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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】半導体発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20221118BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20221118BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019017795
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020126912
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀一郎
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-112908(JP,A)
【文献】特開2010-010474(JP,A)
【文献】特開2016-207754(JP,A)
【文献】特開2007-311707(JP,A)
【文献】特開2018-174238(JP,A)
【文献】特開2003-347601(JP,A)
【文献】特開2015-015405(JP,A)
【文献】特開2012-015319(JP,A)
【文献】特開2007-035798(JP,A)
【文献】特開2020-004842(JP,A)
【文献】特開2010-232203(JP,A)
【文献】特開2008-124168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267659(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0267645(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101079464(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0112704(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が実装される凹部が形成されたパッケージ基板と、
前記凹部に充填され、前記半導体発光素子を封止する、流動性を有する第1の封止材と、
前記パッケージ基板の凹部を区画する縁面と密着して前記第1の封止材を封止する硬化された第2の封止材と、
前記第1の封止材と前記第2の封止材との間において塗布により形成されるとともに、前記紫外光を透過する紫外線透過樹脂で形成された境界層と、を備える、半導体発光装置。
【請求項2】
前記第1の封止材は、液体であり、
前記境界層は、前記第1の封止材の液面と密着している
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1の封止材は、前記凹部に満杯に充填されている、
請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第2の封止材の比重は、前記第1の封止材よりも小さい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
パッケージ基板の凹部に紫外光を発光する半導体発光素子を実装する工程と、
前記半導体発光素子が実装された前記パッケージ基板の凹部に流動性を有する第1の封止材を封入する工程と、
前記第1の封止材上に、前記紫外光を透過する紫外線透過樹脂からなる境界層を塗布する工程と、
塗布された前記境界層を硬化する工程と
前記境界層上に第2の封止材を塗布する工程と、
塗布された前記第2の封止材を硬化する工程と、
を含む半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置及びその製造方法に関し、特に、紫外光を発光する窒化物半導体発光素子を備えた半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体の封止材によって半導体発光素子を封止した液体封止型の半導体発光装置が提供されている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体発光装置としての発光モジュールは、深紫外光を放射する半導体発光素子と、半導体発光素子を封止する液体と、半導体発光素子と液体とを収容するパッケージとを備えている。このパッケージは、基台と、前記半導体発光素子から放射される前記深紫外光に対して透明な透明部材とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-207754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発光モジュールによると、透明部材は、一方に開口を有し、内部に空間を有する凹の形状を有し、液体は、基台と透明部材との間の空間に充填されている。
