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  • 特許-再生プラスチックペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】再生プラスチックペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/06 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
C08J11/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020208876
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096012
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(73)【特許権者】
【識別番号】520497519
【氏名又は名称】前原 政輝
(72)【発明者】
【氏名】前原 政輝
(72)【発明者】
【氏名】恩田 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 陽介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 昌臣
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053350(JP,A)
【文献】特開2017-181402(JP,A)
【文献】特開2006-232996(JP,A)
【文献】特開2008-274222(JP,A)
【文献】特開2002-301719(JP,A)
【文献】米国特許第07466536(US,B1)
【文献】中国実用新案第202826147(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/06
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックの廃材を、寒剤で1~30分間の冷却する工程と、
前記冷却する工程で冷却されたプラスチックの廃材を、JIS Z 8801に規定されている目開き4 mm、線長径1.4 mmのふるいを通過し、目開き250μm、線長径160μmのふるいを通過しないサイズの粉粒体にする工程と、
前記粉粒体にされたプラスチックの廃材に、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、絹、羊毛、ステアリン酸、パルミチン酸、水酸化アルミニウムのグループから選択された一種以上のバインダーを0.5 wt%~20 wt%の範囲で添加する工程と、
前記バインダーが添加されたプラスチックの廃材の粉粒体を、5MPa~60MPaの圧力範囲で任意の形状に打錠する工程と、
を含む再生プラスチックペレットの製造方法。
【請求項2】
前記プラスチックの廃材が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレンの熱可塑性樹脂グループから選択された一種以上を主成分とする請求項1に記載された再生プラスチックペレットの製造方法。
【請求項3】
前記プラスチックの廃材が、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂のグループから選択された一種以上を主成分とする請求項1に記載の再生プラスチックペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック成形製品のメーカーなどから出てくる成形不良材、端材あるいは、破砕品などを、もう一度使用できるようにする再生プラスチックペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において廃棄されるプラスチック、また、プラスチック製品を生産現場における成形不良品、ランナーやスプールといった、いわゆる製品とされずに廃棄されるプラスチック(以下、「廃プラスチック」と記載する。) については、近年、廃棄物資源の有効利用やプラスチックごみ削減の観点からリサイクルが進められている。廃プラスチックの主たるリサイクル方法の一つに、再度プラスチック材料として利用するマテリアルリサイクルが挙げられるが、このようなマテリアルリサイクルは資源循環に直接寄与するため、サステナビリティの高いリサイクル手法である。
【0003】
現状の廃プラスチックのマテリアルリサイクルでは、多くの場合、廃プラスチックを加熱溶融する工程を経る。例えば、特許文献1には、リサイクルポリオレフィン系の熱可塑性樹脂組成物を溶融成形し溶融樹脂組成物とする溶融成形工程と、前記溶融成形工程により溶融された溶融樹脂組成物を氷水などで急冷する急冷工程とを有する熱可塑性樹脂組成物を再生する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数種のプラスチックから構成されたプラスチック系混合物を含む廃プラスチックを再資源化する方法が提案されている。すなわち、比重分離により、廃プラスチックから所望のプラスチックを選別する選別工程と、この選別工程で選別したプラスチックを加熱溶融し、成形してプラスチック成形体を得る成形工程とを少なくとも含み、この成形工程は、前記選別したプラスチックに混入する金属を除去するための除去工程と、金属を除去するためのフィルタの目開き量に応じて、選別したプラスチックに添加する添加剤の種類や量を変えて、添加する添加工程を含む廃プラスチックの再資源化方法が提案されている。この例の場合も、溶融成形工程を含む方法が提案されている。
【0005】
なお、プラスチックを加熱溶融せず、常温で粉砕して再利用する方法もあるが、粉砕時に摩擦熱によりプラスチックが加熱されること、またプラスチック中の油分・水分量および添加剤の影響により粉砕が困難な場合があることから、実用上の採用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6333674号公報
