(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ブーストアンテナ付きRFIDタグ、ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体、およびブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/02 20060101AFI20221118BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20221118BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20221118BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20221118BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01Q19/02
H01Q1/24 Z
H01Q13/08
G06K19/077 296
G06K19/077 280
G06K19/077 220
G06K19/07 240
(21)【出願番号】P 2021511890
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013512
(87)【国際公開番号】W WO2020203598
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2019066959
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 周一
(72)【発明者】
【氏名】林 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴章
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-218537(JP,A)
【文献】国際公開第2014/098024(WO,A1)
【文献】特開2013-055637(JP,A)
【文献】特開2008-226099(JP,A)
【文献】特開平01-245721(JP,A)
【文献】特開2012-253699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有
し、
前記放射部と前記短絡部と前記グランド部とは一体であり、
前記グランド部は、前記放射部に対向する側の内面に前記RFIDタグの実装領域を有し、
前記放射部は、前記実装領域に対向する位置に平面視で前記実装領域よりも幅および長さが長い開口領域を有している、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項2】
前記実装領域は、凸状の天面部である、請求項
1に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項3】
前記グランド部は、前記実装領域の周囲に第1の溝を有する、請求項
1または2に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項4】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有し、
前記放射部と前記短絡部と前記グランド部とは一体であり、
前記放射部と、前記RFIDタグが実装された前記グランド部との間に形成された空間部に樹脂が充填され、
前記放射部と前記グランド部との少なくとも一方に開口孔をさらに有し、前記樹脂が前記開口孔まで入り込んでいる、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項5】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有し、
前記放射部と前記短絡部と前記グランド部とは一体であり、
導電性の材料からなり、前記RFIDタグを実装する、別体の実装部をさらに備え、
前記グランド部は、平面視で前記RFIDタグより幅および長さが長い貫通孔と前記貫通孔の周囲の外面に位置する切欠部とをさらに有し、
前記実装部と前記切欠部とが係合する、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項6】
前記切欠部の前記グランド部の長手方向の長さは、前記実装部の長さよりも長い、請求項
5に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項7】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有し、
前記放射部と前記グランド部との間に形成された空間部に絶縁支持材が挿入され、
前記絶縁支持材は一方の端部が前記短絡部に接触し、少なくとも1つの前記RFIDタグの位置決め用のポケットを有し、
前記絶縁支持材が、前記短絡部からの距離が互いに異なる複数の前記ポケットを有し、複数の前記ポケットのうちの1つに前記RFIDタグが収納された、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項8】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有し、
前記放射部と前記グランド部との間に形成された空間部に絶縁支持材が挿入され、
前記絶縁支持材は一方の端部が前記短絡部に接触し、少なくとも1つの前記RFIDタグの位置決め用のポケットを有し、
前記絶縁支持材が、前記短絡部からの距離が互いに異なる複数の前記ポケットを有し、複数の前記ポケットに複数の前記RFIDタグが収納された、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項9】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれ共振特性を有し、
前記放射部と前記グランド部との間に形成された空間部に絶縁支持材が挿入され、
前記絶縁支持材は一方の端部が前記短絡部に接触し、少なくとも1つの前記RFIDタグの位置決め用の複数のポケットを有し、
複数の前記ポケットにメモリを備えた複数の前記RFIDタグが収納された、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項10】
ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、
前記ブーストアンテナは、
導電性の放射部と、
前記放射部に対向して設けられた導電性のグランド部と、
前記放射部の一端および、前記グランド部の一端を接続するとともに、前記放射部および前記グランド部を電気的に導通する短絡部と、を含み、
前記RFIDタグは、前記ブーストアンテナの前記放射部と前記グランド部との間で、かつ、前記放射部の長手方向の中央位置より前記短絡部に近い位置に実装され、
前記RFIDタグは、逆Fアンテナ形式のRFIDタグであって、
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面に設けられた放射板と、
前記絶縁基板の下面に設けられたグランド板と、
前記放射板および前記グランド板に接続された短絡導体と、
前記放射板および前記グランド板に接続されたICチップと、を備え、
前記RFIDタグは、前記短絡導体が前記短絡部から最も遠い側、または前記短絡部に最も近い側に位置するように配置され
、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとはそれぞれUHF周波数帯域において共振特性を有する、ブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項11】
前記短絡部、前記放射部および前記グランド部は同じ幅を有し、前記短絡部は直方体の形状を有する、請求項1
0に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項12】
前記放射部と前記短絡部と前記グランド部とは一体である、請求項1
0または
11に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項13】
前記短絡部は、1つまたは複数のポストである、請求項1
0に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項14】
前記グランド部は、前記RFIDタグを位置決めするための突起を有する、請求項1
0から
13のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項15】
前記グランド部は、前記RFIDタグを固定するための固定具を有する、請求項1
0から
13のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項16】
前記放射部と前記短絡部とは一体であり、前記グランド部は前記放射部および前記短絡部とは別体であり、
前記短絡部に設けられた連結部と前記RFIDタグが実装された前記グランド部とが連結された、請求項1
0または
11に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項17】
前記連結部と前記グランド部とが、前記グランド部の長手方向にスライド可能に連結された、請求項
16に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項18】
前記放射部と、前記RFIDタグが実装された前記グランド部との間に形成された空間部に樹脂が充填された、請求項
12に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項19】
前記グランド部は、前記放射部に対向する側の内面に第2の溝を有し、
前記第2の溝は前記グランド部の幅方向の側面から前記RFIDタグの実装領域まで延在する、請求項
12に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項20】
前記グランド部は、前記実装領域から前記グランド部の長手方向に延在する第3の溝をさらに有する、請求項
19に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項21】
前記ブーストアンテナの共振周波数および前記RFIDタグの共振周波数と、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとの結合係数と、を調整し、異なる2つの周波数での送受信を可能とした、請求項
10から
20のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項22】
前記ブーストアンテナの共振周波数および前記RFIDタグの共振周波数と、
前記ブーストアンテナと前記RFIDタグとの結合係数と、を調整し、送受信周波数帯域を広帯域化した、請求項
10から
20のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項23】
前記放射部と前記グランド部との間に形成された空間部に絶縁支持材が挿入された、請求項
10から
22のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項24】
前記絶縁支持材は一方の端部が前記短絡部に接触し、少なくとも1つの前記RFIDタグの位置決め用のポケットを有する、請求項
23に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項25】
前記絶縁支持材は枠体であり、前記枠体を前記グランド部の幅方向に接続する支持部を有し、
前記支持部の前記グランド部側に前記ポケットが備えられた、請求項
24に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項26】
前記RFIDタグは、前記短絡導体が前記短絡部から最も遠い側に位置するように配置された、請求項
