(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】医療用縫合糸及び医療用縫合糸キット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20221118BHJP
A61L 17/10 20060101ALI20221118BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
A61B17/04
A61L17/10
A61L17/12
(21)【出願番号】P 2021514269
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2019005954
(87)【国際公開番号】W WO2019221560
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0057110
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518154893
【氏名又は名称】ジェイワールド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミン ジョン カン
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116648(US,A1)
【文献】国際公開第2017/131416(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
A61L 17/10
A61L 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸本体と、
前記縫合糸本体に形成され、前記縫合糸本体の長さ方向
一端から他端に向かって同一方向に傾斜する複数の突起と、
前記縫合糸本体
の側方から着脱可能に結合され、下面の面積が上面の面積よりも広い
コーン部を含むアンカーコーン(anchoring cone)とを
備え、
前記アンカーコーンは、同一方向に傾斜する隣り合う突起間の部分に結合され、前記隣り合う突起と同一方向に傾斜
し、
前記アンカーコーンは、前記縫合糸本体が側方から挿入されるように形成され、前記アンカーコーンの上面から下面に亘って延在しており、前記アンカーコーンを部分的に貫通する挿入溝を含む、医療用縫合糸。
【請求項2】
前記突起は、前記縫合糸本体の長さ方向に沿って所定の間隔で配列される、請求項1に記載の医療用縫合糸。
【請求項3】
前記突起は、前記縫合糸本体の
長さ方向と交差するように、かつ反対側に位置する両側方
に形成され
た一側突起および他側突起とで突起対を形成
する、請求項2に記載の医療用縫合糸。
【請求項4】
前記挿入溝は、前記縫合糸本体が接触して締結される締結溝と、前記締結溝と連通し、挿入された前記縫合糸本体を露出させるスペーサ部とを含む、請求項
1に記載の医療用縫合糸。
【請求項5】
前記スペーサ部の間隔は、前記締結溝の間隔よりも小さい、請求項
4に記載の医療用縫合糸。
【請求項6】
前記アンカーコーンは、
前記コーン部の上面及び下面から前記上面及び前記下面に垂直な方向にそれぞれ延長
して延びる支持部を含み、
前記支持部の外部直径は、前記
コーン部の前記上面の外部直径と同じである、請求項
1に記載の医療用縫合糸。
【請求項7】
前記縫合糸本体、前記突起又は前記アンカーコーンは生吸収性材料で形成される、請求項1に記載の医療用縫合糸。
【請求項8】
前記アンカーコーンの前記縫合糸本体からの突出高さが前記突起の突出高さよりも大きい、請求項1に記載の医療用縫合糸。
【請求項9】
請求項1に記載の医療用縫合糸と、
前記医療用縫合糸を収容するカニューレとをさらに含む、縫合糸キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合糸及び縫合糸キットに関する。より詳細には、縫合及びリフティングに用いられる縫合糸及び縫合糸キットに関する。
【背景技術】
【0002】
縫合糸は、医療目的で切開部位を縫合することや、美容目的でたるんだ組織を引き上げること(リフティング施術)に使われる。
【0003】
従来の縫合糸を用いた縫合法は、縫合糸を針に通して縫うことにより切開部位を引き寄せ固定し、縫合部位の末端に結び目を作って縫合糸を固定することで行われてきた。
【0004】
また、縫い及び結び目による縫合の場合には、施術者の熟練度及び状態によってその精度及び完成度に差が生じる。
【0005】
例えば、施術者の熟練度及び状態の差によって、切開部位の完全な縫合ができなかったり、過剰な力を加えて縫合して組織が壊死したり、結び目が緩んで縫合が解ける事態などがあった。
【0006】
また、縫う過程で施術者が必然的に縫合糸に接触することになり、施術者の手から縫合糸を介して組織内に病原体が侵入して感染が起こる場合が存在した。
【0007】
そこで、縫合の精度及び完成度を均一化し、縫合糸による感染を防止する技術の開発が求められている。
【0008】
