(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】クレーン用吊り具
(51)【国際特許分類】
B66C 3/00 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
B66C3/00
(21)【出願番号】P 2021152484
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2022-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月5日、大同特殊鋼株式会社知多工場(愛知県東海市元浜町39)において、株式会社愛和産業が、大同特殊鋼株式会社知多工場の担当者に松波英二が発明したクレーン用吊り具を公開し、販売した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321003876
【氏名又は名称】株式会社愛和産業
(73)【特許権者】
【識別番号】321010807
【氏名又は名称】株式会社愛岐電機
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】松波 英二
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-072993(JP,U)
【文献】実開昭62-157888(JP,U)
【文献】特開2010-189111(JP,A)
【文献】特開平11-343094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1ピンと一対の第2ピンとを側面に有するコンテナをクレーンにより吊り上げるためのクレーン用吊り具であって、
前記第1ピン及び第2ピンを係止する一対のフレームと、
前記クレーンのフックを掛止する掛止孔を有し、前記一対のフレームを連結する連結部と、を備え、
前記フレームが、前記第1ピンを挿通して係止することができる貫通部と、前記第2ピンを係止する係止部と、を有し、前記第1ピンを前記貫通部に挿通した状態で前記コンテナに対してスライド可能であり、
前記貫通部が、前記コンテナに対して前記フレームをスライドさせることにより該貫通部への前記第1ピンの着脱を可能とする切り欠きであり、
前記フレームのスライドが、前記掛止孔に掛止されたフックを移動させることにより行うことが可能であり、
前記フレームのスライドにより、前記第2ピンが前記係止部に係止された係止状態と、前記係止部による前記第2ピンの係止が解除された解除状態と、を切り替えることが可能であり、
前記係止状態において前記掛止孔に掛止されたフックを上昇させることにより、前記コンテナの内容物を保持した状態で該コンテナを吊り上げ、
前記解除状態において前記掛止孔に掛止されたフックを上昇させることにより、前記コンテナを傾斜させて吊り上げて、該コンテナから前記内容物を排出することを特徴とするクレーン用吊り具。
【請求項2】
前記フレームが、前記コンテナを吊り上げる際に前記貫通部に挿通した前記第1ピンを係止する第1係止位置及び第2係止位置を有し、
前記係止状態において、前記第1ピンが前記第1係止位置で係止され、
前記解除状態において、前記第1ピンが前記第2係止位置で係止される請求項1に記載のクレーン用吊り具。
【請求項3】
前記貫通部への前記第1ピンの着脱をロックするロック機構を備える請求項
1又は2に記載のクレーン用吊り具。
【請求項4】
前記貫通部が、実質的に逆U字形状又は実質的にT字形状である請求項1~
3のいずれか1項に記載のクレーン用吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン用吊り具に関し、より詳細には、内容物を保持した状態でのコンテナの搬送とコンテナの内容物の排出を行うことができるクレーン用吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場や工場内等において、スクラップや土等の被搬送物を目的の場所まで搬送する際には、被搬送物をコンテナに入れ、クレーンによりワイヤを介してコンテナを吊り上げて搬送し、搬送先でコンテナから被搬送物を取り出すといった作業が一般的に行われている。