【文献】特開2010-234812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1および2で示されている加熱溶融して再生プラスチックペレットを製造する方法では、次に示すような課題が存在する。すなわち、プラスチックを加熱溶融するときの熱分解により、強度低下や変色を起こしやすい。また、プラスチックの種類によっては腐食性ガスもしくは分解生成ガスが発生し、成形装置などの腐食を促進する懸念があるといった課題もある。さらに、プラスチック成形品には、可塑剤や難燃剤などの添加剤が含まれることが多く、加熱溶融による熱分解により、添加剤が原因の変色やガス発生などが起きる懸念もある。本発明は、上述のような先行技術の課題を解決しようとするものであり、種々の問題を発生する加熱溶融を経ることなくプラスチックペレットを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段1では、例えばポリオレフィンなどのような廃プラスチックを、寒剤すなわち、液体窒素、ドライアイスとエタノール混合物( ドライアイス/エタノール) 、ドライアイスとアセトン混合物( ドライアイス/アセトン) 、ドライアイスとエチルエーテル混合物( ドライアイス/エチルエーテル)などの中から選択された寒剤1~30分間の冷却する。このように冷却されたのち、廃プラスチックを冷却しながら、例えば金属球などを使用して粉砕することで、JIS Z 8801に規定されている目開き4 mm、線長径1.4 mmのふるいを通過し、目開き250μm、線長径160μmのふるいを通過しないサイズに粉粒体化する。この粉粒体化された廃プラスチックは、打錠圧力をかけても粉粒体を固体化させることが困難であるため、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、絹、羊毛、ステアリン酸、パルミチン酸、水酸化アルミニウムのグループから選択された一種以上を、前記粉粒体と同一サイズ条件の範囲のバインダーを0.5 wt%~20 wt%の範囲で添加した後、ほぼ均一に混合し、例えば打錠機などで5MPa~60MPaの圧力範囲で任意の形状例えば、粒状に打錠する。このような工程により、廃プラスチックのペレットを製造することができるのである。手段1は、上述のような工程を有する方法であり、廃プラスチックの材質は、用途に合わせて選択することができる。
【0009】
上述の上位概念の手段1において、凝固させることが可能なバインダーは、例えば、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、ステアリン酸、パルミチン酸、絹、羊毛、水酸化アルミニウムのグループから選択された一種以上を含有するものが使用されることを説明した。さらには、バインダーは、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、ステアリン酸、パルミチン酸であることの方がより好ましい。手段1に挙げられたプラスチックは粉粒体化しても打錠圧力で凝固できないが、上述したバインダーを入れることにより凝固するようになるからである。また、バインダーが入る分だけ再生プラスチックペレットに占める廃プラスチックの割合は低下するが、再生プラスチックペレットに占めるバインダーの添加割合を20wt%以下とすることで、プラスチックの準リッチ品、すなわち主成分となる材質のプラスチックを60wt%以上含有する再生プラスチックとして実用化が可能となり、産業上の利用に貢献できる。
【0010】
上述の手段1における打錠圧力が、5MPa以上60MPa以下である再生用プラスチックペレットの製造方法である。5MPa未満の場合、打錠によりペレット化しても強度が低く、熱処理した際に容易に形状が崩壊する可能性があるためである。なお、60MPaを超えた圧力で打錠しても強度に変化がなく、産業上の意義が希薄になるためである。さらに、打錠圧力は、25MPa以上50MPa以下がより好ましく、35MPa以上45MPa以下がさらに好ましい。このような打錠する圧力の範囲以内であれば、廃プラスチックから実用的な原材料となる再生プラスチックペレットの製造方法を提供することが可能となる。
【0011】
上述の手段1において、前述の再生プラスチックペレットに占める前記バインダーの重量割合、0.5wt%以上ないし20wt%以下である再生プラスチックペレットを製造する方法である。ここで、バインダーの添加割合が0.5wt%未満の場合、打錠してペレット化しても形状を保持できない可能性が大きくなるためである。また、バインダーの添加割合が20wt%を超える場合、再生プラスチックペレットに占めるバインダーの量が多く、再生プラスチックの用途が限定される可能性が高くなるからである。なお、バインダーの添加割合は、2wt%以上ないし10wt%以下好ましく、さらには4wt%以上ないし8wt%以下が最も好ましい。以上のよう重量割合で、本来であれば打錠によるペレット化が困難な廃プラスチックの粉粒体であっても、バインダーを加え混合することで、例えば打錠機の適切な打錠圧力でペレット化が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上述した再生プラスチックペレットの製造方法の手段によれば、加熱工程を無くすことにより、樹脂や添加剤の熱分解を防ぎ、プラスチックの強度低下、変色、腐食性ガスもしくは分解生成ガスの発生をなくすことが可能となる。このことにより製造設備の簡素化も可能となる。
(課題を解決するためのその他の手段)
【0013】
