(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-17
(45)【発行日】2022-11-28
(54)【発明の名称】3方向切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/044 20060101AFI20221118BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20221118BHJP
F16K 41/10 20060101ALI20221118BHJP
【FI】
F16K11/044 Z
F16K31/06 305V
F16K41/10
(21)【出願番号】P 2017172676
(22)【出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上間 丈司
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-299372(JP,A)
【文献】特表2013-539842(JP,A)
【文献】特開2003-130247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 31/06-31/11
F16K 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の弁室と第2
の弁室と第3
の弁室とを軸線方向に順に有し、前記第1の弁室と前記第2の弁室との間に設けられた第1の弁座部、前記第2の弁室と前記第3の弁室との間に設けられて前記第1の弁座部に前記軸線方向に間隔をおいて対向する第2の弁座部、前記第1の弁室に連通する第1のポート、前記第2の弁室に連通する第2のポート及び前記第3の弁室に連通する第3のポートを具備した弁ハウジングと、
互いの端部の嵌合により軸線方向に順に連結された第1弁ステム部材と第2弁ステム部材とプッシュ部材との連結体により構成されて前記第1の弁室から前記第3の弁室にかけて延在し、その両端に設けられたステム支持部を介して前記弁ハウジングに対して摺動可能に両持ち支持された弁ステムと、
前記第2の弁室内にて前記
第2弁ステム部材により支持されることにより、前記第1の弁座部に着座し且つ前記第2の弁座部から離間して前記第1のポートと前記第2のポートとの連通を遮断して前記第2のポートと前記第3のポートとを連通させる第1の位置と、前記第2の弁座部に着座し且つ前記第1の弁座部から離間して前記第2のポートと前記第3のポートとの連通を遮断して前記第1のポートと前記第2のポートとを連通させる第2の位置との間を前記軸線方向に移動可能な弁本体と、
前記弁本体を
前記プッシュ部材を介して前記第1の位置に向けて付勢するばねと、
前記弁ハウジングに固定された電磁コイル及び前記弁ハウジングの前記第1の弁室の側の端部に固定された固定鉄心及び前記固定鉄心に対して前記軸線方向に移動可能なプランジャを具備し、前記固定鉄心による磁気的吸引により前記プランジャの前記軸線方向の移動によって前記弁本体を前記ばねのばね力に抗して前記第2の位置に向けて駆動する電磁装置と、
外周縁を前記弁ハウジングに固定され、且つ内周縁を、前記プランジャ側の前記ステム支持部から前記プランジャ側に向けて延出する前記
第1弁ステム部材のロッド部に固定され、前記第1の弁室の前記電磁装置の側を気密に封止するダイヤフラムとを有する3方向切換弁。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、前記外周縁を前記弁ハウジングと前記固定鉄心との端面間に挟まれて前記弁ハウジングに固定されている請求項1に記載の3方向切換弁。
【請求項3】
前記プランジャは、前記固定鉄心を隔てた前記第1の弁室とは反対の側に配置されて前記固定鉄心に磁気的に吸引されるプランジャ本体と、前記プランジャ本体から前記弁本体の側に軸線方向に延出して前記固定鉄心を軸線方向に貫通するプランジャロッドとを含み、
