(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/30 20200101AFI20221118BHJP
D06F 37/04 20060101ALI20221118BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
D06F33/30
D06F37/04
D06F39/08 301A
D06F39/08 301B
D06F39/08 301C
D06F39/08 311C
(21)【出願番号】P 2017223504
(22)【出願日】2017-11-21
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 宏之
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223622(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161252(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/199627(WO,A1)
【文献】特開2016-000197(JP,A)
【文献】特開2006-311884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266504(US,A1)
【文献】特開2011-62334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
フレームに固定される外槽と、
外槽及びフレームを水封のために接続する投入口パッキンと、
外槽内で回転自在に支持されるドラムと、
前記ドラムの内周面に周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、
前記バッフルの各々に注水するための注水装置と、
ドラムが一回転する毎に一回信号が発生するドラム位置検出装置と、
外槽振動を検出するための単一の加速度センサと、
前記加速度センサにおける加速度から検出した仮偏芯位置を補正して前記ドラム内の
実際の偏芯位置である正式偏芯位置を検出する偏芯位置検出手段と、
脱水工程において、前記
ドラムの偏芯量が注水閾値以上になったときに前記
正式偏芯位置に対向する前記バッフルへの注水を開始し、前記偏芯量が加速閾値以下になったときに当該バッフルへの注水を停止するように前記注水装置を制御する制御手段とを具備し、
前記偏芯位置検出手段は、
前記仮偏芯位置を補正して前記正式偏芯位置を導き出す際に、前記ドラムの前後方向についての
偏芯負荷が前側にある場合と後側にある場合とで異なる補正を行うことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記偏芯位置検出手段は、ドラム定速回転中の加速度センサからの上下方向の振幅値と前後方向の振幅値との差、または、ドラム定速回転中の加速度センサからの左右方向の振幅値と前後方向の振幅値との差に基づいて、前記ドラムの前後方向について
の偏芯負荷が前側及び後側の何れにあるかを検出することを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記偏芯位置検出手段は、回転数の上昇に伴うドラムの前後方向についての仮偏芯位置の変化率が予め設定された所定値を超えた場合に、前記ドラムの前後方向について
の偏芯負荷が後側にあることを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱水機能を有するドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される洗濯機は、洗濯脱水機能、洗濯脱水乾燥機能を備えるものがある。
【0003】
脱水機能を有する洗濯機は、ドラム内で洗濯物の偏りにより振動や騒音が発生する。また洗濯物の偏りが大きければ、回転時のドラムの偏心が大きくなり、回転に大きなトルクが必要となるので脱水運転を開始することができない。
【0004】
これを解消するためには、使用者が洗濯機の運転を停止して手作業により洗濯物の偏りを解消していた。
【0005】
かかる煩瑣な作業を解消するために、洗濯物の偏りであるアンバランスの大きさが所定値より大きいと判定した場合に、位置検出手段の出力タイミングに応じて遠心力が重力よりも小さくなる回転速度になるまでドラムを減速させて洗濯物の偏在を解消するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、脱水時に洗濯物がドラムの前部に偏るアンバランスの発生を防止するため、ドラムの前部および後部に対して配設した加速度センサにより、検出された振動量の差を算出し、洗濯物がドラムの前部に偏るアンバランス状態を検知するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-290089号公報
【文献】特開2009- 82558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された技術は、ドラムの回転を減速することにより遠心力を低下させ、重なり合っている洗濯物を重力により落下させるようにしたものである。しかしながら、この従来技術では互いに絡まりあって塊となっている洗濯物は、そのまま落下することになるので、塊を解きほぐすことはできない。このような状態でドラムを回転すると、アンバランスは解消されていないので、再度アンバランスが検出され、ドラムの減速が繰り返されることになる。
【0009】