【0006】
しかしながら、上述のような形状では、液体が漏れ出さないように封止するために、透明部材は、石英ガラスやサファイア等を用いて形成され、基台と透明部材とは、接着剤を用いて接合されている。このように、透明部材が石英ガラスやサファイア等の高価な材料によって形成されている場合、発光モジュールの製造コストが上昇してしまう虞がある。また、基台と透明部材とが接着剤を用いて接合されている場合、発光素子から放射される紫外線によって接着剤が劣化して、基台と透明部材とが分離してしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、低コストかつ高信頼性で液体を水密に封止することができるパッケージを有する半導体発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、紫外光を発光する半導体発光素子と、前記半導体発光素子が実装される凹部が形成されたパッケージ基板と、前記凹部に充填され、前記半導体発光素子を封止する、流動性を有する第1の封止材と、前記パッケージ基板の凹部を区画する縁面と密着して前記第1の封止材を封止する硬化された第2の封止材と、前記第1の封止材と前記第2の封止材との間において塗布により形成されるとともに、前記紫外光を透過する紫外線透過樹脂で形成された境界層と、を備える、半導体発光装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、パッケージ基板の凹部に紫外光を発光する半導体発光素子を実装する工程と、前記半導体発光素子が実装された前記パッケージ基板の凹部に流動性を有する第1の封止材を封入する工程と、前記第1の封止材上に、前記紫外光を透過する紫外線透過樹脂からなる境界層を塗布する工程と、塗布された前記境界層を硬化する工程と前記境界層上に第2の封止材を塗布する工程と、塗布された前記第2の封止材を硬化する工程と、を含む半導体発光装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストかつ高信頼性で液体を水密に封止することができるパッケージを有する半導体発光装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
図2図1に示す窒化物半導体発光素子の積層構造を拡大して説明する説明図である。
図3図1に示す窒化物半導体紫外線発光装置の製造方法の一例を模式的に説明する説明図である。
図4図3に示す製造方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の一変形例に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
図6】本発明の一変形例に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
図7】本発明の一変形例に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
図9図8に示す窒化物半導体紫外線発光装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の一変形例に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体紫外線発光装置の断面図である。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体紫外線発光装置(以下、単に「発光装置」ともいう。)1は、紫外光を発光する窒化物半導体発光素子(以下、単に「発光素子」ともいう。)2と、この発光素子2が実装されるパッケージ基板3と、発光素子2を封止する、流動性を有する第1の封止材4と、パッケージ基板3と密着し、第1の封止材4がパッケージ基板3から漏れ出さないように第1の封止材4を封止する第2の封止材5と、を備えている。ここで、「流動性を有する」ものには、例えば、液体やゾル状のものが含まれる。以下、各部材について詳細に説明する。発光装置1は、半導体発光装置の一例である。発光素子2は、半導体発光素子の一例である。
【0013】
(発光素子2)
図2は、図1に示す発光素子2の積層構造を拡大して説明する説明図である。発光素子2には、例えば、波長365nm以下の紫外光(深紫外光を含む)を発光する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が該当する。図2に示すように、発光素子2は、透明基板21と、透明基板21上に形成された窒化物半導体層22と、電極23と、を有している。以下、窒化物半導体層22として、AlGaN系の窒化物半導体で形成された層を例に挙げて説明する。
