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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】電子装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
H05K1/02 D
H05K1/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022535972
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003453
【審査請求日】2022-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312003595
【氏名又は名称】タカハタプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 稔
(72)【発明者】
【氏名】北山 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 英明
(72)【発明者】
【氏名】老田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 清
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210788(JP,A)
【文献】特開2013-172068(JP,A)
【文献】特開平10-242659(JP,A)
【文献】特開2003-007379(JP,A)
【文献】特開2008-103619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2面を接着層を介することなく覆うように形成された樹脂層の一部が前記基材を厚み方向に貫通して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部を形成し、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と面接触して前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定する固定体と、
前記面状体部の一面が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、を備えた、
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記固定体は、前記導電性パターン及び前記フィルム基板上に実装された実装品を除いて複数箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記基材の第2面と前記樹脂層との間に接着を阻害する無機物又は有機物を配合した非接着層が設けられてい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記基材が合成樹脂材料からなる変形可能なフィルムである、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2接着層を介することなく覆い前記基材を支持する樹脂層と、前記基材の第1面側で前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を固定する固定体と、前記固定体が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、がインサート成形によって一体成形された電子装置であって、
前記インサート成形時に、前記固定体が前記基材を厚み方向に貫通して前記第1面側に突出して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部が形成され、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と接触して前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定するように前記樹脂層の一部として形成されている、
ことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2面を接着層を介することなく覆うように形成された樹脂層の一部が前記基材を厚み方向に貫通して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部を形成し、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と面接触して、前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定する固定体と、
前記面状体部の一面が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、を備えた電子装置の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材上に前記導電性パターンを配置する工程と、
前記基材に貫通孔を形成する工程と、
前記基材の前記固定体に覆われる領域の前記基材の第2面に前記進入制体を張り合わせる工程と、
前記貫通孔が形成された前記基材を金型に載置して前記樹脂層と前記固定体を射出成形する工程と、を含む、
ことを特徴とする電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と、電子部品と電気的に接続された回路基板とを備えた実装基板と、実装基板の一部を覆うようにして、実装基板と一体化された成形体とを備え、実装基板と成形体との界面に、実装基板と成形体とを分離可能に構成された被覆層を有する、成形品が知られている(特許文献1)。
【0003】
可撓性フィルムからなるベース基板の一表面に配線導体が配置され、可撓性フィルムの表面上に接着材を介在して半導体チップが塔載される半導体装置であって、配線導体上に絶縁膜を分割して配置した半導体装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-126828号公報
【文献】特開平11-54658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、変形可能な基材上に導電性パターンが形成されたフィルム基板の一面に樹脂層を成形した場合の反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にしてリサイクル性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の電子装置は、
