(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール装置及びパワー半導体モジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221118BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221118BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20221118BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/12 501C
H01L21/78 Q
(21)【出願番号】P 2019518894
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2018019354
(87)【国際公開番号】W WO2018212342
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017099869
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス/SiCに関する拠点型共通基板技術開発/自動車向けSiC耐熱モジュール実装技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】巽 宏平
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219324(JP,A)
【文献】特開2008-004612(JP,A)
【文献】特開2016-086082(JP,A)
【文献】特開2014-179612(JP,A)
【文献】特開2016-186964(JP,A)
【文献】特開2007-335473(JP,A)
【文献】特開2014-107506(JP,A)
【文献】特開2008-311685(JP,A)
【文献】特開2004-356138(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12、23/28-23/31、23/48-23/50
H01L 25/00-25/18
H01L 21/301、21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に面一に配列する複数の半導体素子間が絶縁性の支持体で固定され、前記半導体素子同士を表面側又は裏面側の一方の面で電気的に接続する第1面側電極として形成されている厚膜めっき層を有しており、前記厚膜めっき層が前記半導体素子を上下方向の一方から支持し、
前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子の電極とエッジを介して接続する接続面を有する導電配線金属板を有しており、前記厚膜めっき層と前記導電配線金属板とが前記半導体素子を上下方向から支持することを特徴とするパワー半導体モジュール装置。
【請求項2】
平面上に面一に配列する複数の半導体素子間が絶縁性の支持体で固定され、前記半導体素子同士を表面側又は裏面側の一方の面で電気的に接続する第1面側電極として形成されている第1厚膜めっき層を有しており、前記第1厚膜めっき層が前記半導体素子を上下方向の一方から支持し、
前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子同士を電気的に接続する第2面側電極として形成されている第2厚膜めっき層を有しており、前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが前記半導体素子を上下方向から支持し、
前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが略同一の厚さで、前記第1厚膜めっき層の表面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の30%以上であり、前記第2厚膜めっき層の裏面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の50%以上であり、前記表面側電極の投影面積と前記裏面側電極の投影面積との差が50%以内であることを特徴とするパワー半導体モジュール装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパワー半導体モジュール装置において、
前記第1厚膜めっき層及び前記第2厚膜めっき層のめっきの厚さが少なくとも50μm以上であることを特徴とするパワー半導体モジュール装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のパワー半導体モジュール装置において、
前記第1厚膜めっき層及び/又は前記第2厚膜めっき層の表面の一部又は全部が1μm以上の厚さのNi又はNi合金で被覆されていることを特徴とするパワー半導体モジュール装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のパワー半導体モジュール装置において、
前記導電配線金属板の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダがめっきで形成されているパワー半導体モジュール装置。
【請求項6】
半導体素子と、
前記半導体素子を側面方向から支持する絶縁性の支持体と、
前記半導体素子の第1の表面上の電極とエッジを介して電気的に接続し、前記半導体素子の第1の表面側から前記半導体素子と前記絶縁性の支持体とを支持する第1の導電配線金属板と、
前記半導体素子の第1の表面の反対側の面となる第2の表面上の電極とエッジを介して電気的に接続し、前記半導体素子の第2の表面側から前記半導体素子と前記絶縁性の支持体とを支持する第2の導電配線金属板とを有することを特徴とするパワー半導体モジュール装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパワー半導体モジュール装置において、
前記第1の導電配線金属板又は前記第2の導電配線金属板の少なくとも一方の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダがめっきで形成されているパワー半導体モジュール装置。