上述の上位概念の手段1における下位概念の手段としての方法は、廃プラスチックが、ポリプロピレン(PP) 、ポリエチレン(PE) 、ポリスチレン(PS) 、ポリ塩化ビニル(PVC) 、ポリカーボネート(PC) 、ポリオキシメチレン(POM)、などの熱可塑性樹脂グループから選択された一種以上を主成分として含有する再生プラスチックペレットの製造方法である。上述した廃プラスチックは、これまで加熱溶融する過程により再生プラスチックペレット化されてきたが、加熱溶融した場合には廃プラスチックや添加剤の熱分解に起因する再生プラスチックの強度低下、変色、腐食性ガスの発生などの弊害を免れない。手段1で示した方法であれば、手段2で示した廃プラスチックを、加熱溶融することなくペレット化できる。すなわち、液体窒素などの寒剤で冷却後、冷却しながら粉砕することで粉粒体化した後、バインダーを添加し、打錠することでペレット化することが可能になる。また、上述した廃プラスチックは、打錠してもペレット化が困難な材質であるが、バインダーを添加するので、再生プラスチックペレットの製造が可能になる。なお、上述の主成分とは、75wt%以上を含むことを意味し、主成分リッチであれば、原材料として問題にならないことを意味する。ただし、90wt%以上を求められるような場合もあり、用途によって変更が可能である。このようにして、廃プラスチックの再資源化を実現することができる。
【0014】
上述の上位概念の手段1における下位概念の手段3としての方法は、廃プラスチックが、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂グループから選択された一種以上の廃プラスチックを主成分として含有する再生プラスチックペレットの製造方法である。ここに示した熱硬化性プラスチックのグループにおいても、熱可塑性プラスチックのグループと同様な再生プラスチックペレットの製造方法が可能となる。主成分の意味合いは、熱可塑性樹脂の場合と同様である。特に、熱硬化性樹脂の場合、再資源化には手間がかかるので、持続可能な開発目標( SDGs) が叫ばれる今日において、重要になってくる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の工程を説明する概念図
図2】本発明の凍結粉砕で使用する凍結分枠の一部断面の概念図
図3】本発明で使用する打錠成型機の一部断面の概念図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、好ましい発明の実施態様の一例を記載するものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の構成要件を限定するものではない。
【0017】
(廃プラスチックペレット製造の概要)
本発明における再生プラスチックペレットの製造方法は、図1に示すように、例えば、塊状の廃プラスチックを寒剤となる例えば液体窒素を使用して冷却後、冷却したまま粉砕する方法の工程を採用している。いずれにしても、最初に寒剤で塊状のプラスチックを冷却する工程がある。続いて、冷却された塊状の廃プラスチックを金属球で粉砕して、粉粒体にする工程がある。この二つの工程は、凍結粉砕機を使用することで達成できる。凍結粉砕機は、以下の図2で詳しく解説する。このようにして得られたプラスチック粉粒体に、打錠による加圧でペレット化できるよう、適切なバインダーを添加し、廃プラスチック粉粒体とバインダーの混合物、すなわちバインダー入り廃プラスチック粉粒体を調製するバインダー添加工程と、バインダー入り廃プラスチック粉粒体を打錠する打錠工程を含む組み合わせで行われる。
【0018】
(本発明の対象となるプラスチックの種類)
本発明で対象にしているのは、再生使用が比較的困難なプラスチックを対象にしている。すなわち、機械的な打錠圧力を駆使しただけでは凝固しない廃プラスチックを主成分にしたものである。例えば、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックいずれも選択することが可能である。また、同じ熱可塑性プラスチックであれば複数種の異なる種類のプラスチック混合物を対象とすること、あるいは同じ熱硬化性プラスチックであれば異なる種類のプラスチック混合物を対象とすることも可能である。
【0019】
ただし、熱可塑性プラスチックと熱硬化プラスチックの混合物は本発明の対象としてはならない。これは、熱可塑性プラスチックと熱硬化プラスチックでは、再生使用の成形方法が全く異なるからである。熱可塑性プラスチックと熱硬化プラスチックの混合物であっても、バインダーを添加し、打錠することでペレット化することは可能である。しかし、このような再生プラスチックペレットを射出成形や押出成形、ブロー成形、回転成形といった種々の成形方法により任意の最終製品に成形することができないからである。なお、成形物の対象によっては、熱可塑性プラスチック同士や熱硬化性プラスチック同士の混合使用が認められないものもある。そのような場合、廃プラスチックを十分に選別し、一つの種類の廃プラスチックに絞り、本発明を適用すれば良い。
【0020】
まず、熱硬化性の廃プラスチックでは、次のような材質を対象にしている。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレンから選択された一種以上であれば好ましく使用することができる。次に、熱硬化性の廃プラスチックでは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂から選択された一種以上であれば好ましく使用することができる。熱硬化性の廃プラスチックの場合、一般的には再生使用ができないとされてきたが、ここでは再生使用ができる処理方法が開発されたもののみを挙げたので、今後、再生使用ができる処理方法が開発されたものは、対象に加えることが可能である。
【0021】
本発明により再生プラスチックペレット化した熱可塑性の廃プラスチックは、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形など、種々の成形に供することが可能となる。また、熱硬化性の廃プラスチックである例えばフェノール樹脂の場合には本発明により再生プラスチックペレット化しても、そのままでは成形に供することはできない。しかし、フェノールと酸を添加し、加熱することで再び熱硬化するようになり、成形に供することができるようになる。このような発明は特開昭8-269227などで紹介されている。また、エポキシ樹脂では、WO2014009229A1など、ウレタン樹脂では論文( 東芝レビューVol .55No.8(2001))で開示されており、再生使用が可能とされている。
