I1580の比が0.7<I1330/I1580 <2.0を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項22】
前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が0.01~80μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項23】
前記グラファイト粒子の比表面積が30m/g以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項24】
前記グラファイト粒子のOI値が1~30である、請求項1~5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の負極を含む、電気化学装置。
【請求項26】
リチウムイオン電池である、請求項25に記載の電気化学装置。
【請求項27】
請求項26に記載の電気化学装置を含む、電子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には、負極、並びに、それを含む電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ノートパソコン、携帯電話、スレートPC、モバイル電源及びドローンなどの消費電子製品の普及に伴い、それらの中の電気化学装置に対する要求はますます厳しくなっている。例えば、電池に対して、その軽量化が求められるだけでなく、高容量と長い動作寿命が求められる。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、安全性が高く、メモリ効果がなく、動作寿命が長いなどの優れた利点により、市場で主流になっている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、負極活物質を提供することにより、少なくともある程度で、関連分野に存在した少なくとも一つの問題を解決することを意図する。本発明の実施例は、当該負極を使用する電気化学装置及び電子装置をさらに提供する。
【0004】
1つの実施例において、本発明は、ケイ素系粒子及びグラファイト粒子を含む負極であって、前記ケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数を、Nとし、前記ケイ素系粒子の合計数に対して、約50%超のケイ素系粒子が617を満たす負極を提供する。
【0005】
別の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の負極を含む電気化学装置を提供する。
【0006】
別の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0007】
本発明は、ケイ素系粒子とグラファイト粒子との間の適切なマッチングから、ケイ素系粒子の周りに存在するグラファイト粒子数を限定することにより、電池のサイクル特性と変形率を著しく改善する。
【0008】
本発明の実施例の他の態様および利点について、部分的に以下の内容に述べられ、示され、又は本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下では、本出願の実施例を説明するために、本出願の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概略に説明する。以下に説明される図面は、本出願の実施例の一部にすぎないことは自明である。当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面に例示される構造により他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1Aは、実施例1におけるケイ素酸化物SiOの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図1Bは、実施例1におけるグラファイト粒子のSEM画像を示し、かつ図1C及び図1Dは、それぞれ実施例1における負極の一部の断面のSEM画像を示す。
図2A図2Aは、実施例1におけるケイ素酸化物SiOの粒度分布曲線を示す。
図2B図2Bは、実施例1におけるグラファイト粒子の粒度分布曲線を示す。
図3A図3Aは、実施例1および比較例1におけるリチウムイオン電池のサイクルの減衰曲線である。
図3B図3Bは、実施例1および比較例1におけるリチウムイオン電池の電池変形曲線である。
図3C図3Cは、実施例10における負極活物質のX線回折(XRD)パターンである。
図3D図3Dは、比較例4における負極活物質のX線回折パターンである。
図4図4は、本発明の1つの実施例に係る負極活物質の構造の模式図を示す。
図5図5は、本発明の別の実施例に係る負極活物質の構造の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0011】
本発明で使用されるように、用語「約」は小さな変化を叙述して説明するためのものである。事例または状況と組み合わせて用いると、前記用語はその中での事例または状況が明確に発生した例、並びにその中での事例または状況が極めて近似的に発生した例を指しうる。例を挙げると、数値と組み合わせて使用する時に、用語は前記数値の±10%以下の変化範囲、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下を指しうる。
【0012】
本発明では、Dv50は、負極活物質の累積体積百分率が50%となる粒子径であり、単位はμmである。
【0013】
本発明では、Dn10は、負極活物質の累積数量百分率が10%となる粒子径であり、単位はμmである。
【0014】
本発明では、ケイ素複合化物は、ケイ素単体、ケイ素化合物、ケイ素単体とケイ素化合物との混合物、または異なるケイ素化合物の混合物を含む。
【0015】
本発明では、球形度は、粒子の最も短い直径と最も長い直径の比を指す。
【0016】
本発明では、「負極グラム容量」は、負極を調製するための負極活物質のグラムあたりの容量を指す。例えば、本発明の実施例の負極活物質は、グラファイトとケイ素系負極活物質との混合物であれば、「負極グラム容量」は、当該混合物のグラム容量を指す。
【0017】
なお、本発明では、範囲の形で量、比率および他の数値を示すことがある。当業者にとって理解できるように、このような範囲の形は、便宜上および簡潔のためのものであり、当該範囲に明確に限定されている数値を含むだけでなく、前記範囲に含まれたすべての各々の値またはサブ範囲も含み、それは、各々の値またはサブ範囲を明確に限定されることに相当する。
【0018】
具体的な実施形態および請求の範囲において、用語「の一方」、「の一つ」、「の一種」、または、他の類似な用語で接続される項のリストは、リストされる項のいずれかを意味する。例えば、項Aおよび項Bがリストされる場合、用語「AおよびBの一方」は、AのみまたはBのみを意味する。別の実施例では、項A、BおよびCがリストされる場合、用語「A、BおよびCの一方」は、Aのみ、BのみまたはCのみを意味する。項Aは、単一の素子または複数の素子を含みうる。項Bは、単一の素子または複数の素子を含みうる。項Cは、単一の素子または複数の素子を含みうる。
【0019】
具体的な実施形態および請求の範囲において、用語「の少なくとも一方」、「の少なくとも一つ」、「の少なくとも一種」、または、他の類似な用語で接続される項のリストは、リストされる項の任意の組み合わせを意味する。例えば、項Aおよび項Bがリストされる場合、用語「AおよびBの少なくとも一方」は、Aのみ、Bのみまたは、AとBを意味する。別の実施例では、項A、項Bおよび項Cがリストされる場合、用語「A、BおよびCの少なくとも一方」は、Aのみ、又はBのみ、Cのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、または、AとBとCのすべてを意味する。項Aは、単一の素子または複数の素子を含みうる。項Bは、単一の素子または複数の素子を含みうる。項Cは、単一の素子または複数の素子を含みうる。
【0020】
一、負極
本発明の実施例は、集電体と、当該集電体上での負極活物質層を含む負極を提供する。
【0021】
ある実施例において、前記負極活物質層は、ケイ素系粒子及びグラファイト粒子を含み、前記ケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数をNとし、前記ケイ素系粒子の合計数に対して、約50%超のケイ素系粒子が617を満たす。
【0022】
ある実施例において、N個のグラファイト粒子は、それぞれ独立して、その全部または一部がケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在する。ある実施例において、前記N個のグラファイト粒子の各々は、その全部がケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在する。ある実施例において、前記N個のグラファイト粒子において、いくつかのグラファイト粒子の各々は、その全部がケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在し、他のグラファイト粒子の各々は、その一部のみがケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在する。
【0023】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子は、そのエッジが集電体と負極表面からの最も小さい距離が約6μm未満である粒子を含まない。
【0024】
ある実施例において、約60%超のケイ素系粒子が617を満たす。ある実施例において、約70%超のケイ素系粒子が617を満たす。ある実施例において、約80%超のケイ素系粒子が617を満たす。ある実施例において、約90%超のケイ素系粒子が617を満たす。
【0025】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子のX線回折パターンにおける2θが約28.0°~29.0°の範囲内にある最大強度値をIとし、前記ケイ素系粒子のX線回折パターンにおける2θが約20.5°~21.5°の範囲内にある最大強度値をIとする。ここで、IとIは、約0<I/I1≦約1を満たす。
