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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】凧
(51)【国際特許分類】
   A63H 27/08 20200101AFI20221118BHJP
   B64C 31/06 20200101ALI20221118BHJP
【FI】
A63H27/08 H
A63H27/08 A
B64C31/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018248252
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103843
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501486741
【氏名又は名称】株式会社森久エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】森 一生
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-129811(JP,A)
【文献】実開昭49-101897(JP,U)
【文献】特開2007-020690(JP,A)
【文献】特開2009-142471(JP,A)
【文献】実開昭58-080295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
B64C 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨組構造と、該骨組構造に貼り付けられた凧紙による主翼と水平尾翼とを備えた凧であって、
前記骨組構造は、
前記凧の対称軸となる中心骨と、
該中心骨に直交し前記主翼の主要部に配置される主翼主骨と、
前記主翼主骨と交わり前記中心骨に対してほぼ平行に取り付けられる一対の第1主翼縦骨と、
前記水平尾翼に配置され、前記中心骨の後方端部に接続される尾翼中心骨と、
前記中心骨の軸線を中心に捻じった状態で、前記尾翼中心骨を前記中心骨に接続可能な捻じり機構と、
前記水平尾翼の後方端部において、前記尾翼中心骨を中心に前記凧紙を貼り合わせて形成された垂直尾翼と、
前記主翼の後方部に配置され、前記一対の第1主翼縦骨のそれぞれの後方端部に接続される第1縦細骨と、
前記一対の第1主翼縦骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記第1縦細骨を前記一対の第1主翼縦骨のそれぞれに接続する第1ヒンジ機構と、
を備えることを特徴とする凧。
【請求項2】
前記骨組構造は、
前記中心骨と前記第1主翼縦骨との間に、前記主翼主骨と交わり前記中心骨に対してほぼ平行に取り付けられる一対の第2主翼縦骨と、
前記主翼の後方部に配置され、前記一対の第2主翼縦骨のそれぞれの後方端部に接続される第2縦細骨と、
前記一対の第2主翼縦骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記第2縦細骨を前記一対の第2主翼縦骨のそれぞれに接続する第2ヒンジ機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の凧。
【請求項3】
前記骨組構造は、
前記主翼主骨の両端部に前記中心骨に対して傾斜して取り付けられる一対の主翼細骨と、
前記一対の主翼細骨のそれぞれの後方端部に接続される延長細骨と、
前記一対の主翼細骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記延長細骨を前記一対の主翼細骨に接続する第3ヒンジ機構と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の凧。
【請求項4】
前記捻じり機構は、前記中心骨の後方端部に位置する主翼側接続部と、前記尾翼中心骨の前方端部に位置する尾翼側接続部とを備え、前記主翼側接続部と前記尾翼側接続部とは着脱可能に接着する接着手段を用いて固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の凧。
【請求項5】
前記第1ヒンジ機構は、形状記憶性を有する金属又は樹脂により形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の凧。
【請求項6】
前記第2ヒンジ機構は、形状記憶性を有する金属又は樹脂により形成されることを特徴とする請求項2に記載の凧。
【請求項7】