【0022】
(凍結粉砕)
次に、上述した廃プラスチックを脆化温度以下の低温にして、その後、粉砕する小規模装置を模式的な図2を使って説明する。まず、凍結粉砕容器5に上述した廃プラスチック材3を、容器の3分の1程度入れる。続いてデュア瓶2の中に凍結粉砕容器5を入れる。再生用プラスチック材3を凍結するため、寒剤1をデュア瓶2の内側と凍結粉砕容器5の外周との間に入れる。所定の温度に凍結するまで保つ。ここで、所定の温度とは、プラスチックの脆化温度以下の約-60℃以下の温度である。デュア瓶2内の廃プラスチック材3が凍結された状態で金属製鋼球4の入った凍結粉砕容器5の蓋側に取り付けられたロッド6を上下往復させて廃プラスチックを所望の平均粒径になるまで粉砕する。なお、このような装置においては、粉砕時も寒剤の冷却効果があるため冷却しながらの粉砕になり、本来であれば摩擦熱などにより温度上昇するところ、寒剤の冷却効果で温度上昇することなく、かつ効率よく粉砕が進むのである。
【0023】
(凍結粉砕における冷却工程および粉砕工程の温度)
凍結粉砕における冷却工程および粉砕工程の温度は、対象の廃プラスチックの脆化温度以下の温度域であることが必要である。より具体的には寒剤1を用いて廃プラスチックの温度を- 6 0 ℃ 以下に保持することが好ましい。また、低温ほど短時間で粉粒体化させることができる。このように粉砕工程でも脆化温度以下に保つことにより、粉砕中の温度上昇を抑えることができるので、廃プラスチックスの性質を変えることなく粉砕が可能である。このため、粉砕中も冷却することは非常に好ましい。
【0024】
(冷却工程および粉砕工程で使用する寒剤の種類)
上述の凍結粉砕において、廃プラスチックの冷却工程および粉砕工程で用いる寒剤1 は、液体窒素、ドライアイスとエタノール混合物( ドライアイス/エタノール) 、ドライアイスとアセトン混合物( ドライアイス/アセトン) 、ドライアイスとエチルエーテル混合物( ドライアイス/エチルエーテル) が好まし。さらに、液体窒素、ドライアイス/エタノール、ドライアイス/アセトンがより好ましく、液体窒素が最も好ましい。液体窒素は上記寒剤中で最も低温であるだけでなく、混合の作業を必要とせず、ただバルブの開閉作業だけで使用できるからである。
【0025】
(寒剤に液体窒素を用いる冷却工程の冷却時間)
上述した図2のような装置の場合、寒剤1による凍結の冷却時間は1分以上30分以下が好ましい。3分以上20分以下がより好ましく、さらに、再生用プラスチックの熱伝導率を考慮すると、8分以上12分以下が最も好ましく効率的である。冷却時間が1分未満の場合、再生用プラスチックの大きさにもよる部分はあるが、再生用プラスチックの中心部まで冷却されない場合があり、その後の粉砕工程においてプラスチックを効率よく粉砕できない場合があるからである。また30分より長い時間冷却しても、その後の粉砕工程におけるプラスチックの粉砕程度に変化が見られず、産業的な意義が希薄になるためである。
【0026】
(液体窒素以外の寒剤の冷却時間)
上述した図2のような装置において、寒剤にドライアイス/ エタノール、ドライアイス/アセトンあるいはドライアイス/ エチルエーテルを用いる場合、冷却時間は5分以上60分以下が好ましい。また、20分以上40分以下がより好ましく、さらには25分以上35分以下が最も好ましい。冷却時間が5分未満の場合、その後の粉砕工程においてプラスチックを効率よく粉砕できない場合があり、60分より長い時間冷却しても、その後の粉砕工程におけるプラスチック粉粒体の粒径に変化が見られず、産業的な意義が希薄になるためである。
【0027】
(寒剤に液体窒素を用いる場合の粉砕時間)
図2のような小規模装置において、粉砕工程における粉砕時間は1分以上30分以下が好ましく、3分以上20分以下がより好ましく、8分以上12分以下が最も好ましい。粉砕時間が1分未満の場合には粉砕後のプラスチック粒径が大きいため、打錠が困難になり、また30分以上粉砕してもプラスチックの粉砕効率に変化が見られず、産業的な意義が希薄になるためである。
【0028】
(寒剤が液体窒素以外である場合の粉砕時間)
図2のような小規模装置において、寒剤にドライアイスエタノール、ドライアイス/アセトンあるいはドライアイス/エチルエーテルを用いる場合、粉砕時間は20分以上120分以下が好ましく、40分以上90分以下がより好ましい。さらには、50分以上70分以下が最も好ましい。粉砕時間が20分未満の場合には粉砕後のプラスチック粒径が大きいため、打錠が困難になり、また120分以上粉砕してもプラスチック粉粒体の粒径に変化が見られず、産業的な意義が希薄になるためである。
【0029】
(粉砕工程におけるロッドの上下往復回数)
図2に示すような小規模装置において、粉砕時、ロッド6の1分当たりの上下往復回数は800回以上1600回以下が好ましく、1000回以上1400回以下がより好ましい。さらには、1200回以上1300回以下が最も好ましい。ロッド6の1分当たりの上下往復回数は800回未満ではプラスチックの粉砕が不十分となり、また1600回より多い回数では凍結粉砕後の粉砕物の粒径を制御するのが困難になるためである。
【0030】
(粉砕工程で得られる廃プラスチック粉粒体の好適なサイズ)
粉砕工程に続くバインダー添加工程や打錠工程に先立ち、粉砕工程により得られた廃プラスチックの粉粒体は、ふるいにかけて均一にすることが好ましい。廃プラスチックのサイズは、JIS Z8801に規定されている目開き4 mm、線直径1.4mmのふるいを通過し、目開き250μm 、線直径160m のふるいを通過しないサイズが好ましい。目開き2mm、線直径0.9mmのふるいを通過し、目開き500μm、線直径315μmのふるいを通過しないサイズがより好ましく、目開き1.4mm、線直径0.71mmのふるいを通過し、目開き710μm、線直径450μmのふるいを通過しないサイズが最も好ましい。目開き250μm、線直径160μmのふるいを通過するサイズの場合、飛散しやすいために取り扱い性が悪く、また飛散して成形機の治具などの部品の隙間に入り込んだ場合、装置の故障原因となる可能性がある。一方、目開き4mm、線直径1.4mm のふるいを通過しないサイズの場合、打錠工程における成形性が低下し、成形品の強度が不十分になる可能性があるためである。