10に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ。
【請求項27】
請求項1から
26のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグを導体の表面に固定し、前記ブーストアンテナの前記グランド部と前記導体の表面とが直接、または容量を介して電気的に接続された、ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体。
【請求項28】
請求項1から
26のいずれか1項に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグと、
前記ブーストアンテナ付きRFIDタグとの間で電波を送受信するアンテナを有するRFIDリーダライタとを備える、ブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーストアンテナ付きRFIDタグ、ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体、およびブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流等の様々な分野において、小型のRFIDタグが用いられている。しかしながら、小型のRFIDタグは通信特性が劣ることから、小型のRFIDタグの通信距離の向上が要望されている。
【0003】
特許文献1(特開平11-68449号公報)には、無線機回路が収容されたケースを樹脂製のカバーで覆った無線機のカバーの内側に設けられ、ケースの開口部分に固定された接地導体板と、接地導体板と並行しカバーとの間に所定の間隔をおいて配置され一辺が直角に折り曲げられて接地導体板に固定された放射導体板と、放射導体板の側縁部に接続された給電線とからなる逆F形の無線機用内蔵アンテナにおいて、無線機の送受信電波の波長の1/2以下の長さの少なくとも1つの線状無給電アンテナ素子が、カバーの内側の放射導体板の近傍に並行して固定され、放射導体板との誘導結合によりアンテナ利得を大きくしたことを特徴とする無線機用内蔵アンテナについて開示されている。
【0004】
特許文献2(特許第4892608号公報)には、面とは独立したEMタグであって、第一の導電性側壁と第二の導電性側壁に結合された導電性底部を含むキャビティ構造を備えた電磁放射デカップラーを有し、第一の導電性側壁と第二の導電性側壁は間隔をおいて離れていて実質的に平行である、そして、チップと一体アンテナを含むEMタグである電子装置を有し、EMタグはキャビティ構造の開放端の付近に取付けられている、EMタグについて開示されている。
【0005】
特許文献3(米国登録特許第8851388号公報)には、導電性材料の接地筐体と、導電性材料で、接地筐体の反対側に配置され、結合部と被覆部を含む結合筐体と、RFIDチップとRFIDチップに電気的に結合された結合部材を含んだRFIDモジュールと、を備え、RFIDタグの検知感度を向上させ、かつ、一端を短絡させた状態での結合筐体の長さが波長の1/4である、RFIDタグについて開示されている。
【0006】
特許文献4(特許第6360264号公報)には、上面および凹部を含む下面を有する絶縁基板と、絶縁基板の上面に設けられている上面導体と、絶縁基板の下面に設けられ、絶縁基板を厚み方向に貫通する短絡部貫通導体によって上面導体と電気的に接続されている接地導体と、絶縁基板の内部に設けられており、上面導体の一部と対向している容量導体と、容量導体から接地導体にかけて絶縁基板を厚み方向に貫通して設けられている容量部貫通導体と、凹部内に設けられており、第1接続導体によって容量導体または接地導体と電気的に接続されている第1電極および第2接続導体を介して上面導体と電気的に接続されている第2電極を有しているRFIDタグ用基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-68449号公報
【文献】特許第4892608号公報
【文献】米国登録特許第8851388号公報
【文献】特許第6360264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、RFIDシステムでは、アンテナおよびICチップを備えたRFIDタグが用いられる。RFIDタグは、読取装置のアンテナから送信された電波(搬送波)をRFIDタグのアンテナで受信する。そして、ICチップに記録されている搬送物の識別データ等を反射波に乗せてRFIDリーダライタへ返送する。これにより、RFIDリーダライタをRFIDタグに接触させることなく、RFIDタグはRFIDリーダライタと通信することが可能となる。なおRFIDリーダライタには、RFIDタグに情報を書き込むための書き込み機能を有するものもある。
【0009】
最近では、自動車の製造ラインのような高熱環境において、RFIDタグを車体に取り付けて製造工程における管理用として使用する場合があり、このような用途に向けて、金属上への載置が可能で、耐熱性を有する小型RFIDタグが開発されている。
しかし、小型RFIDタグではアンテナの形状が制限され、アンテナの利得が低下し、十分な通信距離が確保できないため、耐熱性を有する小型RFIDタグの通信距離を向上することが必要になってきている。
また、RFIDの送受信周波数は国ごとに規定が異なるため、2つの異なる周波数で送受信できるデュアルバンド対応のRFIDタグ、および広い周波数帯域で送受信できる広帯域RFIDタグの実現が要望されている。
【0010】
特許文献1に記載の発明はアンテナ本体が逆Fアンテナであり、金属上への載置は問題ない。また、アンテナ本体の放射導体板と線状無給電アンテナ素子との水平間隔、垂直間隔を選定することで、6dBから7dB程度向上させている。
しかし、特許文献1に記載の発明の場合、アンテナ本体の放射導体板と線状無給電アンテナ素子との水平間隔、垂直間隔を適切に固定するために、別途絶縁支持具等が必要となり、ブーストアンテナの構造が複雑になるとの課題がある。
【0011】
特許文献2に記載のEMタグは、例えば
図4に記載されているようなダイポールアンテナを備えたUHFタグであって、特許文献2に記載のキャビティは、通常であれば金属表面に配置するとその感度が大幅に劣化するダイポールアンテナを備えたUHFタグを金属表面からデカップルし、UHFタグの感度を劣化させないことを目的とするものである。しかし、
図4に記載のダイポールアンテナの長さは95mmと大型であり、また、特許文献2に記載の発明は、より小型化が進む板状逆Fアンテナ等には適用できない。
【0012】
特許文献3に記載のRFIDタグは、RFIDモジュールを接地筐体と結合筐体とからなる筐体の接地筐体の上に配置したRFIDタグである。特許文献3に記載のRFIDタグの筐体は板状逆Fアンテナの形状を備えており、結合筐体の長さが1/4λであることから、板状逆Fアンテナの形状を備えた筐体の共振周波数がRFIDタグの共振周波数となっており、RFIDモジュール自体は共振特性を有さない。しかし、通常、アンテナを備えたRFIDモジュールは共振特性を有しており、特許文献3に記載の発明はアンテナを備えたRFIDモジュールには適用できない。
【0013】
特許文献4に記載のRFIDタグは、セラミック多層基板を用い、RFIDチップを多層基板の内部に配置するとともに、静電容量をアンテナ導体に付与する容量導体を備えることによって、小型の逆Fアンテナ内蔵RFIDタグを実現したものであるが、用途によってはRFIDとしての通信距離が不足する場合がある。
【0014】
本発明の主な目的は、ブーストアンテナと小型のRFIDタグとを組み合わせて通信距離を向上させたブーストアンテナ付きRFIDタグ、ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体、およびブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステムを提供することにある。
本発明の他の目的は、RFIDタグおよびブーストアンテナの共振周波数と、RFIDタグとブーストアンテナとの結合係数とを調整することにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグの備える2つの共振周波数を調整し、広帯域の、または2つの周波数帯での送受信を可能とするブーストアンテナ付きRFIDタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)
一局面に従うブーストアンテナ付きRFIDタグは、ブーストアンテナとRFIDタグとを含むブーストアンテナ付きRFIDタグであって、ブーストアンテナは、導電性の放射部と、放射部に対向する導電性のグランド部と、放射部の一端および、グランド部の一端を接続するとともに、放射部およびグランド部を互いに電気的に導通する短絡部と、を含み、RFIDタグは、ブーストアンテナの放射部とグランド部との間で、かつ、放射部の長手方向の中央位置より短絡部に近い位置に配置され、ブーストアンテナとRFIDタグとはそれぞれ共振特性を有する。
【0016】
この場合、RFIDタグの備える共振器とブーストアンテナの備える共振器とが結合することによって、RFIDタグからブーストアンテナへのエネルギー伝搬が効率的に行われる。さらに、逆Lアンテナの構造を備え、高いアンテナ利得を有するブーストアンテナから電波が放射されることにより、RFIDタグ単体と比較して、ブーストアンテナ付きRFIDタグの通信距離を向上させることができる。
また、ブーストアンテナとRFIDタグのそれぞれが単体で共振周波数を有し、その結果、ブーストアンテナ付きRFIDタグも2つの共振周波数を有することから、この2つの共振周波数を調整することにより、デュアルバンド対応のRFIDタグ、および広帯域RFIDタグの実現が可能となる。
また、RFIDタグはブーストアンテナを介して導体などの物品に固定されるため、RFIDタグを直接物品に固定する場合と比較して、熱の伝達が弱く、結果としてRFIDタグの耐熱性を向上させることができる。
【0017】
(2)
第2の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面に従うブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、短絡部、放射部およびグランド部は同じ幅を有し、短絡部は直方体の形状を有してもよい。
【0018】
この場合、ブーストアンテナの形状が単純であるため、製造が容易である。
【0019】
(3)
第3の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面または第2の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、放射部と短絡部とグランド部とは一体であってもよい。
【0020】
この場合、例えば、1枚の長方形の金属を折り曲げる、アルミニウム材料から押し出し加工するなどの方法により、ブーストアンテナを容易に製造することができる。
【0021】
(4)
第4の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面に従うブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、短絡部は、1つまたは複数のポストで形成されてもよい。
【0022】
この場合、同一形状の放射部を備えたブーストアンテナに対して、短絡部のポストの位置、および/または本数を調整することにより、ブーストアンテナの共振周波数と、RFIDタグをブーストアンテナに配置した場合のブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数とを調整することができる。なお、本発明で用いる「ポスト」は放射部とグランド部とを接続する支柱を意味する。
【0023】
(5)
第5の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第4の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、グランド部は、RFIDタグを位置決めするための突起を有してもよい。
