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特許7178534高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20221118BHJP
   C02F 3/04 20060101ALI20221118BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20221118BHJP
   C02F 1/463 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C02F3/34 101A
C02F3/04
C02F3/00 D
C02F1/463
C02F3/34 101D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022064854
(22)【出願日】2022-04-09
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】202210194760.5
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】黄輝
(72)【発明者】
【氏名】胡俊
(72)【発明者】
【氏名】顔宇傑
(72)【発明者】
【氏名】李同
(72)【発明者】
【氏名】任洪強
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110862150(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113173650(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111099744(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105984957(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102491502(CN,A)
【文献】米国特許第07160483(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 - 3/34
11/00 - 11/20
1/46 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法であって、
硫酸カルシウム粉末を秤量して、硫酸カルシウムと脱イオン水との質量比が1:5~15
となるように脱イオン水に加え、均一に分散させた後、水酸化カリウム溶液と脱イオン水
との体積比が1:1~5となるように、これに1Mの水酸化カリウム溶液を加えて、硫酸
カルシウム粉末を含有するアルカリ性懸濁液を調製するステップS1-1と、
室温条件下、メカニカルスターラーを用いて上記のアルカリ性懸濁液を激しく撹拌しなが
ら、過酸化水素と懸濁液中の硫酸カルシウムとのモル比が1:5~10となるようにアル
カリ性懸濁液に30質量%の過酸化水素溶液を加え、2hかけて十分に反応させ、沈殿物
を生成するステップS1-2と、
まず、ステップS1-2で得られた沈殿物を脱イオン水で3回洗浄し、次に無水エタノー
ルで3回洗浄し、その後、60~80℃の条件で24~48h乾燥させ、ナノ過酸化カル
シウム酸素放出材料を得て、使用時まで密閉された乾燥環境に保存するステップS1-3
と、
ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を秤量
して脱イオン水に加え、90℃~100℃の条件で2~3h加熱し、ポリビニルアルコー
ル、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を全て溶解して、コロイド
状物質を得て、次に、ステップS1-3で得られたナノ過酸化カルシウム酸素放出材料と
石英砂を1~2:1の重量比で前記コロイド状物質に加え、均一に混合して撹拌し、ナノ
過酸化カルシウム酸素放出材料の重量百分率が5~15wt%である混合コロイド状物質
を得るステップS1-4と、
上記の混合コロイド状物質を球状シリコンモールドに加えて、冷却した後、モールドを-
80~-20℃の条件で凍結して12~16h架橋させ、次に、解凍してから凍結し、こ
のように複数回繰り返して、球状顆粒を得て、調製済みの3~6質量%のCaCl飽和
ホウ酸溶液に前記球状顆粒を浸漬して、化学架橋を12~16h行い、次に、60~80
℃の条件で24~48h乾燥させ、酸素・炭素徐放顆粒を得るステップS1-5と、を含
む、酸素・炭素徐放顆粒を製造するステップS1と、
廃水の水質の特徴に合わせて、酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で酸素・