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2面を接着層を介することなく覆うように形成された樹脂層の一部が前記基材を厚み方向に貫通して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部を形成し、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と面接触して前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定する固定体と、
前記面状体部の一面が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1項に記載の電子装置において、
前記固定体は、前記導電性パターン及び前記フィルム基板上に実装された実装品を除いて複数箇所に設けられている、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子装置において、
前記基材の第2面と前記樹脂層との間に接着を阻害する無機物又は有機物を配合した非接着層が設けられてい
ことを特徴とする。
ことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の電子装置において、
前記基材が合成樹脂材料からなる変形可能なフィルムである、
ことを特徴とする。
【0014】
前記課題を解決するために、請求項5に記載の電子装置は、
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2接着層を介することなく覆い前記基材を支持する樹脂層と、前記基材の第1面側で前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を固定する固定体と、前記固定体が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、がインサート成形によって一体成形された電子装置であって、
前記インサート成形時に、前記固定体が前記基材を厚み方向に貫通して前記第1面側に突出して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部が形成され、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と接触して前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定するように前記樹脂層の一部として形成されている、
ことを特徴とする。
【0016】
前記課題を解決するために、請求項6に記載の電子装置の製造方法は、
基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、
前記基材の第1面とは反対側の第2面を接着層を介することなく覆うように形成された樹脂層の一部が前記基材を厚み方向に貫通して前記基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部を形成し、前記面状体部の前記一面が前記基材の第面と面接触して、前記基材の第2面と前記樹脂層とが直接当接した状態で前記基材と前記樹脂層を分離容易に固定する固定体と、
前記面状体部の一面が前記基材の第1面と当接する領域で前記基材の第2面に密着して固定され前記樹脂層の進入を規制する進入規制体と、を備えた電子装置の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材上に前記導電性パターンを配置する工程と、
前記基材に貫通孔を形成する工程と、
前記基材の前記固定体に覆われる領域の前記基材の第2面に前記進入制体を張り合わせる工程と、
前記貫通孔が形成された前記基材を金型に載置して前記樹脂層と前記固定体を射出成形する工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、変形可能な基材上に導電性パターンが形成されたフィルム基板の一面に樹脂層を成形した場合の反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にしてリサイクル性を向上させることができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にすることができる。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にすることができる。
【0024】
請求項に記載の発明によれば、電子装置に3次元形状を付与することができる。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、樹脂層の成形と同時に固定体を形成することができる。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、射出成形による基材の変形を抑制しながら、変形可能な基材上に導電性パターンが形成されたフィルム基板の一面に樹脂層を成形した場合の反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にしてリサイクル性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す斜視図である。
図2図2Aは本実施形態に係る電子装置の一例を示す平面模式図、図2B図2Aに示すA-A線に沿った断面模式図である。
図3図3Aは貫通孔が形成されたフィルム基板の一例を示す平面模式図、図3Bは樹脂層と固定体を一体成形する射出成形用金型における樹脂の流動を説明する断面模式図である。
図4図4Aは侵入規制体を接着したフィルム基板の一例を示す平面模式図、図4Bは変形例に係る電子装置の図2Aに示すA-A線に沿った断面模式図である。
図5】電子装置の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
図6】電子装置の製造過程を説明するための電子装置の部分断面模式図である。
図7】変形例に係る電子装置の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