【0024】
この場合、ブーストアンテナのグランド部上に配置されるRFIDタグの位置のばらつきを低減でき、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数などの特性のばらつきを抑えることができる。
【0025】
(6)
第6の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第4の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、グランド部は、RFIDタグを固定するための固定具を有してもよい。
【0026】
この場合、RFIDタグは固定具でブーストアンテナに固定されるため、RFIDタグを、接着剤を使用して固定する必要がなくなり、ブーストアンテナ付きRFIDタグの耐熱性を向上させることができる。
【0027】
(7)
第7の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第2の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、放射部と短絡部とは一体であり、グランド部は放射部および短絡部とは別体であり、短絡部に設けられた連結部とRFIDタグが実装されたグランド部とが連結されてもよい。
【0028】
この場合、まず、RFIDタグをグランド部に実装してから、一体に形成された放射部および短絡部を、短絡部に設けられた連結部を用いてグランド部と連結することにより、RFIDタグのブーストアンテナへの実装の作業性を向上させることができる。
【0029】
(8)
第8の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第7の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、連結部とグランド部とを、グランド部の長手方向にスライド可能に連結してもよい。
【0030】
この場合、短絡部とRFIDタグとの距離を調整することによって、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数を調整することができるため、例えばRFIDタグの共振周波数がロット間でばらついた場合にも、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数を目標の周波数に合わせることができる。
【0031】
(9)
第9の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第3の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、グランド部は、放射部に対向する側の内面にRFIDタグの実装領域を有し、放射部は、実装領域に対向する位置に平面視で実装領域よりも幅および長さが長い開口領域を有していてもよい。
【0032】
この場合、放射部に実装領域より大きな開口領域を形成することによって、RFIDタグをブーストアンテナに実装するにあたって、開口領域からグランド部の実装領域にRFIDタグを配置することが容易になる。
【0033】
(10)
第10の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第9の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、実装領域は、凸状の天面部であってもよい。
【0034】
この場合、実装領域端部の段差によって、RFIDタグの実装位置を容易に認識することができる。
【0035】
(11)
第11の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第9または第10の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、グランド部は、実装領域の周囲に第1の溝を有してもよい。
【0036】
この場合、第1の溝によって、RFIDタグの実装位置を容易に認識することができる。
また、実装領域およびその周囲の第1の溝に接着剤を塗布することによって、RFIDタグとグランド部との接合強度を向上させることができる。
【0037】
(12)
第12の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第3または第9の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、放射部と、RFIDタグが実装されたグランド部との間に形成された空間部に樹脂が充填されてもよい。
【0038】
この場合、樹脂の接着力でRFIDタグをブーストアンテナにより強力に固定することができる。また、RFIDタグを取り囲む樹脂によってRFIDタグの保護を行うことができる。また、放射部に開口領域が形成されている場合には、開口領域の内部まで樹脂が入り込むことによって、樹脂、およびRFIDタグがブーストアンテナからより外れにくくなる。
【0039】
(13)
第13の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第12の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、放射部とグランド部との少なくとも一方に開口孔をさらに有し、樹脂が空間部から開口孔まで入り込んでいてもよい。
【0040】
この場合、開口孔の内部まで樹脂が入り込むことによって、樹脂、およびRFIDタグがブーストアンテナからさらに外れにくくなる。
【0041】
(14)
第14の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第3の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、グランド部は、放射部に対向する側の内面に第2の溝を有し、第2の溝はグランド部の幅方向の側面からRFIDタグの実装領域まで延在してもよい。
【0042】
この場合、第2の溝に沿ってRFIDタグをスライドさせることで、RFIDタグをグランド部の実装領域に容易に配置することができる。
【0043】
(15)
第15の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第14の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、実装領域からグランド部の長手方向に延在する第3の溝をさらに有してもよい。
【0044】
この場合、実装領域に配置されたRFIDタグを第3の溝に沿って、グランド部の長手方向にスライドさせることで、RFIDタグと短絡部との距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数を目標周波数に合わせることができる。
【0045】
(16)
第16の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第3の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、導電性の材料からなり、RFIDタグを実装する、別体の実装部をさらに備え、グランド部は、平面視でRFIDタグより幅および長さが長い貫通孔と貫通孔の周囲の外面に位置する切欠部とをさらに有し、実装部と切欠部とが係合してもよい。
【0046】
この場合、RFIDタグを実装した実装部をグランド部の外面から取り付けることにより、RFIDタグのブーストアンテナへの実装の作業性を向上させることができる。
【0047】
(17)
第17の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第16の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、切欠部のグランド部の長手方向の長さを、実装部の長さよりも長くしてもよい。
【0048】
この場合、実装部と切欠部との係合において、実装部をグランド部の長手方向にスライドすることによって、RFIDタグと短絡部との距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数を目標に合わせることができる。
【0049】
(18)
第18の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第17の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、ブーストアンテナの共振周波数およびRFIDタグの共振周波数と、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数と、を調整し、異なる2つの周波数帯での送受信を可能とした、ブーストアンテナ付きRFIDタグとしてもよい。
【0050】
ブーストアンテナ付きRFIDタグは、RFIDタグ単体とブーストアンテナ単体がそれぞれ共振周波数を備えている。この場合、ブーストアンテナ付きRFIDタグは、RFIDタグ単体の共振周波数およびブーストアンテナ単体の共振周波数とは異なる2つの共振周波数を備えている。そして、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数は、ブーストアンテナの共振周波数およびRFIDタグの共振周波数と、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数とに依存して変化する。
したがって、ブーストアンテナの共振周波数およびRFIDタグの共振周波数と、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数とを調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグの2つの共振周波数を、必要な2つの送受信周波数に合わせることによって、ブーストアンテナ付きRFIDタグを構成することができる。
なお、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数は、例えば、ブーストアンテナの放射部とグランド部との距離、ブーストアンテナの短絡部の形状、または、ブーストアンテナのグランド部に配置したRFIDタグの位置、および/または向きを変更することによって調整することができる。
【0051】
(19)
第19の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第17の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、ブーストアンテナの共振周波数およびRFIDタグの共振周波数と、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数と、を調整し、送受信周波数帯域を広帯域化した、ブーストアンテナ付きRFIDタグとしてもよい。
【0052】
2つの共振周波数を備えたアンテナにおいては、2つの共振周波数を近づけることにより広帯域のアンテナを構成することができる。
一方、一局面に従う発明では、ブーストアンテナとRFIDタグとがそれぞれ共振特性を有し、RFIDタグの備える共振器とブーストアンテナの備える共振器とが結合している。そして、この場合、結合係数を小さくすることによって2つの共振周波数を近づけることができる。
したがって、ブーストアンテナの共振周波数およびRFIDタグの共振周波数と、ブーストアンテナとRFIDタグとの結合係数とを調整することによって、広帯域のアンテナを構成することができる。
【0053】
(20)
第20の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第19の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、放射部とグランド部との間に形成された空間部に絶縁支持材が挿入されてもよい。
【0054】
絶縁支持材は、放射部とグランド部との間の距離を安定させる効果がある。
