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特許7178715ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/31 20060101AFI20221118BHJP
   C07D 211/42 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 31/45 20060101ALI20221118BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
C07C233/31 CSP
C07D211/42
A61K31/16
A61K31/165
A61K31/45
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P17/00
A61P11/00
A61P15/00
A61P1/00
A61P13/10
A61P13/08
A61P17/10
A61P17/06
A61P17/08
A61P17/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019565229
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034106
(87)【国際公開番号】W WO2018217873
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】62/510,113
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラニ,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ショウォルター,ホリス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ケント ジェイ.
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05837728(US,A)
【文献】特開平09-012538(JP,A)
【文献】CAS Registry No. 1349580-55-7,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月06日
【文献】CAS Registry No. 1349647-48-8,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月06日
【文献】CAS Registry No. 1349115-10-1,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月05日
【文献】CAS Registry No. 1348354-96-0,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月04日
【文献】CAS Registry No. 1347982-87-9,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月04日
【文献】CAS Registry No. 1347977-28-9,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月04日
【文献】CAS Registry No. 1347914-23-1,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月04日
【文献】CAS Registry No. 1347113-46-5,DATABASE REGISTRY [online],Entered STN,2011年12月01日
【文献】VARANI, James et al.,Archives of Dermatological Research,2003年,295,255-262
【文献】MAGOULAS, George et al.,European Journal of Medicinal Chemistry,2009年,44,2689-2695
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有する化合物、またはその薬理学的に許容される塩、または水和物、または溶媒和物:
【化1】

式中、Rは、CH、CF 、C 2-10 アルキル、C 3-10 アルケニル、C 3-10 アルキニルであり、これらの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよく、またはCF であってもよく、R は、C 1-10 アルキル、C 3-10 シクロアルキル、C 2-10 アルケニル、C 3-10 シクロアルケニル、C 2-10 アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CF 、OR 、またはOR から独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、
は、CH (CO)R 、C 1-10 アルキル、C 3-10 アルケニル、C 3-10 アルキニルであり、これらの全ては直鎖状または分枝状であってもよく、またはCF であってもよく、これらはC 1-10 アルキル、C 3-10 シクロアルキル、C 2-10 アルケニル、C 3-10 シクロアルケニル、C 2-10 アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CF 、OR 、またはOR から独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、
または、窒素と共に結合しているR およびR は、任意で置換された、4~7個の原子を有する環を形成し、任意で置換された、前記4~7個の原子を有する環は、下記化学式からなる群から選択され、
【化2】

は、C2-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、フェニル、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を最大4個含む単環式または二環式5~10員ヘテロアリール、C 3-7 シクロアルキル、4~7員ヘテロシクロアルキルであり、任意で、C1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、C3-10分枝状アルキル、C3-10分枝状アルケニル、C4-10分枝状アルキニル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、オキソ、またはCFから独立して選択される、最大3つの基で置換されていてもよく、C 2-10 アルキル、C 2-10 アルケニル、C 2-10 アルキニルの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよく、;
は、下記化学式からなる群から選択される。
【化3】
【請求項2】
前記化合物は、下記化学式からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、または水和物。
【化4】
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を含む、薬学的組成物
【請求項4】
患者における細胞の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害を治療または善する方法に使用するための、薬学的組成物であって
前記方法は、前記薬学的組成物の治療有効量を、前記患者に投与する工程を含み、
前記障害は、腫瘍障害または皮膚障害であり、
前記患者が、ヒトの患者である、請求項3に記載の薬学的組成物
【請求項5】
前記腫瘍障害は、急性前骨髄球性白血病(APL)、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌ならびに類似の障害からなる群から選択される、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項6】
前記腫瘍障害は、APLまたは神経芽細胞腫である、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項7】
前記方法は、第2の薬剤を、前記患者に投与することをさらに含み、
前記第2の薬剤は、1つ以上の抗癌剤であり、
前記抗癌剤は、化学療法薬剤または放射線療法またはその両方である、請求項またはに記載の薬学的組成物
【請求項8】
前記皮膚障害は、角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症、および皮膚損傷からなる群より選択される、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項9】
前記皮膚障害はざ瘡である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記皮膚障害は、圧迫潰瘍/床ずれである、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項11】
前記皮膚障害は、糖尿病性潰瘍である、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項12】
前記皮膚障害は、老化によって萎縮した皮膚である、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項13】
前記角質化障害は、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫、およびケロイドより選択され;
前記皮膚損傷は、老化によって萎縮した皮膚、光損傷された皮膚、代謝性疾患に関連する皮膚損傷、ステロイド使用に関連する皮膚損傷、圧迫潰瘍/床ずれ、および糖尿病性潰瘍より選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物、および前記化合物を、腫瘍障害および/または皮膚障害を有する患者に投与するための指示を含むキットであって、
前記腫瘍障害は、急性前骨髄球性白血病(APL)、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌ならびに類似の障害からなる群から選択され、
前記皮膚障害は、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイドなどの角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症および類似の障害からなる群から選択される、キット。
【請求項15】
1つ以上の抗癌剤をさらに含む、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
下記化学式からなる群から選択される、化合物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、または水和物。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2017年5月23日に出願された仮特許出願第62/510,113号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医薬化学の分野に属する。特に、本発明は、細胞、特にその増殖および分化がレチノイドの作用に感受性のある細胞における、異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害を患う対象の治療のための治療剤として有用な、ジメチル-ノナテトラエニルトリメチル-シクロヘキシル構造を有する、新規の分類となる小分子に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトにおいて、皮膚は、平均4キログラムの重量であり、2平方メートルの面積をカバーしている。そして、皮膚は、3つの別個の層:表皮、真皮および皮下組織からなる。ヒトの皮膚の2つの主な種類は、無毛皮膚(すなわち、手のひらおよび足底の無毛皮膚(「手のひら足底」表面とも称する))、および毛を有する皮膚である。後者の種類では、毛は、毛包脂腺単位と呼ばれる構造で生じ、それぞれは、毛包、皮脂腺、および付随するアレクター線毛筋を有する。このシステムの主な機能は、外部環境に対するバリアである。皮膚を構成する2つの要な細胞種類として、表皮ケラチノサイト(すなわち、外側の多細胞層を形成する上皮細胞)および真皮線維芽細胞(すなわち、皮膚の結合組織を形成する細胞)が挙げられる。両方の種類の細胞は、生物学的に活性のあるレチノイドに感受性がある。
【0004】
多数の状態および/または疾患が、ヒト外皮系に影響を及ぼす。最も一般的な状態の中には、炎症性障害および角質化障害(例えば、ざ瘡、乾癬、酒さ、層状魚鱗癬、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)および類似疾患)がある。
【0005】
皮膚はまた、その破壊につながる状態に影響されやすい。経時的老化のプロセスは、主要な例である。皮膚が老化するにつれて、皮膚はより薄くなり、びらんしやすくなる。日射への曝露(光損傷)、慢性的なステロイドの使用、糖尿病および他の代謝もしくは血管疾患もまた、皮膚の破壊に寄与する。美容上の結果としては、しわおよび色素沈着が挙げられる。より深刻な結果としては、容易に痣ができる、創傷の影響を受けやすくなる、および創傷が生じた場合の創傷の治癒不良が挙げられる。生物学的に活性のあるレチノイド(本特許の主題)は、炎症性疾患の治療および皮膚破壊の治療/予防において使用される。
【0006】
生物学的に活性のあるレチノイドはまた、腫瘍学の分野で使用される。例えば、急性前骨髄球性白血病(APL)は、一次治療としてオールトランスレチノイン酸(ATRA)で治療される。神経芽細胞腫は、13-シスレチノイン酸で治療される。さらに、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸部癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱がん、前立腺癌および類似の障害を含むいくつかの他の癌の種類は、レチノイド感受性が実証されている。
【0007】
ATRAは、炎症性皮膚疾患(例えば、ざ瘡)の治療および皮膚の修復(例えば、しわ)のために使用される薬物である。ATRAはまた、癌(例えば、APL)を治療するために使用される。ざ瘡および皮膚修復のためには、ATRAは、典型的にはクリームまたは軟膏として皮膚に塗布される。重度のざ瘡(結節性嚢胞性ざ瘡)では、13-シスレチノイン酸が全身に使用される(経口的に摂取される)。白血病にはATRAが使用され、最大3ヵ月間経口摂取されることがある。局所的なATRAは、皮膚にのみ使用され、眼または粘膜組織には塗布されるべきではない。一般的な副作用には、皮膚刺激、発赤、腫脹、および水疱が含まれる。さらに、皮膚は日焼けしやすくなる。
【0008】
実際、ATRAのようなレチノイドの現在の使用は、皮膚の状態において局所的に使用される場合に、皮膚刺激として現れる毒性、および癌を処置するために全身的に使用される場合に広範な毒性(レチノイン酸症候群/分化症候群)によって制限される。このようなレチノイド誘発性の皮膚刺激および全身毒性は、サイトカインストームを誘発するレチノイドの能力の反映であると考えられる。
【0009】
現在使用されているレチノイド(例えば、ATRA)の効力を有するが、広範なサイトカインの生成を誘導する能力を有さない新規化合物が、必要とされている。
【0010】
本発明は、この要求に取り組む。
【発明の概要】
【0011】
本発明の過程の間に行われた実験は、本明細書に記載されるジメチル-ノナテトラエニルトリメチル-シクロヘキシル化合物が、抗ざ瘡有効性を予測するアッセイ(ケラチノサイト剥離アッセイおよび表皮肥厚アッセイ)および皮膚修復有効性を予測するアッセイ(線維芽細胞生存数および表皮肥厚の増加)において、ATRAと同様の活性を有することを示す。同時に、このような化合物でのサイトカイン生成の欠如は、このような化合物がATRAとは異なり、局所的なATRA使用の古典的な結果である、皮膚刺激応答を引き起こさないことを示す。
【0012】
従って、本発明は、細胞(例えば、その増殖および分化がレチノイドの作用に感受性がある細胞)の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害に罹患している動物(例えば、ヒト)を、ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル構造(これは関連する皮膚刺激を伴わずにATRAの作用を模倣する)を有する薬物(単数または複数)の治療有効量に暴露すると、ATRAの応答と同様であるが、その副作用を伴わない有効な応答が生じることを意図する。
【0013】
本発明は、本発明のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、腫瘍学の分野に位置する障害、例えば、APL、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌ならびに類似の障害の治療に対するまだ満たされていない必要性を満たすことを意図する。
【0014】
本発明は、本発明のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、皮膚科学の分野に位置する障害(例えば、炎症性/角質化障害および皮膚損傷に関連する障害など)の治療に対するまだ満たされていない必要性を満たすことを意図する。このような障害の例には、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイド、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、および色素過剰症が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚損傷に関連する障害には、老化によって萎縮した皮膚、光損傷された皮膚、代謝性疾患に関連する皮膚損傷(例えば、糖尿病、ステロイド使用に関連する皮膚損傷)、および類似の障害が挙げられる。
【0015】
