(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】多孔質ジルコニア系複合酸化物、及び、多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20221117BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20221117BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J21/06 A
B01J32/00
(21)【出願番号】P 2022091386
(22)【出願日】2022-06-06
【審査請求日】2022-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020104(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/145787(WO,A1)
【文献】特開2008-081392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
B01J 21/06
B01J 32/00
C04B 35/488
C04B 35/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(1)~(3)のすべてを満たし、
水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm
3/g以上0.25cm
3/g以下であることを特徴とする多孔質ジルコニア系複合酸化物。
(1)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(2)前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上5.0以下。
(3)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm
3/g以上1.50cm
3/g以下。
【請求項2】
大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後のBJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(4)~(6)のすべてを満たし、
大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm
3/g以上0.20cm
3/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質ジルコニア系複合酸化物。
(4)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(5)前記dV/dlogDピークの最大値が1.0以上4.0以下。
(6)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm
3/g以上1.00cm
3/g以下。
【請求項3】
大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m
2/g以上100m
2/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ジルコニア系複合酸化物。
【請求項4】
比表面積が45m
2/g以上150m
2/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ジルコニア系複合酸化物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して水和ジルコニアを一部生成させる第1工程と、
前記第1工程の後、硫酸塩化剤を添加して塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得る第2工程とを含む多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ジルコニア系複合酸化物、及び、多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関やボイラー等の燃焼機関から排出される排気ガス中には、大気汚染等の原因となる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)といった有害物質が含まれている。これらの有害物質を効率良く浄化させることは、環境汚染防止等の観点から重要な課題であり、上記三成分の有害物質を同時に浄化することが可能な排気ガス浄化触媒の研究も盛んに行われている。上記排気ガス浄化触媒では、ロジウム、パラジウム、白金などの貴金属をジルコニア系複合酸化物に担持した後に、ハニカムに塗布して使用される。
【0003】
特許文献1には、BJH法に基づく細孔分布において、8~20nm及び30~100nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体や、BJH法に基づく細孔分布において、20~110nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0004】
特許文献2には、1000℃で3時間熱処理後の全細孔容積が少なくとも0.75ml/gであり、且つ、1000℃で3時間熱処理後の10~100nmの直径を有する細孔の細孔容積が全細孔容積の少なくとも30%であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0005】
特許文献3には、全細孔容積が少なくとも0.4ml/gで、10~100nmの直径を有する細孔容積が0.25ml/g以上、かつ、100nm~10μmの直径を有する細孔容積が0.2ml/g以下であることを特徴とするセリウム-ジルコニウム系複合酸化物が開示されている(特に請求項1参照)。
【0006】
特許文献4には、(1)BJH法に基づく細孔分布において、20~100nmの細孔径にピークを有し、測定した細孔分布曲線から求められるピークの半価幅をWとし、ピークの高さをPとしたときのP/W比が0.05以上であり、全細孔容量が0.5cm3/g以上であり、(2)1000℃で12時間の熱処理後において、20~100nmの細孔径にピークを有し、前記P/W比が0.03以上であり、少なくとも40m2/gの比表面積を有し、全細孔容量が0.3cm3/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0007】
特許文献5には、ジルコニウム、セリウム、ランタン、ならびに任意選択的にセリウムおよびランタン以外の少なくとも1種の希土類金属(REM)の混合酸化物であって、重量割合が、8%~45%のセリウム;1%~10%のランタン;0%~15%のセリウムおよびランタン以外の希土類金属;残部がジルコニウムであり、前記混合酸化物が、1100℃の温度で4時間のか焼後に、少なくとも30m2/gのBET比表面積;1000℃の温度で4時間のか焼後に、少なくとも55m2/gのBET比表面積を示すこと;ならびに1100℃の温度で4時間か焼後の前記混合酸化物に関する水銀ポロシメトリーによって得られる導関数曲線(dV/dlogD)が、200nm以下の直径の細孔の範囲において、最大値が、24~34nmの、Dp,1100℃/4hと表示される細孔径に相当するピークを示し、VおよびDがそれぞれ、細孔容積および細孔径を意味する混合酸化物が開示されている(特に請求項1参照)。また、特許文献5には、R=V1/V2によって定義される比(式中:V1は、nm単位での直径が(Dp,1100℃/4h-15)~(Dp,1100℃/4h+15)である細孔によって成長させられた細孔容積であり;V2は、直径が200nm以下である細孔によって成長させられた細孔容積でありV1およびV2は、1100℃で4hか焼後の前記混合酸化物に関する水銀ポロシメトリーによって測定される)が、0.60以上であることが開示されている(特に請求項7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-036576号公報
【文献】特開2008-081392号公報
【文献】特開2009-249275号公報
【文献】特開2015-189655号公報
【文献】特表2019-521937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、ジルコニア系複合酸化物について鋭意検討を行った。その結果、従来、排ガス浄化用触媒担体となるジルコニア系複合酸化物では、比表面積の耐熱性を向上させるためにメソ孔(直径2~50nm)の容積を高容量化させているが、ジルコニア系複合酸化物のメソ孔の容積を高容量化させると、マクロ孔(50nm以上)の容積も増加していることを見出した。ここで、本明細書において、「比表面積の耐熱性」とは、加熱による比表面積の低下が少ないことをいう。
マクロ孔のうち、直径100nm以上のマクロ孔は、比表面積の耐熱性の向上に寄与しない。そのため、触媒担体としての機能向上への寄与も少ないといった問題がある。
さらに、本発明者は、鋭意検討を行った結果、比表面積の耐熱性を向上させるためには、メソ孔領域にシャープなピークを有すること、及び、そのメソ孔領域の細孔容積が大きいことが重要であることを見出した。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱による比表面積の低下が少ない多孔質ジルコニア系複合酸化物を提供することにある。また、当該多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下を提供する。
[1]BJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(1)~(3)のすべてを満たし、
水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm3/g以上0.25cm3/g以下であることを特徴とする多孔質ジルコニア系複合酸化物。
(1)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(2)前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上5.0以下。
