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特許7178525ボーリング孔を利用した原位置繰返し載荷による液状化強度試験
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ボーリング孔を利用した原位置繰返し載荷による液状化強度試験
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/32 20060101AFI20221117BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20221117BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G01N3/32 Z
G01N3/00 D
E02D1/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022086070
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウエブサイトの掲載日:令和3年8月2日 ウエブサイトのアドレス:https://www.jsce.or.jp/taikai2021/ https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2021/top
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722005824
【氏名又は名称】益田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】益田 和夫
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-129458(JP,A)
【文献】特開2016-161463(JP,A)
【文献】益田和夫,他3名,動的プレッシャメータによる砂質地盤の液状化強度評価の可能性について,土木学会第60回年次学術講演会,日本,2005年09月30日,937-938
【文献】森伸一郎,他1名,東京層砂層の液状化強度に関する一考察,土木学会論文集,日本,1998年03月31日,No.589/3-42,141-154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
E02D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然地盤のボーリング孔壁にプローブを用いて繰返し載荷を行い、各ステージの繰返し載荷毎の載荷ループの載荷圧(22)と、載荷圧(22)からプローブ反力(23)を差し引いて求められる有効応力(25)の関係から、任意深度の初期有効拘束圧(40)を求めることを特徴とする液状化強度試験法。
【請求項2】
載荷ループ(35)から軸差応力(37)を求めて、その軸差応力を用いて液状化強度比(41)を求めることを特徴とする、請求項1に記載の液状化強度試験法。
【請求項3】
前記初期有効拘束圧(40)を分母に、前記軸差応力(37)を分子にした公知の液状化強度比を求める計算式を用いて、自然地盤の液状化強度比(41)を求めることを特徴とする、請求項に記載の液状化強度試験法。
【請求項4】
前記繰返し載荷により地盤内に発生する過剰間隙水圧(24)水圧計を用いずに、下記の計算式で求めることを特徴とする請求項1に記載の液状化強度試験法。
過剰間隙水圧(24)=初期有効拘束圧(40)-有効応力(25)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然地盤のボーリング孔壁に地震に近似した繰返し載荷を行い、自然地盤の液状化強度を求める技術。
【背景技術】
【0002】
この種の試験法として、本出願人が提案した試験法が公知である(特許文献1)。そこでは鉛直方向に3つの載荷プローブを有しているが、試験装置が複雑で合理的な解析手法もないので現場試験には不向きであった。また、現状は自然地盤で採取した試料を用いた土質試験非特許文献1よっているが、試料採取時および土質試験時の乱れなどで、自然地盤の液状化強度42が過小評価される傾向がある。
【0003】
地盤には深度或いは土層により初期有効拘束圧40を有しているが、現状はこの初期有効拘束圧を求める計測技術がない。
【0004】
地盤に繰返し載荷を行うと地盤内には過剰間隙水圧24が発生し地盤に作用する有効応力25は低下するが、この関係を計測する技術がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-129458