一方、上記特許文献2に開示された技術は、ドラムの回転時にあって、前部の振動検出手段によって検出された振動値と後部の検出手段によって検出された振動値との差を算出する。そして、この振動値の差が予め設定された閾値を超えた場合、ドラムの回転を減速または停止するようにしたものである。
【0010】
しかしながら、この従来技術によっても互いに絡まりあって塊となっている洗濯物は、依然として解きほぐされずドラム内に残存することになり、アンバランスを解消する根本的な解決策とはならない。
【0011】
そこで、上記特許文献3に記載の技術であれば、上記2つの特許文献では解決できなかった課題を解決することが期待される。そして現在、上述した課題を積極的に解決するための更なる具体的な制御手順や具体的な構成が提供されることが期待されている。
【0012】
本発明はかかる従来の問題を解決するものである。本発明により、洗濯槽内に洗濯物の偏在があっても、脱水工程時において洗濯槽のアンバランスを確実に低減し、脱水工程を速やかに行うことによって洗濯時間を短縮することができるドラム式洗濯機を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るドラム式洗濯機は、フレームと、フレームに固定される外槽と、外槽及びフレームを水封のために接続する投入口パッキンと、外槽内で回転自在に支持されるドラムと、前記ドラムの内周面に周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、前記バッフルの各々に注水するための注水装置と、ドラムが一回転する毎に一回信号が発生するドラム位置検出装置と、外槽振動を検出するための単一の加速度センサと、前記加速度センサにおける加速度から検出した仮偏芯位置を補正して前記ドラム内の実際の偏芯位置である正式偏芯位置を検出する偏芯位置検出手段と、脱水工程において、前記ドラムの偏芯量が注水閾値以上になったときに前記正式偏芯位置に対向する前記バッフルへの注水を開始し、前記偏芯量が加速閾値以下になったときに当該バッフルへの注水を停止するように前記注水装置を制御する制御手段とを具備し、前記偏芯位置検出手段は、前記仮偏芯位置を補正して前記正式偏芯位置を導き出す際に、前記ドラムの前後方向についての偏芯負荷が前側にある場合と後側にある場合とで異なる補正を行うことを特徴とするドラム式洗濯機である。ここで、「前後方向」とは、洗濯機の開口部を正面視したときに水平方向に関して開口部から後壁に向かう方向であり、「上下方向」とは鉛直方向と同義であり、「左右方向」とは水平方向に関して前後方向に垂直な方向を指すものとする。
【0015】
本発明に係るドラム式洗濯機において、前記偏芯位置検出手段は、ドラム定速回転中の加速度センサからの上下方向の振幅値と前後方向の振幅値との差、または、ドラム定速回転中の加速度センサからの左右方向の振幅値と前後方向の振幅値との差に基づいて、前記ドラムの前後方向についての偏芯負荷が前側及び後側の何れにあるかを検出することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るドラム式洗濯機において、前記偏芯位置検出手段は、回転数の上昇に伴うドラムの前後方向についての仮偏芯位置の変化率が予め設定された所定値を超えた場合に、前記ドラムの前後方向についての偏芯負荷が後側にあることを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドラム式洗濯機は、フレームと、フレームに固定される外槽と、外槽及びフレームを水封のために接続する投入口パッキンと、外槽内で回転自在に支持されるドラムとを具備するドラム式洗濯機であって、ドラムが一回転する毎に一回信号が発生するドラム位置検出装置と、外槽振動を検出するための単一の加速度センサと、ドラムの前後方向、上下方向及び左右方向の偏芯位置を検出する偏芯位置検出手段とを有し、ドラムの前後方向の偏芯位置を考慮し上下方向及び左右方向の偏芯位置を算出することを特徴とする。
【0018】
これにより、加速度センサを複数個使用することなく、ドラムの前後方向に係る偏芯位置に関わらず、上下方向及び左右方向に係る偏芯位置を正しく測定することができる。
【0019】
本発明のドラム式洗濯機は、偏芯位置検出手段は、ドラム定速回転中のモータ回転数の変化値、モータ電流変化値及び、加速度センサからの左右方向の振幅値及び上下方向の振幅値の差を利用して測定することを特徴とする。
【0020】
これにより、より高い精度での左右方向の振幅値及び上下方向の振幅値の測定を行うことができる。
【0021】
本発明のドラム式洗濯機は、ドラムの前後方向の偏芯位置検出手段は、ドラム定速回転中の加速度センサからの左右方向の振幅値及び上下方向の振幅値と前後方向の振幅値との差によって測定することを特徴とする。
【0022】
これにより、より高い精度での前後方向の振幅値の測定を行うことができる。
【0023】
本発明のドラム式洗濯機は、ドラムの前後方向の偏芯位置検出手段は、回転数の上昇に伴う位相の変化率の違いによって測定することを特徴とする。
【0024】
これにより、より高い精度での前後方向の振幅値の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機1の断面を模式的に示す図である。
【
図3】同洗濯機1の脱水工程での制御の流れを説明するための図である。
【
図4】開口させる給水バルブ62を示すパラメータ表である。
【
図5】ドラム2内の偏芯位置を示す模式的な図である。
【
図6】ドラム2内が対向負荷にある状態を示す模式的な図である。
【
図7】本実施形態の洗濯機1の脱水工程の概要を示すグラフである。