【0026】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子のX線回折パターンにおける2θが約28.4°である最大強度値をIとし、前記ケイ素系粒子のX線回折パターンにおける2θが約21.0°である最大強度値をIとする。ここで、I/Iは約0<I/I1≦約1を満たす。ある実施例において、I/Iの値が約0.3、約0.5、約0.7または約0.9である。
【0027】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子のD50の範囲が約2.5μm~10μmである。ある実施例において、前記ケイ素系粒子のD50の範囲が約4μm~8μmである。ある実施例において、前記ケイ素系粒子のD50の範囲が約4.5μm~6μmである。
【0028】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子の粒度分布が約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす。ある実施例において、前記ケイ素系粒子の粒度分布が約0.4Dn10/Dv50約0.5を満たす。ある実施例において、前記ケイ素系粒子の粒度分布が約0.35、約0.45または約0.55である。
【0029】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子は、ケイ素複合化物マトリックスおよび酸化物MeO層を含み、前記酸化物MeO層は、前記ケイ素複合化物マトリックスの少なくとも一部を被覆し、ここで、MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co或いはZrの少なくとも一種を含み、yが約0.5~3であり、かつ、前記酸化物MeO層が炭素材料を含む。
【0030】
ある実施例において、酸化物MeOは、Al、TiO、ZrO、MnO、Mn、Mn、Co、Cr、SiO、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
ある実施例において、前記酸化物MeO層における炭素材料は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施例において、前記アモルファスカーボンが、炭素前駆体を高温で焼結して得られる炭素材料である。ある実施例において、前記炭素前駆体が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子は、重合体層をさらに含み、前記重合体層は前記酸化物MeO層の少なくとも一部を被覆し、かつ、前記重合体層は炭素材料を含む。ある実施例において、前記重合体層はケイ素複合化物マトリックスの表面を直接被覆してもよい。すなわち、前記ケイ素系粒子はケイ素複合化物マトリックスおよび重合体層のみを含む。
【0033】
ある実施例において、前記重合体層は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
ある実施例において、前記グラファイト粒子の平均球形度をAとし、前記ケイ素系粒子の平均球形度をBとし、AとBが約0<B-A約0.3を満たす。
【0035】
ある実施例において、B-Aの値が約0.1、約0.15、約0.17、約0.19、約0.21、約0.23、約0.26、または約0.29である。
【0036】
ある実施例において、前記ケイ素複合化物マトリックスは、リチウムイオンを挿入および脱離可能な粒子を含む。ある実施例において、前記ケイ素複合化物マトリックスがケイ素含有物質を含み、前記ケイ素複合化物マトリックス中の前記ケイ素含有物質と、前記負極材料中の前記ケイ素含有物質以外の他の物質の1種または複数種とが複合化物を形成することができる。
【0037】
ある実施例において、前記ケイ素複合化物マトリックスはSiOを含み、かつ、前記xが約0.6約1.5である
【0038】
ある実施例において、前記ケイ素複合化物マトリックスは、ナノSi結晶粒子、SiO、SiO、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
ある実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズが約100nm未満であり、ある実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズが約50nm未満であり、ある実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズが約20nm未満であり、ある実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズが約5nm未満であり、ある実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズが約2nm未満である。
【0040】
ある実施例において、前記酸化物MeO層の厚さが約0.5nm~1000nmであり、ある実施例において、前記酸化物MeO層の厚さが約1nm~500nmであり、ある実施例において、前記酸化物MeO層の厚さが約1nm~100nmであり、ある実施例において、前記酸化物MeO層の厚さが約1nm~20nmであり、ある実施例において、前記酸化物MeO層の厚さが約2nm、約10nm、約20nm、または約50nmである。
【0041】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、Me元素の重量分率が約0.005wt%~1wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、Me元素の重量分率が約0.01wt%~1wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、Me元素の重量分率が約0.02wt%~0.9wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、Me元素の重量分率が約0.05wt%、約0.1wt%、約0.2wt%、約0.3wt%、約0.4wt%、約0.5wt%、約0.6wt%、約0.7wt%、または約0.8wt%である。
【0042】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率が約0.01wt%~1wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率が約0.1wt%~0.9wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率が約0.2wt%~0.8wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率が約0.3wt%、約0.4wt%、約0.5wt%、約0.6wt%、または約0.7wt%である。
【0043】
ある実施例において、前記重合体層における炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0044】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記重合体層の重量分率が約0.05~5wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記重合体層の重量分率が約0.1~4wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記重合体層の重量分率が約0.5~3wt%であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の合計重量に対して、前記重合体層の重量分率が約1wt%、約1.5wt%、または約2wt%である。
【0045】
ある実施例において、前記重合体層の厚さが約1nm~100nmであり、ある実施例において、前記重合体層の厚さが約5nm~90nmであり、ある実施例において、前記重合体層の厚さが約10nm~80nmであり、ある実施例において、前記重合体層の厚さが約5nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、または約70nmである。
【0046】
ある実施例において、前記負極材料の比表面積が約1~50m/gであり、ある実施例において、前記負極材料の比表面積が約5~40m/gであり、ある実施例において、前記負極材料の比表面積が約10~30m/gであり、ある実施例において、前記負極材料の比表面積が約1m/g、約5m/g、または約10m/gである。
【0047】
ある実施例において、前記ケイ素系粒子の平均球形度が約0.8~1.0であり、ある実施例において、前記ケイ素系粒子の平均球形度が約0.85、約0.9、または約0.95である。
【0048】
ある実施例において、ケイ素系粒子の合計数に占める球形度が約0.8未満であるケイ素系粒子数の百分率が約10%以下である。ある実施例において、ケイ素系粒子の合計数に占める球形度が約0.8未満であるケイ素系粒子数の百分率が約8%以下、約7%以下、約6%以下、または約5%以下である。
【0049】
ある実施例において、前記グラファイト粒子の平均球形度が約0.5~0.8であり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の平均球形度が約0.55、約0.6、約0.65、または約0.75である。
【0050】
ある実施例において、グラファイト粒子の合計数に占める球形度が約0.5~0.8であるグラファイト粒子数の百分率が約95%以上である。ある実施例において、グラファイト粒子の合計数に占める球形度が約0.5~0.8であるグラファイト粒子数の百分率が約96%以上、約97%以上、または約98%以上である。
【0051】
ある実施例において、前記グラファイト粒子は、ラマン分光分析における約1330cm-1に散乱ピークI1330が有し、かつ、約1580cm-1に散乱ピークI1580を有し、I1330/I1580の比が約0.7<I1330/I1580<約2.0を満たす。
【0052】
ある実施例において、I1330/I1580の比が約0.8<I1330/I1580<約1.8を満たす。ある実施例において、I1330/I1580の比が約1<I1330/I1580<約1.5を満たす。