【0014】
窒化物半導体層22は、透明基板21側から、AlNからなるバッファ層22a、n型AlGaNからなるnクラッド層22b、AlGaNを含む発光層22c、p型AlGaNからなるpクラッド層22d、p型GaNからなるコンタクト層22eを順次形成して構成されている。電極23は、コンタクト層22e上に形成されたアノード側電極部(p電極)23aと、nクラッド層22b上に形成されたカソード側電極部(n電極)23bと、を有している。
【0015】
発光層22cで発光した紫外光は、透明基板21を通って発光素子2の外へと導かれる。そのため、透明基板21としては、発光した紫外光の透過率がなるべく高いものを用いることが望ましい。具体的には、透明基板21としては、発光した紫外光の透過率が70%以上のものを用いることが望ましい。透明基板21としては、サファイア基板やAlN基板等の単結晶基板を用いてよい。
【0016】
(パッケージ基板3)
パッケージ基板3は、略直方体状の形状を有している。パッケージ基板3は、例えば高温焼成セラミック多層基板(High Temperature Co-fired Ceramic:HTCC)により形成される。なお、パッケージ基板3は、HTCCの他に、例えば、低温焼成セラミック多層基板、樹脂や金属で形成してもよい。
【0017】
また、パッケージ基板3の上面には、凹部(「キャビティ」ともいう。)3aが形成されている。この凹部3aは、1つの底面3b、及びこの底面3bと接続する4つの壁面3dにより構成されている。また、凹部3aの開口は、4つの壁面3dとそれぞれ接続する縁面3cにより区画されている。なお、縁面3cとは、上面のうち凹部3aの開口を除く残りの部分をいう。
【0018】
凹部3aには、上述した発光素子2が収容される。凹部3aに収容された発光素子2は、凹部3aの底面3bに実装される。好ましくは、発光素子2は、透明基板21を上側(凹部3aの開口側)とし、窒化物半導体層22を下側(凹部3aの底面3b側、パッケージ基板3側)として、パッケージ基板3の底面3bにフリップチップ実装されている。また、図示していないが、電極23は、金バンプ等を介して、パッケージ基板3に設けられた基板電極(不図示)に電気的に接続されている。
【0019】
(第1の封止材4)
第1の封止材4は、凹部3aに封入され、発光素子2を封止する。第1の封止材4は、空気の屈折率よりも大きい所定の屈折率を有する液体により形成されている。所定の屈折率は、例えば、1.10~1.80程度としてよい。
【0020】
第1の封止材4は、パッケージ基板3の凹部3aに充填されている。好ましくは、第1の封止材4は、発光素子2の上面2a(透明基板21の光が出力する面)の全域が浸るように充填される。すなわち、第1の封止材4の液面4a(上端面)は、発光素子2の上面2aよりも高い。換言すれば、第1の封止材4の液面4aのパッケージ基板3の底面3bに対する高さ(第1の封止材4の厚さに相当する距離)tは、発光素子2の上面2aのパッケージ基板3の底面3bに対する高さ(概ね、発光素子2の厚さに相当する距離)hよりも大きい(t>h)。
【0021】
なお、図1では、第1の封止材4を、凹部3aの容積に満たない量で充填した構成を例示しているが、かかる構成に限定されるものではなく、第1の封止材4は、凹部3a内に満杯になるように充填してもよい(図5(a)等参照)。
【0022】
第1の封止材4は、高い絶縁性を有し、その体積抵抗率は、好ましくは、1012(Ω・cm)以下、より好ましくは、1014(Ω・cm)以下である。また、第1の封止材4は、化学的、熱的に安定であることが好ましい。後述する製造方法で説明するように、第2の封止材5を硬化させるときに加えられる熱によって、第1の封止材4が第2の封止材5とともに硬化してしまうことを抑制するためである。
【0023】
また、上述したように発光層22cで発光した紫外光は、透明基板21を通って発光素子2の外へと導かれるとき、第1の封止材4を通過する。このため、第1の封止材4としては、発光した紫外光の透過率がなるべく高いものを用いることが望ましい。第1の封止材4としては、例えば、発光した紫外光の透過率が70%以上となるのものを用いることが望ましい。
【0024】
以上を鑑み、第1の封止材4には、例えば、シリコーンオイル、パーフルオロカーボン、アモルファスフッ素樹脂等を用いてよい。
【0025】
(第2の封止材5)
第2の封止材5は、第1の封止材4を覆うように設けられている。第2の封止材5は、第1の封止材4の屈折率との差が0.25程度以下の屈折率を有することが好ましく、第1の封止材4の屈折率と同一の屈折率を有することがより好ましい。第2の封止材5は、パッケージ基板3の縁面3cと隙間なく密着することにより、パッケージ基板3と第2の封止材5とで形成される内部空間を外部から水密に封止する。このように内部空間の水密性を保つ構成とすることにより、液体の第1の封止材4がパッケージ基板3から漏れ出してしまうことを抑制することができる。