【0031】
(バインダー添加工程で使用するバインダーの種類)
上述したように廃プラスチックのうち、熱可塑性樹脂ではポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレンを対象にしている。また、熱硬化性樹脂ではフェノール樹脂、ノボロイド樹脂、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂は、それだけを加圧、打錠しても成形できない。このような材料ではバインダーとなる成分を添加する必要がある。バインダーの種類としては、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、絹、羊毛、ステアリン酸、パルミチン酸、水酸化アルミニウムが好ましく、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサン、ステアリン酸、パルミチン酸がより好ましい。さらに、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサンが最も好ましい。とくに、セルロース、レーヨン、アセテート、キチン、キトサンは廃棄物として排出されており、バインダーとして使用することでリサイクルにも寄与できるためである。
【0032】
(バインダーの好適なサイズ)
凍結粉砕により得られた廃プラスチック粉粒体に添加するバインダーは、ふるいにかけ、均一なサイズとすることが好ましい。バインダーのサイズは、JIS Z8801に規定されている目開き4 mm、線直径1.4mmのふるいを通過し、目開き250μm、線直径160μmのふるいを通過しないサイズが好ましい。さらに、目開き2mm、線直径0.9mmのふるいを通過し、目開き500μm、線直径315μmのふるいを通過しないサイズがより好ましく、目開き1.4mm、線直径0.71mmのふるいを通過し、目開き710μm、線直径450μmのふるいを通過しないサイズが最も好ましい。目開き250μm、線直径160μmのふるいを通過するサイズの場合、飛散しやすいために取り扱い性が悪く、また飛散して成形機の治具などの部品の隙間に入り込んだ場合、装置の故障原因となる可能性がある。一方、目開き4mm、線直径1.4mmのふるいを通過しないサイズの場合、打錠する工程における成形性が低下し、成形品の強度が不十分になる場合があるためである。
【0033】
(バインダーの添加量)
打錠での凝固が困難な廃プラスチック粉粒体にバインダーを添加し、バインダー入り廃プラスチック粉粒体として再生プラスチックペレットを調製する際、再生プラスチックペレットに占めるバインダーの重量割合は0 .5wt%以上20wt%以下が好ましく、2wt%以上10wt%以下がより好ましい。さらに、4wt%以上8wt%以下が最も好ましい。廃プラスチックに対するバインダーの重量割合が.5wt%未満の場合には打錠によっても形状を保持できない可能性があり、また20wt%より多い割合でバインダーを添加した場合、その後の打錠工程により得られた再生プラスチックペレットに占めるプラスチックの割合が低く、用途が限定されるためである。
【0034】
(打錠工程)
上述したような粉砕工程で粉砕され、その後バインダー添加工程においてバインダーが加えられたバインダー入り廃プラスチック粉粒体は、例えば図3に模式的に示すようなプレス成形機によって打錠される。すなわち、台座7に載せた成形型8に鏡面板9aを設置し、この鏡面板9a上にバインダー入り廃プラスチック粉粒体10の任意の必要量を投入する。次に粉砕されたバインダー入り廃プラスチック粉粒体10の上に鏡面板9bを乗せた後、金属棒11を設置する。油圧プレス機のレバー12を上げ下げすることによりシリンダー13a中の油が油圧ホース14を通じてシリンダー13bへ移送され、ラム15が押し下げられる。これにより、金属棒11を通してバインダー入り廃プラスチック粉粒体10が打錠され、その成形品を得る。なお、打錠圧力は圧力計16により表示され、打錠圧力をかける。また、シリンダー13b部分は金属製のフレーム17により支えられている。なお、産業上の利用においては、ロータリー式打錠装置の使用で短時間に大量に生産できる。
【0035】
(打錠時の圧力)
打錠時の圧力は、5MPa以上60MPa以下が好ましい。さらに、25MPa以上50MPa以下がより好ましく、35MPa以上45MPa以下が最も好ましい。なお、打錠時の圧力が5 MPaより低い場合には、再生プラスチックペレットの形状が容易に崩壊する懸念がある。また60MPaを超える圧力で打錠しても再生プラスチックペレットの機械的強度に変化は見られず、産業上な意義は希薄になるためである。
【0036】
(打錠時の保持時間)
図3で示したような装置を用いた打錠工程において、打錠時の保持時間は、1分以上6分以下が好ましく、2分以上5分以下がより好ましく、3分以上4分以下が最も好ましい。1分に満たないような短時間では十分な形状の保持が確実に行われず、また、6分を超えても、形状保持性に違いは見られず、産業上の意義が希薄になるためである。例えば、ロータリー式打錠装置のような場合、保持時間はもっと短時間になる。
【0037】
本発明の上述した再生プラスチックペレットの製造方法の実施態様によれば、加熱工程を無くし、再生プラスチックの材料となるペレットを製造できることを説明した。このような製造方法であれば、廃プラスチックそのものや廃プラスチックに含有される添加剤の熱分解を防ぎ、製造された再生プラスチックペレットの強度低下、変色を無くし、製造過程における腐食性ガスもしくは分解生成ガスの発生をなくすことが可能となる。また結果的に、加熱溶融を経て再生プラスチックペレットを製造する従来技術と比較して、排気設備や空調設備を始めとした製造に関連する設備の簡素化が可能となる。