炭素徐放層を構築するステップS2と、
イオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を生物反応器に投入して、安定的に作動する
ステップS3とを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップS1-4では、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウム、及びステアリン酸を脱イオン水に加えた後、ポリビニルアルコールの質量濃度は4
~10wt%であり、カルボキシメチルセルロースナトリウムの質量濃度は1~4wt%
であり、ステアリン酸の質量濃度は1~2wt%である、ことを特徴とする請求項1に記
載の方法。
【請求項3】
前記の生物反応器の充填材は、セラムサイト、石英砂、及び火山岩のうちの1種又は複数
種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水高度処理の技術分野に属し、具体的には、高度生物学的脱窒強化及び環境ホ
ルモン低減の方法である。
【背景技術】
【0002】
従来の廃水処理場では、環境ホルモンを特異的かつ効率的に低減することができず、結果
として、二級生化学的処理排水には環境ホルモンが残留してしまい、このため、環境ホル
モンは、中国では廃水処理や再生水を安全にリサイクルする際に優先的な低減すべき毒物
となる。
【0003】
現在、二級生化学的処理排水に含まれる炭素や窒素が少なく、関連業界では、供給水に炭
素源を直接添加するか、又は反応器に炭素放出材料を添加することにより対応しているが
、供給水に炭素源を直接添加する場合、持続的に投入する必要があるため、運行コストが
増加し、したがって、安定的な炭素放出材料を研究することは関連業界での焦点となって
いる。また、廃水中に環境ホルモンを生じさせる物質は主に好気性生物が分解したもので
あり、一方、生物脱窒には無酸素環境が必要とされ、このため、生物反応器に酸素放出薬
剤を適量で加えることで微量酸素環境を作ることは、環境ホルモン低減及び全窒素の高度
除去の際に微生物が必要とする酸素ガスのバランスを取るための実施可能な方法である。
近年、過酸化カルシウム(CaO)を酸素放出材料として水処理に適用することについ
ての研究が報告されており、ただし、直接投入すると、酸素ガスの放出が速すぎたり、フ
リーラジカルの含量の増加が速すぎたり、pHが急激に上昇したりするなどの課題が生じ
、このため、徐放過酸化カルシウム材料の研究には重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した課題に対して、本発明特許は、カプセル化法を用いて酸素・炭素徐放顆粒材料を
合成し、生物反応器に適用すると、材料の酸素・炭素放出性能を利用して、生物反応器に
よる二級生化学的処理排水中の環境ホルモンの低減や全窒素の除去を強化し、市場での適
用の将来性が期待できる高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的解決手段は以下のとおりである。高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン
低減の方法であって、
硫酸カルシウム粉末を秤量して、硫酸カルシウムと脱イオン水との質量比が1:5~15
となるように脱イオン水に加え、均一に分散させた後、水酸化カリウム溶液と脱イオン水
との体積比が1:1~5となるように、これに1Mの水酸化カリウム溶液を加えて、硫酸
カルシウム粉末を含有するアルカリ性懸濁液を調和するステップS1-1であって、上記
プロセスの反応方程式は、
CaSO+H→CaO+HSO
SO+KOH→KSO+HOであるステップと、
室温条件下、メカニカルスターラーを用いて上記のアルカリ性懸濁液を激しく撹拌しなが
ら、過酸化水素と懸濁液中の硫酸カルシウムとのモル比が1:5~10となるようにアル
カリ性懸濁液に30質量%の過酸化水素溶液を加え、2hかけて十分に反応させ、沈殿物
を生成するステップS1-2と、
まず、ステップS1-2で得られた沈殿物を脱イオン水で3回洗浄し、次に無水エタノー
ルで3回洗浄し、その後、60~80℃の条件で24~48h乾燥させ、ナノ過酸化カル
シウム酸素放出材料を得て、使用時まで密閉された乾燥環境に保存するステップS1-3
と、
ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を秤量
して脱イオン水に加え、90℃~100℃の条件で2~3h加熱し、ポリビニルアルコー
ル、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を全て溶解して、コロイド
状物質を得て、次に、ステップS1-3で得られたナノ過酸化カルシウム酸素放出材料と