【0026】
また、第2の封止材5は、第1の封止材4との間に空隙が生じないように、第1の封止材4に密着している状態で設けられる。具体的には、第2の封止材5は、当該第2の封止材5の第1の封止材4と対向する界面5bが第1の封止材4の液面4aの全域と接触している状態で設けられる。第1の封止材4と第2の封止材5との間に空隙が生じると、空気層が形成され、この空気層で全反射が発生することによって光の取出し効率が低減する虞があるためである。
【0027】
第2の封止材5は、パッケージ基板3の上方に盛り上がるように形成されている。これは、硬化前の第二の封止材5の粘度を調整することによって、可能となり、第2の封止材5の上面5aは、滑らかな曲面形状(例えば半球状、あるいは半楕円球状)となるように形成されている。これにより、例えば上面5aを平面とした場合と比較して、第2の封止材5と空気との境界における全反射を抑制して光の取り出し効率をさらに向上させることができる。また、第2の封止材5がレンズの役割を果たすようになり紫外光の照射方向を制御することが可能となる。第2の封止材5の形状を、所望の形状を維持して硬化するためには、硬化前の第二の封止材5の硬化前の粘度は1000cP以上、望ましくは2500cP以上であることが望ましい。なお、第二の封止材5を平坦に封止する場合はこの限りではない。
【0028】
第2の封止材5は、第1の封止材4と同様に、発光素子2が発光する紫外光の透過率がなるべく高いものを用いることが望ましい。例えば、第2の封止材5としては、発光した紫外光の透過率が70%以上のものを用いることが望ましい。
【0029】
また、第2の封止材5は、硬化する前の状態において、第1の封止材4の比重よりも小さい比重を有するものを用いることが好ましい。第2の封止材5の比重が第1の封止材4の比重以上の場合、第2の封止材5が第1の封止材4側に混ざり込み、第2の封止材5が第1の封止材4と混合することによって、第2の封止材5を硬化させるときに第1の封止材4をともに硬化してしまう虞があるためである。
【0030】
以上を鑑み、第2の封止材5としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂を主成分とする樹脂を用いてよい。また、第2の封止材5は、後述するように硬化させる工程を経るため、硬化剤を含んで構成される。
【0031】
[第1の実施の形態に係る発光装置1の製造方法]
次に、図3及び図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の製造方法について説明する。図3は、図1に示す発光装置1の製造方法の一例を模式的に説明する説明図である。図4は、図3に示す製造方法を示すフローチャートである。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、凹部3aを有するパッケージ基板3を準備する。次に、図3(b)に示すように、パッケージ基板3の凹部3aの底面3bに発光素子2を実装する。発光素子2は、上述したように窒化物半導体層22を下側とするフリップチップ実装によりパッケージ基板3に搭載される。フリップチップ実装の方法は、特に限定されるものではなく、公知の技術を用いて行ってよい。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、発光素子2が実装された凹部3aに液体の第1の封止材4を封入する。第1の封止材4は、発光素子2の上面2a(図1参照)の全体を浸すことができればよく、封入する第1の封止材4の量は、適宜調整してよい。
【0034】
なお、図3(c)では一例として、凹部3aの容積に満たない量の第1の封止材4を封入する場合、すなわち、第1の封止材4の液面4a(図1参照)がパッケージ基板3の縁面3cよりも低い位置となるように充填されている場合を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、第1の封止材4を凹部3a内に満杯になるように封入してもよい(図5(a)参照)。
【0035】
次に、図3(d)に示すように、第1の封止材4の液面4a及びパッケージ基板3の縁面3cに密着するように、第2の封止材5を第1の封止材4上に塗布する。
【0036】
次に、第2の封止材5を硬化させる。第2の封止材5は、例えば、真空オーブン等を使用して熱を加えることにより硬化させる。なお、第2の封止材5は、低圧雰囲気で硬化させることが好ましい。このときの真空度は、10kPa以下であることが好ましい。上述したように、第1の封止材4との間に空隙が形成されないようにするためである。
【0037】
