(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】マルチ駆動装置車両の出力を選択的に共有させるための装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/00 20071001AFI20221118BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20221118BHJP
B60K 5/00 20060101ALI20221118BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221118BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20221118BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221118BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221118BHJP
B60W 20/10 20160101ALI20221118BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221118BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
B60K6/00
B60K1/00 ZHV
B60K5/00
B60K6/48
B60K6/54
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/10
B60L50/16
B60L15/20 K
(21)【出願番号】P 2019511590
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(86)【国際出願番号】 IT2017000274
(87)【国際公開番号】W WO2018104975
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】102016000123644
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519061239
【氏名又は名称】ソーラーエッジ イーモビリティ ソチエタ ペル アツィオニ
【氏名又は名称原語表記】SolarEdge e-Mobility S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Piazza A. Meucci, 2, Localita Montecastelli, 06019 Umbertide (PG) (IT)
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッツィーニ, サムエレ
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6170587(US,B1)
【文献】特表2002-502337(JP,A)
【文献】実開昭61-39626(JP,U)
【文献】特開2012-228918(JP,A)
【文献】特開2001-245404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0108373(US,A1)
【文献】特表2011-501714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00, 5/00, 6/00,
B60W 10/06-10/08,20/10,
B60L 15/20,50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ駆動装置車両(50)の出力を選択的に共有させるための装置であって、
前記車両(50)の推進装置(19)と主駆動装置(11)とを接続する機械式変速機(12)、
前記車両(50)の少なくとも1つのサービスユニット(18)に出力を供給するように構成されている二次動力装置(13)であって、機械式変速機(12)と前記少なくとも1つのサービスユニット(18)との間に動作可能に配置されている前記二次動力装置(13)、及び
前記二次動力装置(13)と前記少なくとも1つのサービスユニット(18)との間に取り付けられ、コントローラ(20)を操作することによって切り替え可能である第1のジョイント(15)
および第2のジョイント(16
)、を備えており、
前記少なくとも1つのサービスユニット(18)は、
該主駆動装置(11)は燃焼機関又は電気モーターを含み、
前記コントローラ(20)は、前記第1および第2のジョイント(15、16)を使用することによって、推進装置(19)と前記少なくとも1つのサービスユニット(18)との間の出力を選択的に共有するために前記第1および第2のジョイント(15、16)と動作可能にインターフェースされたマイクロプロセッサ型コントローラ(17)であって、該推進装置(19)から来る推進出力の優先要求に応じて推進装置(19)への出力分配を管理するようになっている該マイクロプロセッサ型コントローラ(17)を備えている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記二次動力装置(13)が、前記少なくとも1つのサービスユニット(18)に送るべき出力を発生させるための少なくとも一つの二次駆動装置(21)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該マイクロプロセッサ型コントローラ(17)は、推進装置(19)及び該主駆動装置(11)及び/又は二次駆動装置(21)の効率曲線(22)特性からの駆動出力に対する要求の相互関係に基づいて、前記少なくとも1つのサービスユニット(18)への該出力分配を管理するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記二次駆動装置(21)は電気モーターを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記二次駆動装置(21)が燃焼機関を