【請求項8】
配列基板上に複数の半導体素子を面一に配列するステップと、
配列された半導体素子間を絶縁材料で埋め込むステップと、
前記半導体素子の配線部分にレジスト溝を形成するステップと、
第1面側にめっきシードを形成し、厚膜めっき処理を行うステップと、
前記配列基板を剥離するステップと、
前記配列基板が剥離された第2面側に対して、前記半導体素子の第2面側の電極にエッジを介して接続する接続面を有する導電配線金属板と前記半導体素子の第2面側の電極とをめっきで接合し、前記半導体素子同士を電気的に接続する第2面側電極を形成するステップと、
モジュール単位に分割するステップとを含むことを特徴とするパワー半導体モジュール製造
方法。
【請求項9】
請求項8に記載のパワー半導体モジュール製造方法において、
前記配列基板上に複数の前記半導体素子を配列すると共に、前記半導体素子と略同一の厚みを有する導電体を前記半導体素子間に配置することを特徴とするパワー半導体モジュール製造方法。
【請求項10】
埋め込みの対象となる半導体素子よりも大きいサイズの貫通孔を有する絶縁基板の第1面側に、前記貫通孔の領域で前記半導体素子の第1面側の電極にエッジを介して接続する接続面を有する第1の導電配線金属板を接着するステップと、
前記貫通孔に前記半導体素子を嵌め込むステップと、
前記貫通孔内で前記絶縁基板と前記半導体素子との間を絶縁材料で埋め込むステップと、
前記第1の導電配線金属板の接続面と前記半導体素子の第1面側の電極とをめっきで接合するステップと、
前記絶縁基板の第2面側にめっきシードを形成し、厚膜めっき処理を行うステップと、
モジュール単位に分割するステップとを含むことを特徴とするパワー半導体モジュール製造方法。
【請求項11】
埋め込みの対象となる半導体素子よりも大きいサイズの貫通孔を有する絶縁基板の第1面側に、前記貫通孔の領域で前記半導体素子の第1面側の電極にエッジを介して接続する接続面を有する第1の導電配線金属板を接着するステップと、
前記貫通孔に前記半導体素子を嵌め込むステップと、
前記貫通孔内で前記絶縁基板と前記半導体素子との間を絶縁材料で埋め込むステップと、
前記第1の導電配線金属板の接続面と前記半導体素子の第1面側の電極とをめっきで接合するステップと、
前記絶縁基板の第2面側に
、前記貫通孔の領域で前記半導体素子の第2面側の電極にエッジを介して接続する接続面を有する第2の導電配線金属板を接着するステップと、
前記第2の導電配線金属板の接続面と前記半導体素子の第2面側の電極とをめっきで接合するステップと、
モジュール単位に分割するステップとを含むことを特徴とするパワー半導体モジュール製造方法。
【請求項12】
請求項8ないし10のいずれかに記載のパワー半導体モジュール製造方法において、
前記厚膜めっき処理がCu又はCu合金でなされ、形成された厚膜めっきの表面の一部又は全部が、1μm以上のNi又はNi合金でめっきされるステップを含むことを特徴とするパワー半導体モジュール製造方法。
【請求項13】
請求項
8ないし
10のいずれかに記載のパワー半導体モジュール製造方法において、
前記
導電配線金属板の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダをめっきで形成するステップを含むパワー半導体モジュール製造方法。
【請求項14】
請求
項11に記載のパワー半導体モジュール製造方法において、
前記第1の導電配線金属板又は前記第2の導電配線金属板の少なくとも一方の表面に、熱を拡散するためのヒートスプレッダをめっきで形成するステップを含むパワー半導体モジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材料を介して配列される半導体素子の表面側又は裏面側の少なくとも一方を厚膜めっきで配線形成するパワー半導体モジュール装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子電極と外部端子とを接続するのにワイヤボンディングや半田接続が利用されていた。しかしながら、ワイヤボンディングでは配線長が長くなると共に、超音波接合により半導体素子への応力負荷によるダメージが懸念される。また、半田接続の場合は、半導体素子の高温時における動作の信頼性の確保が困難になってしまう。
【0003】
そこで、めっき接続により半導体素子電極と外部端子とを接続することが有効と考えられるが、めっき接続の場合には、接続部分にボイドが発生してしまい、品質が低下してしまう可能性がある。そこで、めっき接続においてボイドの発生を防止する技術として、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に示す技術は、半導体素子1と金属板2との間において、突起3を中心に放射状にメッキ4が成長する構成としたものである。特許文献2に示す技術は、電気的に接続される電気回路の複数の電極間の少なくとも一部を直接又は間接的に接触させ、当該接触部分の周辺にメッキ液が流通した状態で電極間をメッキして接続するものである。
【0005】
また、半導体素子などをモールド樹脂で埋め込んで再構成する技術としてファンアウトウエハレベルパッケージ(FOWLP)技術が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-335473号公報
【文献】国際公開第2015/053356号
【文献】特開2014-179429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に示す技術は、いずれもめっき接続においてボイドの発生を抑制できるものであるが、個々の半導体素子を配列し、それぞれの電極をめっきで接合する技術ではない。また、FOWLPについては、多層構造で外部端子と接続するものであり、平面上に配列された個々の部品間を厚膜単層で接続し、半導体を支持するものではない。
【0008】
本発明は、平面上に配列された半導体素子間を絶縁体で支持すると共に、表面側又は裏面側の少なくとも一方から厚膜めっきにより半導体素子間を電気的に接続しつつ、上方向又は下方向の少なくとも一方から支持するパワー半導体モジュール装置及びパワー半導体モジュール製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、平面上に面一に配列する複数の半導体素子間が絶縁性の支持体で固定され、前記半導体素子同士を表面側又は裏面側の少なくとも一方の面で電気的に接続する第1面側電極として形成されている第1厚膜めっき層を有しており、前記第1厚膜めっき層が前記半導体素子を上下方向の少なくとも一方から支持するものである。
