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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20221118BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20221118BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20221118BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20221118BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20221118BHJP
【FI】
C08L29/04 A ZBP
C08L67/04
C08K3/26
C08K3/38
C08L101/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022120485
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐介
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108795306(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110341005(CN,A)
【文献】特許第6916571(JP,B1)
【文献】特許第7029210(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物が、生分解性樹脂と、無機物質粉末と、ホウ砂と、を含み、
前記生分解性樹脂と、前記無機物質粉末との質量比が、10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリビニルアルコールを含み、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウム粉末であり、
前記ホウ砂の含有量が、前記樹脂組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性樹脂と、前記無機物質粉末との質量比が、30:70~70:30である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性樹脂が、
ポリビニルアルコールからなる第1の生分解性樹脂と、
ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート、及びポリブチレンサクシネートアジペートからなる群から選択される1以上からなる第2の生分解性樹脂と、からなる、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記重質炭酸カルシウム粉末及びホウ砂のJIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、それぞれ、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、アセチルクエン酸トリブチルを更に含み、
前記アセチルクエン酸トリブチルの含有量が、前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ホウ砂の含有量が、前記樹脂組成物に対して、1.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の生分解性樹脂と、前記第2の生分解性樹脂との質量比が、10:90~50:50である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1からの何れか1項に記載の樹脂組成物からなる、成形品。
【請求項9】
前記成形品が、押出成形シートである、請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、微生物の作用や加水分解により、自然界に元来存在する物質へ分解されることから、環境負荷が少ない樹脂として注目されている。
【0003】
生分解性樹脂に対し、環境負荷の少なさを損なわずに良好な諸特性等を付与するため、無機物質粉末(例えば、炭酸カルシウム粉末等)を配合することが提案されている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-119850号公報
【文献】特表2018-527416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、生分解性樹脂は、耐加水分解性が低いため、成形時に加水分解され易く、生分解性樹脂から得られる樹脂成形品は機械的特性に劣る傾向にある。
本発明者は、このような傾向が、生分解性樹脂及び無機物質粉末を含む樹脂組成物の成形において特に生じ易い可能性があることを見出した。
【0006】
しかし、生分解性樹脂の生分解性を損なわずに、生分解性樹脂及び無機物質粉末を含む樹脂組成物から、良好な機械的特性を備える成形品を作製出来る技術は充分確立されていない。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、生分解性樹脂及び無機物質粉末を含み、かつ、良好な機械的特性及び生分解性を有する成形品を得るための技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、所定量のホウ砂を配合することで上記課題を解決出来る点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0009】
(1) 樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物が、生分解性樹脂と、無機物質粉末と、ホウ砂と、を含み、
