(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221118BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2017206780
(22)【出願日】2017-10-26
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】石原 健二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-208316(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02644085(EP,A1)
【文献】特開平06-133931(JP,A)
【文献】特開2016-144503(JP,A)
【文献】特開2015-221169(JP,A)
【文献】特開2014-108310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152958(US,A1)
【文献】特開2016-140369(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105832285(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0227997(US,A1)
【文献】特開2009-112431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0291277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光源から出射した光(測定光)を、被検眼に照射し、被検眼からの反射光を受光する受光手段と、
アライメント光源から出射した光(アライメント光)を被検眼に照射し、被検眼上に生成される輝点の位置を検出する検出手段と、
眼科装置を被検眼の軸方向に対して上下左右および前後方向に移動する移動手段と、
前記移動手段により前記アライメント光による前記輝点を前記被検眼が置かれるべき位置に配置された基準眼の頂点位置にアライメントして、前記輝点の位置を第1基準位置として前記検出手段により検出する第1ステップと、
前記移動手段により前記輝点を前記基準眼の頂点位置に対して所定の範囲内で移動させて、前記受光手段で受光する受光信号の強度が最大となる前記輝点の位置を第2基準位置として前記検出手段により検出する第2ステップと、
前記検出手段により検出した前記第1基準位置と前記第2基準位置との位置ずれ量を算出する第3ステップとを実行して、前記測定光と前記アライメント光の位置ずれ量を算出する位置ずれ算出手段と、
前記測定光の光軸(測定光軸)を、該測定光軸に対して左右および上下方向に移動する測定光軸移動手段を備え、
前記位置ずれ算出手段により算出した前記測定光と前記アライメント光との位置ずれ量に基づいて、前記測定光軸と前記アライメント光の光軸(アライメント光軸)とが一致するように、前記測定光軸移動手段により前記測定光軸を前記アライメント光軸に対して相対的に移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記測定光軸移動手段は、前記測定光源から前記受光手段に至る前記測定光の測定光学系を構成する少なくとも1つのレンズをVCM(ボイスコイルモータ)により、前記測定光軸に対して左右および上下方向に移動することを特徴とする請求項
1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記基準眼は、人眼を摸した模擬眼であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記基準眼は、人眼であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼を検査する眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定光学系とアライメント光学系とを備えた眼科装置が提供されている。
【0003】
特許文献1には、アライメント光学系で角膜頂点の位置を検出し、検出した結果に基づいて、保持台に対して装置本体を移動してアライメントする前眼部断面画像解析装置が開示されている。このように、測定光学系とアライメント光学系とを備えた眼科装置では、アライメント光学系の光軸と眼特性を測定する測定光学系の光軸とが一致するように、製造時に各々光軸調整されている。そして、測定する際には、アライメント光学系からのアライメント光により被検眼上で生成する輝点の位置が角膜頂点に位置に来るように装置本体を保持台に対して上下左右及び前後方向に移動させることにより、装置本体内の測定光学系の光軸が被検眼の角膜頂点位置に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、温度等の影響による測定光学系を構成するミラー等の部品の歪みや、外部からの衝撃、部品等の経年劣化などにより測定光学系の光軸がずれてしまうことがある。測定光学系の光軸がずれてしまうと、正確にアライメントを実施しても、測定光学系からの測定光が被検眼の角膜頂点位置に入射されず、その結果、測定精度の悪化や、最悪、測定不能になる恐れがあった。
【0006】
測定光学系の光軸のずれは、測定結果の異常等から発見されるため、通常測定時には発見することが困難であるという問題や、光軸のずれを調整するには、装置本体を解体して再調整する必要があるという問題があった。
