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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-16
(45)【発行日】2022-11-25
(54)【発明の名称】バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/203 20060101AFI20221117BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P1/205 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022527518
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006399
(87)【国際公開番号】W WO2021240919
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020094701
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246810(JP,A)
【文献】特開2005-117433(JP,A)
【文献】J.S.Hong, et al.,"MICROSTRIP SLOW-WAVE OPEN-LOOP RESONATOR FILTERS",1997 IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest,1997年,pp.713-716
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H01P 1/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの地導体層と、
前記地導体層から離間した層に2行n/2列に配列されたn個(nは、4以上の偶数)の共振器であって、それぞれがギャップを有するように少なくとも4辺を有する形状に折り曲げられた帯状導体により構成されたn個の共振器と、
帯状導体からなる第1線路及び第2線路と、を備え、
1行1列及び1行2列に配置された共振器をそれぞれ第1共振器及び第2共振器とし、且つ、2行1列及び2行2列に配置された共振器をそれぞれ第n共振器及び第n-1共振器として、
前記第1共振器において、前記第2共振器に近接する辺を第1辺とし、前記第n共振器に近接する辺を第2辺とし、前記第1辺の対辺を第3辺とし、前記第2辺の対辺を第4辺として、
前記第n共振器において、前記第n-1共振器に近接する辺を第5辺とし、前記第1共振器に近接する辺を第6辺とし、前記第5辺の対辺を第7辺とし、前記第6辺の対辺を第8辺として、
前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺及び前記第7辺に接続されており、
前記第1共振器のギャップ及び前記第n共振器のギャップの各々は、それぞれ、前記第4辺のうち前記第2共振器側の領域、及び、前記第8辺のうち前記第n-1共振器側の領域に設けられている、
ことを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記第1共振器のギャップ及び前記第n共振器のギャップの各々は、それぞれ、前記第4辺のうち前記第2共振器側の端部近傍、及び、前記第8辺のうち前記第n-1共振器側の端部近傍に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺のうち前記第n共振器側の領域、及び、前記第7辺のうち前記第1共振器側の領域に接続されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺の中点近傍、及び、前記第7辺の中点近傍に接続されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記第2共振器~前記第n-1共振器のうち、
偶数列に配列されている一対の共振器の各々のギャップは、それぞれ、当該偶数列に配列されている一対の共振器の各々を構成する4辺のうち、互いに近接する辺の中点近傍に設けられており、
奇数列に配列されている一対の共振器の各々のギャップは、それぞれ、当該奇数列に配列されている一対の共振器の各々を構成する4辺のうち、互いに近接する辺の対辺の中点近傍に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項6】
前記少なくとも4辺を有する形状は、四角形状である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの地導体層は、互いに対向する一対の地導体層であり、
前記n個の共振器は、前記一対の地導体層の間に介在する、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項8】
n=6であり、
前記第1共振器~前記第6共振器は、iを1以上5以下の整数として、第i共振器の一辺と第i+1共振器の一辺とが近接し、前記第2共振器のギャップと前記第5共振器のギャップとが近接するように配列されている、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項9】
前記n個の共振器、前記第1線路、及び前記第2線路は、線対称となるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のバンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1のFig.1には、誘電体製の基板と、基板の下側の主面に設けられた地導体層と、基板の上側の主面に設けられたn個の共振器、第1線路、及び第2線路と、を備えたバンドパスフィルタが図示されている。