図8】変形例に係る電子装置の製造過程を説明するための電子装置の部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0030】
(1)電子装置の全体構成
図1は本実施形態に係る電子装置1の一例を示す斜視図、図2Aは本実施形態に係る電子装置1の一例を示す平面模式図、図2B図2AにおけるA-A線に沿った断面模式図、図3Aは貫通孔2cが形成されたフィルム基板4の一例を示す平面模式図、図3Bは樹脂層5と固定体6を一体成形する射出成形用金型Kにおける樹脂の流動を説明する断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る電子装置1の構成について説明する。
【0031】
電子装置1は、図1及び図2に示すように、基材2の第1面2aに導電性パターン3が形成されたフィルム基板4と、基材2の第1面2aとは反対側の第2面2bを覆う樹脂層5と、基材2の第1面2a側で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する固定体6と、を備えて構成されている。
【0032】
(基材)
本実施形態における基材2は、合成樹脂材料からなり変形可能な絶縁性のフィルム状の基材である。ここで、「変形可能な基材」は、導電性パターン3を配置後に変形できる、すなわち、熱成形、真空成形または圧空成形によって実質的に平坦な2次元形状から実質的に立体的な3次元形状に変形することができる基材を意味する。
【0033】
基材2の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6-10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。特にポリエステルがより好ましく、さらにその中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が経済性、電気絶縁性、耐薬品性等のバランスが良く最も好ましい。
【0034】
また、本実施形態においては、後述するように、導電性パターン3が配置された基材2に対して、接着層を介することなく樹脂層5をインサート成形する。そのために、基材2と樹脂層5の接着性を考慮する必要がなく、基材2の材質としては、熱可塑性樹脂のみならず、熱硬化性樹脂も用いることができる。熱硬化性樹脂材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂などが挙げられ、これらの中では、特にポリイミド樹脂(PI)が好適である。
【0035】
基材2の第1面2aには、金属ナノ粒子等の触媒インクを均一に塗布するために、表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等を用いることができる。
【0036】
(導電性パターン)
基材2の第1面2aに導電性パターン3を配置する場合、さきに、金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒からなる下地層(不図示)を所定のパターン状に形成する。下地層は、基材2上に金属ナノ粒子等の触媒インクを塗布したあと、乾燥および焼成を行うことにより形成する。
【0037】
下地層の厚み(μm)は、0.1~20μmが好ましく、0.2~5μmがさらに好ましく、0.5~2μmが最も好ましい。下地層が薄すぎると、下地層の強度が低下するおそれがある。また、下地層が厚すぎると、金属ナノ粒子は通常の金属よりも高価であるため、製造コストが増大する虞がある。
【0038】
触媒の材料としては、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルなどが用いられ、導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、金、銀に比べて安価な銅が最も好ましい。
【0039】
触媒の粒子径(nm)は1~500nmが好ましく、10~100nmがより好ましい。粒子径が小さすぎる場合、粒子の反応性が高くなりインクの保存性・安定性に悪影響を与える虞がある。粒子径が大きすぎる場合、薄膜の均一形成が困難になるとともに、インクの粒子の沈殿が起こりやすくなる虞がある。
【0040】
導電性パターン3は、下地層の上に電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、伸長性、導電性および価格の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0041】
めっき層の厚さ(μm)は、0.03~100μmが好ましく、1~35μmがより好ましく、3~18μmが最も好ましい。めっき層が薄すぎると、機械的強度が不足するとともに、導電性が実用上十分に得られない虞がある。めっき層が厚すぎると、めっきに必要な時間が長くなり、製造コストが増大する虞がある。
【0042】
(電子部品)
導電性パターン3は、図1においては、タッチセンサ3Aとして配置されている例を示しているが、導電性パターン3には、複数の電子部品3B(不図示)が取り付けられてもよい。電子部品3Bとしては、制御回路、歪み、抵抗、静電容量、TIRなどの接触感知、および光検出部品、圧電アクチュエータまたは振動モータなどの触知部品または振動部品、LEDなどの発光部品、マイクおよびスピーカーなどの発音または受音、メモリチップ、プログラマブルロジックチップおよびCPUなどのデバイス操作部品、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ALSデバイス、PSデバイス、処理デバイス、MEMS等が挙げられる。
【0043】
また、図1図2に示すように、導電性パターン3には、一端に複数のコネクタ接続パッド3aが形成され、電子装置1の外部に設けられた外部装置と電気的に接続するためのコネクタ3Cが電気的に接続されている。
コネクタ3Cは、導電性パターン3と電気的に接続され外部装置と電気的に接続するための端子3Caと、端子3Caを保持するハウジング3Cbと、を備え、ハウジング3Cbは後述する樹脂層5と一体で形成されている。
【0044】
(樹脂層)
樹脂層5は、基材2の導電性パターン3が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bに対して接着層を介することなく基材2の第2面2bを覆うように形成されている。樹脂層5は、後述するように、導電性パターン3が配置された基材2を射出成形用金型Kに位置決めしてセットした状態で溶融樹脂をインサート成形することで形成される。
