(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】新規な多重機能性ペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20221118BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20221118BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221118BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221118BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20221118BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221118BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221118BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221118BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221118BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221118BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221118BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K38/08
A61P31/04
A61P37/02
A61K47/54
A61P1/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P11/06
A61P27/02
A61P37/08
A61P17/00
C12N15/11 Z ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020049601
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0031330
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515187098
【氏名又は名称】ノバセル テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,テ フン
(72)【発明者】
【氏名】ギム,ジェ ワン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョン ジュ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506362(JP,A)
【文献】特表2008-537537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00~19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2ないし7の何れか1つのアミノ酸で構成される、
黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して抗菌
活性を有し、及び
FPR2活性化機能を有するペプチ
ド。
【請求項2】
N末端またはC末端にオクタノイル基またはアセチル基が付加された、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
C末端がアミド化された、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、
黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な多重機能性ペプチド及びその用途に係り、さらに詳細には、抗菌効果と免疫細胞の活性調節機能とを共に有する新規な多重機能性ペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌ペプチド(antimicrobial peptides)は、自然界で発見されたり、合成ペプチドからその活性が見られたりもする。このような抗菌ペプチドは、一般的なタンパク質に比べて、比較的短いアミノ酸配列(10~100個余り)からなっており、主に細胞膜に結合すれば、1)細胞膜にイオンチャネルを形成して、微生物のエネルギー生成を阻害するか、2)細胞膜に大きな穴を作るようになって、結果として細胞が死ぬ。このように物理的に微生物を破壊するので、微生物の細胞壁や細胞内高分子合成を阻害する既存の抗生剤とは異なって、微生物が抗菌ペプチドに対する耐性を有することは非常に難しく、現在までも耐性が生じないと報告された。現在まで知られた多くの抗菌ペプチドの間で配列上の類似性は、ほとんど表われないが、構造や活性の側面では、幾つかの一般的な傾向性を示す。代表的に、抗菌ペプチドは、リジン、アルギニン、ヒスチジンのような正電荷を帯びる部分と疎水性を有した部分とが存在するという点である。現在、抗菌ペプチドの作用機作に関連した仮説のうち、最も妥当性があるように提示されているShai-Matsuzaki-Huang(SMH)モデルでは、抗菌ペプチドの配列上の特徴と作用機転とを下記のように説明する:正電荷を帯びた親水性部分が負電荷を帯びたバクテリアの細胞膜と結合した後、細胞膜と結合されたペプチドの疎水性部分が細胞膜リン脂質(phospholipid)の疎水性部分と相互作用して、細胞膜上に穴を形成して、細胞膜の透過度を変化させることにより、細胞を破砕する。