【0007】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、測定光軸とアライメント光軸との位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて、測定光軸とアライメント光軸とが一致するように測定光軸の位置を移動させる補正手段を備えた眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る眼科装置は、測定光源から出射した光(測定光)を、被検眼に照射し、被検眼からの反射光を受光する受光手段と、アライメント光源から出射した光(アライメント光)を被検眼に照射し、被検眼上に生成される輝点の位置を検出する検出手段と、眼科装置を被検眼の軸方向に対して上下左右および前後方向に移動する移動手段と、移動手段によりアライメント光による輝点を被検眼が置かれるべき位置に配置された基準眼の頂点位置にアライメントして、輝点の位置を第1基準位置として検出手段により検出する第1ステップと、移動手段により輝点を基準眼の頂点位置に対して所定の範囲内で移動させて、受光手段で受光する受光信号の強度が最大となる輝点の位置を第2基準位置として検出手段により検出する第2ステップと、検出手段により検出した第1基準位置と第2基準位置との位置ずれ量を算出する第3ステップとを実行して、測定光とアライメント光の位置ずれ量を算出する位置ずれ算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る眼科装置は、請求項1に記載の眼科装置であって、測定光の光軸(測定光軸)を、測定光軸に対して左右および上下方向に移動する測定光軸移動手段を備え、位置ずれ算出手段により算出した測定光とアライメント光との位置ずれ量に基づいて、測定光軸とアライメント光の光軸(アライメント光軸)とが一致するように測定光軸移動手段により測定光軸を移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る眼科装置は、請求項1に記載の眼科装置であって、アライメント光軸を、アライメント光軸に対して左右および上下方向に移動するアライメント光軸移動手段を備え、位置ずれ算出手段により算出した前記測定光と前記アライメント光との位置ずれ量に基づいて、測定光の光軸(測定光軸)とアライメント光軸とが一致するように、アライメント光軸移動手段によりアライメント光軸を移動させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る眼科装置は、請求項1に記載の眼科装置であって、測定光の光軸(測定光軸)を、測定光軸に対して左右および上下方向に移動する測定光軸移動手段と、アライメント光軸を、アライメント光軸に対して左右および上下方向に移動するアライメント光軸移動手段と、を備え、位置ずれ算出手段により算出した測定光とアライメント光との位置ずれ量に基づいて、測定光軸とアライメント光軸とが一致するように、測定光軸移動手段及び/或いはアライメント光軸移動手段により、測定光軸及び/或いはアライメント光軸を移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る眼科装置は、請求項2または4に記載の眼科装置であって、測定光軸移動手段は、測定光源から受光手段に至る測定光の測定光学系を構成する少なくとも1つのレンズをVCM(ボイスコイルモータ)により、測定光軸に対して左右および上下方向に移動することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る眼科装置は、請求項1乃至5の何れかに記載の眼科装置であって、基準眼は、人眼を摸した模擬眼であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る眼科装置は、請求項1乃至5の何れかに記載の眼科装置であって、基準眼は、人眼であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る眼科装置では、被検眼の位置に基準となる被検眼、例えば、人眼を摸した模擬眼や角膜の状態が正常な被検眼を基準眼として配置し、眼科装置を被検眼の軸方向に対して上下左右および前後方向に移動させて、アライメント光により生成される被検眼上の輝点を角膜頂点にアライメントし、その輝点の位置を第1基準位置とし、その第1基準位置に対して所定の範囲内で、(眼科装置を移動させて)輝点を移動して、測定光学系の受光手段で受光する受光信号が最大になる輝点の位置を第2基準位置として検出することにより、測定光学系の光軸ずれ量を算出することができる。これにより、許容範囲を超えて光軸ずれが発生している場合は警告表示等により、検者に認識させて、誤測定を未然に防止することができる。また、光軸ずれ量と測定結果との関係が予めわかっており、測定結果を補正することができる場合は、光軸ずれ量を用いて測定結果を補正することができる。
【0016】
請求項2に係る眼科装置では、測定光学系の光軸を左右および上下方向に移動する測定光軸移動手段を備えることにより、上述で算出した光軸ずれ量に基づいて、測定光学系の光軸とアライメント光学系の光軸とが一致するように測定光学系の光軸を移動調整することができる。これにより、光軸ずれが生じたとしても、装置本体を解体することなく、簡易に光軸ずれを解消することができる。
【0017】
請求項3に係る眼科装置では、アライメント光学系の光軸を左右および上下方向に移動するアライメント光軸移動手段を備えることにより、上述で算出した光軸ずれ量に基づいて、アライメント光学系の光軸とアライメント光学系の光軸とが一致するようにアライメント光学系の光軸を移動調整することができる。光軸ずれの発生は、上述のような測定光学系の光軸ずれに限定されるものでななく、アライメント光学系の光軸ずれが起因する場合がある。このような場合、アライメント光学系の光軸を移動させる方が効果的に光軸ずれを解消することができる。
【0018】
請求項4に係る眼科装置では、測定光学系の光軸とアライメント光学系の光軸とを移動可能にする。光軸ずれ量が大きい場合は、一方の移動手段では、光軸ずれを解消できない恐れがある。両方で光軸が移動可能であれば、光軸ずれ量が大きい場合でも、光軸ずれを解消することができる。また、光軸ずれの状態により、測定光学系とアライメント光学とのいずれかを選択して光軸を移動することができることから、より効果的に光軸ずれを解消することができる。
【0019】
請求項5に係る眼科装置では、測定光軸移動手段に、VCM(ボイスコイルモータ)を採用して、測定光学系を構成する少なくとも1のレンズを左右および上下に移動することにより、簡易な構成で光軸を移動させることができる。
【0020】