【0003】
n個の共振器は、それぞれ、端部同士がギャップを有するように長方形状に折れ曲げられた帯状導体により構成されており、2行n/2列に配列されている。ここで、1行1列及び1行2列に配置された共振器をそれぞれ第1共振器及び第2共振器とし、且つ、2行1列及び2行2列に配置された共振器をそれぞれ第n共振器及び第n-1共振器とする。また、前記第1共振器の4辺のうち、前記第2共振器に近接する辺を第1辺とし、前記第n共振器に近接する辺を第2辺とし、前記第1辺の対辺を第3辺とし、前記第2辺の対辺を第4辺とする。また、前記第n共振器の4辺のうち、前記第n-1辺に近接する辺を第5辺とし、前記第1共振器に近接する辺を第6辺とし、前記第5辺の対辺を第7辺とし、前記第6辺の対辺を第8辺とする。
【0004】
第1線路は、第1共振器を構成する帯状導体の中点近傍に接続されており、第2線路は、第n共振器を構成する帯状導体の中点近傍に結合されている。第1線路及び第2線路は、このバンドパスフィルタに高周波を入出力する線路として機能する。
【0005】
このように構成されたバンドパスフィルタは、マイクロストリップフィルタの一例である。なお、このマイクロストリップフィルタのn個の共振器、第1線路、及び第2線路の上に、別の誘電体製の基板と別の地導体層とを積層することによって、Fig.1に図示されたバンドパスフィルタをストリップラインを用いたストリップラインフィルタとすることもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.S. Hong and M.J. Lancaster,Electronics LETTERS,9th November 1995 Vol. 31, No. 23, p.2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Fig.1に図示されたバンドパスフィルタでは、i番目(iは1以上n-1以下の整数)の共振器である第i共振器とi+1番目の共振器である第i+1共振器とが磁気的に結合し、第1共振器と第n共振器とが静電的に結合する構成が採用されている。この場合、第1共振器のギャップは、第2辺に設けられ、第n共振器のギャップは、第6辺に設けられる。上述したように、第1線路及び第2線路は、それぞれ、共振器を構成する帯状導体の中点近傍に接続される。すなわち、第1線路は、第3辺のうち第n共振器と逆側の端部近傍に接続され、第2線路は、第7辺のうち第1共振器と逆側の端部近傍に接続される。そのため、Fig.1に図示されたバンドパスフィルタにおいては、第1線路と第2線路との間隔を容易に広げることができる。
【0008】
一方、バンドパスフィルタの設計方針によっては、第1共振器と第n共振器とは磁気的に結合し、第2共振器と、第n-1共振器とが静電的に結合する構成を採用する場合もある。この場合においても、第1共振器と第2共振器とは磁気的に結合していることが求められる。すなわち、第1共振器は、第2共振器及び第n共振器の各々と磁気的に結合し、第n共振器は、第1共振器及び第n-1共振器の各々と磁気的に結合することが求められる。このような構成を採用したバンドパスフィルタであるフィルタ2010を図5に示す。図5は、フィルタ2010の斜視図である。
【0009】
図5に示すように、フィルタ2010は、多層基板2011と、地導体層2012,2013と、6段の共振器2141~2146と、線路2151,2152と、を備えているストリップラインフィルタである。多層基板2011は、2枚の誘電体製の板状基板である基板2111及び基板2112により構成されている。地導体層2012,2013は、多層基板2011の一対の外層の各々にそれぞれ設けられている。共振器2141~2146、及び、線路2151,2152は、多層基板2011の内層に設けられている。共振器2141は、最初段の共振器であり、共振器2146は、最終段の共振器である。線路2151は、第1線路であり、線路2152は、第2線路である。線路2151は、共振器2141に接続されており、線路2152は、共振器2146に接続されている。
【0010】
このように構成されたフィルタ2010においても、共振器2141と共振器2142とは磁気的に結合していることが求められる。すなわち、共振器2141は、共振器2142及び共振器2146の各々と磁気的に結合し、共振器2146は、共振器2141及び共振器2145の各々と磁気的に結合することが求められる。
【0011】
この条件を満たすために、共振器2141及び共振器2146は、共振器2141の4辺のうちギャップG1を含む辺と、共振器2146の4辺のうちギャップG6を含む辺とが最も離れるように配置されることが好ましい。そのため、線路2151と線路2152との間隔は、狭くならざるを得ない。
【0012】
このように、このバンドパスフィルタにおいては、第1線路と第2線路との間隔が狭くなるため、第1線路と第2線路とが結合しやすい。その結果として、このバンドパスフィルタは、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に、フィルタ特性が変動しやすい。