本発明は、本発明のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、単剤療法として投与される場合、または追加の薬剤(例えば、上述したような障害の治療(併用療法)において有用であることが知られている他の医薬剤)と時間的関係で投与される場合のいずれかで、上述したような障害の治療に対するまだ満たされていない必要性を満たすことを意図する。本発明の特定の実施形態において、治療有効量の本発明の化合物および上述したような障害を治療する際に有用な追加の医薬剤のコースによる、動物における組み合わせ治療は、当該化合物または追加の薬剤単独で治療された動物と比較して、当該動物におけるより大きな応答および臨床的利益を生じる。全ての承認された薬物についての投与は公知であるので、本発明は、承認された薬物と本化合物との種々の組み合わせを意図する。
【0016】
実際、本出願人らは、特定のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、腫瘍学の分野の障害、例えば、APL、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌および類似の障害;ならびに皮膚科学の分野の障害、例えば、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイドなどの炎症性/角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症および類似の障害の治療のための治療薬として働くことを見出した。本発明の特定のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在し得る。本発明は、純粋な個々の立体異性体の調製物および各々の濃縮調製物の両方、およびこのような立体異性体のラセミ混合物ならびに当業者に周知の方法に従って分離され得る個々のジアステレオマーおよびエナンチオマーの両方としての全ての立体異性体を含む。
【0017】
従って、本発明は例えば、腫瘍学および皮膚科学の分野における皮膚の状態の治療のための治療剤として有用なジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル構造を有する、新規の分類となる小分子を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、式Iに包含されるジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が提供され、当該化合物は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/またはプロドラッグを含む:
【0019】
【化1】
【0020】
いくつかの実施形態では、Rは、CH、CF、または2つ以上のカーボン分子を有する任意で置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0021】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CF、またはC2-4アルキルである。
【0022】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CFであるか、または1~10個の炭素原子の直鎖状または分枝状炭素鎖であり、これは原子価によって許容されるように、最大2つの二重結合または三重結合を含んでいてもよく、そして任意で、最大3つの置換基で置換されていてもよい。
【0023】
部分が任意に置換される場合のいくつかの実施形態では、そのようなR部分は、任意で、飽和または不飽和アルキル鎖、飽和または不飽和シクロアルキル部分、飽和または不飽和分枝状アルキル部分、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、任意に置換されたシアノ部分、任意に置換されたオキソ部分(例えば、=O)、または、下記で置換される。
【0024】
【化2】
【0025】
いくつかの実施形態では、Rは、
【0026】
【化3】
【0027】
CH、CF、または2つ以上のカーボン分子を有する任意に置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0028】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CFであるか、または1~10個の炭素原子の直鎖状または分枝状炭素鎖であり、前記炭素鎖は、原子価によって許容されるように、最大2つの二重結合または三重結合を含んでいてもよく、前記炭素鎖は、任意で、最大3つの置換基で置換されていてもよい。
【0029】
部分が任意に置換されたいくつかの実施形態では、そのようなR部分は、任意で、飽和または不飽和アルキル鎖、飽和または不飽和シクロアルキル部分、飽和または不飽和分枝状アルキル部分、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、任意に置換されたシアノ部分、任意に置換されたオキソ部分(例えば、=O)、CH(CO)R、または、下記で置換される。
【0030】
【化4】
【0031】
いくつかの実施形態では、
【0032】
【化5】
【0033】
は、4~7個の炭素原子を有する任意に置換された環状部分を形成し、当該管状部分は、任意で、独立して選択される最大3個の基、それらの全ては直鎖または分岐C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニル、C3-10シクロアルキル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、CFまたはORで置換され、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルの全ては直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0034】
いくつかの実施形態では、4~7個の炭素原子を有する任意に置換された環状部分として形成されるこのような
【0035】
【化6】
【0036】
部分は、下記から選択される。
【0037】
【化7】
【0038】
いくつかの実施形態において、RおよびRは異なる。
【0039】
いくつかの実施形態では、Rは、2つ以上の炭素分子を有する、任意に置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0040】
いくつかの実施形態では、Rは、下記である。
【0041】
【化8】
【0042】
いくつかの実施形態では、窒素と共に結合しているRおよび/またはRは、4~7個の原子を有する環を形成していてもよく、任意で、独立して選択される最大3つの基、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニル、C3-10シクロアルキル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、CFまたはORで置換され、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルの全ては直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0043】
いくつかの実施形態では、Rは、C2-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、フェニル、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を最大4個含む単環のまたは二環の5~10員ヘテロアリール、4~7員のヘテロシクロアルキルであり、任意で、C1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、C3-10分枝状アルキル、C3-10分枝状アルケニル、C4-10分枝状アルキニル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、オキソ、またはCFから独立して選択される最大3つの基で置換され、C2-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニルの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、Rは、C1-4低級アルキル直鎖または分枝鎖、C3-4アルケニル直鎖または分枝鎖、C3-4アルキニル、C2-4低級アシル、CFまたはCフルオロアルキルである。
【0045】
いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキルである。
【0046】
特定の実施形態では、すぐ上に記載される式Iの化合物は、C3-8シクロアルキル、C4-8シクロアルケニル、ハロ、CN、N、CF、NO、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヒドロキシ、オキソ、チオ、チオノ、アミノ、シアノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C1-6アルキルチオ、C3-6シクロアルキルチオ、C1-6アルキルスルホニル、C3-6シクロアルキルスルホニル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モノシクロアルキルアミノ、またはビス(シクロアルキル)アミノからそれぞれ独立して選択される最大3つの置換基を含むR、RまたはRを有することができる。
【0047】
すぐ上に記載される式Iの化合物のいくつかの実施形態では、Rは、CH、CF、C2-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルであり、これらの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよく、またはCFであってもよく、Rは、C1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CFまたはORから独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRであり;独立して、Rは、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルであり、これらの全ては直鎖状または分枝状であってもよく、またはCFであってもよく、これらはC1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CFまたはORから独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0048】
いくつかの実施形態では、式Iとして、以下の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを意図する:
【0049】
【化9】


【0050】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体中に、本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0051】
本発明はさらに、実施例に列挙された技術の少なくとも一部に従うことによって、本発明の化合物のいずれかを調製するためのプロセスを提供する。
【0052】
特定の実施形態では、ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物は、細胞、特にその増殖および分化がレチノイドの作用に感受性がある細胞の異常な増殖および/または異常な分化によって特徴付けられる障害の治療および/または予防において有用である。このような障害は、腫瘍学の分野に位置する障害、例えば、APL、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌および類似の障害;ならびに皮膚科学の分野に位置する障害、例えば、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイドなどの炎症性/角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症および類似の障害である。
【0053】
ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物の上述の使用に鑑みて、本発明は、細胞が、外胚葉、内胚葉または中胚葉起源であろうと、それらが上皮細胞または間葉細胞であろうと、正常な細胞、前新生物の細胞または新生物の細胞の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする疾患に罹患している温血動物を治療する方法を提供することになる。前記方法は、上述の障害、特に腫瘍障害および角質化障害の治療に有効な量の、本明細書に記載のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物を、任意で、特定の障害の治療に有効であることが知られている追加の治療薬の有効量の存在下での、全身投与または局所投与を含む。
【0054】
上述のように、本明細書に記載のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物は、化学療法剤、特に抗腫瘍剤、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、タキソール、タキソテレ、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、トリメトレキサートなどと組み合わせて便利に使用することができる。組み合わせは、別々に、同時に、共に、または連続して投与されてもよく、また、組み合わせは、1つの薬学的製剤の形態で提示されてもよい。従って、本発明はまた、細胞の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害に罹患している温血動物の治療的処置または予防的処置において、同時、別々または連続的使用のための組み合わせ調製物として、(a)本明細書中に記載される化合物、および(b)化学療法剤を含む薬学的製品を含む。本発明はまた、薬学的に許容可能な担体中に本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0055】
本発明はまた、本発明の化合物、および当該化合物を動物に投与するための指示を含むキットを提供する。キットは、任意で、他の治療剤を含み得る。このような製品は、本明細書に記載の化合物の薬学的組成物を含む容器と、化学療法剤の薬学的組成物を含む別の容器とを含むキットを含んでもよい。2つの活性成分である別々の組成物を有する製品は、各成分の適正量、ならびに投与のタイミングおよび順序が患者の機能において選択され得るという利点を有する。本発明はさらに、細胞の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害に罹患している患者を治療する方法に関し、前記方法は、(a)有効量の本明細書に記載の化合物、および(b)有効量の化学療法剤を患者に投与することからなる。
【0056】
さらなる実施形態が本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1:本発明の特定の好ましい化合物の合成スキーム。
図2図2A~2E:低カルシウム条件下での線維芽細胞の生存率:それぞれ対照(各パネルにおいて0μg/mL)を用いた、全トランスレチノイン酸(ATRA)図2Aの、4つの新規レチノイド(実施例1、2、3および4)図2B図2Eとの比較。示される値は、各化合物についてn=6の別個の日付点に基づく平均および標準偏差である。この図は、これらの4つのレチノイドの全てが、ATRAのように、低カルシウム条件下での溶解から線維芽細胞を保護することができることを示す。実施例1は、それがATRAと同程度に有効であることを示す。
図3図3A~3E:レチノイド誘発性線維芽細胞毒性:それぞれ対照(各パネルにおいて0μg/mL)を用いた、全トランスレチノイン酸(ATRA)図3Aの、4つの新規レチノイド(実施例1、2、3および4)との比較。示される値は、各化合物についてn=6の別個の日付点に基づく平均および標準偏差である。この図は、これら4つのレチノイドの全てが、5μg/mLもの高濃度で線維芽細胞への細胞毒性がない点で、ATRAに類似していることを示す。
図4図4A~4E:炎症誘発性サイトカインIL1β(4A)IL-6(4B)、CXCL4(4C)MCP-1(4D)およびIL-8(4E)の誘導における、ATRAとの実施例1および2の比較。線維芽細胞を、1.5mMカルシウムを補充したKBM中で(すなわち、線維芽細胞-細胞毒性アッセイと同様にして)2日間増殖させた。インキュベーション期間の最後に得られた培養液を、多重(ELISA型)アッセイを用いて、いくつかの炎症誘発性サイトカインについて評価した。示される値は、一回の試験における複製サンプルに基づく平均および範囲である。実験を2回繰り返し、同様の結果を得た。従って、2つの新規レチノイドを用いた、実施例1および2では、最高濃度(線維芽細胞生存を支持し(図2)、細胞毒性ではなかった濃度)で、サイトカインの誘導を示さなかった(図3)。
図5図5:表皮ケラチノサイトにおける細胞-細胞剥離の誘導についての、対照を用いた実施例1および2と、ATRAとの比較。ケラチノサイトを、1.5mMカルシウムを補充したKBM(対照)中で2日間増殖させ、1.0μg/mLのATRAまたは実施例1、または2.5μg/mLの実施例2で処理した。インキュベーション期間の最後に、細胞をトリプシンおよびEDTAの組み合わせに暴露し、互いに分離した細胞の割合(%)を経時的に評価した。3つのレチノイドは全て、対照と比較して細胞-細胞分離をより容易にした。1μg/mLでは、実施例1は、ATRAよりも強力であった。2.5μg/mLでは、実施例2は、1μg/mLのATRAに匹敵した。値は、ATRAおよび実施例1についてのn=9個のデータポイント、ならびに実施例2についての6個のデータポイントに基づく平均および標準偏差である。
図6図6A~C:器官培養での正常なヒトの皮膚における表皮肥厚を刺激する能力についての、実施例1とATRAとの比較。ヒトの皮膚生検材料を、器官培養で8日間インキュベートした。生検材料を、対照(1.5mMカルシウムを補充したKBM)(6A)として保持するか、またはATRA(6B)または実施例1(6C)(両方とも1μg/mL)のいずれかで処理した。インキュベーション期間の最後に、組織を組織学のために固定し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した後、光学顕微鏡レベルで調べた。対照皮膚サンプル(6A)は、新たに生検されたヒト皮膚の外観を有し、一方、ATRAで処理された皮膚(6B)および実施例1で処理された皮膚(6C)の両方は、レチノイド処理皮膚の特徴である過形成変化(増加した表皮肥厚)を実証する。ATRA処置切片において、上部表皮における毒性を示した(すなわち、顆粒層の喪失を伴う不完全な角質化)。これらの異常は、実施例1で処置された皮膚切片では見られない。
