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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】音響建造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20221118BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20221118BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20221118BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
E04B1/86 P
E04B1/343 Q
E04H1/12 302C
E04B1/82 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018132325
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020007873
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】508033753
【氏名又は名称】株式会社ナイスカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(74)【代理人】
【識別番号】100198661
【弁理士】
【氏名又は名称】久保寺 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐山 元章
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-155797(JP,A)
【文献】特開2004-183319(JP,A)
【文献】特開2015-151684(JP,A)
【文献】特開2016-204934(JP,A)
【文献】特開2009-215787(JP,A)
【文献】特開2012-093711(JP,A)
【文献】特開2012-097452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82-1/86
E04B 1/343
E04H 1/12
E04B 5/43
E04F 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床壁と、
側壁と、
天壁と、
前記床壁上に設けられ、前記床壁と離間して設けられた骨組部材と、
前記骨組部材上に、前記側壁と離間して設けられた積層床と、
前記側壁と前記骨組部材との間に、前記側壁と離間して設けられた第1の弾性体と、を有し、
前記側壁と前記第1の弾性体との間の距離は、前記側壁と前記積層床の端部との間の距離よりも小さく、
前記骨組部材は、前記床壁と前記積層床との間に前記床壁と平行な板部材を有し、
前記板部材と前記床壁の間に第2の弾性体が設けられ
前記板部材は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されておらず、
前記第2の弾性体は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されていないことを特徴とする音響建造物。
【請求項2】
前記側壁及び前記天壁は、内壁及び外壁を有し、前記内壁は積層体であることを特徴とする請求項1に記載の音響建造物。
【請求項3】
前記内壁と前記外壁との間に防音材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の音響建造物。
【請求項4】
前記床壁、前記側壁及び前記天壁を含む全体構造が輸送用のコンテナ状であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の音響建造物。
【請求項5】
前記積層床は、分割された複数の部材からなる層が積層してなり、前記複数の部材間の境界が層間で不一致であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の音響建造物。
【請求項6】
前記積層床は、各層における前記複数の部材間の境界がパターン化していることを特徴とする請求項5に記載の音響建造物。
【請求項7】
前記第1の弾性体は、間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の音響建造物。
【請求項8】
床壁と、
側壁と、
天壁と、
前記床壁上に設けられ、前記床壁と離間して設けられた骨組部材と、
前記骨組部材上に、前記側壁と離間して設けられた積層床と、
前記側壁と前記骨組部材との間に設けられた第1の弾性体と、を有し、
前記第1の弾性体は、前記側壁と前記積層床が接触することを防ぎ、
前記骨組部材は、前記床壁と前記積層床との間に前記床壁と平行な板部材を有し、
前記板部材と前記床壁の間に第2の弾性体が設けられ、
前記板部材は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されておらず、
前記第2の弾性体は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されていないことを特徴とする音響建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防音、遮音の効果を有する音響建造物が望まれており、防音、遮音の効果がより高く、また簡易に建造することが望まれている。従来技術として、例えばコンテナを防音室として利用する提案がなされており、防音対策、防振対策を目的としたAVシアターが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、底壁と側壁との間に間隙を形成することにより、底壁から側壁に向かう振動を遮断することができるとしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1では、横方向(地面と平行な方向)の振動について十分に考慮されておらず、横方向の振動によって弾性体の劣化が進み、経時により防音・防振の効果が減少してしまう。また、底壁について十分に考慮されておらず、底壁から透過した特定の周波数の音が地面に反射した後に側壁に伝播して音が漏れることが懸念される。また、防音室を利用する場所を変えたいという要求があるが、従来技術では設置した場所から移動させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-93711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防音及び遮音の効果が得られるとともに、移動可能な音響建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の音響建造物は、床壁と、側壁と、天壁と、前記床壁上に設けられ、前記床壁と離間して設けられた骨組部材と、前記骨組部材上に、前記側壁と離間して設けられた積層床と、前記側壁と前記骨組部材との間に、前記側壁と離間して設けられた第1の弾性体と、を有し、前記側壁と前記第1の弾性体との間の距離は、前記側壁と前記積層床の端部との間の距離よりも小さく、前記骨組部材は、前記床壁と前記積層床との間に前記床壁と平行な板部材を有し、前記板部材と前記床壁の間に第2の弾性体が設けられ、前記板部材は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されておらず、前記第2の弾性体は、前記床壁と前記骨組部材の間に配置されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防音及び遮音の効果が得られるとともに、移動可能な音響建造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】音響建造物の一例を示す斜視図である。
図2】音響建造物の一例を示す平面図である。
図3】音響建造物の一例を示す断面図である。
図4】側壁の一例を示す断面図である。
図5】鉄骨、第1の弾性体及び第2の弾性体の配置の一例を示す平面図である。
図6】音響建造物の一例を示す他の要部断面図である。
図7】音響建造物の一例を示す他の要部断面図である。
図8】音響建造物の一例を示す他の要部断面図である。
図9】積層床の一例における一つの層を示す平面図である。
図10】積層床の一例における他の層を示す平面図である。
図11】積層床の一例における他の層を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る音響建造物について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
本発明の音響建造物は、床壁と、側壁と、天壁と、前記床壁上に設けられ、前記床壁と離間して設けられた骨組部材と、前記骨組部材上に、前記側壁と離間して設けられた積層床と、前記側壁と前記骨組部材との間に、前記側壁と離間して設けられた第1の弾性体と、を有し、前記側壁と前記第1の弾性体との間の距離は、前記側壁と前記積層床の端部との間の距離よりも小さく、前記骨組部材は、前記床壁と前記積層床との間に前記床壁と平行な板部材を有し、前記板部材と前記床壁の間に第2の弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0011】
図1は、本実施形態の音響建造物1の外観斜視図である。ここでは、床壁40、側壁20、天壁70、外部扉52等が図示されている。本実施形態の音響建造物は床壁40、側壁20及び天壁70を含む全体構造が輸送用のコンテナ状である。
【0012】
図2は、本実施形態の音響建造物の平面図である。本実施形態では、内部扉51と外部扉52を有しており、内部扉51を防音扉としている。また、外部扉52の内側にパネル領域53を設けている。パネル領域53には、例えばエアコンの室外機や電源パネル等を設けることができる。
【0013】
図3は、本実施形態の音響建造物の断面図であり、図2のA-A断面に相当する。必要に応じて、側壁20の内側に、鏡28や吸音パネル29等を取り付けてもよい。吸音パネル29の設置面積、材質等は、利用目的に応じて適宜変更する。例えば、楽器演奏における楽器の種類等に応じて変更させることができる。また、C型鋼などを含めて床壁40としてもよい。
【0014】
図4は、本実施形態における側壁20を示す断面図である。本実施形態における側壁20は、内壁21、外壁22及びその間に設けられた防音材23で構成されている。防音材23により、防音、遮音の効果をより高めることができる。
【0015】
内壁21は、例えば木材の合板を用いることができ、1層でもよいし、複数の層であってもよい。中でも、複数の層、すなわち積層体であることが好ましい。積層体である場合、より防音、遮音の効果を高めることができる。
【0016】
外壁22は、例えば鉄板(例えばコルゲート板)を用いることができ、その厚みは必要に応じて適宜変更することができる。本実施形態では、一般の輸送用のコンテナにおける鉄板の厚みよりも大きくしている。これにより、防音効果、遮音効果をより高めることができる。
【0017】
また、図示を省略しているが、天壁70も側壁20と同様に、内壁、外壁を有していることが好ましく、天壁70の内壁が積層体であることが好ましい。また、内壁と外壁の間に防音材を設けることが好ましい。
【0018】
本実施形態において、床壁40、側壁20及び天壁70を含む全体構造が輸送用のコンテナ状となっており、輸送用のコンテナ状であることにより輸送が簡易になる。例えば、第1の孔61(フォークリフトのツメ用の孔)、第2の孔62(吊り上げ用の孔)を有することにより、音響建造物をより簡易に移動させることができる。
【0019】
図5は、本実施形態の音響建造物を示す平面図であり、鉄骨、第1の弾性体及び第2の弾性体の配置の一例を示す図である。本実施形態では、骨組部材として鉄骨10が用いられており、格子状となっている。
【0020】
第1の弾性体11は、間隔をおいて複数設けられており、本実施形態では10個設けられている。第1の弾性体11の個数、位置、設置される間隔は、これに限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0021】
図6は、本実施形態を示す要部断面模式図であり、図5のB-B断面に相当する。図示されるように、本実施形態では、側壁20と鉄骨10との間に第1の弾性体11が設けられており、側壁20と第1の弾性体11との間の距離(図中(b))は、側壁20と積層床30の端部との間の距離(図中(a))よりも小さくなっている。
【0022】
これにより、積層床30が横方向(床壁40と平行な方向)に振動した場合でも、積層床30が側壁20に接触する前に第1の弾性体11が接触するため、積層床30が側壁20に接触することを防ぐことができる。このため、本実施形態の音響建造物の使用時や移送時における積層床の横振動による劣化を抑制することができる。
【0023】
また、第1の弾性体11を用いることにより、積層床30の横方向の揺れ幅を調整することができ、過度に振動することを抑制できる。一方、積層床30の横方向の揺れ幅が大きいと、積層床30が劣化したり、積層床30と底壁40との間に設けた第2の弾性体(後述)が劣化しやすくなってしまう。
【0024】
側壁20と第1の弾性体11との間の距離(図中(b))は、積層床30の質量や第1の弾性体11の材質等により適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態では、側壁20と第1の弾性体11との間の距離を5mmとしている。また、側壁20と積層床30の端部との間の距離(図中(a))を20mmとしている。
【0025】
本実施形態の第1の弾性体11は、鉄骨10に接着されており、床壁40とは離間して設けられている。床壁40と離間させることにより第1の弾性体11と床壁40との摩擦を抑制できる。また、本実施形態の第1の弾性体11は積層床30と離間して設けられているが、これに限られるものではなく、積層床30に接していてもよい。
【0026】
図6に示される例では、鉄骨10は床壁40から離間して設けられており、これは後述の第2の弾性体12が設けられているためである。鉄骨10が床壁40と離間していることにより、積層床30からの振動が側壁20に伝わることをより防ぐことができる。しかし、鉄骨10の配置はこれに限られるものではなく、床壁40に接していてもよい。
【0027】
なお、音響建造物を移動させる場合、積層床30を固定するために、例えばL字クランプ等の固定部材を用いてもよい。この場合、移動時の劣化をより防ぐことができる。
【0028】
一方で、例えば特許文献1では、底壁と地面との間に弾性体を設ける構成が開示されているが(特許文献1の図9)、この場合、側壁と底壁とが分離しており、設置した場所からコンテナを移動させることが難しい。また、特許文献1の図4に示される構造の場合、仮にフォークリフト用の孔があったとしても、フォークリフトのツメが浮かせた床に接触することが懸念され、防音効果、防振効果に影響を与えてしまうため、一体として移動させることが難しい。
【0029】
図7は、本実施形態を示す要部断面模式図であり、図5のC-C断面に相当する。図示されるように、床壁40上に鉄骨10が離間して設けられ、鉄骨40上に積層床30が設けられている。積層床30は側壁20と離間して設けられており、積層床30が側壁20と離間していることにより、積層床30の振動が側壁20に伝播することを防止できる。
【0030】
本実施形態における床壁40は、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、鉄骨とウレタンをあわせたものを用いることができる。また、図3のように、C型鋼などを含めて床壁40としてもよい。
【0031】
図8は、図7における要部拡大模式図である。図示されるように、鉄骨10に床壁40と平行な板部材(鉄板13)が例えば接着により設けられており、第2の弾性体12は鉄板13と床壁40の間に設けられている。また、鉄板13と第2の弾性体12はビス14を用いたビス工法により固定されている。
【0032】
本実施形態において、積層床30は直接接地しておらず、第2の弾性体12上に設けられた浮床構造となっている。これにより、内部の音の共振を防ぐことができる。一方で、第1の弾性体11が設けられていることにより、第2の弾性体12の効果をより発揮することができるとともに、第2の弾性体12の劣化を防止することができる。
【0033】
本実施形態では、鉄骨10が床壁40と離間して設けられている。これは、荷重がかかったときにも離間していることが好ましい。これにより上記の効果がより発揮される。なお、本実施形態では、鉄骨10と床壁40との間の距離は例えば10mmとしている。
荷重がかかったときにも鉄骨10と床壁40とを離間させるには、第2の弾性体12の厚みや種類、設ける個数、配置等を適宜調整すればよい。
【0034】
また、板部材(鉄板13)を用いた構成にすることにより、積層床30と床壁40との距離を鉄骨10の高さ程度に抑えることができ、積層床30が高くなることを抑えることができる。一方、鉄板13を用いずに、第2の弾性体12を鉄骨10の上又は下に配置してもよいが、積層床30の高さが高くなることに留意する。
【0035】
第2の弾性体12を有することにより、積層床30の振動が床壁40を介して側壁20に伝播することを防ぐことができ、側壁20に音や振動が伝播することで生じる音漏れを防ぐことができる。
【0036】
第2の弾性体12の配置位置や個数としては、積層床30や鉄骨10にかかる荷重等を考慮して図5に示されるような配置位置及び個数(15個)としている。図5に示されるような、ばらけた配置とすることにより、積層床30や鉄骨10にかかる荷重をより均等に分散できるようにしている。第2の弾性体12どうしの距離を一定にせず、ばらけた配置とすることにより、特定の周波数だけでなく、複数の周波数の音を吸収することができる。