前記弁ステムの遊端と前記プランジャロッドの遊端とは正対して径方向に互いに変位可能に当接している請求項1又は2に記載の3方向切換弁。
【請求項4】
前記ダイヤフラムと前記弁本体とは前記第1の弁室を前記軸線方向に挟んで相対向し、前記ダイヤフラムが前記第1の弁室の圧力を受ける受圧面積と前記第1の位置にある前記弁本体が前記第1の弁室の圧力を受ける受圧面積とが等しい請求項1~3のいずれか1項に記載の3方向切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3方向切換弁に関し、更に詳細には、圧力バランス型の3方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁3方向切換弁は、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、軸線方向に間隔を対向する二つの弁座部のうちの一方の弁座部に着座して他方の弁座部より離間することにより、第1のポートと第2のポートとの連通を遮断して第2のポートと第3のポートとを連通させる第1の位置と、他方の弁座部に着座して一方の弁座部より離間することにより第2のポートと第3のポートとの連通を遮断して第1のポートと第2のポートとを連通させる第2の位置との間を軸線方向に移動可能な弁体が設けられ、ばねによって弁体が第1の位置に向けて付勢され、電磁装置の磁気的吸引によって弁体がばねのばね力に抗して第2の位置に向けて駆動される(例えば、特許文献1)。
【0003】
圧力バランス型の電磁3方向切換弁としては、弁体の受圧面積と同一の受圧面積を有するピストン部材が設けられ、弁体の受圧面積に作用する流体圧と同一圧力の流体圧がピストン部材に作用するように流体圧通路が形成されたものが知られている(例えば、特許文献2)。圧力バランス型の電磁3方向切換弁では、弁体に作用する流体圧がピストン部材に作用する流体圧によって相殺され、弁体に高い流体圧が作用しても弁体が不必要に移動することがなく、しかも、弁体に作用する流体圧が変化しても弁体を駆動するのに必要な磁気的吸引力が変化することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-357377号公報
【文献】特開2011-214612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力バランス型の電磁3方向切換弁は、前述の利点を有するが、流体圧相殺用のピストン部材及び流体圧通路が必要であることから、構造が複雑になる。また、ピストン部材の摺動部にはOリング等のシール部材が必要であり、シール部材のシール圧によって生じる摩擦抵抗は電磁3方向切換弁の応答速度を低下させる原因になる。しかも、パッキンの摩耗は電磁3方向切換弁の耐久性に強く影響する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、圧力バランス型の3方向切換弁を、構造を複雑にすることなく構成し、応答速度の低下を招くことがなく、耐久性に優れたものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による3方向切換弁は、第1の弁室(20)、第2の弁室(22)及び第3の弁室(24)の3つの弁室(20、22、24)を軸線方向に順に有する弁ハウジング(10)と、前記第2の弁室(22)内に配置されて前記軸線方向に移動可能な弁体(40)と、少なくとも一部を前記3つの弁室(20、22、24)の外部に設けられた駆動装置(48、50)と、前記駆動装置(48、50)からの駆動力を前記外部から前記弁体(40)に伝達するためのロッド部材(40B、42、58C)とを有し、前記弁ハウジング(10)に、前記第1の弁室(20)と前記第2の弁室(22)との間に設けられた前記弁体(40)のための第1の弁座部(26)と、前記第2の弁室(22)と前記第3の弁室(24)との間に設けられた前記弁体(40)のための第2の弁座部(28)と、前記第1の弁室