好中球(neutrophil)及びモノサイトのような食細胞(phagocytic cell)から発現されるホルミルペプチド受容体族(formyl peptide receptor 1:FPR1)及びホルミルペプチド受容体族(formyl peptide receptor 2:FPR2)は、病原菌感染に対する宿主の対抗(defense)と炎症反応解消(resolution of inflammation)とで重要な役割を果たす(Mangmool,S.et al.,Toxins,3:884-899,2011;Corminoboeuf,O.et al.,J.Med.Chem.,58:537-559,2015)。前記受容体は、百日咳毒素-敏感性(pertussis toxin-sensitive)Giタンパク質と結合すると知られている(Nakashima,K.,et al.,J.Biol.Chem,290(22):13678-91,2015)。その中でも、FPR2は、炎症性疾患で重要な役割を果たすと知られている。FPR2の活性化は、GαiサブユニットからGβγサブユニットの分離を誘導し、βγサブユニットは、ホスホリパーゼCβまたはホスホイノシタイド3-キナーゼの活性化を誘導する(Duru,E.A.,et al.,J.Surg.Res.,195(2):396-405,2015)。このような分子の活性化は、複雑な下流(downstream)信号伝達を誘導して、走化性移動(chemotactic migration)、脱顆粒化(degranulation)、及びスーパーオキシド生成(superoxide generation)のような細胞反応を多様化して、生体内の免疫反応を調節して、宿主の対抗と炎症反応解消反応を媒介する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、免疫細胞の活性を調節し、多様な細菌に対して優れた抗菌活性を示す新規な多重機能性ペプチドを提供することを目的とする。しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一観点によれば、下記で構成される群から選択されるアミノ酸配列を含む6~12個のアミノ酸で構成される抗菌及び免疫調節活性を有するペプチドが提供される:
i)BOBWX1OU;及びii)X1RWWUX1X2m(この際、前記Bは、それぞれ独立してリジン(K)及びアルギニン(R)で構成される群から選択される塩基性アミノ酸であり、Oは、それぞれ独立してフェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)で構成される群から選択される芳香性アミノ酸であり、X1は、それぞれ独立して、アルギニン(R)、ノルロイシン(Nle)または2-naphthyl-L-alanine(Z)であり、Uは、ないか、m、X2WW、RX2WWまたはMVmであり、前記X2は、ノルロイシン(Nle)、トリプトファン(W)またはバリン(V)であり、mは、D型のメチオニンであって、前記iでKFKWRYmは除外される)。
【0005】
本発明の他の一観点によれば、前記ペプチドを有効成分として含む抗菌剤が提供される。
【0006】
本発明のさらに他の一観点によれば、前記ペプチドを有効成分として含む免疫疾患治療剤が提供される。
【0007】
本発明のさらの他の一観点によれば、前記ペプチドを含むアトピー性皮膚炎、ループス及び乾癬で構成される群から選択される皮膚免疫疾患改善用化粧料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施例によれば、グラム陰性菌及びグラム陽性菌などの各種のバクテリアに対して高い抗菌活性を示すだけではなく、免疫細胞の活性調節機能を同時に有する新規な多重機能性ペプチドの生産効果を具現することができる。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の新規な多重機能性ペプチドのFPR2依存的細胞内カルシウムイオン増加活性でFPR2活性化の効力を分析したグラフである。
【
図2】本発明の新規な多重機能性ペプチドの緑膿菌(P.aeruginosa)に対する抗菌活性を分析したグラフである。
【
図3】本発明の新規な多重機能性ペプチドの黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する抗菌活性を分析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[用語の定義]
本明細書で使われる用語「免疫調節ペプチド」は、直接または間接に抗菌及び抗ウイルス作用、免疫細胞の炎症反応調節、免疫細胞移動、表皮または内皮細胞の炎症反応調節のような免疫調節作用を行うペプチドを意味する。他の意味としては、前記ペプチドは、好中球及びモノサイトのような食細胞、表皮細胞などから発現されるホルミルペプチド受容体族1(FPR1)及びホルミルペプチド受容体族2(FPR2)を通じて病原菌感染に対する宿主の対抗において重要な役割を果たす。前記受容体は、百日咳毒素-敏感性Giタンパク質と結合すると知られている。FPR1とFPR2との活性化は、GαiサブユニットからGβγサブユニットの分離を誘導し、βγサブユニットは、ホスホリパーゼCβまたはホスホイノシタイド3-キナーゼの活性化を誘導する。このような分子の活性化は、複雑な下流シグナリングを誘導して、走化性移動、脱顆粒化、及びスーパーオキシド生成のような細胞反応を多様化する。
【0011】
本明細書で使われる用語「抗菌ペプチド」は、一般的に比較的単純な構造からなる陽イオン性ペプチド(cationic peptide)化合物であって、グラム陽性菌(gram-positive bacteria)、グラム陰性菌(gram-negative bacteria)、真菌、ウイルスなどに対する幅広い抗菌スペクトルを有しており、その機転が完全に明らかにされていないが、一般的に微生物の細胞膜を破壊する作用機転を通じて抗菌力を示すと知られている。
【0012】
[発明の詳細な説明]
本発明の一観点によれば、下記で構成される群から選択されるアミノ酸配列を含む6~12個のアミノ酸で構成される抗菌及び免疫調節活性を有するペプチドが提供される:
i)BOBWX1OU;及びii)X1RWWUX1X2m(この際、前記Bは、それぞれ独立してリジン(K)及びアルギニン(R)で構成される群から選択される塩基性アミノ酸であり、Oは、それぞれ独立してフェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)で構成される群から選択される芳香性アミノ酸であり、X1は、それぞれ独立して、アルギニン(R)、ノルロイシン(Nle)または2-naphthyl-L-alanine(Z)であり、Uは、ないか、m、X2WW、RX2WWまたはMVmであり、前記X2は、ノルロイシン(Nle)、トリプトファン(W)またはバリン(V)であり、mは、D型のメチオニンであって、前記iでKFKWRYmは除外される)。
【0013】
前記ペプチドにおいて、前記i)は、BOBW-Nle-Om、BOBWBO、BOBWZO、BOBWZOm及びBOBWBOMVmで構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドである。また、前記ii)は、ZRWWX1X2m、RRWWX1X2m及びZRWWRX2WWRWmで構成される群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドである。
【0014】
前記ペプチドは、N末端またはC末端にオクタノイル基またはアセチル基が付加され、C末端がアミド化される。
【0015】
前記ペプチドは、配列番号1ないし配列番号17で構成される群から選択される何れか1つのアミノ酸配列で構成することができる。
【0016】
本発明の他の一観点によれば、前記ペプチドを有効成分として含む抗菌剤が提供される。
【0017】
前記抗菌剤において、前記抗菌剤は、緑膿菌または黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有しうる。
【0018】
本発明のさらに他の一観点によれば、前記ペプチドを有効成分として含む免疫疾患治療剤が提供される。
【0019】
前記免疫疾患治療剤において、前記免疫疾患は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、乾癬(psoriasis)、結膜炎(conjunctivitis)、角膜炎(keratitis)、眼球乾燥症(dry eye syndrome)、肺炎(pneumonia)、喘息(asthma)、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)またはクローン病(crohn’s disease)である。
【0020】
本発明のさらに他の一観点によれば、前記ペプチドを含むアトピー性皮膚炎、ループス及び乾癬で構成される群から選択される皮膚免疫疾患改善用化粧料組成物が提供される。
【0021】
前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、塩水、緩衝塩水、デキストロース、水、グリセロール及びエタノールから選択される薬学的希釈済のうち、1種以上含み、希釈剤は、これに限定されるものではない。前記薬学組成物は、投与目的及び疾病によって異なるように適用可能である。実質的に投与される活性成分の量は、多様な関連要素、すなわち、治療しようとする疾病、患者状態の程度、他の薬剤(例えば、走化性薬剤)と共同投与有無、患者の年齢、性別、体重、食べ物、投与時間、投与経路、及び組成物の投与比率(ratio)を考慮して決定しなければならない。前記組成物は、投与量及び投与経路が疾病の形態及び深刻性によって調節されるが、一日に一回または1~3回に分けて投与される。
【0022】
前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、当業者で通常製造される如何なる剤型でも製造可能であり(例:文献[Remington’s Pharmaceutical Science,最新版;Mack Publishing Company,Easton PA)、製剤の形態は、特に限定されるものではないが、望ましくは、外用剤である。本発明の外用剤には、シート剤、液状塗布剤、噴霧剤、ローション剤、クリーム剤、パップ剤、粉剤、浸透パッド剤、噴霧剤、ヒドロゲルを含んだゲル剤、ペースト剤、リニメント剤、軟膏剤、エアロゾル、粉末剤、懸濁剤、経皮吸収剤などの通常の外用剤の形態が含まれうる。これらの剤型は、あらゆる製薬化学に一般的に公知の処方書である文献[Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042(Chapter 87:Blaug,Seymour)]に記述されている。
【0023】
本発明のペプチドまたは物質を含む組成物は、経口または非経口投与される。非経口投与は、経口以外の投与経路、すなわち、直腸、静脈、腹膜及び筋肉、動脈、経皮、鼻腔(nasal)、吸入、眼球、及び皮下を通じる薬剤投与を意味する。前記ペプチドまたは物質を含む薬学組成物は、経口投与形態、注入可能な溶液または局所製剤のような如何なる形態でも製剤化される。製剤化は、経口及び注入可能な投与(真溶液(true solution)、懸濁液またはエマルジョン)に適するように製造されることが望ましく、錠剤、カプセル、軟質カプセル、水性薬剤、丸剤、顆粒のような経口形態で製造されることが最も望ましい。前記製剤化で、本発明のペプチドは、賦形剤(excipient)なしに軟質カプセルに充填され、担持体と混合されるか、希釈された後に適当な製剤で作られる。適した担持体の例としては、澱粉、水、塩水、リンゲル液、デキストロースなどがある。
【0024】
本発明のペプチドを有効成分として含有する化粧料組成物は、化粧料組成物の剤型に使われる1つ以上の添加剤を含みうる。例えば、そのような添加剤には、1,3-ブチレングリコール、大豆リン脂質コリン、スフィンゴシン、コレステロール、トウイーン80、フィトスフィンゴシン、サリチル酸、皮膚保湿剤(湿潤剤)、柔軟剤、天然オイル、天然抽出物、ケラチン、リポイド、吸収水溶性物質、角質層セラミド、表皮地質酸性膜脂肪酸、コレステリルエステル、エタノール、蒸留水などが含まれうる。
【0025】