【0013】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ストリップラインフィルタ又はマイクロストリップフィルタと呼ばれるタイプのバンドパスフィルタにおいて、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいては、少なくとも1つの地導体層と、前記地導体層から離間した層に2行n/2列に配列されたn個(nは、4以上の偶数)の共振器であって、それぞれがギャップを有するように少なくとも4辺を有する形状に折り曲げられた帯状導体により構成されたn個の共振器と、帯状導体からなる第1線路及び第2線路と、を備え、1行1列及び1行2列に配置された共振器をそれぞれ第1共振器及び第2共振器とし、且つ、2行1列及び2行2列に配置された共振器をそれぞれ第n共振器及び第n-1共振器として、前記第1共振器において、前記第2共振器に近接する辺を第1辺とし、前記第n共振器に近接する辺を第2辺とし、前記第1辺の対辺を第3辺とし、前記第2辺の対辺を第4辺として、前記第n共振器において、前記第n-1共振器に近接する辺を第5辺とし、前記第1共振器に近接する辺を第6辺とし、前記第5辺の対辺を第7辺とし、前記第6辺の対辺を第8辺として、前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺及び前記第7辺に接続されており、前記第1共振器のギャップ及び前記第n共振器のギャップの各々は、それぞれ、前記第4辺のうち前記第2共振器側の領域、及び、前記第8辺のうち前記第n-1共振器側の領域に設けられている、構成が採用されている。
【0015】
このように構成されたバンドパスフィルタは、ストリップラインフィルタ又はマイクロストリップフィルタと呼ばれるタイプのバンドパスフィルタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、ストリップラインフィルタ又はマイクロストリップフィルタと呼ばれるタイプのバンドパスフィルタにおいて、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルタの斜視図である。
図2図1に示したフィルタの断面図である。
図3図1に示したフィルタが備えているn個の共振器の平面図である。
図4】(a)~(d)の各々は、それぞれ、本発明の第1の比較例、本発明の第1の実施例、本発明の第2の比較例、及び、本発明の第2の実施例のSパラメータを示すグラフである。
図5】従来のバンドパスフィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔フィルタの構成〕
本発明の一実施形態に係るバンドパスフィルタであるフィルタ10について、図1図3を参照して説明する。また、フィルタ10が実装される実装基板20についても図2を参照して説明する。図1は、フィルタ10の斜視図である。図2は、フィルタ10の断面図である。なお、図2は、フィルタ10が備えているビア161,162の各々の中心軸を含む平面に沿った断面を示す。また、図2には、実装基板20に実装された状態のフィルタ10を示す。図3は、フィルタ10が備えている共振器141~146及び線路151,152の平面図である。なお、図3においては、フィルタ10が備えている基板112及び地導体層13の図示を省略している。
【0019】
なお、図1図3においては、基板111及び基板112の各主面がxy平面と平行になるように、且つ、フィルタ10の対称軸AS(図3参照)がx軸と平行になるように、直交座標系を定めている。また、共振器141から共振器143へ向かう方向をx軸正方向と定め、共振器146から共振器141へ向かう方向をy軸正方向と定め、基板111から基板112へ向かう方向をz軸正方向と定めている。
【0020】
図1及び図2に示すように、フィルタ10は、多層基板11と、地導体層12と、地導体層13と、共振器141~146と、線路151,152と、ビア161,162と、スルービア171~177と、を備えている。
【0021】
<多層基板>
多層基板11は、基板111,112と、接着層とを備えている。なお、図1及び図2においては、接着層の図示を省略している。
【0022】
基板111,112は、誘電体製の2枚の板状部材である。図1に示した状態においては、基板111の上側(z軸正方向の側)に基板112が配置されている。以下において、基板111の一対の主面のうち基板112と逆側の主面を外層LO11と称し、基板112の一対の主面のうち基板111と逆側の主面を外層LO12と称し、基板111と基板112との間を内層LI1と称する。
【0023】
本実施形態において、基板111,112は、液晶ポリマー樹脂製である。ただし、基板111,112を構成する誘電体は、液晶ポリマー樹脂に限定されるものではなく、ガラスエポキシ樹脂や、エポキシ配合品や、ポリイミド樹脂などであってもよい。また、本実施形態において、基板111,112は、平面視において長方形状である。ただし、基板111,112の形状は、長方形状に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0024】
接着層は、内層LI1に設けられており、基板111と基板112とを互いに接着する。接着層を構成する接着剤は、限定されるものではなく、既存の接着剤のなかから適宜選択することができる。
【0025】
<地導体層>
地導体層12は、外層LO11に設けられた導体膜により構成されている。地導体層13は、外層LO12に設けられた導体膜により構成されている。地導体層12,13は、互いに対向する一対の地導体層の一例であり、後述する共振器141~146及び線路151,152とともにストリップラインを構成する。
【0026】
なお、本発明の一態様において、地導体層12及び地導体層13のうち、地導体層13を省略することができる。また、地導体層13を省略する場合、基板112も併せて省略することができる。地導体層13を省略する場合、地導体層12は、後述する共振器141~146及び線路151,152とともにマイクロストリップラインを構成する。
【0027】
本実施形態において、地導体層12,13は、銅製である。ただし、地導体層12,13を構成する導体は、銅に限定されるものではなく、金やアルミニウムなどであってもよい。
【0028】
図2及び図3に示すように、地導体層12には、アンチパッド121,122が形成されている。アンチパッド121は、平面視において、線路151の端部のうち共振器141に接続されていない端部1511と重なる領域を取り囲むように形成されている(図3参照)。アンチパッド122は、平面視において、第2線路152の端部のうち共振器146に接続されていない端部1521と重なる領域を取り囲むように形成されている(図3参照)。なお、端部1511,1521の各々は、それぞれ、第1端部及び第2端部の一例である。