【0038】
以下に、好ましい再生プラスチックペレットを得るための実施例を示し、より詳細に説明する。なお、実施例は発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を限定的に解釈するものではない。
〔実施例1〕
【0039】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例1における廃プラスチックには、厚み3m m のポリエチレン製シートに対し、裁断機を用いて1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本実施例1におけるバインダーは、綿繊維の廃材を使用した。またバインダーとして使用するに当たっては、1cmの長さに裁断した綿繊維の廃材を、凍結粉砕装置(日本分析工業株式会社製、JFC-300)を用いて粉砕した。
【0040】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例1で使用した廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程には、図2 のような凍結粉砕4
装置(日本分析工業株式会社製、JFC-300)を用いた。また、冷却工程と粉砕工程における冷媒には液体窒素を使用し、冷却工程における冷却時間を10分とした。また粉砕工程における粉砕時間は10分、ロッドの先端の金属球を上下往復回数は1250回/分として粉粒体化した。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は913μmだった。
【0041】
(廃プラスチック粉粒体のバインダー添加工程と打錠工程)
本実施例1のバインダー添加工程において、バインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は6wt%とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体の打錠には油圧式プレス機(ラボネクト製、ミニラボプレスMP-100)を用いた。バインダー入りプラスチックを、1個当たり0.51gを図3に示したような装置に設置し、打錠圧力40MPaで3分間打錠して直径11mm、高さ3mmの廃ポリエチレンペレットを30個得た。これを本実施例1 における再生プラスチックペレットとした。
【0042】
(再生プラスチックペレットの外観評価)
得られた再生プラスチックペレット30個の外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行った。
【表1】
【0043】
(外観評価および総合評価)
本実施例1で得られた再生プラスチックペレットについて外観評価を行ったところ、30個の試料はともにその評価は5だった。以上の結果を踏まえ総合的な評価は、本実施例ではポリエチレン廃材を良好に打錠できたことから、適と判断した。
〔実施例2〕
【0044】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例2における廃プラスチックには、厚み2mmの硬質ポリ塩化ビニル製パイプに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本実施例2におけるバインダーは、実施例1と同様の綿繊維の廃材を使用した。またバインダーの使用に当たっては実施例1と同様の操作により粉粒体にした。
【0045】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例2では、冷却工程における冷却時間を3分、粉砕工程における粉砕時間を10分とした以外は実施例1と同様の方法で廃プラスチックを粉粒体化した。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は1022μmだった。
【0046】
(廃プラスチック粉粒体へのバインダー添加工程と打錠工程)
実施例2のバインダー添加工程において、バインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は0.5wt%とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力40MPa、打錠時間を3 分間とした以外は実施例1の方法と同様の方法で打錠し、これを実施例2 における廃プラスチックの再生ペレットとし、実施例1と同様に30個作製した。
【0047】
(再生プラスチックペレットの外観総合評価)
得られた再生プラスチックペレット30個の外観について、表1に示す5段階評価を基準
としてそれぞれ評価を行ったところ、その評価はすべて5だった。また、以上の結果から、本実施例ではポリ塩化ビニルの廃材を良好に打錠できたことから、総合評価は適と判断した。
〔実施例3〕
【0048】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例3における廃プラスチックには、厚み1mmのポリスチレン製シートを、裁断機を用いて平均1cm幅の四方の大きさに裁断したものを使用した。また、本実施例3におけるバインダーは、ステアリン酸粉末(和光純薬製) を使用した。
【0049】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例3の冷却工程と粉砕工程では、冷媒にドライアイスとアセトンを重量比1:1の割合で混合したドライアイス/アセトンを用い、廃プラスチックの冷却工程における冷却時間を20分、粉砕工程における粉砕時間を3分とした以外は実施例1 と同様の方法で粉粒体とした。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は1312μm だった。