【非特許文献】
【0006】
【文献】地盤工学会発行の「土質試験の方法とその解説」土の繰返し非排水三軸試験法(JGS 0541-2000)p635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自然地盤での深度又は土層による初期有効拘束圧40を求める試験方法がないという課題を有している。
【0008】
従来技術は自然地盤からボーリングなどで取り出した採取試料を土質試験で行っているが、採取時及び土質試験時の試料の乱れから液状化強度が過少側に算出される課題を有している。
【0009】
現状の液状化強度算定式の用いる初期有効拘束圧40及び軸差応力37が前述の通り不正確であるので、算出される液状化強度の精度は低くなるという課題を有している。
【0010】
地盤内に発生する過剰間隙水圧24は水圧計により計測するが、試験装置が複雑になり原位置試験には不向きと云う課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は自然地盤のボーリング孔壁に繰返し載荷図3を行い、各ステージ30~34の載荷ループ35の上端と下端の載荷圧22と有効応力25の関係図5をグラフ化図6して、任意深度の初期有効拘束圧40を求める手段とする。または繰返し載荷で発生する最大過剰間隙水圧24は初期有効拘束圧40と同じであるという原則を用いて解決する手段とする。
【0012】
本発明は原位置繰り返し載荷による各ステージ30~34の載荷ループ35の上端・下端の有効応力差37図3から軸差応力37を高精度に求める手段とする。
【0013】
本発明は初期有効拘束圧40を分母に軸差応力37を分子にした公知の液状化強度を求める計算式41を用いて、自然地盤の液状化強度を高精度に求めることを手段とする
【0014】
地盤内に発生る過剰間隙水圧24は従来は水圧計を用いて計測しているが、本発明は初期有効拘束圧40は最大過剰間隙水圧24と同じという原則と有効応力25との関係から過剰間隙水圧図2の24を計算で求める手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は自然地盤のボーリング孔壁地盤に直接地震に近似した繰返し載荷図3を行うことで、乱れの影響のない状態で試験できるので、手軽に低コストかつ迅速に液状化強度を高精度に得られるという効果がある。
【0016】
本発明では図6に示す方法で載荷圧22と有効応力25関係から初期有効拘束圧40を合理的に求めることができ、液状化強度を高精度で求める効果がある。
【0017】
原位置繰り返し載荷で求まる軸差応力37は高精度図10であるので、液状化強度41をはじめ、地盤の各種強度特性を高精度で求める効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】原位置繰返し載荷試験の機構図である。
図2】載荷プローブ内外の平衡応力図である。
図3】繰返し載荷による載荷曲線の模式図である。
図4】原位置繰返し試験のデータシートである。
図5】ステージ載荷による載荷圧と有効応力の関係表である。
図6】初期有効拘束圧の判定図である。
図7】液状化曲線図である。
図8】原位置繰返し試験結果表である。
図9】凍結サンプリング試料による液状化試験結果表である。
図10】初期拘束圧と軸差応力の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本出願人が提案した自動孔内載荷試験機構を示し、この試験装置を用いて自然地盤のボーリング孔壁地盤に繰返し載荷を行う。この試験は従来は手動で単調載荷を基本としているが、試験装置を自動化することで、複雑な試験を省力化の下で容易に精度良く試験出来、地盤工学会の解説書(地盤調査の方法と解説p323)では「実験の精度を確保し省力化を図るために、制御・測定はできるだけ自動化することが望ましい」としている。
この試験装置は、全体に持ち運びが容易で現場試験に適しており、試験制御はパソコンに設定でき、かつ試験内容はパソコンでモニターしながら自動記録かつ図化できるので、液状化強度試験法に適していると考える。
【0020】
図2は載荷プローブ内外の平衡応力図である。プローブ内1の載荷圧22を加圧・除荷20を繰り返すことで孔壁地盤内19にはダイレイタンシー現象による過剰間隙水圧24が漸増し、地盤19に作用する有効圧25(以下有効応力と呼ぶ)は低下し、過剰間隙水圧24が最大値となった時に有効応力25はゼロとなる。このように図は試験途上のプローブ内外の応力は常に平衡状態であることを示している。なお、孔壁地盤19に作用する有効応力25はプローブ内1の載荷圧22からプローブを拡げるプローゴム反力23を差し引くことで求まる。また、過剰間隙水圧24は有効応力25と反比例関係にあることより、発生する過剰間隙水圧24は次式で計算にて求めることが出来る。