【0053】
ある実施例において、前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が約0.01~80μmであり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が約1~70μmであり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が約5~60μmであり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が約10~50μmであり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の粒子径Dv50が約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、または約45μmである。
【0054】
ある実施例において、前記グラファイト粒子の比表面積が約30m/g以下であり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の比表面積が約25m/g以下であり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の比表面積が約20m/g以下であり、ある実施例において、前記グラファイト粒子の比表面積が約15m/g以下である。
【0055】
ある実施例において、前記グラファイト粒子のX線回折パターンは、004回折線パターンおよび110回折線パターンを含み、単位格子長さのc軸長さC004が前記004回折線パターンから得られ、単位格子長さのa軸長さC110が前記110回折線パターンから得られ、両者の比C004/C110が前記グラファイト粒子の配向指数(Orientation Index、OI値と略称する)であり、前記グラファイト粒子のOI値が約1~30である。
【0056】
ある実施例において、前記グラファイト粒子のOI値が約1~20であり、ある実施例において、前記グラファイト粒子のOI値が約5、約10、または約15である。
【0057】
ある実施例において、約0<I/I1≦約1を満たすケイ素系粒子の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末をモル比約1:5~5:1で混合し、混合材料が得られ、
(2)約10-4~10-1kPaの圧力範囲、約1100~1550℃の温度範囲内で、前記混合材料を約0.5~24h加熱して、ガスが得られ、
(3)得られたガスを凝結して固体が得られ、
(4)前記固体を粉砕して篩い分けて、前記ケイ素系粒子が得られ、および
(5)約400~1200の範囲内で、前記固体を約1~24h熱処理し、熱処理した固体を冷却して、前記ケイ素系粒子が得られる。
【0058】
ある実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比が約1:4~4:1であり、ある実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比が約1:3~3:1であり、ある実施例において、前記二酸化ケイ素と前記金属ケイ素粉末のモル比が約1:2~2:1であり、ある実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比が約1:1である。
【0059】
ある実施例において、前記圧力範囲が約10-4~10-1kPaであり、ある実施例において、前記圧力が約1Pa、約10Pa、約20Pa、約30Pa、約40Pa、約50Pa、約60Pa、約70Pa、約80Pa、約90Pa、または或者約100Paである。
【0060】
ある実施例において、前記加熱温度が約1100~1450℃であり、ある実施例において、前記加熱温度が約1200℃または約1400℃である。
【0061】
ある実施例において、前記加熱時間が約1~20hであり、ある実施例において、前記加熱時間が約5~15hであり、ある実施例において、前記加熱時間が約2h、約4h、約6h、約8h、約10h、約12h、約14h、約16h、または約18hである。
【0062】
ある実施例において、混合がボールミル、V字型ミキサー、三次元ミキサー、気流ミキサー、または横型ミキサーにより行われる。
【0063】
ある実施例において、加熱が不活性ガス雰囲気で行われる。ある実施例において、前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0064】
ある実施例において、前記熱処理の温度が約400~1200℃であり、ある実施例において、前記熱処理の温度が約600℃、約800℃、または約1000℃である。
【0065】
ある実施例において、前記熱処理の時間が約1~24hであり、ある実施例において、前記熱処理の時間が約2~12hであり、ある実施例において、前記熱処理の時間が約5h、約10h、または約15hである。
【0066】
ある実施例において、表面に酸化物MeO被覆層を有するケイ素系粒子の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)上記の分級した後で得られた固体または市販品であるケイ素酸素化物SiO、炭素前駆体および酸化物前駆体MeTを、有機溶媒および脱イオン水の存在下で混合して混合溶液を形成し、
(2)前記混合溶液を乾燥して、粉末が得られ、および
(3)前記粉末を約250~900Cで約0.5~24h焼結して、表面に酸化物MeO層を有するケイ素系粒子が得られる。
ここで、xが約0.5~1.5であり、yが約0.5~3であり、MeがAl、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co、またはZrの少なくとも一種を含み、Tがメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはハロゲンの少なくとも一種を含み、且つ、nが1、2、3或いは4である。
【0067】
ある実施例において、前記酸化物前駆体MeTがチタン酸イソプロピル、アルミニウムイソプロポキシド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0068】
ある実施例において、前記炭素材料は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施例において、前記アモルファスカーボンは、炭素前駆体を高温で焼結して得られる炭素材料である。ある実施例において、前記炭素前駆体は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0069】
ある実施例において、焼結温度が約300~800Cであり、ある実施例において、焼結温度が約400~700Cであり、ある実施例において、焼結温度が約400~650Cであり、ある実施例において、焼結温度が約500Cまたは約600Cである。
【0070】
ある実施例において、焼結時間が約1~20hであり、ある実施例において、焼結時間が約1~15hであり、ある実施例において、焼結時間が約1~10hであり、ある実施例において、焼結時間が約1.5~5hであり、ある実施例において、焼結時間が約2h、約3h、または約4hである。
【0071】
ある実施例において、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノールまたはn-プロパノールの少なくとも一種を含む。ある実施例において、前記有機溶媒は、エタノールである。
【0072】
ある実施例において、ハロゲンはF、Cl、Br、またはそれらの組み合わせを含む。
【0073】
ある実施例において、焼結が不活性ガス雰囲気で行われる。ある実施例において、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
ある実施例において、乾燥はスプレー乾燥であり、乾燥温度は約100~300Cである。
【0075】
ある実施例において、表面に重合体被覆層を有するケイ素系粒子の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)上記の粉砕して篩い分けた後に得られた固体、市販品であるケイ素酸素化物SiO、または表面に酸化物MeO層を有するケイ素系粒子と、炭素材料と、重合体とを、溶媒に高速で約1~15h分散させて懸濁液を得、及び
(2)懸濁液中の溶媒を除去する。
ここで、xが約0.5~1.5である。
【0076】
ある実施例において、分散時間が約2h、約4h、約6h、約8h、または約10hである。
【0077】
ある実施例において、前記重合体は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0078】
ある実施例において、前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0079】
ある実施例において、前記溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0080】
図1Aは、実施例1におけるケイ素酸化物SiOのSEM画像を示し、図1Bは、実施例1におけるグラファイト粒子のSEM画像を示し、図1C及び図1Dは、それぞれ実施例1における負極の一部の断面のSEM画像を示す。図2Aは、実施例1におけるケイ素酸化物SiOの粒度分布曲線を示し、図2Bは、実施例1におけるグラファイト粒子の粒度分布曲線を示す。
【0081】
図1Cから、一つのケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数が11であることがわかる。図1Dから、別のケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数が14であることがわかる。
【0082】