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1および第2のジョイント(15、16)の少なくとも1つがクラッチを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記サービスユニット(18)は発電機であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記二次動力装置(13)が発電機を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ駆動装置車両の出力を、別々のユーザに対して選択的に共有させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、現在のビルドタイプの多くの自動車には、車両移動のための駆動に対して、補助的かつ付属的なもの、すなわち実際の駆動出力にはならない多くのサービスがついている。
【0003】
これらのサービスの中には相当なレベルの出力をも必要とし、電気駆動装置の場合には電圧が低いために供給が困難でさえある。
【0004】
たとえば、必要な最大出力が3kWを超えることが多い車両用空調システム、又は、使用される出力が約1kWであるパワーステアリングシステム、さらに、大容量の車両では5kwを超える出力レベルを必要とする可能性のあるブレーキ及びサスペンションサーキットのコンプレッサーを考えてみる。商用又は特殊車両の出力取得についても同様の状況が発生する。これは、車両の動きを駆動するのに必要な出力レベルに匹敵し、時にはそれ以上の出力レベルを使用する場合がある。
【0005】
伝統的な車両では、これらのサービスはすべてその動作に必要な出力を、車両を推進する駆動装置、そのサービス専用の補助駆動装置、又は出力供給システムから直接引き出す。
【0006】
前者の場合、第1の不利な点は補助サービスの動作が車両の移動を駆動する駆動装置の速度(回転数)の変動と関連していることである。駆動装置の速度(回転数)は、道路ルートのさまざまな要件によって常に変化するが、このことが二次サービスユニットへの出力供給の効率を、実際に、そして、残存している最終的に利用可能な瞬時出力に依存させている。つまり、車両の動きを運転するために必要としない出力の割合に依存する。他の不利な点も、車両の動きを駆動するための駆動装置が燃焼機関であり、自動車が静止している間に各種サービスが必要であっても運転し続けなければならないという事実であり、その結果、出力が浪費され汚染物質が排出され、そして効率が低下することになる。
【0007】
それは、例えば、「クレーントラック」型の用途において明らかである。車両が目的地に到着すると、補助サービスの使用は数週間又は数ヶ月も継続することがあるが、その間に車両の動きを駆動する駆動装置はリフティングシステムに出力を供給するために運転を継続する必要がある。このようなことは必要とされる出力が、車両の動きを駆動する駆動装置が実際に供給することができる出力よりも数桁小さい場合にもあてはまる。さらに、この基本設計概念は使用時に車両の動きを駆動するための駆動装置を駆動輪から機械的に切り離すことができる場合にのみ可能であることに留意すべきである。
【0008】
容易に実現可能な燃焼機関の場合には、その性質上、その機関が失速せずに最小回転数以下にできないという事実があるため、そのシステムでは機械的な切断が必要となる。
【0009】
直接電気駆動車では非常に異なる状況となる。
【0010】
実際、この場合には上述の切断方法の実施はおそらく困難であり、利用可能な代替解決策は特別な個々のサービス専用のモーターを設置することであることを意味する。
【0011】
一方ではこの解決策はモーター速度間のリンクをなくすという利点を有するが、他方では必要な構成要素の増加が必要となり、その結果としてシステムの複雑さ、重量、コスト及び全体寸法を増大させることになる。
【0012】
この点に関して、例えば、所要出力が車両の動きを駆動するのに必要な出力に匹敵する補助サービスを備えた車両を検討してみる。このような車両は同じ大きさの2つのモーターを取り付ける必要がある。一方は車両の移動を駆動するためだけのものであり、他方は補助サービスのためのだけものである。
【0013】
さらに、そのような車両はより低いレベルの出力を使用する追加の補助サービスのために他のモーターを装備しなければならないであろう。
【発明の概要】
【0014】
従って、本願発明の技術的目的はそのような欠点を克服することである。そして、これらの結果は、請求項1に従って作られた、マルチ駆動装置車両の出力を別々のユーザが選択的に共有させるための装置によって達成される。
【0015】
技術的目的を満たす本発願明の技術的特徴は特許請求の範囲に明確に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発願明の利点は、本発願明の例示的で非限定的な実施形態を例示する添付の図面に示す通り、以下の詳細な説明においてより明らかとなる。
【
図1】
図1は、本発願明による装置を装備した自動車を概略的に示す動作ブロック図である。
【
図2】
図2は、車両の補助サービスの効率曲線である。
【
図3】
図3は、本発願明において好ましく使用可能な表面磁石を有するブラシレス電気モーターの効率図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面のとおり、
図1において数字(50)は、別々のユーザ(19;18)に対して複数の駆動装置(11;21)によって供給することができる総出力を選択的に共有させるための装置(10)を備える、一般的なマルチ駆動装置車両の概略図を示す。
【0018】
前記装置(10)は基本的には車両(50)の推進装置(19)を1つ又は複数の主駆動装置(11)に接続する機械式変速機(12)、及び、機械式変速機(12)と車両(50)の1つ又は複数のサービス又は補助ユニット(18)との間に動作可能に配置されたサービスユニット用の二次動力装置(13)を備える。
【0019】
また、前記装置(10)はサービスユニット用の二次動力装置(13)の両側の機械式変速機(12)に取り付けられ、適切な制御手段(コントローラ)(20)を用いて操作することによって切り替え可能な第1及び第2のジョイント(15、16)を備える。