図7図7AおよびB:実験レチノイドによるNB4細胞(PML細胞株)における増殖および分化の誘導の阻害。48時間(7A)および72時間(7B)における1~50μg/mLの範囲にわたる投与量に依存する増殖の阻害。
図8図8AおよびB:化合物2による形態学的変化。対照NB4細胞を、培養培地中で48時間インキュベートした後の状態を図8Aに示す。図8Bは、同じ培養培地中で化合物2(50μg/mL)に48時間暴露した後のNB4細胞を示す。
図9図9A~D:ざ瘡形成のモデルであるライノマウス(rhinomouse)における、実施例1および2とATRAとの比較。成体ライノマウスを、100μLのビヒクル対照(DMSO)、またはDMSO中100μLの適当な濃度である実施例1または実施例2、または35mgの0.1%ATRAクリームで、21日間毎日、局所的に処理し、そして22日目に写真撮影した。対照動物(9Aに例示されるように)は、正常なライノマウスの外観を有し、実施例1および2(9Cおよび9D)を投与された動物も同様であった。しかし、ATRAを投与された動物(9B)は、過剰な皮膚剥離と共に、かなりの皮膚刺激を示す。
図10図10A~C:100μLのDMSO対照(10A)および0.1%(10B)および0.3%(10C)濃度の実施例2を含有する100μLのDMSOを用いた、ライノマウスの21日の局所的な処理後の投与量に依存する皮膚刺激の欠如。
図11図11:このグラフは、0.1%のATRAおよびDMSO対照、および毎日0.1%の実施例1~4を21日間、ライノマウスに局所投与した過程にわたる皮膚刺激を示す。累積刺激スコアは、ドレーズ刺激スケール(Draize irritation scale)からの修正版である。動物は、各マウスに与えられた治療について盲検化された評価者によって、毎日評価された。このモデルにおいてATRAを用いると、ATRAによる急速な発赤、続く部分的な回復、リバウンド刺激は、非常に典型的に見られる。
図12図12A~C:21日間の局所的な処理後のライノマウス皮膚の正常化された構造におけるレチノイドの有効性。図12Aは、21日間、DMSOで処理したライノマウスの皮膚を示し、このマウスに典型的な薄い真皮および大きな卵形嚢の両方を示す。そして、図12Aは、未処理のライノマウスの皮膚に対して予想されるものと、本質的に同一である。図12Bは、21日間、0.1%のATRAで処置したライノマウス皮膚を示す。真皮層全体はかなり厚く、卵形嚢は消失しているが、真皮層は、大きな壊死領域を有し、活性化された白血球およびマクロファージで重度に浸潤されている。図12Cは、0.3%の実施例2で局所的に処理された皮膚を示し、かなり肥厚した真皮および卵形嚢の損失の両方を示すが、活性化された免疫系細胞の壊死または浸潤は全くない。
図13図13A~C:ライノマウスの皮膚に対する実施例2の投与量に依存する効果。図13Aは、21日間、DMSOで処理したライノマウスの皮膚を示し、このマウスに典型的な薄い真皮および大きな卵形嚢の両方を示す。図13Bは、21日間、0.1%の実施例2で局所的に処理されたライノマウスの皮膚を示し、真皮の厚さの正常化を示すが、依然として多くの卵形嚢は構造的に残存している。実施例13Cの写真は、21日間、0.3%の実施例2で局所的に処理されたライノマウスの皮膚を示し、真皮の厚さの正常化も示すが、ここでは残存する微量の卵形嚢は存在しない。
図14図14:21日間、DMSO(対照)およびDMSO中に配合された0.1%のATRAまたは実施例1~4を局所投与したライノマウスの脾臓サイズ。ATRAのみにおいて、免疫系活性化に典型的な脾臓サイズの増加が生じる。
図15図15AL、15BL、15CL、15AR、15BRおよび15CR:局所ステロイド治療によって皮膚を萎縮させ、次いで創傷させたラットにおける研究からの結果。パネル15ALは、MDI-301(1%)で処理された動物15ARに対する、対照動物における、時間0での創傷外観を示す。パネルBは、13日後のMDI-301(1%)で処理された動物(15BR)に対する、対照動物(15BL)における治癒の程度を示す。パネルCは、創傷部位の組織学を示す。対照動物(15CL)では、創傷の上に不完全な再上皮形成があり、真皮におけるコラーゲン沈着がほとんどなかった。比較すると、MDI301で処理されたラット(15CR)では、創傷部位の上に上皮ケラチノサイトの融合性の層があり、上皮層の下に新たなコラーゲン形成を伴う線維芽細胞増殖の顕著な区域があった。なお、皮膚刺激が欠如(15BR)および炎症が欠如(15CR)した動物に注目されたい。刺激/炎症の欠如は、対照動物で予想されるが、レチノイドで処理された動物では珍しい。ここに示されるデータは、1群あたりn=5匹の動物にわたって一貫していた。
図16図16:MDI301の構造。
【発明を実施するための形態】
【0058】
〔定義〕
本明細書中で使用される「抗癌剤」という用語は、(例えば、哺乳類、例えば、ヒトにおける)癌などの増殖性疾患の治療に使用される、任意の治療剤(例えば、化学療法化合物および/または分子治療化合物)、アンチセンス療法、放射線療法、または外科的処置を指す。
【0059】
本明細書中で使用される「プロドラッグ」という用語は、プロドラッグを活性薬物に放出するか、または変換する(例えば、酵素的、生理的、機械的、電磁気的に)ために、標的生理系内での生体内変換(例えば、自発的または酵素的のいずれか)を必要とする、親「薬物」分子の薬理学的に不活性な誘導体を指す。プロドラッグは、安定性、水溶性、毒性、特異性の欠如、または限られた生物学的利用能に関連する問題を克服するように設計される。例示的なプロドラッグとして、活性薬物分子自体および化学マスキング基(例えば、薬物の活性を可逆的に抑制する基)を含む。いくつかのプロドラッグは、代謝状態で切断可能な基を有する化合物の変異体または誘導体である。プロドラッグは、A Textbook of Drug Design and Development、Krogsgaard-Larsen and HBundgaard(編), Gordon & Breach、1991、特にChapter 5:"Design and Applications of Prodrugs";Design of Prodrugs、HBundgaard(編), Elsevier、1985;Prodrugs: Topical and Ocular Drug Delivery、KBSloan(編), Marcel Dekker, 1998;Methods in Enzymology, K. Widder et al. (編), Vol. 42, Academic Press, 1985, 特に pp. 309-396;Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 5th Ed., M. Wolff (編), John Wiley & Sons, 1995, 特に Vol. 1 and pp. 172-178 and pp. 949-982;Pro-Drugs as Novel Delivery Systems, T. Higuchi and V. Stella (編), Am. Chem. Soc., 1975;および Bioreversible Carriers in Drug Design, E. B. Roche (編), Elsevier, 1987に記載されるように、当該技術で知られた方法を用いて、親化合物から容易に調製することができる。
【0060】
例示的なプロドラッグは、生理学的条件下で加溶媒分解を受けるか、または酵素分解もしくは他の生化学的変換(例えば、リン酸化、水素化、脱水素化、グリコシル化)を受けると、in vivoまたはin vitroで薬学的に活性になる。プロドラッグは、しばしば、哺乳類動物における水溶性、組織適合性、または徐放の利点を提供する。(例えば、Bundgard, Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam (1985);および Silverman, The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, pp. 352-401, Academic Press, San Diego, CA (1992)を参照のこと)。共通プロドラッグとしては、親酸と好適なアルコール(例えば、低級アルカノール)との反応によって調製されるエステル、または親アルコールと好適なカルボン酸(例えば、アミノ酸)との反応によって調製されるエステル、親酸化合物とアミンとの反応によって調製されるアミド、アシル化塩基誘導体(例えば、低級アルキルアミド)を形成するように反応される塩基性基、またはリン含有誘導体(例えば、リン酸塩、ホスホネート、および環状リン酸塩、ホスホネート、およびホスホラミデートを含むホスホラミデートエステル)などの酸誘導体が挙げられる(例えば、米国特許出願公開第2007/0249564 A1号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0061】
本明細書中で使用される「薬学的に許容可能な塩」という用語は、標的動物(例えば、哺乳類)において生理学的に許容される本発明の化合物の任意の塩(例えば、酸または塩基との反応によって得られる)を指す。本発明の化合物の塩は、無機または有機の酸および塩基から誘導することができる。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸のような他の酸は、それ自体は薬学的に許容可能ではないが、本発明の化合物およびこれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において使用され得る。
【0062】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW (式中、WはC1-4アルキルである)の化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタノ酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタノ酸塩、ヘキサノ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシレート、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート、ウンデカノエートなどが挙げられるが、これらに限定されない。塩の他の例としては、Na、NH 、およびNW (ここで、WはC1-4アルキル基である)などの好適なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが挙げられる。治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容可能であると考えられる。しかし、非薬学的に許容可能な酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用を見出し得る。
【0064】
本明細書中で使用される「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と、有機または無機である1つ以上の溶媒分子との物理的会合を指す。この物理的会合は、しばしば、水素結合を含む。特定の例において、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒和物分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、単離することができる。「溶媒和物」は、溶液相および分離可能な溶媒和物の両方を包含する。例示的な溶媒和物として、水和物、エタノラート、およびメタノラートが挙げられる。
【0065】
本明細書中で使用される「治療有効量」という用語は、障害の1つ以上の症状の改善をもたらすか、または障害の進行を予防するか、または障害の後退を引き起こすのに十分な治療剤の量をいう。例えば、癌の治療に関して、1つの実施形態において、治療有効量は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の割合で、腫瘍増殖の速度を減少させる、腫瘍質量を減少させる、転移の数を減少させる、腫瘍進行までの時間を増加させる、または生存時間を増加させる治療剤の量をいう。
【0066】
用語「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能なビヒクル」は、任意の標準的な医薬担体、溶媒、界面活性剤、またはビヒクルを包含する。好適な薬学的に許容可能なビヒクルには、水性ビヒクルおよび非水性ビヒクルが含まれる。標準的な医薬担体およびそれらの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th ed. 1995に記載されている。
【0067】
本明細書中で使用される「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含する。特に明記しない限り、脂肪族は、置換されたアルキル、アルケニル、およびアルキニル、ならびに置換されていないアルキル、アルケニル、およびアルキニルの両方を含むことができる。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」基は、1~10(例えば、1~6、1~4、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10)個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。本明細書中で使用される専門用語C1-nアルキルは、1~n個の炭素原子を含むアルキル基を指す。例えば、C1-5アルキルは、1、2、3、4、または5個の炭素原子を含むアルキル基を指す。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、または2-エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基は、2~10(例えば、2~6または2~4)個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族炭素基を指す。アルキル基と同様、アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。アルケニル基の例としては、アリル基、イソプレニル基、2-ブテニル基および2-ヘキセニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「アルキニル」基は、2~10(例えば、2~6または2~4)個の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を含む脂肪族炭素基を指す。アルキル基と同様、アルキニル基は、直鎖状であってもよく、または分枝状であってもよい。
【0071】
本明細書中で使用される場合、単独、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」におけるような、より大きな部分の一部として使用される「アリール」基は、単環式芳香族(例えば、フェニル)またはC~C10二環式芳香族(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル)を指す。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「アラルキル」基は、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、C1-4アルキル基)を指す。「アルキル」および「アリール」の両方が、本明細書中で定義される。アラルキル基の例は、ベンジル基である。
【0073】
「ヘテロアラルキル」基は、ヘテロアリールで置換されたアルキル基を指す。「アルキル」および「ヘテロアリール」の両方が、本明細書中で定義される。
【0074】
「脂環式」という用語は、飽和または部分的に不飽和の単環式または二環式の炭化水素環であって、残りの分子との単一の結合点を有するものを意味する。脂環式環は3~8員単環式環(例えば、3~6員環)である。脂環式環はまた、8~12員の二環式炭化水素環(例えば、10員の二環式炭化水素環)を含む。脂環式基は、「シクロアルキル」基および「シクロアルケニル」基を包含する。
【0075】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキル」基は、3~10(例えば、4~6、5~10、3、4、5、6、7、8、9、または10)個の炭素原子の単環式、二環式、三環式、または多環式飽和炭素環式(縮合されたまたは架橋された)環を指す。単環式シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書中で使用される場合、スピロアルキル基は、アルキル基が2~10個の炭素、例えば2~5個の炭素、または1~3個の炭素の環中にあるアルキル基である。
【0077】
本明細書中で使用される「複素環(heterocycle)」または「複素環式(heterocyclic)(heterocyclyl)」という用語は、O、SまたはNから選択される1~5個の環ヘテロ原子を有する、完全に飽和、部分的に飽和、または不飽和の3~12員の単環式または二環式環を示す。二環式複素環は、縮合環系またはスピロ環系であってもよい。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式または二環式(縮合されたまたは架橋された)(例えば、4~6、5~10、3、4、5、6、7、8、9、または10員の単環式または二環式)飽和環構造を指し、ここで、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはこれらの組み合わせ)である。
【0079】
本明細書中で使用される「ヘテロアリール」基は、4~15(例えば、5~9、6~13、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)個の環原子を有する単環式、二環式、三環式構造を指し、ここで、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはこれらの組み合わせ)であり、かつ、二環式または三環式環構造の1つ以上の環は、芳香族である。
【0080】
単環式ヘテロアリールには、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5-トリアジルが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書中で使用される「ヘテロアラルキル」基は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基(例えば、C1-4アルキル基)を指す。「アルキル」基および「ヘテロアリール」基の両方は、上に定義されている。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「カルボキシ」(または「カルボキシル」)および「スルホ」基は、それぞれ、-COOHまたは-COORおよび-SOHまたは-SOを指す。