請求項6に係る眼科装置では、基準眼に人眼を摸した模擬眼を採用する。基準眼として患者眼である人眼を採用した場合、光軸ずれを検出する際に、基準眼である人眼が移動してしまい、光軸ずれ量を正確に検出できない恐れがある。基準眼として模擬眼を採用することにより、基準眼の移動を防止することができるとともに、模擬眼の特性は一定で安定していることから、光軸ずれ量を正確で、かつ、高い再現性で算出することができる。
【0021】
請求項7に係る眼科装置では、基準眼に人眼を採用する。患者眼の角膜の状態が比較的に正常な場合は、患者眼を基準眼として用いることができる。この場合、測定する前に光軸ずれの検出ができるため、測定する毎に光軸ずれを検出し、補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る一実施例である眼寸法測定装置の全体構成図である。
【
図2】本発明に係る一実施例である眼寸法測定装置の光学系の概略構成図である。
【
図3】本発明に係る眼寸法測定装置の制御系のブロック図である。
【
図4】本実施例に係る眼寸法測定装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】モニタの表示画面に表示される被検眼の前眼部の画像を示した図である。
【
図6】干渉光学系で検出した干渉信号をフーリエ変換して被検眼の対象部位を特定する手順を示した図である。
【
図7】(a)、(c)は、干渉光学系の光軸がアライメント光学系の光軸に対してずれた状態の例を示す図であり、(b)、(d)は、光軸ずれを補正した例を示す図である。
【
図8】干渉光学系の光軸とアライメント光学系の光軸とのずれ量を検出する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】測定ヘッドを模擬眼に対して上下左右(XY)方向に移動させる範囲と間隔の一例を示す図である。
【
図10】干渉光学系の光軸とアライメント光学系の光軸とを一致させる手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施例で採用したVCM(ボイスコイルモータ)を説明する図である。
【
図12】干渉光学系の光軸とアライメント光学系の光軸との光軸ずれをさらに厳密に検出する方法を説明する図である。
【
図13】0点調整機構の機能を説明するための図である。
【
図14】焦点調整機構の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施例では、光干渉を用いて被検眼内部の測定対象部位(例えば、水晶体、網膜など)の位置を特定する眼寸法測定装置を用いているが、本発明は、眼寸法測定装置に限ったものではなく、測定光学系とアライメント光学系とを備えた眼科装置であれば、採用することが可能である。
【0024】
先ず、本発明に係る眼科装置の一例である眼寸法測定装置1の全体構成について、
図1を参照して説明する。
【0025】
図1は、眼寸法測定装置1の全体構成を説明する図である。眼寸法測定装置1は、(
図2に示す)測定部10が収められる測定ヘッド2と、モニタ5や(
図3で示す)演算装置80などが収められる制御部3および前方位置にジョイスティック6が設けられ、(
図3で示す)X軸駆動装置82、Y軸駆動装置83やZ軸駆動装置84などが収められるベース4とからなる装置本体7と、から構成される。測定する際は、患者眼である(
図2に示す)被検眼100を測定ヘッド2の後方位置に配置し、検者はモニタ5に表示される被検眼100を観察しながら、ベース4に設けられたジョイスティック6を操作して、測定ヘッド2を、装置本体7に対して、左右、上下および前後に移動させることにより、被検眼100に対して測定ヘッド2内の測定部10をアライメントして被検眼100の測定を行う。尚、
図1は眼寸法測定装置1の全体構成を模式的に示した模式図であり、本明細書で説明しない構成については省略されている。
【0026】
次に、眼寸法測定装置1の測定部10の光学系について、
図2を参照して説明する。
【0027】
図2は測定部10の光学系の概略構成を説明する図である。
図2に示すように、眼寸法測定装置1の測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対する測定部10の左右上下方向であるXY方向の位置を検出するXYアライメント光学系60と、被検眼100に対する測定部10の眼軸方向であるZ方向の位置を検出するZアライメント光学系70と、被検眼100を固視させる固視光学系75と、から構成される。
【0028】
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26とによって構成されている。
【0029】
光源12は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0030】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構16と、ミラー46と、ダイクロイックミラー48とによって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構16、ミラー46、及びダイクロイックミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ダイクロイックミラー48、ミラー46、焦点調整機構16、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。0点調整機構30と焦点調整機構16については、後で詳述する。
【0031】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22とによって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の眼科装置では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0032】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0033】