工業上で、通常、ケイ素酸素材料とグラファイト材料を特定の比率で混合して負極を調製する。従来技術では、通常、負極の性能を向上するためにケイ素酸素材料の改善のみが着目されており、ケイ素酸素材料粒子とグラファイト粒子との合理的なマッチングは、負極の性能に影響を与えることを無視している。ケイ素酸素材料粒子とグラファイト粒子は、リチウムを挿入する中で体積膨張が一致していない。本発明は、負極におけるケイ素酸素材料粒子とグラファイト粒子とを合理的にマッチすることにより、負極全体の膨張応力を均一に分散させことができ、歯車と類似的にお互いに嵌め込むように、ケイ素酸素材料粒子を、グラファイト間の隙間に充填させることにより、負極の圧縮密度が増加するとともに、膨張によるもたらす粒子の変位を抑制し、負極の変形を低減し、電池のサイクル寿命を延長することができることを見出す。従って、ケイ素酸素材料粒子とグラファイト粒子との合理的なマッチングは、電池の性能を向上することに対して、非常に重要である。
【0083】
図3Aは、実施例1および比較例1におけるリチウムイオン電池のサイクルの減衰曲線であり、図3Bは、実施例1および比較例1におけるリチウムイオン電池の電池変形曲線である。
【0084】
図3Aから、実施例1の容量維持率が比較例1の容量維持率よりも高いことをわかる。図3Bから、実施例1の電池変形率が比較例1の電池変形率よりも低いことをわかる。
【0085】
図3Cは、本発明の実施例10の負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。図3Cから分かるように、当該負極活物質のX線回折パターンにおける2θが約28.0°~29.0°の範囲内にある最大強度値をIとし、2θが約20.5°~21.5°の範囲内にある最大強度値をIとし、IとIが約0<I/I1≦約1を満たす。I/Iの値の大きさが材料不均化の影響の程度を反映する。I/Iの値が大きいほど、負極活物質内のナノケイ素結晶粒子のサイズが大きくなる。I/Iの値が1より大きい場合、負極活物質がリチウムを挿入する中で、局所領域の応力が急激に増加することにより、サイクル中に負極活物質の構造劣化を引き起こす。なお、ナノ結晶分布の生成により、イオン拡散中に結晶粒界拡散の能力が影響を受ける。本発明者は、I/Iの値が0<I/I1≦Iを満たす場合、負極活物質が良好なサイクル特性を有するとともに、それから調製されるリチウムイオン電池が良好な抗膨張特性をすることを見出す。
【0086】
図3Dは、本発明の比較例4の負極活物質のX線回折(XRD)パターンを示す。図3Dから分かるように、比較例4の負極活物質のI/Iが明らかに1より大きい。実施例1の負極活物質と比較して、比較例4の負極活物質はサイクル特性が劣り、それから調製されるリチウムイオン電池の膨張率が高く、かつレート特性が劣る。
【0087】
図4は、本発明の1つの実施例に係る負極活物質の構造の模式図を示す。そのうち、内層1がケイ素複合化物マトリックスであり、外層2が炭素材料を含む酸化物MeO層である。
【0088】
ケイ素複合化物マトリックスを被覆する酸化物MeO層は、HFトラップ剤として機能しうる。前記酸化物が電解液におけるHFと反応することができ、それにより、サイクル中での電解液におけるHFの含有量を減らし、ケイ素材料の表面に対するHFのエッチングを減らすことにより、材料のサイクル特性をさらに向上する。酸化物MeO層に一定量の炭素をドープすることで、負極活物質の導電性が向上し、サイクル中の分極が減少することができる。
【0089】
図5は、本発明の別の実施例に係る負極活物質の構造の模式図を示す。そのうち、内層1がケイ素複合化物マトリックスであり、中間層2が炭素材料を含む酸化物MeO層であり、外層3が炭素材料を含む重合体層である。本発明の負極活物質が、MeO層を有せず、ケイ素複合化物マトリックスおよび重合体層のみを有することができる。すなわち、本発明の重合体層はケイ素複合化物マトリックスの表面に直接被覆することができる。
【0090】
カーボンナノチューブ(CNT)を含む重合体層が負極活物質の表面に被覆することにより、重合体を利用してCNTを負極活物質の表面に拘束することができ、それによって、負極活物質の表面の界面安定性を向上し、ケイ素系粒子のズレを抑制するのに有利であり、それにより、サイクル特性を向上し、変形を改善する。
【0091】
ある実施例において、前記負極活物質層はバインダーを含む。ある実施例において、前記バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、またはナイロンを含むが、これらに限定されない。
【0092】
ある実施例において、前記負極活物質層が導電材料を含む。ある実施例において、前記導電材料は天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、またはポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0093】
ある実施例において、前記集電体は銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、導電性金属を覆った重合体基板を含むが、これらに限定されない。
【0094】
ある実施例において、前記負極は、溶媒で活物質材料、導電材料とバインダーを混合して、活物質材料組成物を調製して、当該活物質材料組成物を集電体に塗工する方法により得られる。
【0095】
ある実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0096】
二、正極
本発明の実施例に使用される正極の材料、構造およびその製造方法は、先行技術に開示されたあらゆる技術を含む。ある実施例において、正極は米国特許出願US9812739Bに記載されたものであり、その全体を引用するように本明細書に組み込まれる。
【0097】
ある実施例において、正極は集電体および当該集電体上に設けられる正極活物質材料層を含む。
【0098】
ある実施例において、正極活物質材料はコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)三元系材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO)又はマンガン酸リチウム(LiMn)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
ある実施例において、正極活物質材料層はバインダーをさらに含み、かつ任意に導電材料を含む。バインダーは、正極活物質材料の粒子同士の結合を高め、かつ正極活物質材料と集電体の結合を高めることができる。
【0100】
ある実施例において、バインダーは、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、またはナイロンなどを含むが、これらに限定されない。
【0101】
ある実施例において、導電材料は、炭素による材料、金属による材料、導電重合体およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ある実施例において、炭素による材料は天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー或いはこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。ある実施例において、金属による材料は、金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム又は銀からなる群から選ばれる。ある実施例において、導電重合体はポリフェニレン誘導体である。
【0102】
ある実施例において、集電体はアルミニウムを含んでもよいが、これに限定されない。
【0103】
正極は本分野の公知の調製方法により調製することができる。例えば、正極は、溶媒で活物質材料、導電材料及びバインダーを混合して、活物質材料組成物を調製して、当該活物質材料組成物を集電体に塗工する方法により得られる。ある実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0104】
三、電解液
本発明の実施例に使用される電解液が先行技術において既知の電解液であってもよい。
【0105】
ある実施例において、前記電解液は有機溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含む。本発明の電解液に含まれる有機溶媒は、電解液の溶媒として使用される先行技術における既知のあらゆる有機溶媒であってもよい。本発明の電解液に使用される電解質は、特に制限されなく、先行技術における既知のあらゆる電解質であってもよい。本発明の電解液に含まれる添加剤は、電解液の添加剤として使用される先行技術における既知のあらゆる添加剤であってもよい。
【0106】
ある実施例において、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート、エチルプロピオネートを含むが、これらに限定されない。
【0107】
ある実施例において、前記リチウム塩は、有機リチウム塩または無機リチウム塩の少なくとも一種を含む。
【0108】
ある実施例において、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、リチウムビス(オキサラート)ホウ酸LiB(C(LiBOB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。
【0109】
ある実施例において、前記電解液中のリチウム塩の濃度が約0.5~3mol/L、約0.5~2mol/Lまたは約0.8~1.5mol/Lである。
【0110】
四、セパレーター
ある実施例において、正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレーターが設けられている。本発明の実施例に使用されるセパレータの材料と形状は特に制限されなく、先行技術に開示された任意のものであってもよい。ある実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定である材料から形成された重合体または無機物などを含む。
【0111】
例えば、セパレーターが基材層および表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、膜または複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。
【0112】
基材層の少なくとも一つの表面上に表面処理層が設けられており、表面処理層は、重合体層または無機物層であってもよく、重合体と無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0113】