【0083】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」基は、-OHを指す。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」または「アルコキシル」基は、アルキル-O-基を指し、ここで、「アルキル」は、以前に定義されている。さらに、アルコキシ基は、同じ原子または、互いに結合する原子と一緒に環を形成する、隣接する原子上に2つのアルコキシ基を含む構造を含む。
【0085】
本明細書中で使用される場合、「オキソ」は、=Oを指す。
【0086】
特に明記しない限り、本明細書に記載される構造はまた、構造のキラル中心(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)形態から生じる全ての異性体を含むことを意味する。従って、本化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマーおよびジアステレオマー混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内に包含される。さらに、特に明記しない限り、本願明細書に記載される構造はまた、同位体的に濃縮された原子が1つ以上存在するという点でのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換、または13C-または14C-濃縮炭素による炭素の置換を除く、本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0087】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の過程の間に行われた実験は、本明細書に記載されるジメチル-ノナテトラエニルトリメチル-シクロヘキシル化合物が、抗ざ瘡有効性を予測するアッセイ(ケラチノサイト剥離アッセイおよび表皮肥厚アッセイ)および皮膚修復有効性を予測するアッセイ(線維芽細胞生存数および表皮肥厚の増加)において、ATRAと同様の活性を有することを示す。同時に、このような化合物でのサイトカイン生成の欠如は、このような化合物がATRAとは異なり、局所的なATRAの使用の古典的な結果である、皮膚刺激応答を引き起こさないことを示す。
【0088】
従って、本発明は細胞(例えば、その増殖および分化がレチノイドの作用に感受性がある細胞)の異常な増殖および/または異常な分化を特徴とする障害に罹患している動物(例えば、ヒト)を、ジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル構造(これは関連する皮膚刺激を伴わずにATRAの作用を模倣する)を有する薬物(単数または複数)の治療有効量に暴露すると、ATRAの応答と同様であるが、その副作用を伴わない有効な応答が生じることを意図する。
【0089】
本発明は、本発明のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、腫瘍学の分野に位置する障害、例えば、APL、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌および類似の障害;ならびに皮膚科学の分野の障害、例えば、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイドなどの炎症性/角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症および類似の障害の治療に対するまだ満たされていない必要性を満たすことを意図する。
【0090】
本発明は、本発明のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、単剤療法として投与される場合、または追加の薬剤(例えば、上述したような障害の治療(併用療法)において有用であることが知られている他の医薬剤)と時間的関係で投与される場合のいずれかで、上述したような障害の治療に対するまだ満たされていない必要性を満たすことを意図する。
【0091】
実際、本出願人らは、特定のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が、腫瘍学の分野の障害、例えば、APL、神経芽細胞腫、頭頸部癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、消化管癌、皮膚癌、膀胱癌および前立腺癌および類似の障害;ならびに皮膚科学の分野の障害、例えば、酒さ、ざ瘡、乾癬、重症乾癬、層状魚鱗癬、足底疣贅、胼胝、黒色表皮症、扁平苔癬、軟疣、黒皮症、角膜上皮剥離、地図状舌、フォックス-フォーダイス病(Fox-Fordyce disease)、皮膚転移性黒色腫およびケロイドなどの角質化障害、表皮剥離性角化症、ダリエ病、毛孔性紅色粃糠症、先天性魚鱗癬様紅皮症、掌蹠角化症、黒皮症、色素過剰症および類似の障害の治療のための治療薬として働くことを見出した。本発明の特定のジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在し得る。本発明は、純粋な個々の立体異性体の調製物および各々の濃縮調製物の両方、およびこのような立体異性体のラセミ混合物ならびに当業者に周知の方法に従って分離され得る個々のジアステレオマーおよびエナンチオマーの両方としての全ての立体異性体を含む。
【0092】
従って、本発明は例えば、腫瘍学および皮膚科学の分野における皮膚の状態の治療のための治療剤として有用なジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル構造を有する、新規の分類となる小分子を提供する。
【0093】
特定の実施形態では、式Iに包含されるジメチル-ノナテトラエニル-トリメチル-シクロヘキシル化合物が提供され、当該化合物は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/またはプロドラッグを含む:
【0094】
【化10】
【0095】
いくつかの実施形態では、Rは、CH、CF、または2つ以上のカーボン分子を有する任意で置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0096】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CF、またはC2-4アルキルである。
【0097】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CFであるか、または1~10個の炭素原子の直鎖状または分枝状炭素鎖であり、これは原子価によって許容されるように、最大2つの二重結合または三重結合を含んでいてもよく、そして任意で、最大3つの置換基で置換されていてもよい。
【0098】
部分が任意に置換される場合のいくつかの実施形態では、そのようなR部分は、任意で、飽和または不飽和アルキル鎖、飽和または不飽和シクロアルキル部分、飽和または不飽和分枝状アルキル部分、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、任意に置換されたシアノ部分、任意に置換されたオキソ部分(例えば、=O)、または、以下で置換される。
【0099】
【化11】
【0100】
いくつかの実施形態では、Rは、
【0101】
【化12】
【0102】
CH、CF、または2つ以上のカーボン分子を有する任意に置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0103】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CFであるか、または1~10個の炭素原子の直鎖状または分枝状炭素鎖であり、前記炭素鎖は、原子価によって許容されるように、最大2つの二重結合または三重結合を含んでいてもよく、前記炭素鎖は、任意で、最大3つの置換基で置換されていてもよい。
【0104】
部分が任意に置換されたいくつかの実施形態では、そのようなR部分は、任意で、飽和または不飽和アルキル鎖、飽和または不飽和シクロアルキル部分、飽和または不飽和分枝状アルキル部分、ハロゲン(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、任意に置換されたシアノ部分、任意に置換されたオキソ部分(例えば、=O)、CH(CO)R、または、以下で置換される。
【0105】
【化13】
【0106】
いくつかの実施形態において、RおよびRは異なる。
【0107】
いくつかの実施形態では、
【0108】
【化14】
【0109】
は、4~7個の炭素原子を有する任意に置換された環状部分を形成し、当該管状部分は、任意で、独立して選択される最大3個の基、それらの全ては直鎖または分岐C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニル、C3-10シクロアルキル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、CFまたはORで置換され、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルの全ては直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0110】
いくつかの実施形態では、4~7個の炭素原子を有する任意に置換された環状部分として形成されるこのような
【0111】
【化15】
【0112】
部分は、以下から選択される。
【0113】
【化16】
【0114】
いくつかの実施形態では、Rは、2つ以上の炭素分子を有する、任意に置換された飽和または不飽和アルキル鎖部分である。
【0115】
いくつかの実施形態では、Rは、以下である。
【0116】
【化17】
【0117】
いくつかの実施形態では、窒素と共に結合しているRおよび/またはRは、4~7個の原子を有する環を形成していてもよく、任意で、独立して選択される最大3つの基、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニル、C3-10シクロアルキル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、シアノ、オキソ、CFまたはORで置換され、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルの全ては直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0118】
いくつかの実施形態では、Rは、C2-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、フェニル、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を最大4個含む単環のまたは二環の5~10員ヘテロアリール、4~7員のヘテロシクロアルキルであり、任意で、C1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、C3-10分枝状アルキル、C3-10分枝状アルケニル、C4-10分枝状アルキニル、C2-5スピロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、オキソ、またはCFから独立して選択される最大3つの基で置換され、C2-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニルの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、Rは、C1-4低級アルキル直鎖または分枝鎖、C3-4アルケニル直鎖または分枝鎖、C3-4アルキニル、C2-4低級アシル、CFまたはCフルオロアルキルである。
【0120】
いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキルである。
【0121】
特定の実施形態では、すぐ上に記載される式Iの化合物は、C3-8シクロアルキル、C4-8シクロアルケニル、ハロ、CN、N、CF、NO、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、フェニル、置換されたフェニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ヒドロキシ、オキソ、チオ、チオノ、アミノ、シアノ、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C1-6アルキルチオ、C3-6シクロアルキルチオ、C1-6アルキルスルホニル、C3-6シクロアルキルスルホニル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モノシクロアルキルアミノ、またはビス(シクロアルキル)アミノからそれぞれ独立して選択される最大3つの置換基を含むR、RまたはRを有することができる。
【0122】
すぐ上に記載される式Iの化合物のいくつかの実施形態では、Rは、CH、CF、C2-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルであり、これらの全ては、直鎖状もしくは分枝状であってもよく、またはCFであってもよく、Rは、C1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CFまたはORから独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRであり;独立して、Rは、C1-10アルキル、C3-10アルケニル、C3-10アルキニルであり、これらの全ては直鎖状または分枝状であってもよく、またはCFであってもよく、これらはC1-10アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-10アルケニル、C3-10シクロアルケニル、C2-10アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、CFまたはORから独立して選択される最大3つの基で置換されていてもよく、全ての脂肪族は直鎖状もしくは分枝状であってもよく、Rが酸素に直接的に結合する場合、RはRである。
【0123】
いくつかの実施形態では、式Iとして、以下の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを意図する:
【0124】
【化18】

【0125】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体中に、本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0126】
従って、本発明はまた、医薬としての使用のための、特に、腫瘍障害および角質化障害の治療のための医薬品の製造における使用のための、本明細書中に記載される化合物に関する。
【0127】
本発明の特定の実施形態において、治療有効量の本発明の化合物、および上述のような腫瘍障害および/または皮膚障害を治療する際に有用な追加の医薬剤のコースの動物における組み合わせ治療は、当該化合物または追加の薬剤単独で治療された動物と比較して、当該動物においてより大きな応答および臨床的利益を生じる。全ての承認された薬物についての投与は公知であるので、本発明は、それらと本化合物との種々の組み合わせを意図する。
【0128】
多数の好適な抗癌剤が、本発明の方法における使用のために意図される。実際、本発明は以下のような多数の抗癌剤の投与を意図するが、これらに限定されない:アポトーシスを誘導する薬剤;ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス、リボザイム、siRNA);ポリペプチド(例えば、酵素および抗体);生物学的模倣物;アルカロイド;アルキル化剤;抗腫瘍剤;代謝拮抗剤;ホルモン;白金化合物;モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば、抗癌剤、毒素、ディフェンシンと連結した抗体)、毒素;放射性核種;生物学的反応修飾剤(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-α)およびインターロイキン(例えば、IL-2));養子免疫療法剤;造血因子;腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えば、オールトランスレチノイン酸);遺伝子治療剤(例えば、アンチセンス治療剤およびヌクレオチド);腫瘍ワクチン;血管新生阻害剤;プロテオソーム阻害剤:NF-KBモジュレーター;抗CDK化合物;HDAC阻害剤など。開示された化合物との同時投与に好適な化学療法化合物および抗癌療法の多数の他の例は、当業者に公知である。
【0129】
特定の実施形態において、抗癌剤は、アポトーシスを誘導または刺激する薬剤を含む。アポトーシスを誘導する薬剤としては、放射線(例えば、X線、γ線、UV);腫瘍壊死因子に関連する因子(例えば、TNFファミリー受容体タンパク質、TNFファミリーリガンド、TRAIL、TRAIL-R1またはTRAIL-R2に対する抗体);キナーゼ阻害剤(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤、血管成長因子受容体(VGFR)キナーゼ阻害剤、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害剤、およびBcr-Ablキナーゼ阻害剤(例えば、GLEEVEC));アンチセンス分子;抗体(例えば、HERCEPTIN、RITUXAN、ZEVALINおよびAVASTIN);抗エストロゲン(例えば、ラロキシフェン、およびタモキシフェン);抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、アミノグルテタミド、ケトコナゾール、およびコルチコステロイド);シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)(例えば、セレコキシブ、メロキシカム、NS-398、および非ステロイド性抗炎症剤(NSAID));抗炎症剤(例えば、ブタゾリジン、DECADRON、DELTASONE、デキサメタゾン、デキサメタゾンインテンソール、DEXONE、HEXADROL、ヒドロキシクロロキン、METICORTEN、ORADEXON、ORASONE、オキシフェンブタゾン、PEDIAPRED、フェニルブタゾン、PLAQUENIL、プレドニソロン、プレドニゾン、PRELONE、およびTANDEARIL);およびがん化学療法剤(例えば、イリノテカン(CAMPTOSAR)、CPT-11、フルダラビン(FLUDARA)、ダカルバジン(DTIC)、デキサメタゾン、ミトキサントロン、MYLOTARG、VP-16、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5-FU、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ゲフィチニブ、ベバシズマブ、TAXOTEREまたはTAXOL);細胞シグナル伝達分子;セラミドおよびサイトカイン;スタウロスポリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