また、絶縁支持材として比誘電率の高い材料を用いることにより、絶縁支持材を透過する電磁波の波長を短くすることができる。そして、電磁波の波長を短くすることで、同一形状のブーストアンテナにおいては共振周波数を低くし、同一共振周波数のブーストアンテナにおいては形状を小型化することができる。
さらに、上記効果は、絶縁支持材を挿入する位置によっても異なり、絶縁支持材を放射板およびグランド板の他端(開口端)側に挿入する方が、効果が大きい。
したがって、ブーストアンテナの放射部およびグランド部の形状を固定して、絶縁支持材の位置を調整することで、共振周波数を調整することもできる。
【0055】
(21)
第21の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第20の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、絶縁支持材は一方の端部が短絡部に接触し、少なくとも1つのRFIDタグの位置決め用のポケットを有してもよい。
【0056】
この場合、絶縁支持材のポケットにRFIDタグを収納した後、絶縁支持材をブーストアンテナの空間部に挿入し、短絡部に接触させることにより、RFIDタグを所定の実装領域に正確に配置することができる。これにより、RFIDタグのブーストアンテナへの実装の作業性が向上する。
なお、絶縁支持材をブーストアンテナの空間部にスムーズに挿入し、かつ、絶縁支持材とブーストアンテナの放射部、短絡部、およびグランド部とを隙間なく密着させるためには、ブーストアンテナの放射部とグランド部とが平行であることが好ましい。
【0057】
(22)
第22の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第21の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、絶縁支持材は枠体であり、枠体をグランド部の幅方向に接続する支持部を有し、支持部のグランド部側にポケットが備えられてもよい。
【0058】
この場合、小型化のための誘電体の位置として効果的な開口端側、ポケットおよびRFIDタグの位置決めに重要な短絡部側、グランド部の幅方向の両方の端部に対向する部分、およびRFIDタグを収納するポケットの周囲のみに絶縁支持材を充填することで、ブーストアンテナの小型化、絶縁支持材による誘電損失の最小化、および絶縁支持材によるタグの保護を行うことができる。
【0059】
(23)
第23の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第21または第22の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、絶縁支持材が、短絡部からの距離が互いに異なる複数のポケットを有し、複数のポケットのうちの1つにRFIDタグが収納されてもよい。
【0060】
この場合、RFIDタグを収納するポケットを選択することによって、容易かつ正確にRFIDタグの短絡部からの距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数を目標に合わせることができる。
【0061】
(24)
第24の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第21または第22の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、絶縁支持材が、短絡部からの距離が互いに異なる複数のポケットを有し、複数のポケットに複数のRFIDタグが収納されてもよい。
なお、収納されるRFIDタグの数はポケットの数と同じか、または少ない。例えば、短絡部からの距離が異なる3個のポケットが有る場合に、3個のうち2個のポケットにRFIDタグを収納してもよい。
【0062】
短絡部からの距離の互いに異なる複数のポケットに複数のRFIDタグを収納した場合、それぞれのRFIDタグとブーストアンテナとで形成される共振周波数が異なるため、ブーストアンテナ付きRFIDタグが複数の異なる共振周波数を備えることができ、より広帯域の通信周波数に対応できるようになる。
【0063】
(25)
第25の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第21または22の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、複数のポケットを有し、複数のポケットにメモリを備えた複数のRFIDタグが収納されてもよい。
なお、収納されるRFIDタグの数はポケットの数と同じか、または少ない。例えば、3個のポケットが有る場合に、3個のうち、2個のポケットにRFIDタグを収納してもよい。
【0064】
この場合、ブーストアンテナ付きRFIDタグのリーダライタが、どのRFIDタグのメモリから読み出すか、あるいは、どのRFIDタグのメモリに書き込むかを指定することにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグを複数のRFIDタグのメモリを合わせた、メモリ容量の大きなRFIDタグとして機能させることができる。
【0065】
(26)
第26の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、一局面から第25の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、RFIDタグは、逆Fアンテナ形式のRFIDタグであって、絶縁基板と、絶縁基板の上面に設けられた放射板と、絶縁基板の下面に設けられたグランド板と、放射板およびグランド板に接続された短絡導体と、放射板およびグランド板に接続されたICチップと、を備え、RFIDタグは、短絡導体が短絡部から最も遠い側、または短絡部に最も近い側に位置するように配置されてもよい。
【0066】
RFIDタグとして逆Fアンテナ形式のRFIDタグを用い、ブーストアンテナのグランド板の上に配置することで、RFIDタグの天頂方向の指向性を高め、RFIDタグから放射される電磁波を効率的にブーストアンテナの放射部に送ることができる。
また、逆Fアンテナ形式のRFIDタグでは、短絡導体が絶縁基板の一側面の近傍に配置され、この一側面に対向する側面がRFIDタグの開口部となる。そして、RFIDタグを上記方向に配置することによって、RFIDタグの電界、磁界の方向とブーストアンテナ共振時の電界、磁界の方向とを一致させることができ、RFIDタグからブーストアンテナにより効率的にエネルギーを送ることができる。
【0067】
(27)
第27の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグは、第26の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグにおいて、RFIDタグは、短絡導体が短絡部から最も遠い側に位置するように配置されてもよい。
【0068】
この場合、RFIDタグの開口部をブーストアンテナの短絡部に向けることになる。逆L構造のブーストアンテナにおいては、短絡部は共振時定在波の振幅の最も小さい節に相当する。したがって、RFIDタグの短絡導体を短絡部から最も遠い側に配置し、RFIDタグの開口部を短絡部に向けて配置することで、RFIDタグから放射部にさらに効率的に電磁波を送ることができる。
【0069】
(28)
第28の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体は、一局面から第27の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグを導体の表面に固定し、ブーストアンテナのグランド部と導体の表面とが直接、または容量を介して電気的に接続されていてもよい。
【0070】
この場合、導体がブーストアンテナのグランド部の延長部分となり、ブーストアンテナ付きRFIDタグが実質的にブーストアンテナのグランド部の面積を拡大したブーストアンテナ付きRFIDタグとして動作することから、ブーストアンテナ付きRFIDタグの通信距離を向上させることができる。
ダイポールアンテナ形式のRFIDタグでは、導体表面に固定した場合、導体の影響で通信距離が大幅に短くなる。しかし、本発明のブーストアンテナ付きRFIDタグでは、導体の表面に固定することにより、通信距離を向上させることができる。
【0071】
(29)
第29の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステムは、一局面から第27の発明にかかるブーストアンテナ付きRFIDタグと、ブーストアンテナ付きRFIDタグとの間で電波を送受信するアンテナを有するRFIDリーダライタとを備える。
【0072】
この場合、ブーストアンテナ付きRFIDタグは、各種の物品に実装されて用いられ、物品に関する各種の情報がRFIDタグに書きこまれている。この情報は、ブーストアンテナ付きRFIDタグを含むRFIDシステムにおいて、RFIDリーダライタとブーストアンテナ付きRFIDタグとの間で送受信される情報に応じて、随時書き換えが可能になる。
そして、このRFIDシステムでは、ブーストアンテナ付きRFIDタグの通信距離を大幅に向上させることができるため、ブーストアンテナ付きRFIDタグとRFIDリーダライタとの距離が大きい場合でも通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】ブーストアンテナ付きRFIDタグを導体に固定した場合の模式的側面図である。
【
図2】ブーストアンテナ付きRFIDタグを導体に固定した場合の模式的上面図である。
【
図5】ブーストアンテナの短絡部の形状を示す模式的上面図である。
【
図6】金具を備えるブーストアンテナの模式的側面図である。
【
図7】共振周波数のシミュレーションに用いたブーストアンテナの形状を示す図である。
【
図8】ブーストアンテナの共振周波数のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】ブーストアンテナ付きRFIDタグの通信距離の周波数特性の測定結果を示す図である。
【
図12】デュアルバンド対応のブーストアンテナ付きRFIDタグのアンテナ利得の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】デュアルバンド対応のブーストアンテナ付きRFIDタグの通信距離の周波数特性の測定結果を示す図である。
【
図14】
図14(a)はブーストアンテナ付きRFIDタグの、RFIDタグの位置を示す模式図であり、
図14(b)はRFIDタグと短絡部との距離Dとブーストアンテナ付きRFIDタグの共振周波数との相関のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】ブーストアンテナ付きRFIDタグの、RFIDタグの位置とアンテナ利得との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】ブーストアンテナ付きRFIDタグに絶縁支持材を挿入した場合の、支持材の位置とアンテナ利得との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】
図17(a)は第2の形態のブーストアンテナの模式的側面図であり、
図17(b)は第2の形態のブーストアンテナを放射部側から見た模式的平面図である。
【
図18】
図18(a)は第3の形態のブーストアンテナの、
図18(b)のA-A’面における模式的断面図であり、
図18(b)は第3の形態のブーストアンテナを放射部側から見た模式的平面図である。
【
図19】
図19(a)は第4の形態のブーストアンテナを放射部側から見た模式的平面図であり、
図19(b)は第4の形態のブーストアンテナの、
図19(a)のB-B’面における模式的断面図である。
【
図20】
図20(a)は第5の形態のブーストアンテナの模式的側面図であり、
図20(b)は第5の形態のブーストアンテナの、
図20(a)のC-C’面における模式的断面図である。
【
図21】
図21(a)は第6の形態のブーストアンテナの、