【
図8】同洗濯機1の脱水工程での制御の流れを示すフローチャートである。
【
図9】偏芯位置調整処理を示すフローチャートである。
【
図10】脱水本工程を示す模式的なフローチャートである。
【
図12】立上げ判定の処理を示す模式的なフローチャートである。
【
図13】注水工程の処理を示す模式的なフローチャートである。
【
図16】加速度と偏芯位置Nとの関係を示すグラフである。
【
図17】左右振幅及び前後振幅の差と偏芯量との関係を示すグラフである。
【
図18】仮偏芯位置θ1及び正式偏芯位置θ2と回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式的な断面図である。
図2は、本実施形態の洗濯機1の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【0028】
本実施形態の洗濯機1は、例えばコインランドリーや家庭にて好適に使用され得るものであり、フレームたる洗濯機本体1aと、略水平に延出してなる軸線S1を有した外槽3及びドラム2からなる洗濯槽1bと、受水ユニット5及びノズルユニット6を有する注水装置1cと、駆動装置40と、
図2にのみ示される制御手段30とを備えたものである。そして外槽3の前端は、水封するための投入口パッキン(以下、パッキンPKと記す)を介してフレームたる洗濯機本体1aに間接的に支持されている。当該パッキンPKは、例えば弾性を有する合成樹脂を主体とするものであり、当該パッキンの材料、形状、硬度等によって決まる弾性係数が、予め中央制御部31に記憶されてある。
【0029】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの前面10aには、ドラム2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。同図に示すように洗濯機本体1aは、その前面10aが若干上方に向いて面することにより、ドラム2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が斜め上方を向いて形成され、この開口11を開閉可能な開閉蓋11aを使用者が斜め上方から開閉する態様のものである。すなわち本実施形態に係る洗濯機1は、洗濯槽1bが斜め方向に取り付けられた、所謂斜めドラム式全自動洗濯機と称されるものである。
【0030】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。
図1に示すように、外槽3の外周面3aには、上下方向、左右方向及び前後方向の三方向の加速度を検出可能な加速度センサ12が取り付けられる。
【0031】
ドラム2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、外槽3内で回転自在に支持される有底筒状の部材である。ドラム2は、内部に洗濯物を収容可能で、その壁面2aに多数の通水孔2b(
図1参照)を有する。
【0032】
駆動装置40は、
図1に示すように、モータ10によりプーリー15、15およびベルト15bを回転させるとともに、ドラム2の底部2cに向けて延出する駆動軸17を回転させて、ドラム2に駆動力を与え、ドラム2を回転させる。また、一方のプーリー15の近傍には、当該プーリー15に形成されたマーク15aの通過を検出できる近接スイッチ14が設けられる。そして本実施形態では、この近接スイッチ14が、ドラム位置検出装置に相当する。
【0033】
図1に示すように、ドラム2の内周面2a1には、周方向に等間隔(等角度)で中空バランサとしてのバッフル7が3つ設けられる。各バッフル7は、ドラム2の基端部2cから先端部に亘ってドラム2の軸線方向に延び、ドラム2の内周面2a1から軸線S1に向けて突出して形成される。また各バッフル7は中空状である。
【0034】
受水ユニット5は、導水樋5aが例えばドラム2の軸線S1に沿って径方向に三層重層されて構成されるもので、
図3に示すようにドラム2の内周面2a1に固定される。導水樋5aは、バッフル7と同数だけ設けられ、単独で何れかのバッフル7に調整水Wを流せる通水経路が内部に形成される。そしてバッフル7の内部には、
図1に示すように連通部材5a1が接続され、受水ユニット5から調整水Wが供給される。
【0035】
このような受水ユニット5とバッフル7とは、連通部材5a1でそれぞれ接続される。
【0036】
ノズルユニット6は、このような導水樋5aに個別に調整水Wを注水するものである。ノズルユニット6は、3本の注水ノズル6aと、これらの注水ノズル6aにそれぞれ接続される給水バルブ62a、62b、62cとを有する。注水ノズル6aは、導水樋5aと同数だけ設けられ、それぞれ別々の導水樋5aに注水可能な位置に配置される。なお、本実施形態では調整水Wとして水道水が用いられる。また、給水バルブ62a、62b、62cとしては、方向切換給水バルブを採用することも可能である。
【0037】
このような構成であると、排水バルブ50aが開かれて外槽3内の洗濯水が排水口50より排出される脱水工程では、ノズルユニット6の何れかの注水ノズル6aから受水ユニット5の導水樋5a内に注水された調整水Wは、連通部材5a1を介してバッフル7内に流れ込む。例えば、何れかの注水ノズル6aから調整水Wが注水される場合には、
図1に矢印で示すように、導水樋5aから連通部材5a1を介してバッフル7に調整水Wが流れ込む。
【0038】