無機物層は、無機粒子とバインダーを含み、無機粒子は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムからなる群より選ばれる一種または複数の種類の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる一種または複数の種類の組み合わせである。
【0114】
重合体層は、重合体を含み、重合体の材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルの重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン又はポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0115】
五、電気化学装置
本発明の実施例は電気化学装置を提供し、前記電気化学装置は電気化学反応が発生する任意の装置を含む。
【0116】
ある実施例において、本発明の電気化学装置は、金属イオンを吸蔵や放出可能な正極活物質を有する正極、本発明の実施例に記載の負極、電解液、および正極と負極の間に設けられるセパレータを含む。
【0117】
ある実施例において、本発明の電気化学装置は、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはコンデンサを含むが、これらに限定されない。
【0118】
ある実施例において、前記電気化学装置は、リチウム二次電池である。
【0119】
ある実施例において、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池またはリチウムイオン重合体二次電池を含むが、これらに限定されない。
【0120】
六、電子装置
本発明の電子装置は、本発明の実施例に記載の電気化学装置を使用したあらゆる装置であることができる。
【0121】
ある実施例において、前記電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0122】
以下では、リチウムイオン電池を例として挙げて、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製を説明し、当業者は、本発明に記載された調製方法が例示であるだけで、他のあらゆる好適な調製方法が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【実施例
【0123】
以下では、本発明によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例については、説明して性能評価を行う。
【0124】
一、負極活物質の性能評価方法
1、負極活物質の粉末特性の測定方法
(1)粉末粒子のミクロ形態の観察:走査型電子顕微鏡で粉末のミクロ形態を観察することで、材料表面の被覆状況を確認する。使用された測定機器はOXFORD EDS(X-max-20mm)であり、加速電圧は15KVであり、焦点距離を調整し、50Kの観察倍率から高倍率で観察し、500~2000という低い倍率で粒子の凝集の様子を主に観察した。
【0125】
(2)平均球形度の測定:Malvern自動画像式粒度分布測定装置を使用して特定の数(5000を超える)の分散粒子のイメージをキャプチャし、処理してから、イメージに指向されたラマン分光法(MDRS)により、粒子のミクロ構造と形態を正確に分析して、すべての粒子の最長直径と最短直径を得て、各粒子の最長直径に対する最短直径の比の値を計算して各粒子の球形度を得て、すべての粒子の球形度の平均値を計算して、平均球形度とした。
【0126】
(3)比表面積の測定:一定の低温で、異なる相対圧力で固体表面へ気体の吸着量を測定した後、Brunauer-Emmett-Teller吸着理論とその公式(BET公式)に基づいて、試料の単分子層吸着量を求めることで、固体の比表面積を計算した。
粉末サンプル約1.5~3.5gを秤量し、TriStar II 3020の測定用サンプル管に入れ、約200℃で120min脱気した後、測定を行った。
【0127】
(4)粒度の測定:50mlのクリーンビーカーに粉末サンプル約0.02gを添加し、脱イオン水約20mlを加え、さらに、数滴の1%の界面活性剤を滴下し、粉末を完全に水中に分散させ、120Wの超音波洗浄機で5分超音波処理し、MasterSizer 2000により、粒度分布を測定した。
【0128】
(5)炭素含有量の測定:サンプルを酸素リッチで高周波炉で高温加熱して燃焼させて、炭素と硫黄をそれぞれ二酸化炭素と二酸化硫黄に酸化させ、当該気体を処理した後、対応する吸収池に入り、対応する赤外線輻射を吸収し、検出器により対応するシグナルに変換された。このシグナルを、コンピュータにより採取し、直線性校正を行った後、二酸化炭素および二酸化硫黄の濃度と比例する数値に変換され、そして分析過程の全体の数値を累加して、分析が完了した後、コンピュータでこの累加された値を重量の値で割り、校正係数をかけて、空白を引いて、サンプルの炭素、硫黄の含有量の百分率を得た。高周波赤外線炭素硫黄分析装置(Shanghai Dekai Instrument Co.,Ltd製HCS-140)でサンプルの試験を行った。
【0129】
(6)XRDの測定:サンプル1.0~2.0gを秤量し、ガラスサンプルホルダーの溝に注いで、ガラス板で圧密し、磨いて平らにした。JJS K 0131-1996「X線回折分析の一般規則」に従い、X線回折装置(ブルック、D8)を使用して測定を行い、測定電圧が40kVであり、電流が30mAであり、走査範囲が10~85°であり、走査のステップ幅が0.0167°であり、各ステップ幅で設定された時間が0.24sであり、XRD回折パターンが得られた。図より、2θが28.4°にある最大強度値Iおよび2θが21.0°にある最大強度値Iを得て、それにより、I/Iを計算した。
【0130】
(7)金属元素の測定:一定量のサンプルを秤量し、一定量の濃硝酸を加えて、マイクロウェーブ分解を行った後、溶液が得られた。得られた溶液と濾過残留物を数回洗浄し、一定の体積に定容し、ICP-OESでその中の金属元素のプラズマ強度を測定し、測定された金属の検量線により溶液中の金属含有量を計算することにより、材料に含まれる金属元素の量を計算した。
【0131】
(8)負極の孔隙率の測定:パンチプレスを使用して負極を13mmの小さいウェーハに打ち抜き、万分の一のマイクロメータ(Ten-thousandth micrometer)を使用して小さいウェーハの厚さを測定した。一定数量の小さいウェハをAccuPyc 1340装置のサンプルコンパートメントに入れ、ヘリウムガスを使用してサンプルを30回パージし、プログラムに従ってヘリウムガスを通す。サンプルコンパートメント内の圧力を測定することにより、ボイル法則PV=nRTにより、サンプルコンパートメント内の真体積を計算した。測定が完了した後、小さいウェーハを計数し、サンプルの見かけ体積を計算した。1-真体積/見かけ体積により、サンプルの孔隙率を得た。
【0132】
(9)負極の圧縮密度の測定方法:打ち抜き機を使用して、負極に面積Sの小さいウェーハを打ち抜き、その質量をMとして秤量して、その厚さを万分の一の万分の一のマイクロメータでHとして測量し、同じ打ち抜き機を使用して集電体を同じ面積に打ち抜き、その質量をMとして秤量して、(M-M)/(H-H)/Sを負極の圧縮密度とした。
【0133】
(10)前記ケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数(以下、ケイ素系粒子周辺のグラファイト粒子数と略称する)Nが6~17であることを満たすケイ素系粒子の百分率の測定方法:
負極の断面をAr粒子で研磨してから、SEMを使用して、ケイ素系粒子のエッジから集電体および負極表面までの最も小さい距離が約6μm以上のケイ素系粒子において、少なくとも30個ケイ素系粒子を1回に撮影し、前記少なくとも30個のケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約0~6μmの範囲内に存在するグラファイト粒子数Nを記録した。ここで、グラファイト粒子数が単独のグラファイト粒子数、すなわち一次グラファイト粒子数を指す。グラファイト粒子が凝集体を形成する場合、計算されたグラファイト粒子数は、当該凝集体中における上記の要件を満たす個々のグラファイト粒子数であり、凝集体を1つの粒子と見なすことではない。
【0134】
前記少なくとも30個のケイ素系粒子に占めるNが6~17であることを満たすケイ素系粒子数の百分率を計算した。観察された領域のケイ素系粒子数は30未満の場合、他の領域に移動して撮影することができる。上記のN個のグラファイト粒子の各々は、その全部が前記少なくとも30個のケイ素系粒子のエッジからの垂直距離が約0~6μmの範囲内にあってもよく、上記のN個のグラファイト粒子において、いくつかの各々は、その全部が上記の範囲内にあり、他のグラファイト粒子の各々は、その一部のみが上記の範囲内にあってもよい。
【0135】
次の表における各物質の重量比率は、負極活物質の合計重量に基づいて計算して得られる。
【0136】
二、負極活物質の電気性能測定方法
1、ボタン式電池の測定方法
乾燥したアルゴンガス雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比約1:1:1)を混合してなる溶剤に、LiPF(濃度が約1.15mol/Lである)を加えて、均一に混合した後、約7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに添加し、そして、均一に混合し、電解液を得た。
【0137】
実施例および比較例で得られた負極活物質、導電性カーボンブラックおよびバインダーであるPAA(変性ポリアクリル酸、PAA)を、約80:10:10の重量比で脱イオン水に加え、攪拌してスラリーを形成し、ドクターブレードにより塗工し、厚さが約100μmの塗工層を形成し、真空乾燥箱で約85Cにて約12時間乾燥させ、乾燥環境で打ち抜き機を使用して、直径が約1cmウェーハに切り出し、グローブボックスで金属リチウム片を対極とし、ceglard複合膜をセパレータとして選択し、電解液を加えて、ボタン式電池に組み立てた。ランド(LAND)シリーズ電池測定システムにより、電池の充放電の測定を行って、その充電容量および放電容量を測定した。
【0138】