【0029】
以下において、アンチパッド121により取り囲まれた領域をランド123と称し、アンチパッド122により取り囲まれた領域をランド124と称する。アンチパッド121及びアンチパッド122の各々は、第1アンチパッド及び第2アンチパッドの一例である。ランド123及びランド124の各々は、それぞれ、第1ランド及び第2ランドの一例である。
【0030】
<共振器>
6段の共振器である共振器141~146は、地導体層12から離間した層内に配列されたn個の共振器の一例である。したがって、本実施形態においては、n=6である。なお、nは、4以上の任意の偶数である。
【0031】
共振器141~146の各々は、隣接する共振器同士の間隔が所定の間隔になるように、互いに離間した状態で配列されている。なお、本発明の一態様において、共振器の数(段数)は6に限定されるものではなく、所望の反射特性及び透過特性を実現するために適宜選択することができる。
【0032】
本実施形態において、フィルタ10は、ストリップラインフィルタであるので、共振器141~146は、地導体層12,13の各々から離間しており、且つ、地導体層12と地導体層13との間に介在するように設けられている。本実施形態において、共振器141~146は、内層LI1に設けられている。
【0033】
共振器141~146は、図1及び図3に示すように、それぞれが帯状導体により構成されている。共振器141~146は、図3に示すように、内層LI1の層内において、それぞれを構成する帯状導体における一対の端部同士がギャップG1~G6を形成するように、各帯状導体を折れ曲げることによって構成されている。
【0034】
本実施形態において、共振器141~146は、銅製である。ただし、共振器141~146を構成する導体は、銅に限定されるものではなく、金やアルミニウムなどであってもよい。
【0035】
共振器141~146は、2行3列に配列されている。共振器141、共振器142、及び共振器143は、それぞれ、第1共振器、第2共振器、及び第3共振器の一例であり、1行1列から1行3列に配列されている。共振器144、共振器145、及び共振器146は、それぞれ、2行3列から2行1列に配列されている。また、共振器145,146の各々は、それぞれ、第n-1共振器及び第n共振器の一例である。
【0036】
共振器141には、後述する線路151が接続されており、共振器146には、後述する線路152が接続されている。
【0037】
(共振器の形状)
共振器141~146の各々は、図3に示すように、内層LI1の層内において、それぞれを構成する帯状導体を折れ曲げることによって構成されている。より詳しくは、共振器141~146の各々は、それぞれを構成する帯状導体における一対の端部同士がギャップG1~G6を形成するように、且つ、四角形状になるように、各帯状導体を折れ曲げることによって構成されている。
【0038】
本実施形態において、共振器141~146の形状は、正方形状である。図3においては、共振器141~146の各々を構成する帯状導体の中心軸に対応する正方形R1~R6を二点鎖線で図示している。ただし、共振器141~146の形状は、正方形状に限定されるものではなく、長方形状であってもよい。また、共振器141~146の各々の形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
共振器141を構成する4辺のうち、共振器142に近接する辺(x軸正方向側の辺)である第1辺を辺R11と称し、共振器146に近接する辺(y軸負方向側の辺)である第2辺を辺R12と称し、辺R11の対辺である第3辺を辺R13と称し、辺R12の対辺である第4辺を辺R14と称する。
【0040】
共振器141において、ギャップG1は、辺R14のうち共振器142側の領域(x軸正方向側の領域)に設けられている。本実施形態において、ギャップG1は、辺R14のうち共振器142側の端部(x軸正方向側の端部)の近傍に設けられている。
【0041】
共振器146を構成する4辺のうち、共振器145に近接する辺(x軸正方向側の辺)である第5辺を辺R61と称し、共振器141に近接する辺(y軸正方向側の辺)である第6辺を辺R62と称し、辺R61の対辺である第7辺を辺R63と称し、辺R62の対辺である第8辺を辺R64と称する。
【0042】
共振器146において、ギャップG6は、辺R64のうち共振器145側の領域(x軸正方向側の領域)に設けられている。本実施形態において、ギャップG6は、辺R64のうち共振器145側の端部(x軸正方向側の端部)の近傍に設けられている。
【0043】
後述する線路151及び線路152の各々は、それぞれ、共振器141の辺R13及び共振器146の辺R63に接続されている。また、線路151及び線路152の各々は、それぞれ、辺R13のうち共振器146側の領域(y軸負方向側の領域)、及び、辺R63のうち共振器141側の領域(y軸正方向側の領域)に接続されていることが好ましく、辺R13の中点近傍、及び、辺R63の中点近傍に接続されていることがより好ましい。辺R13のうち共振器146側の領域とは、辺R13の中点から共振器146側の領域を指し、辺R63のうち共振器141側の領域とは、辺R63の中点から共振器141側の領域を指す。本実施形態において、線路151及び線路152の各々は、それぞれ、辺R13の中点及び辺R63の中点に接続されている。
【0044】
共振器142は、ギャップG2が共振器145に近接する方向(すなわちy軸負方向)を向くように配置されている。共振器143は、ギャップG3が共振器144から遠ざかる方向(すなわちy軸正方向)を向くように配置されている。共振器144は、ギャップG4が共振器143から遠ざかる方向(すなわちy軸負方向)を向くように配置されている。共振器145は、ギャップG5が共振器142に近づく方向(すなわちy軸正方向)を向くように配置されている。