図21(b)のD-D’面における模式的断面図であり、
図21(b)は第6の形態のブーストアンテナをグランド部側から見た模式的平面図である。
【
図22】
図22(a)は第7の形態のブーストアンテナの、
図22(b)のE-E’面における模式的断面図であり、
図22(b)は第7の形態のブーストアンテナをグランド部側から見た模式的平面図であり、
図22(c)は
図22(b)の複数のポケットを互いにオーバーラップする状態で形成した場合の模式的平面図である。
【
図23】
図23(a)は第8の形態のブーストアンテナの、
図23(b)のF-F’面における模式的断面図であり、
図23(b)は第8の形態のブーストアンテナをグランド部側から見た模式的平面図である。
【
図24】ブーストアンテナ付きRFIDシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0075】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグ300を導体310に固定した場合の模式的側面図であり、
図2は、第1の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグ300を導体310に固定した場合の模式的上面図である。
ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は、ブーストアンテナ100とRFIDタグ200とを含む。RFIDタグ200はブーストアンテナ100の放射部10とグランド部30との間で、かつ、放射部10の長手方向の中央位置より短絡部20に近い位置に配置されている。
以下の説明では、
図1および
図2に記載のように、ブーストアンテナ100の一端側(短絡部20側)と他端側(開口端側)を結ぶ線の方向をY方向とする。また、グランド部30と放射部10を結ぶ線の方向(天頂方向)をZ方向、Y方向およびZ方向と直交する方向をX方向とする。
図1および
図2では、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は導体310に固定されている。これは、導体310に固定することにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の通信距離がより向上するためである。また、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は導体310以外、例えばプラスチックに固定した場合にもRFIDタグ200単体と比較して通信距離を向上させることができる。
また、
図1および
図2では、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は導体310に電気的に直接接続されているが、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300を導体310に接着剤で固定し、接着層からなる容量を介して導体310に接続することもできる。
【0076】
(ブーストアンテナ100の構造)
図3はブーストアンテナ100の模式的側面図、
図4はブーストアンテナ100の模式的上面図である。
ブーストアンテナ100は、導電性の放射部10と、放射部10に対向する導電性のグランド部30と、放射部10の一端およびグランド部30の一端を接続するとともに、放射部10およびグランド部30を互いに電気的に導通する短絡部20とで形成されている。
【0077】
ブーストアンテナ100の放射部10、短絡部20、およびグランド部30の導電性の材料としては、主にアルミニウム、鉄、または銅を使用することが好ましい。この場合、低抵抗で形状精度の高いブーストアンテナ100を形成することができる。
ブーストアンテナ100は1枚の導体を折り曲げることにより形成することができる。また、材料がアルミニウムの場合は押出成型でも形成可能である。
【0078】
ブーストアンテナ100の放射部10、短絡部20、およびグランド部30の導電性の材料の厚みとしては、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。これは、導電性の材料の厚みが0.5mm未満の場合、ブーストアンテナ100の物理的強度の点で課題となり、厚みが3mmを超えた場合は、外形寸法および材料の価格の点で課題となるためである。
【0079】
図3および
図4では、ブーストアンテナ100の短絡部20は、放射部10と同じ幅の直方体形状で形成されているが、短絡部20は、例えば円柱または四角柱形状の1つまたは複数のポストでも形成することができる。
図5はブーストアンテナ100の模式的上面図であって、短絡部20のいくつかの例を示している。
図5(a)は
図3および
図4と同じ直方体形状の短絡部20である。
図5(b)は円柱形状の1本のポストを放射部10のX方向中心に配置した短絡部20である。
図5(c)は円柱形状の2本のポストをそれぞれ放射部10のX方向両端近傍に配置した短絡部20である。
図5(d)は円柱形状の1本のポストを放射部10のX方向端部の近傍に配置した短絡部20である。
短絡部20の形状および位置を変化させることにより、放射部10の形状(幅W、長さL、高さT)が同じであっても、ブーストアンテナ100の共振周波数、およびブーストアンテナ100とブーストアンテナ100に配置したRFIDタグ200との結合係数を変化させることができる。
【0080】
また、ブーストアンテナ100は、放射部10とグランド部30との間に絶縁支持材50を挿入することができる。この場合、対向する放射部10とグランド部30と間の距離の変動が少なくなる。また、絶縁支持材50として比誘電率の高い材料を用いることで、絶縁支持材50における電波の波長を短縮し、放射部10およびグランド部30の形状を小さくすること、また、ブーストアンテナ100の実質的な開口面積を大きくすることができる。
また、絶縁支持材50を挿入する場合に、ブーストアンテナ100の放射部10のY方向上における絶縁支持材50の位置を調整することによって、放射部10およびグランド部30の形状を変更することなく、ブーストアンテナ100の共振周波数を調整することができる。
【0081】
グランド部30にはRFIDタグ200をグランド部30上で位置決めするための突起70を備えることができる。突起70はグランド部30の一端と他端(一端と逆側の端部)とを結んだ線に直交する、直線状の突起70とすることが好ましい。これは、ブーストアンテナ100にRFIDタグ200を挿入する場合、RFIDタグ200の挿入が容易であること、また、RFIDタグ200はグランド部30上におけるY方向の位置ずれによる特性の変動が大きいためである。
【0082】
図6に、グランド部30にRFIDタグ200を固定するための金具80を備えるブーストアンテナ100の模式的側面図を示す。金具80は、RFIDタグ200をグランド部30に配置した後、ビス等(図示せず)でグランド部30に固定することができる。この場合、RFIDタグ200を、接着剤を用いることなくブーストアンテナ100のグランド部30に固定することができる。そして、耐熱性で課題となる接着剤を使用しないことにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の耐熱性を向上させることができる。
【0083】
ブーストアンテナ100は、グランド部30に取付孔40を備えることができる。この場合、ブーストアンテナ100を導体310にねじ止めすることによって、ブーストアンテナ100と導体310との相対位置のばらつきを少なくすることができる。
【0084】
(ブーストアンテナ100の共振周波数)
ブーストアンテナ100の共振周波数の、放射部10の形状(長さL,幅W)依存性を、簡易モデルを用いてFDTD法により計算した。計算に用いたモデルの形状を
図7に示す。
図7は、
図7(a)が斜視図、(b)がX方向から見た平面図、(c)がZ方向から見た平面図、(d)がY方向から見た平面図である。図中の数字はそれぞれの寸法を表し、単位はmmである。なお、上記Y方向が、放射部10の一端と他端(一端と逆側の端部)とを結んだ線の方向に相当する。
計算に用いたモデルでは、ブーストアンテナ100が金属の表面に固定された場合を想定して、グランド部30の面積を112mm×56mmと放射部10の面積に比べて大きく設定している。また、ブーストアンテナ100自体には給電部90は含まれていないが、上記計算にあたっては、給電部90を放射部10のX方向中央付近で短絡部20から16mmの位置に配置している。
【0085】
図8に、放射部10の長さLおよび幅Wを変化させた場合の、放射部10の2L+Wの値と共振周波数との関係のシミュレーション結果を示す。
図8において、ブーストアンテナ100の共振周波数は1/(2L+W)にほぼ比例し、共振周波数の半波長が2L+Wに等しい場合の、1/(2L+W)と共振周波数の関係を示す直線に近い位置にプロットされている。
標準的な板状逆Lアンテナでは共振時、2(L+W)=1/2λになるのに対して、ブーストアンテナ100の場合2L+W=1/2λとなるのは、
図7のブーストアンテナ100では短絡部20が放射部10のW全体に広がっており、放射部10の実効的な周辺長が2L+Wとなっているためと推測される。なお、
図8には記載されていないが、短絡部20を放射部10の短辺と同じ幅の直方体形状ではなく、円柱形状等のポストで形成した場合は、ブーストアンテナ100の共振周波数は変化する。例えば、
図5(b)のように円柱形状の1本のポストを放射部10の一端側の中心の位置に配置した場合は、
図5(a)のように幅が放射部10の幅と同じ直方体形状の短絡部20を用いた場合に比べて、ブーストアンテナ100の共振周波数が低くなる。
【0086】
(RFIDタグ200の構造と指向性)
図9にRFIDタグ200の一例を示す。
図9(a)は模式的上面図、
図9(b)は模式的断面図、
図9(c)は模式的底面図である。
RFIDタグ200は、絶縁基板230と、放射板210と、グランド板220と、短絡導体260と、容量導体250と、容量部貫通導体270と、ICチップ240と、を備える。
放射板210は絶縁基板230の上面に設けられ、グランド板220は絶縁基板230の下面に設けられ、放射板210とグランド板220とは短絡導体260によって電気的に接続されている。
容量導体250は、絶縁基板230の内部に、グランド板220の一部と対向して配置され、容量部貫通導体270によって、放射板210と接続されている。
ICチップ240は、絶縁基板230の上面に設けられた凹部に収納され、放射板210およびグランド板220と電気的に接続され、給電部の機能を果たしている。
RFIDタグ200のアンテナは逆F形式のアンテナである。
なお、
図9に記載のRFIDタグ200で、容量導体250および容量部貫通導体270を設けているのは、放射板210とグランド板220との間の容量を大きくすることによって、RFIDタグ200の形状を小型化するためである。しかし、同じ共振周波数を必要とする場合、RFIDタグ200の形状は少し大きくはなるが、容量導体250および容量部貫通導体270を省略することも可能である。
【0087】
図10にRFIDタグ200の指向性のシミュレーション結果の一例を示す。
図10(b)にX-Y-Z座標におけるRFIDタグ200の配置方向を示し、
図10(a)にはX―Z平面、およびY-Z平面におけるRFIDタグ200のアンテナ利得の指向性を示した。
図10において、Z方向はRFIDタグ200の天頂方向、すなわち
図10(b)の上方向に相当し、Y方向は
図10(b)の右方向に相当する。シミュレーションでは、RFIDタグ200は導体310の上に配置されている。
図10(b)のRFIDタグ200は天頂方向に強い指向性を持っており、RFIDタグ200をブーストアンテナ100のグランド部30に配置した場合、RFIDタグ200から放射部10に向かって電波が放射され、好適である。
また、RFIDタグ200はX方向よりもY方向のアンテナ利得が高く、電波はX方向よりもY方向により多く放射される。
図9に記載のRFIDタグ200は板状逆Fアンテナ形式のRFIDタグ200であるが、本発明に用いるRFIDタグ200としては、逆Fアンテナ、パッチアンテナなど、金属上に配置された場合に天頂方向に指向性を有するアンテナを備えたRFIDタグ200が使用可能である。