この作業において、被搬送物をコンテナから手作業で取り出す場合には多大な労力を要するため、コンテナを傾斜させることにより、コンテナからの被搬送物の排出が行われている。例えば、特許文献1には、吊り上げ状態のバッグ本体の底部に押し上げ力を加えることによりバッグ本体の傾斜、転回が可能な吊りフレーム付バッグの構造の考案が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の考案では、吊り上げ状態でバッグ本体の底部から押し上げ力を加えることによりバッグ本体の傾斜、転回を行うため、クレーン操作を行う者以外にも作業員を必要とし、人的コストが発生する。さらに、バッグ本体の傾斜、転回を行う際に、排出される被搬送物に作業員が巻き込まれること、被搬送物を排出する際にバッグが揺れて作業員と衝突すること等が考えられ、安全性が未だ十分でない。そこで、本発明は、クレーン操作のみでコンテナの搬送及びコンテナの内容物の排出が可能であり、コストが削減され、安全性の高いクレーン用吊り具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一対の第1ピンと一対の第2ピンとを側面に有するコンテナをクレーンにより吊り上げるためのクレーン用吊り具であって、前記第1ピン及び第2ピンを係止する一対のフレームと、前記クレーンのフックを掛止する掛止孔を有し、前記一対のフレームを連結する連結部と、を備え、前記フレームが、前記第1ピンを挿通して係止することができる貫通部と、前記第2ピンを係止する係止部と、を有し、前記第1ピンを前記貫通部に挿通した状態で前記コンテナに対してスライド可能であり、前記貫通部が、前記コンテナに対して前記フレームをスライドさせることにより該貫通部への前記第1ピンの着脱を可能とする切り欠きであり、前記フレームのスライドが、前記掛止孔に掛止されたフックを移動させることにより行うことが可能であり、前記フレームのスライドにより、前記第2ピンが前記係止部に係止された係止状態と、前記係止部による前記第2ピンの係止が解除された解除状態と、を切り替えることが可能であり、前記係止状態において前記掛止孔に掛止されたフックを上昇させることにより、前記コンテナの内容物を保持した状態で該コンテナを吊り上げ、前記解除状態において前記掛止孔に掛止されたフックを上昇させることにより、前記コンテナを傾斜させて吊り上げて、該コンテナから前記内容物を排出することを特徴とする。クレーンは、公知のものを採用することができ、例えば天井クレーン、ケーブルクレーン、トラッククレーン等が挙げられる。
【0006】
この構成によれば、前記クレーンの操作のみで前記係止状態と前記解除状態とを切り替えることが可能であり、前記内容物を保持した状態でのコンテナの搬送と前記コンテナの内容物の排出を行うことができるため、玉掛け作業や排出作業等の作業員による手作業を要しない。これにより、コストが削減され、安全性が向上する。前記係止状態で前記コンテナを吊り上げた場合には、前記第1ピンは前記貫通部において係止され、前記第2ピンは前記係止部において係止される。前記解除状態で前記コンテナを吊り上げた場合には、前記第1ピンは前記貫通部において係止され、前記第2ピンは係止されていない状態であり、前記コンテナは前記第1ピンの中心を軸として回動可能である。さらに、前記クレーンの操作により、前記クレーン用吊り具を前記コンテナから取り外し、他の前記コンテナに取り付けることができるため、1つの前記クレーン用吊り具を複数の前記コンテナに対して使用することができる。これにより、前記フックを他の前記クレーン用吊り具に掛け替える玉掛け作業を削減することができ、玉掛け作業に要する人的コストを削減することができる。前記切り欠きは、前記貫通部がフレームの外部と連通するものを意味する。連通する部分を介して、前記第1ピンを前記貫通部に着脱させることができる。
【0007】
本発明は、前記フレームが、前記コンテナを吊り上げる際に前記貫通部に挿通した前記第1ピンを係止する第1係止位置及び第2係止位置を有し、前記係止状態において、前記第1ピンが前記第1係止位置で係止され、前記解除状態において、前記第1ピンが前記第2係止位置で係止されることが好ましい。この構成によれば、前記係止状態と前記解除状態とでは、異なる位置において前記第1ピンが係止されるため、該係止状態と該解除状態を確実に切り替えることが可能であり、作業の確実性と安全性を向上させることができる。
【0009】
