(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】水性芳香剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20221117BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221117BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221117BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221117BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20221117BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20221117BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20221117BHJP
【FI】
A61L9/01 X
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/06
A61Q13/00 102
C11B9/00 Z
C09K23/52
(21)【出願番号】P 2021545789
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020015057
(87)【国際公開番号】W WO2020163097
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウィルソン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ドラッカー,ナタリー エム.
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-055310(JP,A)
【文献】特表2004-520457(JP,A)
【文献】特開2000-281534(JP,A)
【文献】米国特許第5374614(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0369121(US,A1)
【文献】米国特許第6403109(US,B1)
【文献】米国特許第5468725(US,A)
【文献】国際公開第2007/92085(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/06
A61K 8/81
A61K 8/34
A61Q 13/00
C09K 23/52
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型マクロエマルション組成物であって、
組成物の総重量で
30%~70%の水、
4.5%~18.5%のアクリラート/VAコポリマー、
0.25%~1.0%のアクリラートコポリマー、
アクリラート/VAコポリマーを可塑化できる1種以上の材料
を含む水相であって、
アクリラート/VAコポリマーと全可塑剤との比が1:1~10:1の範囲である水相、
組成物の総重量で3%~30%の芳香成分を含む油相並びに
3%以下の界面活性剤及び/又は乳化剤
を含む、水中油型マクロエマルション組成物。
【請求項2】
アクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーとの比が10:1~30:1である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項3】
アクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーとの比が15:1~25:1である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項4】
芳香成分が、匂い若しくは香りを付与する、又は匂いを打ち消すという唯一の目的のために添加される1種以上のエッセンシャルオイル、留出物、抽出物、合成物及び他の成分を含む、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項5】
アクリラート/VAコポリマーを可塑化できる1種以上の材料が、グリコール及び/又はアルコールを含む、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項6】
組成物の総重量で5%以下のアルコールを含む、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物の分野に含まれ、より具体的には、液体水性芳香剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体芳香剤組成物の圧倒的多数は、香油の形態で組成物に通常含まれる芳香成分用の可溶化剤として、アルコール、典型的にはエタノールを使用している。エタノールの濃度が体積で50から95%の間である製品が一般的である。エタノール可溶化剤を使用すると、透明な芳香剤組成物になる。それにもかかわらず、エタノールの使用には欠点がある。それには、急性接触皮膚炎が含まれるが、これに限定されない。更に、エタノールは、揮発性有機化合物(VOC)に分類される。かなりの期間、周囲環境におけるVOCのレベルを低下させるための努力がなされてきた。他の欠点は、宗教的な理由でアルコールの使用が厳しく規制又は禁止されている文化では明らかである。