【0045】
換言すれば、第1共振器~第6共振器の一例である共振器141~146は、iを1以上5以下の整数として、第i共振器の一辺と第i+1共振器の一辺とが近接し、第2共振器のギャップと第5共振器のギャップとが近接するように配列されている。すなわち、(1)共振器141と共振器142とは、辺R11と辺R22とが近接しており、(2)共振器142と共振器143とは、辺R24と辺R34とが近接しており、(3)共振器143と共振器144とは、辺R33と辺R43とが近接しており、(4)共振器144と共振器145とは、辺R42と辺R52とが近接しており、(5)共振器145と共振器146とは、辺R54と辺R61とが近接しており、(6)共振器142と共振器145とは、ギャップG2とギャップG5が近接している。なお、共振器141と共振器146とは、辺R12と辺R62とが近接している。
【0046】
なお、共振器141~146の各々において、それぞれを構成する帯状導体を折り曲げる形状は、四角形状に限定されるものではなく、少なくとも4辺を有する形状であればよい。
【0047】
(隣接する共振器間における結合)
このように共振器141~146が配列されたフィルタ10において、(1)共振器141と共振器142との間、(2)共振器142と共振器143との間、(3)共振器143と共振器144との間、(4)共振器144と共振器145との間、(5)共振器145と共振器146との間、(6)共振器141と共振器146との間、における結合は、何れも主に磁気的であり、(7)共振器142と共振器145との間における結合は、主に静電的である。すなわち、共振器142~145のうち、(1)偶数列に配列されている一対の共振器142,145の各々のギャップG2,G5は、それぞれ、共振器142,145の各々を構成する4辺である辺R21~R24及び辺R51~R54のうち、互いに近接する辺である辺R21,R51の中点近傍に設けられており、(2)奇数列に配列されている一対の共振器143,144の各々のギャップG3,G4は、それぞれ、共振器143,144の各々を構成する4辺である辺R31~R34及び辺R41~R44のうち、互いに近接する辺(すなわち辺R33,R43)の対辺(すなわち辺R31,R41)の中点近傍に設けられている。
【0048】
群遅延補償のフィルタ及び等群遅延のフィルタを構成する場合、非特許文献1のFig.1に記載のバンドパスフィルタのように、最初段の共振器と最終段の共振器が静電的に結合するように各共振器を配置する場合が多い。その一方で、6段の共振器を備えているバンドパスフィルタであって、使用帯域を急峻に選択する楕円関数型のバンドパスフィルタを構成する場合、2段目の共振器と5段目の共振器との結合を静電的な結合とし、その他の共振器間の結合を磁気的な結合とする場合が多い。本発明の一態様は、非特許文献1のFig.1に記載のバンドパスフィルタのような構成に比べ、6段の楕円関数型のバンドパスフィルタを実現する場合に、後述する一対の入出力ポート間に生じ得る結合を減らし、フィルタ特性におけるその影響を減らすことができる。
【0049】
<線路>
線路151,152は、共振器141~146と同じ層、すなわち内層LI1に設けられている。線路151,152は、直線状の帯状導体により構成されている。線路151,152は、共振器141~146と同じ導体により構成されている。したがって、本実施形態において、線路151,152は、銅製である。ただし、線路151,152は、を構成する導体は、銅に限定されるものではなく、金やアルミニウムなどであってもよい。
【0050】
線路151は、第1線路の一例であり、線路152は、第2線路の一例である。線路151は、辺R13の中点である接続点PC1において、一方の端部が共振器141に接続されている。また、線路151は、接続点PC1からx軸負方向に向かって引き出されている。線路152は、辺R63の中点である接続点PC2において、一方の端部が共振器146に接続されている。また、線路152は、接続点PC2からx軸負方向に向かって引き出されている。したがって、線路151が引き出されている方向と、線路152が引き出されている方向とは、互いに平行であり、且つ、互いに同じ方向である。
【0051】
<ビア>
第1ビア及び第2ビアの一例であるビア161,162は、多層基板11を構成する2枚の基板111,112のうち、基板111に設けられた導体製の筒状部材である。ただし、ビア161,162は、導体製の柱状部材であってもよい。
【0052】
ビア161は、平面視において、地導体層12に設けられたランド123と線路151の他方の端部である端部1511とが重なる領域に設けられており、ランド123と端部1511とを短絡する。ビア162は、地導体層12に設けられたランド124と線路152の他方の端部である端部1521とが重なる領域に設けられており、ランド124と端部1521とを短絡する。
【0053】
ランド123とビア161とは、フィルタ10における一対の入出力ポートの1つとして機能する。同様に、ランド124とビア162とは、フィルタ10における一対の入出力ポートの1つとして機能する。
【0054】
なお、本発明の範疇には、ランド123、ビア161、ランド124、及びビア162を省略した構成も含まれる。ただし、図2に示したように、フィルタ10を実際に使用する場合、フィルタ10は、実装基板20に実装される。したがって、ランド及びビアを有する第2の実施例及び第2の比較例は、より現実的な構成である。
【0055】
<スルービア>
7本のスルービア171~177は、多層基板11を貫通するように多層基板11に設けられた導体製の筒状部材である。ただし、スルービア171~177は、導体製の柱状部材であってもよい。スルービア171~177の各々は、何れも、地導体層12と地導体層13とを短絡する。