【0010】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、平面上に面一に配列する複数の半導体素子間が絶縁性の支持体で固定され、前記半導体素子同士を表面側又は裏面側の少なくとも一方の面で電気的に接続する第1面側電極として形成されている第1厚膜めっき層を有しており、前記第1厚膜めっき層が前記半導体素子を上下方向の少なくとも一方から支持するため、半導体素子の機械的な支持構造をめっきで形成することが可能となり、半導体モジュールをシンプルな構造にすることができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子の電極とエッジを介してめっき接続する接続面を有する導電配線金属板を有しており、前記第1厚膜めっき層と前記導電配線金属板とが前記半導体素子を上下方向から支持するものである。
【0012】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子の電極とエッジを介して接続する接続面を有する導電配線金属板を有しており、前記第1厚膜めっき層と前記導電配線金属板とが前記半導体素子を上下方向から支持するため、一方の面にのみパターニングが必要な場合などに、導電配線金属板により簡単なプロセスで配線することが可能になると共に、半導体素子の電極と導電配線金属板の接続面とがエッジを介することで、半導体素子電極とリードの接続面との間にめっき液を十分に流通させることができ、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができる。
【0013】
なお、上記エッジとは、電極面とめっき接続する被接合体との界面が山形、円錐、ボール、円筒状の形状で形成され、線状もしくは点状、又は球状もしくは円状の頂点の突起部を指し、電極面とエッジ部周辺の間隙部をエッジを介しためっき接続をすることで、強固で、熱、電流損失が少ない伝達接合部を形成することができる。
【0014】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子同士を電気的に接続する第2面側電極として形成されている第2厚膜めっき層を有しており、前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが前記半導体素子を上下方向から支持するものである。
【0015】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、前記第1面側電極と反対側の面に、前記半導体素子同士を電気的に接続する第2面側電極として形成されている第2厚膜めっき層とを有しており、前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが前記半導体素子を上下方向から支持するため、半導体素子の機械的な支持構造をめっきで形成することが可能となり、半導体モジュールをシンプルな構造にすることができるという効果を奏する。また、第1面側電極と第2面側電極とを同一のめっきプロセスで簡単に形成することが可能になるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが略同一の厚さで、前記第1厚膜めっき層の表面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の30%以上であり、前記第2厚膜めっき層の裏面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の50%以上であり、前記表面側電極の投影面積と前記裏面側電極の投影面積との差が50%以内とするものである。
【0017】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、前記第1厚膜めっき層と前記第2厚膜めっき層とが略同一の厚さで、前記第1厚膜めっき層の表面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の30%以上であり、前記第2厚膜めっき層の裏面側電極の投影面積が、前記半導体素子の投影面積の50%以上であり、前記表面側電極の投影面積と前記裏面側電極の投影面積との差が50%以内であるため、表面側及び裏面側の電極で放熱効果を高めることができると共に、表面側と裏面側との熱膨張による影響の差を最小限に抑えて高品質に保つことができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第1厚膜めっき層及び前記第2厚膜めっき層のめっきの厚さが少なくとも50μm以上とするものである。
【0019】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、前記第1厚膜めっき層及び前記第2厚膜めっき層のめっきの厚さが少なくとも50μm以上であるため、パワー半導体モジュールで大電流を通電しつつ、半導体素子を強固に支持することができるという効果を奏する。また、厚膜配線が形成された後に150℃以上の温度で熱処理することが望ましく、その場合に、50μmより薄いと半導体素子との熱膨張差による熱応力で反り量が増大してしまうが、50μm以上の厚みとすることで、構造材として形状を維持することができるという効果を奏する。なお、めっきの厚みは、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは200μm以上であってもよい。
【0020】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第1厚膜めっき層及び/又は前記第2厚膜めっき層の表面の一部又は全部が1μm以上の厚さのNi又はNi合金で被覆されているものである。
【0021】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、前記第1厚膜めっき層及び/又は前記第2厚膜めっき層の表面の一部又は全部が1μm以上の厚さのNi又はNi合金で被覆されているため、導電性に優れ、高温での耐食性にも優れた配線構造とすることができるという効果を奏する。