本発明は、前記貫通部への前記第1ピンの着脱をロックするロック機構を備えることが好ましい。この構成によれば、前記第1ピンが前記貫通部から意図せずに外れる事態を防止することができ、前記クレーンにより吊り上げた前記コンテナが落下すること等を防止することができる。ロック機構とは、前記フレームに取り付けることにより、前記連通する部分を介した前記第1ピンの前記貫通部への着脱をロックするものを意味する。
【0010】
本発明は、前記貫通部が、実質的に逆U字形状又は実質的にT字形状であることが好ましい。この構成によれば、前記係止状態と前記解除状態との切り替えを容易にすることができる。実質的に逆U字形状又は実質的にT字形状とは、厳密な逆U字形状又はT字形状に加えて、これに類似するものを含む形状である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前記内容物を保持した状態でのコンテナの搬送と前記コンテナの内容物の排出を前記クレーンの操作のみで行うことができ、作業員による手作業を要しないため、コストが削減され、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明第1実施形態のクレーン用吊り具を示す図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図である。
【
図2】本発明第1実施形態のコンテナを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図である。
【
図3】本発明第1実施形態における、係止状態から解除状態へ切り替える際のクレーン用吊り具の動きを示す右側面図であり、(a)は切り替え開始時(係止状態)、(b)及び(c)は切り替え途中、(d)は切り替え完了時(解除状態)を示す図である。
【
図4】同、係止状態でコンテナを吊り上げたクレーン用吊り具を示す右側面図である。
【
図5】同、解除状態でコンテナを吊り上げる際のクレーン用吊り具及びコンテナを示す右側面図であり、(a)は吊り上げ開始時、(b)は吊り上げ途中、(c)は吊り上げ後を示す図である。
【
図6】同、着底したコンテナにクレーン用吊り具を取り付けた状態を示す右側面図である。
【
図7】本発明第2実施形態のクレーン用吊り具の右側面図であり、(a)はロック機構を取り付けた状態、(b)はロック機構を取り外した状態を示す図である。
【
図9】本発明第2実施形態のコンテナを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図である。
【
図10】本発明第2実施形態における、係止状態から解除状態へ切り替える際のクレーン用吊り具の動きを示す右側面図であり、(a)は切り替え開始時(係止状態)、(b)及び(c)は切り替え途中、(d)は切り替え完了時(解除状態)を示す図である。
【
図11】本発明第2実施形態のロック機構を示す図であり、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【
図12】本発明第2実施形態における、解除状態でコンテナを吊り上げる際のクレーン用吊り具及びコンテナを示す右側面図であり、(a)は吊り上げ開始時、(b)は吊り上げ途中、(c)は吊り上げ後を示す図である。
【
図13】本発明第2実施形態の変形例のコンテナを示す図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図である。
【
図14】本発明第2実施形態の変形例における、解除状態でコンテナを吊り上げる際のクレーン用吊り具及びコンテナを示す右側面図であり、(a)は吊り上げ開始時、(b)は吊り上げ途中、(c)は吊り上げ後を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のクレーン用吊り具1(以下、吊り具1という)を
図1~6を参照して説明する。吊り具1は、一対の第1ピン21と一対の第2ピン22とを側面23bに有するコンテナ2をクレーン(クレーン本体図示略)により吊り上げるためのものであり、第1ピン21及び第2ピン22を係止する一対のフレーム3と、クレーンのフック4を掛止するための掛止孔51を有し、一対のフレーム3の上端部近傍同士を連結する連結部5と、を備える(