石英砂を1~2:1の重量比で前記コロイド状物質に加え、均一に混合して撹拌し、ナノ
過酸化カルシウム酸素放出材料の重量百分率が5~15wt%である混合コロイド状物質
を得るステップS1-4と、
上記の混合コロイド状物質を球状シリコンモールドに加えて、冷却した後、モールドを-
80~-20℃の条件で凍結して12~16h架橋させ、次に、解凍してから凍結し、こ
のように複数回繰り返して、球状顆粒を得て、調製済みの3~6質量%のCaCl飽和
ホウ酸溶液に前記球状顆粒を浸漬して、化学架橋を12~16h行い、次に、60~80
℃の条件で24~48h乾燥させ、酸素・炭素徐放顆粒を得るステップS1-5と、を含
む、酸素・炭素徐放顆粒を製造するステップS1と、
廃水の水質の特徴に合わせて、酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で酸素・
炭素徐放層を構築するステップS2と、
接種バイオフィルム形成法又は自然バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を
開始させ、次に、廃水を生物反応器に投入して、安定的に作動するステップS3とを含む

さらに、前記ステップS1-4では、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロー
スナトリウム、及びステアリン酸を脱イオン水に加えた後、ポリビニルアルコールの質量
濃度は4~10wt%であり、カルボキシメチルセルロースナトリウムの質量濃度は1~
4wt%であり、ステアリン酸の質量濃度は1~2wt%であり、ここで、ポリビニルア
ルコールを骨格材料、カルボキシメチルセルロースナトリウムをバインダ、ステアリン酸
を緩衝剤及び安定化剤、製造されたナノ過酸化カルシウムを酸素放出材料とし、石英砂を
用いて材料密度を向上させることにより、製造された酸素・炭素徐放顆粒は機械的強度が
大きく、破砕しにくく、酸素や有機炭素を徐放する効果を効率よく発揮できる。
さらに、前記の生物反応器は、無酸素生物反応器又は嫌気性生物反応器であり、脱窒生物
学的ろ過槽を含むが、これに限定されるものではなく、生物反硝化脱窒のための無酸素環
境を提供し、脱窒効果を向上させる。
【0006】
さらに、前記の生物反応器は、下降流方式により作動し、作動温度が10~35℃であり
、供給水のTNが30mg/L以下であり、供給水の環境ホルモンが20ng-E2/L
以下であり、生物反応器の反応条件を厳しく制御することにより、内部の微生物の活性を
向上させ、廃水の脱窒効果を高めることができる。
【0007】
さらに、前記ステップS2では、酸素・炭素徐放顆粒の投入量及び反応器の作動条件は、
以下のような形態とされ、
S2-1、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出水T
N<15mg/Lの場合、形態Iとし、
形態I:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2.5~3wt%であり、反応
器HRTが2~4hに設定され、
S2-2、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出水T
N<10mg/Lの場合、形態IIとし、
形態II:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2.5~3wt%であり、反応
器HRTが4~6hに設定され、
S2-3、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<0.4ng-E2/L且つ排出水T
N<5mg/Lの場合、形態IIIとし、
形態III:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2.5~3wt%であり、反
応器HRTが6~8hに設定され、
S2-4、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出
水TN<15mg/Lの場合、形態VIとし、
形態VI:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=1.5~2wt%であり、反応
器HRTが2~4hに設定され、
S2-5、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出
水TN<10mg/Lの場合、形態Vとし、
形態V:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=1.5~2wt%であり、反応
器HRTが4~6hに設定され、
S2-6、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<0.4ng-E2/L且つ排出