前記生分解性樹脂と、前記無機物質粉末との質量比が、10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリビニルアルコールを含み、
前記無機物質粉末は、ホウ砂とは異なる物質であり、
前記ホウ砂の含有量が、前記樹脂組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下である、
樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記生分解性樹脂と、前記無機物質粉末との質量比が、30:70~70:30である、(1)に記載の樹脂組成物。
【0011】
(3) 前記生分解性樹脂が、
ポリビニルアルコールからなる第1の生分解性樹脂と、
ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート、及びポリブチレンサクシネートアジペートからなる群から選択される1以上からなる第2の生分解性樹脂と、からなる、
(1)に記載の樹脂組成物。
【0012】
(4) 前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウム粉末である、(1)に記載の樹脂組成物。
【0013】
(5) 前記重質炭酸カルシウム粉末及びホウ砂のJIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、それぞれ、0.7μm以上6.0μm以下である、(4)に記載の樹脂組成物。
【0014】
(6) 前記樹脂組成物が、アセチルクエン酸トリブチルを更に含み、
前記アセチルクエン酸トリブチルの含有量が、前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下である、(1)に記載の樹脂組成物。
【0015】
(7) 前記ホウ砂の含有量が、前記樹脂組成物に対して、1.0質量%以上10.0質量%以下である、(1)に記載の樹脂組成物。
【0016】
(8) 前記第1の生分解性樹脂と、前記第2の生分解性樹脂との質量比が、10:90~50:50である、(3)に記載の樹脂組成物。
【0017】
(9) (1)から(8)の何れか1項に記載の樹脂組成物からなる、成形品。
【0018】
(10) 前記成形品が、押出成形シートである、(9)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生分解性樹脂及び無機物質粉末を含み、かつ、良好な機械的特性及び生分解性を有する成形品を得るための技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0021】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、以下の要件を全て満たす。
・ 樹脂組成物が、生分解性樹脂と、無機物質粉末と、ホウ砂と、を含む。
・ 生分解性樹脂と、無機物質粉末との質量比が、10:90~70:30である。
・ 生分解性樹脂が、ポリビニルアルコールを含む。
・ 無機物質粉末は、ホウ砂とは異なる物質である。
・ ホウ砂の含有量が、樹脂組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、ポリビニルアルコールを含む生分解性樹脂と、無機物質粉末(ホウ砂とは異なる)と、を含む樹脂組成物において、所定量のホウ砂が配合される点に主要な技術的特徴がある。
上記構成を備える樹脂組成物によれば、生分解性樹脂の生分解性を損なわずに、良好な機械的特性を備える成形品を作製出来る。
【0023】
ホウ砂は、無機物質粉末として分類される物質である。本発明者は、ホウ砂と、ホウ砂とは異なる無機物質粉末との併用によって、意外にも、生分解性樹脂含有成形品の機械的特性を高められることを見出した。その理由は定かではないが、ホウ砂の添加による水素結合による架橋ネットワークが寄与しているものと推察される。
【0024】
本発明において「機械的特性」とは、樹脂組成物から得られる成形品の引張強さを包含する。
【0025】
樹脂組成物から得られる成形品の機械的特性は、実施例に示した方法で評価し得る。
【0026】
本発明において「生分解性」とは、成形品が生物(微生物等)の作用により分解する性質を包含する。
【0027】
樹脂組成物から得られる成形品の生分解性は、実施例に示した方法で評価し得る。
【0028】
以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0029】
なお、以下、本発明において、「Aは成分aからなる」とは、「A」が、「成分a」以外の成分を実質的に含まないこと、好ましくは「成分a」以外の成分を全く含まないことを包含する。
本発明において、「Aが、成分a以外の成分を実質的に含まない」とは、「A」中の「成分a」以外の成分の含有量が、好ましくは0.1質量%以下であること、より好ましくは0.05質量%以下であることを包含する。
【0030】
(1)生分解性樹脂
本発明における生分解性樹脂は、ポリビニルアルコールを含む点以外は特に限定されず、生分解性樹脂として分類される任意の樹脂を採用出来る。生分解性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0031】
(1-1)ポリビニルアルコール(第1の生分解性樹脂)
ポリビニルアルコール(CAS番号:9002-89-5)は、「PVAL」、「PVA」等とも称される親水性ポリマーである。
【0032】
本発明者は、ホウ砂による上述の機械的特性の向上効果が、ポリビニルアルコールを含む生分解性樹脂の存在下で特に顕著であることを見出した。
【0033】
(1-2)第2の生分解性樹脂
本発明における生分解性樹脂は、ポリビニルアルコールからなるものでも良いが、ポリビニルアルコールと、ポリビニルアルコール以外のその他の生分解性樹脂との組み合わせからなるものであっても良い。
