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特許7178510ホイールにおける緩んだホイールねじ止めを認識する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ホイールにおける緩んだホイールねじ止めを認識する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/013 20060101AFI20221117BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20221117BHJP
【FI】
G01M17/013
G01M13/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021556690
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020051602
(87)【国際公開番号】W WO2020192982
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-20
(31)【優先権主張番号】102019204026.8
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シューイング ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ イェンス
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530488(JP,A)
【文献】特開昭61-211108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041290(US,A1)
【文献】特表2018-506470(JP,A)
【文献】特開2016-215787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
G01M 13/00 - 13/045
G01M 1/00 - 1/38
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイール(100)における緩んだホイールねじ止め(104)を認識する方法において、前記ホイール(100)のハブ(110)の角速度が評価され、前記角速度のホイール周期的な変調(202)が検知され、前記緩んだホイールねじ止め(104)にもとづいて引き起こされた前記ホイール(100)の振動(200)が、前記変調(202)の位相角の変化を使用して認識されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記位相角が少なくとも1つの予想される角度ステップだけ頻繁に変化する場合に、前記緩んだホイールねじ止め(104)が認識される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相角が少なくとも2つの予想される角度位置間で頻繁に変動する場合に、前記緩んだホイールねじ止め(104)が認識される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記変化が操舵運動、ブレーキ過程、加速過程、および/または道路励振時に頻繁に生じる場合に前記緩んだホイールねじ止め(104)が認識される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記角速度は、前記ホイール(100)の回転数センサ(114)の回転数信号(116)を使用して評価され、前記変調(202)は、前記ハブと結合された前記回転数センサ(114)のエンコーダディスク(112)の前記回転数信号(116)に反映されるパルスを使用して検知される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エンコーダディスク(112)のホイール周期的なピッチエラーが補償される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに前記変調(202)の周波数が予想周波数に相当する場合に、前記緩んだホイールねじ止め(104)が認識され、前記予想周波数は、前記ホイール(100)の回転数を使用して決定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を相応の装置で実行する、実現する、および/または制御するように形成されている、装置(102)。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行する、実現する、および/または制御するように設定されている、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラム製品が記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールにおける緩んだホイールねじ止めを認識する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のホイールのリムは、ホイールねじまたはホイールナットからなるホイールねじ止めを介してホイールのハブ、あるいはブレーキディスクまたはブレーキドラムと結合されている。リムは、ホイールねじ止めの締付力によってハブに押し付けられる。トルク工具によりホイールねじ止めを締めることによって、締付力を許容範囲内で調整することができる。