水TN<10mg/Lの場合、形態IVとし、
形態IV:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=1.5~2wt%であり、反応
器HRTが6~8hに設定される。
【0008】
さらに、前記ステップS2では、生物反応器において酸素・炭素徐放顆粒を加える位置は
、充填材層の全高さの1/5~1/3であり、充填材層の高さを限定することにより、水
と充填材層の酸素・炭素徐放顆粒とを十分に接触させ、処理効果を高める。
【0009】
さらに、前記ステップS2では、酸素・炭素徐放顆粒を加えるタイミングとしては、10
~20dごとに1回投入する。
【0010】
さらに、前記の生物反応器の充填材は、セラムサイト、石英砂及び火山岩のうちの1種又
は複数種を含む。
【0011】
さらに、前記ステップS3において生物反応器で廃水を処理した後、さらに電気凝集沈殿
処理を施し、
電気凝集沈殿処理としては、具体的には、生物反応器の排出水を電気凝集沈殿装置に添加
し、電圧3Vの直流電界の条件で、通電して5min処理し、その後、1V/minの昇
圧速度で昇圧作動を行い、電圧が6~8Vに達すると、生物処理の代謝産物が凝集して沈
殿し、このように、より良好な水質の排出水が外部へ排出されるか、又はリサイクルされ
る。
【発明の効果】
【0012】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明では、まず、硫酸カルシウムと過酸化水素溶液をアルカリ性条件で反応させ
て、ナノ過酸化カルシウム酸素放出材料を製造し、次に、ポリビニルアルコールを骨格材
料、カルボキシメチルセルロースナトリウムをバインダ、ステアリン酸を緩衝剤及び安定
化剤、製造されるナノ過酸化カルシウムを酸素放出材料とし、石英砂で材料密度を向上さ
せ、カプセル化法によって酸素・炭素徐放顆粒を製造する。水質の特徴及び排出水要件に
応じて、生物反応器に酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で酸素・炭素徐放
層を構築し、次に、反応器を起動させ、徐放酸素ガスによって好気性微生物による廃水中
の環境ホルモンの低減を促進し、有機炭素を放出して廃水中の全窒素の高度除去を強化し
、この技術は進歩性があり、二級生化学的処理排水の高度処理への適用が期待できる。
(2)本発明で開示された酸素・炭素徐放顆粒製造方法は、原料が入手しやすく、操作方
法が簡単であり、反応条件が温和で、且つ球状テンプレートを用いて造粒することにより
、実際のニーズに応じて顆粒の粒子径のサイズを調整することができ、製造された酸素・
炭素徐放顆粒は、水中で酸素及び有機炭素の両方を徐放する効果を果たすことができ、且
つ水のpHへの影響が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1で製造されるナノ過酸化カルシウム酸素放出材料の実物図である。
図2】本発明の実施例1で製造される酸素・炭素徐放顆粒の実物図である。
図3】本発明の実施例1の酸素・炭素徐放顆粒材料の生物反応器への適用の模式図である。
図4】本発明の様々な適用シナリオの形態図であり、ここで、SR-nCPは酸素・炭素徐放顆粒、EVは生物反応器の有効容積である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の内容をさらに説明するために、以下、実施例にって本発明を詳細に説明する。
本実施例の方法によって、ある市営廃水処理場の二級生化学的処理排水を処理し、且つこ
の二級生化学的処理排水の水質は、COD濃度が45~60mg/L、TN濃度が20~
30mg/L、環境ホルモンが10~20ng-E2/L、pHが6.5~8.0、温度
が25℃~30℃である。
【0015】
実施例1
高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法であって、以下のステップを含む。
S1、酸素・炭素徐放顆粒の製造
S1-1、硫酸カルシウム粉末を秤量して、硫酸カルシウムと脱イオン水との質量比が1
:5となるように脱イオン水に加え、均一に分散させた後、水酸化カリウム溶液と脱イオ
ン水との体積比が1:1となるようにこれに1Mの水酸化カリウム溶液を加えて、硫酸カ
ルシウム粉末を含有するアルカリ性懸濁液を調和した。
S1-2、室温条件下、メカニカルスターラーを用いて上記のアルカリ性懸濁液を激しく
撹拌しながら、過酸化水素と懸濁液中の硫酸カルシウムとのモル比が1:5となるように
、アルカリ性懸濁液に30質量%の過酸化水素溶液を加え、2hかけて十分に反応させ、
沈殿物を生成した。
S1-3、まず、ステップS1-2で得られた沈殿物を脱イオン水で3回洗浄し、次に無
水エタノールで3回洗浄し、その後、60℃の条件で48h乾燥させ、ナノ過酸化カルシ