図1~3参照)。フレーム3と連結部5とは回動可能に接続されている。クレーンとしては、公知のものを採用することができ、例えば天井クレーン、ケーブルクレーン、トラッククレーン等が挙げられる。
【0014】
コンテナ2は、箱状体のコンテナ本体23と、コンテナ本体23の下側に設けられた台部24と、を備える。コンテナ本体23は、実質的に矩形形状の底面23aと、底面23aの対向する一対の端部から上方に延出し、コンテナ2の外側に向かって突設された第1ピン21、第2ピン22及び第3ピン26をそれぞれ、設けた一対の側面23bと、底面23aの他の端部から上方に延出し、一対の側面23b同士を連結する背面23cと、底面23aの背面23cが延出する端部と対向する端部からコンテナ本体23の外側に向かって斜め上方に延出し、一対の側面23b同士を連結する前面23dと、を有している(
図2参照)。前面23dの外側は丸みを帯びており、後述する解除状態においてコンテナ2を吊り上げる際に、コンテナ2を滑らかに傾斜させることができる。前面23dは、その高さが側面23b及び背面23cの高さよりも低くなるように設けられているため、コンテナ2を傾斜させることによる内容物の排出が容易である。前面23dの高さは、本実施形態のものに限定されない。第3ピン26は、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0015】
第1ピン21は、円柱部21aと、円柱部21aの先端に設けられ、円柱部21aと軸を同一とし、円柱部21aよりも径の大きい円盤体を、その中心よりも上側で水平に切断した形状である先端部21bと、を有する。先端部21bが上記形状であるため、後述する貫通部6への第1ピン21の挿通が容易である。
【0016】
第2ピン22及び第3ピン26は、それぞれ、円柱部22a、26aと、円柱部22a、26aの先端に設けられ、円柱部22a、26aと軸を同一とし、円柱部22a、26aよりも径の大きい円盤体である先端部22b、26bと、を有する。第2ピン22は、第1ピン21よりも上方に配置されている。
【0017】
台部24は、コンテナ2の重心位置を調整するための単数又は複数の重り25を内部に取り付け可能な構造である。重り25を取り付けてコンテナ2の重心位置を調整することにより、後述する解除状態においてコンテナ2を吊り上げた際に、コンテナ2が傾斜する角度を調整することができる。これによりコンテナ2からの内容物の良好な排出を実現できる。
【0018】
図1に示す通り、一対のフレーム3は、第1ピン21を挿通して係止することができる実質的に逆U字形状の貫通孔61を含む貫通部6と、第2ピン22を係止する凹状の係止部7と、を有する板状の部材である。貫通部6及び係止部7が設けられる位置は、それぞれ第1ピン21及び第2ピン22の位置と対応している。
【0019】
図1に示す通り、貫通部6は、貫通孔61の幅が第1ピン21の先端部21bの上下方向の幅よりも大きく、第1ピン21を挿抜可能な挿抜位置Aを有している。挿抜位置Aを除く位置の貫通孔61の幅は第1ピン21の先端部21bの幅よりも小さいため、挿抜位置Aを除く位置においては、第1ピン21の貫通部6への挿抜ができない構造である。これにより、吊り具1によりコンテナ2を吊り上げた際に、貫通部6に挿通した第1ピン21の意図しない抜けによる、コンテナ2の脱落を防止することができる。貫通部6の貫通孔61の幅が第1ピン21の円柱部21aの径よりも大きく、フレーム3の厚さが第1ピン21の円柱部21aの長さよりも小さいため、貫通部6に挿通した第1ピン21が貫通孔61内を移動することが可能である。したがって、フレーム3が第1ピン21を貫通部6に挿通した状態でコンテナ2に対してスライド可能な構造である。一対のフレーム3同士が連結部5によって連結されているため、フレーム3のスライドは、コンテナ2が床面Fに着底した状態で、掛止孔51に掛止されたフック4を移動させることにより、連結部5を介して行うことが可能である。
【0020】
係止部7は、吊り具1を用いてコンテナ2を吊り上げる際に、第2ピン22を係止することが可能である。コンテナ2に対するフレーム3のスライドにより、第2ピン22が係止部7に係止された係止状態と、係止部7による第2ピン22の係止が解除された解除状態と、の切り替えを行うことができる。
【0021】