【0056】
<フィルタにおける対称性>
図3に示すように、平面視において、共振器141~146、線路151、及び線路152は、対称軸ASに対して線対称となるように配置されている。対称軸ASは、線路151及び線路152が延在する方向(すなわちx軸方向)と平行であり、且つ、共振器141と共振器146との中間に位置する軸である。
【0057】
<実装基板>
上述したように、図2には、実装基板20に実装された状態のフィルタ10を示している。ここでは、実装基板20について、図2を参照して説明する。実装基板20は、多層基板21と、地導体層22と、地導体層23とを備えている。
【0058】
多層基板21は、基板211,212と、接着層とを備えている。なお、図2においては、接着層の図示を省略している。
【0059】
(多層基板)
基板211,212は、誘電体製の2枚の板状部材である。図2に示した状態においては、基板211がフィルタ10に近接する側の基板であり、基板211の下側(z軸負方向の側)に基板212が配置されている。以下において、基板211の一対の主面のうち基板212と逆側の主面を外層LO21と称し、基板212の一対の主面のうち基板211と逆側の主面を外層LO22と称し、基板211と基板212との間を内層LI2と称する。接着層は、内層LI2に設けられており、基板211と基板212とを互いに接着する。
【0060】
(地導体層)
地導体層22は、外層LO21に設けられた導体膜により構成されている。地導体層23は、外層LO22に設けられた導体膜により構成されている。地導体層22,23は、後述する線路251,252とともにストリップラインを構成する。
【0061】
図2に示すように、地導体層22には、アンチパッド221,222が形成されている。以下において、アンチパッド221により取り囲まれた領域をランド223と称し、アンチパッド222により取り囲まれた領域をランド224と称する。本実施形態において、ランド223とランド224との中心間距離は、ランド123とランド124との中心間距離と等しい。
【0062】
(線路)
線路251,252は、内層LI2に設けられた、直線状の帯状導体である。線路251は、平面視において、一方の端部がランド223と重なるように構成されている。線路252は、平面視において、一方の端部がランド224と重なるように構成されている。線路251,252は、上述したように、地導体層22,23とともにストリップラインを構成する。
【0063】
(ビア)
ビア261,262は、多層基板21を構成する2枚の基板211,212のうち、基板211に設けられた導体製の筒状部材である。ただし、ビア261,262は、導体製の柱状部材であってもよい。
【0064】
ビア261は、平面視において、地導体層22に設けられたランド223と線路251の一方の端部とが重なる領域に設けられており、ランド223と線路251の一方の端部とを短絡する。ビア262は、地導体層22に設けられたランド224と線路252の一方の端部とが重なる領域に設けられており、ランド224と線路252の一方の端部とを短絡する。
【0065】
ランド223とビア261とは、実装基板20における一対の入出力ポートの1つとして機能する。同様に、ランド224とビア262とは、実装基板20における一対の入出力ポートの1つとして機能する。
【0066】
(半田)
本実施形態において、フィルタ10は、実装基板20に対して、半田31,32,33を用いて実装されている。
【0067】
半田31は、ランド123とランド223とを導通させるとともに、フィルタ10を実装基板20に固定する。半田32は、ランド124とランド224とを導通させるとともに、フィルタ10を実装基板20に固定する。複数の半田33は、地導体層12と地導体層22とを短絡させるとともに、フィルタ10を実装基板20に固定する。
【0068】
以上のように、フィルタ10は、実装基板20に対して、低損失且つ容易に実装することができる。
【0069】
〔第1の実施例及び第2の実施例〕
図1図3に示したフィルタ10において、ビア161,162と、地導体層12に形成されていたアンチパッド121,122とを省略したものを第1の実施例及び第2の実施例とした。したがって、第1の実施例及び第2の実施例が備えている地導体層12は、ベタ膜であり、ランド123,124が設けられていない。また、図5に示した従来のフィルタ2010を、第1の比較例及び第2の比較例とした。第1の比較例及び第2の比較例における線路2151と線路2152との間隔は、第1の実施例及び第2の実施例における線路151と線路152との間隔よりも狭い。
【0070】
なお、第1の実施例、第2の実施例、第1の比較例、及び第2の比較例においては、各共振器を構成する帯状導体の幅として120μmを採用し、正方形状に折り曲げられた各共振器における1辺の長さとして約1mmを採用した。
【0071】
また、第1の実施例及び第1の比較例においては、線路151,152及び線路2151,2152の長さとして0.9mmを採用し、第2の実施例及び第2の比較例においては、線路151,152及び線路2151,2152の長さとして1.9mmを採用した。
【0072】
図4の(a)~(d)の各々は、それぞれ、第1の比較例、第1の実施例、第2の比較例、及び、第2の実施例のSパラメータを示すグラフである。なお、これらのSパラメータは、シミュレーションにより得たものである。図4の(a)~(d)の各々において、SパラメータS11を実線でプロットし、SパラメータS21を破線で示した。なお、以下においては、SパラメータS11の周波数依存性のことを反射特性と称し、SパラメータS21の周波数依存性のことを透過特性と称する。
【0073】