例えば、韓国特許第10-1835763号公報では、係止突起を備える縫合糸を開示しているが、従来の縫い方による縫合を行うだけであり、感染を防止する手段については開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、製造が容易であり、縫合及びリフティングを効果的に行うことができる縫合糸及び縫合糸キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.縫合糸本体と、前記縫合糸本体に形成された複数の突起と、前記縫合糸本体に着脱可能に結合されたアンカーコーン(anchoring cone)とを含む、医療用縫合糸。
【0011】
2.前記項目1において、前記突起及び前記アンカーコーンは同一方向に傾斜する、医療用縫合糸。
【0012】
3.前記項目1において、前記突起は、前記縫合糸本体の長さ方向に沿って所定の間隔で配列され、前記アンカーコーンは、前記縫合糸本体の前記突起のうち隣り合う突起間の部分に結合される、医療用縫合糸。
【0013】
4.前記項目3において、前記突起は、前記縫合糸本体の両側部から互いに向かい合うように形成されて突起対を形成し、前記アンカーコーンは、前記突起対のうち隣り合う突起対間の前記縫合糸本体の部分に結合される、医療用縫合糸。
【0014】
5.前記項目1において、前記アンカーコーンは、前記縫合糸本体が挿入されるように形成され、前記アンカーコーンの上面及び下面にわたって延長し、前記アンカーコーンを部分的に貫通する挿入溝を含む、医療用縫合糸。
【0015】
6.前記項目5において、前記挿入溝は、前記縫合糸本体が接触して締結される締結溝と、前記締結溝と連通し、挿入された前記縫合糸本体を露出させるスペーサ部とを含む、医療用縫合糸。
【0016】
7.前記項目6において、前記スペーサ部の間隔は、前記締結溝の間隔よりも小さい、医療用縫合糸。
【0017】
8.前記項目5において、前記アンカーコーンは、前記アンカーコーンの前記上面及び前記下面からそれぞれ延長する支持部をさらに含む、医療用縫合糸。
【0018】
9.前記項目1において、前記縫合糸本体、前記突起又は前記アンカーコーンは、生吸収性材料で形成される、医療用縫合糸。
【0019】
10. 前記項目1において、前記アンカーコーンの前記縫合糸本体からの突出高さが前記突起の突出高さよりも大きい、医療用縫合糸。
【0020】
11.前記項目1~10のいずれかの医療用縫合糸と、前記医療用縫合糸を収容するカニューレとをさらに含む、縫合糸キット。
【発明の効果】
【0021】
例示的な実施形態によると、医療用縫合糸は、複数の突起とアンカーコーンとを備えることができる。突起及びアンカーコーンを組織内に挿入した後、組織にアンカリングして固定することにより、縫合糸の固定力を向上することができる。
【0022】
例えば、アンカリング面積の大きいアンカーコーンを組織にアンカリングし、縫合糸を引っ張るときに、組織が容易に引っ張られるようにすることができる。
【0023】
また、結び目を作らなくても縫合を行うことができ、縫合糸キットを引っ張ることによりリフティングを効果的に行うことができる。
【0024】
例示的な実施形態に係る医療用縫合糸は、アンカーコーンの挿入溝に縫合糸本体を挿入することで簡単に製造することができる。
【0025】
また、アンカーコーンの締結溝の間隔がスペーサ部の間隔よりも小さいので、縫合糸を締結溝に挿入した後、スペーサ部によって固定することができる。
【0026】
さらに、アンカーコーンの上下面に延長された支持部によって縫合糸本体とアンカーコーンとの結合力を向上することができ、縫合糸が挿入過程で分離されないようにすることができる。
【0027】
例示的な実施形態では、医療用縫合糸をカニューレの内部に収容することにより、縫合糸の接触による感染を防止することができる。
【0028】
また、縫合糸キットを生吸収性材料で形成することにより、縫合糸を除去するための再手術を省略することができ、縫合糸の組織内での長期滞留により引き起こされる炎症を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る医療用縫合糸を示す概略図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態に係る医療用縫合糸キットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態は、縫合糸本体と、該縫合糸本体に形成された複数の突起と、縫合糸本体に着脱可能に結合されたアンカーコーン(anchoring cone)とを含み、体内に挿入した後の組織内の固定力に優れ、縫合及びリフティングを効果的に行うことができ、また感染の危険性を低減した医療用縫合糸および医療用縫合糸キットを提供するものである。
【0031】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。本明細書で使用される用語「第1」及び「第2」の意味は、「第1」及び「第2」によって修飾される対象の数または順序を限定するものではなく、互いに異なる修飾される対象を区別するものに過ぎない。
【0032】
図1は、例示的な実施形態に係る縫合糸を示す概略図である。
【0033】
図1を参照すると、本発明の医療用縫合糸100は、縫合糸本体110と、突起120と、アンカーコーン130とを含むことができる。
【0034】