前記第3ヒンジ機構は、形状記憶性を有する金属又は樹脂により形成されることを特徴とする請求項3に記載の凧。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凧に関し、特に、揚力を利用して飛ぶ凧に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の凧は風速4m/秒の風速がないと風に向かって走るなどの補助動作がなければ揚げることが困難であった。また、高さ25m以上の上空では、風速1.6m/秒~3.3m/秒の軽風の状態が最も多い。そのような軽風以下の風速でも補助動作をすることなく、容易に揚げることのできる凧として、層流で飛行する構造を有する凧が考案された(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
層流で飛行する凧は、主翼と水平尾翼を備え、実際の鳥、昆虫又は飛行機等の形状とほぼ同一の姿で飛行させることができる。軽風環境下でも補助動作をすることなく揚げられるだけではなく、実際の鳥や昆虫等と同じ姿の凧が飛行することを楽しむことが可能である。当然のことながら、従来の凧で用いられる三角形、四角形又は丸型等のデザインであっても、層流で飛行するために主翼及び水平尾翼等の構造体の骨組みをシートの裏側に貼り付けることで飛行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-142471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自然の風を利用した凧揚げは、風の強さ、方向性又は特性等に大きく影響を受ける。例えば風上に煙突又は高層ビル等の障害物があると渦流が発生し、風下の風の流れに大きな影響を与える。これらの風の多くは、ねじり風となり、この環境下で凧揚げを行うと、凧は傾いたり回転したりする場合があった。
【0006】
和凧の場合は、風の影響を受けて傾く方向と反対側の袖部に紙テープ又はひも等の空気抵抗となる部品を取り付けてバランスをとったり、回転がある場合には、長い紙テープ又はひも等を凧の尾部に取り付けて、空気抵抗を増やすことで回転を抑止したりしている。市販の凧には、凧の下部に垂直尾翼を取り付けて回転運動を抑止しているものもある。
【0007】
しかしながら、これらの方法は空気抵抗を増加させることで傾き又は回転のバランスをとる方法であるため、凧を揚げた時の上昇角が低下するとともに、凧のデザイン性を損なう要因となっていた。
【0008】
長い紙テープ又はひも等により空気抵抗を増加させることなく調整することが可能な凧を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明の凧によれば、骨組構造と、該骨組構造に貼り付けられた凧紙による主翼と水平尾翼とを備えた凧であって、前記骨組構造は、前記凧の対称軸となる中心骨と、該中心骨に直交する前記主翼の主要部に配置される主翼主骨と、前記主翼主骨と交わり前記中心骨に対してほぼ平行に取り付けられる一対の第1主翼縦骨と、前記水平尾翼に配置され、前記中心骨の後方端部に接続される尾翼中心骨と、前記中心骨の軸線を中心に捻じった状態で、前記尾翼中心骨を前記中心骨に接続可能な捻じり機構と、前記水平尾翼の後方端部において、前記尾翼中心骨を中心に前記凧紙を貼り合わせて形成された垂直尾翼と、前記主翼の後方部に配置され、前記一対の第1主翼縦骨のそれぞれの後方端部に接続される第1縦細骨と、前記一対の第1主翼縦骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記第1縦細骨を前記一対の第1主翼縦骨のそれぞれに接続する第1ヒンジ機構と、を備えることにより解決される。
【0010】
上記のように構成された本発明の凧は、第1ヒンジ機構により第1縦細骨を上下方向に折り曲げることで、ロール方向(図1の矢印A方向)の調整、すなわち主翼の左右の揚力調整を行うことが可能になる。また、水平尾翼を貼り合わせて垂直尾翼を形成することで、凧の平面より水平尾翼の下流がやや上向きに反り、ダウンリフトが発生する。それにより、ピッチ方向(図1の矢印B方向)の調整ができ、風が突然止まった場合でも、機種をやや下に向けて自己飛行することを防止する。また、ヨー方向(図1の矢印C方向)の調整については、捻じり機構を備えることで、方向の制御を行うことができる。このような構造により、デザイン性を損なうことなく空力的な調整を行うことができ、風の環境が乏しい場所においても凧揚げを楽しむことが可能になる。
【0011】