まず、0.05Cで0.005Vまで放電を行い、5分間放置した後、50μAで0.005Vまで放電を行い、さらに5分間放置した後、10μAで0.005Vまで放電を行い、材料の初回のリチウム挿入容量を得て、その後、0.1Cで、2Vまで充電を行い、初回の脱リチウム容量を得た。最終的には、初回のリチウム脱離容量と初回のリチウム挿入容量との比は、材料の初回効率である。
【0139】
2、全電池の測定
(1)リチウムイオン電池の調製
(正極の調製)
LiCoO、導電性カーボンブラック、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、約95%:2.5%:2.5%の重量比でN-メチルピロリドン溶媒系に十分に撹拌し、均一に混合し、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、乾燥し、冷間圧延して、正極を得た。
【0140】
(負極の調製)
グラファイト、実施例及び比較例で調製されたケイ素系負極活物質、導電剤(導電性カーボンブラック、Super P(R)(登録商標))及びバインダーであるPAAを、約95%:1.2%:5%:3.8%の重量比で混合し、適量の水を添加して、固形分の含有量が約30wt%~60wt%になるように混練した。適量の水を添加して、スラリーの粘度が約2000~3000Pa・sとなるように調整して、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを負極集電体である銅箔上に塗布し、乾燥し、冷間圧延して、負極を得た。
【0141】
(電解液の調製)
乾燥したアルゴンガス雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比約1:1:1)を混合してなる溶剤に、LiPF(濃度が約1.15mol/Lである)を加えて、均一に混合した後、約7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに添加し、そして、均一に混合し、電解液を得た。
【0142】
(セパレーターの調製)
PE多孔質重合体フィルムをセパレーターとする。
【0143】
(リチウムイオン電池の調製)
セパレータが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレーター、負極を順に積層する。巻いてベアセルを得た。ベアセルを外装に入れ、電解液を注入し、封止した。形成(formation)、脱気、トリミング等のプロセスを経て、リチウムイオン電池を得た。
【0144】
(2)サイクル特性の測定
測定温度が25C/45Cであり、0.7Cで4.4Vまで定電流充電し、0.025Cまで定電圧充電し、5分間静置した後、0.5Cで3.0Vまで放電した。このステップで得られた容量を初期容量とし、0.7C充電/0.5C放電で、サイクル測定を行う。各サイクルの容量と初期容量との比により、容量の減衰曲線を作成した。25℃で容量維持率が90%となるまでサイクルするサイクル数を、電池の室温サイクル特性とし、45℃で容量維持率が80%となるまでサイクルするサイクル数を、電池の高温サイクル特性とし、上記2つの場合でのサイクル数を比較することにより、材料のサイクル特性を比較した。
【0145】
(3)放電レートの測定
25℃で0.2Cで3.0Vまで放電を行い、5分間静置して、0.5Cで4.45Vまで充電を行い、0.05Cまで定電圧充電した後、5分間静置して、放電レートを調整し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cで、放電の測定を行い、それぞれ放電容量を得て、各レートで得られた容量と0.2Cで得られた容量とを比較し、2Cでと0.2Cでの比を比較することでレート特性を比較した。
【0146】
(4)満充電された電池の変形率の測定
半充電時(50%充電状態(SOC))の新品電池の厚みをマイクロメーターで測定し、400サイクルをした時、電池が満充電(100%SOC)となる状態で、このときの電池の厚みをマイクロメーターでさらに測定し、それを初期半充電時(50%SOC)の新品電池の厚みと比較し、このときの満充電(100%SOC)された電池の変形率を得た。
【0147】
三、負極の組成および性能測定結果
1、負極活物質として、市販品であるケイ素酸化物SiO(0.5<x<1.5、D50=約5.3μm)およびグラファイト粒子を選択して、上記の方法に従い、実施例1~3および比較例1の負極を調製した。
【0148】
表1-1は、実施例1~3および比較例1の負極の組成を示した。
【表1】
【0149】
表1-2は、実施例4~6および比較例2の負極の組成を示した。
【表2】
【0150】
表1-3は実施例7~9および比較例3の負極の組成を示した。
【表3】
【0151】
表1-4は、実施例1~9および比較例1~3におけるリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表4】
【0152】
実施例1~3と比較例1の性能測定結果から分かるように、グラファイト粒子数Nが6~17であることを満たすSiO粒子から調製されるリチウムイオン電池は、容量維持率が、Nが18~22であるSiO粒子から調製されるリチウムイオン電池より高く、かつ変形率が、Nが18~22であるSiO粒子から調製されるリチウムイオン電池より小さい。
【0153】
負極におけるSiO粒子の周辺のグラファイト粒子数は、グラファイト粒子の粒子径とSiO粒子の粒子径との対応するマッチング関係を反映する。同一のSiO粒子の場合、グラファイト粒子の粒子径が大きいほど、SiO粒子の周辺の特定の範囲内でのグラファイト粒子数が少なくなる。逆に、グラファイト粒子の粒子径が小さいほど、SiO粒子の周辺の特定の範囲内でのグラファイト粒子数が多くなる。グラファイト粒子数が多すぎると、SiO粒子は、グラファイト粒子がお互いに積み上げて形成された隙間に嵌め込まれにくく、物理的転位効果が形成することができないから、負極の最大圧縮密度が低下して、それにより、負極活物質と電解液との接触面積が大きくなり、より多い固体電解質界面膜(solid electrolyte interphase、SEI)が生じることを引き起こし、材料の初回効率と容量維持率を低下する。実施例4~6と比較例2の測定結果、および実施例7~9と比較例3の測定結果は、グラファイト粒子の平均球形度とSiO粒子の平均球形度の差が異なる場合、グラファイト粒子数Nが6~17であることを満たすSiO粒子から調製されたリチウムイオン電池の容量維持率および耐変形性は、いずれも、Nが18~22であるSiO粒子から調製されたリチウムイオン電池より優れることを更に説明した。
【0154】
2、以下の方法に従って実施例10~12および比較例4の負極を調製した:
(1)二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末をモル比約1:1で、それぞれ機械的乾式混合とボールミリング混合により混合し、混合材料が得られ、
(2)Ar雰囲気下、約10-3~10-1kPaの圧力範囲で、約1100~1550℃の温度範囲内で、前記混合材料を約0.5~24h加熱して、ガスが得られ、
(3)得られたガスを凝結して固体が得られ、
(4)前記固体を粉砕して篩い分け、
(5)約400~1200℃の温度範囲内で、前記固体を約1~24h熱処理し、熱処理した前記固体を冷却した後、ケイ素系負極活物質として、ケイ素酸素材料SiOが得られ、および
(6)上記の方法に従って実施例10~12および比較例4の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であった。
【0155】
表2-1はステップ(1)~(5)の具体的なプロセスパラメータを示した。
【表5】
【0156】
表2-2は実施例10~12および比較例4におけるケイ素系負極活物質とグラファイト粒子の性能パラメータを示した。
【表6】
【0157】
表2-3は実施例10~12および比較例4におけるリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表7】
【0158】
実施例10~12および比較例4の性能測定結果から分かるように、約70%のSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、約0<I/I1≦約1を満たすケイ素酸化物SiOを選択して調製されるリチウムイオン電池のサイクル特性、耐変形性、および、レート特性が、いずれも約1<I/Iを満たすケイ素酸化物SiOを選択して調製されるリチウムイオン電池より優れる。
【0159】
3、以下の方法に従って実施例13~15および比較例5と6の負極を調製した:
(1)市販品であるケイ素酸化物SiOを篩い分けて、分級処理することにより、実施例13~15および比較例5と6のケイ素系負極活物質が得られ、
(2)上記の方法に従って、実施例13~15および比較例5と6の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0160】
表3-1は実施例13~15および比較例5と6におけるケイ素系負極活物質の性能パラメータを示した。
【表8】
【0161】
表3-2は実施例13~15および比較例5と6の負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表9】
【0162】
実施例13~15および比較例5と6の性能測定結果から分かるように、約70%のSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たすケイ素酸化物を選択して調製されるリチウムイオン電池のサイクル特性、耐変形性、および、レート特性は、約Dn10/Dv50<約0.3または約0.6<Dn10/Dv50を満たすケイ素酸化物を選択して調製されるリチウムイオン電池より優れる。
【0163】
4、以下の方法に従って実施例16~19の負極を調製した:
(1)市販品であるケイ素酸化物SiO(0.5<x<1.5、D50=約5μm)、炭素前駆体および酸化物前駆体MeTを、エタノール約150mLおよび脱イオン水約1.47mLに加え、均一な懸濁液が形成されるまで4時間攪拌し、
(2)前記懸濁液をスプレー乾燥して(入口温度が約220℃であり、出口温度が約110℃である)、粉末が得られ、
(3)前記粉末を約250~900℃で約0.5~24h焼結して、ケイ素系負極活物質として、表面に酸化物MeO層を有するケイ素酸化物が得られ、および