【0003】
芳香剤製品からアルコールを削減又は排除するための努力がなされてきた。例えば、水ベースの芳香剤製品が公知であるが、性能及び美観に関する理由から、広く受け入れられるようにはなっていない。1つの問題は、芳香を発する成分はその疎水性のために水に不溶の傾向があることである。エマルション組成物を形成することによりこれに対処するための試みがなされてきた。例えば、US4,803,195、US5,374,614、US6,403,109、US6,774,101、US2003/0186836、US2004/0209795、US7,226,901、US7,655,613、US7,846,889、US8,343,521、US9,301,910を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US4,803,195
【文献】US5,374,614
【文献】US6,403,109
【文献】US6,774,101
【文献】US2003/0186836
【文献】US2004/0209795
【文献】US7,226,901
【文献】US7,655,613
【文献】US7,846,889
【文献】US8,343,521
【文献】US9,301,910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多くのエマルション芳香剤組成物には、特有の欠点がある。例えば、界面活性剤の使用量が多すぎると、皮膚への刺激やべたつき感につながり、芳香成分の知覚を変化させる可能性がある。これはとりわけ、比較的高濃度の界面活性剤を使用するマイクロエマルション組成物に当てはまるが、マクロエマルション及びナノエマルションも、同じ問題に直面し得る。結果として、水ベースの芳香剤組成物は一般に、従来のエタノールベースの香料と同じ強度、持続時間及び作用範囲を実現していない。強度の喪失に関しては、水ベースの香料の芳香は、従来の芳香剤ほど強力ではない傾向があることを意味する。持続時間の短縮に関しては、水ベースの芳香剤組成物は、従来のエタノールベースの芳香剤組成物よりも著しく短い時間しか人間の鼻に知覚されないことを意味する。作用範囲は、本明細書において使用した場合、嗅覚線形性と呼ばれることもある。作用範囲の喪失に関しては、皮膚又は他の表面への施用後、何らかの香気が依然として知覚可能であっても、水性ベースの芳香剤組成物から放出される芳香性香調のブレンドが維持されないことを意味する。したがって、エタノールが比較的少量であるが、芳香の完全性(強度、持続時間及び作用範囲)を維持する水性ベースの芳香剤組成物が依然として必要とされている。本発明は、そのような組成物をエマルションの形態で提供する。我々の知る限りでは、先行技術は、本発明の組成物、具体的には、ここで開示するような重量で4.5%~18.5%のアクリラート/VAコポリマー及び、0.25%~1.0%のアクリラートコポリマーを含む水ベースの芳香剤組成物を開示も示唆もしていない。更に、ここで開示するようなこれらの材料の比率も、芳香剤組成物の性能を維持する上でのそれらの有用性も開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるエタノール低減芳香剤組成物は、水性基剤又は送達担体中にアクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーとの特定の組合せを含む。本発明による芳香剤組成物は、製造が容易であり、エマルションの形態であっても芳香の完全性(強度、持続時間及び作用範囲)を持続する水性芳香剤組成物を提供する。本発明の組成物の最も有利な使用は、パルファム、オードパルファム、オードトワレ及びコロンとしてのものである。しかし、本発明は、多くの種類の香気付けした製品、例えば人間又は動物の皮膚及び毛髪に使用されるものや、あらゆる種類の洗浄製品、空気脱臭剤、空気清浄剤などにも用途を見出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
操作例及び比較例を除き、又は明示的に示されていない限り、この記載における材料若しくは反応条件の量若しくは比率、材料の物理的特性及び/又は使用を示す数値は全て、「約」という単語により修飾されているものと理解すべきである。量は全て、特別の定めがない限り、最終組成物の重量パーセントとして提示される。
【0008】
本明細書全体を通して、「フィルム形成剤」又は同様のものは、それを塗布した基材上に、例えば、フィルム形成剤に付随する溶媒が蒸発するか、基材に吸収されるか、且つ/又は基材上で消散した後にフィルムを残すポリマーを指す。
【0009】
「含む(comprise)」は、要素のリストが明示的に示されたものに限定されない場合があることを意味する。
【0010】