【0088】
(ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の構造)
ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は
図1および
図2に記載されている。
図1および
図2において、RFIDタグ200はブーストアンテナ100の放射部10とグランド部30との間で、かつ、放射部10のY方向中央より短絡部20に近い位置に配置されている。また、RFIDタグ200をブーストアンテナ100のグランド部30に配置する場合、RFIDタグ200を突起70の間に挟みこんで接着することにより、ブーストアンテナ100のY方向における位置ずれを防止することができる。
ブーストアンテナ100は取付孔40を用いて、導体310にねじ止めすることができる。この場合、ブーストアンテナ100と導体310との相対位置のばらつきを少なくすることができる。
さらに、ブーストアンテナ100を導体310に電気的に導通させることにより、導体310をブーストアンテナ100のグランド部30の延長として機能させることができる。この場合、ブーストアンテナ100は、実質的に、グランド部30の面積が大きいブーストアンテナ100と等価となり、アンテナの利得が向上する。
【0089】
(ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の通信距離)
図11にvoyantic社製のTagformanceを用いて測定した、RFIDタグ200単体、およびブーストアンテナ付きRFIDタグ300の通信距離の測定結果を示す。
RFIDタグ200をブーストアンテナ100に配置してブーストアンテナ付きRFIDタグ300とすることにより、RFIDタグ200単体の0.8mから2.8mへと大幅に通信距離が向上する。
【0090】
(ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数)
RFIDタグ200単体、ブーストアンテナ100単体、およびブーストアンテナ付きRFIDタグ300のそれぞれについて、200mm角の導体310(銅板)に載せた状態での共振周波数をシミュレーションで求めた。RFIDタグ200の形状は6mm×3mm×1.7mm固定とし、ブーストアンテナ100の形状および構造を変更した。RFIDタグ200の底面とブーストアンテナ100のグランド部30との間、ブーストアンテナ100と導体310との間、およびRFIDタグ200のグランド板220と導体310との間には接着剤の厚み相当の300μmのスペースを設けた。
【0091】
図12にデュアルバンド対応のブーストアンテナ付きRFIDタグ300のシミュレーション結果の一例を示す。
図12は、共振周波数927MHzのRFIDタグ200を共振周波数881MHzのブーストアンテナ100の短絡部20近傍のグランド部30上に配置した場合のアンテナ利得のシミュレーション結果である。なお、上記シミュレーションに用いたブーストアンテナ100は、
図5(b)のように円柱形状の1本のポストを放射部10の短辺側の中心の位置に配置し、放射部10とグランド部30の他端(開口側)に絶縁支持材50を挿入している。
【0092】
図12によれば、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数は864MHzと945MHzとであり、かつ、それらの周波数はRFIDタグ200単体の共振周波数927MHz、ブーストアンテナ100単体の場合の共振周波数881MHzとは異なり、かつ、単体の場合よりも2つの共振周波数の差が大きくなっている。
【0093】
一般に、2つの共振器が結合する場合、2つの共振器の非結合時の共振周波数をそれぞれf01、f02、共振器間の結合係数をkとすると、2つの共振器が結合した場合の共振周波数fは、
【式1】
【0094】
を満たすことが知られている
(「高周波・マイクロ波回路_基礎と設計」(小西良弘著、ケイラボ出版2003年11月発行)156頁参照)。
数式1によれば、結合時の2つの共振周波数f1とf2は、2つの共振器の非結合時の共振周波数f01、f02と結合係数kとに依存して変化する。
ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の場合も、単体のRFIDタグ200とブーストアンテナ100がそれぞれ共振特性を有することから、基本的には数式1が適用できると考えられる。
図12の場合、数式1において、f01=881MHz、f02=927MHz、f1=864MHz、f2=945MHzとすると、結合係数kは約0.07となる。
したがって、上記数式1を基本とし、f01、f02、およびkを調節することにより、例えば、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数をEU地域向けの860MHzと日本向けの920MHzの2周波数としたデュアルバンド対応のブーストアンテナ付きRFIDタグ300を設計することができる。
【0095】
図13に、デュアルバンド対応のブーストアンテナ付きRFIDタグ300の通信距離の測定結果を示す。
図13のブーストアンテナ付きRFIDタグ300は、
図5(b)のように短絡部20を1本のポストで構成し、放射部10とグランド部30のY方向開口端側に絶縁支持材50を挿入し、ブーストアンテナ100の短絡部20近傍のグランド部30上にRFIDタグ200を配置している。ブーストアンテナ100の形状は、W=15mm、L=60mm、T(高さ)=10mmである。
測定はvoyantic社製のTagformanceを用いて行った。
図13によれば、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は、約6m離れた885MHz近傍のRFID読取機、および約4m離れた968MHz付近のRFID読取機と通信可能であり、ブーストアンテナ100、およびRFIDタグ200の共振周波数を調整するとともに、ブーストアンテナ100とRFIDタグ200との結合係数を調整することにより、必要な2つの周波数で通信が可能なデュアルバンド対応のRFIDタグ200を実現することができる。
また、ブーストアンテナ100、およびRFIDタグ200の共振周波数を近づけるとともに、ブーストアンテナ100とRFIDタグ200との結合係数を低下させることにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の2つの共振周波数を近づけて、送受信周波数帯域を広帯域化したブーストアンテナ付きRFIDタグ300を実現することも可能である。
【0096】
(RFIDタグ200の位置)
ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数および利得は、RFIDタグ200を、ブーストアンテナ100のグランド部30のY方向のどの位置に配置するかによって変化する。
【0097】
図14(a)はブーストアンテナ付きRFIDタグ300の、RFIDタグ200の位置を示す模式図であり、
図14(b)はRFIDタグ200と短絡部20とのオフセット距離Dとブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数Fとの相関のシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションは、ブーストアンテナ100の長さL=80mm、幅15mm、厚み5mm、RFIDタグ200の形状、6mm×3mm×1.7mm、RFIDタグ200の共振周波数860MHzの条件において、RFIDタグ200と短絡部20とのオフセット距離Dを0mm、15mm、30mm、45mm、60mm、71.5mmと変化させて共振周波数Fをシミュレーションによって求めた。なお、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は導体310の上に固定されている。
【0098】
図14(b)からわかるように、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数Fは、オフセット距離D=0mmで856MHzであるが、中央付近のD=40mmでは864MHz、開放端側のD=71.5mmでは、880MHzまで増加する。ただ、RFIDタグ200を開放端側に配置した場合にはアンテナ利得が低下するとの課題があるが(
図15参照)、中央付近まではアンテナ利得の低下は小さいので、少なくともD=0-40mmの範囲でRFIDタグ200の位置を調整することによって、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数Fを調整することができる。
【0099】
図15にブーストアンテナ付きRFIDタグ300のRFIDタグ200の位置とアンテナ利得との関係のシミュレーション結果を示す。
図15からわかるように、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300のZ方向(天頂方向)の利得は、RFIDタグ200をブーストアンテナ100の短絡部20近傍に配置した場合が最も大きく、Y方向中央までは緩やかに低下し、中央から開口端近傍にかけて急激に劣化する。したがって、RFIDタグ200を配置するにあたっては、ブーストアンテナ100のグランド部30のY方向中央より短絡部側に配置することが好ましい。
なお、アンテナ利得の上記位置依存性は、ブーストアンテナ100が逆L構造を備えており、RFIDタグ200をブーストアンテナ100共振時の定在波の節である短絡部20に近づけることによってRFIDタグ200からブーストアンテナ100へのエネルギーの伝達をより効率的に行うことができるためと推測される。
【0100】
(RFIDタグ200の方向)
図15には、RFIDタグ200を正向き、すなわち、短絡導体260をグランド部30のY方向開口端側に配置した場合、および、逆向き、すなわち、短絡導体260をグランド部30のY方向の短絡部20側に配置した場合のアンテナ利得についても記載した。RFIDタグ200を短絡部20の近傍に配置した場合は、正向きと逆向きの差は小さいが、グランド部30の中央より開口端側に配置した場合には、逆向きに配置するとアンテナ利得の低下がより大きいため、RFIDタグ200は短絡導体260をグランド部30の開口端側に配置することが望ましい。
なお、アンテナ利得の上記方向依存性については以下のように推測される。RFIDタグ200のアンテナは逆F形式のアンテナであって開口部が短絡導体260の反対側にあり、開口部からより多くの電気力線が放射される。したがって、開口部を短絡部20に向けることによって、RFIDタグ200からブーストアンテナ100へのエネルギーの伝達をより効率的に行うことができる。
【0101】
また、RFIDタグ200を、上記正向き、または逆向きから90度回転させた方向に配置した場合には、アンテナ利得が大幅に低下する。具体的には、RFIDタグ200を正向きに配置した場合のブーストアンテナ付きRFIDタグ300のアンテナ利得が-9.7dBiであるのに対して、RFIDタグ200を正向きから90度回転して配置した場合にはブーストアンテナ付きRFIDタグ300のアンテナ利得は-29.5dBiとなる。これは、RFIDタグ200単体のアンテナ利得-19.0dBiと比較してもさらに低い値である。
このRFIDタグ200を正向きから90度回転して配置した場合にアンテナ利得が大幅に低下する理由は、以下のように推測される。
ブーストアンテナ100の短絡部20と開口端とを結ぶ方向と、RFIDタグ200の短絡導体260と開口部とを結ぶ方向とを一致させると、ブーストアンテナ100の電界および磁界の方向とRFIDタグ200の電界および磁界の方向とが一致し、良好な結合状態となる。
一方、ブーストアンテナ100の短絡部20と開口端を結ぶ方向と、RFIDタグ200の短絡導体260と開口部を結ぶ方向とを直交させた場合には、ブーストアンテナ100の電界および磁界の方向とRFIDタグ200の電界および磁界の方向とが互いに直交し、ブーストアンテナ100の効果を発揮できない。