【0003】
ホイールねじ止めは緩み得る。ホイールねじ止めが緩んで、リムとハブとを面状に接触した状態に保つための締付力が小さくなりすぎた場合に震動(Vibrationen)が発生し得る。この震動は、ハブにおける速度センサの速度信号に反映され得る。
【0004】
例えば、速度信号の周波数スペクトルを評価することによって震動を認識することができ、かつ緩んだホイールねじ止めを推論することができる。
【0005】
特許文献1は、車両のセンサユニットを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102013211697号明細書
【発明の概要】
【0007】
上記を背景として、本明細書中に提示される手法を用いて、独立請求項に記載の車両のホイールにおける緩んだホイールねじ止めを認識する方法、対応する装置、さらには対応するコンピュータプログラム製品、および機械可読記憶媒体が提示される。本明細書中に提示される手法の有利な発展形態および改良形態は、以下の記載から明らかになるとともに、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明の実施形態は、有利にも速度信号の評価を改善すること、および緩んだホイールねじ止めをより確実に認識することを可能にすることができる。
【0009】
ホイールのハブの角速度が評価され、角速度のホイール周期的な変調が検知され、緩んだホイールねじ止めにもとづいて引き起こされたホイールの振動が、変調の位相角の変化を使用して認識されることを特徴とする、車両のホイールにおける緩んだホイールねじ止めを認識する方法が提示される。
【0010】
本発明の実施形態に係る思想は、とりわけ以下に記載される着想および知見にもとづくものとみなすことができる。
【0011】
ホイールのホイールねじ止めとは、ホイールのリムと、ホイールのハブ、あるいはハブと機械的に結合されたホイールのブレーキディスクまたはブレーキドラムとの間の解除可能な機械的結合と解することができる。ホイールねじ止めは、ねじ手段を使用して取付点において行うことができる。例えば、ねじ手段は、ハブ、ブレーキディスク、またはブレーキドラムのねじ孔に螺入されるホイールねじであり得る。これに代えて、ねじ手段は、ハブ、ブレーキディスク、またはブレーキドラムのねじ孔に螺嵌されるホイールナットであり得る。ホイールねじ止めは、ホイールごとに車両に応じた数の取付点を有し得る。
【0012】
ハブの角速度もしくは回転速度は高分解能で検出され得る。例えば、ハブにおけるエンコーダ(Geber)の角度位置をメガヘルツ範囲で分解して走査することができる。角度位置は、定置のセンサポジションでハブとともに回転する磁気エンコーダホイールの磁気パルス間の時間差の形式で検出され得る。時間差を、例えば4MHzで分解して走査することができる。
【0013】
ホイールねじ止めが緩んだ場合、リムがハブに相対して傾き得る。それによってリムは、これに取り付けられたタイヤとともに、予定された回転軸を中心として回転しなくなる。ホイールの振動(Oszillation)が生じる。換言すると、リムおよびタイヤが「よろつく(eiern)」またはふらつく(taumeln)。振動は、緩んだねじ手段を介してハブに伝達される。ハブがその予定された回転軸を中心として引き続き回転するので、結果としてハブの角速度の変調が生じる。変調の位相角は、ハブに対するリムの傾きの空間相対位置に依存し得る。相対位置の変化によって、位相角の特徴的な変化が生じ、この変化を認識することができる。
【0014】
角速度のホイール周期的な変調は、ホイールもしくはハブの回転中の瞬時角速度の不均一であり得る。瞬時角速度は、理想化された均一な回転運動より、回転の少なくともある部分領域では先を行き、少なくとも別の部分領域では後を行き得る。
【0015】
リムは、ハブに対する特定の相対位置により頻繁にとどまり、中間ポジションを取ることははるかに少ないか、もしくは比較的まれであり得る。ホイールねじ止めのすべてのねじ手段が等しく緩んだ場合、相対位置のうちの1つが、ねじ手段のうちの1つにおける当接点と、それとは反対の位置にある、リムとハブとの間の当接面とを通る傾動軸により規定され得る。例えば、6つの取付点を有するホイールは、6つの好ましい傾動軸を有し得る。取付点が5つの場合、ホイールは5つの傾動軸を有し得る。これらの傾動軸は互いに固定角度で方向付けられている。
【0016】
1つまたは複数のねじ手段が欠けるか、もしくは他のねじ手段よりも大きく突き出す場合、大きく突き出すねじ手段に当接点が形成され得ない。その場合、リムは、それぞれ隣接する、突き出しが少ないねじ手段と、向かい側に位置する当接面とに当接し、わずかな傾動運動しか行わない。
【0017】
ハブと車両との間の絶対角度位置は、通常、未知であるので、位相角が少なくとも1つの予想される角度ステップだけ頻繁に変化する場合、緩んだホイールねじ止めを認識することができる。角度ステップは、設計にもとづく傾動軸間の角度に相当し得る。
【0018】
ハブと車両との間の絶対角度位置が既知である場合、位相角が少なくとも2つの予想される角度位置間で頻繁に変動する場合に、緩んだホイールねじ止めを認識することができる。予想される角度位置も設計にもとづく傾動軸間の角度に依存し得る。
【0019】