(20)に連通する第1のポート(30)と、前記第2の弁室(22)に連通する第2のポート(32)と、前記第3の弁室(24)に連通する第3のポート(34)とが設けられ、前記弁体(40)は、前記第1の弁座部(26)に着座し且つ前記第2の弁座部(28)から離間して前記第1のポート(30)と前記第2のポート(32)との連通を遮断して前記第2のポート(32)と前記第3のポート(34)とを連通させる第1の位置と、前記第2の弁座部(28)に着座し且つ前記第1の弁座部(26)から離間して前記第2のポート(32)と前記第3のポート(34)との連通を遮断して前記第1のポート(30)と前記第2のポート(22)とを連通させる第2の位置との間を変位可能に前記弁ハウジング(10)に対して支持され、前記ロッド部材(40B、42、58C)が、前記外部から前記第1の弁室(20)内を前記軸線方向に通過して前記弁体(40)に係合し、前記第1の弁室(20)を前記外部に対して封止するために、前記ロッド部材(40B、42、58C)の外周と前記弁ハウジング(10)側との間にダイヤフラム(60)が設けられ、前記ダイヤフラム(60)が前記第1の弁室(30)の圧力を受ける受圧面積と前記第1の位置にある前記弁体(40)が前記第1の弁室(30)の圧力を受ける受圧面積とが等しくなるように構成されている。
【0008】
この構成によれば、ダイヤフラム(60)は、シール部材と圧力バランス部材とを兼ねるから、流体圧相殺用のピストン部材や特別の流体圧通路が不要になり、構造を複雑にすることなく圧力バランス型の電磁3方向切換弁が構成される。また、摺動部のシール部材が不要であることから、シール圧による摩擦抵抗に起因する応答速度の低下が生じることがなく、耐久性も優れたものになる。
【0009】
本発明による3方向切換弁は、好ましくは、前記駆動装置は、前記弁体(40)を前記第1の位置に向けて付勢するばね(48)と、前記弁体(40)を前記ばね(48)のばね力に抗して前記第2の位置に向けて駆動するアクチュエータ(50)とを含む。
【0010】
この構成によれば、弁体(40)の前記第1の位置への駆動は、ばね(48)によって行われ、前記第1の位置が弁体(40)のデフォルト位置になり、フェールセーフの設定を行うことができる。
【0011】
本発明による3方向切換弁は、第1の弁室(20)と第2弁室(22)と第3弁室(24)とを軸線方向に順に具備し、更に、前記第1の弁室(20)と前記第2の弁室(22)との間に設けられた第1の弁座部(26)、前記第2の弁室(22)と前記第3の弁室(24)との間に設けられて前記第1の弁座部(26)に前記軸線方向に間隔をおいて対向する第2の弁座部(28)、前記第1の弁室(20)に連通する第1のポート(30)、前記第2の弁室(22)に連通する第2のポート(32)及び前記第3の弁室(24)に連通する第3のポート(34)を具備した弁ハウジング(10)と、前記第2の弁室(22)に配置され、前記第1の弁座部(26)に着座し且つ前記第2の弁座部(28)から離間して前記第1のポート(30)と前記第2のポート(32)との連通を遮断して前記第2のポート(32)と前記第3のポート(34)とを連通させる第1の位置と、前記第2の弁座部(28)に着座し且つ前記第1の弁座部(26)から離間して前記第2のポート(32)と前記第3のポート(34)との連通を遮断して前記第1のポート(30)と前記第2のポート(32)とを連通させる第2の位置との間を前記軸線方向に移動可能な弁体(40)と、前記弁体(40)を前記第1の位置に向けて付勢するばね(48)と、前記弁ハウジング(10)に固定された電磁コイル(54)及び前記第1の弁室(20)の側に固定された固定鉄心(56)及び前記弁体(40)と連結されたプランジャ(58)を具備し、前記固定鉄心(56)による磁気的吸引により前記プランジャ(58)の前記軸線方向の移動によって前記弁体(40)を前記ばね(48)のばね力に抗して前記第2の位置に向けて駆動する電磁装置(50)と、外周縁を前記弁ハウジング(10)に固定され且つ内周縁を前記弁体(40)に固定され、前記第1の弁室(20)の前記電磁装置50)の側を気密に封止するダイヤフラム(60)とを有し、前記ダイヤフラム(60)と前記弁体(40)とは前記第1の弁室(20)を前記軸線方向に挟んで相対向し、前記ダイヤフラム(60)が前記第1の弁室(20)の圧力を受ける受圧面積と前記第1の位置にある前記弁体(40)が前記第1の弁室(20)の圧力を受ける受圧面積とが等しくなるように構成されている。