また、上記の凧に関して好適な構成を述べると、前記骨組構造は、前記中心骨と前記第1主翼縦骨との間に、前記主翼主骨と交わり前記中心骨に対してほぼ平行に取り付けられる一対の第2主翼縦骨と、前記主翼の後方部に配置され、前記一対の第2主翼縦骨のそれぞれの後方端部に接続される第2縦細骨と、前記一対の第2主翼縦骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記第2縦細骨を前記一対の第2主翼縦骨のそれぞれに接続する第2ヒンジ機構と、を備えてよい。
【0012】
主翼の後方部を上下方向に折曲可能な第2ヒンジ機構を備えることで、フラップ効果により、超微風環境下においても揚力を増加させる構造を併せ持つことができる。そのため、風が極端に弱い場合にも運用性を向上させることができる。また、層流で飛行する本発明の凧に、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向に空力的に調整する機構と、第2ヒンジ機構とを追加することにより、空気抵抗を最小限に抑えながら、調整を行うことができるため、上昇角を低下させることを防止することができる。
【0013】
また、上記の凧に関して好適な構成を述べると、前記骨組構造は、前記主翼主骨の両端部に前記中心骨に対して傾斜して取り付けられる一対の主翼細骨と、前記一対の主翼細骨のそれぞれの後方端部に接続される延長細骨と、前記一対の主翼細骨の軸線に対して上下方向に折曲可能に、前記延長細骨を前記一対の主翼細骨に接続する第3ヒンジ機構と、を備えてよい。
【0014】
第3ヒンジ機構を備えることで主翼の両端部分(初列風切羽)を少し跳ね上げることができる。それにより、初列風切羽が発生させる自由渦による誘導抵抗を抑制し、上昇角を高く保つことができる。
【0015】
また、上記の凧に関して好適な構成を述べると、前記捻じり機構は、前記中心骨の後方端部に位置する主翼側接続部と、前記尾翼中心骨の前方端部に位置する尾翼側接続部とを備え、前記主翼側接続部と前記尾翼側接続部とは着脱可能に接着する接着手段を用いて固定されてよい。
【0016】
尾翼側の尾翼側接続部を主翼側の主翼側接続部に着脱可能に接着する接着手段、例えば面ファスナを用いて固定することで、軽量かつ強固に捻じり機構を実現することができる。
【0017】
第1ヒンジ機構、第2ヒンジ機構及び第3ヒンジ機構は、形状記憶性を有する金属又は樹脂により形成されてよい。このような構成により、ヒンジ機構を軽量かつ容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
第1ヒンジ機構により主翼の左右の揚力調整を行うこと可能になり、垂直尾翼を形成することで、ピッチ方向の調整をすることができる。また、捻じり機構を備えることで、ヨー方向の調整をすることができる。
また、第2ヒンジ機構により主翼の後方部を上下させることで、フラップ効果により、超微風環境下においても揚力を増加させる構造を併せ持つことができる。
また、第3ヒンジ機構を備えることで、主翼の両端部分にある初列風切羽を跳ね上げることができ、それにより、初列風切羽が発生させる自由渦による誘導抵抗を抑制し、上昇角を高く保つことができる。
また、捻じり機構に接着手段を用いることで、軽量かつ容易に中心骨に対して尾翼中心骨を捻じった状態で取り付けることが可能になる。
また、第1~第3ヒンジ機構を、形状記憶性を有する金属又は樹脂により形成することで、ヒンジ機構を軽量かつ容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】凧のロール方向、ピッチ方向及びヨー方向を示す図である。
図2】本実施形態の凧を示す平面図である。
図3】捻じり機構を示す斜視図であり、(a)は、接続する前の状態を示す図、(b)は捻じって接続した状態を示す図、(c)は捻じった状態で固定した状態を示す図である。
図4】ヒンジ機構を示す斜視図である。
図5】初列風切羽を示す拡大図である。
図6】垂直尾翼を示す拡大斜視である。
図7】凧の別例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る凧1について、図1図6を用いてその構成を説明する。以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0021】
また、本実施形態では、図1に示すように、凧1の進行方向である矢印X方向を凧1の前側とし、その反対方向を後側とする。また、矢印X方向に対して横方向に延びる矢印Y方向を右側、その反対方向を左側とする。また矢印X方向及び矢印Y方向に垂直な矢印Z方向を上側とし、その反対方向を下側とする。また、矢印X方向を中心とした矢印A方向の回転をロール方向、矢印Y方向を中心とした矢印B方向の回転をピッチ方向、矢印Z方向を中心とした矢印Cの回転をヨー方向とする。