観察光学系50は、被検眼100の前方に配置される光源51、52と、ダイクロイックミラー48と、ダイクロイックミラー66と、レンズ53と、撮像素子54とによって構成されている。光源51、52は、被検眼100の前眼部を照射し、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された光源51、52の反射光)は、ダイクロイックミラー48、ダイクロイックミラー66、レンズ53を介して撮像素子54に導かれる。これにより、撮像素子54は、被検眼100の前眼部を撮影する。撮像素子54で撮影された被検眼100の前眼部の画像は、制御部3のモニタ5に表示される。尚、観察用の光源の数や配置については、本実施例に限定するものではなく、測定ヘッドの形状なども考慮し、適宜、設定することができる。また、撮像素子54については、2次元CCD素子などが採用可能である。
【0034】
XYアライメント光学系60は、光源61と、ダイクロイックミラー63と、レンズ64と、ダイクロイックミラー65と、ダイクロイックミラー66と、ダイクロイックミラー48と、レンズ67と、位置センサ68とによって構成されている。光源61から出射された光は、ダイクロイックミラー63、レンズ64、ダイクロイックミラー65、ダイクロイックミラー66、ダイクロイックミラー48を介して、被検眼100の角膜102に照射し、角膜102からの反射光は、ダイクロイックミラー48、ダイクロイックミラー66、ダイクロイックミラー65、レンズ67を介して位置センサ68に導かれる。被検眼100の角膜102に照射した光源61の光は、角膜上で輝点が生成される。角膜上で生成された輝点の位置を、位置センサ68により検出することにより、被検眼100に対する測定部10のXY方向の位置を検出することができる。尚、位置センサ68には、プロファイルセンサなどが採用可能である。
【0035】
Zアライメント光学系70は、光源71と、レンズ72と、位置センサ73とによって構成されている。光源71から出射された光は、被検眼100に対し斜めの方向から照射される。被検眼100からの光源71の反射光はレンズ72を介して位置センサ73に導かれる。位置センサ73で検出された位置情報により、被検眼100に対する測定部10のZ方向の位置を検出することができる。尚、位置センサ73には、プロファイルセンサなどが採用可能である。
【0036】
固視光学系75は、光源62と、ダイクロイックミラー63と、レンズ64と、ダイクロイックミラー65と、ダイクロイックミラー66と、ダイクロイックミラー48とによって構成されている。固視光学系75の光源62には、可視光が用いられ、光源62から出射された光を被検者が凝視することにより、被検眼100は固視される。尚、光源62には、例えば525nmの波長のLEDなどが採用可能である。
【0037】
ここで、ダイクロイックミラー48は、干渉光学系14の光源12からの光を反射する一方で、観察光学系50の光源51、52からの光やXYアライメント光学系60の光源62からの光、固視光学系75の光源62からの光を透過する。また、ダイクロイックミラー66は、観察光学系50の光源51、52からの光、XYアライメント光学系60の光源62からの光および固視光学系75の光源62からの光の一部を反射する一方で、他の一部を透過する。また、ダイクロイックミラー65は、XYアライメント光学系60の光源61からの光と固視光学系75の光源62からの光の一部を反射する一方で、他の一部を透過する。また、ダイクロイックミラー63は、固視光学系75の光源62からの光を反射する一方で、XYアライメント光学系60の光源61からの光を透過する。このため、本実施例の眼寸法測定装置1では、被検眼100を固視させながら、干渉光学系14による測定と、観察光学系50による前眼部の観察と、XYアライメント光学系60およびZアライメント光学系70によるアライメントとを同時に行うことができる。
【0038】
次に、測定光学系に設けられる0点調整機構30と焦点調整機構16について説明する。0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28、34に対して進退動させる第2駆動装置86(
図3に図示)を備えている。第2駆動装置86がコーナキューブ32を
図2の矢印Aの方向に駆動することで、光源12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。ここで説明する0点とは
図13に示すように、参照光路長(詳細には、光源12~参照ミラー22+参照ミラー22~受光素子26)と物体光路長(詳細には、光源12~検出面+検出面~受光素子26)が一致する位置であり、干渉光を用いた測定装置ではこの0点を基準に深さ方向(本実施例では被検眼の網膜方向)の干渉信号を取得する。
【0039】
0点に近いほど干渉光の強度は大きいため、本実施例のような被検眼100の角膜102から網膜106までの測定を行う場合は、通常、
図13に示すように被検眼の角膜の少し手前の位置(
図13に示す被検眼100からΔZ前方の位置)に0点が来るように0点調整機構30により調整される。尚、本実施例における0点調整機構30は、0点位置を角膜102の表面から網膜106の表面までの距離で移動できるように構成されている。
【0040】
焦点調整機構16は、レンズ42と、当該レンズ42に対し、被検眼100側に配置されるレンズ44に対してレンズ42を光軸方向に進退動させる第1駆動装置85(
図3に図示)と、を備えている。レンズ42とレンズ44は、光軸上に配置され、入射する平行光の焦点の位置を変化させる。すなわち、第1駆動装置85がレンズ42を
図2の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化する。具体的には、レンズ44から照射される光が平行光となるようにレンズ42とレンズ44との間隔を調整した状態から、レンズ42をレンズ44から離れる方向に移動させると、レンズ44から照射される光は収束光となり、レンズ42をレンズ44に近づく方向に移動させると、レンズ44から照射される光は発散光となる。このため、レンズ42を移動して、レンズ42とレンズ44との間隔を調整することで、