後者の態様において、ポリビニルアルコールは「第1の生分解性樹脂」と称され、その他の生分解性樹脂は「第2の生分解性樹脂」と称される。ただし、「第2の生分解性樹脂」は、1種の生分解性樹脂からなる態様、及び2種以上の生分解性樹脂の組み合わせからなる態様の何れも包含する。
【0034】
第2の生分解性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PBA)、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等の脂肪族ポリエステル樹脂;
ポリブチレンテレフタレート/サクシネート(PETS)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAH)、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族共重合ポリエステル樹脂;
デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等の天然高分子と上記の脂肪族ポリエステル樹脂又は脂肪族芳香族コポリエステル樹脂との混合物等。
【0035】
本発明の効果が奏され易いという観点から、第2の生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートからなる群から選択される1以上が好ましい。
【0036】
なお、本発明において「ポリ乳酸」とは、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸ホモポリマー、及び、原料モノマーとして乳酸成分と該乳酸成分と共重合可能なその他のモノマー成分とを縮重合させて得られるポリ乳酸コポリマーを包含する。
【0037】
(1-3)生分解性樹脂の含有量
生分解性樹脂の含有量は、成形性等の観点から適宜設定出来る。
【0038】
ポリビニルアルコールの含有量の上限は、生分解性樹脂に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
ポリビニルアルコールの含有量の下限は、生分解性樹脂に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0039】
ポリビニルアルコールの含有量の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
ポリビニルアルコールの含有量の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
【0040】
生分解性樹脂の含有量(総量)の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
生分解性樹脂の含有量(総量)の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0041】
本発明の効果が奏され易いという観点から、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、生分解性樹脂以外の樹脂成分を実質的に含まないことが好ましく、生分解性樹脂のみからなることがより好ましい。
【0042】
(2)無機物質粉末
無機物質粉末(ホウ砂を除く)としては、特に限定されず、通常の樹脂製品等に含まれるものを採用出来る。無機物質粉末は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0043】
無機物質粉末としては、例えば、以下のものが挙げられる。
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、又はホウ酸塩;
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の酸化物;
上記塩又は酸化物の水和物等。
【0044】
無機物質粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。
【0045】
無機物質粉末は合成のものであっても良く、天然鉱物由来のものであっても良い。
【0046】
無機物質粉末の形状は、特に限定されず、粒子状(球形、不定形状等)、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。
【0047】
無機物質粉末は表面処理剤で処理されていても良く、処理されていなくても良い。
好ましい表面処理剤としては、無機物質粉末の分散性等を高める観点から、スルホン酸を含む表面処理剤、スルホン酸塩を含む表面処理剤、及びリン酸エステルを含有する表面処理剤からなる群から選択される1以上等が挙げられる。
表面処理剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0048】
無機物質粉末としては、炭酸カルシウム粉末が好ましい。
通常、樹脂組成物に対して炭酸カルシウム粉末の配合量を高めると、樹脂組成物から得られる成形品の機械的特性を高め易くなる。他方で、生分解性樹脂を含む樹脂組成物において炭酸カルシウム粉末の配合量を高めると、耐加水分解性が低下するため、成形品の機械的特性が劣り易くなる。
しかし、本発明によれば、所定量のホウ砂を配合することで、耐加水分解性の低下を抑制し、良好な機械的特性を備える生分解性樹脂含有成形品が得られる。
【0049】
炭酸カルシウム粉末としては、重質炭酸カルシウム粉末、及び軽質炭酸カルシウム粉末の何れでも良い。
【0050】
「重質炭酸カルシウム」とは、炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とする天然原料(石灰石等)を機械的に粉砕(乾式法、湿式法等)して得られる炭酸カルシウムである。
「軽質炭酸カルシウム」とは、合成法(化学的沈殿反応等)により調製された炭酸カルシウムである。
したがって、重質炭酸カルシウム、及び軽質炭酸カルシウムは互いに明確に区別される。
【0051】
生分解性樹脂に対してより多くの接触界面を有し、本発明の効果が奏され易いという観点から、無機物質粉末は重質炭酸カルシウム粉末を含むことが好ましく、無機物質粉末が重質炭酸カルシウム粉末からなることがより好ましい。