【0022】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、複数の前記半導体素子のうち一の前記半導体素子がスイッチング素子であり、当該スイッチング素子以外の他の前記半導体素子のうち少なくとも一の前記半導体素子がダイオードであり、前記半導体素子間に、前記第1面側電極と前記第2面側電極とを電気的に接続するための前記半導体素子と略同一の厚みを有する導電体が配設されており、当該導電体が前記第1面側電極及び前記第2面側電極と電気的に接続されているものである。
【0023】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、複数の前記半導体素子のうち一の前記半導体素子がスイッチング素子であり、当該スイッチング素子以外の他の前記半導体素子のうち少なくとも一の前記半導体素子がダイオードであり、前記半導体素子間に、前記第1面側電極と前記第2面側電極とを電気的に接続するための前記半導体素子と略同一の厚みを有する導電体が配設されており、当該導電体が前記第1面側電極及び前記第2面側電極と電気的に接続されているため、上記に示したようなシンプルな構造で高性能なスイッチング素子を実現することができると共に、第1面側電極と第2面側電極とを導電体を介しためっき接続により電気的に確実に接続することができるという効果を奏する。
【0024】
本発明に係るパワー半導体モジュール装置は、前記導電配線金属板の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダがめっきで形成されているものである。
【0025】
このように、本発明に係るパワー半導体モジュール装置においては、導電配線金属板の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダがめっきで形成されているため、熱を効率よく放出することができるという効果を奏する。また、ヒートスプレッダがめっきで形成されているため、導電配線金属板とヒートスプレッダとの間に半田等を介することなく、導電配線金属板の熱をヒートスプレッダに効率よく伝達することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の回路図の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の構成を示す側断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法を示す第1の図である。
【
図4】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法を示す第2の図である。
【
図5】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法を示す第3の図である。
【
図6】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の他の構成を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法を示す図である。
【
図8】第3の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の構成を示す第1の図である。
【
図9】第3の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の構成を示す第2の図である。
【
図10】第3の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置のその他の構成を示す第1の図である。
【
図12】第3の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置のその他の構成を示す第2の図である。
【
図13】第4の実施形態に係るパワー半導体モジュール装置におけるヒートスプレッダの形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0028】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置について、
図1ないし
図7を用いて説明する。本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置は、平面上に面一に配列する複数の半導体素子間を絶縁性の支持体で固定しつつ、半導体素子同士を第1面側(以下、表面側という)で電気的に接続する第1面側電極(以下、表面側電極という)として第1厚膜めっき層と、半導体素子同士を第2面側(以下、裏面側という)で電気的に接続する第2面側電極(以下、裏面側電極という)として第2厚膜めっき層とを形成し、第1厚膜めっき層と第2厚膜めっき層とを半導体素子を上下方向から支持する支持体として形成するものである。
【0029】
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置おいては、例えば第1の半導体素子をハイサイド側のスイッチング素子SW1、第2の半導体素子をスイッチング素子SW1に対応するダイオードD1、第3の半導体素子をローサイド側のスイッチング素子SW2、第4の半導体素子をスイッチング素子SW2に対応するダイオードD2とするスイッチング電源回路について説明する。なお、スイッチング電源回路以外のパワー半導体についても、本実施形態に係る技術を適用可能である。また、スイッチング素子としては、Si、SiC等の素子を利用することが可能であり、SiCMOSとダイオード、IGBTとダイオードなどの組み合わせが可能である。
【0030】
図1は、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の回路図の一例を示す図である。