【0037】
第2の弾性体12としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、市販の防振ゴムを用いることができる。また、大きさ、弾性等は、適宜変更することができる。更に、第2の弾性体12の配置位置や個数としては、上記に限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0038】
本実施形態では、積層床30と床壁40との間に防音材43を設けている。これにより、音が積層床30と床壁40との間で反射して増幅されることを防ぎ、防音効果を高めることができる。
【0039】
上述のように、側壁20と第1の弾性体11との間の距離(図中(b))は、側壁20と積層床30との間の距離(図中(a))よりも小さくなっている。一方、側壁20と積層床30との間の距離(図中(b))が、側壁20と第1の弾性体11との間の距離(図中(a))以下の場合、積層床30が横方向に振動した場合に側壁20と接触・衝突してしまう。積層床30が側壁20と接触・衝突すると、積層床30の振動が側壁20に伝播したり、積層床30の横方向の振動によって、第2の弾性体12に負荷がかかり、第2の弾性体12の劣化が加速したりする等の問題が生じる。
【0040】
図9図11は、積層床の各層を示す平面図である。
積層床の構成は、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。本実施形態の積層床は、床壁から近い順に、第1の木板31、鉄板32及び第2の木板33で構成されている。第1の木板31及び第1の木板33としては、例えば合板を用いることができる。上記の他にも、遮音シート等を設けてもよい。
【0041】
本実施形態のように、積層構造とすることで、高い剛性を有しつつ、防音効果を高めることができる。積層構造とすることにより、特定の周波数の音だけでなく、様々な周波数の音を防ぐことができる。
【0042】
図9図11はそれぞれ第1の木板31、鉄板32及び第2の木板33の平面図を示したものである。なお、鉄骨10を破線で示している。
図示されるように、本実施形態の積層床30は、分割された複数の部材からなる層が積層してなり、複数の部材間の境界が層間で不一致となっている。
【0043】
各層が分割された複数の部材からなることにより、特定の周波数が透過されることを防ぐことができる。各層が一つの部材からなる場合、特定の周波数が透過されやすくなり、積層床30を透過して床壁40、側壁20に伝播し、音漏れが生じやすくなる。
【0044】
複数の部材間の境界が層間で不一致であることにより、音響建造物の内部で生じた異なる周波数の音を効果的に防ぐことができる。境界が層間で一致する場合、特定の周波数が透過されやすくなり、積層床30を透過して床壁40、側壁20に伝播し、音漏れが生じやすくなる。
【0045】
なお、「複数の部材間の境界が層間で不一致」とは、境界が層間で全て一致していないことを意味し、一部が一致していてもよい。また、境界を線としてとらえたとき、層間で線が交わっていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、図示されるように、各層における複数の部材間の境界がパターン化している。「パターン化している」とは、例えば、図9図10に示されるように、全ての部材が規則的に配置されるものや、図11に示されるように、大部分が規則的に配置され、一部が異なる配置となっているものが含まれる。
【0047】
また、各層における複数の部材の面積としては、適宜変更することが可能であり、全て同じ面積としてもよいし、面積をそれぞれ変えてもよい。中でも、面積の異なる部材を少なくとも1つ有していることが好ましく、この場合、部材の面積に対応した周波数の音を吸収できるため、より多くの周波数の音を吸収することができる。また、面積が同じことにより生じる共振をより抑制することができる。
【0048】
本実施形態の積層床は、第1の木板31、鉄板32及び第2の木板33の順に積層されている。このような構成とすることにより、鉄板の収縮によって隙間が生じる等の問題を抑制でき、音漏れをより防ぐことができる。
【0049】
積層数は必要に応じて変更することが可能であるが、各層の厚み、積層床30の質量、防音の効果等を考慮し、本実施形態のように3層とすることが好ましい。適切な積層数にすることで、積層床30が振動しても全体が振動しにくいという利点がある。
【0050】
また、積層数が適切であると、積層床30の質量が大きくなりすぎることを抑えつつ、剛性を高めることができ、特定の周波数の音が伝わって共振することをより防ぐことができる。
【0051】
なお、積層床30における各層の厚みは、適宜変更することが可能であるが、各層の厚みはそれぞれ異なることが好ましい。この場合、特定の周波数の音が伝播することを抑制できる。
【0052】
本実施形態の音響建造物は、様々な用途に利用することができる。例えば、楽器演奏用のスタジオ、住居、オフィス、ゲームセンター、スポーツジム、飲食店等が挙げられる。ソーラーパネルを設置し、太陽光発電により電力を供給することも可能である。
本実施形態の音響建造物は、設置場所を変更することが可能であり、室外であってもよいし、室内であってもよい。移動可能であるため、利用場所を変更することができ、中古販売もしやすくなるといった利点がある。
【符号の説明】
【0053】
1 音響建造物
10 鉄骨
11 第1の弾性体
12 第2の弾性体
13 鉄板
14 ビス
20 側壁
21 内壁
22 外壁
23 防音材
28 鏡
29 吸音パネル
30 積層床
31 第1の木板
32 鉄板
33 第2の木板
40 床壁
43 防音材
51 内側扉
52 外側扉
53 パネル領域
61 第1の孔
62 第2の孔
70 天壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11