図14(a),(b)に示すように、正常視の被検眼100に対して、照射される光の焦点の位置を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。また、
図14(c)、(d)に示す近視眼に対しても、照射される光の焦点の位置が網膜106の位置となるように調整することができる。このように、被検眼100に照射される光の焦点の位置を被検眼100の角膜102の表面や網膜106の表面に一致させることで、これらの面から反射される光の強度を強くでき、これらの面の位置を精度よく検出することができる。
【0041】
また、本実施例の眼寸法測定装置1では、干渉光学系14の光軸MLのずれを補正するため、
図2の矢印Cに示すようにレンズ44を上下左右(XY)方向に移動する光軸調整機構40と、光軸調整機構40を駆動する第3駆動装置87(
図3に図示)を備えている。光軸調整機構40による干渉光学系14の光軸MLのずれ補正については、後で詳述する。
【0042】
次に、本実施例の眼寸法測定装置1の制御系の構成を説明する。
図3に示すように、眼寸法測定装置1は演算装置80によって制御される。演算装置80は、(図示しない)CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置80には、干渉光学系14と、観察光学系50と、XYアライメント光学系60と、Zアライメント光学系70と、第1駆動装置85と、第2駆動装置86と、第3駆動装置87と、モニタ5と、メモリ81と、X軸駆動装置82と、Y軸駆動装置83と、Z軸駆動装置84と、ジョイスティック6とが接続されている。演算装置80は、干渉光学系14、観察光学系50、XYアライメント光学系60、Zアライメント光学系70の各光学系の光源(光源12、光源51、光源52、光源61、光源62、光源71)のオン/オフの制御や、焦点調整機構16、0点調整機構30、光軸調整機構40を駆動する、第1駆動装置85、第2駆動装置86、第3駆動装置87の制御を行う。また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される被検眼100の前眼部の画像をモニタ5に表示する。さらに、演算装置80は、干渉光学系14の受光素子26が接続され、受光素子26で検出される、干渉光の強度に応じた干渉信号が入力される。演算装置80は、受光素子26から入力される干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。
【0043】
次に、本実施例の眼寸法測定装置1を用いて、被検眼100の各部位の位置を特定して眼寸法を測定する手順を、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施例に係る眼寸法測定装置1の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS10で、ジョイスティック6を操作して被検眼100に対して測定ヘッド2を粗アライメントする。
【0045】
図5は、モニタ5の表示画面110に表示される被検眼100の前眼部の画像を示した図である。モニタ5の表示画面110上には、例えばスーパーインポーズ信号などによって生成された、矩形枠形状のアライメントパターン112が、被検眼100に重ねて表示される。それと共に、XYアライメント光学系60の光源61から被検眼100に向けて照射された光が、被検眼100の前眼部で反射されて、撮像素子54に導かれることによって、モニタ5の表示画面110に、点状の輝点114として表示される。検者が、ジョイスティック6を操作して、測定ヘッド2を上下左右および前後に移動させて、モニタ5の表示画面110に表示される輝点114がアライメントパターン112の中に入ると粗アライメントは終了する。
【0046】
粗アライメントが終了すると、ステップS11で、XYアライメント光学系60、Zアライメント光学系70、X軸駆動装置82、Y軸駆動装置83、Z軸駆動装置84により、被検眼100に対して測定ヘッド2をXYZ方向にオートアライメントが実施される。
【0047】
XYアライメント光学系60の光源61から照射されて、被検眼100の前眼部で反射された光の一部は、ダイクロイックミラー66およびダイクロイックミラー65で反射されて、位置センサ68に導かれる。ステップS10で、光源61が被検眼100の前眼部に照射して生成された輝点114がモニタ5の表示画面110に表示されるアライメントパターン112の枠内に入ると、位置センサ68は、光源61から出射されたアライメント光の光軸AL(
図2に図示)のX方向の位置とY方向の位置を検出することが出来るようにされている。かかるX方向の位置とY方向の位置は、演算装置80に入力される。また、Zアライメント光学系70の光源71から出射し被検眼100の前眼部に照射した光は、被検眼100の前眼部で反射して位置センサ73に導かれ、被検眼100に対する測定ヘッド2のZ方向の位置を検出し、かかるZ方向の位置は、演算装置80に入力される。
【0048】
演算装置80は、入力されたX方向の位置、Y方向の位置およびZ方向の位置に基づいて、ベース4内のX軸駆動装置82、Y軸駆動装置83およびZ軸駆動装置84を駆動制御して、アライメント光の光軸AL(
図2に図示)が被検眼100の角膜102の角膜頂点に位置するように、被検眼100に対して測定ヘッド2をXYZ方向にオートアライメントする。
【0049】
次に、ステップS12で、0点位置を調整する。0点位置の調整は、上述のように、0点位置が被検眼100からΔZの前方位置に来るように0点調整機構30を制御する。その後、被検眼100の測定を開始する。
【0050】
ステップS13で、被検眼100の干渉信号を取得する。被検眼100の干渉信号は、上述にように、干渉計20の受光素子26で検出し、演算装置80に入力される。
【0051】
ステップS14で、演算装置80に入力された干渉信号をフーリエ変換する。そして、ステップS15で、フーリエ変換されたデータ(「Aスキャン像」と呼ぶ)から、被検眼100の対象部位(例えば、角膜、水晶体、網膜など)を特定し、各眼寸法値を算出し、ステップS16で、ステップS15で算出した各眼寸法値をモニタ5の表示画面110に表示する。尚、