一対のフレーム3は、コンテナ2を吊り上げる際に貫通部6に挿通した第1ピン21を係止する第1係止位置B及び第2係止位置Cをさらに有しており、係止状態においては、第1ピン21が第1係止位置Bで係止され、解除状態においては、第1ピン21が第2係止位置Cで係止される。貫通部6が実質的に逆U字形状であり、上下方向及び左右方向のスライドのみで係止状態と解除状態を切り替えることができるため、この切り替えのためのクレーン操作が容易である(
図3参照)。
図3中の矢印はフレーム3をスライドさせる方向を示す。
【0022】
係止状態では、一対の第1ピン21は第1係止位置Bで係止され、一対の第2ピン22は係止部7に係止されるため、吊り具1によりコンテナ2を吊り上げた際には、4点で支持される(
図4参照)。係止状態において掛止孔51に掛止されたフック4を上昇させた場合には、傾斜することなくコンテナ2を吊り上げることができる。したがって、吊り具1により、内容物を保持した状態でコンテナ2を目的の場所に搬送することができる。
【0023】
解除状態では、一対の第1ピン21は第2係止位置Cで係止され、一対の第2ピン22は係止部7による係止が解除されているため、コンテナ2が吊り具1により一対の第1ピン21の中心を軸として回動可能に支持される。解除状態において掛止孔51に掛止されたフック4を上昇させて、吊り具1を上方向に移動させた場合には、吊り具1の上昇に伴い、コンテナ2が一対の第1ピン21の中心を軸として回動するため、コンテナ2を傾斜させて吊り上げ、コンテナ2から内容物を排出することができる(
図5参照)。コンテナ2が回動する際、前面23dと床面Fとが擦れるが、前面23dの外側の丸みにより、内容物に加わる衝撃を抑制することができる。吊り具1を上方向と、コンテナ2の前面23d側方向(
図5中の左方向)と、に交互に細かく移動させることにより、前面23dの外側の丸みに沿って、コンテナ2を滑らかに傾斜させて吊り上げることも可能である。この場合には、コンテナ2が滑らかに傾斜するため、内容物に加わる衝撃をより抑制することができる。解除状態においてフック4を上昇させて、吊り具1の上方向への移動のみ、又は上方向と左右方向の移動で内容物をコンテナ2から排出できるため、吊り具1を斜め上方に向かって吊り上げる操作を必要としない。傾斜させて吊り上げたコンテナ2を着底させる際には、吊り上げる際と逆の手順で行う。コンテナ2が第3ピン26を有する場合には、一対の第3ピン26を係止することにより、コンテナ2を一対の第3ピン26の中心を軸として回動可能とする治具(図示略)を使用してコンテナ2を着底させてもよい。
【0024】
一対のフレーム3は、着底したコンテナ2の側面23bの上部に吊り具1を載置するためのL字片8、及び連結部5を支持する支持部9をさらに有している(
図1及び6参照)。L字片8は、フレーム3の上部近傍の前面及び後面に設けられている。コンテナ2が着底し、第1ピン21が貫通部6に挿通され、吊り具1を吊り上げていない状態では、L字片8がコンテナ2の側面23bの上部と当接するため、吊り具1をコンテナ2の側面23bの上部に載置することができる。支持部9は、フレーム3の上部に設けられ、フレーム3の斜め上方に延び出しており、回動した連結部5と当接して、連結部5を斜め上方に向いた状態で支持する。L字片8及び支持部9により、着底したコンテナ2の上部に吊り具1を載置し、連結部5を斜め上方に向いた状態で支持することができるため(
図6参照)、連結部5の掛止孔51にフック4を掛止する及び取り外す操作が容易である。
【0025】
連結部5は、一対のフレーム3を連結する部材であり、側面下部において回動可能な状態でフレーム3に接続されている。連結部5は、フック4を掛止する実質的に洋梨形状の掛止孔51を中央付近に有しており、掛止孔51の左右には連結部5の強度を高めるためのリブ52を有している(
図1参照)。掛止孔51の形状としては、フック4を掛止可能なものであれば特に限定されず、円形、楕円形、長円形、矩形等を採用可能である。リブ52の形状は、連結部5に十分な強度を付与可能なものであれば特に限定されない。
【0026】
吊り具1を使用した、内容物を保持した状態でのコンテナ2の搬送及びコンテナ2からの内容物の排出の手順について説明する。内容物を有するコンテナ2に吊り具1を装着し、掛止孔51にクレーンのフック4を掛止する。クレーンを操作してフック4を移動させ、吊り具1を係止状態とする。係止状態となった後にフック4を上昇させ、コンテナ2を吊り上げ、搬送先まで移動させる(