【0012】
この構成によれば、ダイヤフラム(60)は、シール部材と圧力バランス部材とを兼ねるから、流体圧相殺用のピストン部材や特別の流体圧通路が不要になり、構造を複雑にすることなく圧力バランス型の電磁3方向切換弁が構成される。また、摺動部のシール部材が不要であることから、シール圧による摩擦抵抗に起因する応答速度の低下が生じることがなく、耐久性も優れたものになる。
【0013】
本発明による3方向切換弁は、好ましくは、前記弁体(40)は、前記第1の弁座部(26)及び前記第2の弁座部(28)に選択的に着座する弁本体(40A)と、前記弁本体(40A)から前記プランジャの側に軸線方向に延出して前記ダイヤフラム(60)を接続された弁ステム(40B、42)とを含み、前記プランジャ(58)は、前記固定鉄心(56)を隔てた前記第1の弁室(20)とは反対の側に配置されて前記固定鉄心(56)に磁気的に吸引されるプランジャ本体(58A)と、前記プランジャ本体(58A)から前記弁体(40)の側に軸線方向に延出して前記固定鉄心(56)を軸線方向に貫通するプランジャロッド(58C)とを含み、前記弁ステム(40B、42)の遊端とプランジャロッド(58C)の遊端とは正対して径方向に互いに変位可能に当接している。
【0014】
この構成によれば、プランジャロッド(58C)と弁ステム(40B、42)との心ずれが許容され、プランジャロッド(58C)と弁ステム(40B、42)との同心性が保たれていなくても、ダイヤフラム(60)にこじれが生じることがない。
【0015】
本発明による3方向切換弁は、好ましくは、前記弁ハウジング(10)は前記弁ステム(40B、42)を軸線方向に移動可能に支持するステム支持部(12A)を含んでいる。
【0016】
この構成によれば、弁体(40)の軸線方向の移動がステム支持部(12A)によって案内され、弁体(40)の軸線方向の移動が傾きを生じることなく確実に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による3方向切換弁によれば、流体圧相殺用のピストン部材及び流体圧通路を必要とすることなく、つまり構造を複雑にすることなく圧力バランス型の3方向切換弁が構成され、しかも、摺動部のシール部材が不要であることから、シール圧による摩擦抵抗に起因する応答速度の低下が生じることがなく、耐久性も優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による3方向切換弁の一つの実施形態の第1の状態を示す断面図
【
図2】本実施形態による3方向切換弁の第2の状態を示す断面図
【0019】
以下に、本発明による3方向切換弁の一つの実施形態を、
図1、
図2を参照して説明する。なお、3方向切換弁の軸線方向は、
図1、
図2で見て水平な左右の方向である。
【0020】
3方向切換弁は弁ハウジング10を有する。弁ハウジング10は、円筒状中空部14を形成されたハウジング本体12と、円筒状中空部14に固定配置されたスリーブ部材16と、ハウジング本体12の右端部に固定された端板18とを含む。
【0021】
ハウジング本体12は、右端にて円筒状中空部14に連通し且つスリーブ部材16と同心で、スリーブ部材16の内径と同一内径による円筒状の第1の弁室20を画成している。円筒状中空部14は、第1の弁室20との接続端とスリーブ部材16の左端部との間に、左端にて第1の弁室20に連通する第2の弁室22を画成している。スリーブ部材16は、左端にて第2の弁室22に連通し且つ右端を端壁16Aによって閉じられた円筒状の第3の弁室24を画成している。このようにして、弁ハウジング10は第1の弁室20と第2の弁室22と第3の弁室24とを互いに同心に軸線方向に順に有する。