過剰間隙水圧24=24の最大値{1-(有効応力25/24の最大値)}
【0021】
図3は繰返し載荷30~34よる載荷圧22とプローブ半径変位28の変化を示す載荷曲線29である。試験はひずみ制御方式で、パソコンに事前に組み込んだプローブゴム半径変位36の変化を小さい状態30から31~34と順次大きくする制御方式のステージ載荷30~34を行い、かつ各ステージに原則20回繰返す公知の方法(非特許文献1)で行うものである。
なお、ボーリング孔壁19は掘削時の削孔力や振動による乱れ及び削孔よる土圧の減少から応力開放による乱れの影響が重なり、載荷圧22とプローブ半径変位28の変化は緩やかなものから次第に勾配は高まり、乱れの影響が解消されたときから地盤の弾性領域に入り、この時点のプローブ半径変位を初期半径変位26と判定する。
【0022】
図4は繰返し載荷の載荷ループ30~34(図3)より得られる各ステージ・繰返し回数毎の載荷ループの上端・下端の載荷圧22とプローブゴム反力23から有効応力25を求め、その有効応力差を軸差応力37(図3)とするデータシートである。繰返し載荷中30~34(図3)のデータはすべてこのようなデータシート図4にまとめて、ステージ毎、繰返し回数毎の載荷圧22と有効応力25及び軸差応力37を計算し、かつ初期有効拘束圧40(図6)より公知の液状化強度計算式σd/2σc(非特許文献1)からそれぞれの液状化強度41を算出する。
【0023】
図5は前述のデータシートから各ステージ30~34の繰返し回数の代表値をまとめた表である。ちなみこの表は5回以下の繰返し回数の結果をまとめたものであるが、原則として各ステージの繰返し回数20回目の載荷ループの上端・下端の載荷圧22と有効応力25をまとめたものとする。但し、このデータシート中に有効応力25がゼロものがあればこのデータを優先して表記する。すなわちこの有効応力25がゼロの時点の載荷圧22は最大過剰間隙水圧24を意味し、かつ初期有効拘束圧40と同等圧を示すからである。
【0024】
図6は前述の図5の各ステージの載荷圧22と有効応力25の関係をグラフ化したもので、この図より、初期有効拘束圧40を判定することになる。具体的には有効応力25がゼロの横線と、載荷圧22と有効応力25の関係の左下さがりの線とが交わった点の載荷圧22を初期有効拘束圧40と判定することになる。この初期有効拘束圧40は有効効力25がゼロの時の載荷圧22と同等であり、かつ、最大過剰間隙水圧24と同等であることを意味している。
なお、こうして得られた初期有効拘束圧40は含有される細粒分(粘土分など)の固結作用や過去に受けた地震の繰返し振動などによって堆積時代が古くなるにつれて土粒子間の結合力が強くなり(年代効果と呼ぶ)、現状の有効上載圧よりも高い初期有効拘束圧40となることが知られている。
【0025】
図7は繰返し載荷による各ステージ30~34のせん断ひずみ(分母を載荷プローブの初期半径26+27、分子を履歴曲線の半径変位36を除した値で%表示)に対応した繰返し回数42の液状化強度41をプロットし、この関係をグラフ線43~47で繋いだものであり、図法は「液状化曲線」と呼ばれ(非特許文献1)に示す公知のものである。
この図7は試験地盤の液状化予測の判定に使われるもので、目的に応じて判定法は若干異なるが一般的土木構造物に対してはせん断ひずみが3.75%のライン48で、繰返し回数20回での液状化強度を試験地盤の液状化強度(液状化抵抗力)49とするものである。
【0026】
図8は自然地盤のボーリング孔壁地盤19を対象にした原位置繰返し載荷試験の結果表である。試験地盤は海岸埋立て地盤と一般的な堆積後千年以上経過した砂質地盤で行ったものである。この中のN値とは直径5cm程度の中空パイプを63kgのハンマーを76cm高さから落下させ、前記の中空パイプを30cm打ち込むのに有する落下回数であり、標準貫入試験と称される。このN値が高いほど良くしまった良質の地盤であるという指標に使われる値である。
次に細粒分(%)は試験地盤に含まれる粘土分などの混入割合を示す値で、この数字が少ないほどサラサラな砂分主体の砂質土であり、数字が多くなるにつれて粘土などの細粒分の混入割合が多くなり、液状化し難い性質を有する砂質地盤であるという目安に使われる数字である。
このような各種地盤で前述の方法で求めた初期有効拘束圧40と軸差応力37を用いて液状化強度41計算式σd/2σcで算出した液状化強度41をまとめた表である。