【0022】
本実施形態の凧1は、図2に示すように、骨組構造10と、骨組構造10に貼り付けられた凧紙7による主翼2と水平尾翼3とを備える。
【0023】
また、骨組構造10は、凧1の対称軸となる中心骨11と、中心骨11に直交し、主翼2の主要部に配置される主翼主骨12とを備える。主翼2の前縁部には主翼前縁骨13が設けられている。また、主翼主骨12と中心骨11をトラス構造で支持する一対の主翼補強骨14を備える。
【0024】
骨組構造10は、水平尾翼3に配置され、中心骨11の後方端部11aに接続される尾翼中心骨21と、尾翼中心骨21の両側に水平尾翼3を支持する尾翼補強骨22,22と、を備える。
【0025】
骨組構造10は、主翼主骨12と交わり、中心骨11に対して略平行に取り付けられる一対の第1主翼縦骨15,15を備える。また、主翼2の後方部に配置され、一対の第1主翼縦骨15,15のそれぞれの後方端部に接続される第1縦細骨15aを備える。
【0026】
また、骨組構造10は、第1主翼縦骨15と中心骨11との間に、主翼主骨12と交わり、中心骨11に対して略平行に取り付けられる一対の第2主翼縦骨16,16を備える。また、主翼2の後方部に配置され、一対の第2主翼縦骨16,16のそれぞれの後方端部に接続される第2縦細骨16aを備える。
【0027】
骨組構造10は、主翼主骨12の両端部に、中心骨11に対して傾斜して取り付けられる一対の主翼細骨19を備える。また、一対の主翼細骨19のそれぞれの後方端部に接続される延長細骨19aを備える。延長細骨19aと第1主翼縦骨15と間には主翼中間補強骨18が設けられている。
【0028】
骨組構造10に凧紙7が貼り付けられることにより凧1が形成される。凧1の主翼2は、中心骨11、主翼主骨12、主翼前縁骨13、主翼補強骨14、第1主翼縦骨15、第2主翼縦骨16及び主翼中間補強骨18により支持される。また、凧1の水平尾翼3は、尾翼中心骨21と一対の尾翼補強骨22とにより支持される。また、主翼中間補強骨18と主翼細骨19とにより初列風切羽6が支持される。
【0029】
本実施形態の骨組構造10は、中心骨11と尾翼中心骨21との間に捻じり機構30を備える。捻じり機構30は、中心骨11の軸線を中心に捻じった状態で、尾翼中心骨21を、中心骨11に接続することが可能になっている。捻じり機構30により、水平尾翼3を主翼2に対して捻じることができ、方向の制御をすることが可能になる。
【0030】
また、骨組構造10は、図2に示すように水平尾翼3の後方端部において、尾翼中心骨21を中心に、凧紙7を互いに貼り付けることができるよう着脱可能に接着する接着手段、例えば雌雄一対の面ファスナ44,44が取り付けられている。使用者が面ファスナ44,44を貼りあわせることで、垂直尾翼8を形成することができる(図6参照)。接着手段は粘着テープでもよい。垂直尾翼8を形成すると、凧1の平面より水平尾翼3の下流がやや上向きに反り、ダウンリフトが発生する。それにより、ピッチ方向(図1の矢印B方向)の調整ができ、風が突然止まった場合でも、機種をやや下に向けて自己飛行することを防止することができる。
【0031】
また、骨組構造10は、一対の第1主翼縦骨15,15の軸線に対して上下方向に折り曲げ可能に、第1縦細骨15aを、一対の第1主翼縦骨15,15のそれぞれに接続する第1ヒンジ機構41を備える。第1縦細骨15aが第1主翼縦骨15に対して上下に傾くよう第1ヒンジ機構41を折り曲げることで、主翼2の一部が上下し所謂エルロンとして機能するようになる。それにより、ロール方向(図1の矢印A方向)の調整、すなわち主翼の左右の揚力調整を行うことができる。
【0032】
また、骨組構造10は、一対の第2主翼縦骨16,16の軸線に対して上下方向に折り曲げ可能に、第2縦細骨16aを、一対の第2主翼縦骨16,16のそれぞれに接続する第2ヒンジ機構42を備える。第2縦細骨16aが上下に傾くよう第2ヒンジ機構42を折り曲げることで、主翼2の一部が上下してフラップとして機能するようになる。フラップ効果により、超微風環境下においても、揚力を増加させることが可能になる。そのため、風が極端に弱い場合にも運用性を向上させることができる。
【0033】
このように、層流で飛行する本実施形態の凧1に、ロール方向(図1の矢印A方向)、ピッチ方向(図1の矢印B方向)、ヨー方向(図1の矢印C方向)に空力的に調整する垂直尾翼8、捻じり機構30、第1ヒンジ機構41、第2ヒンジ機構42と、を追加することにより、空気抵抗を最小限に抑えながら、調整を行うことができる。そのため、上昇角を低下させることを防止することができる。