バッフル7は、注水装置1cにより洗濯槽1bの先端1d側から注水された調整水Wが脱水工程時の遠心力により滞留する滞留部71と、注水された調整水Wを洗濯槽1bの基端1e側から排出させ得る出口部72とを有する。バッフル7内に流れ込んだ調整水Wは、ドラム2が高速回転状態にあると、遠心力によりドラム2の内周面2a1にはりついて滞留する。これにより当該バッフル7の重量が増加し、ドラム2の偏芯量(M)が変化する。このようにバッフル7は、遠心力により調整水Wを貯めることが可能なポケットバッフル構造である。そして、脱水工程が終了に近づいてドラム2の回転速度が低下すると、バッフル7内の遠心力が次第に減衰し、調整水Wが重力によって出口部72から流れ出て、外槽3外へ排水される。このとき、調整水Wは出口部72を介してドラム2外の下外方に流れ込む。そのため、調整水Wは、ドラム2内の衣類を濡らすことなく排水される。
【0039】
図2は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段30によって制御される。制御手段30は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)31を備え、この制御手段30に、それぞれ以下に詳述する値である、ドラム2の共振点CPよりも低い所定の回転数である第一の回転数(N1)、第一の偏芯量閾値(ma)、注水用偏芯量閾値、回転数上昇用閾値、偏芯量許容閾値や脱水定常回転数が格納されるメモリ32を接続する。また、制御手段30により、メモリ32に格納されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ32には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0040】
中央制御部31は回転速度制御部33へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)34へ出力してモータ10の回転制御を行う。なお、回転速度制御部33はモータ制御部34からモータ10の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。
【0041】
アンバランス量検出部35には加速度センサ12が接続される。アンバランス位置検出部36には加速度センサ12および近接スイッチ14が接続される。アンバランス量検出部35とアンバランス位置検出部36とによって偏芯検出手段を構成する。
【0042】
これにより、近接スイッチ14がマーカー15a(
図1参照)を検知すると、加速度センサ12から得られた上下方向、左右方向及び前後方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部35においてドラム2の偏芯量(M)が算出され、この偏芯量(M)がアンバランス量判定部37へ出力される。
【0043】
アンバランス位置検出部36は、近接スイッチ14から入力されたマーカー15aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、偏芯位置(N)であるアンバランス位置信号を注水制御部38へ出力する。ここで、アンバランス方向の角度とは、軸線S1の周方向におけるバッフル7に対する相対角度である。本実施形態では
図5に示すようにその一例として、軸線S1を中心として等角度間隔で配される3つのバッフル7(A)、7(B)、7(C)と偏芯位置との相対角度を示すべくバッフル7(B)、7(C)との中間位置を0°に設定している。
【0044】
注水制御部38は、アンバランス量判定部37およびアンバランス位置検出部36からの偏芯量(M)と偏芯位置(N)を示す信号が入力されると、予め格納される制御プログラムに基づいて給水すべきバッフル7およびその給水量を判断する。そして注水制御部38は、選定した給水バルブ62a、62b、62cを開き、調整水Wの注入を開始する。注水制御部38は、ドラム2に予め定める基準以上の偏芯量(M)が生じたときは、偏芯量(M)の算出に基づいて選定された注水ノズル6aから受水ユニット5の導水樋5aに調整水Wの注入を開始し、偏芯量(M)が予め定める基準以下となったとき、調整水Wの注入を停止する。
【0045】
なお、注水制御部38は、例えば
図3に示すように、偏芯の要因となっている洗濯物の塊LD(X)がドラム2のバッフル7(B)とバッフル7(C)の間にある場合は、バッフル7(A)に調整水Wを供給するよう制御する。また、洗濯物の塊LD(Y)がバッフル7(A)の近傍にある場合は、バッフル7(B)とバッフル7(C)の両方に調整水Wを供給するよう制御する。
【0046】
本実施形態では、洗濯物の塊LD(Y)が何れかのバッフル7近傍にある場合のように、偏芯量(M)を低減するために複数のバッフル7への注水を要するケースにおける具体的な制御について特に詳述する。
【0047】
中央制御部31は、
図4のパラメータ表に記載された通り、給水バルブX、給水バルブZを開口させている。本実施形態では、偏芯位置(N)の特定を、
図5に示すように、ドラム2を周方向に関して6等分することにより、注水すべきバッフル7を一つに特定する偏芯位置(N)と、注水すべきバッフル7を二つに特定する偏芯位置(N)とに場合分けされる。ここで本実施形態における「偏芯位置(N)」という記載は、仮に算出される仮偏芯位置(θ1)と、正式に決定される正式偏芯位置(θ2)の何れか或いは両方を示す概念である。仮偏芯位置(θ1)、正式偏芯位置(θ2)については後に詳述する。
【0048】
注水すべきバッフル7を一つに特定する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(A))、(P(B))及び(P(C))である。また、偏芯の解消に要する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(AB))、(P(BC))及び(P(CA))である。また領域(P(A))、(P(B))及び(P(C))の軸心S1を中心とした角度は20°、領域(P(AB))、(P(BC))及び(P(CA))の軸心S1を中心とした角度は100°に設定されている。