さらに他の実施形態では、本発明の組成物および方法は、本発明の化合物、ならびにアルキル化剤、代謝拮抗剤、および天然産物(例えば、ハーブおよび他の植物および/または動物由来の化合物)から選択される少なくとも1つの抗過剰増殖剤または抗腫瘍剤を提供する。
【0131】
本組成物および方法での使用に好適なアルキル化剤には、1)窒素マスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン);およびクロラムブシル);2)エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ);3)アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン);4)ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU);ロムスチン(CCNU);セムスチン(メチル-CCNU);およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン));ならびに5)トリアゼン(例えば、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミド-アゾレカルボキサミド))が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、本組成物および方法での使用に好適な代謝拮抗剤には、1)葉酸類似体(例えば、メトトレキサート(アメトプテリン));2)ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデ-オキシウリジン;FudR)、およびシタラビン(シトシンアラビノシド));ならびに3)プリン類似体(例えば、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)、およびペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン))が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
よりさらなる実施形態にでは、本発明の組成物および方法における使用に好適な化学療法剤には、1)ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン));2)エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド);3)抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン(マイトマイシンC));4)酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ);5)生物学的反応修飾剤(例えば、インターフェロン-α);6)白金配位錯体(例えば、シスプラチン(cis-DDP)およびカルボプラチン);7)アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);8)置換された尿素(例えば、ヒドロキシ尿素);9)メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン;MIH));10)副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p’-DDD)およびアミノグルテチミド);11)副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン);12)プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メドロキシプロゲステロンアセテート、およびメゲストロールアセテート);13)エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール);14)抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン);15)アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン);16)抗アンドロゲン(例えば、フルタミド);ならびに17)ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
癌治療に関連して慣例的に用いられる任意の腫瘍溶解剤の、本発明の組成物および方法における使用が見出される。例えば、米国食品医薬品局は、米国での使用が承認された腫瘍溶解剤の処方集を維持している。米国F.D.A.の国際的な対応機関も同様の処方集を維持している。表3は、米国での使用が承認された例示的な抗腫瘍剤のリストである。米国全体で承認された化学療法剤に必要とされる「製品ラベル」が、例示的な薬剤について承認された適応症、投与情報、毒性データなどを記載していることを、当業者は理解するであろう。
【0135】
【表1】
【0136】
抗癌剤はさらに、抗癌活性を有することが認められている化合物を含む。例としては3-AP、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート、17AAG、852A、ABI-007、ABR-217620、ABT-751、ADI-PEG20、AE-941、AG-013736、AGRO100、アラノシン、AMG706、抗体G250、アンチネオプラストン、AP23573、アパジクオン、APC8015、アチプリモド、ATN-161、アトラセンテン、アザシチジン、BB-10901、BCX-1777、ベバシズマブ、BG00001、ビカルタミド、BMS247550、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブセレリン、カルシトリオール、CCI-779、CDB-2914、セフィキシム、セツキシマブ、CG0070、シレンギチド、クロファラビン、コンブレタスタチンA4ホスフェート、CP-675,206、CP-724,714、CpG7909、クルクミン、デシタビン、DENSPM、ドキセルカルシフェロール、E7070、E7389、エクテイナサイジン743、エファプロキシラル、エフロルニチン、EKB-569、エンザスタウリン、エルロチニブ、エクシスリンド、フェンレチニド、フラボピリドール、フルダラビン、フルタミド、フォテムスチン、FR901228、G17DT、ガリキシマブ、ゲフィチニブ、ゲニステイン、グルホスファミド、GTI-2040、ヒストレリン、HKI-272、ホモハリングトニン、HSPPC-96、hu14.18-インターロイキン-2融合タンパク質、HuMax-CD4、イロプロスト、イミキモド、インフリキシマブ、インターロイキン-12、IPI-504、イロフルベン、イクサベピロン、ラパチニブ、レナリドミド、レスタウルチニブ、ロイプロリド、LMB-9免疫毒素、ロナファルニブ、ルニリキシマブ、マホスファミド、MB07133、MDX-010、MLN2704、モノクローナル抗体3F8、モノクローナル抗体J591、モテキサフィン、MS-275、MVA-MUC1-IL2、ニルタミド、ニトロカンプトテシン、ノラトレキセドジヒドロクロリド、ノルバデックス、NS-9、O6-ベンジルグアニン、オブリメルセンナトリウム、ONYX-015、オレゴマブ、OSI-774、パニツムマブ、パラプラチン、PD-0325901、ペメトレキセド、PHY906、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、ピクサントロン、PS-341、PSC833、PXD101、パラゾロアクリジン、R115777、RAD001、ランピルナーゼ、レベッカマイシン類似体、rhuアンジオスタチンタンパク質、rhuMab 2C4、ロシグリタゾン、ルビテカン、S-1、S-8184、サトラプラチン、SB-15992、SGN-0010、SGN-40、ソラフェニブ、SR31747A、ST1571、SU011248、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、スラミンタラボスタット、タランパネル、タリキダル、テムシロリムス、TGFa-PE38免疫毒素、サリドマイド、チマルファシン、チピファルニブ、チラパザミン、TLK286、トラベクテジン、トリメトレキサートグルクロネート、TroVax、UCN-1、バルプロ酸、ビンフルニン、VNP40101M、ボロシキシマブ、ボリノスタット、VX-680、ZD1839、ZD6474、ジレウトン、およびゾスキダルトリヒドロクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
抗癌剤および他の治療薬のより詳細な説明については、当業者は、これに限定されないが、the Physician's Desk Reference and to Goodman and Gilman's "Pharmaceutical Basis of Therapeutics" tenth edition, Eds. Hardman et al., 2002を含む任意の数の指示マニュアルを参照されたい。
【0138】
本発明は、放射線療法と一緒に、本発明の化合物を投与するための方法を提供する。本発明は、治療投与量の放射線を動物に送達するために使用される種類、量、または送達および投与システムによって限定されない。例えば、動物は、光子放射線療法、粒子ビーム放射線療法、他の種類の放射線療法、およびこれらの組み合わせを受けてもよい。いくつかの実施形態では、放射線が、線形加速器を使用して動物に送達される。さらに他の実施形態では、放射線が、ガンマナイフを使用して送達される。
【0139】
放射線源は、動物の外部または内部にあってもよい。外部放射線療法は最も一般的であり、例えば、線形加速器を使用して、高エネルギー放射線のビームを、皮膚を通して腫瘍部位に向けることを含む。放射線のビームは腫瘍部位に局在化されるが、正常で健康な組織の曝露を避けることはほとんど不可能である。しかし、外部放射線は、通常、動物において十分に許容される。内部放射線療法は、ビーズ、ワイヤ、ペレット、カプセル、粒子などの放射線放出源を、腫瘍部位またはその近くの体内に埋め込むこと(インプラント)を含み、癌細胞を特異的に標的化する送達システムの使用(例えば、癌細胞結合リガンドに付着した粒子を使用する)を含む。このようなインプラントは、治療後に除去されてもよく、または体内に非活性のまま残されていてもよい。内部放射線療法の種類には、小線源療法、組織内照射、腔内照射、放射線免疫療法などが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
動物は任意に、放射線増感剤(例えば、メトロニダゾール、ミソニダゾール、動脈内Budr、静脈内ヨードデオキシウリジン(IudR)、ニトロイミダゾール、5-置換4-ニトロイミダゾール、2H-イソインドールジオン、[[(2-ブロモエチル)-アミノ]メチル]-ニトロ-1H-イミダゾール-1-エタノール、ニトロアニリン誘導体、DNA親和性低酸素選択的細胞毒素、ハロゲン化DNAリガンド、1,2,4ベンゾトリアジンオキシド、2-ニトロイミダゾール誘導体、フッ素含有ニトロアゾール誘導体、ベンズアミド、ニコチンアミド、アクリジンインターカレータ、5-チオレトラゾール誘導体、3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジニトロイミダゾール誘導体、ヒドロキシル化テキサフリン、シスプラチン、ミトマイシン、チリパザミン、ニトロソ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルボプラチン、エピルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、熱(温熱療法)など)、放射線防護剤(例えば、システアミン、アミノアルキル二水素チオリン酸塩、アミホスチン(WR2721)、IL-1、IL-6など)を任意選択的に動物に投与してもよい。放射線増感剤は、腫瘍細胞の殺傷を高める。放射線防護材は、健全な組織を放射線による有害な影響から保護する。
【0141】
放射線の線量が、許容できない負の副作用を伴わずに動物に許容される限り、任意の種類の放射線を動物に投与してもよい。適切な種類の放射線療法としては、例えば、電離(電磁)放射線療法(例えば、X線またはガンマ線)または粒子線放射線療法(例えば、高線エネルギー放射線)が挙げられる。電離放射線は電離、すなわち電子の獲得または喪失を生じるのに十分なエネルギーを有する粒子または光子を含む放射線として定義される(例えば、米国特許第5,770,581号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。放射線の影響は、臨床医によって少なくとも部分的に制御することができる。一実施形態では、標的細胞への照射を最大にして毒性を低下させるために放射線の線量を分割する。
【0142】
一実施形態では、動物に投与される放射線の総線量は約0.1グレイ(Gy)~約100Gyである。別の実施形態では、治療過程にわたり約10Gy~約65Gy(例えば、約15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、55Gy、または60Gy)が投与される。いくつかの実施形態において、放射線の全線量を1日にわたって投与してもよいが、総線量は理想的には分割され、そして数日にわたって投与される。望ましくは、放射線療法は、少なくとも約3日間、例えば、少なくとも5、7、10、14、17、21、25、28、32、35、38、42、46、52、または56日間(約1~8週間)にわたって投与される。従って、放射線の1日あたりの投与量は、約1~5Gy(例えば、約1Gy、1.5Gy、1.8Gy、2Gy、2.5Gy、2.8Gy、3Gy、3.2Gy、3.5Gy、3.8Gy、4Gy、4.2Gy、または4.5Gy)、または1~2Gy(例えば、1.5~2Gy)を含む。放射線の1日あたりの投与量は、標的細胞の破壊を誘導するのに十分であるべきである。ある期間にわたって延長される場合、一実施形態では、放射線は毎日投与されず、それによって動物が休息し、放射線療法の効果が実現されることを可能にする。例えば、放射線は、望ましくは治療の各週について、5日間連続して投与され、2日間は投与されず、それによって、1週間あたり2日間の休息を可能にする。しかし、放射線は、動物の応答性および任意の潜在的な副作用に応じて、1日/週、2日/週、3日/週、4日/週、5日/週、6日/週、または全7日/週で投与されてもよい。放射線療法は、治療期間中の任意の時点で開始することができる。一実施形態では、放射線が1週目または2週目に開始され、治療期間の残りの期間にわたって投与される。例えば、放射線は、例えば固形腫瘍を治療するために、6週間を含む治療期間の1~6週間目または2~6週間目に投与される。あるいは、放射線は、5週間を含む治療期間の1~5週間目または2~5週間目に投与される。しかしながら、これらの例示的な放射線療法の投与スケジュールは、本発明を限定することを意図するものではない。
【0143】
抗菌治療剤もまた、本発明の治療剤として用いられ得る。微生物の機能を消滅させる、阻害する、または別なふうに減弱することができる任意の剤、加えて、そのような活性を有すると意図される任意の剤が用いられ得る。抗菌剤としては、天然および合成抗生物質、抗体、阻害性タンパク質(例えば、デフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊剤などが挙げられるが、これらに限定されず、単独でまたは組み合わせて用いられる。実際、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などを含む、抗生物質の任意の種類が用いられ得る。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の化合物および1つ以上の治療剤または抗癌剤は、以下の条件のうちの1つ以上の下で動物に投与される:異なる周期、異なる期間、異なる濃度、異なる投与経路など。いくつかの実施形態では、化合物は、治療剤または抗癌剤の投与の前、例えば、治療剤または抗癌剤の投与の0.5、1、2、3、4、5、10、12、または18時間、1、2、3、4、5、または6日、または1、2、3、または4週間前に投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、治療剤または抗癌剤の投与後、例えば、抗癌剤の投与後0.5、1、2、3、4、5、10、12、または18時間、1、2、3、4、5、または6日、または1、2、3、または4週間後に投与される。いくつかの実施形態において、化合物および治療剤または抗癌剤は同時に、しかし異なるスケジュールで投与される。例えば、化合物は毎日投与され、一方、治療剤または抗癌剤は週に1回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回投与される。他の実施形態において、化合物は週に1回投与され、一方、治療剤または抗癌剤は毎日、週に1回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回投与される。
【0145】