このとき、通常は、樹脂層5と基材2の接着性を向上させるために、樹脂素材の組み合わせに応じて接着層を形成するバインダーインクを塗布することが行われるが、本実施形態においては、接着層を介することなく、樹脂層5をインサート成形する。基材2と樹脂層5は、後述する固定体6によって基材2と樹脂層5を当接するように固定している。これにより、基材2と樹脂層5の分離を容易にしてリサイクル性を向上させている。
【0045】
「変形例」
樹脂層5は、基材2の導電性パターン3が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bに対して基材2と樹脂層5との接着を阻害する無機物又は有機物を配合した非接着層5A(不図示)を介して基材2の第2面2bを覆うように形成されてもよい。非接着層5Aの材料としては、シリコーン系化合物、シリコーン系樹脂、フッ素系化合物、フッ素系樹脂、ワックス等を単独でまたは2種以上併用して使用することができる。これにより、基材2と樹脂層5の分離をより容易にしてリサイクル性を向上させることができる。
【0046】
樹脂層5は、射出成形可能な熱可塑性樹脂材料からなる熱可塑性樹脂である。具体的には、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、変性ポリフェニレンオキサイト(m-PPO)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはこれらの混合物を含む熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0047】
(固定体)
固定体6は、図2Bに示すように、基材2の第1面2aに沿う少なくとも一面61aを有する面状体部61を有し、面状体部61の一面61aが基材2の第1面2aと面接触して基材2と樹脂層5を固定している。
面状体部61は、基材2を厚み方向に貫通して第1面2a側に突出するように樹脂層5と一体に形成されている。
【0048】
具体的には、面状体部61は、図3に示すように、基材2の第1面2aに導電性パターン3が配置され、固定体6を形成するための貫通孔2cが設けられたフィルム基板4(図3A 参照)を射出成形用金型Kに載置して固定した状態(図3B 参照)で、樹脂層5をインサート成形することで、キャビティCA1に充填される溶融樹脂が貫通孔2cからキャビティCA2へ流動して(図3B中 矢印参照)、基材2を厚み方向に貫通して第1面2a側に突出するように樹脂層5と一体として形成される。
【0049】
このように基材2の第1面2aと面接触して基材2と樹脂層5を固定している固定体6は、導電性パターン3及びフィルム基板4上に実装された電子部品3B(不図示)を除いて複数箇所に設けられている。固定体6の基材2の第1面2aにおける形成位置及び個数は、フィルム基板4の大きさ(面積)、導電性パターン3及び電子部品3B(不図示)の配置に応じて設定される。
これにより、電子装置1の反りを抑制するとともに基材2と樹脂層5の分離を容易にして電子装置1のリサイクル性を向上させることができる。
【0050】
「変形例」
図4Aは侵入規制体7を接着したフィルム基板4の一例を示す平面模式図、図4Bは変形例に係る電子装置1Aの図2Aに示すA-A線に沿った断面模式図である。
面状体部61の一面61aが当接する領域は、基材2の第2面2bと樹脂層5の間に樹脂層5の進入を規制する進入規制体7を設けることが好ましい。図4に示すように、進入規制体7は、面状体部61の平面形状に合わせて基材2に形成された貫通孔2cの周囲に基材2の第2面2bに密着するように、接着により固定される。接着の方法としては、溶融樹脂の樹脂圧により進入規制体7がずれないように、接着剤で固定する、両面テープで張り合わせる等が挙げられる。
進入規制体7の材料は特に限定されないが、樹脂層5の材料と同じ熱可塑性樹脂材料で形成されているのが好ましい。
【0051】
進入規制体7は、樹脂層5を射出成形で形成する際に、樹脂層5と一体として形成される固定体6の面状体部61で覆われる基材2の第2面2bへの樹脂層5の進入を規制して樹脂層5を射出成形する際の樹脂圧による基材2の変形を抑制している。
【0052】
(2)電子装置の製造方法
図5は電子装置1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、図6は電子装置1の製造過程を説明するための電子装置1の部分断面模式図である。
【0053】
電子装置1は、図5に示すように、基材2の準備工程S11と、基材2上に導電性パターン3を形成する配線用めっき工程S12と、導電性パターン3が配置された基材2に貫通孔2cを設ける貫通孔形成工程S13と、基材2を射出成形用金型Kに位置決めして、基材2の第1面2a側で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する固定体6とを一体としてインサート成形する樹脂充填工程S14と、を経て製造される。
【0054】
(基材の準備工程S11)
基材の準備工程S11においては、まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2には、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0055】
基材2上に金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを塗布する方法としては、インクジェット印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式が挙げられるが、本実施形態においてはインクジェット印刷方式を用いている。
【0056】
具体的には、1000cps以下、例えば、2cpsから30cpsの低粘度の触媒インクをインクジェット印刷方式で塗布した後、溶媒を揮発させ金属ナノ粒子のみを残す。その後、溶媒を除去し(乾燥)、金属ナノ粒子を焼結させる(焼成)。
焼成温度は、100°C~300°Cが好ましく、150°C~200°Cがより好ましい。焼成温度が低すぎると、金属ナノ粒子同士の焼結が不十分となるとともに、金属ナノ粒子以外の成分が残ることで、密着性が得られない虞がある。また、焼成温度が高すぎると、基材2の劣化や歪みが発生する虞がある。
【0057】
(配線用めっき工程S12)