以上をまとめると、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1を製造する製造方法は、図4に示すように、パッケージ(パッケージ基板3)に発光素子2を実装する工程(S1)と、発光素子2が実装されたパッケージ基板3の凹部3aに液体の第1の封止材4を封入する工程(S2)と、第1の封止材4上に第2の封止材5を塗布する工程(S3)と、塗布された第2の封止材5を硬化する工程(S4)とを含む。
【0038】
<変形例1>
図5図7を参照して、第1の実施の形態の変形例について説明する。図5図7各図は、本発明の一変形例に係る発光装置1の断面図である。図5(a)に示すように、第1の封止材4は、パッケージ基板3の凹部3a内に満杯になるように充填されていてもよい。すなわち、第1の封止材4は、液面4aがパッケージ基板3の縁面3cに達するまで充填してもよい。換言すれば壁面3d全体が第1の封止材4に浸るように第1の封止材4を充填してもよい。但し、第1の封止材4と第2の封止材5との間に隙間が生じないようにする観点から、第1の封止材4を満杯にしない方が好ましい。
【0039】
また、上述した第1の実施の形態では、第2の封止材5の上面5aを半球状とする場合について説明したが、第2の封止材5の形状はこれに限定されない。例えば、第2の封止材5は、図5(b)及び図5(c)に示すように、上面5aが平坦となっていてもよい。また、図示はしないが、上面5aが凹状となっていてもよい。上面5aを平坦とする場合、厚みは適宜調整してよい。
【0040】
また、図6(a)に示すように、第1の封止材4中には、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)や蛍光体等の機能性ナノ粒子やマイクロ粒子が分散して混合されていてもよい。これらの粒子を第1の封止材4中に混合させることによって、紫外光を拡散させて発光を均一化するとともに、配光特性を改善することができる。あるいは、図6(b)に示すように、機能性ナノ粒子やマイクロ粒子は、第2の封止材5中に分散して混合されていてもよい。これらの粒子を第2の封止材5中に混合させることによって、上述の発光の均一化及び配光特性の改善に加えて、硬化した第2の封止材5のクラックを抑制することができる。なお、図示は省略するが、第1の封止材4及び第2の封止材5の両方に、機能性ナノ粒子やマイクロ粒子が分散して混合されていてもよい。
【0041】
また、図7に示すように、第2の封止材5の上面5aを平坦な形状に形成するとともに、第2の封止材5の上面5a上に石英やサファイア等からなるレンズ8を装着してもよい。なおレンズ8の形状は、図7のように半球状であってもよいし半球以外でも、凸型、凹型、あるいはそれ以外の形状でもよい。
【0042】
[第2の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置1の断面図である。第2の実施の形態に係る発光装置1は、第1の封止材4と第2の封止材5との間に境界層6を備える点で第1の実施の形態に係る発光装置1と相違する。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施の形態と実質的に同一の機能を有する要素には同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0043】
境界層6は、第1の封止材4と第2の封止材5との混合を抑制するものである。したがって、境界層6を設ける場合、必ずしも、第2の封止材5として第1の封止材4よりも比重の小さいものを用いなくてもよく、第2の封止材5として第1の封止材4と同等の比重又は大きい比重を有するものを用いてよい。
【0044】
境界層6は、紫外光を透過させる紫外線透過樹脂で形成された層である。また、境界層6を形成する樹脂は、紫外光又は熱で硬化する性質を有している。
【0045】
境界層6は、発光素子2が発光する紫外光の透過率がなるべく高いものを用いることが望ましい。例えば、境界層6としては、形成された厚みにおいて発光した紫外光の透過率が70%以上のものを用いることが望ましい。また、紫外光の透過率が70%未満のものを用いる場合は、厚みを100μm以下とすることが好ましい。
【0046】
境界層6は、第1の封止材4との間に空隙が生じないように、第1の封止材4と密着した状態で設けられる。具体的には、境界層6は、第1の封止材4の液面4aの全域と接触した状態で設けられる。第1の封止材4と境界層6との間に空隙が生じて、光の取出し効率を低減する全反射を発生させる空気層が形成されることを抑制するためである。
【0047】
なお、この場合、境界層6を第2の封止材5とさらに密着させるよう形成してもよい。境界層6と第2の封止材5との間に、空気層が生じることを抑制するためである。
【0048】
[第2の実施の形態に係る発光装置1の製造方法]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置1の製造方法について説明する。図9は、図8に示す発光装置1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図8に示すステップS11、S12、S15及びS16は、図4に示すステップS1、S2、S3及びS4とそれぞれ同一である。