【0050】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本実施例3ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は10wt%とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力50MPa、打錠時間を6分間とした以外は実施例1の方法と同様の方法で30個を打錠し、これを本実施例3における再生プラスチックペレットとした。
【0051】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基準として30個すべての評価を行ったところ、その評価はすべて5だった。以上の結果から、本実施例3ではポリスチレン廃材を良好に打錠できたことから、総合評価は適と判断した。
〔実施例4〕
【0052】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例4における廃プラスチックには、厚み1m m のフェノール樹脂製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本実施例4におけるバインダーは、実施例1と同様の綿繊維廃材を使用した。またバインダーとして使用するに当たっては実施例1と同様の操作により粉粒体とした。
【0053】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例4では、冷却工程における冷却時間を8分、粉砕工程における粉砕時間を8分とした以外は実施例1と同様の方法で粉粒体化した。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は1182μmだった。
【0054】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本実施例ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は2wt%とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力60MPa、打錠時間を4分間とした以外は実施例1 の方法と同様の方法で30個を打錠し、これらすべてを本実施例における再生プラスチックペレットとした。
【0055】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価はすべて5だった。以上の結果から、本実施例ではフェノール樹脂廃材を良好に打錠できたことから、総合評価は適と判断した。
〔実施例5〕
【0056】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例5における廃プラスチックには、厚み1mm のポリプロピレン製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本実施例5におけるバインダーは、レーヨン繊維の廃材を使用した。またバインダーとして使用するに当たっては実施例1と同様の操作により粉粒体にした。
【0057】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例5の冷却工程と粉砕工程では、冷媒をドライアイスとエタノールを重量比1:1の割合で混合したドライアイス/エタノールを使用し、冷却工程における冷却時間を10分、粉砕工程における粉砕時間を20分とした以外は実施例1と同様の方法で粉粒体にした。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は1229μmだった。
【0058】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本実施例5ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は2 wt% とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力25MPa、打錠時間を5分間とした以外は実施例1 の方法と同様の方法で30個を打錠し、これを本実施例5における再生プラスチックペレットとした。
【0059】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基として評価を行ったところ、その評価は5のものもあったがほとんどが4だった。以上の結果から、本実施例5ではポリプロピレン廃材を良好に打錠できたことから、総合評価は適と判断した。
〔実施例
【0060】
(廃プラスチックおよびバインダー)
本実施例における廃プラスチックには、厚み1mmのポリスチレン製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本実施例7 におけるバインダーは、アセテート繊維廃材を使用した。またバインダーとして使用するに当たっては実施例1と同様の操作により粉粒体化した。
【0061】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
本実施例における冷却工程と粉砕工程では、冷却工程における冷却時間を30分、粉砕工程における粉砕時間を30分とした以外は実施例1 と同様の方法で粉粒体化した。このようにして得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は734μmだった。
【0062】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本実施例ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は20wt% とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力25MPa、打錠時間を5分間とした以外は実施例1 の方法と同様の方法で打錠し、これを本実施例7における再生プラスチックペレットとした。
【0063】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基準として30個の評価を行ったところ、その評価はすべて5 だった。以上の結果から、本実施例ではポリスチレン廃材を良好に打錠できたことから、総合評価は適と判断した。