【0022】
ハウジング本体12は、第1の弁室20と第2の弁室22との境界部に位置する段差端部に形成された円環状突条による第1の弁座部26を有する。スリーブ部材16は、第2の弁室22と第3の弁室24との境界部に位置する右端部に形成された円環状突条による第2の弁座部28を有する。第1の弁座部26と第2の弁座部28とは、互いに同心且つ同一径で、軸線方向に間隔をおいて相対向(正対)している。
【0023】
ハウジング本体12は、第1の弁室20に連通する第1のポート(正圧ポート)30と第2の弁室22に連通する第2のポート(出力ポート)32と、スリーブ部材16に形成された貫通孔16Bを介して第3の弁室24に連通する第3のポート(排気ポート)34とを具備している。スリーブ部材16の外周部には、貫通孔16Bの軸線方向の両側に各々Oリング36が装着されている。Oリング36は、円筒状中空部14の内周面に圧接し、第3のポート34の気密性を保持している。
【0024】
本実施形態の電磁3方向切換弁は、例えば、間歇空気噴射の切換弁として用いられる。この使用では、第1のポート30が圧縮空気源に接続される正圧ポートに、第2のポート32が出力ポートに、第3のポート34が大気開放ポートになる。
【0025】
第2の弁室22には弁体40が配置されている。弁体40は、第2の弁室22と同心の円盤形状の弁本体40A及び弁本体40Aの左端面中央から後述するプランジャロッド58Cの側(左側)に軸線方向に延出した弁ステム部40Bと、弁ステム部40Bの遊端(左端)が嵌合した中央嵌合凹部42Bと含む弁ステム部材42とによってポペット弁をなしている。弁ステム部材42は、ハウジング本体12に形成されたステム支持部12Aに摺動可能に嵌合する基部42Aと、基部42Aの左端面中央からプランジャロッド58Cの側(左端)に軸線方向に延出したロッド部42Cとを一体に有し、ハウジング本体12によって弁本体40A及び弁ステム部40Bと同心に軸線方向に移動可能に支持されている。なお、ステム支持部12Aの両側に延在する第1の弁室20は、弁ステム部材42の基部42Aに形成された軸線方向の凹部42Eによって互い連通し、同一圧力に保たれる。
【0026】
なお、本明細書では、弁ステム部40Bと弁ステム部材42とプランジャロッド58Cとを総称してロッド部材と呼び、当該ロッド部材は第1の弁室20の外部から第1の弁室20内を軸線方向に通過している。
【0027】
弁本体40Aは、左端面にて第1の弁座部26に正対し、右端面にて第2の弁座部28に正対し、左側に装着されたOリング43によって第1の弁座部26に当接可能であると共に、右側に装着されたOリング44によって第1の弁座部26とは相反する関係で第2の弁座部28に当接可能になっている。
【0028】
弁体40は、
図1に示されているように、Oリング43をもって第1の弁座部26に着座し且つOリング44が第2の弁座部28から離間することにより、第1のポート30と第2のポート32との連通を気密に遮断して第2のポート32と第3のポート34とを連通させる左側の第1の位置と、
図2に示されているように、Oリング44をもって第2の弁座部28に着座し且つOリング43が第1の弁座部26から離間することにより、第2のポート32と第3のポート34との連通を気密に遮断して第1のポート30と第2のポート32とを連通させる右側の第2の位置との間を軸線方向に移動可能である。
【0029】
スリーブ部材16内にはプッシュ部材46が配置されている。プッシュ部材46は、スリーブ部材16に軸線方向に摺動自在に嵌合した基部46Aと、基部46Aの左端面中央から弁体40の側(左側)に軸線方向に延出して弁本体40Aに形成されている中央嵌合凹部40Cに嵌合するロッド部46Bとを含んでいる。
【0030】