【0049】
加えてABCのうち記載されていない文字に相当するバッフル7は、本実施形態では偏芯位置(N)に最も近接したバッフル7である。
【0050】
また本実施形態では、加速度センサ12が、上下方向、左右方向及び前後方向の加速度を検出し得る、三軸のセンサとなっている。
【0051】
これにより、
図6に示すような洗濯物がドラム2の基端側と先端側とに相対するように位置づけられる状態(対向負荷の状態)であっても、正確に偏芯位置(N)及び偏芯量(M)を検出することができる。
【0052】
図7は、本実施形態の洗濯機1の脱水工程の概要を示すグラフである。
図7において縦軸はドラム2の回転数を示し、横軸は時間を示す。
図8、
図10及び
図11は、脱水工程の主たる概要を示すフローチャートである。
図8は、脱水工程のうちの前半部分に係る脱水前工程を示し、
図10及び
図11は、脱水前工程を経た後の工程である脱水本工程を示す。
【0053】
本実施形態では、中央制御部31が、図示しない脱水ボタンからの入力信号あるいは洗濯コース運転中に脱水工程を開始すべき旨の信号を受信すると、ステップSP1に進み、脱水前工程を開始する。
【0054】
<ステップSP1>
ステップSP1では、中央制御部31は、ドラム2をほぐし反転させた後、ドラム2の回転をドラム2の共振点CPよりも低い第一の回転数(N1)まで上昇させる。ドラム2の回転数が第一の回転数(N1)にまで到達したときステップSP2に移行する。なお本実施形態では第一の回転数(N1)を、ドラム2の共振点CPである約300rpmよりも低い180rpmに設定している。
【0055】
<ステップSP2>
ステップSP2では、中央制御部31は、加速度センサ12から与えられた加速度信号に基づいて、偏芯検出手段に偏芯量(M)および偏芯量・仮偏芯位置測定の制御を実行する。このとき中央制御部31は、例えば加速度センサ12から得られた上下方向、左右方向及び前後方向に係る加速度信号を基に、各方向についてそれぞれ偏芯量(M)を算出させる。本制御に採用される値は算出された3つの方向の値のうち、前後方向に係る偏芯量(M)と、上下方向または左右方向のうち何れか一の方向に係る加速度信号とを基に算出された偏芯量(M)である。
【0056】
<ステップSP3>
中央制御部31は、算出された偏芯量(M)と、メモリ32に格納された第一の偏芯量閾値(ma)とを比較し、M<maが成り立つか否か判断する、立上げ判定を行う。中央制御部31は、M<maが成り立つと判断するとステップSP4に進み、M<maが成り立たないと判断するとステップSP5に進む。ここで、第一の偏芯量閾値(ma)は、バッフル7に調整水Wを供給しても、脱水定常回転数までドラム2の回転数を上昇可能な程度まで偏芯量(M)を低減することが困難なほどに洗濯物の偏りが大きい場合を想定した閾値である。すなわち、ステップSP5に進む場合、バッフル7に調整水Wを供給しても脱水工程を完遂することが難しい程度に偏芯量(M)が大きいことを意味する。
【0057】
第一の偏芯量閾値(ma)について更に説明する。本実施形態では加速度センサ12は、上下方向、左右方向及び前後方向の加速度をそれぞれ検出し得るものが適用されている。
【0058】
<ステップSP4>
ステップSP4では、中央制御部31は、ステップSP2において算出された偏芯量(M)が、偏芯位置毎に設定された第一の偏芯量閾値(ma)よりも小さいとき、ドラム2の回転数を上昇させる。また中央制御部31は、ドラム2の回転数を上昇させながら、継続的に本実施形態に係る偏芯量・仮偏芯位置測定の制御を実行している。ここで、「継続的に」とは、必ずしも絶え間なく連続的に行う態様に限られるものではない。脱水定常回転数に至るまでの任意の複数の回転数にまでドラム2の回転数が上昇したときに、間欠的に本実施形態に係る偏芯量・仮偏芯位置測定の制御を実行する態様としても良いことは勿論である。
【0059】
ステップSP5では、中央制御部31は、ドラム2の回転を停止させるか、或いはドラム2の回転数を遠心力よりも重力が勝る回転数まで下げることにより、ドラム2内の洗濯物を上下方向に攪拌するという偏芯位置調整処理の制御を行う。その後、ステップSP1に戻る。
図7では、バッフル7へ注水することなくドラム2の回転数が脱水定常回転数にまで到達したときの回転数の挙動を実線にて示している。また
図7では一度だけバッフル7へ注水した後、回転数が脱水定常回転数にまで到達したときの回転数の挙動を上側の想像線にて示し、ステップSP5に係るドラム2の回転数の挙動を下側の想像線で示す。
【0060】
偏芯位置調整処理の制御について、更に
図9に示して説明する。まず、上記ステップSP3により偏芯量(M)が、低減が難しい程度にまで大きいと判断されると、ドラム2の回転を停止する(ステップSP51)。その後、遠心力を下回る回転数にてドラム2を回転させ、ドラム2内の洗濯物を攪拌し、偏芯量(M)を変化させる(ステップSP52)。
【0061】
以下、ステップSP4以降の脱水本工程に係る制御について
図10に模式的に、
図11に具体的に示して説明する。
【0062】
<ステップSP6>
ステップSP6では、中央制御部31は、