投与を容易にするために、本発明の化合物は、種々の薬学的形態に製剤化され得る。適切な組成物として、薬物を全身的または局所的に投与するために通常使用される全ての組成物を挙げることができる。本発明の薬学的組成物を調製するために、活性成分として、特定の化合物のレチノイン酸模倣有効量(任意で塩形態に加えて)は、薬学的に許容可能な担体と完全混和で組み合わされ、これは、投与のために所望される調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとり得る。望ましくは、これらの薬学的組成物は、好ましくは経口、直腸、経皮、または非経口注射による投与に適した単一投薬形態である。例えば、経口投薬形態で組成物を調製する際に、例えば、懸濁液、シロップ、エリキシルおよび溶液などの経口液体調製物の場合には、水、グリコール、油、アルコールなど;または粉末、錠剤、カプセルおよびタブレットの場合には、デンプン、糖、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体などの、任意の通常の薬学的媒体を使用することができる。投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口投薬単位形態であり、この場合、固体の薬学的担体が明らかに使用される。非経口組成物については、担体は通常、少なくとも大部分において滅菌水を含むが、例えば、溶解性を補助するための他の成分が含まれてもよい。例えば、担体が生理食塩水、グルコース溶液または生理食塩水とグルコース溶液との混合物を含む注射用溶液を調製することができる。経皮投与に適した組成物において、担体は任意で、浸透増強剤および/または適切な水和剤を含み、任意で、任意の性質の適切な添加剤と少量の割合で組み合わされる。前記添加剤は、皮膚に有意な有害な影響を全く引き起こさない。前記添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、および/または所望の組成物を調製するのに役立つことができる。これらの組成物は様々な方法で、例えば、経皮パッチとして、スポットオンとして、または軟膏として投与することができる。式(I)の化合物の付加塩は、対応する塩基形態よりも高い水溶性のために、水性組成物の調製において明らかにより好適である。
【0146】
局所的な塗布のための適切な組成物として、例えば、クリーム、ゼリー、ドレッシング、シャンプー、チンキ、ペースト、軟膏、軟膏剤、粉末など、局所的に薬物を投与するために通常使用される全ての組成物を挙げることができる。前記組成物の塗布は例えば、窒素、二酸化炭素、フレオンのような噴射剤を用いたエアロゾルによるか、またはポンプスプレー、液滴、ローションのような噴射剤を用いないエアロゾルによるか、または綿棒によって塗布され得る増粘組成物のような半固体によるものであり得る。特定の組成物において、軟膏剤、クリーム、ゼリー、軟膏などのような半固体組成物が便利に使用される。
【0147】
投与の容易さおよび投薬の均一性のために、上述の薬学的組成物を投薬単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書および特許請求の範囲において使用される投薬単位形態は、単一投薬に好適な物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分を含有する。このような投薬単位形態の例は、タブレット(分割タブレットまたはコーティングタブレットを含む)、カプセル、錠剤、粉末パケット、ウエハース、注射用溶液または懸濁液、ティースプーン1杯、テーブルスプーン1杯など、およびそれらの分離された倍数である。
【0148】
他のこのような組成物は、化粧水、パック、ローション、スキンミルクまたは乳液などの化粧品類の調製物である。前記調製物は、活性成分に加えて、そのような調製物に通常使用される構成要素を含有する。そのような構成要素の例は、油、脂肪、ワックス、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤、酸化防止剤、粘度安定剤、キレート剤、緩衝剤、保存剤、香料、染料、低級アルカノールなどである。所望であれば、さらなる成分(例えば、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、消毒剤、ビタミン、日焼け止め剤、抗生物質、または他の抗ざ瘡剤)が組成物に組み込まれてもよい。
【0149】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体、有効量の式(I)の化合物および有効量のレチノイン酸、その誘導体またはその立体化学的異性体を含む、特定の薬学的組成物または化粧品組成物を提供する。前記レチノイン酸含有組成物は、ざ瘡を治療するために、または皮膚の老化の影響を遅延させるために特に有用であり、一般に皮膚、特にヒト顔面皮膚の質を改善する。
【0150】
さらに、本発明はまた、薬学的に許容可能な担体、有効量の式(I)の化合物、および有効量のカルシトリオールまたはそのプロドラッグを含む、特定の薬学的組成物または化粧品組成物に関する。後者の組成物は、角質化障害の治療に特に有用である。
【0151】
本発明の範囲内の組成物には、本発明の化合物がその意図する目的を達成するのに有効な量で含まれる全ての組成物が含まれる。個々の必要量は変化するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当技術分野の技術の範囲内である。典型的には、化合物がアポトーシスの誘導に応答する障害について処置される哺乳動物の体重に対して1日当たり、0.0025~50mg/kgの用量、または同等量の薬学的に許容されるその塩で、哺乳動物、例えばヒトに経口投与され得る。一実施形態において、このような障害を治療、改善、または予防するために、約0.01~約25mg/kgが経口投与される。筋肉内注射の場合、用量は一般に、経口用量の約半分である。例えば、好適な筋肉内用量は、約0.0025~約25mg/kg、または約0.01~約5mg/kgである。
【0152】
単位経口用量は、約0.01~約1000mg、例えば、約0.1~約100mgの化合物を含むことができる。単位用量は、それぞれ約0.1~約10mg、便利には約0.25~50mgの化合物またはその溶媒和物を含有する1つ以上のタブレットまたはカプセルとして、1日1回以上投与され得る。
【0153】
局所的な製剤において、化合物は、担体1グラム当たり約0.01~100mgの濃度で存在し得る。一実施形態では、化合物は、約0.07~1.0mg/ml、例えば約0.1~0.5mg/ml、一実施形態では約0.4mg/mlの濃度で存在する。
【0154】
化合物を生化学物質として投与することに加えて、本発明の化合物は、薬学的に使用することができる製剤への化合物の処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む好適な薬学的に許容可能な担体を含有する薬学的調製物の一部として投与することができる。調製物、特に、タブレット、糖衣錠、徐放性ロゼンジおよびカプセル、マウスリンスおよびマルスウォッシュ、ゲル、液体懸濁液、ヘアリンス、ヘアゲル、シャンプーなどの経口または局所投与することができ、かつ1つの種類の投与に使用することができる調製物、ならびに座薬などの直腸投与することができる調製物、ならびに静脈内注入、注射、局所または経口による投与に好適な溶液は、賦形剤とともに、約0.01~99%、一実施形態では約0.25~75%の活性化合物を含有する。
【0155】
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物の有益な効果を経験し得る任意の患者に投与され得る。そのような患者の中で最も重要なものは、哺乳類、例えばヒトであるが、本発明はそのように限定されることを意図しない。他の患者としては、獣医学動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)が挙げられる。
【0156】
化合物およびその薬学的組成物は、それらの意図された目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔内、くも膜下、頭蓋内、鼻腔内または局所経路によるものであってもよい。あるいはまたは同時に、投与は、経口経路によるものであってもよい。投与される投薬は、受容者の年齢、健康状態、および体重、同時治療の種類、もしあれば、治療の頻度、および所望の効果の性質に依存する。
【0157】
本発明の薬学的調製物は、例えば、従来の混合、造粒、糖衣錠製造、溶解、または凍結乾燥処理の手段によって、それ自身公知の方法で製造される。従って、経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、任意で得られた混合物を粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望または必要であれば、好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。
【0158】
好適な賦形剤は特に、糖類(例えば、ラクトースまたはスクロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物)、および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)などの充填剤、ならびに、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用するデンプンペーストなどの結合剤である。所望ならば、たとえば上述のデンプンおよびカルボキシメチルデンプン、交差結合ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。補助剤はとりわけ、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩(ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムなど)、および/またはポリエチレングリコールなどの流量調節剤および滑沢剤である。糖衣錠コアには、所望であれば、胃液に対して抵抗性のある好適なコーティングが提供される。この目的のために、濃縮された糖の溶液が使用でき、この溶液には、任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい。胃液に抵抗性のあるコーティングを生成するために、好適なセルロース調製物(アセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレートなど)の溶液が使用される。染料または色素は、例えば、識別のために、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、タブレットまたは糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0159】
経口使用できる他の薬学的調製物は、ゼラチンから作製される圧着カプセルならびにゼラチンと、たとえばグリセリンまたはソルビトールのような可塑剤とから作製される封入ソフトカプセルである。圧着カプセルは、顆粒の形態で活性化合物を含むことができ、前記活性化合物は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意で安定化剤と混合されてもよい。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、一実施形態では脂肪油または液体パラフィンなどの好適な液体に溶解または懸濁される。さらに、安定剤を添加してもよい。
【0160】
直腸に使用することができると考えられる薬学的調製物には、例えば、1つ以上の活性化合物と坐剤基剤との組み合わせからなる坐剤が含まれる。好適な坐剤基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、またはパラフィン炭化水素である。さらに、活性化合物と基材との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。考えられる基剤材料は、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコールまたはパラフィン炭化水素を含む。
【0161】
非経口投与に好適な製剤には、水可溶性の形態の活性化合物の水溶液、例えば、水可溶性塩およびアルカリ溶液が含まれる。さらに、適切な油性注射用懸濁液として、活性化合物の懸濁液を投与してもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えばゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドまたはポリエチレングリコール-400)が含まれる。水性注射用懸濁剤は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでいてもよい。任意で、懸濁液はまた、安定剤を含んでいてもよい。
【0162】
本発明の局所的組成物は、一実施形態では適切な担体を選択することによって、油、クリーム、ローション、軟膏などとして製剤化される。好適な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分枝鎖脂肪または分枝鎖油、動物性脂肪および高分子量アルコール(C12より大きい)が挙げられる。担体は、活性成分が可溶性であるものであってもよい。乳化剤、安定剤、湿潤剤および酸化防止剤、ならびに所望であれば、着色剤または芳香剤を付与する薬剤もまた含まれていてもよい。さらに、経皮浸透増強剤を、これらの局所的製剤に使用することができる。このような増強剤の例は、米国特許第3,989,816号および第4,444,762号に見出すことができる;各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
軟膏は、アーモンド油などの植物油中の活性成分の溶液を温かい軟パラフィンと混合し、そして当該混合物を冷却させることによって製剤化することができる。このような軟膏の典型的な例は、約30重量%のアーモンド油および約70重量%の白色軟パラフィンを含む軟膏である。ローションは、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの好適な高分子量アルコールに、活性成分を溶解することによって便利に調製することができる。
【0164】
当業者は、前記が、本発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明を単に代表しているのみであることを容易に認識するだろう。上述の組成物および方法の種々の改変および変更は、当該分野で利用可能な専門知識を使用して容易に達成され得、そしてそれらの改変および変更は、本発明の範囲内である。
【実施例
【0165】
以下の実施例は、本発明の化合物、組成物、および方法を例示するものであり、限定するものではない。臨床治療において通常遭遇し、当業者にとって明らかである種々の条件およびパラメータの他の好適な改変および適応は、本発明の精神および範囲内である。
【0166】
[実施例1.(2E,4E,6Z,8E)-N-(3,3-ジメチル-2-オキソブチル)-N,3,7-トリメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(1)の合成]
【0167】
【化19】
【0168】
<3,3-ジメチル-1-(メチルアミノ)ブタン-2-オン>
1-ブロモピナコロン(1g、5.58mmol)を10mLのアセトニトリルに溶解し、続いてトリエチルアミン(0.56g、5.56mmol)および40%メチルアミン水溶液(0.48g、6.2mmol)を添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、次いで真空中で濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉砕し、固体を濾過により集めた。固体を酢酸エチル25mLに懸濁し、1M NaOH(7mL)で滴下処理した。有機相を分離し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して、3,3-ジメチル-1-(メチルアミノ)ブタン-2-オン(0.33g、46%)を黄色油として得た。
CI-MS [M+H]+ 130.08。
【0169】
<(2E,4E,6Z,8E)-N-(3,3-ジメチル-2-オキソブチル)-N-3,7-トリメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(1)>
9-シス-レチノイン酸(0.25g、0.83mmol)を10mLのジクロロメタンに懸濁し、0℃に冷却した。混合物に、トリエチルアミン(0.084g、0.83mmol)、3,3-ジメチル-1-(メチルアミノ)ブタン-2-オン(0.33g、2.5mmol)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC;0.20g、1mmol)をそれぞれ添加した。溶液を徐々に室温に温め、暗所で一晩撹拌した。当該溶液を水洗し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して茶色の油を得た。粗生成物を、4:1ヘキサン/酢酸エチルに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した(4:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出)。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、1(0.20g、59%)を黄色粘性液体として得た。
CI-MS [M+H]+ 412.33;
1HNMR (CDCl3) δ6.92 (dd, 1H), 6.62 (d, 1H), 6.24 (m, 2H), 6.04 ( d, 1H), 6.01 (s, 1H), 4.4 (s, 2H), 3.01 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.97 (s, 3H), 1.74 (s, 3H), 1.64 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 1.22 (s, 9H), 1.03 (s, 6H) ppm。
【0170】
[実施例2.(2E,4E,6Z,8E)-N,3,7-トリメチル-N-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(2)の合成]
【0171】
【化20】
【0172】
<2-(メチルアミノ)-1-フェニルエタノン>
2’-ブロモアセトフェノン(0.50g、2.5mmol)をジエチルエーテル(25mL)に溶解し、40%メチルアミン水溶液(0.195g、2.5mmol)で一度に処理した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、その時点で溶媒を別の容器に移し、残った固体を高真空下で乾燥させた。当該固体から、0.17g(30%)の2-(メチルアミノ)-1-フェニルエタノンをHBr塩として得た。
CI-MS [M+H]+ 150.08。