縫合糸本体110は、縫合糸の突起120及びアンカーコーン130を備えるものであり、糸状を有することができる。前記糸状の外面に突起120及びアンカーコーン130を備えることができる。
【0035】
前記糸状の長さは特に制限されず、縫合部位を十分に縫合できる長さであればよい。前記糸状の太さもまた特に制限されず、縫合糸本体110の可撓性を損することなく、強度及び固定力を確保できる太さであればよい。例えば、縫合糸本体110の直径は0.3~3mmであってもよい。
【0036】
縫合糸本体110は、生体適合性材料で形成することができる。医療用縫合糸100は、体の組織内に挿入されるので、体の組織内で各種免疫及び抗体反応に対して炎症反応を起こさない材料で形成することができる。
【0037】
前記生体適合性材料の非限定的な例としては、ポリプロピレン(polypropylene)、ナイロン(nylon)、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
縫合糸本体110は、生吸収性材料で形成することができる。生吸収性材料は、体内に挿入され、経時により分解されて組織内に吸収される物質であってもよい。これにより、体内に挿入された医療用縫合糸100を除去する再手術を省略できる。また、医療用縫合糸100の組織内での長期滞在により炎症反応が起こり得るが、縫合糸本体110が経時分解されることによって炎症反応を抑制することができる。
【0039】
いくつかの例示的な実施形態では、前記生吸収性材料の非限定的な例として、ポリジオキサノン(polydioxanone )、ポリ乳酸(poly(L-lactic acid))、ポリグリコール酸(poly(glycolic acid))、ポリカプロラクトン(polycaprolactone )及びそれらの共重合体からなる群より選択される一つ以上、又はマグネシウム、亜鉛、カルシウムを含む生吸収性金属が挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用することができる。
【0040】
前記生吸収性材料と縫合糸本体110の太さを調節することにより、縫合糸本体110が組織内で分解される速度を調節することができる。例えば、前記縫合糸本体110の組織内での分解速度が数時間、数日、数ヶ月または数年となるように調節することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、縫合後の傷の回復時間を類推して分解速度を調節することができる。また、医療用縫合糸100を用いたリフティング施術の後、組織がリフティング位置に固定・維持されるように時間余裕をもって分解速度を調節することができる。
【0042】
例示的な実施形態では、突起120は、縫合糸本体110の周囲に沿って形成することができる。すなわち、縫合糸本体110の外面に形成できる。また、突起120は複数形成することができる。
【0043】
例示的な実施形態によると、突起120は傾斜して形成することができる。突起120は、縫合糸本体110に接する根元と、突起120の末端に形成された尖った部分とを含むことができる。例えば、前記尖った部分が縫合糸本体110の一つの末端に向かって傾斜したものであってもよい。傾斜(角度)は特に制限されず、例えば、縫合糸本体110と10~80°の角度をなして傾斜してもよい。前記一つの末端に傾いた突起120によって医療用縫合糸100が組織内に挿入された後、突起120は、組織間に浸入して組織内にアンカリングすることができる。突起120が組織内にアンカリングされることにより、医療用縫合糸100を挿入された位置に固定することができる。これにより、縫合後に結び目を形成しなくても医療用縫合糸100を縫合部位に固定することができる。
【0044】
また、例示的な実施形態では、医療用縫合糸100をたるんだ組織に挿入した後、挿入の反対方向に引っ張ることにより、たるんだ組織を引き寄せてリフティング施術を行うことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、突起120はウイング(wing)状を含むことができる。例えば、突起120は縫合糸本体110の外面にウイング状に備えることができる。ウイング状を有することにより、突起120は組織内に容易に浸入することができ、組織内にさらに強固に固定することができる。したがって、医療用縫合糸100の固定力を向上することができる。
【0046】
例示的な実施形態では、突起120は、縫合糸本体110の長さ方向に沿って所定の間隔で配列することができる。前記間隔は特に限定されず、例えば1~10mmであってもよい。突起120を一定の間隔で形成することにより、医療用縫合糸100を全体的に組織に均一に固定することができる。これにより、医療用縫合糸100の全体としての固定力を向上することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、突起120は縫合糸本体110の側部の対向する位置に形成することができる。例えば、突起120は、縫合糸本体110の両側部から向かい合うように形成して突起対を形成することができる。つまり、縫合糸本体110の中心に対して約180°の角度をなして突起120を形成することができる。例示的な実施形態では、突起120は、2対、3対などのいくつかの対を形成することができる。また、例えば、3つの突起120を前記中心に対して120°の角度をなして形成することもできる。突起120を前述の位置に形成することにより、医療用縫合糸100の固定力を向上することができ、また医療用縫合糸100を用いたリフティング施術において医療用縫合糸100を引っ張るとき、突起120によって固定された組織を均一な方向にリフティングすることができる。