【0102】
(絶縁支持材50)
ブーストアンテナ100の放射部10とグランド部30の間に比誘電率の高い絶縁支持材50を挿入することによって、実効的な電波の波長を短くし、同一の共振周波数に対するブーストアンテナ100の形状を小さくすることができる。さらに、この絶縁支持材50の挿入による効果は、絶縁支持材50を挿入する位置にも依存する。
図16に、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300に絶縁支持材50挿入の有無、および挿入位置をパラメータとした、アンテナサイズとアンテナ利得との関係のシミュレーション結果を示した。
図16のブーストアンテナ付きRFIDタグ300は、
図1および
図2の構造のブーストアンテナ付きRFIDタグ300において、ブーストアンテナ100のX方向の幅を10mmに固定し、Y方向の長さを変化させたものである。さらに、絶縁支持材50の長さは10mmに固定し、Y方向の位置を3通り変化させてシミュレーションした。
【0103】
図16によれば、絶縁支持材50を挿入することによって、一定の送受信周波数に対して最適なブーストアンテナ100のY方向の長さを短くすることができる。さらに同じ絶縁支持材50を挿入する場合、ブーストアンテナ100のY方向開口端側の近くに挿入した方がブーストアンテナ100のY方向の長さをより短くすることができる。
また、
図16の結果は、絶縁支持材50の位置を変更することにより共振周波数が変化することを意味しており、この特性を利用すれば、ブーストアンテナ100の形状を変更することなく、絶縁支持材50の位置を調整するだけで、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数を調整することができる。
【0104】
以上の説明においては、ブーストアンテナ100は逆L構造としているが、RFIDタグ200がブーストアンテナ100の給電回路に相当すると考えた場合には、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は逆Fアンテナを構成しているといえる。
【0105】
[他の形態のブーストアンテナ100]
ここまでのブーストアンテナ100およびブーストアンテナ付きRFIDタグ300は
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100を基本としているが、ブーストアンテナ100およびブーストアンテナ付きRFIDタグ300としては、以下のような他の形態が可能である。
【0106】
(第2の形態のブーストアンテナ100)
図17(a)は第2の形態のブーストアンテナ100の模式的側面図であり、
図17(b)は第2の形態のブーストアンテナ100を放射部10側から見た模式的平面図である。
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100は放射部10、短絡部20、およびグランド部30が、導電性の材料で一体に形成されているのに対して、
図17(a)および
図17(b)に記載の第2の形態のブーストアンテナ100は放射部10および短絡部20は一体であるが、グランド部30は放射部10および短絡部20とは別体である。すなわち、短絡部20に設けられた連結部21とグランド部30とが固定具で連結されている。連結方法としては、例えば、取付孔40を用いて、連結部21をグランド部30にねじ止めすることができる。
【0107】
この場合、まず、RFIDタグ200をグランド部30に実装してから、一体に形成された放射部10および短絡部20を、短絡部20に設けられた連結部21を用いてグランド部30と連結することにより、RFIDタグ200をブーストアンテナ100へ実装する際の作業性が向上する。
また、取付孔40をグランド部30の長手方向に広がった長孔とすることにより、連結部21をグランド部30の長手方向にスライドして、短絡部20とRFIDタグ200との距離を調整することができる。そして、このことにより、例えば、RFIDタグ200の共振周波数がロット間でばらついた場合にも、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数を目標の周波数に合わせることができる。
【0108】
(第3の形態のブーストアンテナ100)
図18(a)は第3の形態のブーストアンテナ100の、
図18(b)のA-A’面における模式的断面図であり、
図18(b)は第3の形態のブーストアンテナ100を放射部10側から見た模式的平面図である。
図18(a)および
図18(b)に記載の第3の形態のブーストアンテナ100は、放射部10、短絡部20、およびグランド部30が一体に形成されている点では
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100と類似している。しかし、第3の形態のブーストアンテナ100は、放射部10の、RFIDタグ200を実装する実装領域に対向する位置に、RFIDタグ200を通すための開口領域11が形成されている。なお、開口領域11は、平面視で実装領域よりも幅および長さが長い。また、RFIDタグ200の実装領域の周囲に第1の溝31が設けられている。
【0109】
この場合、RFIDタグ200を実装するにあたって、開口領域11からグランド部30の実装領域にRFIDタグ200を配置することが容易になる。
また、第1の溝31を実装領域の周囲に形成することによって、RFIDタグ200の実装位置が容易に認識できる。さらに、RFIDタグ200の実装領域およびその周囲の第1の溝31に接着剤を塗布することによって、RFIDタグ200とグランド部30との接合強度を向上させることができる。
なお、
図18には図示されていないが、RFIDタグ200の実装領域を凸状の天面部としてもよい。この場合も、RFIDタグ200の実装位置を容易に認識できるようになる。
【0110】
(第4の形態のブーストアンテナ100の構造)
図19(a)は第4の形態のブーストアンテナ100を放射部10側から見た模式的平面図であり、
図19(b)は第4の形態のブーストアンテナ100の、
図19(a)のB-B’面における模式的断面図である。
図19(a)および
図19(b)に記載の第4の形態のブーストアンテナ100は、放射部10とRFIDタグ200が実装された前記グランド部30との間に形成された空間部に樹脂55が充填されている。樹脂55の充填は、例えば、RFIDタグ200をブーストアンテナ100のグランド部30に実装した後、液状樹脂等を充填し固化させてもよい。
図19に記載の開口領域11および開口孔12は液状樹脂等を充填する場合に注入用貫通孔として使用することができる。また、開口領域11および開口孔12の内部まで樹脂55が入り込んでいることによって樹脂55がブーストアンテナ100と強く係合し、外れにくくなるとの効果がある。さらに、
図19(b)に記載のように、開口孔12が樹脂55で充填されていると、より強く係合してより外れにくくなる。また、
図19(b)に記載のように、開口孔12の外側の径を大きくすると、厚み方向の応力に対してもより強く係合することができる。
図19のブーストアンテナ100では、RFIDタグ200の実装を容易にするための開口領域11が放射部10に設けられ、開口孔12が放射部10およびグランド部30に設けられている。ただし、開口領域11は設けなくてもよい。また、開口孔12は設けなくてもよいし、放射部10のみ、あるいはグランド部30のみに設けてもよい。
【0111】
(第5の形態のブーストアンテナ100の構造)
図20(a)は第5の形態のブーストアンテナ100の模式的側面図であり、
図20(b)は第5の形態のブーストアンテナ100の、
図20(a)の
C-C’面における模式的断面図である。
図20(a)および
図20(b)に記載の第5の形態のブーストアンテナ100は、放射部10、短絡部20、およびグランド部30が一体に形成されている点では
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100と類似している。しかし、第5の形態のブーストアンテナ100は、グランド部30の、放射部10に対向する側の内面に、グランド部30の幅方向の側面からRFIDタグ200の実装領域までRFIDタグ200をスライドさせることのできる第2の溝32が形成されている。さらに、RFIDタグ200の実装領域から、グランド部30の長手方向に伸びる第3の溝33が形成されている。
【0112】
この場合、第2の溝32に沿ってRFIDタグ200をスライドさせることで、RFIDタグ200をグランド部30の実装領域に容易に配置することができる。
さらに、実装領域に配置されたRFIDタグ200を第3の溝33に沿って、グランド部30の長手方向にスライドさせることで、RFIDタグ200と短絡部20との距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数を目標周波数に合わせることができる。
なお、
図20には図示されていないが、RFIDタグ200と短絡部20との距離の調整を必要としない場合には、第2の溝32だけをグランド部30に形成してもよい。
【0113】
(第6の形態のブーストアンテナ100の構造)
図21(a)は第6の形態のブーストアンテナ100の、
図21(b)の
D-D’面における模式的断面図であり、
図21(b)は第6の形態のブーストアンテナ100をグランド部30側から見た模式的平面図である。
図21(a)および
図21(b)に記載の第6の形態のブーストアンテナ100は、放射部10、短絡部20、およびグランド部30が一体に形成されている点では
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100と類似している。しかし第6の形態のブーストアンテナ100は、導電性の材料で別体に形成された、RFIDタグ200を実装する実装部36をさらに備えている。また、グランド部30のRFIDタグ200の実装領域に、平面視でRFIDタグ200より幅および長さが長い貫通孔34が形成され、グランド部30の貫通孔34の周囲の外面に切欠部35が形成されている。第6の形態のブーストアンテナ100では、RFIDタグ200を実装した実装部36をグランド部30の切欠部35と接着することによって、RFIDタグ200をブーストアンテナ100に実装している。
また、第6の形態のブーストアンテナ100では、切欠部35の、グランド部30の長手方向の長さを、実装部36の長さよりも長くし、実装部36の端部と切欠部35の端部との間に一定の隙間を設け、実装部36と切欠部35とを接着する場合に、実装部36をグランド部30の長手方向にスライドできるようにしている。
【0114】
この場合、RFIDタグ200を実装した実装部36をグランド部30の外面から取り付けることができるため、RFIDタグ200の実装の作業性が向上する。
また、実装部36と切欠部35とを接着する場合に、実装部36をグランド部30の長手方向にスライドすることによって、RFIDタグ200と短絡部20との距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数を目標に合わせることができる。
なお、
図21には図示されていないが、RFIDタグ200と短絡部20との距離の調整を必要としない場合には、切欠部35の、グランド部30の長手方向の長さと、実装部36の長さとを同程度にしてもよい。
【0115】
(第7の形態のブーストアンテナ100の構造)
図22(a)は第7の形態のブーストアンテナ100の、
図22(b)の
E-E’面における模式的断面図であり、
図22(b)は第7の形態のブーストアンテナ100をグランド部30側から見た模式的平面図であり、
図22(c)は
図22(b)の複数のポケット51を互いにオーバーラップする状態で形成した場合の模式的平面図である。
図22(a)および
図22(b)に記載の第7の形態のブーストアンテナ100は、放射部10、短絡部20、およびグランド部30が一体に形成されている点では
図3および