(3)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm3/g以上1.50cm3/g以下。
【0012】
前記[1]の構成によれば、dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にあり、前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上であり、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm3/g以上であるため、比表面積の耐熱性に寄与する2nm以上100nm以下の範囲に、シャープなピークが存在し、且つ、その細孔容積が大きいといえる。
また、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、比表面積の耐熱性に寄与しない細孔が少ないといえる。
以上より、前記[1]の構成によれば、加熱による比表面積の低下が少ないといえる。
【0013】
また、マクロ孔は、担持された貴金属が高温での材料の凝集により粒子内部に埋没し、浄化反応に対して有効に活用されず、性能低下を引き起こす要因となりうる。また、マクロ孔の増加は吸水性の上昇につながり、触媒スラリー調整時のハンドリングの悪化を引き起こす。
一方、前記[1]の構成によれば、100nm以上1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、高温加熱されても粒子内部に埋没する貴金属の量は少ない。従って、高温加熱された際の性能低下が抑制される。また、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、吸水性が低く、触媒スラリー調整時のハンドリングが良好である。
【0014】
2nm以上100nm以下の範囲の細孔についてはBJH法により得られた値を用い、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔については水銀圧入法により得られた値を用いることとしたのは、測定精度の観点からである。
具体的に、2nm以上100nm以下の範囲の細孔について、BJH法を用いた値を用いたのは、BJH法はガス吸着による細孔測定であるため、2nm以上200nm以下の範囲における細孔の測定精度に優れるが、200nm超の範囲については、ガス吸着法での解析が適切に行えないためである。
また、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔について、水銀圧入法を用いた値を用いたのは、ガス吸着法では200nm以上の領域の測定は適切に行えないためである。
【0015】
なお、特許文献1~5には、2nm以上100nm以下の範囲にdV/dlogDピークの最大値が1.5以上というシャープなピークを有し、且つ、100nm以上のマクロ孔の細孔容積が少ないことは開示されていない。そのため、特許文献1~5のようなジルコニア系複合酸化物では、加熱による比表面積の低下の抑制効果は、前記[1]の構成と比較して少ない。
特に、特許文献5では、1100℃の温度で4時間熱処理した後の水銀ポロシメトリーによって得られる導関数曲線(dV/dlogD)のグラフにおいて、100nm以上のマクロ孔の細孔容積が比較的小さいことは開示されている。しかしながら、一般的に、マクロ孔は、熱処理すると減少しやすい。すなわち、特許文献5には、加熱処理前の状態において、100nm以上のマクロ孔の細孔容積が小さいことは開示されているとはいえない。前記[1]の構成は、熱処理前の状態において、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であることを特徴としており、このような構成は特許文献5には開示されていない。
【0016】
[2]前記[1]の構成において、
大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後のBJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(4)~(6)のすべてを満たし、
大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm3/g以上0.20cm3/g以下である孔質ジルコニア系複合酸化物。
(4)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(5)前記dV/dlogDピークの最大値が1.0以上4.0以下。
(6)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以上1.00cm3/g以下。
【0017】
1000℃で3時間熱処理した後のdV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にあり、前記dV/dlogDピークの最大値が1.0以上であり、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以上であると、1000℃で3時間熱処理した後も、比表面積の耐熱性に寄与する2nm以上100nm以下の範囲に、シャープなピークが存在し、且つ、その細孔容積が大きいといえる。
また、1000℃で3時間熱処理した後の100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.20cm3/g以下であると、比表面積の耐熱性に寄与しない細孔が少ないといえる。
以上より、前記[2]の構成によれば、加熱による比表面積の低下がより少ないといえる。
また、実際に触媒として使用される酸化雰囲気及び還元雰囲気においても同様の効果が期待される。
【0018】
[3]前記[1]又は前記[2]の構成において、
大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が40m2/g以上100m2/g以下である多孔質ジルコニア系複合酸化物。
【0019】
1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が40m2/g以上であると、加熱による比表面積の低下がより少ないといえる。
【0020】
[4]前記[1]~前記[3]の構成において、
比表面積(初期の比表面積)が45m2/g以上150m2/g以下である多孔質ジルコニア系複合酸化物。
【0021】
熱処理前の比表面積が45m2/g以上であると、加熱により多少、比表面積が低下したとしても、加熱後の比表面積を高く維持することができる。
【0022】
[5]前記[1]~前記[4]の多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して水和ジルコニアを一部生成させる第1工程と、
前記第1工程の後、硫酸塩化剤を添加して塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得る第2工程とを含む多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【0023】
前記[5]の構成によれば、まず、ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して水和ジルコニアを生成させ(第1工程)、その後硫酸塩化剤を添加する(第2工程)ことでメソ孔が多く、且つ、マクロ孔が少ない粒子(塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリー)が得られる。
水和ジルコニアを核として塩基性硫酸ジルコニウムの生成が進むことで、マクロ孔が少なく、メソ孔が多い粒子となる。
以上、前記[5]の構成によれば、メソ孔領域の細孔径分布がシャープであり、直径10nm以上100nm以下の直径を有する細孔容積が多く、100nm以上1000nm以下の直径を有する細孔の細孔容積が少ない多孔質ジルコニア系複合酸化物を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加熱による比表面積の低下が少ない多孔質ジルコニア系複合酸化物を提供することができる。また、当該多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図2】実施例2の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図3】実施例3の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図4】実施例4の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図5】実施例5の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図6】実施例6の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図7】比較例1の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図8】比較例2の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図9】比較例3の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図10】比較例4の多孔質ジルコニア系複合酸化物のBJH法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図11】実施例1の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図12】実施例2の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図13】実施例3の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図14】実施例4の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図15】実施例5の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図16】実施例6の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図17】比較例1の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図18】比較例2の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図19】比較例3の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【