図1において、スイッチング電源回路1は、直流電流を交流電流に変換して負荷に供給するものである。スイッチング電源回路1に供給された直流電流はスイッチング素子の相補的な切り替えにより交流電流に変換される。ハイサイド側のスイッチング素子SW1とローサイド側のスイッチング素子SW2とは、直列接続されており、その接続点Tから例えばモータなどの負荷Mに対して電力が供給される。スイッチング素子SW1,SW2には、逆起電力により当該スイッチング素子SW1,SW2が破壊されないように、それぞれのスイッチング素子SW1,SW2と逆並列にダイオードD1及びダイオードD2が接続されている。
【0031】
なお、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置は、基板レベルで一括して複数のモジュールを形成し、最後に各モジュール単位に分割することで、個々のモジュールを製造することができる。製造方法の詳細については後述する。
【0032】
図2は、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の構成を示す図である。
図2(A)が側断面図、
図2(B)が上面投影図、
図2(C)が下面投影図である。パワー半導体モジュール装置を構成するスイッチング電源回路1は、それぞれが平面上に面一に配列されているスイッチング素子SW1、ダイオードD1、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の各半導体素子と、当該各半導体素子間に充填されて当該各半導体素子を少なくとも側面方向から支持する絶縁支持体11と、スイッチング素子SW1及びダイオードD1の表面側を電気的に接続する第1表面側電極12、並びに、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の表面側を電気的に接続する第2表面側電極13として形成される第1厚膜めっき層14と、第1スイッチング素子SW1及び第1ダイオードD1の裏面側を電気的に接続する第1裏面側電極15、並びに、第2スイッチング素子SW2及び第2ダイオードD2の裏面側を電気的に接続する第2裏面側電極16として形成される第2厚膜めっき層17と、第1裏面側電極15と第2表面側電極13との間をめっき層を介して電気的に接続するための導電体18とを備える。
【0033】
図2(A)に示すように、平面上に面一に配列された各半導体素子は、その半導体素子間に介在している絶縁支持体11により側面方向から支持されると共に、上下方向から第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17でより強固に支持される構造となっている。第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17は、少なくとも50μm(より好ましくは100μm、さらに好ましくは200μm)以上の厚さを有しており、半導体素子間及び外部との電気的な接続を行うと共に、各半導体素子を強固に支持固定することが可能となる。すなわち、第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17は配線金属基板として機能することが可能となり、本実施形態においては、部品としての配線金属基板が不要な構造となっている。また、厚膜めっき層が形成された後に150℃以上の温度で熱処理することが望ましいため、その場合に、厚膜めっき層が50μmより薄いと半導体素子との熱膨張差による熱応力で反り量が増大してしまうが、50μm以上の厚みとすることで、構造材として形状を維持することが可能となる。
【0034】
また、
図2(B)、(C)に示すように、第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17における電極部分(第1表面側電極12、第2表面側電極13、第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16)の投影面積が、ゲート電極を有する側、すなわち第1表面側電極12及び第2表面側電極13については、
図2(B)に示すように、各半導体素子の投影面積の少なくとも30%以上の大きさとなっており、ゲート電極を有しない側、すなわち第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16については、
図2(C)に示すように、各半導体素子の投影面積の少なくとも50%以上の大きさとなっており、いずれも大電流を流しつつ、各半導体素子を上下方向から強固に支持することが可能となっている。
【0035】
また、上述したように、第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17の厚さがどちらも50μm(より好ましくは100μm、さらに好ましくは200μm)以上で略同一の厚さを有しており、第1厚膜めっき層14における第1表面側電極12及び第2表面側電極13の投影面積と、第2厚膜めっき層17における第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16の投影面積との差(すなわち、
図2(B)に示す第1表面側電極12及び第2表面側電極13の投影面積と、
図2(C)に示す第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16の投影面積との差)が50%と以内となっている。つまり、第1厚膜めっき層14と第2厚膜めっき層17とにおいて熱膨張の差が発生しにくいため、熱膨張による変形応力等によって品質が低下するのを防止することが可能となる。特に、多層に積層された際には上下間の撓みを最小限に抑えて品質を保つことが可能となる。
【0036】
なお、第1厚膜めっき層14の第1表面側電極12及び第2表面側電極13、並びに、第2厚膜めっき層17の第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、アルミニウム、亜鉛、パラジウム等であることが好ましい。また、少なくとも最表面がニッケルめっきで被覆されることで腐食等が防止されるようにしてもよい。
【0037】
例えば、Cuめっきにより主めっき層を形成し、表面に1μm以上の厚みで被覆層を形成することで、導電性に優れ、高温での耐食性にも優れた、配線構造とすることができる。めっきするための下地層には、絶縁材料及び半導体素子電極ともに密着性の優れるCr、Ni、Ti、Pdなどの金属、又は、それらの合金もしくはそれらの金属の複層をスパッタ蒸着し、シード層として金属めっきをすることができる。