「エマルション」は、1種以上の界面活性剤によって促進される、連続(又は外)相における不連続(又は内)相(水中油又は油中水)の安定した分散を意味する。明確にするため、パーソナルケア分野で一般的な3種類の主要なエマルションの定義を提供する。
【0011】
マクロエマルション(通常は単に「エマルション」と呼ばれる)は、速度論的に安定しているが熱力学的に不安定な異方性の二相系であり、それは、連続相中に分散する液滴の形成には高エネルギーの入力を必要とすることを意味する。内相中の液滴の特徴的なサイズに関して、文献は、多くの定義を提案している。国際純正応用化学連合(IUPAC)は、10nm~100μmを推奨している。こうした液滴構造は、合体して連続相から分離することにより時間と共に自然に分解するが、界面活性剤は、油水界面での表面張力を低下させ、マクロエマルションの寿命を延長することができる。
【0012】
マイクロエマルション(ミセルエマルションと呼ばれることもある)は、マクロエマルションとは著しく異なる。マイクロエマルションは、水、油及び比較的高濃度の界面活性剤の等方性の単相系である。マイクロエマルションは熱力学的に安定しており、それは、単純な低エネルギー混合で自然に形成されることを意味する。内相構造は動的であり、常に形状を変化させるが、サイズの範囲は、典型的には約1nm~100nm(IUPAC)である。この小さな粒子サイズのため、マイクロエマルションは一般に半透明である。
【0013】
更に異なるのが、ナノエマルション(ミニエマルション又はサブミクロンエマルションとしても公知)である。マクロエマルションと同様、ナノエマルションは、不連続相の液滴が連続相に分散した二相系である。しかし、ナノエマルションの平均液滴サイズは、直径50nm~1000nmの範囲(IUPAC)である可能性がある。この範囲の下端のナノエマルションは、液滴サイズが可視光の波長より小さいため、半透明である。ナノエマルションは、運動学的に安定しているが熱力学的に不安定であり、界面活性剤によって結びつけなければならない。高エネルギー乳化法、例えばホモジナイザ又は超音波を用いたせん断によって形成し得る。或いは、エネルギーをほとんど必要としない相転換法が存在する。
【0014】
水
本発明の組成物は、水、典型的には重量で全組成物の30%~70%の水を含むが、50%~60%が一般的であると予想される。この量の水は、以下で検討する全ての供給源に由来するもの、例えばVinysol 2140L及びDaitosol 5000ADに含まれるものである。
【0015】
アクリラート/VAコポリマー
本発明の主成分は、アクリラート/VAコポリマー(INCI名)、C15H26O4であり、酢酸エテニル又は2-エチルヘキシルプロパ-2-エノアート(IUPAC名)、CAS番号25067-02-1としても公知である。詳細な情報については、PubChem化合物データベース、CID=168269を参照されたい。
【0016】
【0017】
化粧品では、この材料は多くの場合、バインダー、フィルム形成剤、接着剤及び/又は毛髪固定剤として機能する。水性化粧品系に導入すると、アクリラート/VAコポリマーは、皮膚又は毛髪にフィルムを付与することができる。純粋なアクリラート/VAコポリマーフィルムは、約40℃以上の水ですすぐとフィルムが分解し、表面から除去することが可能である一方、通常の皮膚温度(即ち、36.5~37.5℃)以下の温度ではその完全性を保つような温度依存性を特徴とする。
【0018】
本発明の芳香剤組成物は、典型的には組成物の総重量で4.5%~18.5%、例えば組成物の総重量で7%~16%、例えば9%~14%のアクリラート/VAコポリマーを含む。
【0019】
アクリラート/VAコポリマーは、例えば、Daido Chemical Corp.からVinysol 2140Lとして市販されている。Vinysol 2140Lは、アクリラート/VAコポリマーの46.6%水性混合物である。したがって、Vinysol 2140Lを使用する場合、先に記載したアクリラート/VAコポリマーの濃度を達成するには、Vinysol 2140Lの濃度を組成物の総重量で約10%~40%、例えば15%~35%、例えば20%~30%とすべきである。Vinysol 2140Lは、pHが4.5、粘度が2,000mPa-s、計算されたガラス転移温度(Tg)が-9℃であると報告されている一方、フィルムは、1,200%の破断伸び、及び1.2MPaの破壊強度(厚さ0.1mmに延ばした場合)を呈する。
【0020】
アクリラートコポリマー
本発明の別の主成分は、アクリラート/VAコポリマーよりもTgが低いアクリラートポリマーである。一般に、Tgが低いほど結果として得られるフィルムの柔軟性が高くなる。本発明において、第2の主成分は、アクリラートコポリマー、C14H22O6であり、エチルプロパ-2-エノアート、メチル2-メチルプロパ-2-エノアート又は2-メチルプロパ-2-エン酸(IUPAC名)、CAS番号25133-97-5としても公知である。詳細な情報については、PubChem化合物データベース、CID=168299を参照されたい。様々な種類の化粧品配合物において、アクリラートコポリマーは、フィルム形成剤、毛髪固定剤、バインダー、並びに懸濁剤、増粘剤、帯電防止剤及び接着剤としてのものを含む、多種多様な用途がある。ここで検討する濃度では、アクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーとの組合せは、表面に塗布すると乾燥して疎水性フィルムになる有用な水溶性複合体を形成する。