図4参照)。このとき、係止状態であることにより、コンテナ2は底面23aが水平な状態で吊り上げられるため、内容物が脱落することなくコンテナ2を搬送することができる。搬送先においてコンテナ2を着底させ、吊り具1を係止状態から解除状態に切り替える(
図3参照)。解除状態となった後に、コンテナ2を傾斜させて吊り上げ、コンテナ2の内容物を排出する(
図5参照)。コンテナ2から内容物を排出した後は、コンテナ2を着底させ、解除状態から係止状態に切り替える。コンテナ2を解除状態から係止状態に切り替えて吊り上げることにより、コンテナ2を次に使用する場所へ安全に搬送することができる。
【0027】
本実施形態の吊り具1は、以下の効果を奏する。クレーン操作のみで、内容物を保持した状態でのコンテナ2の搬送及びコンテナ2からの内容物の排出を行うことができるため、作業員による手作業を必要とせず、コストが削減され、安全性が向上する。貫通部6が実質的に逆U字形状であるため、係止状態と解除状態の切り替えのためのクレーン操作が容易である。解除状態において、吊り具1の上方向、又は上方向と左右方向の移動のみで内容物をコンテナ2から排出することができる。フレーム3がL字片8及び支持部9を有するため、掛止孔51へのフック4の掛止及びその解除が容易である。
【0028】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態のクレーン用吊り具101(以下、吊り具101という)を
図7~12を参照して説明する。第1実施形態と共通するものについては、同一の符号を付して、その図示及び説明を援用し、主に相違点を説明する。吊り具101は、第1ピン121、第2ピン22、及び第3ピン26を一対の側面23bに有するコンテナ102をクレーンにより吊り上げるためのものであり、第1ピン121及び第2ピン22を係止する一対のフレーム103と、クレーンのフック4を掛止する掛止孔51を有し、一対のフレーム103の上端部近傍同士を連結する連結部105と、ロック機構110と、を備える(
図7及び8参照)。連結部105は、フレーム103に対して回動しないように固定して接続されているが、これに限定されず、第1実施形態の場合と同様に、回動可能に接続されていてもよい。第3ピン26は、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0029】
コンテナ102は、第1実施形態のコンテナ2と比較して、第1ピン121及び第2ピン22が設けられる位置が異なり(
図9参照)、第1ピン121と第2ピン22が同一の高さに配置されている。第1ピン121の先端部121bは、円柱部121aの先端に設けられ、円柱部121aと軸を同一とし、円柱部121aよりも径の大きい円盤体である。
【0030】
一対のフレーム103は、第1ピン121を挿通して係止することができる貫通部106と、第2ピン22を係止する実質的にJ字形状の係止部107と、を有する板状の部材である(
図7参照)。貫通部106は、実質的にT字形状でT字の横棒に相当する部分の両端が下方に延びた、フレーム103の底部において外部と連通する切り欠きである。貫通部106が上記形状の切り欠きであるため、フレーム103をコンテナ102に対してスライドさせることにより、第1ピン121を貫通部106に挿抜することができ、コンテナ102への吊り具101の着脱をクレーン操作のみで行うことができる。同様に、吊り具101をコンテナ102から取り外して、他のコンテナ102に取り付ける作業もクレーン操作のみで行うことができるため、一つの吊り具101を複数のコンテナ102に対して使用することが容易であり、第1実施形態の吊り具1と比較して作業性がさらに向上する。
【0031】
係止部107は、実質的にJ字形状であり、吊り具101を用いてコンテナ102を係止状態で吊り上げる際に、第2ピン22を係止することが可能である。第1実施形態の係止部7と同様に、コンテナ102に対するフレーム103のスライドにより、第2ピン22が係止部107に係止された係止状態と、係止部107による第2ピン22の係止が解除された解除状態と、の切り替えを行うことができる。
【0032】
フレーム103は、互いに対向する実質的にJ字形状の突起部103a、103bと、貫通部106に挿通した第1ピン121を係止可能な第1係止位置D及び第2係止位置Eと、をさらに有している(