【0020】
より具体的には、前記制御手段(コントローラ)(20)は、前記ジョイント(15、16)を操作できるように接続していて、その使用の様々な瞬間における車両(50)に要求される操作に関して推進装置(19)と一つ又はそれぞれのサービスユニット(18)間の出力の分担を選択的に起動するためのマイクロプロセッサ型コントローラ(17)を備える。
【0021】
主駆動装置(11)は、燃焼機関又は電動機である。
【0022】
サービスユニット用の二次動力装置(13)は1つ又は複数のサービスユニット(18)に送るべき出力を発生させるための、電動機又は燃焼機関である1つ又は複数の二次駆動装置(21)を備える。
【0023】
マイクロプロセッサ型コントローラ(17)は、推進装置(19)への出力の分配を非常に柔軟に管理するようになっている。例えば、共有は、実際に車両(50)の動きを駆動するために必要となる、前記推進装置(19)から発生する駆動(推進)出力に対する要求に対して流行的、優先的、又は排他的な役割を与えるように行ってもよい。
【0024】
同様に、マイクロプロセッサ型コントローラ(17)は、結果として生じる様々な異なる相関関係及び前記車両(50)の補助サービスに応じて、前記1つ又は各サービスユニット(18)への出力の分担を管理するようになっている。異なる相関関係とは、例えば、推進装置(19)の駆動出力と該主駆動装置(11)及び/又は二次駆動装置(21)の効率曲線(22)との間で双方が推進特性に関して最適な管理が達成される要求などである。
【0025】
以下に提供されるいくつかの例によって、本発願明のいくつかの特徴及び利点に関してより明確に説明される。
【0026】
車両の動きを駆動するための一次駆動装置(11)が最大出力30kWの電動機であり、二次動力装置(13)が、例えば、効率曲線(22)によって
図2に示される効率で冷凍コンプレッサーに出力を供給する最大出力10kWの二次電動機(21)であると仮定する。
【0027】
ジョイント(15)が接続されていない場合、2つの電気モータ(11、21)は互いに独立しており、二次動力装置(13)は圧縮機装置にその出力を最大効率で供給することができる。すなわち、車両(50)の速度及び状態に関係なく、4,000rpmに達する。したがって、この構成では、補助ユニット(18)、すなわち圧縮機、の回路は、使用される変速機(12)に直接接続されている同じ特徴を有する回路よりも明らかにはるかに高い最大効率レベルで動作する。すなわち、様々な推進条件において車両(50)に要求される速度に応じて可変な回転数(rpm)で動作する。
【0028】
この構成では、補助サービスによって必要とされる出力のすべてがサービスユニット用の二次動力装置(13)によって供給され得るので、車両が静止しているときに車両の移動を駆動するために使用される主駆動装置(11)の速度を0(rpm)に下げることができ、それによって主駆動装置(11)によるすべての出力消費を遮断できる。冷蔵ユニットの運転が必要でないときはいつでも(例えば、それが設定温度に達した後)、前記装置(10)はサービスユニット用の二次動力装置(13)への出力の供給を中断すし、それにより、出力消費を中断することができる。
【0029】
したがって、この構成では、前記装置(10)は補助サービスの効率を最大化することができるが、車両の移動を駆動するために使用されるシステムの効率を最大化することはできない。
【0030】
前記車両(50)が、車両の動きを2,500rpmで50Nm相当にするのに駆動装置に必要なトルクで、定速走行している別の状況を想像してみる。駆動装置効率マップ(
図3、動作点1)を考慮すると、車両の動きを駆動するための駆動装置は81%の効率で動作する。この状態では、本発願明はサービスユニット用の二次動力装置(13)が車両運動を駆動するためのシステムに接続されることを可能にする。これは、車両運動を駆動する全駆動装置の動作点をより高い効率値、この例では86%にシフトし、それによって車両運動を駆動するためのシステムから5%の効率を回復する。補助装置で構成されたサービスユニット(18)が出力を必要としない場合には、ジョイント(16)を切断することが可能であり、そのため各種サービス側に出力がとられることはない。さもなければ、この場合の効率の損失は、補助サービスのシステムの動作点の変動によって3%になるだろう。
【0031】
したがって、マイクロプロセッサ型電子制御装置(17)は、任意の条件において常に達成可能な最大効率点で車両(50)が動作することを可能にする条件を前記装置(10)から得ることにより、車両の移動を駆動するため及び各種サービスのために必要な車両(50)の出力要求、及び電動機(11、21)の効率マップ、及び補助装置のマップ効率曲線又は効率マップを動的に評価し、二次動力装置の駆動装置(21)の出力の分配を管理する。
【0032】
本発願明の別の利点は、車両の運動を駆動するため又は各種サービスのために、その駆動装置(11、21)の出力の合計量の利用を可能にすることである。その場合、前の例で説明され
図1に示した車両(50)の場合は、車両移動を駆動するための30kWの駆動装置(11)を有する車両(50)は補助サービス又は車両を動かすために最大40kWまで出力を供給することができることが明らかである。
【0033】
本発願明は、少なくとも2つの駆動装置(11;21)が車両の移動又は各種サービスのために利用可能であり、一方が故障を起こした場合、他方がその車両(50)を助けてその車両(50)をより安全な状態に保持することができるので、あらかじめ設定された目的を達成するとともに、安全性に関して更なる利点を提供する。
【0034】
設定目的を達成する上記の本発願明は、産業上の利用ができることが明白である。本願発明はまた、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、幾通りかの方法で修正、適合することができる。この点に関して、発電機がサービスユニット(18)及び/又はサービスユニット用の二次動力装置(13)の代替実施形態として使用されてもよいことに留意されたい。さらに、本発願明のすべては技術的に等価な要素によって置き換えられる。