図4に記載のブーストアンテナ100と類似している。また、ブーストアンテナ100の放射部10とグランド部30の間に比誘電率の高い絶縁支持材50を挿入することによって、実効的な電波の波長を短くし、同一の共振周波数に対するブーストアンテナ100の形状を小さくすることは第1の形態のブーストアンテナ100にも記載されている。しかし、第1の形態のブーストアンテナ100では、絶縁支持材50と短絡部20とが接触していないのに対して、第7の形態のブーストアンテナ100では絶縁支持材50の一方の端部が短絡部20に接触している点で異なる。また、第1の形態のブーストアンテナ100ではRFIDタグ200と絶縁支持材50とは接触していないのに対して、第7の形態のブーストアンテナ100では絶縁支持材50はRFIDタグ200の位置決め用のポケット51を有し、RFIDタグ200はポケット51に収納されている点で異なる。
【0116】
この場合、絶縁支持材50のポケット51にRFIDタグ200を収納した後、絶縁支持材50をブーストアンテナ100の空間部に挿入し、短絡部20に接触させることにより、RFIDタグ200を所定の位置に配置することができる。これにより、RFIDタグ200のブーストアンテナ100への実装の作業性が向上する。
【0117】
絶縁支持材50のポケット51は1個でも良く、ポケット51は複数であっても良い。
図22(b)に記載のように、短絡部20からの距離の異なるポケット51を複数設けた場合には、RFIDタグ200を収納するポケット51を選択することによって、容易にRFIDタグ200の短絡部20からの距離を調整し、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の共振周波数を目標に合わせることができる。
【0118】
また、
図22(b)に記載のように、短絡部20からの距離の異なるポケット51を複数設けた場合、複数のポケット51に複数のRFIDタグ200を収納することができる。そして、短絡部20からの距離の異なる複数のポケット51に複数のRFIDタグ200を収納した場合には、それぞれのRFIDタグ200とブーストアンテナ100とで形成される共振周波数が異なるため、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300が複数の異なる共振周波数を備えることができ、より広帯域の通信周波数に対応できるようになる。
なお、複数のポケット51にRFIDタグ200を1個のみ収納する場合は、
図22(c)に記載のように、複数のポケット51を互いにオーバーラップする状態で形成してもよい。
【0119】
(第8の形態のブーストアンテナ100の構造)
図23(a)は第8の形態のブーストアンテナ100の、
図23(b)の
F-F’面における模式的断面図であり、
図23(b)は第8の形態のブーストアンテナ100をグランド部30側から見た模式的平面図である。
図23(a)および
図23(b)に記載の第8の形態のブーストアンテナ100は、放射部10、短絡部20、およびグランド部30が一体に形成され、放射部10とグランド部30との間に形成された空間部に絶縁支持材50が挿入されており、絶縁支持材50の一方の端部が短絡部20に接触し、RFIDタグ200の位置決め用の複数のポケット51を有している点では
図22のブーストアンテナ100と類似している。しかし、第7の形態のブーストアンテナ100は、絶縁支持材50がグランド部30の、長手方向の両方の端部および幅方向の両方の端部の周辺、およびポケット51の周囲のみに形成されている点で異なる。すなわち、絶縁支持材50は枠体であり、枠体をグランド部30の幅方向に接続する支持部52を有し、支持部52のグランド部30の側にポケット51が備えられている。
【0120】
電波の波長は比誘電率の平方根の逆数に比例する。したがって、放射部10とグランド部30との間の空間部に比誘電率の大きな絶縁支持材50を充填することは、電波の波長を短くし、結果として、ブーストアンテナ100を小型化することができる。しかし、一方で、放射部10とグランド部30との間の空間部に絶縁支持材50を充填することによって、誘電体損失が発生する。そこで、第8の形態のブーストアンテナ100では、小型化のための誘電体の位置として効果的な開口端側、ポケット51およびRFIDタグ200の位置決めに重要な短絡部20側、グランド部30の幅方向の両方の端部に対向する部分、およびRFIDタグ200を収納するポケット51の周囲のみに絶縁支持材50を充填した。そして、このことにより、ブーストアンテナ100の小型化、絶縁支持材50による誘電損失の最小化、および絶縁支持材50によるタグの保護を図っている。
なお、
図22の絶縁支持材50では放射部10とグランド部30との間の空間部全体に絶縁支持材50を充填しているが、
図23の絶縁支持材50のように、放射部10とグランド部30との間の空間部の一部に絶縁支持材50の無い領域を備えてもよい。
【0121】
また、
図22(b)および
図23(b)の形状の絶縁支持材50の場合、複数のRFIDタグ200を複数のポケット51に収納することができる。そして、収納される複数のRFIDタグ200がそれぞれメモリを備えている場合には、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300のリーダライタが、どのRFIDタグ200のメモリから読み出すか、あるいは、どのRFIDタグ200のメモリに書き込むかを指定することにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300を複数のRFIDタグ200のメモリを合わせた、メモリ容量の大きなブーストアンテナ付きRFIDタグ300として機能させることができる。
【0122】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体350は、導体310に、第1の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグ300が固定されている。
第2の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体350は、
図1および
図2に記載されている。
導体310としては、使用する場合に、使用履歴等が必要な各種の金属物品、例えば、機械加工、金属加工、樹脂加工等の各種の工業用加工において用いられるジグまたは工具等の用具が挙げられる。この用具には、切削または研磨等の消耗性のものも含まれる。また、工業用に限らず、家庭用の日用品、農産物、交通機関用等の各種のプリペイドカードおよび医療用の器具等で金属面を備えた物品も上記導体310に含まれる。
【0123】
ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の導体310への固定においては、ブーストアンテナ100のグランド部30を導体310に接地することが望ましい。グランド部30を導体310に接地することにより、導体310がブーストアンテナ付きRFIDタグ300のグランド部30の延長部分として働き、アンテナの利得が向上し、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300の通信距離が向上する。グランド部30を導体310に接地する方法としては、グランド部30を導体310に直接接地する以外に、接着剤層などの容量を介して電気的に接地することも可能である。
【0124】
なお、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300を長方形の導体310に固定する場合、
図2に記載のように、ブーストアンテナ100の短絡部20を導体310の一辺の近傍に配置することが望ましい。また、ブーストアンテナ100の放射部10を導体310の一辺に隣接する他辺の近傍に、放射部10のY方向が他辺に平行に配置することが望ましい。このように配置することにより、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は通信距離を向上させることができる
【0125】
[第3の実施形態]
第3の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDシステム400は、第1の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDタグ300と、電波を送受信するアンテナ420を有するRFIDリーダライタ410とを組み合わせて相互に通信を行い、RFIDタグ200に記録する情報の随時書き換えを可能とするものである。
第3の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDシステム400の構成を
図24に示す。ブーストアンテナ付きRFIDタグ300は、
図1および
図2に記載のブーストアンテナ付きRFIDタグ300と同一である。RFIDリーダライタ410は、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300との間で電波を送受信するアンテナ420を有する。RFIDリーダライタ410は、例えば電気絶縁材料からなる基体430に矩形状等のアンテナ420が設けられて形成されている。基体430はアンテナ420を収容する筐体(図示せず)であってもよい。
第3の実施形態のブーストアンテナ付きRFIDシステム400では、RFIDタグ200をブーストアンテナ100に配置することによって、通信距離を大幅に向上させることができる。
【0126】
本発明において、ブーストアンテナ100が『ブーストアンテナ』に相当し、RFIDタグ200が『RFIDタグ』に相当し、ブーストアンテナ付きRFIDタグ300が『ブーストアンテナ付きRFIDタグ』に相当し、放射部10が『放射部』に相当し、短絡部20が『短絡部』に相当し、グランド部30が『グランド部』に相当し、グランド板220が『グランド板』に相当し、放射板210が『放射板』に相当し、導体310が『導体』に相当し、突起70が『突起』に相当し、連結部21が『連結部』に相当し、開口領域11が『開口領域』に相当し、開口孔12が『開口孔』に相当し、樹脂55が『樹脂』に相当し、第1の溝31が『第1の溝』に相当し、第2の溝32が『第2の溝』に相当し、第3の溝33が『第3の溝』に相当し、実装部36が『実装部』に相当し、貫通孔34が『貫通孔』に相当し、切欠部35が『切欠部』に相当し、絶縁支持材50が『絶縁支持材』に相当し、ポケット51が『ポケット』に相当し、支持部52が『支持部』に相当し、絶縁基板230が『絶縁基板』に相当し、ICチップ240が『ICチップ』に相当し、容量導体250が『容量導体』に相当し、短絡導体260が『短絡導体』に相当し、容量部貫通導体270が『容量部貫通導体』に相当し、ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体350が『ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体』に相当し、ブーストアンテナ付きRFIDシステム400が『ブーストアンテナ付きRFIDシステム』に相当し、RFIDリーダライタ410が『RFIDリーダライタ』に相当し、RFIDリーダライタ用のアンテナ420が『アンテナ』に相当する。
【0127】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0128】
10 放射部
11 開口領域
12 開口孔
20 短絡部
21 連結部
30 グランド部
31 第1の溝
32 第2の溝
33 第3の溝
34 貫通孔
35 切欠部
36 実装部
40 取付孔
50 絶縁支持材
51 ポケット
52 支持部
55 樹脂
60 誘電体基板
70 突起
80 金具
90 給電部
100 ブーストアンテナ
200 RFIDタグ
210 放射板
220 グランド板
230 絶縁基板
240 ICチップ
250 容量導体
260 短絡導体
270 容量部貫通導体
300 ブーストアンテナ付きRFIDタグ
310 導体
350 ブーストアンテナ付きRFIDタグを備えた導体
400 ブーストアンテナ付きRFIDシステム
410 RFIDリーダライタ
420 アンテナ
430 基体