【0052】
無機物質粉末における、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径は、分散性を高め易いという観点から、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。
【0053】
本発明において「平均粒子径」とは、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値を意味する。測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置「SS-100型」を好ましく用いることが出来る。
【0054】
無機物質粉末の含有量は、成形性や分散性等の観点から適宜設定出来る。
無機物質粉末の含有量(ホウ砂を除く)の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
無機物質粉末の含有量(ホウ砂を除く)の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。
【0055】
(3)ホウ砂
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下のホウ砂を含む。
【0056】
ホウ砂(化学式:Na(OH)・8HO)は、無機物質の1種である。本発明の樹脂組成物は、少なくとも2種の無機物質、すなわち、上述の無機物質粉末、及びホウ砂を含む。
【0057】
ホウ砂の含有量の上限は、樹脂組成物に対して、20.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。
【0058】
ホウ砂の含有量の下限は、樹脂組成物に対して、1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上である。
【0059】
ホウ砂における、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径は、分散性を高め易いという観点から、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。
【0060】
(4)その他の成分
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分にくわえて、その他の成分を配合しても良く、配合しなくても良い。
その他の成分としては、例えば、可塑剤(アセチルクエン酸トリブチル等)、樹脂(熱可塑性樹脂等)、滑剤、色剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、紫外線吸収剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0061】
上記成分のうち、アセチルクエン酸トリブチル(CAS番号:77-90-7)を配合すると、本発明の効果がより得られ易い傾向にある。
アセチルクエン酸トリブチルの含有量は、得ようとする効果に応じて適宜設定出来るが、樹脂組成物に対して、好ましくは5.0質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以上18.0質量%以下である。
【0062】
ただし、本発明の好ましい態様は、樹脂組成物が、生分解性樹脂、無機物質粉末、及びホウ砂からなる態様を包含する。
【0063】
(5)各成分の配合比
本発明の樹脂組成物において、生分解性樹脂と、無機物質粉末との質量比(生分解性樹脂:無機物質粉末)は、10:90~70:30、好ましくは30:70~70:30、より好ましくは40:60~70:30である。
【0064】
生分解性樹脂が、第1の生分解性樹脂と、第2の生分解性樹脂の両方を含む場合、その質量比(第1の生分解性樹脂:第2の生分解性樹脂)は、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは20:80~50:50である。
【0065】
(6)樹脂組成物の形態等
本発明の樹脂組成物の形態等は、得ようとする成形品の種類等に応じて、任意の形態等であり得る。
【0066】
樹脂組成物の形態としては特に限定されないが、例えば、ペレット等が挙げられる。
【0067】
ペレットの形状としては特に限定されないが、例えば、円柱、球形、楕円球状等が挙げられる。
【0068】
ペレットのサイズは特に限定されない。例えば、球形ペレットの場合、直径1mm以上10mm以下であり得る。楕円球状のペレットの場合、縦横比0.1以上1.0以下、縦横の長さ1mm以上10mm以下であり得る。円柱ペレットの場合、直径1mm以上10mm以下、長さ1mm以上10mm以下であり得る。
【0069】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物の形態や用途等に応じて、従来知られる方法や条件を採用出来る。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、例えば、構成成分を、混合、溶融混練等することで得られる。
【0071】
本発明の樹脂組成物を製造するための機械は、樹脂組成物の形態や用途等に応じて選択出来、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、混練機(二軸混練機等)が挙げられる。
【0072】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物からなり、任意の成形方法によって本発明の樹脂組成物を成形することで得られる。
【0073】
本発明の成形品は、用途等に応じた任意の形状であり得る。
本発明の成形品は、例えば、フィルム、シート、容器体(食品容器等)、日用品(各種使い捨て製品等)、自動車用部品、電気電子部品、各種消耗品(建築部材等の分野におけるもの等)等であり得る。