このようにして、弁本体40A及び弁ステム部40Bは、ステム支持部12Aによる弁ステム部材42の支持と、スリーブ部材16によるプッシュ部材46の支持とによって弁ハウジング10に対して両持ち支持されている。
【0031】
弁体40の軸線方向の移動はステム支持部12A及びスリーブ部材16によって案内されるから、弁ハウジング10に対する弁本体40Aの軸線方向の移動が軸線方向に対して傾斜することなく確実に行われる。これにより、Oリング43による第1の弁座部26に対する着座及びOリング44による第2の弁座部28に対する着座が、片当たりすることなく、全周をもって気密性高く安定して行われる。弁体40のステム支持部12A及びスリーブ部材16における摺動部には、シール部材を設ける必要がないから、この摺動部において、シール圧による摩擦抵抗が生じることがない。
【0032】
なお、中央嵌合凹部40Cとロッド部46Bとの嵌合と、前述の弁ステム部40Bと中央嵌合凹部42Bとの嵌合は、双方が締まり嵌めあるいは片方のみが径方向に変位可能な遊嵌合のいずれであってもよい。片方が径方向に変位可能な遊嵌合である場合には、スリーブ部材16とステム支持部12Aとの同心精度を緩くすることが可能なる。
【0033】
基部46Aとスリーブ部材16の端壁16Aとの間には圧縮コイルばね48が装着されている。圧縮コイルばね48は弁体40を前記第1の位置に向けて付勢している。
【0034】
ハウジング本体12の左端部、つまり第1の弁室20の左側の外部には電磁装置50が取り付けられている。電磁装置50は、ハウジング本体12の左端部に固定ピン51によって固定されたボビン52及びボビン52にボビン52に巻装された電磁コイル54と、ボビン52の内筒部に配置されてハウジング本体12の左端部に固定された固定鉄心56と、プランジャ58とを具備している。
【0035】
プランジャ58は、固定鉄心56を隔てた第1の弁室20とは反対の側にボビン52の内筒部に配置され且つ固定鉄心56の端面(磁気的吸引面)56Aと正対する端面(磁気的被吸引面)58Bを含んで固定鉄心56に磁気的に吸引されるプランジャ本体58Aと、プランジャ本体58Aの端面58Bから弁体40の側(右側)に軸線方向に延出して固定鉄心56の中心孔56Bを軸線方向に貫通するプランジャロッド58Cとを一体に有する。
【0036】
電磁装置50は、電磁コイル54に通電されることにより、電磁コイル54が励磁し、固定鉄心56による磁気的吸引によりプランジャ58を軸線方向に移動させ、弁体40を圧縮コイルばね48のばね力に抗して前述の第2の位置に向けて駆動する。この設定により、電磁コイル54に通電が行われていない状態では、第1の位置が弁体40のデフォルト位置になり、フェールセーフの設定を行うことができる。
【0037】
プランジャロッド58Cの遊端面(他端面)58Dと弁ステム部材42のロッド部42Cの遊端面(他端面)42Dとは、ともに軸線方向に直交する方向に延在する平面をもって正対して径方向に互いに変位可能に当接している。
【0038】
このようにして、プランジャロッド58Cと弁ステム部材42とステム部40Bは、電磁装置50からの駆動力を第1の弁室20の外部から弁本体40Aに伝達するためのロッド部材をなす。
【0039】
弁ハウジング10と電磁装置50との間にはダイヤフラム60が設けられている。ダイヤフラム60は、ゴム状弾性体によって構成され、円筒部60Aと、円筒部60Aの一方の軸端から径方向外方に延出した円環状のフランジ部60Bとを一体に有する。ダイヤフラム60は、フランジ部60Bの外周縁をハウジング本体12と固定鉄心56との端面間に挟まれてこれらに固定され、内周縁を含む円筒部60Aが弁ステム部材42の外周に嵌合して弁ステム部材42に固定されている。このようにして、ダイヤフラム60は、弁ステム部材42のロッド部42Cの外周とハウジング本体12との間に取り付けられる。
【0040】