ここで注目したいのは凍結サンプリング試料による土質試験(図9)の液状化強度は1.0未満であるが、原位置繰返し試験(図8)では4未満の値となっており、土質試験(図9)による液状化強度より最大5倍程度高い値になっていることである。これは最近の著名な研究者が東北大震災で発生した液状化実態調査より、従来の土質試験より3~8倍高い液状化強度を有しているという研究事例と整合している。
【0027】
図9は自然地盤を凍結させてこの凍結地盤からボーリングにより採取した最も高品質とされる「凍結サンプリング試料」による土質試験結果表である。この方法は採取時の試料の乱れの影響が回避されて精度の高い試験結果が得られるとされている。但し、この方法で試験するためには採取費用も含めて1回当たりの試験費用は数千万円かかると云われ、特に重要とされる構造物の基礎設計に限定されて用いられている。しかし、この試験法も万全ではなく、細粒分の多い砂質土は凍結融解時の影響により液状化強度が下がり、限られた条件のもとでの有効な試験法であると云われている。
また、この試験法で採用されている有効上載圧は試験深度の地下水位による浮力を差し引いた鉛直方向の土重量の累計で、図8の初期有効拘束圧40に対比される値である。しかし、この有効上載圧は確固たる計測法がなく、現状は過去の知見からの推定値であるので、自ずからこの数値を使った液状化強度41の精度に課題があると云わざるを得ない。
【0028】
図10は原位置試験法で得られた初期有効拘束圧40と軸差応力37と凍結サンプリング試料による有効上載圧と軸差応力37をまとめたものである。
この図を見ると原位置試験の軸差応力37の方が凍結サンプリング試料による軸差応力37よりも全体的に高く、これは地盤の有する年代効果により自然地盤の剛性という特性を精度よく表現している。これは土質試験では試料採取時及び土質試験時の試料の凍結融解による乱れの影響で年代効果は失われ、剛性が低下したためと考える。
なお、液状化強度を求める計算式σd/2σc(非特許文献1)では、初期有効拘束圧とこれに相当する有効上載圧は原位置試験の方が高く、分子に当たる軸差応力は土質試験によるものが低くなるにも関わらず、得られる液状化強度41は原位置試験の方が高くなることは、土質試験に方が凍結融解による乱れの影響で年代効果が失われたものと考える。ちなみに年代効果を伴わない埋立て砂質土での液状化強度は数字に若干の差はあるがほぼ同等な液状化強度となっている。(図8・9参照)
以上を総合すると自然地盤の液状化強度41を求める試験法としては、自然地盤のボーリング孔を使用した原位置繰り返し載荷による試験法が、現状の土質試験による試験法よりも高精度であると考える。
【符号の説明】
【0029】
1.ボーリング孔内の載荷プローブ
2.特許出願人が開発した自動計測ユニット
3.小型発電機
4.ハンディータイプのコンプレッサー
5.ノートパソコン
6.試験員
7.水タンク
8.送水ホース
12.ボーリング孔
19.孔壁地盤
20.プローブへの送水圧
21.送水ホース内の水位と地盤内の自然水位との静水圧差。
22.載荷圧
23.プローブゴムの反力
24.繰返し載荷により孔壁地盤内に発生する過剰間隙水圧
25.地盤に作用する有効応力
26.プローブの初期半径変位
28.プローブ半径変位
29.繰返し載荷曲線
30~34.ステージ載荷
35.履歴曲線(載荷ループ) S1~S5共通
36.孔壁変位
37.軸差応力
40.初期有効拘束圧
41.液状化強度
42.繰返し回数
43~47.各ステージ、各サイクルの繰返し回数毎の液状化強度関係線
48.公知のせん断ひずみ3.75%の液状化強度推定線
49.公知の繰返し回数20回の液状化強度判定値

【要約】      (修正有)
【課題】従来技術では地震時の地盤の液状化強度を適格に捉える試験法はないが、自然地盤のボーリング孔壁地盤に地震に近似した繰返し載荷を行うことで、この課題を解消する試験法を提供する。
【解決手段】自然地盤に設けたボーリング孔12に、原位置繰返し載荷試験装置図1を使って、載荷プローブ1を介して孔壁地盤19に地震動に近似した繰返し載荷図3を行う。この結果、地盤内19には過剰間隙水圧24が漸増し、地盤に作用する有効応力25は低下する。過剰間隙水圧が最大値24になった時点で有効応力25はゼロとなり、地盤19が液状化状態に達する過程を確認できる。また、現状では計測が困難とされる地盤の初期有効拘束圧40と地盤の強度特性を反映する軸差応力37を用いて、地震時の地盤の液状化強度41を公知の計算式にて解決する手段とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10