〔比較例1 〕
【0064】
(廃プラスチック)
本比較例1 における廃プラスチックには、厚み1mmのポリエチレン製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。
【0065】
(廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程)
廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程は実施例1と同様の方法で行った。また、本比較例1 で得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は945μmだった。得られた廃プラスチック粉粒体について、実施例1の方法と同様の方法で打錠を行った。
【0066】
(廃プラスチック打錠後の外観および総合評価)
本比較例1では廃プラスチック粉粒体をペレット化することができなかった。このため、表1に示す5段階評価を基準として、その評価は1 と判断した。以上の結果から、バインダーを添加せず、ポリエチレン粉粒体のみで打錠した本比較例では、ペレット化できなかったことから、総合評価は不適と判断した。
〔比較例
【0067】
(廃プラスチックとバインダー)
本比較例における廃プラスチックには、厚み1mmのポリエチレン製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm 幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本比較例におけるバインダーは、ステアリン酸粉末を使用した。
【0068】
(冷却工程と粉砕工程)
廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程は、実施例1と同様の方法で行った。また、本比較例 で得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は956μm だった。
【0069】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本比較例ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は5wt%とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力1MPa、打錠時間を3分間とした以外は実施例1の方法と同様の方法で5個を打錠し、これを本実施例における再生プラスチックペレットとした。
【0070】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1 に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価はすべてが2だった。以上の結果から、本比較例におけるバインダー入り廃プラスチック粉粒体の打錠時の打錠圧力が低い場合、得られた再生プラスチックペレットも容易に崩壊したことから、総合評価は不適と判断した。
〔比較例
【0071】
(廃プラスチックとバインダー)
本比較例における廃プラスチックには、厚み1mmのポリエチレン製シートに対し、裁断機を用いて平均1cm幅四方の大きさに裁断したものを使用した。本比較例におけるバインダーは、実施例1と同様の綿繊維廃材を使用した。またバインダーとして使用するに当たっては実施例1と同様の操作により粉粒体化した。
【0072】
(冷却工程と粉砕工程)
廃プラスチックの冷却工程と粉砕工程は実施例1 と同様の方法で行った。また、本比較例で得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径は907μm だった。
【0073】
(バインダー添加工程と打錠工程)
本比較例ではバインダー入り廃プラスチック粉粒体に占めるバインダーの割合は6wt.% とした。このようにして得られたバインダー入り廃プラスチック粉粒体について、打錠圧力40MPa、打錠時間を0.5分間とした以外は実施例1 の方法と同様の方法で5個打錠し、これを本比較例における再生プラスチックペレットとした。
【0074】
(再生プラスチックペレットの外観および総合評価)
得られた再生プラスチックペレットの外観について、表1に示す5段階評価を基準として評価を行ったところ、その評価はすべてが2だった。以上の結果から、ポリエチレン廃材の打錠における打錠時間を短くした場合には得られた再生プラスチックペレットが容易に崩壊したことから、総合評価は不適と判断した。
【0075】
実施例1~6、および比較例1~で行った再生プラスチックペレット化条件を表2に、また冷却工程と粉砕工程で得られた廃プラスチック粉粒体の平均粒径および得られた再生プラスチックペレットの外観評価および総合評価を表3にまとめて示した。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
以上の表2 および表3 に示した結果から、プラスチックの廃材を、1) 寒剤で冷却する工程と、2) 粉粒体にする工程、3) バインダーを添加する工程、4) 任意の形状に打錠する工程、のように組み合わせであれば、再生プラスチックの成形材料とするペレット化ができることを確認した。このことから、加熱溶融工程を経ることがないので、熱分解による弊害をなくした再生プラスチックの原料とすることもできる。また、本発明は非常にシンプルであり、循環社会のリサイクル化に十分貢献できるものであり、サステナビリティの高い手法である。
【符号の説明】
【0079】
1 寒剤
2 デュア瓶
3 プラスチック
4 金属球
5 凍結粉砕容器
6 ロッド
7 台座
8 成形型
9a 、9b 鏡面板
10 バインダー入り廃プラスチック粉粒体
11 金属棒
12 油圧プレス機のレバー
13a 、13b シリンダー
14 油圧ホース
15 ラム
16 圧力計
17 金属製フレーム
図1
図2
図3