(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】折畳み三輪車
(51)【国際特許分類】
B62K 9/02 20060101AFI20221118BHJP
B62K 15/00 20060101ALI20221118BHJP
B62K 21/18 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B62K9/02
B62K15/00
B62K21/18
(21)【出願番号】P 2018186901
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-08-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載年月日 平成30年6月7日 掲載アドレス http://www.idesnet.co.jp/products/content.php?id=490 (2)展示会名 東京おもちゃショー2018 展示日 平成30年6月7日から同年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】598139793
【氏名又は名称】アイデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 範光
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3196617(JP,U)
【文献】登録実用新案第3081977(JP,U)
【文献】登録実用新案第3087926(JP,U)
【文献】実開昭51-114177(JP,U)
【文献】国際公開第2018/051352(WO,A1)
【文献】実開昭59-139480(JP,U)
【文献】登録実用新案第3087751(JP,U)
【文献】米国特許第09604688(US,B1)
【文献】中国実用新案第202686613(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 9/02
B62K 15/00
B62K 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、
前記車体フレーム部には、前側部位を後側部位に対し折り曲げるように回動させて収納位置にする第一の折曲機構が設けられ、
前記第一の折曲機構は、前記収納位置にて、前記前輪を前記車体フレーム部と前記後フレーム部の内角側の空間に入り込ませ
、
前記第一の折曲機構を覆う可撓性の被覆部材を備え、
前記被覆部材は、前記前側部位の回動の前後で、前記第一の折曲機構を覆うように撓み変形することを特徴とする三輪車。
【請求項2】
前記第一の折曲機構は、前記前側部位を通常使用位置で係止状態にし、この係止状態を操作部の操作によって解除して、前記前側部位を前記収納位置に回動させるように構成され、
前記操作部は、前記サドルの着座部よりも後側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の三輪車。
【請求項3】
前記車体フレーム部を間に挟むようにして、前記サドルの下面に対して止着された下カバーが設けられ、
前記下カバーは、前記第一の折り曲げ機構及び前記被覆部材を下方側から覆っていることを特徴とする請求項1又は2記載の三輪車。
【請求項4】
左右の前記後輪と前記サドルの後端とが被載置面に三点で接触して自立するように、前記サドルの後端位置を設定したことを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の三輪車。
【請求項5】
前記前フレーム部における前記車体フレーム部との接続箇所よりも上側には、ハンドル部側を折り曲げるように後方へ回動させる第二の折曲機構が設けられていることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の三輪車。
【請求項6】
ハンドル部側の後方への回動をロックし、このロック状態を所定の操作により解除するロック機構を備えていることを特徴とする請求項5記載の三輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児用として好適な折畳み三輪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、前後方向へわたるメインフレーム部と、前記メインフレーム部の前端側に枢支されて上下方向へ延設された前フレームと、前記前フレームの下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレームの上端側に接続されて車幅方向へ延設された操行ハンドルと、前記メインフレーム部の後端側に枢支されて下方へ延設された後フレームと、後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記メインフレームに支持されたサドルとを備えた三輪車がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-82777号公報(