【0049】
すなわち、第2の実施の形態に係る発光装置1の製造方法は、パッケージ基板3に発光素子2を実装する工程(S11)と、凹部3aに第1の封止材4を封入する工程(S12)と、ステップS14の工程を経た後、境界層6を覆うように第2の封止材5を塗布する工程(S15)と、塗布されたこの第2の封止材5を硬化する工程(S16)とを含み、ステップS12とS15との間に、第1の封止材4上に境界層6を塗布する工程(S13)と、塗布された境界層6を硬化する工程(S14)と、をさらに含む。
【0050】
第2の封止材5を硬化する工程(S16)において、境界層6は、例えば、第2の封止材5の硬化と同様に、第1の封止材4との間に空隙が生じないように、真空オーブン等を使用して低圧雰囲気で熱硬化させることが好ましい。あるいは、真空チャンバー内で紫外線を照射して紫外線によって硬化させてもよい。
【0051】
<変形例2>
第2の実施の形態で説明した境界層6を設ける構成においても、種々の変形が可能である。図10(a)に示すように、例えば、境界層6の上面がパッケージ基板3の縁面3cと略同一の高さに位置するように、第1の封止材4の容量及び境界層6の厚さを調整してもよい。また、図10(b)及び図10(c)に示すように、例えば、第2の封止材5を、平坦な上面5aを有する形状としてよい。また、図示はしないが、境界層6を設ける構成においても、図7で示したように、所望の形状を有するレンズ8を装着してもよい。
【0052】
(実施の形態の作用及び効果)
本発明の実施の形態及び変形例によれば、液体等の流動性を有する封止材を用いて半導体発光素子を封止する場合に、石英やサファイアからなる透明部材を用いなくとも、内部を水密に封止することができ、なおかつ、接着剤を用いる必要がない。そのため、石英やサファイアで形成されたパッケージを有する構成と比較して、低コストでかつ、高い信頼性で液体の封止材を水密に封止することができる。
【0053】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0054】
[1]紫外光を発光する半導体発光素子(2)と、前記半導体発光素子(2)が実装される凹部(3a)が形成されたパッケージ基板(3)と、前記凹部(3a)に充填され、前記半導体発光素子(2)を封止する、流動性を有する第1の封止材(4)と、前記パッケージ基板(3)の凹部(3a)を区画する縁面(3c)と密着して前記第1の封止材(4)を封止する硬化された第2の封止材(5)と、を備える、半導体発光装置(1)。
[2]前記第1の封止材(4)は、液体であり、前記第2の封止材(5)は、前記第1の封止材(4)の液面(4a)と密着して前記第1の封止材(4)を封止する、前記[1]に記載の半導体発光装置(1)。
[3]前記第1の封止材(4)は、前記凹部(3a)に満杯に充填されている、前記[1]又は[2]に記載の半導体発光装置(1)。
[4]前記第2の封止材(5)の比重は、前記第1の封止材(4)よりも小さい、前記[1]から[3]のいずれか1つに記載の半導体発光装置(1)。
[5]前記第1の封止材(4)と前記第2の封止材(5)との間に、前記紫外光を透過する紫外線透過樹脂で形成された境界層(6)をさらに備える、前記[1]に記載の半導体発光装置(1)。
[6]パッケージ基板(3)の凹部(3a)に半導体発光素子(2)を実装する工程と、前記半導体発光素子(2)が実装された前記パッケージ基板(3)の凹部(3a)に流動性を有する第1の封止材(4)を封入する工程と、前記第1の封止材(4)上に第2の封止材(5)を塗布する工程と、塗布された前記第2の封止材(5)を硬化する工程と、を含む半導体発光装置(1)の製造方法。
[7]前記第1の封止材(4)を封入する工程と、前記第2の封止材(5)を塗布する工程との間に、前記第1の封止材(4)上に境界層(6)を塗布する工程と、塗布された前記境界層(6)を硬化する工程とをさらに含む、前記[6]に記載の半導体発光装置(1)の製造方法。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…発光装置(窒化物半導体紫外線発光装置)
2…発光素子(窒化物半導体発光素子)
2a…上面
21…透明基板
22…窒化物半導体層
22a…バッファ層
22b…クラッド層
22c…発光層
22d…クラッド層
22e…コンタクト層
23…電極
23a…アノード電極(p電極)
23b…カソード電極(n電極)
3…パッケージ基板
3a…凹部
3b…底面
3c…縁面
3d…壁面
4…第1の封止材
4a…液面
5…第2の封止材
5a…上面
5b…界面
6…境界層
8…レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10