図7参照)。突起部103a、103bには、ロック機構110を取り付けるための円形の嵌合孔103c、103dがそれぞれ設けられている。第1係止位置D及び第2係止位置Eは、コンテナ102を吊り上げる際に貫通部106に挿通した第1ピン121を係止する位置であり、互いに対向している。係止状態においては、第1ピン121が第1係止位置Dで係止され、解除状態においては、第1ピン121が第2係止位置Eで係止される。貫通部106が実質的にT字形状であり、上下方向及び左右方向のスライドのみで係止状態と解除状態を切り替えることができるため、この切り替えのためのクレーン操作が容易である(
図10参照)。
図10中の矢印はフレーム103をスライドさせる方向を示す。
【0033】
ロック機構110は、突起部103a、103bを繋ぐことにより、貫通部106への第1ピン121の着脱をロックするものである。ロック機構110は、本体110aと、本体110aの一方の面から突設した円柱形状の二つの嵌合部110b、110cと、本体110aの他方の面に設けられた把手110dと、を有する構成である(
図11参照)。ロック機構110は、嵌合部110b、110cをそれぞれ嵌合孔103c、103dに差し込んで嵌合させることにより、フレーム103に取り付け可能である。フレーム103に取り付けられたロック機構110は、把手110dを把持して引き抜くことで容易に取り外すことができる。ロック機構110により、貫通部106からの第1ピン121の意図しない抜けを防止することができる。
【0034】
吊り具101を使用した、内容物を保持した状態でのコンテナ102の搬送及びコンテナ102からの内容物の排出の手順について説明する。ロック機構110を取り外した吊り具101の掛止孔51にクレーンのフック4を掛止する。クレーンを操作して、吊り具101を吊り上げ、内容物を保持したコンテナ102の上方に位置するように移動させる。吊り具101を降下させて、第1ピン121を貫通部106に挿通させる。さらにクレーンを操作して、吊り具101を係止状態とする。係止状態となった後に、吊り具101にロック機構110を取り付ける。フック4を上昇させ、コンテナ102を吊り上げ、搬送先まで移動させる。このとき、ロック機構110により、コンテナ102の吊り具101からの意図しない脱落が防止される。搬送先においてコンテナ102を着底させ、吊り具101を係止状態から解除状態に切り替える(
図10参照)。解除状態となった後にコンテナ102を傾斜させて吊り上げ、コンテナ102の内容物を排出する(
図12参照)。コンテナ102から内容物を排出した後は、コンテナ102を着底させ、解除状態から係止状態に切り替える。コンテナ102を解除状態から係止状態に切り替えて吊り上げることにより、コンテナ102を使用する場所へ安全に搬送することができる。コンテナ102を搬送し、着底させた後は、ロック機構110を取り外し、クレーンを操作して第1ピン121を貫通部106から抜き、吊り具101をコンテナ102から取り外す。その後は、吊り具101を別のコンテナ102に取り付けることにより、一つの吊り具101を、複数のコンテナ102における搬送及び内容物の排出に使用することが可能である。
【0035】
本実施形態の吊り具101は、吊り具1の効果に加えて、以下の効果をさらに奏する。貫通部106が切り欠きであるため、一つの吊り具101の複数のコンテナ102に対する使用をクレーン操作のみで容易に行うことができ、作業性が良い。貫通部106が実質的にT字形状であるため、係止状態と解除状態の切り替えのためのクレーン操作が容易である。ロック機構110を備えることにより、コンテナ102の吊り具101からの意図しない脱落を防止することができる。
【0036】
<第2実施形態の変形例>
本変形例では、コンテナ102に換えて、コンテナ本体223が実質的に直方体形状の箱状体であるコンテナ202を採用する。コンテナ202は、その内部にコンテナ202よりも小さいコンテナ230を、係止ピン229により取り付け可能な構造であるため、第1ピン121及び第2ピン22を有していないコンテナ230を吊り具101により吊り上げることが可能である(
図13参照)。コンテナ230は任意の構成要素であり、コンテナ202のみを使用してもよい。
【0037】
