(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】給水機能付き植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20221118BHJP
A01G 27/06 20060101ALI20221118BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20221118BHJP
【FI】
A01G9/02 F
A01G9/02 E
A01G27/06
A01G31/00 601E
A01G31/00 601F
(21)【出願番号】P 2019053926
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】711001457
【氏名又は名称】有限会社ピクタ
(72)【発明者】
【氏名】陶 武利
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-010352(JP,U)
【文献】国際公開第2011/145619(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0032128(US,A1)
【文献】米国特許第05276997(US,A)
【文献】特開平10-215712(JP,A)
【文献】特開昭61-274630(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101327986(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 27/00 - 27/06
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯めることができる貯水容器、
前記貯水容器の側壁に貫通するように設けられた側壁穴、および、
前記側壁外面に設けられた植栽部を備え、
水位が前記側壁穴より上にある場合において、
前記貯水容器は
、気密性を保つことができ、
前記植栽部は、前記側壁穴に接するように着けられた給水布で構成され、前記給水布には前記側壁穴を通して前記水が供給され
、
前記側壁穴は、前記給水布が前記側壁穴に接しないときには水漏れを生じさせない、
植物栽培装置。
【請求項2】
さらに、前記貯水容器内部に前記側壁穴と接する給水紐を有し、
前記給水紐は、前記側壁穴よりも水位が下がっても、前記水を前記給水布に供給し続けることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
前記側壁穴が、前記貯水容器の下半分の領域に設けられたことを特徴とする植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水容器に設けた側壁穴から給水布に水を供給し、給水布自体が植栽部となる植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来植物の栽培は、人手による灌水を中心に行われていた。しかし、このような人手による灌水は、継続的な手間を要するので容易ではない。そこで、鉢栽培においては、鉢底から貯水部に給水紐を垂らして栽培する底面紐給水という方法が広く普及し、水やりの手間軽減に役立っている。
【0003】
一方、特許文献1のように植栽部の下部に貯水部を設け、貯水容器から給水性のある床材へ毛細管現象を利用して給水する植物栽培装置がある。
【0004】
この種の栽培装置に関連する先行技術として、透水性のある陶器でできた貯水容器の側壁面を植栽部として利用する「浸み壺」という栽培装置がランなどの栽培に利用できると非特許文献1に紹介されている。
【0005】
また特許文献2のように、ポンプ等の動力源を使った循環式の縦型栽培装置がある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-226060号公報
【文献】特開2014-217349号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】小田倉正圀ら編、「野生ランの花・楽しみ方・味わい方」、三心堂出版社、1993年11月、P22-29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、上記の栽培装置を用いれば、灌水の手間軽減につながるが、特許文献1の装置では、装置の構造上、下部に貯水部、上部に植栽部と別々に設ける形となる。栽培装置の設置空間が限られていた場合、植栽部を大きく取ると貯水部を小さくせざる負えなかった。水は蒸発や植物の利用により徐々に失われていくため、貯水部が小さい場合頻繁な給水が必要であった。一方、貯水部を大きくとると、給水の頻度を下げられるが、植栽部の大きさが小さくなった。
【0009】
非特許文献1に記載の「浸み壺」は、水の浸透する陶器でできた貯水容器の壁面に植物を育てるものであり、貯水容器そのものを植栽部にできる為、貯水部を大きくとっても植栽部の大きさが犠牲にはならない。しかし、容器全体から水が過剰に浸み出し、水が漏れ出してしまうことから、貯水した水全てを無駄なく利用することができなかった。また、水漏れが問題となる室内においては、漏れ出した水を受ける為の皿などを別途用意する必要があった。
【0010】
非特許文献1に記載の「浸み壺」は、水位確認する為には、上部の給水口から覗く必要があり、確認に手間を要した。
【0011】
特許文献2のような循環式の装置は、給水手段に融通が効くことから、植栽部の大きさも制限されにくい。しかし、ポンプなどの駆動力を必要とし、電力などのコストがかかる問題があった。
【0012】
本発明は、上記技術の問題点に鑑み、頻繁な水やりの手間を必要とせず、貯水部を大きくとっても植栽部の大きさが制限されることなく、貯水した水が無駄なく利用でき、水位確認も容易で、電力などのコストがかからない植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
閉塞空間でできた気密性のある容器は、側壁面に穴を開けても、水の重力よりも大気圧とその穴にはたらく水の表面張力を合わせた力の方が大きければ、水漏れが生じない。その自然法則を利用し、気密性のある容器に、水漏れを生じさせない程度の大きさで側壁穴を設け、その側壁穴に接するよう着けられた給水布から、側壁穴を通して水が給水布に供給され、給水布自体が植栽部となる植物栽培装置とする。
【0014】