【0034】
また、骨組構造10は、図2及び図5に示すように一対の主翼細骨19,19の軸線に対して上下方向に折り曲げ可能に、延長細骨19aを一対の主翼細骨19,19のそれぞれに接続する第3ヒンジ機構43を備える。延長細骨19aが上に傾くよう第3ヒンジ機構43を折り曲げることで、初列風切羽6の一部を跳ね上げる。
近年の航空機では、燃費向上の対策の一手法としてウイングレットという翼の端部を上に折り曲げることにより、翼の下方からの風のまわり込みを防止して摩擦抵抗の性質を持つ効力を抑制し燃費を向上させることが行われている。
また、トビなどの滑空を行う鳥は、初列風切羽を少し跳ね上げて初列風切羽が発生させる自由渦と初列風切羽発生する位相の異なる自由渦により打ち消しあうことにより、自由渦による誘導抵抗を抑制している。
本実施形態の凧1においても、初列風切羽6の一部を跳ね上げることにより、実際のトビと同じ効果を得ることができる。また、航空機におけるウイングレットと同様の自由渦による誘導抵抗を抑制し、上昇角を高く保つことができる。
【0035】
図3(a)~(c)を用いて、本実施形態の凧1が備える捻じり機構30について具体的な構成を説明する。図3(a)に示すように、中心骨11の後方端部11aに主翼側連結部31が設けられ、尾翼中心骨21の端部に尾翼側連結部32が設けられる。主翼側連結部31には上下方向に延びる溝部31aが形成されていて、尾翼中心骨21の先端21aが溝部31aに挿入される。主翼側連結部31及び尾翼側連結部32の外側には着脱可能に接着する接着手段、例えば雄の面ファスナ33が取り付けられている。中心骨11に対して、尾翼中心骨21を捻じらせる場合、図3(b)に示すように、主翼側連結部31に対して尾翼側連結部32を傾けて取り付ける。そして図3(c)に示すように、面ファスナ33に接着する雌の面ファスナ34により、尾翼側連結部32の傾きがずれないよう固定する。このような構成により、中心骨11に対し尾翼中心骨21をねじれた状態で固定し、主翼2に対して水平尾翼3を傾けた状態とすることができる。主翼側連結部31と尾翼側連結部32とが当接する面に雌雄一対の面ファスナを設けてもよい。これは一例であり、着脱可能であれば、主翼側連結部31と尾翼側連結部32とを他の手法により接着してもよい。
【0036】
なお、本実施形態の凧1では、主翼2と水平尾翼3とは一枚の凧紙7を用いて作製されているが、主翼2と水平尾翼3とはそれぞれ独立して、別の凧紙を用いて作製されてもよい。
【0037】
本実施形態の第1ヒンジ機構41の構成を図4に示す。第1ヒンジ機構41は、一枚の細長い板ようの物質で作製され、例えば、アルミニウム等の金属又は樹脂で作製される。第1ヒンジ機構41は、形状記憶可能な金属又は樹脂であってよい。第1主翼縦骨15及び第1縦細骨15aの端部が、第1ヒンジ機構41の長手方向に沿って接着される。第2ヒンジ機構42及び第3ヒンジ機構43も同様の構造を備えている。
【0038】
上記実施形態では、主として本発明に係る凧について説明した。ただし、上記形態は、本発明の理解を容易に理解するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、図2に示す凧1に用いられた捻じり機構30及び第1~3ヒンジ機構41~43、尾翼に設けられた面ファスナ44,44は、例えば図7に示す大型の凧1aに適用されてもよい。大型の凧1aは鳥の形状を維持するため前縁近傍45に軽量平板が比較的広い範囲で設けられている。このような大型の凧1aにも、捻じり機構30及び第1~3ヒンジ機構41~43、面ファスナ44,44を用いて、エルロン4、フラップ5、ウイングレット、垂直尾翼を実現することができる。
また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
1,1a 凧
2 主翼
3 水平尾翼
4 エルロン
5 フラップ
6 初列風切羽
7 凧紙
8 垂直尾翼
10 骨組構造
11 中心骨
11a 後方端部
12 主翼主骨
13 主翼前縁骨
14 主翼補強骨
15 第1主翼縦骨
15a 第1縦細骨
16 第2主翼縦骨
16a 第2縦細骨
18 主翼中間補強骨
19 主翼細骨
19a 延長細骨
21 尾翼中心骨
21a 先端
22 尾翼補強骨
30 捻じり機構
31 主翼側連結部
31a 溝部
32 尾翼側連結部
33,34 面ファスナ
41 第1ヒンジ機構
42 第2ヒンジ機構
43 第3ヒンジ機構
44 面ファスナ
45 前縁近傍
A ロール方向
B ピッチ方向
C ヨー方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7