図4の(a)及び(b)を参照すれば、第1の比較例及び第1の実施例は、何れも良好な反射特性及び透過特性を示すことが分かった。また、第1の比較例及び第1の実施例において、低周波側の伝送0点PZLは、22GHzの近傍に位置し、高周波側の伝送0点PZHは、29GHzの近傍に位置することが分かった。
【0074】
図4の(c)を参照すれば、第2の比較例は、第1の比較例と比較して、遮断帯域におけるSパラメータS21の抑圧が悪くなることが分かった。また、第2の比較例において、伝送0点PZLは、21GHzの近傍に位置し、伝送0点PZHは、30GHzの近傍に位置することが分かった。また、第2の比較例の伝送0点PZHは、なまってしまい不明瞭になることが分かった。
【0075】
一方、図4の(d)を参照すれば、第2の実施例は、第1の実施例と同様な、良好な反射特性及び透過特性を示すことが分かった。また、第2の実施例における伝送0点PZL及び伝送0点PZHの各々は、それぞれ、22GHzの近傍及び29GHzの近傍に位置し、第1の実施例と同様であることが分かった。
【0076】
これらの結果は、対となる線路151,152の間隔が広いほど、線路151,152同士の間に生じ得る想定外の結合を抑制することができるためと考えられる。
【0077】
なお、第1の実施例及び第2の実施例では、上述したように、フィルタ10において、ビア161,162と、地導体層12に形成されていたアンチパッド121及びアンチパッド122とを省略したものを用いた。これは、第1の比較例及び第2の比較例であるフィルタ2010に対して、ビア161,162に対応する一対のビアと、アンチパッド121,122に対応する一対のアンチパッドを追加した構成を用いた場合、一対のビア及びランドが近接することに伴って、第1の実施例及び第2の実施例とは比較できないほどフィルタ特性が劣化するためである。したがって、本発明の一態様は、図1図3に示したフィルタ10のように、ビア161,162及びランド123,124を用いて一対の入出力ポートを構成する場合に好適であるといえる。
【0078】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、少なくとも1つの地導体層と、前記地導体層から離間した層に2行n/2列に配列されたn個(nは、4以上の偶数)の共振器であって、それぞれがギャップを有するように少なくとも4辺を有する形状に折り曲げられた帯状導体により構成されたn個の共振器と、帯状導体からなる第1線路及び第2線路と、を備え、1行1列及び1行2列に配置された共振器をそれぞれ第1共振器及び第2共振器とし、且つ、2行1列及び2行2列に配置された共振器をそれぞれ第n共振器及び第n-1共振器として、前記第1共振器において、前記第2共振器に近接する辺を第1辺とし、前記第n共振器に近接する辺を第2辺とし、前記第1辺の対辺を第3辺とし、前記第2辺の対辺を第4辺として、前記第n共振器において、前記第n-1共振器に近接する辺を第5辺とし、前記第1共振器に近接する辺を第6辺とし、前記第5辺の対辺を第7辺とし、前記第6辺の対辺を第8辺として、前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺及び前記第7辺に接続されており、前記第1共振器のギャップ及び前記第n共振器のギャップの各々は、それぞれ、前記第4辺のうち前記第2共振器側の領域、及び、前記第8辺のうち前記第n-1共振器側の領域に設けられている、構成が採用されている。
【0080】
このように構成されたバンドパスフィルタは、ストリップラインフィルタ又はマイクロストリップフィルタと呼ばれるタイプのバンドパスフィルタである。
【0081】
上記の構成によれば、第1共振器のギャップを第4辺に設けつつ、第1線路を、第3辺の第n共振器側の領域に接続することができる。同様に、第n共振器のギャップを第8辺に設けつつ、第2線路を第7辺の第1共振器側の領域に接続することができる。そのため、第1線路が第3辺のうち第n共振器側の端部に接続され、且つ、第2線路が第7辺のうち第1共振器側の端部に接続されているバンドパスフィルタと比較して、本バンドパスフィルタは、第1線路と第2線路との間隔を広げることができる。したがって、本バンドパスフィルタは、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動を低減することができる。
【0082】
また、本発明の第2の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記第1共振器のギャップ及び前記第n共振器のギャップの各々は、それぞれ、前記第4辺のうち前記第2共振器側の端部近傍、及び、前記第8辺のうち前記第n-1共振器側の端部近傍に設けられている、構成が採用されている。
【0083】
上記の構成によれば、第1共振器と第2共振器との結合を磁気的にしつつ、第3辺の第n共振器側の端部から第1共振器のギャップまでの距離を最も長く設定することができる。その結果、第1共振器を構成する帯状導体における第1線路の接続点の相対位置を大きく変更することなく、該接続点を第3辺の第n共振器側の端部から第n共振器側の領域に移動することができる。同様に、第n共振器を構成する帯状導体における第2線路の接続点の相対位置を大きく変更することなく、該接続点を第7辺の第1共振器側の端部から第1共振器側の領域に移動することができる。したがって、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動をより低減することができる。
【0084】
また、本発明の第3の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様又は第2の態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺のうち前記第n共振器側の領域、及び、前記第7辺のうち前記第1共振器側の領域に接続されている、構成が採用されている。
【0085】