【0038】
また、電極側からCr、Ni、Pd又は最表面には、さらにめっき金属と同種のもの又は酸化防止のためのAgもしくはAu膜を形成することが好ましい。
【0039】
さらに、第1厚膜めっき層14及び第2厚膜めっき層17を形成するためのめっき処理の方法としては、電気めっきの他溶融めっきを利用することが可能である。溶融めっき金属としては、比較的低融点のZn、Al又はそれらの合金としてもよい。その場合の半導体素子は、耐熱性に優れるGaNやSiCなどの化合物半導体素子としてもよい。
【0040】
さらにまた、上記各半導体素子のいずれか1つ又は複数が、SiC又はGaN半導体であってもよい。そうすることで、放熱効果を高めることが可能となる。
【0041】
次に、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法について説明する。まず、
図3(A)に示すように、基板21上にスイッチング素子SW1、ダイオードD1、スイッチング素子SW2及びダイオードD2の各半導体素子が面一に配列されると共に、スイッチング素子SW1及びダイオードD1からなる第1ペアと、スイッチング素子SW2及びダイオードD2からなる第2ペアとの間に導電体18が配置される。各半導体素子及び導電体18が配置されると、
図3(B)に示すように、上記の各半導体素子と導電体18を埋め込むように樹脂22でモールドされる。モールドされた樹脂22に対して、
図3(C)に示すように、上記各半導体素子の電極部分及び導電体18の表面が露出されるように溝23を形成する。この処理にはレジストを用いた一般的な露光、エッチング処理が適用できる。例えば、樹脂22の上にレジストを塗布し、選択的な露光処理を行ったあとレジスト除去を行い、レジストに開口部を形成する。開口部をドライエッチング又は薬液処理を行って、開口部の樹脂22を除去することで溝23を形成し、その後、レジストを除去する。なお、他の方法として、
図3(A)のプロセスの次に、開口すべき部分に耐熱性のマスクを配置しておき、樹脂をモールドした後、マスクをその上の樹脂ごと除去して溝23を形成してもよい。
【0042】
続いて、
図4(A)に示すように、電極を形成しない領域S1をマスク24でマスクした状態で、表面にめっき処理のためのシード31を形成する。マスク24としてレジストを用いることができ、先に説明したような方法で露光と選択的除去を行うことで領域S1上のみにレジストを残すことができる。シード31が形成されると、
図4(B)に示すように、領域S1をマスクした状態のままめっき処理を行って第1表面側電極12及び第2表面側電極13としての第1厚膜めっき層14が形成される。第1厚膜めっき層14を形成したあとマスク24として用いたレジストを除去し、続いて
図4(C)に示すように、基板を剥離し、裏面側の工程へと進む。なお、基板剥離を容易にするため、予め基板と素子の接着に加熱や紫外線で剥離可能な耐熱性両面接着シートを用いるようにしてもよい。
【0043】
裏面側については、
図5(A)に示すように、
図4(A)の場合と同様に、電極を形成しない領域S2をマスク25でマスクした状態で、裏面側表面にめっき処理のためのシード41を形成する。裏面側のシード41が形成されると、
図5(B)に示すように、領域S2をマスクした状態のまま領域S2の下方空間にめっきが侵入しないようにレジスト処理を施し、めっき処理を行って第1裏面側電極15及び第2裏面側電極16としての第2厚膜めっき層17が形成される。第2厚膜めっき層17を形成したあとマスク25として用いたレジストを除去し、続いて
図5(C)に示すように、全体を樹脂26でモールドした後、モジュール単位でダイシングすることで、本実施形態に係るパワー半導体モジュールが製造される。
【0044】
なお、上記めっき処理は、電解めっき、無電解めっき又は溶融めっきのいずれかを適用することが可能である。また、樹脂22の絶縁体は、例えばゾルゲル法を用いて行うようにして、セラミックスを形成するか、Pガラスを塗布してもよい。さらに、
図5(C)に示すように、最上層にビルトアップで樹脂26の層が形成され、さらに放熱基板又は放熱フィンを金属溶融(ダイキャスト法)により形成するようにしてもよい。
【0045】
また、上記の製造工程において、
図6に示すように、導電体18を配設せずに、導電体18の位置でスイッチング素子SW1及びダイオードD1からなる第1ペア63と、スイッチング素子SW2及びダイオードD2からなる第2ペア64とに分断するようにダイシングし、それぞれの部品を外部で接続するか縦に積層し、近接する面61においてワイヤやボール等のエッジ部62を介してめっき接続することで、第1ペア63と第2ペア64とに分断されたそれぞれの半導体素子(スイッチング素子SW1、ダイオードD1、スイッチング素子SW2及びダイオードD2)を電気的に接続して積層構造を形成するようにしてもよい。このとき、例えば、国際公開第2015/053356号に開示されているようなめっき技術を用いることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置においては、平面上に面一に配列する複数の半導体素子間を絶縁体で固定し、半導体素子同士を表面側及び裏面側で電気的に接続し、それぞれに第1厚膜めっき層及び第2厚膜めっき層とを有しており、第1厚膜めっき層と第2厚膜めっき層とが半導体素子を上下方向から支持するため、半導体素子の機械的な支持構造をめっきで形成することが可能となり、半導体モジュールをシンプルな構造にすることができる。
【0047】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法について、
図7を用いて説明する。前記第1の実施形態における
図3~
図5に示したパワー半導体モジュール装置の製造方法以外にも、
図7に示すような製造方法を用いてパワー半導体モジュールを製造することができる。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0048】
具体的には、表面側及び裏面側の両面に導電性(例えば、Cu等)の導電配線金属板71が形成されているセラミックス又は樹脂基板(基板72)を用意し、表面側となる面を支持用の仮止めテープ73で仮止めする(
図7(A))。
図7(A)の基板72に半導体素子74よりも大きい貫通孔75を設け(