操舵運動、制動過程、加速過程、および/または道路励振時に頻繁に変化が起きる場合、緩んだホイールねじ止めを認識することができる。操舵運動、制動過程、および加速過程ではホイールに付加的な力が作用し、この力は、ホイールが空転する場合には作用しない。この付加的な力によって、リムがある傾動軸から別の傾動軸へ移り得る。リムは、複数の隣接する傾動軸にも移り得る。
【0020】
角速度は、ホイールの回転数センサの回転数信号を使用して評価され得る。変調は、ハブと結合された回転数センサのエンコーダディスクの回転数信号に反映されるパルスを使用して検知され得る。エンコーダディスクは、等角度間隔のマーキング要素を有することができ、これらのマーキング要素を回転数センサによって、例えば磁気的に、例えばホールセンサにより、または光学的に、例えば光センサにより検出することができる。マーキング要素を検出する場合、マーキング要素が回転数センサに対して特定の相対位置に配置されている場合に、回転数センサにおいて電気パルスがトリガされ得る。同様に、回転数センサに対する少なくとも1つのマーキング要素の相対位置を反映する正弦波状の信号が生成され得る。マーキング要素は円軌道に沿って等間隔で配置することができる。円軌道は、ハブの回転軸に対して同心的に方向付けられ得る。
【0021】
エンコーダディスクのホイール周期的なピッチエラー(Teilungsfehler)を補償することができる。ピッチエラーは、例えば製造公差によって生じ得る。その場合、マーキング要素は、互いにわずかに異なる間隔で円軌道上に配置され得る。これに代えて、またはこれに加えて、エンコーダディスクを回転軸に対して完全に規定通りには方向付けないことができる。それによって、エンコーダディスクが絶対的に均一に回転した場合にも、実際に存在しない角周波数の変調を表示することができる。しかしピッチエラーは、ハブに対して角度固定的であり、かつ認識および補償することができる。
【0022】
さらに変調の周波数が予想周波数に相当する場合に、緩んだホイールねじ止めを認識することができる。予想周波数はホイールの回転数を使用して決定され得る。ホイールの振動はホイールの回転によって励振される。ホイールの回転数が既知であることから、それに伴い振動の励振周波数も既知である。振動は、ホイールねじ止めを介して角速度の変調として反映される。少なくとも1つの予想される変調の予想周波数は、回転数に依存した励振周波数によって決まり得る。
【0023】
方法は、例えばソフトウェアまたはハードウェアで、あるいはソフトウェアとハードウェアの混合形式で、例えば制御装置において実装され得る。
【0024】
本明細書中に提示される手法は、さらに、本明細書中に提示される方法の変形形態のステップを対応する装置で実行する、制御する、もしくは実現するように形成されている装置を提供する。
【0025】
装置は、信号またはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニットと、信号またはデータを記憶するための少なくとも1つの記憶ユニットと、通信プロトコルに埋め込まれたデータを読み取る、および出力するための少なくとも1つのインターフェースおよび/または通信インターフェースと、を有する電気機器であり得る。計算ユニットは、センサ信号を処理する、およびセンサ信号に依存してデータ信号を出力する例えば信号プロセッサ、いわゆるシステムASICまたはマイクロコントローラであり得る。記憶ユニットは、例えばフラッシュメモリ、EPROM、または磁気記憶ユニットであり得る。インターフェースは、センサからセンサ信号を読み取るセンサインターフェースとして、ならびに/あるいはデータ信号および/または制御信号をアクチュエータに出力するためのアクチュエータインターフェースとして形成され得る。通信インターフェースは、データをワイヤレスおよび/または有線で読み取る、または出力するように形成され得る。インターフェースは、例えばマイクロコントローラにおいて他のソフトウェアモジュールと並んで設けられるソフトウェアモジュールであってもよい。
【0026】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムも有利であり、プログラムコードは、例えば半導体記憶装置、ハードディスク記憶装置、または光学記憶装置などの機械可読キャリアまたは記憶媒体に記憶され得、かつ特にコンピュータまたは装置でプログラム製品またはプログラムが実行される場合に、上記の実施形態の1つによる方法のステップを実行する、実現する、および/または制御するために使用される。
【0027】
留意すべき点は、本明細書中には異なった実施形態に関して本発明の可能な特徴および利点のいくつかが記載されているということである。当業者は、本発明の他の実施形態に到達するために、装置および方法の特徴が適切に組み合わせられ、適合され、または交換され得ることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施例による装置を有する車両のホイールの図である。
図2】一実施例による装置を有する車両の振動するホイールの図である。
図3】緩んだホイールねじ止め、およびいくつかの傾動軸を有する車両のホイールの図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、図面も以下の記載も本発明を限定するものと解釈されるべきでない。
【0030】
図は単なる模式図であり、縮尺どおりではない。図中の同じ、または同じ機能の特徴には同じ参照符号が付されている。
【0031】