(4)上記の方法に従って、実施例16~19の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるケイ素系粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0164】
表4-1は、実施例16~19における酸化物MeO被覆層を有するケイ素酸化物SiOを調製するためのプロセス条件を示した。
【表10】
【0165】
表4-2は実施例1および実施例16~19におけるケイ素系負極活物質の組成および性能パラメータを示した。
【表11】
【0166】
表4-3は、実施例1および実施例16~19における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表12】
【0167】
実施例1および実施例16~19の性能測定結果から分かるように、約70%のSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、ケイ素酸化物を、酸化物MeO層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0168】
5、以下の方法に従って、実施例20~25の負極を調製した:
(1)炭素材料(単層カーボンナノチューブ(SCNT)および/または多層カーボンナノチューブ(MCNT))および重合体を水に高速で約12h分散させて、均一に混合されたスラリーが得られ、
(2)市販品であるケイ素酸化物SiO(0.5<x<1.5、DV50=約5μm)を、(1)で得られた均一に混合されたスラリーに加え、約4時間攪拌して均一に混合された分散液が得られ、
(3)前記分散液をスプレー乾燥して(入口温度が約200℃であり、出口温度が約110℃である)、ケイ素系負極活物質として、粉末が得られ、および
(4)上記の方法に従って、実施例20~25の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0169】
表5-1は実施例20~25における重合体被覆層を有するケイ素酸化物SiOの組成を示した。
【表13】
【0170】
表5-1における英語の略称の意味は、以下のように示す。
SCNT:単層カーボンナノチューブ
MCNT:多層カーボンナノチューブ
CMC-Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PAANa:ポリアクリル酸ナトリウム
【0171】
表5-2は、実施例1および実施例20~25の負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表14】
【0172】
実施例1および実施例20~25の性能測定結果から分かるように、SiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、ケイ素酸化物を、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0173】
6、実施例26~28および比較例7と8の負極活物質を調製した:
(1)分級後の熱処理温度が約500℃であり、時間が約2時間である以外、実施例11の調製方法と同様にして、I/I値が約0.5であるケイ素系負極活物質を調製し、
(2)さらに分級処理して、実施例26~28および比較例7と8のケイ素系負極活物質が得られ、および
(3)上記の方法に従って、実施例26~28および比較例7と8の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0174】
表6-1は実施例26~28および比較例7と8におけるケイ素系負極活物質の性能パラメータを示した。
【表15】
【0175】
表6-2は実施例26~28および比較例7と8の負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表16】
【0176】
実施例26~28および比較例7と8の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、及び約0<I/I1≦約1を満たす場合、約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たすケイ素酸化物を選択して調製される負極を有するリチウムイオン電池のサイクル特性、耐変形性、および、レート特性は、Dn10/Dv50<約0.3または約0.6<Dn10/Dv50を満たすケイ素酸化物を選択して調製される負極を有するリチウムイオン電池より優れる。
【0177】
7、以下の方法に従って実施例29~32の負極を調製した:
(1)実施例11で得られたケイ素系負極活物質を、更に、酸化物MeO被覆層で被覆し、実施例29~32のケイ素系負極活物質が得られ、実施例29~32の被覆方法は、それぞれ実施例16~19の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例29~32の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0178】
表7-1は実施例11および実施例29~32におけるケイ素系負極活物質の組成および性能パラメータを示した。
【表17】
【0179】
表7-2は、実施例11および実施例29~32における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表18】
【0180】
実施例11および実施例29~32の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、及び約0<I/I1≦約1を満たす場合、ケイ素酸化物を酸化物MeO層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0181】
8、以下の方法に従って実施例33~40の負極を調製した:
(1)実施例11で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例33~40のケイ素系負極活物質が得られ、実施例33~40の被覆方法は、それぞれ実施例20~25の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って、実施例33~40負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0182】
表8-1は実施例33~40における重合体被覆層を有するケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表19】
【0183】
表8-2は、実施例11および実施例33~40における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表20】
【0184】
実施例11および実施例33~40の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0<I/I1≦約1を満たす場合、ケイ素酸化物を、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0185】
9、以下の方法に従って実施例41~45の負極を調製した:
(1)実施例14で得られたケイ素系負極活物質を、更に、酸化物MeO被覆層で被覆し、実施例41~45のケイ素系負極活物質が得られ、実施例41~45の被覆方法は、それぞれ実施例16~19の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例41~45の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子は表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0186】
表9-1は実施例14および実施例41~45におけるケイ素系負極活物質の組成および性能パラメータを示した。
【表21】
【0187】
表9-2は、実施例14および実施例41~45における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表22】
【0188】
実施例14および実施例41~45の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、ケイ素酸化物を、酸化物MeO層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0189】
10、以下の方法に従って実施例46~52の負極を調製した:
(1)実施例14で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例46~52のケイ素系負極活物質が得られ、実施例46~52の被覆方法は、それぞれ実施例20~25の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例46~52の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0190】
表10-1は実施例14および実施例46~52におけるケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表23】
【0191】
表10-2は、実施例14および実施例46~52における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表24】
【0192】
実施例14および実施例46~52の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、ケイ素酸化物を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0193】
11、以下の方法に従って実施例53~62の負極を調製した:
(1)実施例16で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例53~62のケイ素系負極活物質が得られ、実施例53~62の被覆方法は、それぞれ実施例53~62の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例53~62の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0194】