ウム酸素放出材料を得て(実物図は図1参照)、使用時まで密閉された乾燥環境に保存し
た。
S1-4、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリ
ン酸を秤量して脱イオン水に加え、90℃の条件で2h加熱し、ポリビニルアルコール、
カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を全て溶解して、コロイド状物
質を得て、次に、ステップS1-3で得られたナノ過酸化カルシウム酸素放出材料と石英
砂を1:1の重量比で前記コロイド状物質に加え、均一に混合して撹拌し、ナノ過酸化カ
ルシウム酸素放出材料の重量百分率が5wt%である混合コロイド状物質を得た。
S1-5、上記の混合コロイド状物質を球状シリコンモールドに加えて、冷却した後、モ
ールドを-20℃の条件で凍結して16h架橋させ、次に、解凍してから凍結し、このよ
うに複数回繰り返して、球状顆粒を得て、調製済みの3質量%のCaCl飽和ホウ酸溶
液に凍結架橋後の球状顆粒を浸漬して、化学架橋を12h行い、次に、60℃の条件で4
8h乾燥させ、酸素・炭素徐放顆粒を得た(実物図は図2参照)。
S2:廃水の水質の特徴に合わせて、酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で
酸素・炭素徐放層を構築し(図3参照)、加えられる質量は反応器の有効容積の2.5w
t%であり、酸素・炭素徐放顆粒を加える位置は充填材層の全高さの1/3であり、且つ
酸素・炭素徐放顆粒を加えるタイミングとしては、10dごとに1回投入した。
S3、接種バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を
生物反応器に投入して、安定的に作動し、使用される接種汚泥は市営廃水処理場の無酸素
槽からの汚泥であり、且つMLSS濃度が3800mg/Lであり、生物反応器の水理学
的滞留時間は6hに設定され、生物反応器の充填材としてセラムサイトは使用され、生物
反応器は下降流採用して作動し、作動温度が10℃であり、供給水のTNは30mg/L
以下であり、供給水の環境ホルモンは20ng-E2/L以下であった。
【0016】
実施例2
高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法であって、以下のステップを含む。
S1、酸素・炭素徐放顆粒の製造
S1-1、硫酸カルシウム粉末を秤量して、硫酸カルシウムと脱イオン水との質量比が1
:10となるように脱イオン水に加え、均一に分散させた後、水酸化カリウム溶液と脱イ
オン水との体積比が1:2.5となるようにこれに1Mの水酸化カリウム溶液を加えて、
硫酸カルシウム粉末を含有するアルカリ性懸濁液を調和した。
S1-2、室温条件下、メカニカルスターラーを用いて上記のアルカリ性懸濁液を激しく
撹拌しながら、過酸化水素と懸濁液中の硫酸カルシウムとのモル比が1:8となるように
アルカリ性懸濁液に30質量%の過酸化水素溶液を加え、2hかけて十分に反応させ、沈
殿物を生成した。
S1-3、まず、ステップS1-2で得られた沈殿物を脱イオン水で3回洗浄し、次に無
水エタノールで3回洗浄し、その後、70℃の条件で32h乾燥させ、ナノ過酸化カルシ
ウム酸素放出材料を得て、使用時まで密閉された乾燥環境に保存した。
S1-4、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリ
ン酸を秤量して脱イオン水に加え、95℃の条件で2.5h加熱し、ポリビニルアルコー
ル、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を全て溶解して、コロイド
状物質を得て、次に、ステップS1-3で得られたナノ過酸化カルシウム酸素放出材料と
石英砂を1.5:1の重量比で前記コロイド状物質に加え、均一に混合して撹拌し、ナノ
過酸化カルシウム酸素放出材料の重量百分率が8wt%である混合コロイド状物質を得た

S1-5、上記の混合コロイド状物質を球状シリコンモールドに加えて、冷却した後、モ
ールドを-60℃の条件で凍結して14h架橋させ、次に、解凍してから凍結し、このよ
うに複数回繰り返して、球状顆粒を得て、調製済みの4.5質量%のCaCl飽和ホウ
酸溶液に凍結架橋後の球状顆粒を浸漬し、化学架橋を14h行い、70℃の条件で32h
乾燥させ、酸素・炭素徐放顆粒を得た。
S2:廃水の水質の特徴に合わせて、酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で
酸素・炭素徐放層を構築し、加えられる質量は反応器の有効容積の2.8wt%を占め、
酸素・炭素徐放顆粒を加える位置は充填材層の全高さの1/4であり、且つ酸素・炭素徐
放顆粒を加えるタイミングとしては、15dごとに1回投入した。
S3、接種バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を
生物反応器に投入して、安定的に作動し、使用される接種汚泥は市営廃水処理場の無酸素
槽からの汚泥であり、且つMLSS濃度が3800mg/Lであり、生物反応器の水理学
的滞留時間は7hに設定され、生物反応器の充填材としてセラムサイトが使用され、生物
反応器は下降流採用して作動し、作動温度が25℃であり、供給水のTNは30mg/L
以下であり、供給水の環境ホルモンは20ng-E2/L以下であった。
【0017】
実施例3
高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法であって、以下のステップを含む。
S1、酸素・炭素徐放顆粒の製造
S1-1、硫酸カルシウム粉末を秤量して、硫酸カルシウムと脱イオン水との質量比が1
:15となるように脱イオン水に加え、均一に分散させた後、水酸化カリウム溶液と脱イ
オン水との体積比が1:5となるようにこれに1Mの水酸化カリウム溶液を加えて、硫酸
カルシウム粉末を含有するアルカリ性懸濁液を調和した。
S1-2、室温条件下、メカニカルスターラーを用いて上記のアルカリ性懸濁液を激しく
撹拌しながら、過酸化水素と懸濁液中の硫酸カルシウムとのモル比が1:10となるよう
に、アルカリ性懸濁液に30質量%の過酸化水素溶液を加え、2hかけて十分に反応させ
、沈殿物を生成した。
S1-3、まず、ステップS1-2で得られた沈殿物を脱イオン水で3回洗浄し、次に無
水エタノールで3回洗浄し、その後、60℃の条件で24h乾燥させ、ナノ過酸化カルシ
ウム酸素放出材料を得て、使用時まで密閉された乾燥環境に保存した。
S1-4、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリ
ン酸を秤量して脱イオン水に加え、100℃の条件で3h加熱し、ポリビニルアルコール
、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びステアリン酸を全て溶解して、コロイド状
物質を得て、次に、ステップS1-3で得られたナノ過酸化カルシウム酸素放出材料と石
英砂を2:1の重量比で前記コロイド状物質に加え、均一に混合して撹拌し、ナノ過酸化
カルシウム酸素放出材料の重量百分率が15wt%である混合コロイド状物質を得た。
S1-5、上記の混合コロイド状物質を球状シリコンモールドに加えて、冷却した後、モ
ールドを-80℃の条件で凍結して12h架橋させ、次に、解凍してから凍結し、このよ
うに複数回繰り返して、球状顆粒を得て、調製済みの6質量%のCaCl飽和ホウ酸溶
液に凍結架橋後の球状顆粒を浸漬し、化学架橋を16h行い、80℃の条件で48h乾燥
させ、酸素・炭素徐放顆粒を得た。
S2:廃水の水質の特徴に合わせて、酸素・炭素徐放顆粒を加えて、生物反応器の内部で
酸素・炭素徐放層を構築し、加えられる質量は反応器の有効容積の3wt%を占め、酸素
・炭素徐放顆粒を加える位置は充填材層の全高さの1/5であり、且つ酸素・炭素徐放顆
粒を加えるタイミングとしては、20dごとに1回投入した。
S3、接種バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を
生物反応器に投入して、安定的に作動し、使用される接種汚泥は市営廃水処理場の無酸素
槽からの汚泥であり、且つMLSS濃度が3800mg/Lであり、生物反応器の水理学
的滞留時間は8hに設定され、生物反応器の充填材としてセラムサイトが使用され、生物
反応器は下降流採用して作動し、作動温度が35℃であり、供給水のTNは30mg/L
以下であり、供給水の環境ホルモンは20ng-E2/L以下であった。
【0018】
実施例4
本実施例は、以下の相違点以外、実施例2と同様であった。
S3:接種バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を
生物反応器に投入して作動し、使用される接種汚泥は市営廃水処理場の無酸素槽からの汚
泥であり、且つMLSS濃度が3800mg/L程度であり、反応器水理学的滞留時間は
5hに設定され、生物反応器の充填材としてセラムサイトが使用され、反応器は下降流を
採用して作動した。
【0019】
実施例5
本実施例は、以下の相違点以外、実施例2と同様であった。
S3:接種バイオフィルム形成法を用いてバイオフィルム形成を開始させ、次に、廃水を
生物反応器に投入して作動し、使用される接種汚泥は市営廃水処理場の無酸素槽からの汚
泥であり、且つMLSS濃度が3800mg/L程度であり、反応器の水理学的滞留時間
は3hに設定され、生物反応器の充填材としてセラムサイトが使用され、反応器は下降流
を採用して作動した。
【0020】
実施例6
本実施例は、以下の相違点以外、実施例4と同様であった。
前記ステップS2では、酸素・炭素徐放顆粒の投入量及び反応器の作動条件は以下の形態
とされた(図4参照)。
S2-1、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出水T
N<15mg/Lの場合、形態Iとし、
形態I:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=3wt%であり、反応器HRT
が4hに設定され、
S2-2、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出水T
N<10mg/Lの場合、形態IIとし、
形態II:投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=3wt%であり、反応器HRT
が6hに設定され、
S2-3、供給水C/N≦2、排出水環境ホルモン<0.4ng-E2/L且つ排出水T
N<5mg/Lの場合、形態IIIとし、
形態III、投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=3wt%であり、反応器HR
Tが8hに設定され、
S2-4、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出
水TN<15mg/Lの場合、形態VIとし、
形態VI、投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2wt%であり、反応器HRT
が4hに設定され、
S2-5、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<1.0ng-E2/L且つ排出
水TN<10mg/Lの場合、形態Vとし、
形態V、投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2wt%であり、反応器HRT
が6hに設定され、
S2-6、供給水2<C/N<5、排出水環境ホルモン<0.4ng-E2/L且つ排出
水TN<10mg/Lの場合、形態IVとし、
形態IV、投入されるSR-nCP材料/生物反応器容積=2wt%であり、反応器HRT
が8hに設定される。
【0021】
実施例7
本実施例は、以下の相違点以外、実施例6と同様であった。
ステップS3において廃水を生物反応器で処理した後、さらに電気凝集沈殿処理を施し、
電気凝集沈殿処理としては、具体的には、生物反応器の排出水を電気凝集沈殿装置に添加
し、電圧3Vの直流電界の条件で、通電して5min処理し、その後、1V/minの昇
圧速度で昇圧作動を行い、電圧が8Vに達すると、生物処理の代謝産物が凝集して沈殿し
、このように、より良好な水質の排出水が外部へ排出されるか、又はリサイクルされた。
【0022】
試験例
一般的な生物反応器及び脱窒方法と、実施例4、5の強化型反応器及び脱窒方法とを用い
て、廃水処理場の生化学的処理排水をそれぞれ処理し、得た性能指標を表1に示す。
表1:一般的な生物反応器及び実施例4、5の強化型反応器を用いて廃水処理場の生化学
的処理排水をそれぞれ処理した水の性能指標
【0023】
【0024】
表1から分かるように、運行中、実施例4の強化型反応器は、一般的な反応器に比べて、
排出水TN<14.5mg/Lであり、除去率が56.62%に達し、そして、環境ホル
モンの低減率が95%以上に達し、排出水の環境ホルモンが1.0ng-E2/Lよりも
低かった。
運行中、実施例5の強化型反応器は、一般的な反応器に比べて、排出水TN<15mg/
Lであり、除去率が49.07%に達し、そして、環境ホルモンの低減率が95%以上に
達し、排出水の環境ホルモンが1.0ng-E2/Lよりも低かった。
以上から分かるように、一般的な生物反応器及び処理方法と、実施例4、5の強化型反応
器及び処理方法とを用いて、廃水処理場の生化学的処理排水処理をそれぞれ処理したとこ
ろ、実施例4、5の強化型反応器及び処理方法の方は、水の環境ホルモン率及びTN除去
率がより優れ、このため、本発明の実施例4、5の処理効果がより優れていた。
【要約】      (修正有)
【課題】高度生物学的脱窒強化及び環境ホルモン低減の方法を提供する。
【解決手段】硫酸カルシウムと過酸化水素溶液をアルカリ性条件で反応させて、ナノ過酸化カルシウム酸素放出材料を製造し、次に、ポリビニルアルコールを骨格材料とし、ナノ過酸化カルシウムを酸素放出材料とし、石英砂で材料密度を向上させ、カプセル化法によって酸素・炭素徐放顆粒を製造する。酸素・炭素徐放顆粒から徐放される酸素ガスを利用して、好気性微生物による廃水中の環境ホルモンの低減を促進し、放出する有機炭素によって廃水中の全窒素の高度除去を強化することで二級生化学的処理排水の高度処理への適用が期待できる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4