上述の取り付けにより、ダイヤフラム60は、自身の弾性変形によって弁体40の軸線方向の移動を許容して第1の弁室20の電磁装置50の側を気密に封止し、つまり、第1の弁室20を外部に対して封止すると共に、弁本体40Aとは第1の弁室20を軸線方向に挟んで相対向する端壁をなし、前述の第1の位置にある弁体40に作用する第1の弁室20の圧力とは反対の方向に第1の弁室20の圧力を受ける。なお、第1の位置にある弁体40に作用する第1の弁室20の圧力(正圧)は、弁体40を第1の位置から第2の位置へ動かす方向に弁体40に作用する。
【0041】
ダイヤフラム60は、第1の弁室20の圧力を受ける受圧面積が、第1の位置にある弁体40が第1の弁室20の圧力を受ける受圧面積と等しくなるように寸法設定されている。これは、ダイヤフラム60が第1の弁室20に臨む部分の外径を第1の弁座部26の内径に等しい寸法に設定することを意味する。これにより、第1の位置にある弁体40に作用する第1の弁室20の圧力が相殺される。
【0042】
ハウジング本体12の左端には電磁装置50を覆蓋するカップ形状のカバー部材62が取り付けられている。カバー部材62とボビン52との間にはハウジング本体12の上部に形成された空洞による電気室64と連続する電気室66が画成されている。電気室64、66には双方に連続して左右方向に延在する一つの電気回路基板68が配置されている。電気回路基板68は電磁装置50の通電制御用のものであり、ボビン52の左端のフランジ52A上に搭載された左端68A及びボビン52の右端のフランジ52B上に植設されたピン70が嵌合する位置決め孔68Bを有し、左端68A及びピン70によってボビン52と略平行に取り付けられている。なお、ピン70は位置決め孔68Bにおいて接着剤71によって電気回路基板68に固定されていてよい。電気回路基板68の右端近くには、外部接続用の電気コネクタ72が取り付けられている。
【0043】
つぎに、上述の構成による電磁3方向切換弁の作用を説明する。電磁コイル54に通電が行われていないときには、固定鉄心56がプランジャ本体58Aを磁気的に吸引することがないので、弁体40は、
図1に示されているように、圧縮コイルばね48のばね力によって左側の第1の位置に位置する。これにより、第1のポート30が閉じられて第2のポート32と第3のポート34とが連通する切換状態になり、出力ポートをなす第2のポート32が大気開放になる。
【0044】
電磁コイル54に通電が行われると、固定鉄心56が励磁し、端面56Aをもってプランジャ本体58Aの端面58Bを右方に磁気的に吸引するので、弁体40は、
図2に示されているように、圧縮コイルばね48のばね力に抗して右側に移動して第2の位置に位置する。これにより、第3のポート34が閉じられて第1のポート30と第2のポート32とが連通する切換状態になり、出力ポートをなす第2のポート32に圧縮空気が供給される。
【0045】
電磁コイル54に対する通電が短いサイクルで繰り返されると、第2のポート32に短いサイクルで、圧縮空気が繰り返し間欠的に供給されることになる。この場合、弁体40が比較的高速度で軸線方向に往復移動することになるが、ダイヤフラム60は、この往復移動において弾性変形するだけで、弁ハウジング10に対して摺動することがないから、シール部材のシール圧による摩擦抵抗がなく、摩擦抵抗によって切換弁の応答性が低下することがない。また、シール部の摩耗に起因して切換弁の耐久性が低下することがない。
【0046】
しかも、ダイヤフラム60は、第1の弁室20の圧力を受ける受圧面積が、第1の位置にある弁体40が第1の弁室20の圧力を受ける受圧面積に等しいから、第1の位置にある弁体40に作用する第1の弁室20の圧力が相殺される圧力バランスが得られ、第1の弁室20の圧力が高くなっても、第1の位置にある弁体40が第2の位置の側に不必要に動くことがなく、弁体40が第1の位置にあることが担保される。
【0047】
また、ダイヤフラム60によって第1の位置にある弁体40に作用する第1の弁室20の圧力を相殺する圧力バランスが取られていることにより、弁体40に作用する第1の弁室20の圧力(第1のポート30に供給される圧縮空気の圧力)が変化しても、弁体40を駆動するのに必要な磁気的吸引力が変化することがないから、信頼性が高い安定した切換動作が得られ、併せて電磁装置50を小型化することができる。