表11-1は実施例16および実施例53~62におけるケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表25】
【0195】
表11-2は、実施例16および実施例53~62における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表26】
【0196】
実施例16および実施例53~62の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、表面に酸化物MeO層を有するケイ素酸化物を、更にカーボンナノチューブを含む重合体層で被覆さすることにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0197】
12、以下の方法に従って実施例63~67の負極を調製した:
(1)実施例27で得られたケイ素系負極活物質を、更に酸化物MeO被覆層で被覆し、実施例63~67のケイ素系負極活物質が得られ、実施例63~67の被覆方法は、それぞれ実施例16~19の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例63~67の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0198】
表12-1は実施例27および実施例63~67におけるケイ素系負極活物質の組成および性能パラメータを示した。
【表27】
【0199】
表12-2は、実施例27および実施例63~67における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表28】
【0200】
実施例27および実施例63~67の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0<I/I1≦約1且約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、ケイ素酸化物を、酸化物MeO層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0201】
13、以下の方法に従って実施例68~77の負極を調製した:
(1)実施例27で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例68~77のケイ素系負極活物質が得られ、実施例68~77の被覆方法は、それぞれ実施例20~25の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例68~77の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0202】
表13-1は実施例27および実施例68~77におけるケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表29】
【0203】
表13-2は、実施例27および実施例68~77における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表30】
【0204】
実施例27および実施例68~77の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0<I/I1≦約1且約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、ケイ素酸化物を、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性および耐変形性をさらに向上させることができる。
【0205】
14、以下の方法に従って実施例78~86の負極活物質を調製した:
(1)実施例45で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例78~86のケイ素系負極活物質が得られ、実施例78~86の被覆方法は、それぞれ実施例20~25の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例78~86の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0206】
表14-1は実施例45および実施例78~86におけるケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表31】
【0207】
表14-2は、実施例45および実施例78~86における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表32】
【0208】
実施例45および実施例78~86の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、表面に酸化物MeO層を有するケイ素酸化物を、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性をさらに向上させることができるが、電池変形率が大幅に変化していない。
【0209】
15、以下の方法に従って実施例87~94の負極活物質を調製した:
(1)実施例67で得られたケイ素系負極活物質を、更に、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆し、実施例87~94のケイ素系負極活物質が得られ、実施例87~94の被覆方法は、それぞれ実施例20~25の被覆方法と同じであり、および
(2)上記の方法に従って実施例87~94の負極を調製し、ここで、ケイ素系粒子の合計数に占めるSiO粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有するケイ素系粒子の百分率が約70%であり、ケイ素系粒子の平均球形度およびグラファイト粒子の平均球形度が、それぞれ約0.92および約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【0210】
表15-1は実施例67および実施例87~94におけるケイ素系負極活物質の組成を示した。
【表33】
【0211】
表15-2は、実施例67および実施例87~94における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表34】
【0212】
実施例67および実施例87~94の性能測定結果から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有すること、かつ約0<I/I1≦約1且約0.3Dn10/Dv50約0.6を満たす場合、表面に酸化物MeO層を有するケイ素酸化物を、カーボンナノチューブを含む重合体層で被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および/またはレート特性をさらに向上させることができるが、電池変形率が大幅に変化していない。
【0213】
16、負極活物質として、市販品であるケイ素酸化物SiO(0.5<x<1.5、D50=約5.3μm)およびグラファイト粒子(D50=約14μm)を選択して、上記の方法に従って、実施例95~98および比較例9~11の負極を調製した。
【0214】
表16-1は、実施例95と96および比較例9における負極の組成を示し、ここで、実施例1と95と96および比較例9におけるグラファイト粒子の平均球形度が約0.68であり、グラファイト粒子が表2-2に記載のグラファイト粒子と同じである。
【表35】
【0215】
表16-2は、実施例1と97と98および比較例9と10における負極の組成を示し、ここで、SiO粒子の平均球形度が約0.92であり、D50が約5.3μmである。
【表36】
【0216】
表16-3および表16-4は、実施例1と95~98および比較例9~11における負極から調製されたリチウムイオン電池の性能測定結果を示した。
【表37】
【表38】
【0217】
実施例1、95、96と比較例9との比較、および、実施例1、97、98と比較例10、11との比較から分かるように、約70%のSiOx粒子の周辺に8~14個のグラファイト粒子を有することを満たす場合、ケイ素系粒子の平均球形度とグラファイト粒子の平均球形度の差の値が約0.1~0.3の範囲内にあると、それから調製されるリチウムイオン電池のサイクル特性、耐変形性、およびレート特性は、ケイ素系粒子の平均球形度とグラファイト粒子の平均球形度の差の値が約0.1~0.3の範囲以外にあるリチウムイオン電池より大幅に優れる。
【0218】
なぜなら、ケイ素系粒子の平均球形度とグラファイト粒子の平均球形度の差のが約0.1~0.3の範囲内にあると、SiO粒子がリチウムを挿入して膨張するにより発生する応力を効果的かつ均一に分散させ、及び、膨張および収縮中のSiO粒子の粒子変位を低減させることができ、SiO粒子の表面で亀裂の発生を軽減し、SiO粒子の表面でSEIの沈積こと、及び、SiO粒子の表面が腐食される速度を低下させることもできる。
【0219】
明細書全体では、「ある実施例」、「実施例の一部」、「1つの実施例」、「他の例」、「例」、「具体例」、または「部分例」の引用については、本発明の少なくとも1つの実施例又は例は、当該実施例又は例に記載の特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の様々な場所に記載された、例えば「ある実施例において」、「実施例において」、「1つの実施例において」、「他の例において」、「例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明の同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、あらゆる好適な形態で組み合わせることができる。
【0220】
例示的な実施例が開示および説明されるが、当業者は、上述実施例が本発明を限定するものとして解釈されることができなく、かつ、本発明の技術思想、原理、および範囲から逸脱しない場合に実施例を変更、置換および変更することができること、を理解すべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5