図8に示したステップSP2にて算出された偏芯量(M)が、ドラム2の回転数毎に予め設定された注水用偏芯量閾値よりも大きいか否かの判定を行う。中央制御部31は、偏芯量(M)が注水用偏芯量閾値よりも低いときはバッフル7への注水を行うことなくステップSP7へ移行する。中央制御部31は、偏芯量(M)が注水用偏芯量閾値よりも大きいときは、注水工程においてバッフル7への注水を行った後にSP7へ移行する。
【0063】
<ステップSP7>
ステップSP7では、中央制御部31は、ドラム2の回転数を所定の加速度にて上昇させる。
【0064】
<ステップSP8>
ステップSP8では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が脱水定常回転数に到達すると、そのまま脱水工程の終了までドラム2の回転数を維持する。本実施形態では脱水定常回転数は800rpmに設定されている。
【0065】
図11は、本実施形態に係る脱水本工程の具体的な処理を示すフローチャートである。
【0066】
<ステップSP71>
ステップSP71では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が400rpmに至るまで回転数を毎秒20rpmずつ上昇させる。中央制御部31は、ステップSP71を行いながら平行してステップSP6を実行する。
【0067】
<ステップSP72>
ステップSP72では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が400rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部31は、回転数が400rpmに到達していなければステップSP71へ移行する。中央制御部31は、回転数が400rpmに到達していればステップSP73へ移行する。
【0068】
<ステップSP73>
ステップSP73では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が600rpmに至るまで回転数を毎秒5rpmずつ上昇させる。中央制御部31は、ステップSP72を行いながら平行してステップSP6を実行する。
【0069】
<ステップSP74>
ステップSP74では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が600rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部31は、回転数が600rpmに到達していなければステップSP73へ移行する。中央制御部31は、回転数が600rpmに到達していればステップSP75へ移行する。ここで、ドラム2の回転数が400~600rpmまで上昇する際の加速度が他の回転域に比べ低いのは、洗濯物から脱水される水の量が当該回転域では他の回転域より多く、脱水される水による不要な騒音を低減させるためである。
【0070】
<ステップSP75>
ステップSP72では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が800rpmに至るまで回転数を毎秒20rpmずつ上昇させる。中央制御部31は、ステップSP72を行いながら平行してステップSP6を実行する。
【0071】
<ステップSP76>
ステップSP76では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が800rpmにまで到達したか否かを判定する。中央制御部31は、回転数が800rpmに到達していなければステップSP75へ移行する。中央制御部31は、回転数が800rpmに到達していればステップSP8へ移行する。
【0072】
<ステップSP8>
ステップSP8では、中央制御部31は、ドラム2の回転数が脱水定常回転数であるに800rpmまで到達すると、そのまま脱水工程を継続し、予め定められた時間が経過したことを確認した後に洗濯を終了する。換言すれば中央制御部31は、通常の洗濯における脱水工程同様、ドラム2を脱水定常回転数で所定時間回転させ、脱水処理を行う。その後、脱水処理は終了される。そして、脱水が終了してドラム2の減速が始まり、遠心力が重力加速度を下回ると、バッフル7内の調整水Wが流れ出し、排水される。
【0073】
本実施形態に係る制御方法では、第二の偏芯検出ステップであるステップSP3以降は、注水ステップであるステップSP6及び回転数上昇ステップであるステップSP7は、ドラム2の回転数が脱水定常回転数に至るまで繰り返し行われる。
【0074】
続いて、本実施形態に係る制御方法の具体的な態様についてさらに説明する。
【0075】
図12は立上げ判定の一実施例を示すフローチャートである。以下、立上げ判定について説明する。
【0076】
<ステップSP31>
ステップSP31では、中央制御部31は、ステップSP25により決定された左右方向の偏芯量Mxと上下方向の偏芯量Mzとのうち、大きい値を示す偏芯量(M)を選択する。本実施形態では説明の便宜上、選択された偏芯量(M)を偏芯量Mxzと記す。
【0077】
<ステップSP32>
ステップSP32では、中央制御部31は、偏芯量Mxzが第一の偏芯量閾値(ma)である閾値M_xzを上回っているか否かを判定する。中央制御部31は、偏芯量Mxzが閾値M_xzを下回っていればステップSP33へ移行する。中央制御部31は、偏芯量Mxzが閾値M_xzを上回っていれば、立上げ不可と判定しステップSP5に移行して偏芯量調整処理を行う。
【0078】
<ステップSP33>
ステップSP33では、中央制御部31は、前後方向の偏芯量Myが第一の偏芯量閾値(ma)である閾値M_yを上回っているか否かを判定する。中央制御部31は、偏芯量Myが閾値M_yを下回っていれば立上げ可能と判定する。この場合ドラム2の回転数を上昇させる。中央制御部31は、偏芯量Myが閾値M_yを上回っていれば、立上げ不可と判定しステップSP5に移行して偏芯量調整処理を行う。