図20】比較例4の多孔質ジルコニア系複合酸化物の水銀圧入法に基づく細孔分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、多孔質ジルコニア系複合酸化物とは一般的なものであり、ハフニウムを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。また、本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0027】
以下で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、それぞれ独立して本発明の好ましい最小値、好ましい最大値である。
また、以下で示される各種パラメータ(測定値等)の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、それぞれ独立して本発明の好ましい最小値、最大値である。
【0028】
[多孔質ジルコニア系複合酸化物]
本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物は、詳しくは後述するが、ジルコニアを必須成分とし、ジルコニア以外の酸化物(他の金属酸化物)との複合酸化物である。本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物の用途は、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒担体として有用である。排ガス浄化用触媒担体として使用する場合、担持し得る触媒としては、貴金属触媒などが挙げられる。
【0029】
<熱処理前の細孔容積>
本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物は、BJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(1)~(3)のすべてを満たし、
水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm3/g以上0.25cm3/g以下である。
(1)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(2)前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上5.0以下。
(3)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm3/g以上1.50cm3/g以下。
【0030】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物によれば、dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にあり、前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上であり、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm3/g以上であるため、比表面積の耐熱性に寄与する2nm以上100nm以下の範囲に、シャープなピークが存在し、且つ、その細孔容積が大きいといえる。
また、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、比表面積の耐熱性に寄与しない細孔が少ないといえる。
以上より、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物によれば、加熱による比表面積の低下が少ないといえる。
【0031】
また、マクロ孔は、担持された貴金属が高温での材料の凝集により粒子内部に埋没し、浄化反応に対して有効に活用されず、性能低下を引き起こす要因となりうる。また、マクロ孔の増加は吸水性の上昇につながり、触媒スラリー調整時のハンドリングの悪化を引き起こす。
一方、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物によれば、100nm以上1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、高温加熱されても粒子内部に埋没する貴金属の量は少ない。従って、高温加熱された際の性能低下が抑制される。また、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以下であるため、吸水性が低く、触媒スラリー調整時のハンドリングが良好である。
【0032】
前記(1)における前記dV/dlogDピークは、5nm以上95nm以下の範囲にあることが好ましく、10nm以上80nm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0033】
前記(2)における前記dV/dlogDピークの最大値は、好ましくは1.7以上、より好ましくは、2.0以上である。前記dV/dlogDピークの最大値は、大きいほど好ましいが、例えば、4.0以下、4.5以下等である。
【0034】
前記(3)における2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積は、好ましくは0.35cm3/g以上、より好ましくは0.40cm3/g以上である。前記2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積は、大きいほど好ましいが、例えば、1.30cm3/g以下、1.40cm3/g以下等である。
【0035】
前記100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積は、好ましくは0.22cm3/g以下、より好ましくは0.20cm3/g以下である。前記100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積は、小さいほど好ましいが、例えば、0.02cm3/g以上、0.05cm3/g以上等である。
【0036】
上記(1)~上記(3)のすべてを満たし、且つ、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積を0.01cm3/g以上0.25cm3/g以下の範囲内に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する製造方法により調整する方法が挙げられる。
【0037】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、水銀圧入法に基づく細孔分布における全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積が0.50cm3/g以上2.50cm3/g以下であることが好ましい。水銀圧入法に基づく細孔分布における全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積が0.70cm3/g以上であると、触媒担体としての性能により優れる。
【0038】
前記全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積は、好ましくは0.70cm3/g以上、より好ましくは1.00cm3/g以上である。前記全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積は、大きいほど好ましいが、例えば、2.00cm3/g以下、2.30cm3/g以下等である。
【0039】
<1000℃で3時間熱処理した後の細孔容積>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後のBJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(4)~(6)のすべてを満たし、
大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm3/g以上0.20cm3/g以下であることが好ましい。
(4)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。
(5)前記dV/dlogDピークの最大値が1.0以上4.0以下。
(6)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以上1.00cm3/g以下。
【0040】
1000℃で3時間熱処理した後のdV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にあり、前記dV/dlogDピークの最大値が1.0以上であり、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.25cm3/g以上であると、1000℃で3時間熱処理した後も、比表面積の耐熱性に寄与する2nm以上100nm以下の範囲に、シャープなピークが存在し、且つ、その細孔容積が大きいといえる。
また、1000℃で3時間熱処理した後の100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.20cm3/g以下であると、比表面積の耐熱性に寄与しない細孔が少ないといえる。
以上より、上記(4)~上記(6)のすべてを満たし、且つ、1000℃で3時間熱処理した後の100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.20cm3/g以下であれば、加熱による比表面積の低下がより少ないといえる。
【0041】
前記(4)における1000℃で3時間熱処理した後の前記dV/dlogDピークは、5nm以上95nm以下の範囲にあることが好ましく、10nm以上90nm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0042】