【0173】
<(2E,4E,6Z,8E)-N,3,7-トリメチル-N-(2-オキソ-2-フェニルエチル)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(2)>
9-シス-レチノイン酸(0.25g、0.66mmol)を10mLのジクロロメタンに懸濁し、0℃に冷却した。混合物に、トリエチルアミン(0.074g、0.73mmol)、2-(メチルアミノ)-1-フェニルエタノン(0.17g、0.73mmol)、およびEDC(0.13g、0.68mmol)をそれぞれ添加した。溶液を徐々に室温に温め、暗所で一晩撹拌した。当該溶液を水洗し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して茶色の油を得た。粗生成物を、4:1ヘキサン/酢酸エチルに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した(4:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出)。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、2(0.060g、21%)を黄色粘性液体として得た。
CI-MS [M+H]+ 432.31;
1HNMR (CDCl3) δ7.97 (d, 2H), 7.73 (m, 1H), 7.52 (m, 2H), 6.92 (dd, 1H), 6.62 (d, 1H), 6.24 (m, 2H), 6.07 (s, 1H), 6.03 (d, 1H), 4.89 (s, 2H), 3.12 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.97 (s, 3H), 1.74 (s, 3H), 1.64 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 1.03 (s, 6H) ppm。
【0174】
[実施例3.1-((2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラノイル)ピペリジン-3-オン(4)の合成]
【0175】
【化21】
【0176】
<1N-((2E,4E,6Z,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラノイル)ピペリジン-3-オン(4)>
9-シス-レチノイン酸(0.10g、0.33mmol)およびピペリド-3-オンヒドロクロライド(0.054g、0.4mmol)を5mLのジクロロメタンに懸濁し、0℃に冷却した。混合物に、トリエチルアミン(0.08g、0.8mmol)およびEDC(0.077g、0.4mmol)を添加した。溶液を徐々に室温に温め、暗所で一晩撹拌した。当該溶液を水洗し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して茶色の油を得た。粗生成物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製して(1:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出)、化合物3(0.029g、24%)を粘性黄色液体として得た。
CI-MS [M+H]+ 382.15;
1HNMR (CDCl3) δ6.94 (m, 1H), 6.62 (d, 1H), 6.24 (m, 2H), 6.03-5.86 (m, 2H), 4.24 (d, 2H), 3.81 (d, 2H), 2.54 (t, 2H), 2.12-2.02 (m, 4H), 1.98 (s,3H), 1.74 (s, 3H), 1.66 (m, 2H), 1.56 (s, 3H), 1.48 (m, 2H), 1.04 (s, 6H) ppm。
【0177】
[実施例4.(2E,4E,6Z,8E)-N,3,7-トリメチル-N-(2-(1-メチルシクロプロピル)-2-オキソエチル)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(3)の合成]
【0178】
【化22】
【0179】
<2-(メチルアミノ)-1-(1-メチルシクロプロピル)エタノン>
1-(1-メチルシクロプロピル)エタノン(1g、10mmol)をメタノール(50mL)に溶解し、氷浴中で0℃に冷却した。氷冷溶液に、1.8gの臭素を加えた。溶液を徐々に室温に温め、一晩撹拌した。溶媒を真空中で濃縮し、粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製して(3%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)、2-ブロモ-1-(1-メチルシクロプロピル)エタノン0.94g(53%)を無色液体として得た。ブロモケトン(0.5g、2.8mmol)を5mLのアセトニトリルに溶解し、続いてトリエチルアミン(0.28g、2.8mmol)および40%メチルアミン水溶液(0.24g、3.1mmol)を添加した。溶液を室温で3時間撹拌し、次いで真空中で濃縮した。得られた固体をジエチルエーテルで粉砕し、溶媒を濾過により除去した。粗固体を高真空下で一晩乾燥させた。固体を25mLのジエチルエーテルに懸濁し、5mLの1M NaOHで洗浄した。有機相を分離し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して、2-(メチルアミノ)-1-(1-メチルシクロプロピル)エタノン(0.25g、71%)を茶色の油として得た。
CI-MS [M+H]+ 128.07。
【0180】
<(2E,4E,6Z,8E)-N,3,7-トリメチル-N-(2-(1-メチルシクロプロピル)-2-オキソエチル)-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘックス-1-エン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナミド(3)>
9-シス-レチノイン酸(0.23g、0.76mmol)を10mLのジクロロメタンに懸濁し、0℃に冷却した。混合物に、トリエチルアミン(0.15g、1.5mmol)、2-(メチルアミノ)-1-(1-メチルシクロプロピル)エタノン(0.20g、1.5mmol)、およびEDC(0.17g、0.89mmol)をそれぞれ添加した。溶液を徐々に室温に温め、暗所で一晩撹拌した。当該溶液を水洗し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して茶色の油を得た。粗生成物を、4:1ヘキサン/酢酸エチルに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した(4:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出)。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、4(0.069g、22%)を黄色粘性液体として得た。
CI-MS [M+H]+ 410.25;
1HNMR (CDCl3) δ6.92 (dd, 1H), 6.62 (d, 1H), 6.24 (m, 2H), 6.03 (d, 1H), 6.01 (s, 1H), 4.35 (s, 2H), 3.02 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 2.04 (m, 2H), 1.97 (s, 3H), 1.74 (s, 3H), 1.64 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 1.38 (s, 3H), 1.33 (m,2H), 1.03 (s, 6H), 0.76 (m, 2H) ppm。
【0181】
[実施例5.In vitroアッセイ]
<A.皮膚損傷の修復>
この実施例は、抗ざ瘡有効性を予測するアッセイ(ケラチノサイト剥離アッセイおよび表皮肥厚アッセイ)および皮膚修復効果予測するアッセイ(線維芽細胞生存率の増加および表皮肥厚)において、本発明の化合物が、ATRAと同様の活性を有することを実証する。
【0182】
(線維芽細胞培養プロトコル)
ヒト真皮線維芽細胞を、以前に記載されているように皮膚生検から単離し、そして10%ウシ胎仔血清を補充したDMEMを培養培地として使用して、単層培養において増殖させる(例えば、Varani J, et al., J Clin Invest. 1994;94; Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 94:717-723, 1990を参照のこと)。5%のCOと95%の空気を含む加湿された雰囲気中で、37℃で増殖させる。実験的研究のために、同じ培地中、24ウェル培養皿のウェルに、細胞を5×10細胞/ウェルでプレートする。1日後、細胞を洗浄し、DMEM培養培地をケラチノサイト基礎培地(KBM)で置き換える。
【0183】
(ケラチノサイト培養プロトコル)
ヒト表皮ケラチノサイトを、線維芽細胞と同じ皮膚生検から単離し、以前に記載されているようにケラチノサイト増殖培地(KGM)を使用して、単層培養で増殖させる(例えば、Varani J, et al., J Clin Invest. 1994; Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 94:717-723, 1990; Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 1989; 93:449-454を参照のこと)。5%のCOと95%の空気を含む加湿された雰囲気中で、37℃で増殖させる。いくつかの研究のために、実験では、初代の細胞または低継代の細胞の代わりに、不死化ヒト表皮ケラチノサイトのHaCat線を使用する。これらの細胞の増殖は、低継代のケラチノサイトと全く同じである。
【0184】
(ヒト皮膚器官培養プロトコル)
18~70歳のボランティアのお尻の皮膚から、折りたたまれた2mmパンチ生検(被験者あたり12個まで)を得る。ヒト対象の参加は、ミシガン大学の治験審査委員会によって承認され、全ての対象は、研究に含める前に書面によるインフォームド・コンセントを提供する。パンチ生検材料を、24ウェル皿のウェル中でインキュベートする(200~500μLの培養培地当たり1つの組織片)。培養培地は、KBMからなる。臓器培養のために、培養培地に、最終カルシウム濃度1.5mMまで、塩化カルシウムを補充する。1つまたは2つのウェルは典型的には対照として残され、一方、他のウェルは所望のように処理される。新鮮な培地および治療は、2日間隔で提供される。2日目に回収された器官培養条件培地は、サイトカインアッセイのために、または所望に応じて他の生物活性分子の測定のために保存される。インキュベーション期間の最後(典型的には、8日目)に、組織を10%緩衝化ホルマリン中で固定し、組織学のために使用する。本明細書中で使用される器官培養プロトコルは、いくつかの過去の報告に記載されるものと実質的に同一である(例えば、Varani J, et al., J Clin Invest. 1994;94:1747-1756; Varani J, et al., Am J Pathol. 1993 Jan;142(1):189-98; Lateef H, et al., Am J Pathol. 2004;165:167-174; Varani J, et al., Exp Mol Pathol. 2004;77(3):176-83; Varani J, et al., Am J Pathol. 1993 Jun;142(6):1813-22; Varani J, et al., Toxicol. Pathol. 35:693-701, 2007; Rittie L, et al., J Invest Dermatol, 126:732-739, 2006を参照のこと)。
【0185】
(レチノイド誘発性線維芽細胞生存率)
このアッセイでは、低継代のヒト真皮線維芽細胞を、生存を支持するには低すぎるカルシウム濃度(0.1mM)のケラチノサイト基礎培地(KBM)中で3日間増殖させる。3日間にわたり、細胞の大部分が死滅する。オールトランスレチノイン酸(ATRA)を含む生物学的に活性のあるレチノイドは、このアッセイにおいて細胞溶解から細胞を保護することが知られている(例えば、Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 94:717-723, 1990を参照のこと)。どのようにレチノイドが線維芽細胞溶解を防止するように作用するかは完全には理解されていないが、そのメカニズムの一部は、活性のあるレチノイドの存在下で、細胞膜を横切るカルシウム輸送の調整に関する(例えば、Varani J, et al., Am. J. Path. 136:1275-1281, 1990; Varani K, et al., Am J. Pathol. 147:718-729, 1995; Varani J, et al., Amer. J. Pathol. 148: 1307-1312, 1996を参照のこと)。
【0186】
図2に示す研究のために、ヒト真皮線維芽細胞を、0.1~5μg/mLの濃度範囲にわたるATRAおよび化合物1~4で処理した。示される値は、3日間のインキュベーション期間後になお生存可能であった最初に存在した細胞の割合を表す。図から、ATRAでは、1.0μg/mLで最適に保護されたことが分かる。より低い濃度では、保護された細胞はより少なかった。5μg/mLでの細胞数の減少は、初期の毒性を表す。図5に見られるように、化合物1はATRAと同様に有効であった。3つの他のレチノイド、化合物2~4も保護的であったが、有効濃度範囲は、ATRAおよび化合物1の有効濃度範囲よりも高かった。
【0187】
(レチノイド誘発性線維芽細胞毒性)
このアッセイは、ヒト真皮線維芽細胞を、それ自身で生存を支持するカルシウム濃度(1.5mM)を補充した培養培地(KBM)中にプレートすることを除いて、線維芽細胞-細胞毒性アッセイと同様である。生物学的に活性のあるレチノイドを培養培地に含め、細胞を72時間インキュベートする。このような条件下では、添加されたレチノイドによる増殖は、実質、ほとんど増加することなく、高濃度では細胞毒性が生じる(例えば、Varani, J., et al., J. Invest. Dermatol. 101:839-842を参照のこと)。
【0188】
図3に示すデータから、新規のレチノイドは、ATRAと同様の細胞毒性プロファイルを有することが分かる。すなわち、5μg/mLまでのレチノイド濃度である対照と比較して、細胞数の減少はほとんどなかった。
【0189】
(炎症誘発性サイトカインの生成)
ATRAおよび他の生物学的に活性のあるレチノイドは、ヒト皮膚において(例えば、Varani J, et al., Toxicol. Pathol. 35:693-701, 2007; Perone P, et al., Arch Dermatol Res. 2007;298:439-448を参照のこと)、ならびに他の細胞/組織において(例えば、Aslam MN, et al., Anti-Cancer Drugs 2015, 26:763-773を参照のこと)、炎症誘発性サイトカインの産生を誘導することが公知である。レチノイド治療に応答してアップレギュレートされるサイトカインの中には、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン(IL)1-β、IL-6、IL-8およびマクロファージ走化性ペプチド-1(MCP-1)がある。炎症誘発性サイトカインは、レチノイド誘発性皮膚刺激応答の「ドライバー(driver)」であると考えられている。全身的に放出されるとき、同じサイトカインは、例えば、ATRAが急性骨髄性白血病を処置するために使用される場合に見られるレチノイド誘発性毒性の大部分の基礎をなす傾向がある(例えば、Frankel SR, et al., Ann Intern Med. 1992;117:292-296; Vahdat L, et al., Blood. 1994;84(11):3843-3849; De Botton S, et al., Blood. 1998;92(8):2712-2718を参照のこと)。この実験では、線維芽細胞を、1.5mMカルシウムを補充したKBM中で2日間培養した(すなわち、細胞毒性アッセイと同様)。培養液を、インキュベーションの2日後に回収し、以下のサイトカイン:TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、MCP-1およびCXCL-1について多重酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に供した。図4に見られるように、ATRAはいくつかのサイトカインの強力なアップレギュレーションを誘導したが、これは化合物1または2のいずれにおいても観察されなかった。第2の実験では、同じアッセイで、ATRAを化合物3および4と比較した。両方のレチノイドは、ATRAよりもはるかに低いレベルの種々のサイトカインを生成した。化合物4は、化合物1に匹敵した。
【0190】
(レチノイド誘発性ケラチノサイト「落屑」)
ケラチノサイトを単層培養で増殖させる場合、低カルシウム(0.05~0.15mM)の条件下で最適に増殖する。カルシウム濃度が1.5mMに上昇すると、ケラチノサイトの分化が起こり、増殖が遅くなる。このような条件下では、強力な細胞-細胞接続が行われる。ATRAのような生物学的に活性のあるレチノイドを用いたケラチノサイト治療は、分化を低減し、そして細胞-細胞接続の減少に導く。最終的結果は、細胞が互いにより容易に分離することである(例えば、Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 1989; 93:449-454; Varani J, et al., J. Invest. Dermatol. 97:917-921, 1991; Varani J, et al., Am. J. Path. 138:887-895, 1991を参照のこと)。ざ瘡におけるレチノイドの有効性は、少なくとも部分的には表皮の結束作用の低減、および洗浄中にざ瘡病変皮膚が脱落する能力に依存する。
【0191】
剥離を定量する方法として、1.5mMカルシウムを含有する培養培地中で2日間増殖させたケラチノサイトを洗浄し、トリプシンとEDTAの組み合わせに曝露した。隣接する細胞からの細胞剥離を、時間隔で評価した。図5に示すデータは、ATRAと比較した、ケラチノサイト剥離に対する化合物1および2の効果を示す。
【0192】
(レチノイド誘発性皮膚肥厚)