図1は、一実施例による装置102を有する車両のホイール100の図を示す。装置102は、ホイール100の緩んだホイールねじ止め104を認識するように形成されている。ホイール100は、リム106と、リム106に組み付けられたタイヤ108とを有する。リム106は、ホイールねじ止め104を介して車両のハブ110と結合されている。
【0032】
ここでは、ホイールねじ止め104がホイールねじを有し、ホイールねじはリム106の貫通穴に差し込まれ、ハブ110のねじ孔にねじ込まれている。ホイールねじ止め104が、ここに示されるように固く締められている場合、リム106はハブ110の当接面に押し付けられ、それによってハブ110と相対回動不能に結合される。
【0033】
エンコーダディスク112がハブ110と相対回動不能に結合されている。エンコーダディスク112は、車両の回転数センサ114によって非接触で走査される。回転数センサ114が例えば磁気的に形成されている場合、エンコーダディスク112は、エンコーダディスク112の円周の領域に配置された交互の磁極を有し、回転数センサ114が例えばホールセンサを介してこれらの磁極を走査する。
【0034】
その際、ホールセンサは、磁極によって生成される磁界の瞬時磁束密度を検出し、この磁束密度を電気的回転数信号116に反映する。例えばホールセンサが第1磁極の前に配置されている場合には磁束密度が正である。ホールセンサが第1磁極と、隣接する第2磁極との間に配置されている場合には、磁束密度はゼロクロス点を有する。第2磁極がホールセンサの前に配置されている場合には磁束密度は負である。
【0035】
エンコーダディスク112の磁極は、既知の角度ステップで互いにずらして配置されている。その結果として、磁束密度が近似的に正弦波状になる。装置102において、磁束密度の周期と磁極間の既知の角度ステップとからハブ106の角速度を導き出すことができる。周期は、例えば磁束密度の連続する3つのゼロクロス点間、あるいは磁束密度の2つの連続する最大値もしくは最小値間で測定することができる。一般に、周期は同じ位相角を有する磁束密度のプロファイルの2点間で検出することができる。
【0036】
装置102は、回転数信号116に反映された緩んだホイールねじ止め104の影響をもとにして緩んだホイールねじ止め104を認識するために回転数信号116を評価する。
【0037】
図2は、一実施例による装置102を有する車両の振動するホイール100を示す。その場合、図2の図示は実質的に図1の図示に相当する。それとは異なり、ここではホイールねじ止め104が緩められ、リム106がハブ110に対して傾いている。傾きによって、ハブ110の回転軸がホイール100の対称軸線と一致しなくなる。ホイール100が回転すると、その結果として、タイヤ108の轍が蛇行線状になり、ホイール100が振動する、もしくはよろつく。振動200はハブ110に伝達され、その結果として角速度が変調202する。
【0038】
振動200によって、回転の少なくとも第1部分の間にホイール100が加速され、すなわちより高速になるのに対して、同じ回転の少なくとも第2部分の間には減速され、すなわち低速になる。それに伴い変調202が回転数信号116にも反映される。
【0039】
傾き姿勢が安定していないため、ホイール100は、振動200に加えて傾倒姿勢で震動する。震動はハブ110にも伝達され、変調202に反映される。
【0040】
装置102は、回転数信号116から変調202をフィルタリングする。変調202は、正弦波状のプロファイルを有する。変調202の周波数は、ホイール100の回転周波数に比例し得る。変調202の周波数は、回転周波数の特に整数倍であり得る。震動は、振動200の影響に重畳される。
【0041】
図3は、緩んだホイールねじ止め104およびいくつかの傾動軸300、302を有する車両のホイール100を示す。その場合、ホイール100は、実質的に図2のホイールに相当する。傾動軸300、302の角度位置は、ホイールねじ止め104の種類によって予め定められる。その際、傾動軸300、302は、それぞれホイールねじ止め104の取付点の1つと、その取付点とは反対の位置にあるリム106とハブとの接触面とを通る。それに伴い傾動軸300、302がリム106の中心で交差する。傾動軸300、302は、ホイールねじ止め104の種類によって定められた角度ステップを相互に有する。取付点が5つあり、それぞれのねじ手段がすべて存在する場合、互いに72°だけ傾いて延びる5つの傾動軸300、302が生じる。ねじ手段のうちの1つが欠けた場合、この傾動軸300、302がなくなる。
【0042】
ホイール100がそれぞれの傾動軸300、302で傾いている一方で、リム106は、それぞれのねじ頭部もしくはねじ手段のナットで取付点および向かい側に位置する接触面に当接する。接点が2つのみであるため、静的に定まった支承がされず、ホイール100は、外部の機械的影響によって一方の傾動軸300からもう一方の傾動軸302へ動かされ得る。それによって、ハブに相対するホイール100の位置が変化する。傾動軸300、302によって定義される角度ステップだけ位置が1つの傾動軸300からもう1つの傾動軸302へ変化した場合、振動の位相角が変化する。位置が変化したのと同じ角度ステップだけ位相角が変化する。この変化がハブへ伝達され、それにより角速度の変調の位相角も同じ角度だけ変化する。
【0043】
換言すると、ホイール回転数信号における位相跳躍(Phasensprung)をもとにしたホイール緩みの認識が提示される。
【0044】