前記(5)における1000℃で3時間熱処理した後の前記dV/dlogDピークの最大値は、好ましくは1.2以上、より好ましくは、1.4以上である。前記dV/dlogDピークの最大値は、大きいほど好ましいが、例えば、3.3以下、3.5以下等である。
【0043】
前記(6)における1000℃で3時間熱処理した後の前記2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積は、好ましくは0.27cm3/g以上、より好ましくは0.30cm3/g以上である。前記2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積は、大きいほど好ましいが、例えば、0.90cm3/g以下、0.95cm3/g以下等である。
【0044】
1000℃で3時間熱処理した後の前記100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積は、好ましくは0.19cm3/g以下、より好ましくは0.18cm3/g以下である。前記100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積は、小さいほど好ましいが、例えば、0.02cm3/g以上、0.05cm3/g以上等である。
【0045】
上記(4)~上記(6)のすべてを満たし、且つ、1000℃で3時間熱処理した後の100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積を0.01cm3/g以上0.20cm3/g以下の範囲内に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する製造方法により調整する方法が挙げられる。
【0046】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、1000℃で3時間熱処理した後の水銀圧入法に基づく細孔分布における全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積が0.50cm3/g以上2.00cm3/g以下であることが好ましい。1000℃で3時間熱処理した後の水銀圧入法に基づく細孔分布における全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積が0.50cm3/g以上であると、触媒担体としての性能により優れる。
【0047】
1000℃で3時間熱処理した後の前記全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積は、好ましくは0.60cm3/g以上、より好ましくは0.70cm3/g以上である。1000℃で3時間熱処理した後の前記全測定範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積は、大きいほど好ましいが、例えば、1.80cm3/g以下、1.90cm3/g以下等である。
【0048】
前記BJH法に基づく細孔分布、及び、前記水銀圧入法に基づく細孔分布の測定方法の詳細は、実施例に記載の方法による。
【0049】
<大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m2/g以上100m2/g以下であることが好ましい。大気圧、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した後の比表面積が45m2/g以上であると、加熱による比表面積の低下がより少ないといえる。
【0050】
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積は、好ましくは48m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは55m2/g以上である。
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積は、大きいほど好ましいが、例えば、90m2/g以下、95m2/g以下等である。
なお、前記1000℃3時間熱処理した後の比表面積は、一般的に、熱処理前の比表面積と比較して大きくなることはなく、耐熱性が高ければ、熱処理前と同等か、やや低くなる程度にとどまる。
【0051】
<大気圧、空気雰囲気下、1100℃で3時間熱処理した後の比表面積>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、大気圧、空気雰囲気下、1100℃で3時間熱処理した後の比表面積が15m2/g以上70m2/g以下であることが好ましい。大気圧、空気雰囲気下、1100℃で3時間熱処理した後の比表面積が15m2/g以上であると、加熱による比表面積の低下がさらに少ないといえる。
なお、前記1100℃3時間熱処理した後の比表面積は、一般的に、熱処理前の比表面積や、1000℃3時間熱処理した後の比表面積と比較して低くなる。
【0052】
前記1100℃で3時間熱処理した後の比表面積は、好ましくは18m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、さらに好ましくは22m2/g以上である。
前記1100℃で3時間熱処理した後の比表面積は、大きいほど好ましいが、例えば、60m2/g以下、65m2/g以下等である。
【0053】
<比表面積(初期の比表面積)>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、比表面積(初期の比表面積)が45m2/g以上150m2/g以下であることが好ましい。比表面積が45m2/g以上であると、加熱により多少、比表面積が低下したとしても、加熱後の比表面積を高く維持することができる。ここで、比表面積(初期の比表面積)とは、多孔質ジルコニア系複合酸化物を製造した後の、加熱処理や粉砕処理等を行っていない状態での比表面積をいう。
【0054】
前記比表面積は、好ましくは47m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは52m2/g以上である。
前記比表面積は、大きいほど好ましいが、例えば、140m2/g以下、145m2/g以下等である。
【0055】
前記1000℃で3時間熱処理した後の比表面積、前記1100℃で3時間熱処理した後の比表面積、及び、前記比表面積(初期の比表面積)は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0056】
<粒子径>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物の粒子径D50は、好ましくは1.0μm以上30.0μm以下である。前記粒子径D50は、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上である。前記粒子径D50は、より好ましくは29.0μm以下、さらに好ましくは28.0μm以下である。
前記粒子径D50が1.0μm以上30.0μm以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0057】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物の粒子径D10は、好ましくは0.5μm以上10.0μm以下である。前記粒子径D10は、より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上である。前記粒子径D10は、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは9.0μm以下である。
前記粒子径D10が0.5μm以上10.0μm以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0058】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物の粒子径D90は、好ましくは5.0μm以上100.0μm以下である。前記粒子径D90は、より好ましくは7.0μm以上、さらに好ましくは10.0μm以上である。前記粒子径D90は、より好ましくは90.0μm以下、さらに好ましくは80.0μm以下である。
前記粒子径D90が5.0μm以上100.0μm以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0059】
前記粒子径D10、前記粒子径D50、前記粒子径D90は、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物を製造した後、粉砕や熱処理されていない状態での粒子径をいう。上記の「粉砕」とは、細かく砕くことをいい、遊星ミル、ボールミル、ジェットミル等の一般的な手法で粉砕することをいう。
【0060】
前記粒子径D10、前記粒子径D50、前記粒子径D90は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0061】
<組成>
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、ジルコニアを含有する。前記ジルコニアの含有量は、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、好ましく30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。前記ジルコニアの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記ジルコニアの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。前記ジルコニアの含有量が30質量%以上95質量%以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0062】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことが好ましい。
【0063】
前記希土類元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいう。ただし、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、Pmを含まないことが好ましい。つまり、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことがより好ましい。