図6は、受光素子26で検出した干渉信号をフーリエ変換して被検眼100の対象部位(例えば、角膜、水晶体、網膜など)を特定する手順を示した図である。
【0052】
本実施例の眼寸法測定装置1では、測定光学系である干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させて、被検眼100に照射するように組み立て時に調整されている。すなわち、上述のステップS11で、XYZ方向にオートアライメントして、アライメント光学系の光軸ALを被検眼100の角膜102の角膜頂点に合致させると、測定光学系である干渉光学系14の光軸MLも被検眼100の角膜102の角膜頂点に合致させることができる。これにより、被検眼100の対象部位(例えば、角膜、水晶体、網膜など)が正確に特定することができて、眼寸法の値を正確に算出することができるのである。
【0053】
しかしながら、上述のように、温度等の影響による干渉光学系14を構成するミラー等の部品の歪みや、外部からの衝撃、部品等の経年劣化などにより干渉光学系14の光軸MLがずれてしまうことがある。
図7には、その例を示す。
図7の(a)は、干渉光学系14の光軸MLがアライメント光学系の光軸ALに対して平行にずれた例を示したものであり、
図7の(c)は、干渉光学系14の光軸MLがアライメント光学系の光軸ALに対して斜めにずれた例を示したものである。このように、干渉光学系14の光軸MLがアライメント光学系の光軸ALに対してずれると、アライメント光学系により、アライメント光学系の光軸ALを被検眼100の角膜頂点位置にアライメントしても、干渉光学系14の光軸MLは、被検眼100の角膜頂点位置から外れてしまい、そのため、正確に被検眼100の測定ができず、誤った測定結果を表示してしまう恐れがある。以下に、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとのずれ量を検出する手順と検出したずれ量から、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させる手順とを説明する。尚、アライメント光学系には、XYアライメント光学系60とZアライメント光学系70とがあるが、XYアライメント光学系60とZアライメント光学系70との光軸は同じであるため、上述では、XYアライメント光学系60とZアライメント光学系70とを総称してアライメント光学系と記述したが、以下についても、XYアライメント光学系60とZアライメント光学系70とを総称してアライメント光学系と記述する。
【0054】
まず、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとのずれ量を検出する手順について、
図8および
図9を参照して説明する。
【0055】
図8は、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとのずれ量を検出する手順の一例を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS20で、被検眼100の位置に基準眼をセットする。本実施例では、人眼に摸した模擬眼200を被検眼100の代わりにセットする。模擬眼200は、少なくとも干渉光学系14の光源12からの光が照射する面は、人眼の角膜の標準的な曲率半径を持つ球面状の角膜部202(
図9に図示)に形成されている。これにより、
図6に示す被検眼100に代えてセットした模擬眼200の角膜部202の干渉信号を取得することができる。また、模擬眼200には、ガラス部材、樹脂部材、金属部材など様々な材質を採用することができる。尚、本実施例では、模擬眼200を採用するが、角膜の状態が正常であれば被検眼100と同様、人眼を基準眼として採用することも可能である。
【0057】
次に、ステップS21で、模擬眼200に対して、測定ヘッド2をXYZアライメントして、アライメント光学系の光軸ALを模擬眼200に設けられた角膜部202の頂点に合致させる。アライメントの方法については、上述した被検眼100の眼寸法測定時と同様であるので、詳細は省略する。
【0058】
ステップS22で、XYアライメント光学系60の位置センサ68により、アライメント光学系の光軸ALを模擬眼200の角膜部202の頂点に合致した時のX方向およびY方向の位置を検出し、XY座標の値(X0、Y0)としてメモリ81に保存する。
【0059】
ステップS23で、光軸調整機構40で干渉光学系14の光軸MLに対して上下左右(XY)方向に移動するレンズ44の光学中心を光軸MLに設定する。本実施例では、
図11に示すVCM(ボイスコイルモータ)120を用いてレンズ44を光軸MLに対して上下左右(XY)方向に移動させる。これにより、下述するように、干渉光学系14の光軸MLを移動して、アライメント光学系によりアライメントした状態で、干渉光学系14の光源12の光は被検眼100の角膜頂点に入射させることができる。尚、本実施例では、光軸調整機構40に、レンズ44を上下左右(XY)方向に簡易な構成で移動できるVCMを採用したが、光軸調整機構40はVCMに限定するものでなく、例えば、焦点調整機構16で用いた機構を2つ、互いに垂直に配置して、レンズ44を上下左右(XY)方向に移動することも可能である。また、レンズ44は固定し、レンズ44の被検眼100側にガルバノミラーまたは2軸走査MEMSミラーなどを配置して干渉光学系14の光軸MLを、上下左右(XY)方向に移動させることも可能である。
【0060】
ステップS24で、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させる範囲と間隔を設定する。
図9は、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させる範囲と間隔の一例を示す図である。
【0061】