【0021】
本発明において、アクリラートコポリマーの有用な濃度は、組成物の総重量を基準として0.25%~1.0%、例えば0.35%~0.8%又は例えば0.5%~0.7%である。加えて、アクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーとの重量比が10:1~30:1、好ましくは15:1~25:1の範囲、より好ましくは約20:1である場合の特に良好な結果に注目した。
【0022】
アクリラートコポリマーは、例えば、Daito Kasei Kogyo Co.からDaitosol 5000ADとして市販されている。Daitosol 5000ADは、アクリラートコポリマーの50%水性混合物である。したがって、先に記載したアクリラートコポリマーの濃度を達成するには、Daitosol 5000ADの濃度を組成物の総重量で約0.5%~2%、例えば0.7%~1.6%、例えば1.0%~1.4%とすべきである。Daitosol 5000ADは、pHが5.5~7.5、粘度が50~100mPa-s、ガラス転移温度(Tg)が約-14℃であると報告されている。
【0023】
可塑剤
アクリラート/VAコポリマー-アクリラートコポリマー複合体を更に改質することなく本発明による水性芳香剤組成物を調合することは可能であるが、好ましい組成物は、アクリラート/VAコポリマーを可塑化できる1種以上の材料を水相に含んでもよい。そのような可塑剤は、最終組成物の凝固点を商品の流通及び消費者の使用に適した温度にまで低下させる。更に、そのような可塑剤は、芳香剤組成物を表面に施用する際にアクリラート/VAコポリマー-アクリラートコポリマー複合体から生じるフィルムの空隙率を改変する。一般に、ここで意図される範囲にわたり、水相中の可塑剤が多いほどアクリラート/VAコポリマー-アクリラートコポリマーフィルムに存在する表面細孔のサイズが大きくなる傾向がある。この細孔サイズの制御は、時間の関数としての香気の放出を制御し、組成物中の芳香を発する成分の完全性を維持するための鍵である。それぞれの特定の組成物において、日常実験が可塑剤の最適な量を示唆し得る。しかし、指針として、アクリラート/VAコポリマーと可塑剤との重量比が約1:1であると、優れた結果が得られることを発見した。可塑剤がより少ない場合、例えばアクリラート/VAコポリマー対可塑剤が重量で5:1、又は更には10:1でも有用な結果が得られ得ることが特筆される。アクリラート/VAコポリマーの濃度は重量で4.5%~18.5%であるため、可塑剤の総量は重量で全組成物の約4.5%を超えることはない。
【0024】
有用な可塑剤としては、ジオール(2つのヒドロキシル基を含む化合物)としても公知のグリコールが挙げられる。潜在的に適切なグリコールとしては、ブタンジオール、プロパンジオール及びペンチレングリコールが挙げられる。好ましいのは1,3-プロパンジオールである。
【0025】
他の有用な可塑剤は、重量で最終組成物の約5%までの量の単純な化粧品グレードのアルコール(例えば、エタノール又はイソプロピルアルコール)である。アルコールを含まない組成物が最も好ましいが、5%は、従来の香料組成物に典型的に見られる量からの実質的な減少である。グリコール又はアルコールは、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよく、総量は、先に記載したアクリラート/VAコポリマーと可塑剤との重量比と一致する。
【0026】
芳香成分
芳香成分は、匂い若しくは香りを付与する、又は匂いを打ち消すという唯一の目的のために添加される1種以上のエッセンシャルオイル、留出物、抽出物、合成物及び他の成分を含む。芳香剤入り製品の種類に応じ、芳香成分のレベルは、重量で最終芳香剤組成物の約3%から約30%まで様々である。ほとんどの芳香成分は疎水性であり、油相の一部又は全部を形成する。エッセンシャルオイルは花、ハーブ、根又は樹脂の純粋な蒸留物であるが、「フレグランスオイル」は通常、合成芳香成分のブレンド又はキャリアオイルで薄めたエッセンシャルオイルのブレンドの何れかを指す。例えば、1種以上のエッセンシャルオイル若しくは1種以上のフレグランスオイル、又はこれらの組合せが油相の大部分又は全部を形成してもよい。或いは、油相は、美容上許容される油に分散させた他の芳香成分を含んでもよい。
【0027】
他の成分
芳香剤組成物はまた、必要に応じ、典型的には重量で組成物の約2%までの保存料を含んでもよい。また、必要に応じ、典型的には重量で組成物の1%未満のレベルで粘度調整剤及び/又はpH調節剤を使用して、消費者が許容できる製品を創出してもよい。これらのレベルでは、保存料、粘度調整剤及びpH調節剤は、芳香剤組成物の芳香の完全性に悪影響を与えるとは考えられない。組成物は、重量で5%以下、好ましくは3%未満のアルコールを含み、より好ましくは、アルコールを含まない。