ATRAによる皮膚の局所的治療は、ケラチノサイトの増殖をもたらし、増強された表皮肥厚に導く。過去の研究は、表皮肥厚が器官培養されたヒト皮膚においても見られ得ることを実証した(例えば、Varani J, et al., J Clin Invest. 1994;94:1747-1756; Varani J, et al., Am J Pathol. 1993 Jan;142(1):189-98; Lateef H, et al., Am J Pathol. 2004;165:167-174; Varani J, et al., Exp Mol Pathol. 2004;77(3):176-83; Varani J, et al., Am J Pathol. 1993 Jun;142(6):1813-22; Varani J, et al., Toxicol. Pathol. 35:693-701, 2007; Rittie L, et al., J Invest Dermatol, 126:732-739, 2006を参照のこと)。
【0193】
これらの実験では、正常なボランティアから皮膚生検を得て、器官培養物中の皮膚をATRA(1μg/mL)または同じ濃度の化合物1のいずれかに暴露した。図6に示されるように、両方のレチノイドは、予想される肥厚性の変化を誘導した。
【0194】
<B.抗癌活性>
(イントロダクション)
オールトランスレチノイン酸(ATRA)は、急性前骨髄球性白血病(APL)の全ての段階のための最前線治療であり、その90%はRARa-PML融合癌遺伝子を含む。ATRAは有効であり、APLは患者の70~90%が生存する。しかし、ATRA治療の副作用は多く、一般的である。その症状には、頭痛、発熱、皮膚および粘膜の乾燥、骨痛、吐き気および嘔吐、発疹、口内炎、かゆみ、発汗、視力の変化、ならびに多数の他の病気が含まれる。これらの多くは不快であるが、分化症候群(DS)は潜在的に致命的であり、患者の最大30%に起こる。DSはステロイドで処理され、治療過程を中断することにより、患者が化学療法単独で回帰することを期待する。PMLはごく少数の個体[米国では年間約2300人]にしか影響しないが、最近の研究では、全てのAML症例の40%(ヌクレオホスミン-1[NPM-1]と呼ばれる遺伝子突然変異を有するもの)が、レチノイド感受性があると思われることも示されている。さらに、レチノイドはまた、神経芽細胞腫および肝細胞癌を含む他の癌の治療において使用される(7)。4つの実験レチノイドのいずれかが存在し得るかどうかを決定する第1の工程として、培養物中のNB4細胞の増殖を抑制する能力について、薬剤をスクリーニングした。並行して、分化を反映する大きさおよび形状の変化について細胞を評価した。
【0195】
(実験設計)
濃度依存性および時間依存性増殖阻害研究をin vitroで実施した。維持培地(DMEM+2%ウシ胎仔血清)中、24ウェル皿のウェルに5×10細胞/ウェルで、細胞をプレートした。それぞれの実験レチノイドを所望の濃度で添加し、細胞を3日間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、電子パーティクルカウンタを用いて細胞を計数した。トリパンブルーを除くことにより、生存率を測定した。分化を評価するために、培養培地中で所望の薬剤(または対照)のいずれかで3日間処理した。インキュベーション期間の最後に、位相差顕微鏡下で、細胞を撮影した。
【0196】
(結果および考察)
この研究の結果を、図7および8に示す。図7は、4つの薬剤全てが、1~50μg/mLの範囲にわたって、試験PML細胞株と同等の濃度依存性増殖阻害を生じたことを実証する。インキュベーションの48時間および72時間の両方で、阻害を確認することができた。図8は、未処理のNB4細胞および化合物2(50μg/mL)で処理されたNB4細胞の位相差画像を示す。図に見られるように、レチノイド処理されたNB4細胞のいくつかにおいて、丸い細胞(対照細胞;上部画像)から分極および平坦化された細胞(化合物2で処理された細胞、下部画像)への形態の変化が、明らかに見られた。分極し平坦化された形態は、分化の証拠である。従って、これらの研究は、実験レチノイドが抗癌剤としての可能性を有することを示す。
【0197】
[実施例6.ライノマウスにおける抗ざ瘡活性についてのin vivoアッセイ]
(イントロダクション)
ライノマウスモデルは、抗ざ瘡活性についてのレチノイドの評価のための工業的に標準的な前臨床モデルである。マウスは、所望の化合物(製剤化された化合物か、または液体溶媒中の化合物のいずれか)で、数日間にわたって局所的に治療され得る。治療過程の間、皮膚刺激について、肉眼的に動物を評価することができる。治療段階の最後に、動物を安楽死させる。効果(角質で満たされた卵形嚢の数の減少)および炎症の組織学的証拠について、治療部位からの皮膚は、評価することができる。
【0198】
(実験設計)
マウス
ライノマウス(HRS/J hrrhhrrh)を、Jackson Laboratoriesから入手した。動物は、最近離乳したばかりであった;ライノマウスの生涯のこの段階で、表現型(すなわち、多数の角質で満たされた卵形嚢を有する皮膚)は十分に発現され、数週間続く。雄および雌の両方を含めた。動物を、治療グループに分けた。実験室内では、マウスを温度および湿度を制御した部屋に置いた。生存中の研究における全ての手順は、AAALAC認定施設であるミシガン大学の実験動物医学ユニット(ULAM)の施設で実施した。全ての手順は、ミシガン大学動物管理使用委員会(IACUC)の承認を得て実施した。
【0199】
試験品
4つの実験レチノイドの各々を、DMSO中で0.1%および0.3%溶液として作製した。この物質を、7日間連続して、または21日間連続して、1日1回、肩甲骨間背部上の点で記された領域の治療領域(2cmの領域)に塗布した。塗布後、試験剤を試験部位に優しく擦り込んだ。対照として、トレチノイン-0.1%を使用した。トレチノイン-0.1%は、活性剤としてオールトランスレチノイン酸(ATRA)を0.1%の最終濃度で含有する。トレチノイン-0.1%は、一般的に処方される抗ざ瘡薬である。Gilson MICROMANの完全に調整可能な正配置ピペットを用いて、設定量の試験品、DMSO、DMSO+試験薬物、またはトレチノインクリーム(35mg)を送達した。ATRAがDMSO溶液と同じ量で送達された場合、ATRAは、かなり強力な刺激物であることに留意されたい。
【0200】
評価
研究の治療段階の間、動物を、個別に収容した。治療段階の間、毎日、全体的な健康について、および皮膚刺激の徴候について、動物を評価した。ドレーズスケール(Draize scale)を使用して、皮膚刺激を評価した。ドレーズスケールは、紅斑および浮腫のパラメータを評価する。各パラメータは、0~4+の間でスコア付けされ、0は、対照マウスとの差異がないことを示し、4+は、最大の紅斑または浮腫を示す。さらに、乾燥/剥離/亀裂について、動物を評価した(シングルスコア)。全体的な刺激スコアは、治療グループの全てのマウスにおける3つのパラメータを編集したものであった。治療段階の間、動物の体重を毎週測定した。
【0201】
剖検および組織学的分析
最後の治療の1日後、動物を安楽死させた。安楽死後、動物に、7mLの10%緩衝ホルマリンを注射した。15分後、マウスの背部の治療された領域を取り出し、8つの断片に切断した。断片を1つおきに採取し、組織学のために、皮膚の4つの断片を1つのカセットに取り付け、固定した。治療されていない領域からの余分な皮膚断片も評価した。
【0202】
表皮の厚さ:表皮の厚さについて、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片を、顕微鏡で評価した。測定は、組織片あたり4つの代表的な部位の小胞間領域で行った。
【0203】
角質で満たされた卵形嚢:角質で満たされた卵形嚢の数を、皮膚の全切片における直接計数によって決定した。卵形嚢の数を決定するために、生検当たり4つの切片の各々を使用した。所見を正規化する方法として、切片の長さを測定した。典型的には、皮膚の切片は16~20mmであった。
【0204】
炎症:スライドを顕微鏡で検査し、炎症を0~4+基準でスコア化した。0のスコアは炎症がないことを示し、一方、炎症細胞の回収の増加は、スコアの増加で表される。また、炎症が真皮に限定されているかどうか、または表皮炎症が存在するかどうかを決定するために、スライドを評価した。炎症細胞が真皮全体に散在するかどうか、または小さな膿瘍も存在するかどうかを決定するために、皮膚炎症を評価した。最後に、それらが主に単核細胞、顆粒球細胞またはその両方からなるかどうかを決定するために、炎症性病変を評価した。以前に、皮膚刺激の評価において、同様の尺度が使用されている。
【0205】
(結果)
全ての動物は、健康な状態でベンダーから到着した。マウスは、治療段階の開始まで健康なままであった。
【0206】
生存中の研究における総所見
図1左は、異なる治療グループにおける、皮膚刺激応答の総和を示す。対照マウスでは、研究を通していずれの時間においても皮膚刺激の証拠はほとんどなかった。治療の3日目の始めに、トレチノイン(ATRA)に曝露された動物において、刺激の徴候が見られた。刺激の最初のスパイクに続いて、ディップ(dip)が起こり、次いで、二次的な上昇が起こった。これは、ATRAで典型的に見られるものと一致する。対照と比較して、実験レチノイドはまた、皮膚刺激を実証した。しかし、刺激の程度は、ATRAで観察されたものよりもはるかに低かった。図9は、対照グループ(左上)、ATRAで治療されたグループ(右上)、ならびに化合物1および2(それぞれ左下および右下)のマウスの例を示す。対照マウスも、化合物1および2で治療されたマウスも、どちらも皮膚における刺激の目に見える徴候を示していない。対照的に、ATRAで処置されたマウスの皮膚は赤く、乾燥しており、鱗状である。皮膚に小さな亀裂が見られ、有意な浮腫が存在する。図10は、0.1%および0.3%の用量での化合物2が、いずれの用量でも重篤な皮膚刺激の徴候を示さなかったことを示す。
【0207】
「累積刺激スコア」研究の結果を図11に示す。実施例1~4では刺激の増加が認められたが、ATRAは、よりはるかに刺激性があり、典型的な初期の発赤(flare)を示し、その後部分的に消散し、投与期間の終わりまで継続的に悪化することが分かる。対照的に、実施例1~4は全て、2週間後、安定で、低い刺激スコアを示した。
【0208】
研究の過程の間、毎週、動物の体重を測定した。以下の結果は、試験薬物の0.1%製剤で治療された動物についての結果である。対照動物は、治療過程(21日間)にわたって平均0.85+0.47グラム増加したが、ATRAで治療された動物は、平均1.63+1.09グラム減少した。ATRA治療(マウスにおける)の間、体重減少が予想される。実験レチノイドで治療された動物は、体重が減少しなかった。化合物1で治療された動物は、1.30+0.92グラム増加し、化合物2で治療されたマウスは、1.48+0.25グラム増加し、化合物3で治療されたマウスは、1.90+1.28グラム増加し、化合物4で治療されたマウスは、1.40+0.34グラム増加した。
【0209】
安楽死および最終分析
生存中の研究の最後に、マウスをCO過量投与によって安楽死させた。対照グループ、ATRAで治療されたグループ、および化合物2で治療されたグループの各マウスのヘマトキシリンおよびエオシン染色した組織学的切片を、角質で満たされた卵形嚢の数、表皮の厚さ、および炎症に関して評価した。結果を表2にまとめ、代表的な画像を図2に示す。簡潔には、対照マウスの表皮は、多数の角質で満たされた卵形嚢(表皮の直線の長さ20mm当たり98+10)を有する薄い表皮からなっていた。両方のレチノイドは、実質的に表皮の厚さを増加させながら、ほぼ完全に卵形嚢の形成を抑制した。化合物2は、卵形嚢の低減に関してATRAと類似していたが、一方で、2つのレチノイドは、炎症に関して異なっていた。ATRA治療は、はるかに高い炎症「スコア」を生じた(表3)。これは図12に示す組織学的切片から明らかである。対照マウス(左上)からの組織学的切片は、表現型に典型的な薄い皮膚および卵形嚢を示す。ATRAで治療されたマウス(右上パネル)および化合物2で治療された皮膚(下パネル)の両方は、真皮がはるかに厚くなっていること、および卵形嚢が消失していることの両方を示している。しかしながら、化合物2とは明確に対照的に、ATRAは、強い炎症性細胞の浸潤を示す。真皮には多数の炎症細胞が存在した。部位に微小膿瘍が認められ、炎症細胞の表皮への移動も明らかであった。浸潤は、単核細胞および顆粒球の両方からなっていた。対照的に、化合物2で治療されたマウス(左下パネル)の組織切片は、ほとんど炎症細胞の浸潤を示さなかった。他の3つの実験レチノイドもまた、化合物2と一緒に試験した。化合物1、3および4はまた、対照と比較して、卵形嚢の数を低減させ、そして、化合物2と同様に、炎症応答を産生しなかったか、または炎症誘発性サイトカインレベルの上昇を誘導しなかった(表3)。図13において、投与期間中、0.1%の化合物2は、皮膚肥厚をもたらすが、卵形嚢を完全には消散しなかった一方、0.3%では、より十分に卵形嚢が消散されたことが分かる。
【0210】
【表2】
【0211】
研究終了時に、全てのマウスから血清を採取し、炎症誘発性サイトカインのレベルを評価した。このために、ヒト抗体を検出するために使用される抗体を、マウス認識抗体に取り換えたことを除いて、ヒトサンプルに使用される同じ多重ELISAを使用した。表3に見られるように、ATRAで治療されたマウスの血清中のMCP-1、IL-6およびKC/IL-8のレベルが増加した。実験レチノイドに暴露したマウスのサイトカイン値は、対照マウスの血清中のレベルよりも高くなかった。すなわち、実際に低かった。
【0212】
【表3】
【0213】
マウスの皮膚は、ヒトの皮膚よりもむしろ薄く、局所的に塗布された薬物は、マウス、特に無毛突然変異体に適用された場合に、ヒトよりも容易に循環に入る傾向がある。図14は、対照、ATRAおよび実施例1~4を投与された動物の脾臓の大きさを示す。ATRAは、炎症誘発性レチノイドの典型的な所見である非常に顕著な巨脾症を示すが、実施例1~4は非常に控えめな巨脾症を示し、全身免疫系の活性化がほとんどないことを示唆する。
【0214】
(議論)
総合すると、これらの所見は、本特許の主題である実験レチノイドが、ライノマウスモデルにおいて抗ざ瘡活性について有効性を有するが、皮膚刺激を誘導しないことを実証する。組織学的所見、サイトカインのデータおよび体重減少がないことに基づいて、これらのデータは、強い炎症応答を示すことなく、抗有効性(anti-efficacy)が見られ得ることを示す。
【0215】
[実施例7]
この実施例は、MDI301の皮膚創傷を治療する能力を実証する。
【0216】
MDI301は、Molecular Design International(MDI)(Memphis、TN)によって開発された9-cisレチノイン酸のピナコロンエステル誘導体である。過去の研究は、MDI301が、皮膚修復のためのオールトランスレチノイン酸(ATRA)に類似していることを実証した。すなわち、ヒト皮膚器官培養モデルにおいて、両方のレチノイドは、プロコラーゲンI産生を誘導し、主要なコラーゲン分解酵素(MMP-1、コラゲナーゼ1)を阻害した。MDI301による有益な効果は、マウス、ラット、ウサギ、ゲッチンゲンミニブタ、および器官培養物中のヒト皮膚において観察されている(例えば、Varani J, et al., Arch. Dermatol. Res. 295:255-262, 2003; Appleyard VCL, et al., Anticancer Res. 15:991-996, 2004; Varani J, et al., Arch. Dermatol. Res. 298:439-448, 2007; Warner RL, et al., Wound Repair Regen. 16:117-124, 2008; Dame MK, et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. Anim. 2009;45(9):551-557を参照のこと)。MDI301は、プロコラーゲン産生の刺激およびコラーゲン分解MMP-1の阻害においてATRAに匹敵したが、MDI301は、レチノイド誘発性皮膚刺激の基礎をなす炎症誘発性サイトカインをアップレギュレートしなかった点でATRAとは異なっており、一方、予想されたようにATRAはアップレギュレートした。さらなるインビボ研究は、MDI301の腹腔内投与では全身性サイトカイン放出を誘発しない一方、ATRAは誘発したことを実証した(例えば、Aslam MN, et al., Anti-Cancer Drugs 2015, 26:763-773を参照のこと)。
【0217】
MDI301に関する刺激がないことを考慮して、このレチノイドが急性創傷の設定において作用し得ることを推論する実験を行った。この考えを試験するために、図15に示すように実験を行った。本質的に、ラットのグループを強力なステロイドで処理して、皮膚萎縮を誘導し、続いて皮膚を創傷させた。これに続いて、ラットを、ビヒクル単独またはMDI301で治療した。図15に示すように、レチノイドで治療されたラットでは、皮膚創傷が、対照ラットよりも急速に治癒した。右上および左上のパネル(A)は元の創傷を示し、2列目は、1.0%含有MDI301クリームを約~100mgを、創傷周辺に13日間、毎日投与した後の動物を示す。パネルの3列目は、13日後の創傷皮膚の組織学を示す。この研究において、ATRAは、その刺激特性が元の損傷を悪化させるので、使用できないことに留意されたい。
【0218】
本発明を十分に説明してきたが、本発明の範囲またはその任意の実施形態に影響を及ぼすことなく、広範かつ同等の範囲の条件、配合、および他のパラメータ内で同じことを実施できることは、当業者により理解されるだろう。本明細書に引用された全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に完全に援用される。
【0219】
〔参照による援用〕
本明細書中で参照される特許文献および科学論文のそれぞれの開示全体は、全ての目的のために参照により援用される。
【0220】
〔同等性〕
本発明は、その精神または本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態内で実施されてもよい。従って、前述の実施形態は、本明細書中で説明される本発明を限定するのではなく、全ての点で例示的であると見なされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の同等の意味および範囲内に入る全ての変更は、本発明の範囲の中に包含されることを意図する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図16