【0064】
Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むと、比表面積の熱安定性を向上させることができる。すなわち、高温に晒される前後において、比表面積の変化量を少なくすることができ、その結果触媒性能が大きく低下しないようにすることができる。
【0065】
前記希土類元素の中でも、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)が好ましい。すなわち、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、及び、酸化イットリウムからなる群から選ばれる1種以上の酸化物を含有することが好ましい。
【0066】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物は、ジルコニア、及び、前記希土類元素の酸化物以外に、
A)Al、In、Si、Sn、Bi、P及びZnからなる群から選ばれる1種以上の酸化物
B)遷移金属酸化物(但し、希土類元素及び貴金属元素の酸化物を除く)
C)アルカリ土類金属酸化物
D)白金族
からなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を含むことができる。
以下、A)~D)で示した元素を、本明細書では、「その他の元素」ということとする。前記多孔質ジルコニア系複合酸化物が前記その他の元素の酸化物を含む場合、前記その他の元素の酸化物の含有量は、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物全体を100質量%としたとき、酸化物換算で0.1質量%以上とすることができる。前記その他の元素の酸化物の含有量は、上限に制限は特にないが、20質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下等とすることができる。
前記遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Ag等が挙げられる。前記アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。前期白金族としては、Rh、Pd、Pt、Ir等が挙げられる。
【0067】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物において、ジルコニアと希土類酸化物との合計含有量は、80質量%以上100質量%以下が好ましい。ジルコニアと希土類酸化物との合計含有量は、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。ジルコニアと希土類酸化物との合計含有量は、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。
【0068】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物の好ましい組成比率としては、下記(1)~(4)に例示される合計100%を超えない組合せが挙げられる。
(1) ジルコニア; 40質量%以上 95質量%以下
希土類酸化物; 5質量%以上 60質量%以下
その他の元素の酸化物; 0質量%以上 20質量%以下
(2) ジルコニア; 43質量%以上 90質量%以下
希土類酸化物; 10質量%以上 55質量%以下
その他の元素の酸化物; 1質量%以上 15質量%以下
(3) ジルコニア; 45質量%以上 75質量%以下
希土類酸化物; 15質量%以上 50質量%以下
その他の元素の酸化物; 1質量%以上 10質量%以下
(4) ジルコニア; 50質量%以上 70質量%以下
希土類酸化物; 16質量%以上 45質量%以下
その他の元素の酸化物; 1質量%以上 5質量%以下
【0069】
前記多孔質ジルコニア系複合酸化物の組成は、実施例記載の方法により特定される。
【0070】
[多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法]
以下、多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明の多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0071】
本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、
ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して水和ジルコニアを一部生成させる第1工程と、
前記第1工程の後、硫酸塩化剤を添加して塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーAを得る第2工程とを含む。
【0072】
本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、まず、ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して加水分解し、水和ジルコニアを生成させる(第1工程)。その後(前記第1工程の後)、硫酸塩化剤を添加して塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得る(第2工程)。
ジルコニウム塩溶液を100℃以上150℃以下の条件下で加熱して加水分解し、水和ジルコニアを生成させた後で硫酸塩化剤を添加することにより、メソ孔が少なく、且つ、マクロ孔が少ない粒子(塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリー)が得られる。
【0073】
上記工程における加熱温度は、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上である。上記工程における加熱温度は、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0074】
加熱時間は、好ましくは20分以上10時間以下が好ましい。前記加熱時間は、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは40分以上である。前記加熱時間は、より好ましくは9時間以下、さらに好ましくは8時間以下である。前記混合時間を前記時間の範囲内とすることにより、生成した塩基性硫酸ジルコニウムを好適に熟成させることができる。塩基性硫酸ジルコニウムとしては限定されないが、例えば、ZrOSO4・ZrO2、5ZrO2・3SO3、7ZrO2・3SO3等の化合物の水和物が例示される。なお、塩基性硫酸ジルコニウムは、これらの1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0075】
前記加熱および混合は、大気圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。加圧下で行う場合、圧力は、特に限定されないが、好ましくは絶対圧力で0.10MPa以上、より好ましくは0.11MPa以上である。また、前記圧力は、特に限定されないが、好ましくは0.8MPa以下、0.6MPa以下、0.55MPaである。
【0076】
前記混合の後、反応液を60℃以下になるまで冷却するのが好ましい。
【0077】
前記冷却は、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。前記冷却は、下限温度は特に制限はないが、反応液が凍結しない程度が好ましく、例えば、10℃以上、20℃以上等が挙げられる。前記冷却の速度は、特に制御する必要はなく、自然放冷としてよい。ただし、スケールが大きい場合には、自然冷却に時間がかかるため、熱交換器等を使用して冷却してもよい。この場合、冷却速度は、例えば、0.1℃/分以上20℃/分以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0078】
硫酸塩化剤としては、ジルコニウムイオンと反応して硫酸塩を生成させるもの(すなわち、硫酸塩化させる試薬)であれば限定されず、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等が例示される。硫酸塩化剤は、粉末状、溶液状等のいずれの形態でもよいが、溶液(特に水溶液)が好ましい。溶液を用いる場合の溶液の濃度は適宜設定できる。
【0079】
混合液のフリーの酸濃度は、0.2~2.2N(規定)とすることが好ましい。フリーの酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等が例示される。フリーの酸の種類は限定されないが、塩酸が工業的規模での生産性が高い点で好ましい。
【0080】
ジルコニウム塩としては、ジルコニウムイオンを供給するものであればよく、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等を使用できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
【0081】
ジルコニウム塩溶液を作るための溶媒としては、ジルコニウム塩の種類に応じて選択すればよい。通常は水(純水、イオン交換水)が好ましい。
【0082】
ジルコニウム塩溶液の濃度は特に制限されないが、一般的には溶媒1000g中に酸化ジルコニウム(ZrO2)として5~250g(特に20~150g)含有されることが望ましい。
【0083】
なお、硫酸塩化剤の添加量を調整することで、メソ孔のサイズや細孔容積を好適な範囲とすることができる。
硫酸塩化剤の添加量を多くするほど、メソ孔のサイズは、大きくなる傾向にあり、細孔容積は大きくなる傾向にある。
【0084】
添加する硫酸塩化剤は、硫酸根(SO4
2-)/ZrO2の重量比が0.3以上0.7以下となるように添加することが好ましい。
【0085】
その後、前記多孔質ジルコニア系複合酸化物に希土類元素、及び、その他の元素からなる群から選択される1種以上の酸化物を含有させる場合には、後述する中和工程の前に、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに、所定量の希土類元素、及び、その他の元素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属の塩溶液、又は、化合物を添加する。