図9の(a)は、モニタ5の表示画面110に表示された模擬眼200の画像を示した図である。模擬眼200の画像は、観察光学系50の撮像素子54で撮像される。ステップS21で、測定ヘッド2をXYZアライメントしているため、XYアライメント光学系60の光源61が模擬眼200の角膜部202に照射して生成される輝点114は模擬眼200の角膜部202の頂点位置に表示される。測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させる範囲として、模擬眼200の角膜部202の頂点位置(すなわち、ステップS22でメモリ81に保存されたXY座標の値(X0、Y0))を中心とする、四角形状の範囲エリア130を設定する。そして、
図9の(b)に示すようにX方向及びY方向に移動する間隔dXおよびdYを設定する。
【0062】
図9の(b)は、範囲エリア130の拡大図である。本実施例では、
図9の(b)に示すように、X方向の移動間隔dX、Y方向の移動間隔dYを設定し、XY座標(X0-2dX、Y0+2dY)であるP1の位置からXY座標(X0+2dX、Y0-2dY)であるP25の位置まで、輝点114が移動するように、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させる。
【0063】
ステップS25で、測定ヘッド2を移動する。最初は、輝点114がXY座標(X0-2dX、Y0+2dY)であるP1の位置に来るように、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させる。
【0064】
ステップS26で、干渉光学系14により干渉信号を取得してフーリエ変換する。そして、ステップS27で、フーリエ変換したAスキャン像から角膜前ピークの値を取得する。
【0065】
そして、ステップS27で取得した角膜前ピークの値とXY座標の値(P1であれば(X0-2dX、Y0+2dY))をメモリ81に保存する。
【0066】
ステップS29では、ステップS24で設定した測定位置(P1からP25)の全ての位置で測定したか否かを判断する。測定ヘッド2の移動はP1の位置からP25の位置まで移動するため、ここでは、具体的にはP25の位置で測定したか否かを判断する。P25の位置で測定した場合(YES)は、測定を終了する。P25の位置まで移動していない場合(NO)は、ステップS25に戻り、測定ヘッド2を移動する。
【0067】
次に、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させる手順について、
図10を参照して説明する。
図10は干渉光学系の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させる手順の一例を示すフローチャートである。
【0068】
まず、ステップS30で、メモリ81に保存された、P1の座標位置からP25の座標位置まで各座標位置で取得した角膜前ピークの値の中から最大値を抽出する。
【0069】
次に、ステップS31で、ステップS30で抽出した角膜前ピークの値の最大値のXY座標(X1、Y1)を取得する。具体的には、P1の座標位置からP25の座標位置までの間に取得した25個の角膜前ピークの値の中から角膜前ピークの値が最大値である座標位置(P1からP25の1つ)を取得する。例えば、P1の座標位置の時に角膜前ピークの値が最大値である場合は、P1の座標位置(X0-2dX、Y0+2dY)が角膜前ピークの値の最大値のXY座標(X1、Y1)となる。
【0070】
ステップS32で、上述のステップS22で取得した模擬眼200の角膜部202の頂点位置のXY座標(X0、Y0)との差(X1-X0、Y1-Y0)を算出する。ここで算出された座標の差(X1-X0、Y1-Y0)が、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量となる。干渉光学系14の光源12からの光が模擬眼200の角膜部202の頂点位置に照射した場合に、角膜部202からの反射光の強度が最大になるため、上述のように、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させながら、角膜部202から得られる干渉信号の強度を取得して、干渉信号の最大値を検出することにより、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量を求めることができるのである。
【0071】
ステップS33で、ステップS32で算出した干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量からVCM120によるレンズ44の上下左右(XY)方向の移動量を算出する。本実施例では、干渉光学系14の光軸とアライメント光学系の光軸との光軸ずれ量とレンズ44の上下左右(XY)方向の移動量との関係は予め算出されてメモリ81に保存されている。メモリ81に保存されている干渉光学系14の光軸とアライメント光学系の光軸との光軸ずれ量とレンズ44の上下左右(XY)方向の移動量との関係から、レンズ44の上下左右(XY)方向の移動量を求めることができる。
【0072】
ステップS34で、ステップS33で求めたレンズ44の上下左右(XY)方向の移動量に基づいて、演算装置80は、第3駆動装置87を駆動して光軸調整機構40であるVCM120を制御し、レンズ44を上下左右(XY)方向に移動する。これにより、干渉光学系14の光軸MLが移動して、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させる。
【0073】
図7の(b)および(d)には、レンズ44を上下左右(XY)方向に移動して干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させた例を示す。すなわち、上述に示す干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれを検出し、光軸調整機構40により干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させることにより、アライメント光学系の光軸ALを被検眼100の角膜102の角膜頂点位置にアライメントすることにより、干渉光学系14の光源12からの光が被検眼100の角膜102の角膜頂点位置に照射させることができる。これにより、干渉光学系14による被検眼100の測定が、正確に行うことができて、眼寸法の値が正確に算出することができるのである。