【0048】
例示的な実施形態によると、突起120は、生体適合性材料で形成することができ、好ましくは、生吸収性材料で形成することができる。前記生体適合性材料および生吸収性材料は、縫合糸本体110を形成する材料と同じ材料を用いることができる。突起120を形成する材料と縫合糸本体110を形成する材料は、同一でも異なっていてもよい。好ましくは、突起120と縫合糸本体110を同じ材料で形成すると、突起120と縫合糸本体110の結合力を強化し、分解速度のバランスを取ることができる。
【0049】
図2及び
図3は、アンカーコーンを示す概略図である。
図2及び
図3を参照すると、アンカーコーン130は、コーン上面132と、コーン下面134と、挿入溝140とを含むことができる。挿入溝140は、締結溝142と、スペーサ部144とを含むことができる。また、アンカーコーン130は、支持部136をさらに含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、アンカーコーン130は、縫合糸本体110に着脱可能に結合できる。アンカーコーン130は、組織内に挿入した後に組織にアンカリングされ、医療用縫合糸100の組織内での固定力をより向上させることができる。
【0051】
例示的な実施形態では、アンカーコーン130は、突起120と同一方向に傾斜していてもよい。アンカーコーン130と突起120の傾斜方向が同じであると、アンカーコーン130と突起120を組織内に挿入した後に同一方向に対してアンカリングされることにより、医療用縫合糸の固定力を向上することができる。
【0052】
例示的な実施形態によると、アンカーコーン130は、複数の突起120のうち隣り合う突起間に結合することができる。また、前記突起対のうち、隣り合う突起対間の縫合糸本体の部分に結合することができる。これにより、突起120のアンカリングとアンカーコーン130のアンカリングとをそれぞれ独立して行い、医療用縫合糸の固定力を向上することができる。
【0053】
いくつかの実施形態によると、アンカーコーン130は、コーン上面132及びコーン下面134にわたって延長し、アンカーコーン130を部分的に貫通する挿入溝140を含むことができる。挿入溝140により、縫合糸本体110とアンカーコーン130の着脱を行うことができる。
【0054】
いくつかの実施形態によると、コーン下面134の面積がコーン上面132の面積よりも広くてもよい。また、コーン下面134からコーン上面132に向かってアンカーコーン130の側部に傾斜を形成することができる。コーン下面134及びコーン上面132には、挿入溝140が貫通される溝を形成することができる。コーン下面134の面積が広くてアンカーコーン130の下部が縫合糸本体110から突出するため、突出部分を組織内にアンカリングすることができる。これにより、縫合糸を引っ張るとき、組織が容易に引っ張られるようにすることができ、縫合力及びリフティング効果を向上させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、アンカーコーン130は、コーン上面132及びコーン下面134から延長する支持部136をさらに含むことができる。例えば、支持部136は、コーン上面132及びコーン下面134のいずれかから延長してもよく、コーン上面132及びコーン下面134にそれぞれ延長してもよい。
【0056】
支持部136は、縫合糸本体110を挿入できる直径と弾性を備える。例えば、縫合糸本体110の直径よりもやや小さい直径を有する、弾性力のある素材で構成することができる。縫合糸本体110が支持部136に挿入されると、支持部136の弾性及び応力によって縫合糸本体110をアンカーコーン130に固定することができる。このように、支持部136を備えることにより、縫合糸本体110とアンカーコーン130との結合力を増加させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、挿入溝140は、締結溝142と、スペーサ部144とを含むことができる。締結溝142は、縫合糸本体110がアンカーコーン130に結合されるとき、挿入溝140と縫合糸本体110とが接触して締結される部位である。スペーサ部144は、アンカーコーン130に縫合糸本体110が挿入されるようにする隙間を含む。スペーサ部144は、締結溝142と連通し、縫合糸本体110がスペーサ部144を通過して締結溝142に締結される。スペーサ部144により、挿入された縫合糸本体110が露出し得る。挿入溝140による結合によって、医療用縫合糸100を容易にかつ経済的に製造することができる。
【0058】