【0086】
前記工程は、温度、及び、圧力の管理が容易であるオートクレーブ中で行うことが好ましい。
【0087】
次に、前記塩基性硫酸ジルコニウムを中和することにより水酸化ジルコニウムを生成させる。具体的には、塩基性硫酸ジルコニウムをアルカリで中和することにより、水酸化ジルコニウムとする。アルカリとしては限定されず、例えば、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。この中でも、工業的なコスト面から水酸化ナトリウムが好ましい。
【0088】
アルカリの添加量は、塩基性硫酸ジルコニウムの溶液から沈殿物として水酸化ジルコニウムを生成させることができれば特に限定されない。通常は上記溶液のpHが11以上、好ましくは12以上となるように添加する。
【0089】
中和反応後は、水酸化ジルコニウム含有溶液を35~60℃で1時間以上保持することが好ましい。これにより、生成した沈殿が熟成されるとともに、濾別が容易となる。
【0090】
次に、水酸化ジルコニウムを固液分離法により回収する。例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が利用できる。
【0091】
水酸化ジルコニウムを回収後、水酸化ジルコニウムを水洗し、付着している不純物を除去することが好ましい。
【0092】
水酸化ジルコニウムは、自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥してもよい。
【0093】
次に、前記水酸化ジルコニウムを熱処理(焼成)することにより多孔質ジルコニア系複合酸化物を得る。熱処理温度は特に限定されないが、400~900℃程度で1~5時間程度が好ましい。熱処理雰囲気は、大気中又は酸化性雰囲気中が好ましい。
【0094】
得られた多孔質ジルコニア系複合酸化物は、必要に応じてハンドリング性向上などの目的で、凝集を解す処理をしてもよい。
【0095】
以上、本実施形態に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物の製造方法について説明した。
【実施例】
【0096】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において得られた多孔質ジルコニア系複合酸化物中には、不可避不純物としてハフニウムがジルコニウムに対して1~3質量%含まれる(下記式(X)にて算出)。
<式(X)>
([ハフニウムの質量]/([ジルコニウムの質量]+[ハフニウムの質量]))×100(%)
【0097】
以下の実施例で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、本発明の好ましい最小値、好ましい最大値と考慮されるべきである。
また、以下の実施例で示される測定値の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、本発明の好ましい最小値、最大値であると考慮されるべきである。
【0098】
[多孔質ジルコニア系複合酸化物の作製]
(実施例1)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物117g(ZrO2換算:54g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0099】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)756gを添加し、30分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0100】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液300g(CeO2換算:30g)、硝酸ネオジム溶液80g(Nd2O3換算:8g)、硝酸プラセオジム溶液80g(Pr6O11換算:8g)を添加した。
【0101】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0102】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例1に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0103】
(実施例2)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物119g(ZrO2換算:55g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0104】
得られた溶液をオートクレーブに入れて110℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)770gを添加し、30分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0105】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液400g(CeO2換算:40g)、硝酸ランタン溶液50g(La2O3換算:5g)を添加した。
【0106】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0107】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中800℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例2に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0108】
(実施例3)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物98g(ZrO2換算:45g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0109】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)630gを添加し、30分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0110】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液500g(CeO2換算:50g)、硝酸ランタン溶液50g(La2O3換算:5g)を添加した。
【0111】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0112】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中650℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例3に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0113】
(実施例4)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物152g(ZrO2換算:70g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0114】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)1250gを添加し、更に60分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0115】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液200g(CeO2換算:20g)、硝酸ランタン溶液20g(La2O3換算:2g)、硝酸ネオジム溶液80g(Nd2O3換算:8g)を添加した。
【0116】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0117】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例4に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0118】
(実施例5)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物130g(ZrO2換算:70g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0119】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)977gを添加し、30分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0120】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液200g(CeO2換算:20g)、硝酸ランタン溶液20g(La2O3換算:2g)、硝酸ネオジム溶液80g(Nd2O3換算:8g)を添加した。
【0121】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0122】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例5に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0123】
(実施例6)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物98g(ZrO2換算:60g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0124】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)866gを添加し、30分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0125】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液300g(CeO2換算:30g)、硝酸ランタン溶液30g(La2O3換算:3g)、硝酸ネオジム溶液70g(Nd2O3換算:7g)を添加した。