車両の緩むホイールを認識するために(「ホイール緩み認識」)、ホイール回転数信号を評価することができる。例えば、荷重変化状況においてホイールが緩んだ場合にホイール回転数信号に観察され得るホイールハブとリムとの相対運動を評価することができる。
【0045】
これに代えて、またはこれに加えて、線スペクトルにおける振幅の増加として認識可能な、ホイール回転数のホイール周期的な変調の形式の震動を使用することができる。このために、測定された時間差の信号が速度に正規化され、エンコーダホイール歯ピッチエラーとホイールアンバランスによる影響が及ぼされたスペクトル成分とが場合によっては補償される。ホイール周期的な変調を認識するために、信号が角周波数範囲に変換される。推定される道路騒音を考慮して、線スペクトルが振幅閾値を上回る場合も同様に緩んだホイールが認識される。
【0046】
本明細書中に提示される手法によって、ホイール回転数信号に観察される特徴の「緩んだホイール」状態への一義的かつロバストな割り当てを達成することができる。その場合、ホイール緩み認識は、緩んだホイールのホイール回転数信号における位相変化にもとづいて行われる。
【0047】
すべてのホイールねじ/ナットが緩んでいるが、少なくとも1つのホイールねじ/ナットによってまだ保持されている緩んだホイールは、特定の走行状況におけるホイール回転数信号の発振(Schwingung)の位相位置、および位相位置の著しい変化を評価することによって認識される。本明細書中に提示される手法は、既存の方法と比較して、緩んだホイールと、ホイール回転数信号に重畳される他の効果とのはるかに高い分離可能性(Trennfaehigkeit)を提供する。このことは、よりロバストでより高性能な認識につながる。
【0048】
ホイール回転数センサによりホイールごとに等角度間隔で検出された磁気パルス間の時間差の信号は、まず、既知の震動効果認識と同様に処理される。殊に、測定された時間差Δtiには平均時間差ΔtMittelへの参照が行われる。平均時間差ΔtMittelは、殊に、ホイールの一回転に対して平均化される。次いで速度に依存しない信号において、エンコーダホイール歯ピッチエラーが補償される。続いて、例えばフーリエ変換および/またはフィルタリングによって、この信号のスペクトル振幅および位相が算出される。例えばホイールねじ/ホイールナットが5つの場合のホイール緩み認識のためには、特にスペクトル線2、3、4、5、10が考慮される。
【0049】
代替的実施例では平均時間差の参照が省略される。この場合、線スペクトルに、速度挙動および加速挙動を表す連続スペクトルが重畳される。例えば略一定の速度で走行する場合に考慮されるスペクトル振幅は、上記の実施例のスペクトル振幅とほとんど違わない。
【0050】
別の実施例では、エンコーダホイール歯ピッチエラーの補償が省略される。その場合、「緩んだホイール」状態にもとづく位相変化が歯ピッチエラーの位相と比べて著しいことが暗黙的に想定される。この実施例は、参照を用いても参照を用いなくても実行することができる。
【0051】
ホイール回転数信号の位相の観察と、「緩んだホイール」状態で著しい位相変化の検出とによって、ホイール緩み認識の質のはるかな向上を達成することができる。
【0052】
図1において、「固定ホイール」状態におけるハブの断面図が示されている。図2において同じハブが「緩んだホイール」状態で示されている。「緩んだホイール」状態において、リムは一方のねじから他方のねじへ揺動し(schwankt)、それに伴い、例えばホイールねじが5つの場合、特に頻繁に2・π/5=1.2566radとその整数倍の位相変化が現れる。
【0053】
1.2566radの位相変化が頻発する物理的根拠が図3に示されている。ホイールねじが緩んだ図示されたホイールは、まず、第1位相(erste Phase)300を有する第1軸を中心として発振する。その場合、リムは、第1ねじに持続的に当接し、周期的にねじ対2、3、4、5間を移動する。例えばホイールモーメント、横力、操舵運動、または道路のでこぼこの変化といった力の作用によって、発振軸が第1位相300から第2位相(zweite Phase)302に移動する。この場合、緩んだホイールは第2ねじに常時当接し、3と4、および5と1のねじ対間で発振する。
【0054】
図3に示される例は、まだホイールハブにすべて固定されている5つのホイールねじの場合の挙動を示す。この挙動は、ホイールナットの場合も、1つまたは複数のねじがすでに欠けた場合も観察される。他のねじ数でもこの効果が観察可能であり、この場合、単に位相変化が頻発する角度のみが変化し、例えばホイールねじが6つの場合、角度は2・π/6=1.0472radである。
【0055】
換言すると、図3は、緩んだホイールの位相跳躍を示す。第1軸300は、移動前の位相位置を明確にし、第2軸302は、1.2566radの跳躍を示す。
【0056】
最後に留意すべき点は、「有する」「包含する」などの用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、単数を表す語が複数を排除するものではないということである。請求項における参照符号が限定するものとみなされるべきでない。
【符号の説明】
【0057】
100 ホイール
102 装置
104 ホイールねじ止め
106 リム
108 タイヤ
110 ハブ
112 エンコーダディスク
114 回転数センサ
116 回転数信号
200 振動
202 変調
300 傾動軸
302 傾動軸
図1
図2
図3