基材2上に形成された下地層に対し、電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させ導電性パターン3を配置する(図6A 参照)。めっき方法は公知のめっき液およびめっき処理と同様であり、具体的に無電解銅めっき、電解銅めっきが挙げられる。
【0058】
(貫通孔形成工程S13)
導電性パターン3が配置された基材2に、基材2の厚み方向に貫通する貫通孔2cを形成する(図6B 参照)。貫通孔2cは、樹脂層5を形成するキャビティCA1と固定体6を形成するキャビティCA2とを連通する孔であり、固定体6の面状体部61の大きさに合わせて、溶融樹脂が通過できる大きさで複数形成される。また、コネクタ3Cのハウジング3Cbを樹脂層5と一体に形成するための貫通孔2dも形成する(図6B 参照)。
【0059】
(樹脂充填工程S14)
樹脂充填工程S14では、貫通孔2cが形成され導電性パターン3が配置された基材2を射出成形用金型Kに位置決めしてセットした状態(図6C 参照)で射出成形用金型Kを閉じて樹脂をキャビティCA1に充填する。キャビティCA1に充填された樹脂により、基材2の第2面2bを覆う樹脂層5が形成される。そして、キャビティCA1に充填される樹脂は、基材2に形成された貫通孔2cから基材2の導電性パターン3が配置された第1面2a側に形成されたキャビティCA2に充填される。キャビティCA2に充填された樹脂により、基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する固定体6の面状体部61が形成される(図6D 参照)。
【0060】
尚、貫通孔形成工程S13で貫通孔2cが形成された基材2の導電性パターン3が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bに基材2と樹脂層5との接着を阻害する樹脂組成物を塗布してもよい。
【0061】
このように、本実施形態の電子装置1の製造方法によれば、基材2上に形成された導電性パターン3を有するフィルム基板4に樹脂層5の成形と同時に固定体6を形成することができる。また、基材2の第2面2bに接着層となるバインダーインクを塗布していないために、射出成形での基材2と樹脂層5の収縮差による電子装置1としての反りを抑制することができる。
【0062】
「変形例」
図7は変形例に係る電子装置1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、図8は変形例に係る電子装置1Aの製造過程を説明するための電子装置1Aの部分断面模式図である。
【0063】
変形例に係る電子装置1Aは、図8に示すように、基材2の準備工程S21と、基材2上に導電性パターン3を形成する配線用めっき工程S22と、導電性パターン3が配置された基材2に貫通孔2cを設ける貫通孔形成工程S23と、基材2の第2面2b側で固定体6の面状体部61が形成される領域に進入規制体7を接着する進入規制体接着工程S24、基材2を射出成形用金型Kに位置決めして、基材2の第1面2a側で基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する固定体6とを一体としてインサート成形する樹脂充填工程S25と、を経て製造される。
【0064】
変形例に係る電子装置1Aの製造工程における、基材2の準備工程S21、配線用めっき工程S22(図8A 参照)、貫通孔形成工程S23(図8B 参照)、樹脂充填工程S25(図8E 参照)は、上述した電子装置1の製造過程と同一であるために、その説明は省略して、進入規制体接着工程S24以降について説明する。
【0065】
(進入規制体接着工程S24)
基材2の準備工程S21、配線用めっき工程S22、貫通孔形成工程S23を経て、基材2の固定体6の面状体部61が形成される領域の基材2の第2面2bに進入規制体7を接着により取り付ける(図8C 参照)。
【0066】
(樹脂充填工程S25)
樹脂充填工程S25では、基材2に貫通孔2cが形成され進入規制体7が接着されたフィルム基板4を射出成形用金型Kに位置決めしてセットした状態で射出成形用金型Kを閉じて(図8D 参照)樹脂をキャビティCA1に充填する。キャビティCA1に充填された樹脂により、基材2の第2面2bを覆う樹脂層5が形成される。このとき、進入規制体7が接着されている領域の基材2の第2面2bには、溶融樹脂は進入することができず、溶融樹脂の樹脂圧による基材2の変形が抑制される。
【0067】
そして、キャビティCA1に充填される樹脂は、基材2に形成された貫通孔2cから基材2の導電性パターン3が配置された第1面2a側に形成されたキャビティCA2に充填される。キャビティCA2に充填された樹脂により、基材2の第2面2bと樹脂層5とが当接するように固定する固定体6の面状体部61が形成される。
尚、貫通孔形成工程S23で貫通孔2cが形成された基材2の導電性パターン3が配置された第1面2aとは反対側の第2面2bに基材2と樹脂層5との接着を阻害する樹脂組成物を塗布してもよい。
【0068】
このように、本実施形態の変形例に係る電子装置1Aの製造方法によれば、基材2上に形成された導電性パターン3を有するフィルム基板4に樹脂層5の成形と同時に固定体6を形成することができる。また、面状体部61の一面61aが当接する領域は、基材2の第2面2bと樹脂層5の間に樹脂層5の進入を規制する進入規制体7を接着により設けることで、面状体部61で覆われる基材2の第2面2bへの樹脂層5の進入を規制して樹脂圧による基材2の変形を抑制している。
【符号の説明】
【0069】
1、1A・・・電子装置
2・・・基材
2a・・・第1面(導電性パターン3側)、2b・・・第2面
2c、2d・・・貫通孔
3・・・導電性パターン
3A・・・タッチセンサ、3B・・・電子部品、3C・・・コネクタ
4・・・フィルム基板
5・・・樹脂層
6・・・固定体、61・・・面状体部、
7・・・進入規制体
K・・・射出成形用金型
CA1、CA2・・・キャビティ
【要約】
変形可能な基材上に導電性パターンが形成されたフィルム基板の一面に樹脂層を成形した場合の反りを抑制するとともに基材と樹脂層の分離を容易にしてリサイクル性を向上させる。基材の第1面に導電性パターンが形成されたフィルム基板と、基材の第1面とは反対側の第2面を覆う樹脂層と、基材の第1面側で基材の第2面と樹脂層とが当接するように固定する固定体と、を備え、固定体は、基材の第1面に沿う少なくとも一面を有する面状体部を有し、面状体部の一面が基材の第2面と面接触して基材と樹脂層を固定している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8