前記植物栽培装置は、貯水容器内部に、側壁穴と接する毛細管現象を起こす給水紐を有し、側壁穴の高さまで水位が下がった後も、給水紐の末端が水位に応じて上下する為、側壁穴を通して、貯水容器の水がなくなるまで給水布に水を供給し続けることを特徴とする植物栽培装置とする。
【0015】
前期植物栽培装置の側壁面下部は、水位の確認できる透明または透光性を有する素材で形成されることを特徴とする植物栽培装置とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関わる植物栽培装置によると、動力無しで、水が毛細管現象で自動給水される為、灌水の手間を軽減させた。
【0017】
貯水容器の表面を広く植栽部として活用できることから、貯水部を大きくしても、植栽部のスペースが制限されることがなくなった。その為、従来手法よりも貯水部を大きくすることが可能で、貯水部へ頻繁に給水する必要がなくなった。
【0018】
貯水容器の側壁面下部から水位が確認できる為、最適なタイミングで給水を行うことが可能となった。
【0019】
植栽部となる給水布は、常に適度な水分を保持しながら、表面の多くが大気にも触れている為、植物の根に必要な水と酸素のある環境が適切に保たれる。
【0020】
植栽部の給水布から水分が蒸発する際に、気化熱が奪われるので、暑さに弱い植物にも好適な環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に関わる植物栽培装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明に関わる植物栽培装置に給水紐を装着した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明に関わる植物栽培装置を示す断面図である。
【
図4】本発明に関わる植物栽培装置から栓を取り外した状態を示す断面図である。
【
図5】本発明に関わる植物栽培装置に給水紐を装着した状態を示す断面図である。
【
図6】本発明に関わる植物栽培装置の給水紐を装着した状態の実施例を説明する斜視図である。
【
図7】本発明に関わる植物栽培装置の給水紐を装着した状態の実施例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1と
図3は本発明に関わる装置の給水紐を使用しない状態の例を示し、閉塞空間でできた貯水容器(2)に側壁穴(5)を設け、側壁穴(5)から水が給水布(6)に供給され、給水布(6)自体が植栽部となる植物栽培装置(1)である。
【0023】
植物栽培装置(1)に用いる貯水容器(2)は、例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの樹脂を用いたブロー成型品またはインジェクション成型品等であって、
図3に示すように少なくとも側壁面下部(9)は透明または透光性を有していることが水位確認を行う上で望ましい。
【0024】
図1と
図3は給水紐を使用しない場合の、植物栽培装置である。栓(3)が気密性を保った状態で装着され、側壁穴(5)の大きさ、数は特に限定するものではないが、側壁穴にはたらく水の表面張力と大気圧を合わせた力が、水の重力よりも大きい場合は、水が漏れ出すことがないという自然法則を利用し、水が漏れ出さない範囲で、穴の大きさや水位を調整する。側壁面下部(9)は、透明または透光性を有する素材の為に、水(8)位の確認が容易である。
【0025】
図4に示すように、植物栽培装置(1)を構成する貯水容器(2)は、栓(3)を取り外して、給水口(4)から水を供給することができる。
【0026】
給水口(4)に用いる栓(3)は、例えば伸縮性のあるゴム、パッキン付きのネジ蓋、ポリエチレン製のつば付きキャップなど、気密性が保たれるものであれば、種類を問わない。
【0027】
植物栽培装置(1)に設けられた植栽部となる給水布(6)は、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維が加水分解を受けて腐らないことから推奨される。繊維の性状は、毛細管現象を発現しやすいマイクロファイバーなどの極細繊維が給水および保水性も高くなるので好ましい。給水布の色は明るい色よりも、暗い色の方が根の生育上好ましい。
【0028】
植物栽培装置(1)を構成する植栽部となる給水布(6)を貯水容器(2)に固定する手段としては、接着して固定する方法と脱着可能状態で固定する二つの方法がある。接着する手段としては、例えばシリコンやグルーガン等を使用する。脱着可能な固定方法としては、例えば糸で縛ったりゴムで押さえたりする等がある。また、給水布(6)がオス型の面ファスナーに絡み着く素材であれば、面ファスナーを貯水容器(2)に接着した後、給水布(6)を装着することも可能である。脱着可能な固定方法は、自由に取り外しがきくことから、栽培管理をする上で効果的である。
【0029】
図2と
図5は、貯水容器(2)内部に側壁穴(5)と接するよう給水紐(7)が設置された状態を示し、給水紐(7)を装着することで、側壁穴(5)よりも下部にある水をあますことなく利用できる。給水紐(7)の材質は、例えばナイロンやポリエステルなどの化学繊維製等がある。水の漏れ難さと、給水性の向上は、給水紐(7)の太さや密度で調整が可能である。給水紐(7)には、側壁穴(5)と接する側とは逆の末端に、フロート(10)を着けておけば、フロートが水位に応じて上下する為、給水時期の目安を確認し易いので便利である。
【0030】
図6は、植物栽培装置(1)の植栽部となる給水布(6)に植物(12)を植えた状態を示す。給水布(6)に植物(12)を最初に植える際、根が給水布(6)に伸びていない為に垂直面であれば、落下してしまう恐れがある。その為、植物(12)の根が伸びるまで、固定する必要がある。植物を固定する手段は、糸で縛ったり、輪ゴムでとめたり、給水布(6)の繊維にからみつかせるなどの方法がある。また、垂直面よりも水平面であれば、植物の固定が楽な為、予め水平面で根付かせた給水布を貯水容器の垂直面に固定してもよい。
【0031】
図7は、貯水容器(2)の壁面だけでなく、貯水容器(2)頂部にも給水布(6)を設置して植栽した状態である。また、貯水容器(2)の形状は、図に示した円筒に限定されるものではなく、直方体や球体など様々な形状が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 植物栽培装置
2 給水容器
3 栓
4 給水口
5 側壁穴
6 給水布
7 給水紐
8 水
9 側壁面下部
10 フロート
11 フロート留め
12 植物