【0074】
図11は、本実施例で採用したVCM(ボイスコイルモータ)120を示した図である。VCM120は互いに120度で交差するA軸、B軸およびC軸の3つの移動軸を備えており、これら3つの移動軸を制御することにより、VCM120の中心に配置したレンズ44を上下左右(XY)方向に移動させることができる。このように、光軸調整機構40にVCM120を採用することにより、簡易な構成で、レンズ44を上下左右(XY)方向に移動させて、干渉光学系14の光軸MLの位置を調整することができる。
【0075】
図12は、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを光軸ずれをさらに厳密に検出する方法を示す図である。
図12では、P19の座標位置で角膜前ピークの値が最大値になった例である。
図12の(a)に示すように、P19を中心に四角形状の範囲エリア131を設定し、
図12の(b)に示すように、範囲エリア131内で上述の間隔dX、dYより小さな間隔dX’、dY’の間隔で測定ヘッド2を模擬眼200に対して移動して、角膜前ピークの値が最大値になる座標位置を再度検出することにより、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを光軸ずれをさらに厳密に検出することができる。尚、
図12(b)は、範囲エリア131を拡大した図である。このような操作を重ねることにより、より高い精度で干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを光軸ずれを検出することができる。これにより、干渉光学系14の光軸MLを高い精度で移動調整することができる。
【0076】
このように、本発明にかかる眼寸法測定装置1では、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを光軸ずれ量を検出し、検出した光軸ずれ量に基づいて、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとが一致するように、光軸調整機構40により干渉光学系14の光軸MLを調整できることから、光軸ずれが生じても、測定ヘッド2などを解体することなく、光軸調整をすることができる。
【0077】
また、上述の実施例では、検出した干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量に基づいて、干渉光学系14の光軸MLがアライメント光学系の光軸ALと一致するように干渉光学系14の光軸MLを移動させたが、必ずしも、干渉光学系14の光軸MLをアライメント光学系の光軸ALと一致させる必要はない。例えば、光軸ずれ量により測定値を補正することが可能な場合は、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量を求めるだけでよい。また、眼科装置によっては、光軸ずれの補正が困難な場合もある、このような場合、検出した光軸ずれ量が許容範囲を超えている場合は、モニタ5の表示画面110に警告表示をすることにより、誤測定を未然に防止することができる。
【0078】
ここで、眼寸法測定装置1は眼科装置の一例であり、光源12は測定光源の一例であり、受光素子26は受光手段の一例であり、光源61、光源71はアライメント光源の一例であり、位置センサ68、位置センサ73は検出手段の一例であり、X軸駆動装置82、Y軸駆動装置83、Z軸駆動装置84は移動手段の一例であり、光軸調整機構40は測定光軸移動手段の一例であり、VCM120はVCMの一例であり、模擬眼200は模擬眼の一例である。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0080】
上記実施例では、測定光学系である干渉光学系14の光軸MLを光軸調整機構40により移動して、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させたが、アライメント光学系の中に光軸調整機構40のように光軸ALを移動する移動手段を設けてもよい。アライメント光学系の光軸ALがずれやすい場合は、光軸ずれの要因がアライメント光学系にある場合がある。このような場合、アライメント光学系の光軸ALを移動させて、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとを一致させる方が効果的である。
【0081】
さらに、光軸調整機構40のような光軸移動手段を干渉光学系14およびアライメント光学系の両方に設けてもよい。例えば、光軸ずれ量が大きい場合は、一方の移動手段では、光軸ずれを解消できない恐れがある。両方で光軸が移動可能であれば、光軸ずれ量が大きい場合でも、光軸ずれを解消することができる。また、光軸ずれの状態により、干渉光学系14とアライメント光学とのいずれかを選択して光軸を移動することができることから、より効果的に光軸ずれを解消することができる。
【0082】
また、上記実施例では、測定ヘッド2を模擬眼200に対して上下左右(XY)方向に移動させて、角膜前ピークの値が最大値になる座標位置を求め、干渉光学系14の光軸MLとアライメント光学系の光軸ALとの光軸ずれ量を算出したが、例えば、光軸ずれ量が小さい場合は、測定ヘッド2をアライメントした状態で、光軸調整機構40のVCM120を制御してレンズ44を上下左右(XY)方向に移動させて、角膜前ピークの値が最大値になる座標位置を求め、光軸ずれ量を算出してもよい。測定ヘッド2の移動がないため、簡易に位置ずれ量を算出することができる。
【符号の説明】
【0083】
1・・眼寸法測定装置
2・・測定ヘッド
5・・モニタ
7・・装置本体
10・・測定部
12、51、52、61、62、71・・光源
14・・干渉光学系
16・・焦点調整機構
30・・0点調整機構
40・・光軸調整機構
50・・観察光学系
60・・XYアライメント光学系
70・・Zアライメント光学系
100・・被検眼
120・・VCM
200・・模擬眼