【実施例】
【0028】
芳香剤組成物の形態
本発明の好ましい液体芳香剤組成物は、水のような粘稠度を有し、機械的噴霧ポンプ又はエアロゾル発生器からの分配に適している。組成物は、水中油型エマルションであるが、これまでの水ベースの芳香剤製品とは異なり、ここで開示する組成物は、利用する乳化剤及び/又は界面活性剤を非常に少なくすることができ、それは、高レベルのこれらの成分の使用によってもたらされる問題を、完全とはいえないまでも、大幅に緩和する。組成物の総重量を基準として、芳香剤組成物は、重量で5%以下、より好ましくは3%未満、更により好ましくは1%未満の界面活性剤及び/又は乳化剤を含むことが好ましい。実施例1は、本発明の効果的な水中油型マクロエマルション組成物を示す。相1は、連続水相である。相2は、不連続油相である。この実施例において、好ましくは、アクリラート/VAコポリマーとアクリラートコポリマーは、エマルションが形成された後に添加される。しかし、効果的な組成物は、それらを水相に添加した場合でも達成される。
【0029】
【0030】
組成物は、下記の通り、低温混合プロセスを使用する:
1. キサンタンガムステージを適切なビーカーで、ホモジナイザを用いて均一になるまで予混合する。
2. ホモジナイザ速度を10に設定して、メインビーカーにシーケンス1の成分を列挙した順序で添加する。
3. シーケンス1が全てメインビーカーに入った後、更に10分間混合する。
4. ホモジナイザ速度を30に設定して、シーケンス2をメインビーカーに添加する。
5. 30分間混合する。
6. ホモジナイザ速度30でシーケンス3を添加する。
7. 同じホモジナイザ速度30でシーケンス4を添加する。
8. 更に30分間混合する。
【0031】
香気の完全性調査
8時間の調査を行って、本発明による組成物の香気の完全性を維持する能力を調べた。上記実施例1による試験製剤と対照の2つのサンプルを分析し、比較した。対照は、試験製剤に使用したものと同じフレグランスオイルであった。ガスクロマトグラフィー及び質量分析(GC/MS)を利用して全体的な揮発性指紋を特定し、試験サンプルから放出されている化合物を様々な間隔で同定した。
【0032】
分析用のサンプルを最初にスライド上に準備した。試験サンプルと対照において同じフレグランスオイルの濃度を維持するため、対照と試験サンプルの重量を調節した。約0.09gの対照と、0.60gの試験サンプルを個々のスライドガラスに量り取った。サンプルをスライド上に均一に広げ、次いで32℃のホットプレート上に置いて乾燥させた。サンプルは、2、4、6及び8時間の乾燥時間と、初期状態で準備した。割り当てた乾燥時間の後、各スライドを50mLのフラット試験管に入れ、そこに10mLのイソプロピルアルコールをメスピペットで添加した。次いで、試験管の調製物を、乾燥した配合物全てをスライドから落とすため、2回の15分の間隔を空けて超音波処理し、ボルテックスに付した。各調製物が完全に溶液に入ったことが確認されたら、各サンプルを0.45um PTFEフィルターを通してろ過し、GC/MSで分析した。
【0033】
クロマトグラフィープロファイル
対照サンプルのクロマトグラフィープロファイルの評価は、8時間の期間にわたって全揮発性化合物の全体的な濃度が有意に低下したことを示している。対照的に、試験サンプルのクロマトグラフィープロファイルの評価は、配合物の揮発性芳香成分が8時間の期間にわたって保持されたことを示している。
【0034】
エリアカウント数の定量
対照サンプルと試験サンプルが保持する揮発性化合物の量を表すため、リモネン、リナロール、ベチベロール及び酢酸ゲラニルという4種の主要な芳香成分のエリアカウント数を記録した。
【0035】
A.対照サンプルの結果
2時間の時点で、リモネン、リナロール及びベチベロールは、検出限界を下回っていた。酢酸ゲラニルは49%に保持されていた。
【0036】
4時間の時点で、酢酸ゲラニルのみが5%に保持されていた。
【0037】
6時間及び8時間の時点で、4種の主要な揮発性化合物は全て検出限界を下回っていた。
【0038】
B.試験サンプルの結果
2時間の時点で、4種の化合物全てが試験サンプルに保持されており、リモネン、リナロール、ベチベロール及び酢酸ゲラニルは、それぞれ53%、58%、78%及び89%に保持されていた。
【0039】
4時間の時点で、リモネン、リナロール、ベチベロール及び酢酸ゲラニルは、それぞれ41%、44%、68%及び81%で存在した。
【0040】
8時間の時点で、リモネン、リナロール、ベチベロール及び酢酸ゲラニルは、それぞれ32%、40%、64%及び78%で存在した。
【0041】
C.結論
8時間の期間にわたり、得られたクロマトグラフィープロファイル及びエリアカウント数は、試験サンプルが対照と比較して相当量の芳香成分を保持したことを示している。8時間の試験期間の終わりでもかなりの強度が依然として存在しており、この持続時間は、消費者の使用に適したものである。また、芳香性香調の作用範囲(嗅覚線形性)は、十分に維持された。揮発性芳香成分は、アクリラート/VAコポリマー及び/又はアクリラートコポリマーの表面に保持されており、他の水ベースの香料組成物よりもゆっくりと揮発していると考えられる。