【0048】
つまり、圧力バランスが取られていない場合には、第1の弁室20の圧力が高いほど圧縮コイルばね48のばね力を大きくする必要が生じ、ばね力の増大に応じて電磁装置50の磁気的吸引力を大きくする必要があるが、ダイヤフラム60によって圧力バランスが取られていると、第1の弁室20の圧力に応じて圧縮コイルばね48のばね力を設定する必要がなくなり、これに応じて電磁装置50の磁気的吸引力を大きくする必要がなくなる。これにより、第1の弁室20の圧力が高くても電磁装置50を大型化する必要がない。
【0049】
このように、ダイヤフラム60は、シール部材と圧力バランス部材とを兼ねるから、流体圧相殺用のピストン部材や特別の流体圧通路が不要になり、電磁3方向切換弁の構造を複雑なものにすることがなく、電磁3方向切換弁の簡素化、小型化に寄与する。
【0050】
また、プランジャロッド58Cの遊端面58Dとロッド部42Cの遊端面42Dとが、ともに軸線方向に直交する方向に延在する平面をもって正対してこれらの径方向に互いに変位可能に当接しているから、プランジャロッド58Cと弁ステム部材42との心ずれが許容される。
【0051】
これにより、ハウジング本体12に対する電磁装置50の径方向の取付精度が低くてもよくなる。また、プランジャロッド58Cと弁ステム部材42との同心性が保たれていなくても、ダイヤフラム60にこじれ(曲げ変形)が生じることがない。これにより、ダイヤフラム60に定常的に曲げ応力が作用することがなく、ダイヤフラム60の安定した動作と耐久性とが担保される。
【0052】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
例えば、上述の本実施形態では、弁本体40Aと弁ステム部40Bとは一体品で、これらに対して弁ステム部材42は別体品であるが、弁本体40Aと弁ステム部40Bと弁ステム部材42とを一体品とすることもでき、本明細書では弁ステム部40Bと弁ステム部材42との全体を弁ステムと呼ぶ。ダイヤフラム60は、弁ステム部材42に代えてプランジャロッド58Cに固定されていてもよい。ダイヤフラム60は、薄肉の弾性変形可能な金属製であっても、ベローズ構造のものであってもよい。
【0054】
弁体40に設けられるシール部材は、Oリング43、44に限られることはなく、弁体40に直接加硫接着されたゴム部材等のシール部材であってもよい。
【0055】
弁体40を第2の位置に向けて駆動する駆動装置は、電磁装置に限られることはなく、流体圧式のアクチュエータであってもよい。また、圧縮コイルばね48に代えて電磁装置や流体圧式アクチュエータが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 弁ハウジング
12 ハウジング本体
12A ステム支持部
14 円筒状中空部
16 スリーブ部材
16A 端壁
16B 貫通孔
18 端板
20 第1の弁室
22 第2の弁室
24 第3の弁室
26 第1の弁座部
28 第2の弁座部
30 第1のポート
32 第2のポート
34 第3のポート
36 Oリング
40 弁体
40A 弁本体
40B 弁ステム部
40C 中央嵌合凹部
42 弁ステム部材
42A 基部
42B 中央嵌合凹部
42C ロッド部
42D 遊端面
42E 凹部
43 Oリング
44 Oリング
46 プッシュ部材
46A 基部
46B ロッド部
48 圧縮コイルばね
50 電磁装置
51 固定ピン
52 ボビン
52A フランジ
52B フランジ
54 電磁コイル
56 固定鉄心
56A 端面
56B 中心孔
58 プランジャ
58A プランジャ本体
58B 端面
58C プランジャロッド
58D 遊端面
60 ダイヤフラム
60A 円筒部
60B フランジ部
62 カバー部材
64 電気室
66 電気室
68 電気回路基板
68A 左端
68B 位置決め孔
70 ピン
72 電気コネクタ