本発明のペプチドを有効成分として含有する薬学的組成物は、経口投与または非経口投与を通じて投与されることが可能であり、経口投与がさらに望ましいが、これらに制限されるものではない。非経口投与される場合、静脈内注射、鼻腔内吸入、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮吸収など多様な経路を通じて投与することが可能である。
【0026】
また、本発明のペプチドを有効成分として含有する薬学的組成物は、0.1mg/kg~1g/kgの容量で投与され、さらに望ましくは、1~600mg/kgの投与量で投与される。一方、前記投与量は、患者の年齢、性別及び状態によって適切に調節される。
【0027】
以下、実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例及び実験例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施例及び実験例は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0028】
[実施例1:抗菌ペプチドの製造]
本発明者らは、従来の基礎スクリーニング探索を通じて抗菌活性を有するペプチド(KFKWRYm)を開発して、これに対して特許を確保した(大韓民国特許第10-1855170号)。引き続き、前記ペプチドよりもさらに抗菌及び免疫機能調節能力に優れた改良ペプチドを開発するために、前記特許ペプチドのアミノ酸配列で多様な変異体を考案して、それを通常のアミノ酸合成法(Umbarger,H.E.,Ann.Rev.Biochem.,47:533-606,1978)を用いて合成し、それを抗菌候補ペプチドとして使用した。前記ペプチドに基づいて変異を与えて、約100個の抗菌ペプチド候補を合成した。
【0029】
また、本発明者らは、前記から合成されたペプチドのN末端にオクタノイル基またはアセチル基などを付加し/するか、C末端のカルボキシ基の代わりに、アミン基を置換した形態の変形を加えた。
【0030】
[実験例1:新規なペプチドのFPR2活性化の効力分析]
本発明者らは、本発明の一実施例によって製造した抗菌ペプチド候補を対象にして生体の免疫機能を活性化させるか否かを確認するために、カルシウムイオン透過性の変化を観察した。具体的に、前記ペプチドがFPR2を活性化させるかを確認するために、細胞内カルシウムイオンの濃度を測定した。このために、FPR2を発現していないRBL細胞とRBL細胞でFPR1を過発現させた細胞(FPR1-RBL)とFPR2を過発現させた細胞(FPR2-RBL)とを使用し、細胞内カルシウムイオンの遊離を敏感に測定可能な方法としてカルシウムに結合力が強い染色物質であるFura-2/AMを利用した。すなわち、細胞を10%ウシ胎児血清が含有されたRPMI培地に培養し、対数期状態である時(mid-log phase、1-3×107細胞/ml)、遠心分離して収穫した後、ウシ胎児血清が含有されていないRPMI培地で数回洗浄し、それを1×107細胞/mlになるようにRPMI培地に再懸濁した。引き続き、最終3μMの濃度のFura-2/AMを添加し、37℃、5% CO2培養器で45分間撹拌し続けながら培養した。適正時間が経過した後、細胞を収穫して、再びRPMI培地で数回洗浄した後、それを250μMの濃度のスルフィンピラゾン(Sulfinpyrazone)が添加された適正量のRPMI培地に懸濁して、細胞内に入ったFura-2の細胞外部への流失を防止した。約2×106個の細胞を毎度取って、急速遠心分離で収穫し、それをカルシウムイオンが添加されず、EGTAが添加されたロック(Locke)溶液1mlに再懸濁して、分光光度計上で340nm及び380nmの2つの波長での吸光度比をモニタリングしたが、約1分間隔で本発明の一実施例によるペプチドを濃度を異ならせて(1μM、0.1μM及び0.01μM)処理した後、2つの波長での吸光度差を調査し、それを後でグリンキーウィックツ(Grynkiewicz)の方法によって細胞内に遊離されたカルシウムイオンの濃度に換算した。
【0031】
その結果、ほとんどのペプチドでFPR2活性化の効力を示し、これは、本発明の一実施例によるペプチドが、FPR2への結合及び活性化を通じて個体の免疫機能を調節することができるという点を示唆するものである(
図1)。前記ペプチドのFPR2活性化の効力を分析した結果を下記表1に要約した。
【0032】
【0033】
[実験例2:新規なペプチドの抗菌活性の実験]
本発明者らは、前記実施例1から合成された多様なペプチドのうち、優れた性能を示すペプチドを選抜するために、FPR2活性化能力を評価した。具体的に、前記ペプチドの抗菌活性を測定するために、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とグラム陰性菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)とを準備した後、寒天平板培地に4次塗抹して、36℃培養器で一晩中培養した。翌日、寒天平板培地上に生成された菌株コロニーを3mlの栄養培地に接種して、36℃、220rpmの条件で撹拌培養器で一晩中培養した。翌日、前記菌を希釈して、600nmで吸光度を測定し、0.5になるように調整し、栄養培地に1:100比率で希釈した。その後、前記実施例で製造したペプチドを栄養培地に0、1.25、2.5、5、10、及び20μMの濃度に順次希釈して、1mlずつ製造した後、前記希釈された菌1mlを接種した。引き続き、36℃、220rpmの条件で撹拌し、18時間培養した後、600nmでの吸光度を測定した。
【0034】
その結果、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対して高い抗菌活性を示す20個のペプチドを選定した(
図2及び
図3)。前記ペプチドについての配列情報及び抗菌活性の有無を下記表2に要約した。
【0035】
【0036】
本発明は、前述した実施例及び実験例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施例及び実験例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【配列表】