【0079】
以上で、脱水工程のうち、脱水前工程に係る処理の説明を終了する。以降、上記ステップSP6以降の脱水本工程に係る処理について説明する。ここでステップSP7、ステップSP8に係る処理は既に上述しているので、主にステップSP6すなわち注水工程に係る具体的な処理について説明する。
【0080】
ここで、本実施形態に係る洗濯機1は、外槽及びフレームたる洗濯機本体1aを水封のために接続する投入口パッキンPKと、複数個の中空のバランサたるバッフル7、当該バッフル7に注水するための注水装置、ドラムが一回転する毎に一回信号が発生するドラム内の中空バランサ位置検出装置である近接スイッチ14と、外槽振動を検出するための単一の加速度センサ12と、ドラム2の前後方向並びに上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを検出する偏芯位置検出手段たる中央制御部31とを有し、ドラム2の前後方向の偏芯位置Nの差によって発生する位相差を考慮し上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを算出することを特徴とする。
【0081】
以下、上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを算出するための各フローチャートについて説明する。まず、
図13に示すステップSP601に係るフローチャートについて説明する。
【0082】
<ステップSP602>
ステップSP602では、中央制御部31は、加速度センサ12からの信号から前後方向の振幅を測定する。当該前後方向の振幅を測定した後、ステップSP603へ移行する。
【0083】
<ステップSP603>
ステップSP603では、中央制御部31は、加速度センサ12からの信号から上下方向及び左右方向の振幅を測定する。当該上下方向及び左右方向の振幅を測定した後、ステップSP604へ移行する。
【0084】
<ステップSP604>
ステップSP604では、中央制御部31は、前後方向の振幅並びに上下方向及び左右方向の振幅から、上下方向及び左右方向における実際の偏芯位置Nを確定する。このとき本実施形態では、ドラム2の前後方向の偏芯位置Nの差によって発生する位相差を考慮し上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを算出する。本実施形態では、前後方向の偏芯位置Nの差と上下方向及び左右方向の偏芯位置Nとの関係を予め中央制御部31が読み出せるようにメモリ32にマップとして記憶させておく態様を挙げることができる。
【0085】
続いて
図14では、偏芯位置検出手段たる中央制御部31が、ドラム2定速回転中のモータ10におけるモータ回転数の変化値、モータ電流変化値及び、加速度センサ12からの上下方向の振幅値、左右方向の振幅値の差を利用して前後方向の振幅を測定するステップSP602として、その態様を示している。
【0086】
<ステップSP602a>
ステップSP602aでは、中央制御部31は、モータ回転数の変化を検出する。当該変化を検出すると、ステップSP602aへ移行する。
【0087】
<ステップSP602b>
ステップSP602bでは、中央制御部31は、モータ電流の変化値と上下方向の振幅値と左右方向の振幅値との差を検出する。そして当該差より、前後方向の振幅を確定させる。
【0088】
図16は、加速度センサ12から得られた加速度と、近接スイッチ14から得られたパルス信号psとの関係を示したグラフである。同図では便宜上、加速度センサ12から得られた左右方向の加速度の極大値(Ymax)とパルス信号psとの時間差t1から、仮偏芯位置θ1を算出する。なお、
図12に示す本実施形態では一例として、加速度の極大値(Ymax)及び極小値(Ymin)から仮偏芯位置θ1を算出する態様を示したが、本発明の他の実施例として加速度ゼロ点、加速度の極大値(Ymax)、極小値(Ymin)何れか一又は複数から仮偏芯位置θ1を算出するようにしてもよい。また上下方向、前後方向の加速度から上述の通り仮偏芯位置θ1を算出してもよい。
【0089】
一方、モータ電流の変化値においても、グラフに記するとすれば上記加速度の挙動を示した図 に示すような振幅を有した曲線となる。また、偏芯量が大きいときの方が偏芯量が小さいときよりも振幅が大きく現れる。但しモータ電流の変化値は、偏芯位置が前側にあっても後側にあっても殆ど同じ振幅量である。
【0090】
ここで、本実施形態においては加速度センサ12はドラム2の前端近傍に設けられている。そのため、加速度センサ12が検出する上下方向及び左右方向の振幅は加速度センサ12近傍である前側に偏芯がある場合よりも、ドラム2の後側にある場合には、上下方向及び左右方向の振幅はより小さくなる。加えて偏芯がドラム2の後側にある場合は、偏芯がドラム2の前側にある場合に比べて前後方向の振幅が大きくなる傾向にある。これにより、偏芯が前後方向における何れの箇所にあるのかを決定し得る。
【0091】
続いて
図15では、前後方向の振幅を測定するステップSP602の変形的な態様として、中央制御部31が、加速度センサ12からの前後方向の振幅値並びに上下方向の振幅値・左右方向の振幅値の差を利用して前後方向の振幅すなわち前後方向の偏芯位置Nを測定する態様を示している。
【0092】
<ステップSP602c>
ステップSP602cでは、中央制御部31は、加速度センサ12より、上下方向の振幅値、左右方向の振幅値を検出する。当該上下方向の振幅値、左右方向の振幅値を検出した後、ステップSP602dへ移行する。