【0126】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0127】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例6に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0128】
(実施例7)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物108g(ZrO2換算:50g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が8wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0129】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)700gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0130】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液350g(CeO2換算:35g)、硝酸ランタン溶液30g(La2O3換算:3g)、硝酸ネオジム溶液120g(Y2O3換算:12g)を添加した。
【0131】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0132】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例7に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0133】
(実施例8)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物137g(ZrO2換算:63g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が11wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0134】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)882gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0135】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸ランタン溶液120g(La2O3換算:12g)、硝酸イットリウム溶液250g(Y2O3換算:25g)を添加した。
【0136】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0137】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中650℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例8に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0138】
(実施例9)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物145g(ZrO2換算:67g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0139】
得られた溶液をオートクレーブに入れて130℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)938gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0140】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸ランタン溶液50g(La2O3換算:5g)、硝酸ネオジム溶液140g(Nd2O3換算:14g)、硝酸イットリウム溶液140g(Y2O3換算:14g)を添加した。
【0141】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0142】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中650℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例9に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0143】
(実施例10)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物152g(ZrO2換算:70g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0144】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)980gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0145】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸ネオジム溶液300g(Nd2O3換算:30g)を添加した。
【0146】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0147】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中650℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例10に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0148】
(実施例11)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物134g(ZrO2換算:64g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0149】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)882gを添加し、15分間保持した。得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0150】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸ランタン溶液120g(La2O3換算:12g)、硝酸イットリウム溶液250g(Y2O3換算:25g)、リン酸溶液10g(P2O5換算:1g)を添加した。
【0151】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0152】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中650℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例11に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0153】
(実施例12)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物119g(ZrO2換算:50g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0154】
得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間保持した後、5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)826gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0155】
塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液300g(CeO2換算:30g)、硝酸ランタン溶液5g(La2O3換算:5g)、硝酸ネオジム溶液50g(Y2O3換算:5g)を添加した。
【0156】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0157】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物に水酸化ストロンチウム(SrO換算:1g)を混合し、105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、実施例12に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0158】
(比較例1)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物117g(ZrO2換算:54g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0159】
得られたジルコニウム塩溶液に5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)756gを添加し、15分間保持した。得られた溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し1時間30分保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0160】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液300g(CeO2換算:30g)、硝酸ネオジム溶液80g(Nd2O3換算:8g)、硝酸プラセオジム溶液80g(Pr6O11換算:8g)を添加した。
【0161】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0162】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中700℃で5時間熱処理(焼成)し、比較例1に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0163】