例示的な実施形態では、挿入溝140及び締結溝142のサイズは、縫合糸本体110の直径と同じでもよく、それより小さくてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態によると、スペーサ部144の間隔は、締結溝142の間隔よりも小さくてもよい。縫合糸本体110を締結溝142まで挿入すると、アンカーコーン130のスペーサ部144が縫合糸本体110を覆いながら絞めることにより、アンカーコーン130と縫合糸本体110をより強固に結合することができる。
【0060】
例示的な実施形態によると、アンカーコーン130が縫合糸本体110から突出した高さが突起120の突出高さよりも大きくてもよい。これにより、突起120による固定ができない部分をアンカーコーン130がさらに固定することにより、医療用縫合糸100の固定力を向上させることができる。
【0061】
アンカーコーン130の縫合糸本体110からの突出高さは、アンカーコーン130の縫合糸本体110から最も離れている部分と縫合糸本体110との間の距離を意味する。例えば、アンカーコーン130のコーン下面134の一部が縫合糸本体110と最も離れていてもよい。そして、突起120の突出高さは、突起120の縫合糸本体110から最も離れている部分と縫合糸本体110との間の距離を意味する。
【0062】
いくつかの実施形態によると、アンカーコーン130の突出高さは、突起120の突出高さよりも5~20%大きくてもよい。この場合には、突起120による固定ができない部分までアンカーコーン130により固定できるとともに、アンカーコーン130のサイズを適当に調節し、固定する組織が破壊されたり、被施術者に痛みを引き起こすことを防止することができる。
【0063】
例示的な実施形態によると、アンカーコーン130は、生体適合性材料で形成することができ、好ましくは生吸収性材料で形成することができる。前記生体適合性材料および生吸収性材料は、縫合糸本体110を形成する材料と同じ材料を用いることができる。アンカーコーン130を形成する材料と、縫合糸本体110を形成する材料は、同一でも異なっていてもよい。好ましくは、アンカーコーン130と縫合糸本体110を同じ材料で形成すると、アンカーコーン130と縫合糸本体110との結合力を強化し、分解速度のバランスを取ることができる。
【0064】
より好ましくは、縫合糸本体110、突起120及びアンカーコーン130の材料を統一することにより、製造時の利便性を向上させ、各部材の結合力を強化し、また分解速度のバランスを取ることができる。
【0065】
図4は、例示的な実施形態に係る医療用縫合糸キットを示す概略図である。
【0066】
図4を参照すると、医療用縫合糸キット200は、医療用縫合糸100とカニューレ210とを含むことができる。
【0067】
例示的な実施形態によると、カニューレ210は、両末端に医療用縫合糸100が挿入される穴を含み、これによって、医療用縫合糸100を内部に挿入してカニューレ210に収容することができる。
【0068】
したがって、医療用縫合糸100が突起120及びアンカーコーン130を備えているにもかかわらず、組織に傷をつけずに組織内に容易に挿入できる。また、縫合又はリフティングの施術時、施術者の医療用縫合糸100への直接的な接触が遮断されるため、医療用縫合糸100の汚染または感染による組織内の炎症反応を防止することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、カニューレ210の内部直径は0.4mm~4mmであってもよいが、医療用縫合糸100を収容できる内部直径であればこれに限定されない。ただし、直径が5mmを超えると、チューブの可撓性が低下することがあり、縫合及びリフティングの施術時に大きすぎる穴が形成されることがある。
【0070】
例示的な実施形態では、カニューレ210は、可撓性材料で形成でき、生体適合性材料で形成することができる。前記生体適合性材料としては、縫合糸本体110の材料と同じ材料を使用することができ、縫合糸本体110と同じ生吸収性材料を使用することもできる。縫合糸キット200を使用した施術では挿入後にカニューレ210を除去することが一般的であるが、これを生吸収性材料で形成する場合にはカニューレ210を除去しなくてもよい。このとき、カニューレ210が先に分解された後、医療用縫合糸100が続いて分解され得る。
【0071】
いくつかの実施形態によると、カニューレ210は、医療グレードの材料で形成された医療用カニューレ、医療用ニードルなどであってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態によると、縫合糸キット200は、パンチング等により穴があいた組織に挿入することができ、挿入後にカニューレ210を除去することにより、組織内に医療用縫合糸100が残存し得る。これにより、突起120及びアンカーコーン130を含む医療用縫合糸100を、組織に傷をつけることなく、施術時の痛みなしに組織に挿入して固定することができる。
【0073】
その後、医療用縫合糸100の突起120及びアンカーコーン130が突出した方向側の末端を引っ張ることにより、切開組織を適切な力で引き寄せ固定することができる。また、たるんだ組織を引き上げて固定することができる。このとき、結び目を作る必要がないため、施術者の熟練度とは無関係に安定した施術を行うことができる。