【0093】
<ステップSP602d>
ステップSP602dでは、中央制御部31は、加速度センサ12より、前後方向の振幅値を検出する。
【0094】
<ステップSP602e>
ステップSP602eでは、中央制御部31は、ドラム定速回転中の加速度センサ12からの上下方向の振幅値及び左右方向の振幅値と前後方向の振幅値との差によって前後方向の偏芯位置Nを確定する。
【0095】
図17は、ドラム2の回転数が220rpmにあるときにおける、偏芯が前方(前)、中央、後方(奥)のそれぞれの位置に図示の重量の偏芯を設けた際の上下方向の振幅値及び左右方向の振幅値と前後方向の振幅値との差を示したグラフである。このように、前後方向の何れか並びに負荷の値により、上下方向の振幅値及び左右方向と前後方向の振幅値との差が異なってくる。とりわけ、偏芯が後方(奥)にある場合は前後方向の振幅値の方が大きい傾向にある。
【0096】
すなわち、上下方向の振幅値及び左右方向の振幅値と前後方向の振幅値との差を検出することにより、偏芯の前後方向の位置並びに偏芯量を推定することができる。
【0097】
加えて本実施形態では、中央制御部31は、ドラム2の前後方向の偏芯位置検出手段は、回転数の上昇に伴う位相の変化率の違いによって前後方向の偏芯位置Nを測定することを特徴とする。
【0098】
図18は、加速度センサ12における前後方向の加速度から検出した仮偏芯位置θ1と、実際の偏芯位置である正式偏芯位置θ2とを示したグラフである。縦軸は上下方向及び左右方向の偏芯位置(角度)を示し、横軸はドラム2の回転数を示している。また同図では、仮偏芯位置θ1は、前側に偏芯位置がある場合の仮偏芯位置θ1(前側)と、後側に偏芯位置がある場合の仮偏芯位置θ1(後側)とを併せて示している。
【0099】
同図に示すように、仮偏芯位置θ1(前側)及び仮偏芯位置θ1(後側)では異なる挙動を示すため、正式偏芯位置θ2を導き出すためには、それぞれ異なる補正を行う、換言すればそれぞれ異なる数式により算出する必要があることが明らかである。
【0100】
さらに同図では、回転が上昇していく途上における例えば350rpmといった所定の回転数付近において仮偏芯位置θ1(後側)の値が急に変化する(グラフでは上昇する)という挙動を示す。当該挙動を検出することにより、偏芯位置が後側にあると推定することも可能である。
【0101】
このように本実施形態では、前後方向における偏芯位置を複数の手法により推定することで、より正確な偏芯位置の特定に資する。
【0102】
以上のように本実施形態のドラム式洗濯機1は、外槽3及びフレームたる洗濯機本体1aを水封のために接続する投入口パッキンPKと、ドラム2が一回転する毎に一回信号が発生するドラム位置検出装置たる近接センサ14と、外槽3の振動を検出するための単一の加速度センサ12と、ドラム2の前後方向並びに上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを検出する偏芯位置検出手段たる中央制御部31とを有し、ドラム2の前後方向の偏芯位置Nを考慮し上下方向及び左右方向の偏芯位置Nを算出することを特徴とする。
【0103】
これにより、加速度センサ12を複数個使用することなく、ドラム2前後方向に係る偏芯位置Nに関わらず、上下方向及び左右方向に係る偏芯位置Nを正しく測定することができる。
【0104】
本実施形態のドラム式洗濯機1は、偏芯位置検出手段たる中央制御部31は、ドラム2定速回転中のモータ10の回転数の変化値、モータ10の電流変化値及び、加速度センサ12からの左右上下振幅値の差を利用して測定するようにしている。
【0105】
これにより本実施形態のドラム式洗濯機1は、より高い精度での左右上下振幅値の測定を行うことができる。
【0106】
本実施形態のドラム式洗濯機1は、ドラム2の前後方向の偏芯位置検出手段たる中央制御部31は、ドラム2定速回転中の加速度センサ12からの上下方向の振幅値及び左右方向の振幅値と前後方向の振幅値の差によって測定するようにしている。
【0107】
これにより本実施形態のドラム式洗濯機1は、より高い精度での前後方向の振幅値の測定を行うことができる。
【0108】
本実施形態のドラム式洗濯機1は、ドラム2の前後方向の偏芯位置検出手段たる中央制御部31は、モータ10の回転数の上昇に伴う位相の変化率の違いによって測定することを特徴とする。
【0109】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1は、より高い精度での前後方向の振幅値の測定を行うことができる。
【0110】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0111】
例えば、上記実施形態では洗濯機として、家庭用として好適に利用され得る所謂斜めドラム型全自動洗濯機に本発明を適用した一例を開示したが勿論、コインランドリー店舗にて広く好適に適用されている横型の洗濯乾燥機であっても、本発明に係る制御方法は好適に適用され得る。
【0112】
また例えば、上記実施形態ではバッフル7を三つ設けた態様を開示したが勿論バッフル7を四つ以上備えた構成としてもよい。またバッフル7は必ずしもドラム2の周方向に関して等角度間隔で配置されることは要さず、またそれぞれ同じ形状であることも要さないことは勿論である。
【0113】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1・・・洗濯機
1a・・・フレーム(洗濯機本体)
12・・・加速度センサ
2・・・ドラム
3・・・外槽
7・・・バッフル
M・・・偏芯量
N・・・偏芯位置