【0074】
本発明の成形品の製造方法は、得ようとする成形品に応じて適宜選択出来る。
本発明の成形品の製造方法としては、例えば、押出成形法、インフレーション成形法、射出成形法、発泡射出成形法、射出圧縮成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、真空成形法等が挙げられる。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、特に、押出成形に適する。したがって、本発明の成形品は、好ましくは押出成形品である。
【0076】
押出成形品としては、シート、フィルム、中空品が挙げられる。
【実施例
【0077】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
<樹脂組成物の作製>
以下の方法で樹脂組成物を作製した。
【0079】
(1)材料の準備
以下の材料を準備した。
なお、以下、「平均粒径」とは、島津製作所社製の比表面積測定装置「SS-100型」を用い、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値である。
【0080】
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂-1:ポリビニルアルコールからなる。
生分解性樹脂-2:ポリビニルアルコール30質量%、及びポリ乳酸70質量%からなる。
【0081】
(無機物質粉末)
CC-1:重質炭酸カルシウム粉末(平均粒径:2.2μm、表面処理なし)
CC-2:重質炭酸カルシウム粉末(平均粒径:7.2μm、表面処理なし)
CC-3:軽質炭酸カルシウム粉末(平均粒径:1.5μm、表面処理なし)
【0082】
(添加剤)
添加剤-1:ホウ砂(平均粒径:7.2μm、表面処理なし)
添加剤-2:アセチルクエン酸トリブチル
【0083】
(2)樹脂組成物の作製
表中の「樹脂組成物の組成」に示す割合で、各材料を、同方向回転二軸混錬押出機「HK-25D」(φ25mm、L/D=41、(株)パーカーコーポレーション製)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレットを作製した。本例において、該ペレットが、本発明の樹脂組成物に相当する。
【0084】
(3)評価
得られた樹脂組成物から成形品を作製し、以下の評価に供した。その結果を、表中の「評価」に示す。
【0085】
(3-1)機械的特性の評価
以下の方法で、押出成形品の機械的特性(引張強さ)を評価した。
【0086】
[機械的特性の評価方法]
各ペレットから、JIS K6251:2017のダンベル状3号形試験片(押出成形品)を作製した。
得られた試験片について、JIS K7161-1:2014により、ストログラフ((株)東洋精機製作所製)を用いて、引張試験を行った。温度は23℃、延伸速度は50mm/分に設定し、引張強さを測定した。本例において、引張強さが大きいほど、機械的特性が良好であることを意味する。
【0087】
[機械的特性の評価基準]
A:引張強さが40MPa以上だった。
B:引張強さが30MPa以上40MPa未満だった。
C:引張強さが30MPa未満だった。
【0088】
(3-2)生分解性の評価
以下の方法で、押出成形品の生分解性を評価した。
【0089】
[生分解性の評価方法]
各ペレットを二軸混練押出機に投入し、190℃で溶融混練後、Tダイにてシート状(厚さ1.2mm)に成形し、押出成形品を得た。
押出成形品を、汲み置きした海水10mlと共に25mlのバイアル瓶内に入れ、室温(25℃±5℃)で1月間放置した後、押出成形品の目視観察を行った。
【0090】
[生分解性の評価基準]
A:押出成形品が分解されている。
B:押出成形品が部分的に分解されている。
C:押出成形品に変化が認められない。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
各表の通り、本発明の要件を満たす樹脂組成物から得られた成形品は、良好な機械的特性及び生分解性を備えていた。
良好な機械的特性は、生分解性樹脂の成形時における加水分解が抑制されたことによるものと推察された。
【0094】
無機物質粉末として、重質炭酸カルシウム粉末を用いた場合、更には、重質炭酸カルシウム粉末の平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下である場合に、上記傾向が得られ易かった。
また、ホウ砂とともにアセチルクエン酸トリブチルを用いた場合にも、上記傾向が得られ易かった。
【0095】
これに対し、本発明の要件を満たしていない場合、得られた成形品は、機械的特性及び/又は生分解性が劣り易かった。
【0096】
なお、データは示していないが、本例で用いた生分解性樹脂以外の生分解性樹脂を用いた場合であっても上記同様の傾向が確認されたが、生分解性樹脂が、ポリビニルアルコールを含まない場合、機械的特性が劣る傾向にあった。
例えば、「実施例1-1」において、「生分解性樹脂-1」の代わりにポリ乳酸のみからなる生分解性樹脂を用いた場合、機械的特性の評価はB~Cだった。
【要約】
【課題】本発明の課題は、生分解性樹脂及び無機物質粉末を含み、かつ、良好な機械的特性及び生分解性を有する成形品を得るための技術の提供である。
【解決手段】本発明は、樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が、生分解性樹脂と、無機物質粉末と、ホウ砂と、を含み、前記生分解性樹脂と、前記無機物質粉末との質量比が、10:90~70:30であり、前記生分解性樹脂が、ポリビニルアルコールを含み、前記無機物質粉末は、ホウ砂とは異なる物質であり、前記ホウ砂の含有量が、前記樹脂組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下である、樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし