IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図1
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図2
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図3
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図4
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図5
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図6
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図7
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図8
  • -遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/26 20060101AFI20221118BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
E01C11/26 Z
E04H9/16 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019039000
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020133384
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500410123
【氏名又は名称】株式会社エルコム
(72)【発明者】
【氏名】相馬 督
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-086289(JP,A)
【文献】特開2004-172103(JP,A)
【文献】特開昭49-121326(JP,A)
【文献】特開2012-162907(JP,A)
【文献】特開2013-139691(JP,A)
【文献】特開2017-152320(JP,A)
【文献】実開昭51-105285(JP,U)
【文献】特開平07-211110(JP,A)
【文献】平行光型ラインヒータ LHW-60/f∞タイプ,有限会社フィンテックのホームページ,2018年08月17日,https://web.archive.org/web/20180817103931/http://www.funtech-jp.com/sah/LHW-60-fP-L-frame.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/26
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状下部開放のケーシングを設け、該ケーシング内に反射板と遠赤外線放射ランプを設けるとともに、該反射板内最上部に近接して遠赤外線放射ランプを位置させてなる遠赤外線式融雪装置において、該ケーシング高さを従来品より大とするために、ケーシング用の延長カバーをケーシングに対し着脱可能に設けて、必要に応じてこの延長カバーを用いて全体ケーシング高さの調整を可能とすることにて、該遠赤外線放射ランプから下方へ向けて放射される遠赤外線の放射角度範囲を狭めることにより、下方積雪に対する単位面積あたりの輻射熱量を増大させて、融雪効果を向上させたことを特徴とする、遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠赤外線放射ランプを用いた遠赤外線式融雪装置におけるケーシングの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述方式の融雪装置が利用されているが、本発明にて示すように、ケーシングおよび反射板を下方に長く伸ばした構造は見当たらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
降雪地域においては、冬期の除排雪が重要であって、古くから種々の手段が用いられてきた。一般的手段としては、人力や重機による除雪、融雪槽による対処が多用されている。
一方、特定箇所を重点的に融雪する手段としては、照射型スポット融雪がある。
これは、遠赤外線放射ランプの下方を除く外周をケーシングで覆い,融雪しようとする箇所の上方にこのランプを下向きに設置し、ランプへの通電にて放射される遠赤外線を下方の積雪に向けて放射して融雪するものであり、建物の出入り口等によく用いられている。
しかしながら、ランプと積雪面との距離のために、ランプから放射された遠赤外線は拡散してしまうために、融雪効率の低下を招くという問題があった。
本発明は以上に鑑み、簡易な手段にて既述の問題を解決するべく発明されたもので、従来法に比べてより効率よく融雪することのできる、新規かつ有用なる手段を得ることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は以下の構成とした。すなわち
所定形状下部開放のケーシングを設け、該ケーシング内に反射板と遠赤外線放射ランプを設けるとともに、該反射板内最上部に近接して遠赤外線放射ランプを位置させてなる遠赤外線式融雪装置において、該ケーシング高さを従来品より大とするために、ケーシング用の延長カバーをケーシングに対し着脱可能に設けて、必要に応じてこの延長カバーを用いて全体ケーシング高さの調整を可能とすることにて、該遠赤外線放射ランプから下方へ向けて放射される遠赤外線の放射角度範囲を狭めることにより、下方積雪に対する単位面積あたりの輻射熱量を増大させて、融雪効果を向上させる。
本発明は以上の構成よりなる遠赤外線式融雪装置におけるケーシング構造である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、反射板と遠赤外線放射ランプを内蔵した下部開放のケーシングにおいて、そのケーシング高さを従来例より大としたので、該ランプから放射される遠赤外線の放射範囲を狭めて,より効率的に融雪することのできる遠赤外線式融雪装置を得ることができる。また、ケーシングサイズを適宜に選択することにて、従来例に比べて上下距離にて1.8倍から2倍ほど遠方の雪をも溶かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の内部構造説明図(正面視)
図2】本発明の内部構造説明図(左側面視)
図3】従来例の熱線放射範囲説明図(左側面視)
図4】本発明の熱線放射範囲説明図(左側面視)
図5】本発明の熱線放射状態説明図(左側面視)
図6】本発明の熱線放射状態説明図(正面視)
図7】本発明の他例におけるケーシング説明図
図8】本発明の他例におけるケーシング拡大説明図(平面視)
図9】本発明の変化例におけるケーシング要部説明図(当接状態)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1はケーシングで、側面視において上部をすぼめた下部開放直方体形状の箱体である。2は反射板で、高反射率を有する特定形状の金属板である。
反射板の形状は、図1図2にて示すように、側面視においてその上部は放物線形状であり、一方、正面視においては略台形状の側面を有しており、図のごとく2系統が一セットとして用いられる。
3は遠赤外線放射ランプで、前記ケーシング内の反射板内最上部に近接して適宜支持部材にてケーシング天井と平行に通電配置される。このランプは計4個が使用される。
以上の遠赤外線融雪装置は、融雪しようとする積雪箇所の上方に、適宜支持部材を介して例えば建物の出入り口上部に、建物に対して選択した適宜角度にて設置される。
なお、実際には端子台その他の必要機器が付属するが、図面では省略表示している。
【0008】
本発明の使用に際しては、本融雪装置に電力を投入することにて、装備されている遠赤外線放射ランプが点灯して、このランプから下方に向けて遠赤外線が放射され、積雪はその輻射熱にて融解する。該ランプからの放射熱線の一部は、直に積雪に放射され、他の一部の熱線は反射板に当たって反射し、やがて積雪に放射され、これらの放射熱線にて融雪効果が発揮される。
建物に設置される本融雪装置は、地面より所定距離上方に位置させることが必要となる。
例えば人の出入り口などでは、通行を妨げることのないように少なくとも地面から2メートル程度上方での設置が要求される。従って、本融雪装置と地面との間には上記程度の距離が必要となる。遠赤外線放射ランプから放射された遠赤外線は直進性を有して積雪表面に到達するが、このランプと積雪面との距離が大きくなると当然のごとく積雪が受ける輻射熱は減衰する。また、この遠赤外線の放射範囲も融雪効率に影響を与える。
【0009】
図3は融雪装置における従来型のケーシング例(側面視)、図4は本発明のケーシング例である。使用するランプおよび側面視における反射板の巾寸法は両者とも同一である。
従来例ではランプから放射された遠赤外線は図のごとく、ケーシング下端とランプを結ぶ線にてその放射範囲が定まり、ケーシング高さは短めであるために、広い放射範囲である。従って、放射熱線は拡散して単位面積当たりの積雪が受ける輻射熱は小さくなる。
これに対し本発明を示す図4では、ケーシング高さは大であり、従来例に比べて熱線の放射範囲は狭く、単位面積当たりの積雪が受ける輻射熱は大きくなる。
そのために、従来例に比べて本発明の融雪効率は高くなる。
ただし、ケーシング高さが長すぎると、反射回数が増加して熱線の減衰が大きくなるので、例示程度が適当である。
【0010】
これは、正面視における放射熱線範囲でも同様であり、より高い融雪効率を得ることができる。今、従来例のケーシング高さ(100ミリメートルから200ミリメートル)をAとすれば、本発明により下方延長されるケーシング高さはBであり、本発明におけるケーシング高さはA+Bとなる。実験の結果、Aに対するA+Bは約1.5倍から4.5倍が適当であるとともに数値的には330ミリメートルから430ミリメートルが好適であって、融雪可能距離すなわちランプから積雪面までの距離は、従来例では約2.5メートルから2.8メートルであるが、本発明では約5メートル以上との知見を得ている。
また、反射板高さとケーシング高さの比は、本例では1対2.4であるが、好適には1対2.2から2.6の範囲である。反射板高さを大きくするとコストアップになるため、本例では反射板高さは従来例と同等であるが、ケーシング高さを高くして既述の効果を生み出すよう配慮している。
【0011】
図7図8は,本発明の他例を示すものである。
前例はケーシング自体を長いものとしたが、本例は従来型のケーシング外面に対して延長カバーを着脱可能としたものである。図において、10は延長カバーで、平面視略コ字形の金属板であって、一対が用いられる。この延長カバーは有孔(短辺部分)であって、対応する従来型ケーシング下部適所に雌ネジを刻設し、延長カバーの孔とこの雌ネジを重ねてビス11にて螺着固定する。なお、雌ネジに代えて有孔として、ビスとナットにて固定する方式としてもよい。また、図7にて示すように、相互のカバー端には若干の間隙12を設けて、螺着時に該カバー端が押圧接触することを回避している。
【0012】
図9は、本発明の変化例を示すものである。これは延長カバー内面に水平に細長の長方形板体よりなる当接板13を固着して設けたものであり、この当接板はビス孔より下方に位置する。これは延長カバーの取り付け作業を容易とするためのもので、この当接板上端面を従来型ケーシングの下端に当接させることにて、自然に延長カバーの上下位置が定まって、各孔位置の一致を容易とするよう配慮したものである。
従って、これらの方式では、延長カバーの着脱が可能であるため、使用状況に適した本発明の利用を行うことができる。
【0013】
以上、本発明について記したが、本発明における遠赤外線式融雪装置は,従来例に比べてそのケーシング高さを増大させており、そのために放射される遠赤外線の角度範囲を狭めて、単位面積当たりの積雪に対する輻射熱量が増加して、より効率的な融雪効果を発揮するところにその特徴を有するものである。
なお、既例におけるケーシングサイズと構造は実施の一例であって、近似の他の構成としてもよく、このケーシング内面もそれなりの反射機能を有している。また、既例では一つのケーシングに4個の遠赤外線放射ランプを用いたが、状況に応じてこのランプ数を適宜に増減して構成してもよい。本発明はシンプルな構成にて、融雪効率を高めることができ、より広い用途を見込めるものである。
以上のごとく、本発明にて融雪効率を高めた遠赤外線式融雪装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0014】
1 ケーシング
2 反射板
3 遠赤外線放射ランプ
4 放射遠赤外線
5 取り付け部材
6 建物
7 反射板(従来例)
10 延長カバー
11 ビス
12 間隙
13 当接板
A 従来例のケーシング高さ
B 本発明により下方延長されるケーシング高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9