図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の三輪車を折畳む際は、メインフレーム前側の枢支部を支点にしてメインフレームを上方へ回動させながら、後フレーム上端の枢支部を支点にして後フレームを前方へ回動させるようにして折畳み操作が行われる。
そして、折畳み後は、前輪と後輪が近接し、これら前後輪の上方側にサドル及びメインフレームが直立状に位置するが、その折畳み構造が複雑なのに加え、全体の体積が大きく感じられる場合があり、改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、前記車体フレーム部には、前側部位を後側部位に対し折り曲げるように回動させて収納位置にする第一の折曲機構が設けられ、前記第一の折曲機構は、前記収納位置にて、前記前輪を前記車体フレーム部と前記後フレーム部の内角側の空間に入り込ませ、前記第一の折曲機構を覆う可撓性の被覆部材を備え、前記被覆部材は、前記前側部位の回動の前後で、前記第一の折曲機構を覆うように撓み変形することを特徴とする三輪車。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、車体フレーム部と後フレーム部に挟まれた内角側の空間を有効に利用して、全体的にコンパクトな折畳み状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る三輪車の一例を示す斜視図である。
【
図2】同三輪車の側面図であり、サドル及び下カバーを外した状態を示す。
【
図3】同三輪車の被覆部材および下カバーを示す斜視図である。
【
図4】第一の折曲機構の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】同三輪車が折り畳まれようとしている状態を示す側面図である。
【
図6】第一の折曲機構の作用を示す側面図であり、(a)は初期状態、(b)は係止状態が解除された状態、(c)は折り畳まれた状態をそれぞれ示す。
【
図7】第二の折曲機構を折畳み動作させるために、ロック機構を解除操作している状態を示す正面図である。
【
図8】第二の折曲機構の作用を示す側面図であり、(a)は初期状態、(b)は係止状態が解除された状態、(c)は折り畳まれた状態をそれぞれ示す。
【
図9】同三輪車が折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、前後方向へわたる車体フレーム部と、前記車体フレーム部の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部と、前記前フレーム部の下端側に回転自在に支持された前輪と、前記前フレーム部の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部と、前記車体フレーム部の後端側で下方へ延設された後フレーム部と、前記後フレーム部の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部と、前記後輪軸部の両端側で回転自在な後輪と、前記車体フレーム部に支持されたサドルとを備えた三輪車であって、前記車体フレーム部には、前側部位を後側部位に対し折り曲げるように回動させて収納位置にする第一の折曲機構が設けられ、前記第一の折曲機構は、前記収納位置にて、前記前輪を前記車体フレーム部と前記後フレーム部の内角側の空間に入り込ませる(
図5及び
図9参照)。
【0009】
第二の特徴として、誤操作の少ない良好な折畳み操作性を得るために、前記第一の折曲機構は、前記前側部位を通常使用位置で係止状態にし、この係止状態を操作部の操作によって解除して、前記前側部位を前記収納位置に回動させるように構成され、前記操作部は、前記サドルの着座部よりも後側に設けられている(
図5及び
図6参照)。
なお、この構成によれば、上記した第一の特徴を一部含まない独立した発明とした場合でも、誤操作の少ない良好な折畳み操作性を得ることが可能である。
【0010】
第三の特徴は、手等が前記第一の折曲機構に触れないように、前記第一の折曲機構を覆う可撓性の被覆部材を備え、前記被覆部材は、前記前側部位の回動の前後で、前記第一の折曲機構を覆うように撓み変形する(
図2,
図3及び
図6参照)。
【0011】
第四の特徴は、省スペースな収納性を得る態様として、車幅方向両側の前記後輪と前記サドルの後端とが被載置面に三点で接触して自立するように、前記サドルの後端位置を設定した(
図9参照)。
なお、この構成によれば、上記した第一~第三の特徴を一部含まない独立した発明とした場合も、省スペースな収納性を得ることが可能である。
【0012】
第五の特徴は、よりコンパクトな収納性を得るために、前記前フレーム部における前記車体フレーム部との接続箇所よりも上側には、ハンドル部側を折り曲げるように後方へ回動させる第二の折曲機構が設けられている(
図8参照)。
なお、この構成によれば、上記した第一~第四の特徴を一部含まない独立した発明とした場合も、ハンドル部側において省スペースな収納性を得ることが可能である。
【0013】
第六の特徴は、ハンドル部が意図せずに折り畳まれてしまうのを防ぐために、ハンドル部側の後方への回動をロックし、このロック状態を所定の操作により解除するロック機構を備えている(
図7及び
図8参照)。
【0014】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当する構成要素について同一符号を付することで、重複する説明を省略する。
【0015】
三輪車1は、前後方向へわたる車体フレーム部10と、車体フレーム部10の前端側に交差状に接続されて上下に延設された前フレーム部20と、前フレーム部20の下端側に回転自在に支持された前輪30と、前フレーム部20の上端側に接続されて車幅方向へ延設されたハンドル部40と、車体フレーム部10の後端側で下方へ延設された後フレーム部50と、後フレーム部50の下端側に接続されて車幅方向へ延設された後輪軸部60と、後輪軸部60の両端側で回転自在な左右の後輪70,70と、車体フレーム部10に支持されたサドル80とを具備している(
図1~
図2参照)。
【0016】
車体フレーム部10、前フレーム部20、ハンドル部40、後フレーム部50、及び後輪軸部60等は、例えば、硬質金属材料からなる中空のパイプ材により形成される。
【0017】
車体フレーム部10は、略水平に直線状に延設された水平状フレーム部11(
図2参照)と、この水平状フレーム部11の前端側から前方斜め上方へ傾斜する傾斜フレーム部12とを有する。
この車体フレーム部10の後端側には、後フレーム部50が一体に接続されている。なお、他例としては、後フレーム部50を車体フレーム部10とは別体の部材とすることも可能である。
【0018】
水平状フレーム部11は、傾斜フレーム部12を有する前側部位11aと、後フレーム部50を一体に有する後側部位11bとに分割されており(
図4参照)、これら前側部位11aと後側部位11bの間には、前側部位11aを後側部位11bに対し折り曲げるように回動させて収納位置にする第一の折曲機構Aが設けられる。
【0019】
第一の折曲機構Aは、水平状フレーム部11の前側部位11aを、通常使用位置(
図6(a)参照)で係止しており、この係止状態を操作部17aの引張り操作によって解除して、同前側部位11aを収納位置側(
図6(c)参照)へ回動させる。
【0020】
ここで、前記通常使用位置とは、三輪車1の走行を可能にすべく、前側部位11aが後側部位11bに対し直線状になった位置を意味する。
また、前記収納位置とは、前輪30を水平状フレーム部11と後フレーム部50の内角側の空間S1に入り込むまで、前側部位11aが後側部位11bに対し下方へ回動した位置を意味する。
【0021】
第一の折曲機構Aの構造について詳細に説明すれば、この第一の折曲機構Aは、
図4及び
図6に示すように、前側部位11aを後側部位11bに対し回動させる第一の枢支部a1と、後側部位11bに固定された支持部材a2と、支持部材a2に沿って後方へスライド可能なスライド部材a3と、前側部位11aの後端側に接続された枢支ブラケットa4と、スライド部材a3によって係脱可能に係止される係脱突起a5とを備えている。
【0022】
第一の枢支部a1は、支持部材a2および枢支ブラケットa4に挿通された円柱状の軸であり、支持部材a2に対し、枢支ブラケットa4及び前側部位11aを回転自在に支持する。
【0023】
支持部材a2は、前後方向へわたって下方を開口した断面凹状の部材であり、水平状フレーム部11の後側部位11bに固定されるとともに、後側部位11bから前方へ延設されている。
この支持部材a2の両側の側壁には、第一の枢支部a1が貫通状に支持され、第一の枢支部a1よりも前側に、切欠状のガイド部a21を有する。このガイド部a21は、第一の枢支部a1を中心にした円弧状の切欠であり、下方側を開口している(
図4参照)。また、支持部材a2の天壁の前端側には、付勢部材a6(図示例によれば、引張コイルバネ)の前端部を係止するための係止部a22が上方向きに突出している。
【0024】
スライド部材a3は、前後方向へわたって下方を開口した断面凹状の部材であり、支持部材a2の上面及び両側面に重ね合わせられるようにして装着される。そして、このスライド部材a3は、支持部材a2に対し後方へスライド可能であり、付勢部材a6によって、支持部材a2に相対し前方へ付勢される(
図6参照)。
なお、このスライド部材a3は、図示例によれば、組み立て性等を考慮して複数の部材から構成しているが、同様の機能が得られるようにすれば、単数の部材から構成することも可能である。
【0025】
スライド部材a3の構成する天壁には、係止部a32が上方向きに突出している。この係止部a32は、付勢部材a6の後端側を係止する(
図6参照)。
また、スライド部材a3の後端側には、突片部と孔部とからなる止着部a33が設けられる。この止着部a33には、可撓性長尺部材17が止着される。
【0026】
可撓性長尺部材17は、図示例によれば、無端輪状に構成された長尺帯状の部材であり、その前端側を止着部a33に止着して、後方へ延設される。
この可撓性長尺部材17の後端側は、サドル80の後端側に遊挿され外部に露出しており、操作部17aとして機能する。図中、符号17bは、操作部17aがサドル80内に引き込まれないようにする突状の係止部である。
【0027】
スライド部材a3の両側壁には、前後方向へ延設されるとともにその前端部を開口した切欠状のガイド部a31が設けられる。スライド部材a3は、このガイド部a31に、第一の枢支部a1及び後述する係脱突起a5を嵌め合わせた位置(
図6(a)参照)と、係脱突起a5を外して第一の枢支部a1のみを嵌め合わせた位置(
図6(b)参照)との間で、前後方向へスライドする。
【0028】
枢支ブラケットa4は、水平状フレーム部11の前側部位11aの後端部に固定された部材であり、軸状の第一の枢支部a1を挿通し支持する貫通孔a41を有する。なお、他例としては、枢支ブラケットa4を省いて、前側部位11aの後端側に第一の枢支部a1を直接挿通した態様とすることも可能である。
【0029】
係脱突起a5は、水平状フレーム部11の前側部位11aの外面から突出して、支持部材a2のガイド部a21、及びスライド部材a3のガイド部a31に係合する軸状の突起である。この係脱突起a5は、例えば、円柱状の軸状部材を前側部位11aに挿通し固定したものとすればよい。
この係脱突起a5は、支持部材a2及びスライド部材a3の二つのガイド部a21,a31に係合し(
図6(a)参照)、スライド部材a3が後方へスライドし(
図6(a)参照)、さらに前側部位11aが第一の枢支部a1を支点にして下方へ回動した際には、支持部材a2のガイド部a21から下方へ離脱する(
図6(c)参照)。
【0030】
また、図中、符号11a1は、後述する被覆部材15を止着するためのネジ穴(
図4参照)、又はネジの頭部(
図6参照)を示している。
【0031】
上記構成の第一の折曲機構Aは、可撓性の被覆部材15により覆われ、被覆部材15が上下のサドル80及び下カバー16によって覆われている(
図2参照)。
【0032】
被覆部材15は、通常使用位置にて第一の折曲機構Aを覆う第一の被覆態様(
図6(a)参照)と、収納位置にて前記第一の折曲機構を覆う第二の被覆態様(
図6(c)参照)との間、すなわち、前側部位11aの回動の前後で撓み変形する。
詳細に説明すれば、この被覆部材15は、
図3に示すように、基部15aと、基部15aから上側へ延設された長尺帯状の上側片部15bと、基部15aから下側へ延設された長尺帯状の下側片部15cとを備え、例えば、撓み変形可能な合成樹脂材料から構成される。
【0033】
基部15aは、略筒状に形成され、車体フレーム部10の前側部位11aに環状に装着さる。この基部15aの周壁には、前側部位11aの係止部11a1に嵌り合って係止される孔状の被係止部15a1が設けられる。
この基部15aは、前側部位11aと一体的に、上記通常使用位置か(
図6(a)参照)ら上記収納位置(
図6(b)参照)へ回動する。
【0034】
上側片部15bは、上記通常使用位置(
図6(a)参照)において、第一の折曲機構Aの上面側を前後方向へわたる長尺状に覆う。また、この上側片部15bは、上記収納位置(
図6(c)参照)において、撓み変形して、第一の折曲機構Aの上面側から前端側にわたる範囲を側面視略逆L字状に覆う。
【0035】
下側片部15cは、上記通常使用位置(
図6(a)参照)において、第一の折曲機構Aの下面側を前後方向へわたる長尺状に覆う。また、この下側片部15cは、上記収納位置(
図6(c)参照)において、基部15aに相対して撓み変形することで、第一の折曲機構Aの下面側を覆った状態を保持する。
【0036】
下カバー16は、車体フレーム部10を間に挟むようにして、サドル80の下面に対し止着された部材であり、第一の折曲機構A及び被覆部材15等を下方側から覆っている。
この下カバー16の前端側には、車体フレーム部10の前側部位11aの回動を可能にする切欠部16aが設けられる。
【0037】
この切欠部16aは、
図3に示すように、前方を開口した凹状に形成され、水平状フレーム部11の前側部位11aを、回動可能に遊挿する。
切欠部16aの内側で、第一の折曲機構Aを外部に露出しようとする隙間や空間等は、外部から手が挿入されることのないように、上述した被覆部材15によって覆われる。
【0038】
また、前フレーム部20は、車体フレーム部10の前端側に接続され上下方向へ延設された部位であり、上部側に接続されたハンドル部40のハンドル操作により、ハンドル部40及びフォーク部21を一体的に回転させて、前輪30の走行方向を変化させるように構成される。
詳細に説明すれば、この前フレーム部20は、車体フレーム部10の前端部に略T字状に接続された円筒状の基筒部23と、基筒部23の下側でハンドル操作に伴う回転をする二股状のフォーク部21と、基筒部23の上側でハンドル操作に伴う回転をする回転支持部材24と、回転支持部材24を径方向に貫通する軸状の第二の枢支部c1と、回転支持部材24の上側でハンドル部40と一体的に回転する円筒状の回転筒部25とを具備する。
【0039】
そして、この前フレーム部20は、回転支持部材24よりもハンドル部側を折り曲げるようにして後方へ回動させる第二の折曲機構Cと、第二の折曲機構Cを回動不能にロックしたり、このロック状態を所定の操作により解除したりするロック機構Dとを構成している。
【0040】
第二の折曲機構Cは、
図8に示すように、回転支持部材24及び回転筒部25と、回転筒部25内で上下方向へスライドするスライド部材26と、スライド部材26の上側でスライド部材26を下方へ付勢する付勢部材27と、スライド部材26の下方側でスライド部材26を上下に嵌脱させる筒状の被嵌脱部材28とを具備して構成される。
【0041】
回転支持部材24は、上方へ突出する二股状の支持部24aに、軸状の第二の枢支部c1を跨らせて挿通している。
この回転支持部材24は、回転筒部25を、回転支持ブラケット25aを介して回転可能に支持している。
【0042】
回転筒部25は、長尺円筒状の部材であり、その下端側が第二の枢支部c1によって枢支され、基筒部23の上方に直線状に並ぶ初期位置(
図8(a)参照)と、後方へ略90度折り曲げられた折畳み位置(
図8(c)参照)との間で回動可能である。
回転支持ブラケット25aは、第二の枢支部c1を挿通して回転筒部25の下端側の外周面に一体に固定された外観視略球状の部材である。この回転支持ブラケット25aは、回転支持部材24に対する回転筒部25の回動の際に形成される隙間を小さくし、このような隙間に手や物等が挟まれるのを防ぐ。
さらに、この回転支持ブラケット25aは、回転支持部材24側の係止部(図示せず)に係止されて回転筒部25の折畳み回転量を規制したり、回転支持部材24に摺接して回転筒部25の回転を滑らかにしたりする機能も有する。
【0043】
スライド部材26は、回転筒部25の内側に設けられた円筒状又は円柱状の部材であり、その下端側を、回転筒部25の下端から下方へ突出させている。
このスライド部材26の周壁には、その下端側の両側部に上下方向へわたる貫通状の長孔26a(
図8参照)が設けられ、上端側の前面部にも上下方向へわたる長孔d1(
図7参照)が設けられる。
【0044】
下端側の長孔26aには、第二の枢支部c1が挿通される。スライド部材26は、回転筒部25の内面に沿って上下へスライドするのに伴い、長孔26aを第二の枢支部c1に対し上下へ移動する。また、上端側の長孔d1は、後述するロック機構Dを構成する。
【0045】
第二の枢支部c1は、上記したように軸状の部材であり、上述した回転支持部材24、回転筒部25、スライド部材26の長孔26aに挿通される。
そして、この第二の枢支部c1は、回転筒部25及びスライド部材26を回動可能に支持し、スライド部材26を上下スライド可能に支持し、ハンドル操作に伴う回転筒部25の回転を回転支持部材24へ伝達する。
【0046】
付勢部材27は、図示例によれば、圧縮コイルバネである。この付勢部材27は、上端側を回転筒部25又はハンドル部40に係止するとともに、下端側をスライド部材26に係止することで、スライド部材26を、回転筒部25に相対し下方へ弾発している。
【0047】
また、被嵌脱部材28は、基筒部23内で中心軸に沿って延設された円筒状の部材であり、その上端側に、スライド部材26の下端側を嵌脱する(
図8参照)。
この被嵌脱部材28は、下端側をフォーク部21に対し一体的に接続するとともに、上端側をピン28aによって回転支持部材24に接続している。
したがって、ハンドル操作に伴って回転支持部材24が回転すると、ピン28aを介して被嵌脱部材28も一体的に回転し、さらにフォーク部21も一体的に回転する。このため、フォーク部21に支持された前輪30の進行方向が変化する。
【0048】
また、ロック機構Dは、スライド部材26における上記長孔d1(
図7参照)と、回転操作される回転操作部材d2とから構成される。
【0049】
回転操作部材d2は、回転筒部25の長孔d1に挿入されスライド部材26に螺合した雄ネジ部d21と、雄ネジ部d21の基端側に固定されて外部に露出する円盤状のダイヤル部d22とからなる。
雄ネジ部d21は、スライド部材26を貫通して、その先端部を回転筒部25の内周面に近接又は接触している。
スライド部材26の周壁には、雄ネジ部d21を螺合して挿通するナット状部材26bが一体的に固定される。
【0050】
したがって、回転操作部材d2を締め付け方向へ回転させると、雄ネジ部d21がスライド部材26と一体のナット状部材26bにねじ込まれて前進し、雄ネジ部d21の先端部が回転筒部25の内周面に当接し、スライド部材26がスライドしないように固定される。
【0051】
また、後フレーム部50は、車体フレーム部10の後端側から下方へ延設されている。この後フレーム部50の下端側には、逆T字状に、後輪軸部60が接続される。
言い換えれば、後フレーム部50は、後輪軸部60の中央側から上方へ突出しながら前方へ傾き、着座部81の後側着座領域81bの下方側で車体フレーム部10に連結されている。
この後フレーム部50と車体フレーム部10の水平状フレーム部11との成す角度αは、本実施の形態の好ましい一例によれば、100~110度の範囲内に設定されている(
図2参照)。この構成によれば、車体フレーム部10の後端側に加わる荷重を、後フレーム部50によって効果的に支えることができる上、後フレーム部50と車体フレーム部10の内角側の空間S1に、折り畳まれた前輪30を効果的に収納することができる。
なお、図中、符号51は、例えば、施錠用チェーンの装着や、牽引用ロープの接続、小物入れの装着等、多用途に用いられるU字状の係止部である。
【0052】
後輪軸部60は、当該三輪車1の車幅方向の両側へ延設される。その延設方向の各端部側には、後輪70が回転自在に支持される。
左右の後輪70,70は、図示例によれば、前輪30よりも小径に形成される。
【0053】
また、サドル80は、その下面側が、車体フレーム部10の水平状フレーム部11を車幅方向へ跨る凹溝状に形成され、この凹溝状部分を水平状フレーム部11に嵌め合わせて、ブラケット及びネジ等により止着固定される。
なお、このサドル80は、単一の一体の部材から構成してもよいし、硬質部材と、該硬質部材を覆う軟質のクッション部材等の複数の部材から構成してもよい。
【0054】
このサドル80の上面側には、後輪軸部60の中心よりも前側に、前後方向へ連続する長尺状の着座部81が設けられ、着座部81よりも後側に、後輪軸部60を前後に跨る長さの非着座部82が設けられる。
【0055】
着座部81は、前寄りと後寄りの何れにも幼児を着座可能にした長尺状に形成される。この着座部81の表面は、凹凸のない略平坦状に形成される。
【0056】
非着座部82は、幼児が着座することのないように確保された部位であり、着座部81よりも後側において後輪軸部60を前後に跨る範囲に設けられる。
この非着座部82には、着座部81よりも上方へ突出する側面視略山形状の隆起部82aが設けられる。この隆起部82aの頂部は、後輪軸部60の中心よりも前側に位置する。着座部81は、この頂部よりも更に前側に位置することになる。
【0057】
そして、上記構成の三輪車1は、左右の後輪70,70とサドル80の最後端部80aとが略水平で平坦状な被載置面Xに三点で接触して自立するように(
図9参照)、サドル80の最後端部80aを後輪軸部60よりも後方へ突出させている。
【0058】
次に、上記構成の三輪車1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
三輪車1を折り畳んで収納する場合は、
図5に示すように、保護者等が一方の手で操作部17aを引きながら、他方の手で前フレーム部20側を下方へ折り込むようにすれば、第一の折曲機構Aによって、第一の枢支部a1よりも前側の部分(前側部位11a、前フレーム部20及びハンドル部40及び前輪30等)が回動して、前輪30が、サドル80と後フレーム部50がなす内角側の空間S1に入り込む。
【0059】
特に、本実施の好ましい一例では、操作部17aをサドル80の後端側に配置しており、幼児は、操作部17aよりも前側で、サドル80に前向きに跨るため、操作部17aを操作し難い。このため、幼児による操作部17aの誤操作を防ぐことができる。
【0060】
また、ハンドル部40及び前輪30側の前記回動は、前側部位11a側の部材と後側部位11b側の部材との係止構造により規制されるようになっている。このため、前輪30とサドル80の下面の間には、手等を挟まないようにする逃げ空間S2(
図9参照)が確保される。
【0061】
前記折り畳み操作中の第一の折曲機構Aの作用について詳細に説明すれば、可撓性長尺部材17が引かれていない状態では、
図6(a)に示すように、スライド部材a3が付勢部材a6の引張力により前方側へ寄せられ、このスライド部材a3のガイド部a31に、水平状フレーム部11における前側部位11aの係脱突起a5が嵌り合う。
このため、通常使用状態では、水平状フレーム部11の前側部位11aが、後側部位11bに対し直線状に保持される。
【0062】
図6(b)に示すように、操作部17aに対する引張操作により、可撓性長尺部材17が後方へ引かれると、スライド部材a3も後方へ移動し、係脱突起a5が、スライド部材a3のガイド部a31から前方に外れ、下方へ回動可能になる。
そして、
図6(c)に示すように、前側部位11aに下方への力が加わると、前側部位11aは、第一の枢支部a1を支点にして下方へ回動する。
【0063】
そして、前記のように、車体フレーム部10を折り畳んだ状態で、ハンドル部40側を上方へ向け、左右の後輪70とサドル80の最後端部80aの三点を被載置面Xに接触させれば、三輪車1を転動防止した状態で省スペースに直立させることができ、さらに、ハンドル部40を後方へ折り込めば、三輪車1全体をコンパクトな収納態様にすることができる(
図9参照)。
【0064】
ハンドル部40の折り畳み操作について詳細に説明すれば、先ず、
図7及び
図8に示すように、回転操作部材d2を緩み方向へ回転させ、回転操作部材d2における雄ネジ部d21の先端を回転筒部25内周面から引き離す。
次に、回転操作部材d2を引き上げるようにして、回転筒部25内のスライド部材26を上方へスライドさせ、スライド部材26の下端側を、被嵌脱部材28から上方へ外す(
図8(b)参照)
【0065】
そして、回転操作部材d2を引き上げた状態のまま、ハンドル部40に対し後方への力を加えれば、回転筒部25及びスライド部材26等が、第二の枢支部c1を支点にして後方へ回動して、折畳み位置になる(
図8(b)(c)参照)。
【0066】
すなわち、ハンドル部40を折り畳むためには、回転操作部材d2対する回転操作及び引き上げ操作という、複雑な組み合わせ操作を要する。このため、幼児が意図せずにハンドル部40を折り畳んでしまうようなことを防ぐことができる。
【0067】
前記折畳み位置にて、回転操作部材d2及びハンドル部40等に加わる力を除去すれば、スライド部材26は、付勢部材27の弾発力により前方へスライドし、そのスライド方向の先端部を前方へ向けて外部に突出し、この状態が保持される(
図8(c)参照)。
後方への前記回動は、回転筒部25側の部材と回転支持部材24側の部材との係止構造により規制されるようになっている。このため、ハンドル部40とサドル80の前端との間には、手等を挟まないようにする逃げ空間S3(
図9参照)が確保される。
【0068】
折り畳まれたハンドル部40及び車体フレーム部10等を、元の通常使用状態に戻すには、上記と逆の操作を行えばよい。
特に、本実施態様では、車体フレーム部10前側部位11aを元の状態に戻す際に、前側部位11aの逆方向(
図6によれば時計方向)への回動量が、係脱突起a5とガイド部a21の係合により規制されて、この規制位置にて、傾斜フレーム部12とサドル80の前端との間に、手等を挟まないようにする逃げ空間S4(
図1参照)が確保されるようにしている。
【0069】
また、本実施態様によれば、前側部位11aの回動のために下カバー16に形成される切欠部16aを、下カバー16の内側にて被覆部材15により塞ぐとともに、この被覆部材15によって第一の折曲機構Aを覆い、この被覆部材15による被覆状態を、被覆部材15の撓み変形により保持するようにしている。
このため、三輪車1を折り畳み操作する保護者等が、第一の折曲機構Aに触れてしまうのを防ぐことができる。
【0070】
なお、図示例では、三輪車1の基本構造をわかり易くするために、各部材を簡素化して表現しているが、三輪車1を構成する各部材は、製造性の向上等を考慮して、適宜に複数の部材から構成したり、単数の部材により一体に構成したりすることが可能である。
【0071】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:三輪車
10:車体フレーム部
11:水平状フレーム部
12:傾斜フレーム部
15:被覆部材
17a:操作部
20:前フレーム部
30:前輪
40:ハンドル部
50:後フレーム部
60:後輪軸部
70:後輪
80:サドル
81:着座部
81a:前側着座領域
81b:後側着座領域
82:非着座部
82a:隆起部
A:第一の折曲機構
C:第二の折曲機構
D:ロック機構
X:被載置面
S1:空間(収納空間)
S2~S4:逃げ空間