上記の構成によれば、第1線路が第3辺のうち第n共振器側の端部に接続され、且つ、第2線路が第7辺のうち第1共振器側の端部に接続されているバンドパスフィルタと比較して、第1線路と第2線路との間隔を広げることができる。したがって、本バンドパスフィルタは、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動を確実に低減することができる。
【0086】
また、本発明の第4の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第3の態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記第1線路及び前記第2線路の各々は、それぞれ、前記第3辺の中点近傍、及び、前記第7辺の中点近傍に接続されている、構成が採用されている。
【0087】
第1線路及び第2線路の各々を、それぞれ、第3辺のうち第1共振器側の領域、及び、第7辺のうち第1共振器側の領域に接続した場合、第1線路の第3辺に対する接続点から第1共振器のギャップまでの距離、及び、第2線路の第7辺に対する接続点から第2共振器のギャップまでの距離が短くなりすぎることに起因して、フィルタ特性が劣化することが分かった。上記の構成によれば、第1線路及び第2線路の設計を変更した場合に生じ得るフィルタ特性の変動をできるだけ低減することができる。
【0088】
また、本発明の第5の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記第2共振器~前記第n-1共振器のうち、(1)偶数列に配列されている一対の共振器の各々のギャップは、それぞれ、当該偶数列に配列されている一対の共振器の各々を構成する4辺のうち、互いに近接する辺の中点近傍に設けられており、(2)奇数列に配列されている一対の共振器の各々のギャップは、それぞれ、当該奇数列に配列されている一対の共振器の各々を構成する4辺のうち、互いに近接する辺の対辺の中点近傍に設けられている、構成が採用されている。
【0089】
上記の構成によれば、第1共振器~第n共振器のうち、偶数列に配列されている一対の共振器同士は、静電的に結合し、1列を含む奇数列に配列されている一対の共振器同士は、磁気的に結合する。このように構成されたバンドパスフィルタは、非特許文献1のFig.1に記載のバンドパスフィルタと比較して、楕円関数型のバンドパスフィルタを構成する場合に、後述する一対の入出力ポート間に生じ得る結合を減らし、フィルタ特性におけるその影響を減らすことができる。
【0090】
また、本発明の第6の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様~第5の態様の何れか一態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記少なくとも4辺を有する形状は、四角形状である、構成が採用されている。
【0091】
上記の構成によれば、n個の共振器を容易に2行n/2列に配列することができる。
【0092】
また、本発明の第7の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様~第6の態様の何れか一態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記少なくとも1つの地導体層は、互いに対向する一対の地導体層であり、前記n個の共振器は、前記一対の地導体層の間に介在する、構成が採用されている。
【0093】
上記の構成によれば、n個の共振器が一対の地導体層により挟みこまれているので、一対の地導体層がn個の共振器を外部から遮蔽することができる。
【0094】
また、本発明の第8の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、n=6であり、前記第1共振器~前記第6共振器は、iを1以上5以下の整数として、第i共振器の一辺と第i+1共振器の一辺とが近接し、前記第2共振器のギャップと前記第5共振器のギャップとが近接するように配列されている、構成が採用されている。
【0095】
上記の構成によれば、第i共振器と第i+1共振器とを主に磁気結合により結合し、第2共振器と第5共振器とを主に静電結合により結合することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、所望のフィルタ特性を実現しやすい。
【0096】
また、本発明の第9の態様に係るバンドパスフィルタにおいては、上述した第1の態様~第8の態様の何れか一態様に係るバンドパスフィルタの構成に加えて、前記n個の共振器、前記第1線路、及び前記第2線路は、線対称となるように配置されている、構成が採用されている。
【0097】
上記の構成によれば、バンドパスフィルタの対称性を高めることができるので、設計パラメータを少なくすることができる。したがって、n個の共振器、第1線路、及び第2線路が線対称でないように配置されている場合と比較して、本バンドパスフィルタの設計を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0098】
10 フィルタ(バンドパスフィルタ)
11 多層基板
111、112 基板
LI1 内層
LO11、LO12 外層
12 地導体層
121、122 アンチパッド
123、124 ランド
13 地導体層
141~146 共振器(第1共振器~第6共振器、n個の共振器)
PC1、PC2 接続点
G1~G6 ギャップ
R1、R2、R3、R4、R5、R6 正方形
R11~R14、R21~R24、R31~R34、R41~R44、R51~R54、R61~R64 辺
151、152 線路(第1線路、第2線路)
1511、1521 端部
161、162 ビア
171~177 スルービア
AS 対称軸
図1
図2
図3
図4
図5