図7(B))、貫通孔内に半導体素子74を配置する(
図7(C))。基板72と半導体素子74間を、例えばディスペンサにより絶縁樹脂又はセラミックス粒子ペースト等で充填する(
図7(D))。充填された絶縁樹脂又はセラミックス粒子ペーストが硬化したら、仮止めテープ73を剥がす(
図7(E))。表面側に対して、配線パターンに合わせて、例えばメタルマスクやマスクテープでマスクし、シード層を形成し、厚膜めっき金属を堆積させて第1厚膜めっき層14で配線を形成する(
図7(F))。裏面側も同様に厚膜めっき金属を堆積させて第2厚膜めっき層17で配線を形成する(
図7(G))。このような製造方法を用いることで、
図2に示す構造と同様の構造を形成することが可能となる。
【0049】
なお、樹脂基板は、例えばポリイミド材で両面に導電配線金属板を接着したものでもよい。また、厚みは絶縁材が50μmから1mm、銅板は50μm~0.5mm程度が好適である。
【0050】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置について、
図8ないし
図11を用いて説明する。本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置は、表面側又は裏面側のいずれか一方の電極を前記各実施形態において説明した厚膜めっきで形成し、他の面側の電極については、導電配線金属板で形成するものである。このとき、導電配線金属板と半導体素子との電極接続面はエッジ部を介してめっき接続されるものである。本実施形態においては、例えば、パターニングが必要な方の面を導電配線金属板で電極形成し、パターニングが不要な面を厚膜めっきで電極形成する。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0051】
図8は、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の構成を示す第1の図である。なお、
図8及び
図9においては、一例としてダイオードとMOSFETを用いた場合の構造を示している。
図8(A)は上面図、
図8(B)は
図8(A)における矢印aの断面図である。
図8において、両面に導電配線金属板が配設されたセラミックス基板81に半導体素子82(ここでは、ダイオード82aとMOSFET82b)が埋め込まれており、それぞれの半導体素子82の側面の隙間にはセラミックス材料が充填されて、半導体素子82の側面方向から支持している。表面側は、導電配線金属板83のリード83aと半導体素子82の電極82cとがバンプ84のエッジ部分を介してめっきにより接続されている。
図8(B)に示すように、リード83a間には隙間が空いていることから、半導体素子82の電極82cとリード83aの接続面との間にめっき液を十分に流通することができるため、エッジ部分を介しためっき接続を行うことで、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができる。裏面側は、上記第1の実施形態において説明したように、厚膜めっき層85を配線として形成する構造となっている。
【0052】
図9において、
図9(A)は上面図、
図9(B)は
図9(A)における矢印aの断面図を示しており、
図8の場合と同様に、両面に導電配線金属板が配設されたセラミックス基板81に半導体素子82が埋め込まれており、半導体素子82の側面の隙間にはセラミックス材料が充填されて、半導体素子82の側面方向から支持している。表面側は、導電配線金属板83のリード83aの接続面が山形に形成されており、その山形のエッジ部分を介して半導体素子82の電極82cとめっきにより接続されている。ここでも、
図9(A)に示すように、リード83a間には隙間が空いていることから、半導体素子82の電極82cとリード83aの接続面との間にめっき液を十分に流通することができるため、エッジ部分を介しためっき接続を行うことで、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができる。裏面側は、上記第1の実施形態において説明したように、厚膜めっき層85を配線として形成する構造となっている。
【0053】
次に、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造方法について説明する。ここでは、
図9の構造について説明する。
図10は、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置の製造工程を示す図である。まず、セラミックス又は樹脂基板(基板92)を用意し、半導体素子82(ここでは、ダイオード82aとMOSFET82b)よりも大きい貫通孔95を設ける(
図10(A))。基板92の表面側及び裏面側に導電配線金属板83を接着する(
図10(B))。このとき、表面側の導電配線金属板83は、貫通孔95以外の領域に少なくとも接着され、貫通孔95の領域については、間隔を空けて複数のリード83aが配設されている。これらのリード83aは、後述する工程で貫通孔95内に埋め込まれる半導体素子82の表面電極の位置と、リード83aに形成されている山形のエッジ部分83bの位置とが対応するように接着される。また、裏面側の導電配線金属板83は、貫通孔95以外の領域に接着され、貫通孔95の領域は開口した状態となる。
【0054】
裏面側の開口部から半導体素子82を貫通孔95に嵌め込み、基板92と半導体素子82間を、例えばディスペンサにより絶縁樹脂又はセラミックス粒子等で充填して固定する(
図10(C))。リード83aのエッジ部分83bをめっき処理して表面側の導電配線金属板83と半導体素子82とを接続する(
図10(D))。半導体素子82の裏面側電極に銅薄膜98をスパッタにより被着させ(
図10(E))、その後、規格電流量を勘案して、必要な厚みの厚膜めっき層85を形成し、電流配線層とする(
図10(F))。
【0055】
なお、導電配線金属板83のリード83aの接続面に形成される山形の突起は、接触面に対して5~30度程度の傾斜角度で形成されることが望ましい。また、突起の形状は、山形以外にも、台形状、円弧状、波状等のようにエッジ部分が形成されるような形状であればよい。
【0056】