コンテナ本体223は、平面視で実質的に矩形の底面223a、第1ピン121及び第2ピン22を有する一対の側面223b、背面223c、及び前面223dを有しており、底面223aの各端部から、一対の側面223b、背面223c、及び前面223dが上方に延出している。背面223c及び前面223dは、それぞれの上端部に、先端がコンテナ202の外側に向かって延出する2つのガイド板227を有し、それぞれの上端部近傍に長円形の4つの挿通孔228を有している。ガイド板227は、コンテナ230をコンテナ202内へ配置する際のガイドとなる部材である。挿通孔228は、係止ピン229を挿通することができる。
【0038】
コンテナ230は、上部が開口しており、実質的に直方体形状の箱状体である。コンテナ230の上端部には、係止ピン229を挿通可能な挿通孔231を有する板部材232が4つ設けられている。4つの板部材232は、コンテナ230をコンテナ202内に配置した際に、それぞれの挿通孔231が、コンテナ202の挿通孔228と対向するように配置されている。係止ピン229を、対向する挿通孔231及び挿通孔228の両方に挿通することによりコンテナ230がコンテナ202内に取り付けられる。板部材232は、挿通孔231がコンテナ202の全ての挿通孔228と対向するように8つ設けられていてもよい。この場合には、8つの係止ピン229を挿通することが可能であるため、より確実にコンテナ230を取り付けることができる。挿通孔228、231への係止ピン229の挿通は、背面223c側、又は前面223d側のどちらか一方側のみでもよい。この場合であっても、問題なくコンテナ202にコンテナ230を取り付けることができる。
【0039】
解除状態でコンテナ202を吊り上げ、前面223dが実質的に水平となるように傾斜させた場合、コンテナ202が実質的に直方体形状であるため、前面223dを下側にしてコンテナ202を床面F等に載置することができる(
図14参照)。クレーン操作のみでコンテナ202及びコンテナ230を横倒しにすることが可能である。前面223dを下側にして載置することにより、水等による洗浄操作を容易に行うことができる。
図14に示す通り、係止ピン229を背面223c側のみに挿通する場合には、係止ピン229が邪魔することなく前面223dを下側にしてコンテナ202を床面F等に載置することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、101・・・クレーン用吊り具
2、102、202・・・コンテナ
21、121・・・第1ピン
21a・・・円柱部
21b・・・先端部
22・・・第2ピン
22a・・・円柱部
22b・・・先端部
23、223・・・コンテナ本体
23a、223a・・・底面
23b、223b・・・側面
23c、223c・・・背面
23d、223d・・・前面
24・・・台部
25・・・重り
26・・・第3ピン
26a・・・円柱部
26b・・・先端部
227・・・ガイド板
228・・・挿通孔
229・・・係止ピン
230・・・コンテナ
231・・・挿通孔
232・・・板部材
3、103・・・フレーム
103a、103b・・・突起部
103c、103d・・・嵌合孔
4・・・フック
5、105・・・連結部
51・・・掛止孔
52・・・リブ
6、106・・・貫通部
61・・・貫通孔
7、107・・・係止部
8・・・L字片
9・・・支持部
110・・・ロック機構
110a・・・本体部
110b、110c・・・嵌合部
110d・・・把手
A・・・挿抜位置
B、D・・・第1係止位置
C、E・・・第2係止位置
F・・・床面
【要約】
【課題】 クレーン操作のみでコンテナの搬送及びコンテナの内容物の排出が可能であり、コストを削減し、安全性の高いクレーン用吊り具を提供する。
【解決手段】 本発明は、一対の第1ピン21と一対の第2ピン22とを側面23bに有するコンテナ2をクレーンにより吊り上げるためのクレーン用吊り具1であって、第1ピン21及び第2ピン22を係止する一対のフレーム3と、クレーンのフック4を掛止し、一対のフレーム3を連結する連結部5と、を備え、フレーム3が、第1ピン21を挿通して係止することができる貫通部6と、第2ピン22を係止する係止部7と、を有し、第1ピン21を貫通部6に挿通した状態でコンテナ2に対してスライド可能であり、フレーム3のスライドが、連結部5に掛止されたフック4を移動させることにより行うことが可能であることを特徴とする。
【選択図】
図4