(比較例2)
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物119g(ZrO2換算:55g)をイオン交換水に溶解し、ZrO2濃度が10wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0164】
得られたジルコニウム塩溶液に5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)770gを添加し、15分間保持した。得られた溶液をオートクレーブに入れて110℃まで昇温し1時間30分保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0165】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液400g(CeO2換算:40g)、硝酸ランタン溶液50g(La2O3換算:5g)を添加した。
【0166】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加し、水酸化物沈殿(水酸化ジルコニウム含有スラリー)を生成させた。
【0167】
得られた水酸化物沈澱をろ過し、十分水洗し、得られた水酸化物を105℃、24時間乾燥させた。乾燥させた水酸化物を大気中800℃で5時間熱処理(焼成)し、比較例2に係る多孔質ジルコニア系複合酸化物を得た。
【0168】
(比較例3)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物182g(ZrO2換算:70g)をイオン交換水に溶解し、次に35%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO2濃度が4wt/v%となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0169】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて圧力を2×105Paとし、120℃まで昇温させて同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤)1035gを添加し、15分間保持した。その後、室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーを得た。
【0170】
得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーに硝酸セリウム溶液200g(CeO2換算:20g、硝酸ランタン溶液20g(La2O3換算:2g)及び硝酸ネオジム溶液80g(Nd2O3換算:8g)を添加した。
【0171】
次に25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)500gを60分間かけて添加した。この中和により、水酸化ジルコニウムを生成させた。
【0172】
次に、水酸化ジルコニウム含有スラリーを濾過・水洗した後、600℃で5時間焼成して酸化物を得た。
【0173】
(比較例4)
三価の硝酸セリウム(CeO2換算濃度:10%)溶液、400gに35%過酸化水素水、8gを添加し、セリウム溶液を得た。
次に、オキシ塩化ジルコニウム・8水和物、130g(ZrO2換算:50g)をイオン交換水で溶解し、35%塩酸およびイオン交換水で酸濃度が0.67N、ZrO2濃度が4wt/v%となるように調製した。調製した溶液を2×105Pa、120℃まで昇温し、120℃に達したところで5%硫酸ナトリウム、740gを添加し、15分間保持した後、室温になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーを得た。
そして、塩基性硫酸ジルコニウムスラリーに上記セリウム溶液、硝酸ランタン(La2O3換算濃度:10%)溶液100gを添加し、25%水酸化ナトリウム500gを添加した後、不純物が除去できるまでデカンテーションを繰り返した。最終的にスラリーをろ過・水洗し、水酸化物を得て、600℃、5時間焼成し、酸化物とした。
【0174】
[多孔質ジルコニア系複合酸化物の組成測定]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物の組成(酸化物換算)を、ICP-AES(「ULTIMA-2」HORIBA製)を用いて分析した。結果を表1、表2に示す。
【0175】
[BJH法に基づく細孔分布の測定(熱処理前)]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、細孔分布測定装置「Belsorp mini II(MicrotracBEL社製)」を用い、BJH法にて細孔分布を得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:細孔分布測定装置(MicrotracBEL社製Belsorp mini II)
測定範囲:2~200nm
測定点数:30点
解析方法:BJH法
【0176】
実施例1~実施例6、及び、比較例1~比較例4については、得られた多孔質ジルコニア系複合酸化物の細孔分布を
図1~
図10に示す。
【0177】
得られた細孔分布を用い、2nm以上100nm以下の範囲にあるdV/dlogDピークの最大値、及び、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積を求めた。結果を表1、表2示す。
【0178】
[水銀圧入法に基づく細孔分布の測定(熱処理前)]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:細孔分布測定装置(マイクロメリティクス製オートポアIV9500)
測定範囲:0.0036~10.3μm
測定点数:120点
水銀接触角:140degrees
水銀表面張力:480dyne/cm
【0179】
得られた細孔分布を用い、測定全範囲(0.0036μm以上10.3μm以下)の細孔容積、及び、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積を求めた。結果を表1、表2示す。
【0180】
[BJH法に基づく細孔分布の測定(熱処理後)]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した。その後、細孔分布測定装置「Belsorp mini II(MicrotracBEL社製)」を用い、BJH法にて細孔分布を得た。測定条件は、熱処理前のBJH法に基づく細孔分布の測定と同様とした。
【0181】
実施例1~実施例6、及び、比較例1~比較例4については、得られた多孔質ジルコニア系複合酸化物の細孔分布を
図11~
図20に示す。
【0182】
得られた細孔分布を用い、2nm以上100nm以下の範囲にあるdV/dlogDピークの最大値、及び、2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積を求めた。結果を表1、表2示す。
【0183】
[水銀圧入法に基づく細孔分布の測定(熱処理後)]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した。その後、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は、熱処理前の水銀圧入法に基づく細孔分布の測定と同様とした。
【0184】
得られた細孔分布を用い、測定全範囲の細孔容積、及び、100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積を求めた。結果を表1、表2示す。
【0185】
[熱処理前の比表面積の測定]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物の比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した。結果を表1、表2に示す。
【0186】
[1000℃で3時間熱処理した後の比表面積の測定]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1000℃で3時間熱処理した。1000℃で3時間熱処理した後の多孔質ジルコニア系複合酸化物の比表面積を、「熱処理前の比表面積の測定」と同様にして測定した。結果を表1、表2に示す。
【0187】
[1100℃で3時間熱処理した後の比表面積の測定]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物について、大気圧(0.1013MPa)、空気雰囲気下、1100℃で3時間熱処理した。1100℃で3時間熱処理した後の多孔質ジルコニア系複合酸化物の比表面積を、「熱処理前の比表面積の測定」と同様にして測定した。結果を表1、表2に示す。
【0188】
[粒子径D10、粒子径D50、粒子径D90の測定]
実施例、比較例の多孔質ジルコニア系複合酸化物(粉末)0.15gと40mlの0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液とを50mlビーカーに投入し、超音波洗浄機「VS-100 III」(株式会社ヴェルヴォクリーア)で周波数28kHzで5分間分散した後、装置(レーザー回折式粒子径分布測定装置(「SALD-2300」島津製作所社製))に投入し測定した。結果を表1、表2に示す。
【0189】
【0190】
【要約】
【課題】 加熱による比表面積の低下が少ない多孔質ジルコニア系複合酸化物を提供すること。
【解決手段】 BJH法に基づく細孔分布における2nm以上200nm以下の範囲において、以下の(1)~(3)のすべてを満たし、水銀圧入法に基づく細孔分布における100nm超え1000nm以下の範囲の細孔容積が0.01cm
3/g以上0.25cm
3/g以下であることを特徴とする多孔質ジルコニア系複合酸化物。(1)dV/dlogDピークが2nm以上100nm以下の範囲にある。(2)前記dV/dlogDピークの最大値が1.5以上5.0以下。(3)2nm以上100nm以下の範囲の細孔容積が0.30cm
3/g以上1.50cm
3/g以下。
【選択図】
図1