このように、一方の面の電極を導電配線金属板で形成し、他方の面を厚膜めっきで形成することで、一方の面にのみパターニングが必要な場合などに、導電配線金属板により簡単なプロセスで配線することが可能になると共に、半導体素子の電極と導電配線金属板の接続面とがエッジを介することで、半導体素子電極とリードの接続面との間にめっき液を十分に流通させることができ、ボイド等を発生させることなく高品質なめっき接続を実現することができる。
【0057】
なお、例えば、
図11及び
図12に示すように、表面側だけではなく、裏面側についても、エッジ部分を介して導電配線金属板と接続し、電流配線層を形成する構成とすることも可能である。ここで、
図11(A)及び
図12(A)は上面図、
図11(B)及び
図12(B)は下面図、
図11(C)及び
図12(C)は
図11(A)及び
図12(A)の矢印aにおける断面図を示している。
【0058】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置について、
図13を用いて説明する。本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置は、前記第3の実施形態におけるパワー半導体モジュール装置の導電配線金属板83の表面にめっきによりヒートスプレッダが形成されるものである。
【0059】
パワー半導体モジュール装置においては、半導体素子と導電配線金属板83を接続するだけではなく、放熱用に熱伝導率が高い金属(ヒートスプレッダ)も接続する必要がある。ヒートスプレッダを導電配線金属板83に接続する場合には、半田を介して接続する方法があるが、半田は熱伝導率が悪いため、ヒートスプレッダと導電配線金属板83との間に半田を介するとヒートスプレッダの効果が十分に発揮できなくなってしまう。そこで、本実施形態においては、半田のような熱伝導率が悪い材料を介することなく、導電配線金属板83の表面にめっきにより直接ヒートスプレッダを形成する。
【0060】
なお、本実施形態におけるめっきには電解めっき、無電解めっき、溶融めっきを含んでおり、電界めっきや無電解めっきにおいては、導電配線金属板83の表面にめっき金属を直接析出させてヒートスプレッダを形成するようにしてもよい。また、溶融めっきにおいては、比較的低融点の亜鉛やアルミニウムを溶かして鋳造し、又は、3次元プリンタのようにノズルから溶融金属を吹き付けてヒートスプレッダを形成するようにしてもよい。
【0061】
本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置におけるヒートスプレッダの形成方法について詳細に説明する。
図13は、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置におけるヒートスプレッダの形成方法の一例を示す図である。
図13に示すヒートスプレッダの形成方法は、
図9のように、表面側に導電配線金属板83が配設され、裏面側が厚膜めっき層85で形成されている場合における導電配線金属板83表面へのヒートスプレッダの形成方法を示している。なお、ここでは、
図9に示すパワー半導体モジュール装置を樹脂でモールドした後に、ビルドアップ型でヒートスプレッダを形成する場合の処理を示している。裏面側には厚膜の銅めっきなどがされており、この裏面側にヒートスプレッダの形成を行わない場合は、モールド樹脂で覆われないようにするか、モールド後に、研磨などで樹脂を取り除くようにしてもよい。
【0062】
まず、樹脂122でモールドされたパワー半導体モジュール装置1を用意し(
図13(A))、導電配線金属板83の箇所をレーザで穴開けし、ヒートスプレッダ120が不要な箇所にリフトオフ用レジスト121を塗布する。このとき、裏面側の樹脂は研磨で除去する(
図13(B))。めっき処理のために
図13(B)で形成されたパワー半導体モジュール装置1の表面側にTi-Auのシード31を成膜する(
図13(C))。レジスト121を剥離し、同時にレジスト箇所のシード層を除去する。めっき処理によりヒートスプレッダ120を形成する(
図13(D))。このときのめっき処理は、上述したように、電解めっき、無電解めっき、溶融めっきのいずれの手法を用いてもよい。シード31は金属で1μm程度以下であるため、ヒートスプレッダの材質より熱伝導の低いものであっても放熱性の低下要因にはほとんどならない。
【0063】
このように、本実施形態に係るパワー半導体モジュール装置においては、導電配線金属板83の表面に熱を拡散するためのヒートスプレッダ120がめっきで形成されているため、熱を効率よく放出することができると共に、ヒートスプレッダ120がめっきで形成されているため、導電配線金属板83とヒートスプレッダ120との間に熱伝導率が良くない半田等を介することなく、導電配線金属板83の熱をヒートスプレッダ120に効率よく伝達することが可能になる。
【0064】
なお、本実施形態に係るヒートスプレッダの構造及び形成方法は、
図9に示すパワー半導体モジュール装置以外にも、
図8、
図11、
図12に示すパワー半導体モジュール装置においても適用することが可能である。特に
図11及び
図12に示すパワー半導体モジュール装置の場合には、それぞれの裏面側を
図13の表面側と同様の構造とし、
図13に示すプロセスをこの裏面側に適用することで、パワー半導体モジュール装置の両面にヒートスプレッダが形成される構造となる。なおゲート電極など、放熱不要な電極部分には、ヒートスプレッダーの形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
D1,D2 ダイオード
SW1,SW2 スイッチング素子
1 スイッチング電源回路
11 絶縁支持体
12 第1表面側電極
13 第2表面側電極
14 第1厚膜めっき層
15 第1裏面側電極
16 第2裏面側電極
17 第2厚膜めっき層
18 導電体
21 基板
22 樹脂
23 レジスト溝
26 樹脂
31 シード
41 裏面側シード
61 面
62 エッジ部
63 第1ペア
64 第2ペア
71 金属配線
72 基板
73 仮止めテープ
74 半導体素子
81 セラミックス基板
82 半導体素子
82a ダイオード
82b MOSFET
83 導電配線金属板
83a リード
83b エッジ部分
84 バンプ
85 厚膜めっき層
92 基板
95 貫通孔
98 銅薄膜
120 ヒートスプレッダ
121 レジスト
122 樹脂